IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125406
(43)【公開日】2024-09-18
(54)【発明の名称】弾性波装置及び通信装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20240910BHJP
   H03H 9/145 20060101ALI20240910BHJP
   H03H 9/76 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H03H9/25 C
H03H9/145 C
H03H9/76
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106703
(22)【出願日】2024-07-02
(62)【分割の表示】P 2022532494の分割
【原出願日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2020110211
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】共振子に生じるスプリアスを低減し、スプリアスの低減に寄与している部位を縮小して小型化する弾性波装置及び当該弾性波装置を含む通信装置を提供する。
【解決手段】弾性波装置1は、複合基板2と、複合基板2の上面に位置している励振電極19と、を有する。複合基板2は、支持基板3と、支持基板3の上方に位置する圧電膜7と、励振電極19から見て、弾性波の伝搬方向D1に位置する階段部41と、を有しており、階段部41は少なくとも一つの壁面を有し、壁面は、弾性波伝搬方向に対し、傾斜している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合基板と、
前記複合基板の上面に位置している励振電極と、
を有しており、
前記複合基板は、
支持基板と、
前記支持基板の上方に位置する圧電膜と、
前記励振電極から見て、弾性波伝搬方向に位置する階段部と、
を有しており、
前記階段部は少なくとも一つの壁面を有し、
前記壁面は、弾性波伝搬方向に対し、傾斜している
弾性波装置。
【請求項2】
前記壁面は上方を向いている
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記圧電膜が、前記壁面を有する
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項4】
反射器を備えない、または、
反射器を備え、前記反射器の有するストリップ電極が1本以上5本以下である
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記複合基板は、積層されている複数の音響膜を有する多層膜を有し、
前記多層膜は、積層方向において互いに隣り合う音響膜同士で互いに材料が異なる
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記1以上の壁面の少なくとも一つが、凹部を有する
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記1以上の壁面の少なくとも一つが、凸部を有する
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の弾性波装置と、
前記弾性波装置と接続されているアンテナと、
前記弾性波装置と接続されている集積回路素子と、
を有している通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性波を利用する弾性波装置及び当該弾性波装置を含む通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波を利用する弾性波装置が知られている(例えば下記特許文献1)。弾性波は、例えば、SAW(Surface Acoustic Wave)又はBAW(Bulk Acoustic Wave)である。弾性波装置は、例えば、少なくとも上面に圧電性を有する基板と、当該基板の上面に電圧を印加して弾性波を励振する励振電極とを有している。特許文献1では、上記基板として、補強基板と、補強基板上に位置する音響反射層と、音響反射層上に位置する圧電体層とを有するものを開示している。励振電極は、圧電体層上に設けられる。音響反射層は、低インピーダンス層と、高インピーダンス層とが交互に重ねられて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/147688号
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る弾性波装置は、複合基板と、前記複合基板の上面に位置している励振電極と、を有している。前記複合基板は、支持基板と、多層膜と、圧電膜と、を有している。前記多層膜は、前記支持基板の上面に積層されている複数の音響膜を有している。前記多層膜においては、積層方向において互いに隣り合う音響膜同士で材料が互いに異なる。前記圧電膜は、前記多層膜の上面に重なっている。前記励振電極は、前記圧電膜の上面に位置している。前記複合基板の側面は、当該側面の外側から前記側面の内側への向きに進みながら前記支持基板側から前記圧電膜側へ上る2段以上の階段状の階段部を有している。
【0005】
