(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125365
(43)【公開日】2024-09-18
(54)【発明の名称】機械的エネルギー及び加圧ガスを届けるための大型ターボ過給式2ストローク内燃機関及び方法
(51)【国際特許分類】
F02B 25/02 20060101AFI20240910BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20240910BHJP
F02B 37/007 20060101ALI20240910BHJP
F02B 37/22 20060101ALI20240910BHJP
F02B 33/00 20060101ALI20240910BHJP
F02B 37/04 20060101ALI20240910BHJP
F02B 37/12 20060101ALI20240910BHJP
F02M 26/05 20160101ALI20240910BHJP
F02M 26/34 20160101ALI20240910BHJP
F02B 37/02 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
F02B25/02
F02B37/00 302F
F02B37/007
F02B37/22
F02B33/00 C
F02B37/04 C
F02B37/00 400C
F02B37/12 303G
F02M26/05
F02M26/34
F02B37/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024102661
(22)【出願日】2024-06-26
(62)【分割の表示】P 2022052673の分割
【原出願日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】PA202100342
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA202270080
(32)【優先日】2022-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(71)【出願人】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】シュムッターメイア ヘルベルト
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加圧された掃気及び/又は加圧された排気を加圧ガスの消費機器に供給するように構成される、大型ターボ過給式2ストロークユニフロー内燃機関、及び、そのような機関を動作させる方法を提供する。
【解決手段】加圧された掃気及び/又は加圧された排気を加圧ガスの消費機器に供給するように構成される、大型ターボ過給式2ストロークユニフロー内燃機関であり、1つ又は複数のターボ過給機と、掃気及び/又は、排気のバイパス系と、バイパス量などを調整するコントローラを備え、ターボ過給機の可変ジオメトリタービンのジオメトリを調節してタービンフロー面積を調節する。また、機関の部分負荷においてコンプレッサにより伝達される圧力を最大化するために、1つ又は複数のターボ過給機の1つ又は複数を切り離す制御をするように構成される、機関。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された掃気及び/又は加圧された排気を加圧ガスの消費機器に供給するように構成される、大型ターボ過給式2ストロークユニフロー内燃機関であって、前記機関は、
それぞれ下端部に掃気ポートを有すると共に上端部に排気弁を有する複数のシリンダと;
前記掃気ポートを通じて前記シリンダに接続される掃気受けを有し、自身を通じて前記シリンダに掃気が導入される吸気系と;
前記排気弁を通じて前記シリンダに接続される排気受けを有し、前記シリンダ内で生成した排気が自身を通じて排出される排気系と;
コンプレッサに協働するように組み合わされる排気駆動型のタービンと、前記タービンの入口であって前記排気系に接続される入口と、前記コンプレッサの出口であって、前記吸気系に加圧された掃気流を届けるために前記吸気系に接続される出口とをそれぞれ有する、1つ又は複数のターボ過給機と;
前記シリンダに燃料を届ける燃料システムと;
前記吸気系から制御された量の掃気を取り出して前記機関をバイパスさせ、及び/又は、前記排気系から制御された量の排気を取り出して前記タービンをバイパスさせ、バイパスした加圧ガスを加圧ガスの消費機器に供給するバイパス系と;
圧力センサ及び/又は温度センサに組み合わされ、検知した掃気圧及び/又は検知した排気温度の関数として、前記消費機器に供給されるバイパス加圧ガスの量を調整するように構成されるコントローラと;
を備え、前記コントローラは、
・ ターボ油圧系により提供される、ターボ過給機の取り出し出力を増やすこと;
・ 前記機関の前記吸気系の補助ブロワの速度を増すこと;
・ 前記機関のEGR装置のEGRブロワの速度を増すこと;
・ 前記機関の追加の小さなターボ過給機をアクティブにすること;
・ 前記機関のシリンダバイパス装置のシリンダバイパス弁を開けること;
・ 専用の電気駆動式コンプレッサを駆動するための前記機関のパワータービン装置への排気バイパスを開けること;
・ 前記機関の油圧系により動力を受ける油圧駆動式コンプレッサをアクティブにすること;
・ 好ましくはタービンフロー面積を減らすことによって、前記機関の実際の動作条件の下で前記コンプレッサにより伝達される圧力を最大化するために、前記1つ又は複数のターボ過給機の可変ジオメトリタービンのジオメトリを調節してタービンフロー面積を調節すること;
・ 好ましくは機関負荷の関数として、前記機関の部分負荷において前記コンプレッサにより伝達される圧力を最大化するために、前記1つ又は複数のターボ過給機の1つ又は複数を切り離すこと;
・ 第1の切り離しエンジン負荷閾値未満において1つのターボ過給機をアクティブにし、前記第1の切り離し機関負荷閾値と第2の切り離しエンジン負荷閾値の間では2つのターボ過給機をアクティブにし、前記第2の切り離し機関負荷閾値より高い機関負荷においては3つのターボ過給機をアクティブにすること;
