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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125392
(43)【公開日】2024-09-18
(54)【発明の名称】竿体及び竿体を有する釣竿
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
A01K87/00 630A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024104967
(22)【出願日】2024-06-28
(62)【分割の表示】P 2020212837の分割
【原出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 哲男
(57)【要約】      (修正有)
【課題】竿を振った際のブレがより短時間で収束する、振動減衰特性に優れた竿体及びこれを有する釣竿を提供する。
【解決手段】繊維方向が0度の強化繊維を有するシートで形成される第1の層と、第1の層の外側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第2の層と、第1の層の内側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第3の層と、を備える釣竿。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維方向が0度の強化繊維を有するシートで形成される第1の層と、該第1の層の外側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第2の層と、該第1の層の内側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第3の層と、を備えることを特徴とする、釣竿。
【請求項2】
前記第1の層は、CGシート、CCシート又はUDシートで形成される、請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記第2の層は、CGシート、CCシート又はUDシートで形成される、請求項1又は2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記第3の層は、CGシート、CCシート又はUDシートで形成される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項5】
前記第2の層又は前記第3の層の少なくともいずれかは、強化繊維が+45度の繊維方向を有するシートと、強化繊維が-45度の繊維方向を有するシートと、を含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項6】
前記第1の層は、前記シートを複数プライ数巻回して形成される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項7】
前記第1の層と前記第2の層との間又は前記第1の層と前記第3の層との間の少なくともいずれかには、ガラスの層又はスクリムの層が形成される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項8】
前記第2の層の外側又は前記第3の層の内側の少なくともいずれかには、ガラスの層又はスクリムの層が形成される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項9】
繊維方向が0度の強化繊維を有するシートで形成される第1の層と、該第1の層の外側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第2の層と、該第1の層の内側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第3の層と、を備えることを特徴とする、竿体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竿体及び竿体を有する釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、強化繊維に合成樹脂を含侵したプリプレグを巻き回して製作される様々な竿体及びこれを備えた釣竿が知られている。
【0003】
このような竿体を備えた釣竿は、例えば、特許文献1に、管状体の全部または一部が、強化用長繊維から成る平面状繊維集合体と熱可塑性重合体繊維とから構成される複合シートであって、該熱可塑性重合体繊維が該平面状繊維集合体を構成する強化用長繊維間に入り込んで交絡一体化している複合シートを、溶融成形してなることを特徴とする管状体が開示されている。
【0004】
また、特許文献1の管状体は、用いる複合シートが柔軟でドレープ性に富みかつ強化用長繊維への樹脂の含浸性が良好であるため、耐衝撃性や振動減衰性等の長繊維強化熱可塑性樹脂製管状体の一般的特徴のほかに、ボイドがなくVfの分布が均一で、かつ物性の変
動が小さいとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-318609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、長繊維強化熱可塑性樹脂製管状体の振動減衰特性が一般的特徴として挙げられているものの、依然として十分な振動減衰特性を備えているとはいえないという問題があった。