本開示の一態様に係る通信装置は、上記弾性波装置と、前記弾性波装置と接続されているアンテナと、前記弾性波装置と接続されている集積回路素子と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る弾性波装置の要部構成を模式的に示す平面図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3A図1の領域IIIaの拡大図である。
図3B図2の領域IIIbの拡大図である。
図4A】第1変形例に係る複合基板の階段部の構成を示す断面図である。
図4B】第2変形例に係る複合基板の階段部の構成を示す断面図である。
図5A】第3変形例に係る複合基板の構成を示す平面図である。
図5B】第4変形例に係る複合基板の構成を示す平面図である。
図6A】第5変形例に係る複合基板の構成を示す平面図である。
図6B】第6変形例に係る複合基板の構成を示す平面図である。
図7A】実施例に係る共振子のインピーダンスに係る特性を示す図である。
図7B】実施例に係る共振子の共振抵抗を示す図である。
図8A】実施例に係る共振子のBode-Qに係る特性を示す図である。
図8B】実施例に係る共振子の共振周波数におけるBode-Qの値を示す図である。
図9A】実施例に係る共振子において生じるスプリアスの周波数を示す図である。
図9B】実施例に係る共振子において生じるスプリアスの位相を示す図である。
図10】弾性波装置の利用例としての分波器の構成を模式的に示す回路図である。
図11】弾性波装置の利用例としての通信装置の要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。また、図面同士でも寸法比率は一致していない。
【0008】
本開示に係る弾性波装置は、いずれの方向が上方又は下方とされてもよいものであるが、以下では、便宜的に、D1軸、D2軸及びD3軸からなる直交座標系を図面に付すとともに、D3軸の正側を上方として、上面又は下面等の用語を用いることがある。また、平面視又は平面透視という場合、特に断りがない限りは、D3方向に見ることをいう。なお、D1軸は、後述する圧電膜の上面に沿って伝搬する弾性波の伝搬方向に平行になるように定義され、D2軸は、圧電膜の上面に平行かつD1軸に直交するように定義され、D3軸は、圧電膜の上面に直交するように定義されている。
【0009】
(弾性波装置)
図1は、弾性波装置1の要部構成を模式的に示す平面図である。図2は、図1のII-II線における断面図である。
【0010】
弾性波装置1は、例えば、支持基板3と、支持基板3上に位置する多層膜5と、多層膜5上に位置する圧電膜7と、圧電膜7上に位置する導体層9とを有している。多層膜5は、積層されている複数の音響膜11(例えば第1膜11A及び第2膜11B)を有している。各層(3、5、7、9及び11)の厚さは、例えば、概ね、平面方向(D1-D2平面に平行な方向)の位置によらずに一定である。なお、多層膜5及び圧電膜7の組み合わせを積層部4ということがある。また、積層部4及び支持基板3の組み合わせを複合基板2ということがある。
【0011】
弾性波装置1では、導体層9によって圧電膜7に電圧が印加されることによって、圧電膜7を伝搬する弾性波が励振される。弾性波装置1は、例えば、この弾性波を利用する共振子及び/又はフィルタを構成している。多層膜5は、例えば、弾性波を反射して弾性波のエネルギーを圧電膜7に閉じ込めることに寄与している。支持基板3は、例えば、多層膜5及び圧電膜7の強度を補強することに寄与している。
【0012】
(複合基板)
支持基板3の材料は、特に限定されない。例えば、支持基板3の材料は、絶縁材料である。絶縁材料は、例えば、樹脂又はセラミックである。絶縁材料は、基材に樹脂を含浸させた複合材料であったり、樹脂に無機粒子を混ぜ込んだ複合材料であったりしてもよい。支持基板3は、その全体が1種類の材料によって構成されていてもよいし、互いに異なる材料からなる複数の層が積層されて構成されていてもよい。支持基板3の厚さは、適宜に設定されてよく、例えば、圧電膜7よりも厚い。
【0013】
支持基板3は、例えば、多層膜5の積層数及び/又は厚さが十分に確保されることによって、弾性波(別の観点では弾性波装置1の電気的特性)に直接的に影響を及ぼさない部材とされてよい。この場合、支持基板3の材料及び寸法の自由度は高い。ただし、支持基板3は、弾性波に直接的に影響を及ぼしても構わない。
【0014】
支持基板3は、圧電膜7又は積層部4(圧電膜7及び多層膜5)に比較して熱膨張係数が低い材料によって構成されてもよい。この場合、例えば、温度変化によって弾性波装置1の周波数特性が変化してしまう蓋然性を低減することができる。このような材料としては、例えば、シリコン等の半導体、サファイア等の単結晶及び酸化アルミニウム質焼結体等のセラミックを挙げることができる。
【0015】
多層膜5は、既述のように、積層されている複数の音響膜11を有している。複数の音響膜11の材料(別の観点では音響インピーダンス)は、積層方向において互いに隣り合っている(他の音響膜11を介さずに互いに重なっている)音響膜11同士で互いに異なっている。互いに隣り合っている音響膜11同士で音響インピーダンスが異なっていることにより、例えば、両者の界面においては弾性波の反射率が比較的高くなる。その結果、例えば、圧電膜7を伝搬する弾性波の漏れが低減される。
【0016】