の1つ又は複数により、掃気圧及び/又はバイパスされる掃気の質量流を最大化する方式で、機関100を制御するように構成される、機関。
【請求項2】
前記コントローラは、検知した又は観察された掃気圧が掃気圧閾値未満であるか、及び/又は検知した排気温度が排気温度閾値より高い場合、前記加圧ガスの消費機器へ供給されるバイパス加圧ガスの量を制限するように構成される、請求項1に記載の機関。
【請求項3】
前記コントローラは、検知された若しくは観察された掃気圧、及び/又は、検知された若しくは観察された排気温度の関数として、実際の機関ターボ過給効率を決定するように構成される、請求項1又は2に記載の機関。
【請求項4】
前記コントローラは、前記決定した実際の機関ターボ過給効率の関数として、前記加圧ガスの消費機器に供給するバイパス加圧ガスの量を制限するように構成され、
前記コントローラは好ましくは、前記決定した実際の機関ターボ過給効率が、機関ターボ過給実効率閾値より低い場合に、前記加圧ガス消費機器に供給するバイパス加圧ガスの量を減少又は制限するように構成される、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラは、既定の最小機関ターボ過給効率閾値と比較して、前記1つ又は複数のターボ過給機の、実際に利用可能な効率の超過分を決定するように構成される、請求項1からの4のいずれかに記載の機関。
【請求項6】
前記コントローラは、前記決定した超過分の関数として、前記加圧ガスの消費機器に供給するバイパス加圧ガスの量を制限するように構成される、請求項5に記載の機関。
【請求項7】
前記コントローラは、前記加圧ガス消費機器による加圧ガスのニーズに応じて、前記加圧ガス消費機器に供給するバイパス加圧ガスの量を調節するように構成され、好ましくは加圧ガス消費機器からの信号に応じて調節するように構成される、請求項1から6のいずれかに記載の機関。
【請求項8】
前記1つ又は複数のターボ過給機は、少なくともある機関負荷範囲において、最低限必要な既定の機関ターボ過給効率を超えるターボ過給効率を有する、請求項1から7のいずれかに記載の機関。
【請求項9】
前記2つ以上のターボ過給機のうちの1つ又は複数の切り離しのための切替点は、機関負荷の60~80%の範囲に設けられ、前記コントローラは、機関負荷が当該切替点を下回った時に、前記2つ以上のターボ過給機のうちの1つ又は複数を切り離すように構成される、請求項1から8のいずれかに記載の機関。
【請求項10】
前記コントローラは、前記吸気系から取り入れる掃気量を制御すべく、第1の電子制御弁に接続されて該電子制御弁を制御することができ、及び/又は、前記コントローラは、前記排気系から取り入れる排気量を制御すべく、第2の電子制御弁に接続されて該電子制御弁を制御することができる、請求項1から9のいずれかに記載の機関。
【請求項11】
前記コントローラは、前記検知した掃気圧が掃気圧閾値未満である場合に、前記消費機器へ供給されるバイパス加圧ガスの量を減少させるように構成され、前記掃気圧閾値は、好ましくは周囲条件に従って調節される、請求項1から10のいずれかに記載の機関。
【請求項12】
前記コントローラは、前記検知した排気温度が排気温度閾値より高い場合に、前記消費機器へ供給されるバイパス加圧ガスの量を減少させるように構成され、前記排気温度閾値は、好ましくは周囲条件に従って調節される、請求項1から11のいずれかに記載の機関。
【請求項13】
前記機関は、前記吸気系内の掃気圧を検知するための圧力センサを、好ましくは前記掃気受けの内部又はすぐ上流に有し、及び/又は、前記排気系の排気温度を検知するための温度センサを、好ましくは前記排気受けの内部又はすぐ下流に有し、及び/又は、前記吸気系内の掃気圧を推定するためのオブザーバを、好ましくは前記掃気受けの内部又はすぐ上流に有し、及び/又は、前記排気系の温度を推定するためのオブザーバを、好ましくは前記排気受けの内部又はすぐ下流に有する、請求項1から12のいずれかに記載の機関。
【請求項14】
大型ターボ過給式2ストロークユニフロー内燃機関を動作させる方法において、加圧された掃気及び/又は加圧された排気を前記機関から加圧ガスの消費機器に供給するための方法であって、前記機関が、
それぞれ下端部に掃気ポートを有すると共に上端部に排気弁を有する複数のシリンダと;
前記掃気ポートを通じて前記シリンダに接続される掃気受けを有し、自身を通じて前記シリンダに掃気が導入される吸気系と;
前記排気弁を通じて前記シリンダに接続される排気受けを有し、前記シリンダ内で生成した排気が自身を通じて排出される排気系と;
コンプレッサに協働するように組み合わされる排気駆動型のタービンと、前記タービンの入口であって前記排気系に接続される入口と、前記コンプレッサの出口であって、前記吸気系に加圧された掃気流を届けるために前記吸気系に接続される出口とを有する、1つ又は複数のターボ過給機と;
前記加圧ガスの消費機器にバイパスした加圧ガスを供給するバイパス系と;
を備え、前記方法は、
制御された量の掃気を前記吸気系からバイパスさせること又は制御された量の排気を前記排気系からバイパスさせることと;
次の1つ又は複数:
・ ターボ油圧系により提供されるターボ過給機の取り出し出力を増やすこと、
・ 前記機関の前記吸気系の補助ブロワの速度を増すこと、
・ 前記機関のEGR装置のEGRブロワの速度を増すこと、
・ 前記機関の追加の小さなターボ過給機をアクティブにすること、
・ 前記機関のシリンダバイパス装置のシリンダバイパス弁を開けること、
・ 専用の電気駆動式コンプレッサを駆動するための前記機関のパワータービン装置への排気バイパスを開けること、
・ 前記機関の油圧系により動力を受ける油圧駆動式コンプレッサをアクティブにすること、
・ 好ましくはタービンフロー面積を減らすことによって、前記機関の実際の動作条件の下で前記コンプレッサにより伝達される圧力を最大化するために、可変ジオメトリタービンのジオメトリを調節してタービンフロー面積を調節すること、
・ 好ましくは機関負荷の関数として、前記機関の部分負荷において前記コンプレッサにより伝達される圧力を最大化するために、前記1つ又は複数のターボ過給機の1つ又は複数を切り離すこと、