【0007】
本発明の目的の一つは、竿を振った際のブレがより短時間で収束する、振動減衰特性に優れた竿体及びこれを有する釣竿を提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る釣竿は、繊維方向が0度の強化繊維を有するシートで形成される第1の層と、該第1の層の外側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第2の層と、該第1の層の内側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第3の層と、を備えるように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る釣竿において、前記第1の層は、CGシート、CCシート又はUDシートで形成される。
【0010】
本発明の一実施形態に係る釣竿において、前記第2の層は、CGシート、CCシート又はUDシートで形成される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る釣竿において、前記第3の層は、CGシート、CCシート又はUDシートで形成される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る釣竿において、前記第2の層又は前記第3の層の少なくともいずれかは、強化繊維が+45度の繊維方向を有するシートと、強化繊維が-45度の繊維方向を有するシートと、を含むように構成される。
【0013】
本発明の一実施形態に係る釣竿において、前記第1の層は、前記シートを複数プライ数巻回して形成される。
【0014】
本発明の一実施形態に係る釣竿において、前記第1の層と前記第2の層との間又は前記第1の層と前記第3の層との間の少なくともいずれかには、ガラスの層又はスクリムの層が形成される。
【0015】
本発明の一実施形態に係る釣竿において、前記第2の層の外側又は前記第3の層の内側の少なくともいずれかには、ガラスの層又はスクリムの層が形成される。
【0016】
本発明の一実施形態に係る竿体は、繊維方向が0度の強化繊維を有するシートで形成される第1の層と、該第1の層の外側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第2の層と、該第1の層の内側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第3の層と、を備えるように構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の上記各実施形態によれば、竿を振った際のブレがより短時間で収束する、振動減衰特性に優れた竿体及びこれを有する釣竿を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る釣竿を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る釣竿をその中心軸に垂直な面で切断した断面を模式的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る釣竿(竿体)の各層の説明をする図である。
図4】本発明の一実施形態に係る釣竿(竿体)の各層の説明をする図である。
図5】本発明の一実施形態に係る釣竿(竿体)の各層の説明をする図である。
図6】本発明の一実施形態に係る釣竿(竿体)におけるバイアスシートの形成方法を説明する図である。
図7】本発明の一実施形態に係る釣竿(竿体)におけるバイアスシートの形成方法を説明する図である。
図8】本発明の一実施形態に係る竿体(釣竿)の振動減衰性能の試験方法を説明する図である。
図9】本発明の一実施形態に係る竿体(釣竿)とは異なる竿体(釣竿)の振動減衰性能の試験結果を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る竿体(釣竿)とその他の竿体(釣竿)の振動減衰性能の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る釣竿の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0020】
図1は、本発明に係る釣竿の一実施形態を示す図である。図示のように、本発明の一実施形態による釣竿1は、竿体2と、竿体2にリールシート9を介して取り付けられたリールRと、竿体2に取り付けられた釣糸ガイド10と、を備える。図示の実施形態においては、リールシート9及び釣糸ガイド10の各々が、竿体の外周面に取り付けられる取付部品に該当する。
【0021】
竿体2は、例えば、元竿3、中竿5、及び穂先竿7等を連結することによって構成されている。これらの各竿体は、例えば、並継ぎ式に継合される。元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、振出方式、逆並継方式、インロー方式、又はこれら以外の公知の任意の継合方式により継合され得る。竿体2は、単一の竿体から構成されていても良い。
【0022】