・ 第1の切り離しエンジン負荷閾値未満において1つのターボ過給機をアクティブにし、前記第1の切り離し機関負荷閾値と第2の切り離しエンジン負荷閾値の間では2つのターボ過給機をアクティブにし、前記第2の切り離し機関負荷閾値より高い機関負荷においては3つのターボ過給機をアクティブにすること、
により、掃気圧及び/又はバイパスされる掃気の質量流を最大化することと;
を含む、方法。
【請求項15】
前記吸気系内の掃気圧、好ましくは前記掃気受けの内部又はすぐ上流の圧力を検知すること、及び/又は、前記排気系の排気温度を、好ましくは前記排気受けの内部又はすぐ下流で検知することと;
前記消費機器に供給される、バイパスされる加圧ガスの量を、検知した掃気圧及び/又は排気温度の関数として調節することと;
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記吸気系内の掃気圧、好ましくは前記掃気受けの内部又はすぐ上流の圧力を推定すること、及び/又は、前記排気系の排気温度を、好ましくは前記排気受けの内部又はすぐ下流で推定することと;
前記消費機器に供給される、バイパスされる加圧ガスの量を、検知した掃気圧及び/又は排気温度の関数として調節することと;
を含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示事項は、推進や発電機駆動等のための機械的エネルギーを生成することに加えて、別の用途に用いられるための加圧ガスを生成する方法及び大型ターボ過給式2ストローク内燃機関や、そのような機関を動作させる方法に関する。
【背景】
【0002】
大型ターボ過給式2ストローク自己着火式機関は、大型船舶の推進システムや、発電プラントの原動機としてしばしば用いられる。その大きさや重量、出力は、このタイプの圧縮内燃機関を他の燃焼機関からかけ離れたものとしており、このタイプの圧縮内燃機関を独特の分類に位置づけている。これらの機関は、高さが増すことがあまり問題にならないので、ピストンに側圧がかからないようにクロスヘッドを用いて構成される。通常、このような機関は天然ガスや石油ガス、メタノール、エタン、燃料油で運転される。
【0003】
船舶推進用の大型ターボ過給式2ストローク自己着火式機関(船舶用機関)は、船舶に取り付けられる高燃料効率のシステム設備をサポートするように調整される。特に、廃熱回収システムは、船舶用機関の全体的な燃料消費を低減し、排出物を低減するために重要である。
【0004】
用途によっては、機関は、推進等のための機械的エネルギーを生成することに加えて、加圧ガスを生成することを求められる。例えば加圧された空気、加圧された排気、空気と排気の加圧された混合物等である。そのような用途の一つに空気潤滑(air lubrication)がある。大きな平たい底部領域を有する船舶は、空気潤滑によって、航行の際の抵抗の低減という利益を得ることができる。このため、所定の速度で船舶を推進するために必要とされる主機関パワーの低減という利益も得ることができる。空気潤滑システムは、船舶の船体の平たい底部領域を潤滑するために、船舶の下に気泡の定常流を生成する。
【0005】
船舶推進に必要なパワーの望ましい低減を達成するためには、船舶の設計に従った十分な空気/ガス量を十分な圧力で、専用の気泡生成機インタフェースに送り込むことが必要とされる。普通に調整された大型2ストローク機関は、必要とされる全ての機関負荷において十分に加圧された空気/ガスを提供するには限界がある。
【0006】
特開2010-228679は、加圧ガスの消費機器で使うために掃気を分岐するように調整された従来の機関を開示している。
【摘要】
【0007】
本発明の目的は、上述の問題を解決するか、又は少なくとも緩和する、大型ターボ過給式2ストロークユニフロー式内燃機関を提供することである。
【0008】
コストが嵩む空気圧縮機ユニットの設置及び運用を避けるか少なくとも低減するために適した2ストローク機関が提案される。
【0009】
上述の目的やその他の目的が、独立請求項に記載の特徴により達成される。より具体的な実装形態は、従属請求項や発明の詳細な説明、図面から明らかになるだろう。
【0010】
第1の捉え方によれば、加圧された掃気及び/又は加圧された排気を加圧ガスの消費機器に供給するように構成される、大型ターボ過給式2ストロークユニフロー内燃機関が提供される。この機関は、
それぞれ下端部に掃気ポートを有すると共に上端部に排気弁を有する複数のシリンダと;
前記掃気ポートを通じて前記シリンダに接続される掃気受けを有し、自身を通じて前記シリンダに掃気が導入される吸気系と;
前記排気弁を通じて前記シリンダに接続される排気受けを有し、前記シリンダ内で生成した排気が自身を通じて排出される排気系と;
コンプレッサに協働するように組み合わされる排気駆動型のタービンと、前記タービンの入口であって前記排気系に接続される入口と、前記コンプレッサの出口であって、前記吸気系に加圧された掃気流を届けるために前記吸気系に接続される出口とを有する、少なくとも1つのターボ過給機と;
前記シリンダに燃料を届ける燃料システムと;
前記吸気系から制御された量の掃気を取り出して前記機関をバイパスさせ、及び/又は、前記排気系から制御された量の排気を取り出して前記タービンをバイパスさせ、バイパスした加圧ガスを加圧ガスの消費機器に供給するバイパス系と;
圧力センサ及び/又は温度センサに組み合わされ、検知した掃気圧及び/又は検知した排気温度の関数として、前記消費機器に供給されるバイパス加圧ガスの量を調整するように構成されるコントローラと;
を備え、前記コントローラは、
・ ターボ油圧系装置により提供されるターボ過給機の取り出し出力を増やすこと;
・ 前記機関の前記吸気系の補助ブロワの速度を増すこと;
・ 前記機関のEGR装置のEGRブロワの速度を増すこと;
・ 前記機関の追加の小さなターボ過給機をアクティブにすること;
・ 前記機関のシリンダバイパス装置のシリンダバイパス弁を開けること;
・ 専用の電気駆動式コンプレッサを駆動するための前記機関のパワータービン装置への排気バイパスを開けること;
・ 前記機関の油圧系装置により動力を受ける油圧駆動式コンプレッサをアクティブにすること;
・ 好ましくはタービンフロー面積を減らすことによって、前記機関の実際の動作条件の下で前記コンプレッサにより伝達される圧力を最大化するために、前記1つ又は複数のターボ過給機の可変ジオメトリタービンのジオメトリを調節してタービンフロー面積を調節すること;
・ 好ましくは機関負荷の関数として、前記機関の部分負荷において前記コンプレッサにより伝達される圧力を最大化するために、前記1つ又は複数のターボ過給機の1つ又は複数を切り離すこと;
・ 第1の切り離しエンジン負荷閾値未満において1つのターボ過給機をアクティブにし、前記第1の切り離し機関負荷閾値と第2の切り離しエンジン負荷閾値の間では2つのターボ過給機をアクティブにし、前記第2の切り離し機関負荷閾値より高い機関負荷においては3つのターボ過給機をアクティブにすること;
の1つ又は複数により、掃気圧及び/又はバイパスされる掃気の質量流を最大化する方式で、機関100を制御するように構成される。
【0011】
加圧ガスの消費機器にガスを供給するために、機関において利用可能な圧力を増やす多様な調整手法を適用するように構成されるコントローラを提供することにより、機関を準最適な条件で動作させるリスクなしに、機関が加圧ガスの消費機器に提供する加圧ガスの量を最大化することが可能になる。
【0012】
機関サイクルから取り出されるバイパスガスが、本質的に機関の燃料消費の増加に繋がることを考慮すると、第1の捉え方に従う機関によれば、空気潤滑を使う船舶の投資対効果ポテンシャルが著しく向上する。更に、可能な最も高い掃気圧又は可能な最も高い排気圧を提供するために、上に羅列した手法の1つ又は複数によって機関をチューニングすることにより、機関は、加圧ガスの外部消費機器(例えば船舶の空気潤滑システム)へ加圧ガスを送達する供給装置へと変化しうる。これは、例えば電気駆動モータにより駆動される空気コンプレッサを使うよりも、ずっと効率的である。更に、可能な最も高い掃気圧又は可能な最も高い排気圧を提供するように機関をチューニングすることにより、機関は、加圧ガスの外部消費機器(例えば船舶の空気潤滑システム)へ加圧ガスを送達する供給装置へと変化しうる。これは、例えば電気駆動モータにより駆動される空気コンプレッサを使うよりも、ずっと効率的である。
【0013】
前記第1の捉え方の第1の可能な実装形態において、前記コントローラは、検知した又は観察された掃気圧が掃気圧閾値未満であるか、検知した又は観察された排気温度が排気温度閾値より高い場合、前記消費機器へ供給されるバイパス加圧ガスの量を制限するように構成される。
【0014】
前記第1の捉え方の更なる実装形態の一例において、前記コントローラは、検知された若しくは観察された掃気圧、及び/又は、検知された若しくは観察された排気温度の関数として、実際の機関ターボ過給効率を決定するように構成される。こkで、「機関ターボ過給効率」との用語は、周囲条件に関わらず、機関により経験された又は感じられたターボ過給効率を表す。
【0015】
前記第1の捉え方の更なる実装形態の一例において、前記コントローラは、決定した実際の機関ターボ過給効率の関数として、前記消費機器に供給されるバイパス加圧ガスの量を制限するように構成される。
【0016】
前記第1の捉え方の更なる実装形態の一例において、前記コントローラは、既定の最小機関ターボ過給効率閾値と比較して、前記1つ又は複数のターボ過給機の、実際に利用可能な効率の超過分を決定するように構成される。
【0017】
前記第1の捉え方の更なる実装形態の一例において、前記コントローラは、前記決定した超過分の関数として、前記消費機器に供給されるバイパス加圧ガスの量を制限するように構成される。
【0018】
前記第1の捉え方の更なる実装形態の一例において、前記コントロールユニットは、前記加圧ガス消費機器による加圧ガスのニーズに応じて、加圧ガス消費機器へ供給されるバイパス加圧ガスの量を調節するように構成される。好ましくは加圧ガス消費機器からの信号に応じて、好ましくは閾値を超えない範囲で、調節するように構成される。
【0019】
前記第1の捉え方の更なる実装形態の一例において、前記1つ又は複数のターボ過給機は、少なくともある機関負荷範囲において、最低限必要な既定の機関ターボ過給効率を超えるターボ過給効率を有する。
【0020】
前記第1の捉え方の更なる実装形態の一例において、前記1つ又は複数のターボ過給機は、タービンフロー面積を調節することを可能とする可変ジオメトリタービンを有し、前記コントロールユニットは、前記タービンの可変ジオメトリを制御するために、前記1つ又は複数のターボ過給機に接続され、また前記コントロールユニットは、好ましくはタービンフロー面積を減らすことによって、前記機関の実際の動作条件の下で前記コンプレッサにより伝達される圧力を最大化するために、前記ジオメトリタービンのジオメトリを調節するように構成される。
【0021】
前記第1の捉え方の更なる実装形態の一例において、前記機関は2つ以上のターボ過給機を備え、前記コントロールユニットは、機関の部分負荷において前記コンプレッサにより伝達される圧力を最大化するために、前記2つ以上のターボ過給機のうちの1つ又は複数を切り離すように構成され、また前記コントロールユニットは、前記機関の負荷の関数として、前記2つ以上のターボ過給機のうちの1つ又は複数を切り離すように構成される。
【0022】
前記第1の捉え方の更なる実装形態の一例において、前記2つ以上のターボ過給機のうちの1つ又は複数の切り離しのための切替点は、機関負荷の60~80%の範囲に設けられ、前記コントローラは、機関負荷が当該切替点を下回った時に、前記2つ以上のターボ過給機のうちの1つ又は複数を切り離すように構成される。追加のターボ過給機も同様に追加されうる。
【0023】
前記第1の捉え方の更なる実装形態の一例において、前記コントローラは、前記吸気系から取り入れる掃気量を制御すべく、第1の電子制御弁に接続されて該電子制御弁を制御することができ、及び/又は、前記コントローラは、前記排気系から取り入れる排気量を制御すべく、第2の電子制御弁に接続されて該電子制御弁を制御することができる。
【0024】
前記第1の捉え方の更なる実装形態の一例において、機関の部分負荷は、前記機関の最大連続定格(maximum continuous rating)の20%から80%の範囲をカバーする。