元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、例えば、繊維強化樹脂製の管状体で構成されている。この繊維強化樹脂製の管状体は、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂プリプレグ(プリプレグシート)を芯金に巻回し、このプリプレグシートを加熱して硬化させることにより作成される。このプリプレグシートに含まれる強化繊維として、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、及びこれら以外の任意の公知の強化繊維を用いることができる。当該プリプレグシートに含まれるマトリクス樹脂として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、及びPET等の熱可塑性樹脂を用いることができる。その他、熱硬化性樹脂として、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂及びウレタン樹脂を用いることができる。プリプレグシートが硬化された後には、芯金が脱芯される。また、管状体の外表面は、適宜研磨される。各竿体は、中実状に構成されてもよい。
【0023】
図示の実施形態において、元竿3、中竿5及び穂先竿7には、リールシート9に装着されるリールRから繰り出される釣糸を案内する複数の釣糸ガイド10(釣糸ガイド10A~10D)が設けられている。より具体的には、元竿3には釣糸ガイド10Aが設けられ、中竿5には釣糸ガイド10Bが設けられ、穂先竿7には釣糸ガイド10Cが設けられている。穂先竿7の先端には、トップガイド10Dが設けられている。なお、釣竿の種類によっては、リールシート、釣糸ガイドがない場合も考えられるが、図示の例ではこれらを有するものとして説明しています。
【0024】
次に、図2を参照して、本発明に係る竿体及びこれを備えた釣竿の一実施形態を説明する。同図は、図1の釣竿をその中心軸に垂直な面で切断した断面を模式的に示す断面図である。
【0025】
本発明の一実施形態に係る釣竿1は、繊維方向が0度(釣竿1の軸方向)の強化繊維を有するシートで形成される第1の層4と、該第1の層4の外側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第2の層6と、該第1の層4の内側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第3の層8と、を備えるように構成される。ここで、繊維方向が±45度という場合、必ずしも数学的に厳密な意味で用いているものではなく、一定の誤差(±5度)の範囲も含まれる(以下同様)。その他の角度についても同様である。
【0026】
本発明の一実施形態に係る釣竿1によれば、竿を振った際のブレがより短時間で収束する、振動減衰特性に優れた竿体及びこれを有する釣竿を提供することが可能となる。
【0027】
本発明の一実施形態に係る釣竿1において、当該第1の層4は、CGシート、CCシート又はUDシートで形成される。ここで、UD(UNI DIRECT)シートとは、繊維の方向が一方向に引き揃えられたシートを指す。また、CGシートとは、炭素(カーボン)繊維を用いたUDシートにおいて、ガラスクロスを貼り合わせたものを指す。また、CCシートとは、繊維方向を通常90度程度異なる2つ以上の炭素(カーボン)繊維を用いたUDシートを貼り合わせたものを指す。以下同様とする。
【0028】
本発明の一実施形態に係る釣竿1において、当該第2の層6は、CGシート、CCシート又はUDシートで形成される。
【0029】
本発明の一実施形態に係る釣竿1において、当該第3の層8は、CGシート、CCシート又はUDシートで形成される。
【0030】
本発明の一実施形態に係る釣竿1において、当該第2の層6又は当該第3の層8の少なくともいずれかは、強化繊維が+45度の繊維方向を有するシートと、強化繊維が-45度の繊維方向を有するシートと、を含むように構成される。このようにして、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートを形成することができる。
【0031】
本発明の一実施形態に係る釣竿1において、当該第1の層4は、当該シートを複数プライ数巻回して形成される。例えば、当該シートとしてUDシートを用いる場合、これを複数プライ数分巻回すことで第1の層4を形成するようにすることができる。UDシートに代えて、CGシート又はCCシートを用いてもよい。または、これらのシートを組み合わせて、巻き回すようにしてもよい。その他、スクリム(ガラスの薄い織布)を有するCGシートを複数プライ数分巻回すようにして第1の層4を形成してもよい。また、UDシートに補強部等をさらに設けるようにしてもよい。第1の層4はその他様々な方法により形成可能である。
【0032】
本発明の一実施形態に係る釣竿1において、当該第1の層4と当該第2の層6との間又は当該第1の層4と当該第3の層8との間の少なくともいずれかには、ガラスの層又はスクリムの層が形成される。例えば、補強層として、シート状プリプレグ又は織布で形成することができる。また、補強層として、上記層の間の一部に設けるようにしてもよい。補強層の繊維方向が軸方向の場合は、弾性力を補強することに繋がり、また繊維方向が周方向の場合は、潰れを補強することに繋がる。
【0033】
本発明の一実施形態に係る釣竿において、当該第2の層6の外側又は当該第3の層の内側の少なくともいずれかには、ガラスの層又はスクリムの層が形成される。例えば、補強層として、シート状プリプレグ又は織布で形成することができる。これにより、部分的な強度や剛性の補強が可能となる。また、成形方法によっては、第1の層4の一部が、当該第2の層6の外側又は当該第3の層の内側に形成される場合も考えられる。
【0034】
本発明の一実施形態に係る竿体2は、繊維方向が0度の強化繊維を有するシートで形成される第1の層4と、該第1の層4の外側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第2の層6と、該第1の層4の内側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第3の層8と、を備えるように構成される。ここで、第1の層4の外側の少なくとも一部とは、第1の層4の外側の必要な箇所にのみ設けることができることを指し、特定の箇所に限定されるものではない。また、第1の層4の内側の少なくとも一部についても同様である。
【0035】
次に、図3、4、5を参照して、本発明に係る竿体及びこれを備えた釣竿の一実施形態における各層を説明する。
【0036】
図3では、釣竿の軸方向で同じ長さを有する各シート(中間層用シート14、内層用シート18、外層用シート16)を第1の層4、第2の層6及び第3の層8として形成する。これにより、管状体の形成が可能となる。
【0037】
次に、図4では、釣竿の軸方向で同じ長さを有するシート(中間層用シート14、外層用シート16)と、これらのシートよりも短いシート(内層用シート18)を、第1の層4、第2の層6及び第3の層8として形成する。これにより、管状体の形成が可能となる。
【0038】
次に、図5では、釣竿の軸方向で同じ長さを有するシート(中間層用シート14、内層用シート18)と、これらのシートよりも短いシート(外層用シート16)を、第1の層4、第2の層6及び第3の層8として形成する。これにより、管状体の形成が可能となる。
【0039】
次に、本発明の一実施形態に係る竿体2の製造方法についてより詳細に説明する。
【0040】
まず、筒状部材(マンドレル)を準備する。次に、内層(第3の層)8を形成するバイアスUDシートを1又は複数プライ分準備し、筒状部材(マンドレル)に該UDシート1を巻付ける。
【0041】
次に、当該内層8の外側に中間層(第1の層)4を形成するUDシートを1又は複数プライ分準備し、当該内層8に該UDシートを巻付ける。
【0042】
さらに、外層(第2の層)6を形成するバイアスUDシートを1又は複数プライ分準備し、当該中間層4に該UDシートを巻付ける。
【0043】
その後、筒状部材(マンドレル)を取り外すことで、本発明の一実施形態に係る竿体2を得ることができる。ここで、上記各工程における温度や圧力等の処理条件は、従来公知の成形方法と同様に設定することができ、詳細は省略する。
【0044】
次に、図6、7を参照して、上述のバイアスシート(例えば、バイアスUDシート)の形成方法について説明する。まず、図6に示すように、+45度の繊維方向を有するシート21を形成し、また、-45度の繊維方向を有するシート22を形成し、これらを貼り合わせるシート20を形成することができる。このようにして、当該シート20を、上述のバイアスシートとして使用することができる。
【0045】
また、図7に示すように、例えば、繊維方向が0度のUDシート23を形成し、また、繊維方向が90度のUDシート24を形成し、これらを貼り合わせシート25を形成する。次に、当該シート25を45度回転させて、バイアスシートとして形成したい寸法に合わせて、シート26の切り出しを行う。このようにして、当該シート26を上述のバイアスシートとして使用することができる。
【0046】
次に、本発明の一実施形態に係る竿体2(釣竿1)の振動減衰性能の試験結果について、図8、9、10を用いて説明する。
【0047】
まず、図8を参照して、竿体2(釣竿1)の振動減衰の測定方法について説明する。図示のように、竿体2(釣竿1)の竿先にマーカー30を取り付け、その動きをモーションキャプチャで計測可能とする。そして、竿体2(釣竿1)を任意の角度(図示の例は15度)にて機器31に固定する。試験の際は、任意の角度の状態から水平状態(0度の状態)まで回転させる(振り下ろす)。当該水平状態になったら回転を止め、竿体2(釣竿1)の振動状態を計測する。その後、計測データを振動解析ソフトにて解析し、本発明の一実施形態に係る竿体2(釣竿1)の振動減衰状態を抽出し、その他の竿体(釣竿)との比較を行った。
【0048】
次に、図9を参照して、竿体2(釣竿1)の振動減衰性能の試験結果について説明する。A-1は、バイアスシートを設けず、中間層(第1の層)のみの竿体(釣竿)の場合を示し、A-2は、中間層(第1の層)と、その外側にバイアスシートによる外層を形成した竿体(釣竿)の場合を示す。図9aの横軸は時間(ms)を、縦軸は上述したマーカー30取り付けた竿先の変位(mm)を示す。また、図9bの横軸は周波数(Hz)を、縦軸は振幅(mm)を示す。
【0049】
図9に示すように、A-1の竿体(釣竿)と比較して、A-2の竿体(釣竿)は、変位が小さく、振幅も88%程度と振動減衰性能がより優れていることが判明した。
【0050】
次に、図10を参照して、本発明の一実施形態に係る竿体2(釣竿1)の振動減衰性能の試験結果について説明する。B-1は、中間層(第1の層)と、その内側にバイアスシートによる内層を形成した竿体(釣竿)の場合を示し、B-2は、本発明の一実施形態に係る竿体2(釣竿1)、すなわち、中間層(第1の層)と、その外側及び内側にバイアスシートによる外層及び内層を形成した竿体(釣竿)の場合を示す。同様に、図10aの横軸は時間(ms)を、縦軸は上述したマーカー30取り付けた竿先の変位(mm)を示す。また、図10bの横軸は周波数(Hz)を、縦軸は振幅(mm)を示す。