【0025】
前記第1の捉え方の更なる実装形態の一例において、前記コントローラは、検知した掃気圧が掃気圧閾値未満である場合に、前記消費機器へ供給されるバイパス加圧ガスの量を減少させるように構成される。前記掃気圧閾値は、好ましくは周囲条件に従って調節される。
【0026】
前記第1の捉え方の更なる実装形態の一例において、前記コントローラは、検知された排気温度が排気温度閾値を超える場合に、前記消費機器へ供給されるバイパス加圧ガスの量を減少させるように構成される。前記排気温度閾値は、好ましくは周囲条件に従って調節される。
【0027】
前記第1の捉え方の更なる実装形態の一例において、機関の部分負荷は、前記機関の最大連続定格(Maximum Continuous Rating)の20%から800%の範囲をカバーする。
【0028】
前記第1の捉え方の更なる実装形態の一例において、前記機関は、前記吸気系内の掃気圧を検知するための圧力センサを、好ましくは前記掃気受けの内部又はすぐ上流に有し、及び/又は、前記排気系の排気温度を検知するための温度センサを、好ましくは前記排気受けの内部又はすぐ下流に有し、及び/又は、前記吸気系内の掃気圧を推定するためのオブザーバを、好ましくは前記掃気受けの内部又はすぐ上流に有し、及び/又は、前記排気系の温度を推定するためのオブザーバを、好ましくは前記排気受けの内部又はすぐ下流に有する。
【0029】
第2の捉え方によれば、大型ターボ過給式2ストロークユニフロー内燃機関を動作させる方法であって、加圧された掃気及び/又は加圧された排気を前記機関から加圧ガスの消費機器に供給するための方法が提供される。ここで前記機関は、
それぞれ下端部に掃気ポートを有すると共に上端部に排気弁を有する複数のシリンダと;
前記掃気ポートを通じて前記シリンダに接続される掃気受けを有し、自身を通じて前記シリンダに掃気が導入される吸気系と;
前記排気弁を通じて前記シリンダに接続される排気受けを有し、前記シリンダ内で生成した排気が自身を通じて排出される排気系と;
コンプレッサに協働するように組み合わされる排気駆動型のタービンと、前記タービンの入口であって前記排気系に接続される入口と、前記コンプレッサの出口であって、前記吸気系に加圧された掃気流を届けるために前記吸気系に接続される出口とを有する、1つ又は複数のターボ過給機と;
前記加圧ガスの消費機器にバイパスした加圧ガスを供給するバイパス系と;
を備える。そして前記方法は、
制御された量の掃気を吸気系からバイパスさせること又は制御された量の排気を排気系からバイパスさせることと;
次の1つ又は複数:
・ ターボ油圧系により提供されるターボ過給機の取り出し出力を増やすこと、
・ 前記機関の前記吸気系の補助ブロワの速度を増すこと、
・ 前記機関のEGR装置のEGRブロワの速度を増すこと、
・ 前記機関の追加の小さなターボ過給機をアクティブにすること、
・ 前記機関のシリンダバイパス装置のシリンダバイパス弁を開けること、
・ 専用の電気駆動式コンプレッサを駆動するための前記機関のパワータービン装置への排気バイパスを開けること、
・ 前記機関の油圧系により動力を受ける油圧駆動式コンプレッサをアクティブにすること、
・ 好ましくはタービンフロー面積を減らすことによって、前記機関の実際の動作条件の下で前記コンプレッサにより伝達される圧力を最大化するために、可変ジオメトリタービンのジオメトリを調節してタービンフロー面積を調節すること、
・ 好ましくは機関負荷の関数として、前記機関の部分負荷において前記コンプレッサにより伝達される圧力を最大化するために、前記1つ又は複数のターボ過給機の1つ又は複数を切り離すこと、
・ 第1の切り離しエンジン負荷閾値未満において1つのターボ過給機をアクティブにし、前記第1の切り離し機関負荷閾値と第2の切り離しエンジン負荷閾値の間では2つのターボ過給機をアクティブにし、前記第2の切り離し機関負荷閾値より高い機関負荷においては3つのターボ過給機をアクティブにすること、
により、掃気圧及び/又はバイパスされる掃気の質量流を最大化することと;
を含む。
【0030】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、
前記吸気系内の掃気圧、好ましくは前記掃気受けの内部又はすぐ上流の圧力を検知すること、及び/又は、前記排気系の排気温度を、好ましくは前記排気受けの内部又はすぐ下流で検知することと;
前記消費機器に供給される、バイパスされる加圧ガスの量を、検知した掃気圧及び/又は排気温度の関数として調節することと;
を含む。
【0031】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、
前記吸気系内の掃気圧、好ましくは前記掃気受けの内部又はすぐ上流の圧力を推定すること、及び/又は、前記排気系の排気温度を、好ましくは前記排気受けの内部又はすぐ下流で推定することと;
前記消費機器に供給される、バイパスされる加圧ガスの量を、検知した掃気圧及び/又は排気温度の関数として調節することと;
を含む。
【0032】
本発明の上述の態様及び他の態様は、以下に説明される実施形態により更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
以下、図面に示される例示的な実施形態を参照しつつ、本願発明をより詳細に説明する。
【
図1】ある例示的実施形態に従う大型2ストローク内燃機関を正面方向から見た概観を示す図である。
【
図2】
図1の大型2ストローク内燃機関を側面方向から見た概観を示す図である。
【
図3】
図1の大型2ストローク内燃機関の略図表現である。
【
図4】ターボカットが実装された複数のターボ過給機を備える2ストローク内燃機関の実施形態の略図表現である。
【
図5】可変ジオメトリターボ過給機を備える2ストローク内燃機関の実施形態の略図表現である。
【詳細説明】
【0034】
図1-
図3は、ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関100を描いている。このエンジンは、クランクシャフト8及びクロスヘッド9を有する。
図3は、ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関を、その吸気システム及び排気システムと共に略図により表現したものである。この実施形態100において、機関は直列に6本のシリンダ1を有する。ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関は通常、直列に配される4から14のシリンダを有する。これらのシリンダはシリンダフレーム23に担持される。シリンダフレーム23はエンジンフレーム11に担持される。機関100は、例えば、船舶の主機関や、発電所において発電機を動かすための固定型のエンジンとして用いられることができる。機関100の全出力は、例えば、1000kWから110000kWでありうる。
【0035】
この実施形態における機関100は、2ストロークユニフロー式圧縮着火型機関であり、各シリンダライナ1には、その下部領域に掃気ポート18が設けられ、その頂部中央には排気弁が配される。しかし、機関100は必ずしも圧縮着火式である必要はなく、実施形態によっては火花点火式であってもよい。ここで紹介する実施形態において、機関100の圧縮圧力は圧縮着火を行うために十分高い。しかし機関100は、それより低い圧縮圧力で動作し、火花又は同様の手段で点火されてもよい。
【0036】
機関100の吸気系は掃気受け2を備える。掃気は、掃気受け2を通じて、各シリンダ1の掃気ポート18へと導かれる。ピストン10は、シリンダライナ1中で下死点(BDC)と上死点(TDC)の間を往復し、掃気を圧縮する。燃料は、シリンダカバー22に配される燃料弁50から噴射される。燃料の噴射に続いて燃焼が生じ、排気が生成される。
【0037】
排気弁4はシリンダカバー22の中央部に配置される。中央部の排気弁の周囲には、複数の燃料弁55が配される。排気弁4は、コントローラ50によって制御される電気油圧式排気弁作動システム(図示されていない)によって作動する。燃料弁55は燃料供給システムの一部である。コントローラ50はまた、燃料弁55の動作を制御するように構成される。
【0038】
排気弁4が開くと、排気は、シリンダ1に設けられる排気ダクトを備える排気系を通って排気受け3へと流れ、さらに第1の排気管19を通ってターボ過給機5のタービン8へと進む。そこから排気は、第2の排気管25を通ってエコノマイザ20へ流れ、さらに出口21から大気中へと放出される。なお実施形態によっては、機関100は複数のターボ過給機5を備える。
【0039】
タービン8は、シャフトを介してコンプレッサ7を駆動する。コンプレッサ9には、空気取り入れ口12を通じて外気が供給される。コンプレッサ7は、圧縮された掃気を、掃気受け2に繋がっている掃気管13へと送り込む。掃気管13の掃気は、掃気を冷却するためのインタークーラー14を通過する。
【0040】
冷却された掃気は、電気モータ17により駆動される補助ブロワ16を通る。補助ブロワ16は、ターボ過給器5のコンプレッサ7が掃気受け2のために十分な圧力を提供できない場合、すなわち機関100が低負荷又は部分負荷である場合に、掃気流を圧縮する。機関の負荷が高い場合は、ターボ過給器のコンプレッサ7が、十分に圧縮された掃気を供給することができるので、補助ブロワ16は停止され、逆止め弁15によってバイパスされる。
【0041】
図4,5の実施形態を参照すると、大型船舶用機関100(すなわち大型ターボ過給式2ストロークユニフロー式内燃機関100)は、掃気及び/又は排気を、加圧ガス消費機器200に供給するように構成される。この実施形態において、既に説明した又は図示した構成や特徴と同様の構成及び特徴については、前と同じ符号を付している。加圧ガス消費機器200は、例えば、大型船舶用機関100が搭載された船舶の空気潤滑システムであって、航行中の船舶の抵抗を低減するための空気潤滑システムであることができる。
【0042】
掃気は吸気系を通じてシリンダ1に導入される。吸気系は、掃気ポート18を介してシリンダ1に接続される掃気受け2を備える。
【0043】
シリンダで生成された排気は排気系を通じて排気される。排気系は、排気弁4を介してシリンダ1に接続される排気受け3を備える。
【0044】
バイパス系は、分岐した加圧ガスを、加圧ガス消費機器200に供給する。これは、制御された量の掃気を吸気系から取り出すこと(すなわち機関100をバイパスさせること)によって、行われる。このため、コンプレッサ7の出口の下流(例えば図示されるように掃気受け2)の位置において、第1バイパス管43が吸気系に接続されている。本実施形態において、第1バイパス管43は第1バイパス制御弁41を備えると共に、加圧ガス消費機器200に接続している。実施形態によっては、第1バイパス管43は第1バイパスブロワ(コンプレッサ)47を備える。機関100によって供給される加圧ガスの量が、第1バイパスブロワ47の助けなしでは加圧ガス消費機器200の需要を満たすに十分でない場合、第1バイパスブロワ47がアクティブにされる。好ましくは、第1バイパス制御弁41及び第1バイパスブロワ47の一方又は両方が、コントローラ50によって制御される。バイパス管は、第1バイパスブロワ47の助けが不要な場合に第1バイパスブロワ47をバイパスすることを可能とする第1逆止弁45を備える。吸気系には、コンプレッサ7の下流における吸気系の圧力を検知するための圧力センサ34が設けられる。圧力センサ34からの信号は、例えば信号線によってコントローラ50に通信される。圧力センサ34は、掃気受け2内又は掃気受け2のすぐ上流に配されてもよい。実施形態によっては、コントローラ50の一部でありうる(図示されない)オブザーバが、吸気系内の圧力(例えば掃気受け内の圧力)を推定し、コントローラ50は、使用する圧力を決定するために、推定した圧力を用いてもよい。
【0045】