【0051】
図10に示すように、B-1の竿体(釣竿)と比較して、B-2の竿体(釣竿)は、1.2(s)程度で変位が21mm程度に急速に縮小し、変位幅も43%程度となった。また、振幅も37%程度となり、これらのことから、B-1の竿体(釣竿)と比較して、B-2の竿体(釣竿)は、振動減衰性能が極めて優れていることが判明した。
【0052】
このように、中間層(第1の層)と、その外側及び内側にバイアスシートによる外層及び内層を形成した竿体(釣竿)では、バイアスシートによるサンドイッチ構造とすることで、ねじり剛性が向上し、振動減衰を妨げる回転力が抑えられるために、振動減衰性能が向上するものと考えられる。
【0053】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 釣竿
2 竿体
3 元竿
4 第1の層
5 中竿
6 第2の層
7 穂先竿
8 第3の層
9 リールシート
10 釣糸ガイド
14 中間層用シート
16 外層用シート
18 内層用シート
20 シート
21 +45度の繊維方向を有するシート
22 -45度の繊維方向を有するシート
23 繊維方向が0度のUDシート
24 繊維方向が90度のUDシート
25 シート
26 シート
30 マーカー
31 機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維方向が0度の強化繊維を有するシートで形成される第1の層と、該第1の層の外側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第2の層と、該第1の層の内側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第3の層と、を備え、
前記第1の層は、前記繊維方向が0度の強化繊維を有するシートを複数プライ数巻回して形成され、前記第2の層は、前記繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートを1又は複数プライ数巻回して形成され、前記第3の層は、前記繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートを1又は複数プライ数巻回して形成されていることを特徴とする、釣竿。
【請求項2】
前記第1の層の前記複数プライ数は、前記第2の層の前記1又は複数プライ数又は前記第3の層の前記1又は複数プライ数よりも大きい、請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記第1の層は、CGシート、CCシートUDシート又はこれらの2つ以上の組み合わせで形成される、請求項1又は2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記第2の層は、CGシート、CCシートUDシート又はこれらの2つ以上の組み合わせで形成される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項5】
前記第3の層は、CGシート、CCシートUDシート又はこれらの2つ以上の組み合わせで形成される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項6】
前記第2の層又は前記第3の層の少なくともいずれかは、強化繊維が+45度の繊維方向を有するシートと、強化繊維が-45度の繊維方向を有するシートと、を含む、請求項1からまでのいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項7】
前記第1の層は、前記シートを複数プライ数巻回して形成される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項8】
前記第1の層と前記第2の層との間又は前記第1の層と前記第3の層との間の少なくともいずれかには、ガラスの層又はスクリムの層が形成される、請求項1からまでのいず
れか1項に記載の釣竿。
【請求項9】
前記第2の層の外側又は前記第3の層の内側の少なくともいずれかには、ガラスの層又はスクリムの層が形成される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項10】
繊維方向が0度の強化繊維を有するシートで形成される第1の層と、該第1の層の外側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第2の層と、該第1の層の内側の少なくとも一部に形成され、繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートで形成される第3の層と、を備え、
前記第1の層は、前記繊維方向が0度の強化繊維を有するシートを複数プライ数巻回して形成され、前記第2の層は、前記繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートを1又は複数プライ数巻回して形成され、前記第3の層は、前記繊維方向が±45度の強化繊維を有するシートを1又は複数プライ数巻回して形成されていることを特徴とする、竿体。