実施形態によっては、バイパス系は、排気系から制御された量の加圧排気を取り出し、タービンをバイパスさせる。この構成は、前述の実施形態と組み合わせて実施しうる。このため、タービン8の入口の上流(例えば図示されるように排気受け3)の位置において、第2バイパス管49が排気系に接続されている。本実施形態において、第2バイパス管49は第2バイパス制御弁42を備えると共に、加圧ガス消費機器200に接続している。実施形態によっては、第2バイパス管49は第2バイパスブロワ(コンプレッサ)46を備える。機関100によって供給される加圧ガスの量が、第2バイパスブロワ46の助けなしでは加圧ガス消費機器200の需要を満たすに十分でない場合、第2バイパスブロワ46がアクティブにされる。バイパス管は、第2バイパスブロワ46の助けが不要な場合に第2バイパスブロワ46をバイパスすることを可能とする第2逆止弁44を備える。好ましくは、第2バイパス制御弁42及び第2バイパスブロワ46の一方又は両方が、コントローラ50によって制御される。排気系には、タービン8の上流における排気系の温度を検知するための温度センサ33が設けられる。温度センサ33からの信号は、例えば信号線によってコントローラ50に通信される。温度センサ33は、排気受け3内の温度か、排気受け3のすぐ下流の温度を検知するように配されてもよい。実施形態によっては、コントローラ50の一部でありうる(図示されない)オブザーバが、排気系内の温度を推定し、コントローラ50は、使用する排気温度を決定するために、推定した温度を用いてもよい。
【0046】
コントローラ50は、ターボ過給系5の1つ又は複数のタービン7により供給される掃気圧を最大化するために、監視された調整値を適用するように構成される。
【0047】
コントローラ50は、消費機器200に供給するためにバイパスされる加圧ガスの量を、センサにより検知した又はオブザーバにより推定された掃気圧及び/又は排気温度の関数として調整するように構成される。特に、上記調整値が適用されて、掃気圧が閾値未満に低下したり排気温度が閾値を超えたりするような場合に、バイパスされる加圧ガスの量を制限するために、上記の調整を行うように構成される。
【0048】
従ってコントローラ50は、検知した掃気圧が掃気圧閾値未満であるか、検知した排気温度が排気温度閾値より高い場合、加圧ガス消費機器200へ供給されるバイパス加圧ガスの量を制限するように構成される。
【0049】
実施形態によっては、コントローラ50は、機関ターボ過給実効率を、検知した掃気圧及び/又は検知した排気温度の関数として決定し、加圧ガス消費機器200へ供給されるバイパス加圧ガスの量を、決定した機関ターボ過給実効率の関数として制限するように構成される。コントローラ50は好ましくは、決定した機関ターボ過給実効率が、機関ターボ過給実効率閾値より低い場合に、加圧ガス消費機器200へ供給されるバイパス加圧ガスの量を制限するように構成される。
【0050】
コントローラ50は好ましくは、1つ又は複数のターボ過給機5について、既定の最小機関ターボ過給効率閾値と比較した、実際に利用可能な効率の超過分を決定し、決定した超過分の関数として、加圧ガス消費機器200へ供給されるバイパス加圧ガスの量を制限するように構成される。
【0051】
実施形態によっては、コントローラ50は、加圧ガス消費機器200による加圧ガスのニーズに応じて、加圧ガス消費機器200へ供給されるバイパス加圧ガスの量を調節するように構成される。好ましくは、加圧ガス消費機器200からの信号に応じて、上記決定した超過分を超えない範囲で、調節するように構成される。
【0052】
好ましくは、1つ又は複数のターボ過給機5は、少なくともある機関負荷範囲において、最低限必要な既定の機関ターボ過給効率を超えるターボ過給効率を有する。
【0053】
図5に描かれる実施例において、1つ又は複数のターボ過給機5は、タービンフロー面積の調節を可能とする、可変ジオメトリタービン8を有する。コントローラ50は1つ又は複数のターボ過給機5に接続され、可変ジオメトリタービン8を制御する。制御ユニット50はまた、(コントローラ50によって検知された)機関100の実際の動作条件の下で、(好ましくはタービンフロー面積を減少させることにより)コンプレッサ7により伝達される圧力を最大化すべく、可変ジオメトリタービン8を制御するように構成される。
【0054】
図4の実施例において、機関100は2つ以上のターボ過給機5を備える。そしてコントローラ50は、機関100の部分負荷条件においてコンプレッサ7により伝達される圧力を最大化すべく、これら2つ以上のターボ過給機5の1つ又は複数を切り離すように構成される。制御ユニット50は好ましくは、機関負荷の関数として1つ又は複数のターボ過給機5を切り離すように構成される。
【0055】
前記2つ以上のターボ過給機5のうちの1つ又は複数の切り離しのための切替点は、機関負荷の60~80%の範囲に設けられる。コントローラ50は、機関負荷が当該切替点を下回った時に、前記2つ以上のターボ過給機5のうちの1つ又は複数を切り離すように構成される。ターボ過給機切り離しのための切替点は、ターボ過給機5の装備やフレームサイズの違いによって最適化されうる(高い機関負荷の方へシフトされうる)。
【0056】
図示されない実施例において、機関100は2つより多いターボ過給機5を備え、コントローラ50は、第1の切り離しエンジン負荷閾値未満において1つのターボ過給機5をアクティブにするように構成される。これは、低機関負荷において、適切なフロー面積を有する1つのターボ過給機5のみが動作するようにするためである。またコントローラ50は、第1の切り離し機関負荷閾値と第2の切り離しエンジン負荷閾値の間では、2つのターボ過給機5をアクティブにするように構成される。これは、これら2つのターボ過給機5のフロー面積の組み合わせが、中機関負荷において適切であるからである。更にコントローラ50は、第2の切り離し機関負荷閾値より高い機関負荷においては、3つのターボ過給機5をアクティブにするように構成される。これは、アクティブにされたターボ過給機5のフロー面積の組み合わせが、動作条件に適合するからである。アクティブ化シーケンスは、ターボ過給機5のフロー面積によって最適化されることができ、ターボ過給機5の数も3つに限定されず、4つや5つ以上であってもよい。機関の動作は、特定のシーケンスによってターボ過給機5のオンオフを切り替えることにより最適化することができる。負荷に応じて1つのみのターボ過給機5を動作させたり、最も適切なフロー面積となる複数のターボ過給機5の組み合わせを動作させたりすることにより、最適化することができる。例えば負荷が上昇しているとき、複数のターボ過給機5は、全フロー面積を増やすために段階的に個別にオンにされる。機関の最大負荷に近づくと、全てのターボ過給機5がアクティブにされる。
【0057】
コントローラ50は、吸気系から取り入れる掃気量を制御すべく、第1の電子制御弁41に接続されて該電子制御弁41を制御しうる。及び/又は、コントローラ50は、排気系から取り入れる排気量を制御すべく、第2の電子制御弁42に接続されて該電子制御弁42を制御しうる。
【0058】
実施形態によっては、コントローラ50は、検知した掃気圧が掃気圧閾値未満である場合に、消費機器200へ供給されるバイパス加圧ガスの量を減少させるように構成される。掃気圧閾値は、好ましくは周囲条件に応じて調節される。最も低い閾値は北極域という条件で適用され、最も高い閾値は熱帯という条件で適用される。実施形態によっては、掃気圧閾値の適切なレベルと掃気圧閾値の調節は、機関100のテスト又はシミュレーションに基づく。
【0059】
実施形態によっては、コントローラ50は、検知された排気温度が排気温度閾値を超える場合に、消費機器200へ供給されるバイパス加圧ガスの量を減少させるように構成される。排気温度閾値は、好ましくは周囲条件に応じて調節される。最も低い排気温度閾値は北極域という条件で適用され、最も高い排気温度閾値は熱帯という条件で適用される。実施形態によっては、排気温度閾値の適切なレベルと排気温度閾値の調節は、機関100のテスト又はシミュレーションに基づく。
【0060】
図5に描かれる実施例において、機関100は、タービンフロー面積の調節を可能とする可変ジオメトリタービン8を有するターボ過給機5を備える。コントローラ50は、コンプレッサ7により伝達される圧力を最大化するためにタービンフロー面積を調節するように構成される。これは好ましくは、機関100の部分負荷条件においてコンプレッサ7により伝達される圧力を最大化するために、全てのターボ過給機5のタービンフロー面積を減少させることにより行われる。この実施例において、機関100にはオプションの排気再循環(EGR)システムが設けられる。EGRシステムはEGRユニット60と、EGRブロワ29と、EGR弁32とを有する。EGRブロワ29及びEGR弁32は、コントローラ50の命令により電子的に制御される。EGRユニット60は、再循環された排気を処理するための要素、例えばEGRクーラー62やEGRスクラバー、ウォーターミスとキャッチャー63を備える。
【0061】
実施例によっては、コントローラ50は、掃気圧を最大化するような方式で、及び/又は、バイパスされる掃気の質量流を最大化するような方式で、機関100を制御するように構成される。これは、1つ又は複数のターボ過給機5において、ターボ油圧系(Turbo Hydraulic System,THS)装置のパワーテイクイン(PTI)機能を制御することにより行われる。
【0062】
実施例によっては、コントローラ50は、通常より高い負荷において圧力を追加すべく補助ブロワ装置16を制御することにより、掃気圧及び/又はバイパスされる掃気の質量流を最大化する方式で、機関100を制御するように構成される。
【0063】
実施例によっては、コントローラ50は、2ステージターボ過給機の高いターボ過給効率を用いて、掃気圧及び/又はバイパスされる掃気の質量流を最大化する方式で、機関100を制御するように構成される。
【0064】
実施例によっては、コントローラ50は、加圧のためにシリンダバイパス弁装置を制御することにより掃気圧を最大化する方式で、機関100を制御するように構成される。
【0065】
実施例によっては、コントローラ50は、ティア2(Tier2)モードにおける追加の加圧のために、ティア3(Tier3)EGR機関100のEGR装置のEGRブロワ29の機能を制御することにより排気バイパス圧を最大化する方式で、機関100を制御するように構成される。
【0066】
実施例によっては、コントローラ50は、追加の外気又はバイパスされた掃気を加圧するための追加の小さなターボ過給機を制御することにより、伝達されるガス圧力を最大化する方式で、機関100を制御するように構成される。
【0067】
実施例によっては、コントローラ50は、専用の追加の電気コンプレッサを駆動するためのパワータービン装置へバイパスされる排気を制御することにより、伝達されるガス圧力を最大化する方式で、機関100を制御するように構成される。
【0068】
実施例によっては、コントローラ50は、機関の油圧系装置により動作する油圧式コンプレッサを制御することにより、伝達されるガス圧力及び/又は質量流を最大化する方式で、機関100を制御するように構成される。
【0069】
機関100は、制御された量の掃気を吸気系からバイパスさせること又は制御された量の排気を排気系からバイパスさせることを含む方法に従って動作される。吸気系内の掃気圧及び/又は排気系内の排気温度が検知される。消費機器200に供給される、バイパスされる加圧ガスの量は、検知した掃気圧及び/又は排気温度の関数として調節される。
【0070】
上に紹介した、実施形態の機関の性能を最適化するための様々な手法は、組み合わせることが可能である。例えば、逐次的なターボ過給(ターボ過給のオンオフ)を、1つ又は複数の可変ジオメトリタービンのタービンフロー面積の調節と組み合わせることができる。
【0071】
いくつかの実施形態と共に方法及び機関を説明してきた。しかし、本願の明細書や図面、特許請求の範囲を検討すれば、当業者は、特許請求の範囲に記載される発明を実施するにおいて、説明された実施形態に加えて多くのバリエーションが存在することを理解し、また具現化することができるであろう。特許請求の範囲に記載される「備える」「有する」「含む」との語句は、記載されていない要素やステップが存在することを排除しない。特許請求の範囲において記載される要素の数が複数であると明示されていなくとも、当該要素が複数存在することを除外しない。特許請求の範囲に記載されるいくつかの要素の機能は、単一のコントローラやその他のユニットによって遂行されてもよい。いくつかの事項が別々の従属請求項に記載されていても、これらを組み合わせて実施することを排除するものではなく、組み合わせて実施して利益を得ることができる。特許請求の範囲で使用されている符号は発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。