念のために記載すると、音響インピーダンスは、理論上、媒質(音響膜11)の密度と媒質中の音速との積によって得られる値である。また、製造過程等の観点において2つの音響膜であっても、当該2つの音響膜が積層方向に互いに隣り合っているとともに材料が同一である場合は、当該2つの音響膜は1つの音響膜11として捉えられてよい。
【0017】
音響膜11の材料の種類の数、互いに異なる材料からなる音響膜11同士の音響インピーダンスの差、音響膜11と他の層(圧電膜7及び支持基板3)との間の音響インピーダンスの大小関係等は適宜に設定されてよい。例えば、音響膜11の種類は2種であってもよいし、3種以上であってもよい。また、例えば、一部又は全部の音響膜11の音響インピーダンスは、圧電膜7及び/又は支持基板3の音響インピーダンスに対して、高くてもよいし、低くてもよい。
【0018】
本実施形態では、音響膜11の材料の種類の数が2つである態様を例にとる。すなわち、多層膜5は、音響膜11として、互いに異なる材料からなる第1膜11A及び第2膜11Bを有している。第1膜11A及び第2膜11Bは、互いに音響インピーダンスが異なっており、積層方向において互いに隣り合っている。第1膜11A及び第2膜11Bの具体的な材料は、両者の音響インピーダンスが異なるように適宜に設定されてよい。
【0019】
説明の便宜上、第1膜11Aの音響インピーダンスは、第2膜11Bの音響インピーダンスよりも低いものとする。このときの第1膜11A及び第2膜11Bの材料の例を以下に示す。第1膜11Aの材料は、例えば、二酸化ケイ素(SiO)とされてよい。第2膜11Bの材料は、例えば、五酸化タンタル(Ta)、酸化ハフニウム(HfO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)又は酸化マグネシウム(MgO)とされてよい。
【0020】
多層膜5の積層数は適宜に設定されてよい。図示の例では、第1膜11A及び第2膜11Bが交互に積層されることによって、第1膜11A及び第2膜11Bの合計の積層数が3層以上(より詳細には図2では6層)とされている。積層数の上限は、特に限定されないが、例えば、12層とされてよい。纏めると、積層数は、例えば、3層以上12層以下とされてよい。ただし、図示の例とは異なり、多層膜5は、1層の第1膜11Aと1層の第2膜11Bとの合計2層から構成されてもよい。
【0021】
圧電膜7に接する層は、第1膜11A及び第2膜11Bのいずれでもよいが、例えば、第1膜11Aである。支持基板3に接する層も、第1膜11Aであってもよいし、第2膜11Bであってもよい。上記に関連して、第1膜11A及び第2膜11Bからなる多層膜5の合計の積層数は、偶数でもよいし、奇数でもよい。
【0022】
多層膜5の厚さは適宜に設定されてよい。例えば、後述する電極指27のピッチをpとする。このとき、例えば、第1膜11Aの厚さt1は、0.10p以上又は0.14p以上とされてよく、また、0.28p以下又は0.26p以下とされてよく、前記の下限と上限とは適宜に組み合わされてよい。また、例えば、第2膜11Bの厚さt2は、0.08p以上又は1.90p以上とされてよく、また、2.00p以下又は0.20p以下とされてよく、前記の下限と上限とは、矛盾しない限り、適宜に組み合わされてよい。
【0023】
第1膜11A及び第2膜11Bは、例えば、互いに直接に(他の層を介さずに)重なっている。ただし、第1膜11Aと第2膜11Bとの間には、両者の密着性の向上及び/又は拡散の低減のための付加的な層が挿入されてもよい。付加的な層の厚さは、特性への影響が無視できる程度に薄くされる。例えば、付加的な層の厚さは概ね0.01λ(λについては後述)以下である。本開示の説明においては、そのような付加的な層が設けられている場合においても、付加的な層の存在を無視した表現をすることがある。圧電膜7と多層膜5との間等についても同様である。
【0024】
圧電膜7は、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO。以下、「LT」と略すことがある。)の単結晶又はニオブ酸リチウム(LiNbO。以下、「LN」と略すことがある。)の単結晶によって構成されている。LT及びLNの結晶系はいずれも、圧電性のある点群が3mの三方相系である。圧電膜7のカット角は、公知のカット角も含め、種々のものとされてよい。例えば、圧電膜7は、回転YカットX伝搬のものとされてよい。すなわち、弾性波の伝搬方向(D1方向)とX軸とは略一致してよい(例えば両者の差は±10°)。このときの圧電膜7の法線(D3軸)に対するY軸の傾斜角は適宜に設定されてよい。
【0025】
なお、弾性波は、厳密には、種々の方向に伝搬する。ただし、特に断りが無い限り、本開示でいう弾性波の伝搬方向は、弾性波装置において一般にいう伝搬方向である。当該伝搬方向は、例えば、利用が意図されている弾性波に関して、伝達されるエネルギーが最も大きくなる方向であるということができる。
【0026】
圧電膜7は、より詳細には、その材料がLTである場合においては、例えば、オイラー角(φ、θ、ψ)によって(0°±20°,-5°以上65°以下,0°±10°)と表されるものとされてよい。別の観点では、圧電膜7は、回転YカットX伝搬のものとされ、Y軸は、圧電膜7の法線(D3軸)に対して85°以上155°以下の角度で傾斜してよい。また、上記と等価なオイラー角で表される圧電膜7が用いられてもよい。例えば、上記と等価なオイラー角としては、(180°±20°,-65°以上5°以下,0°±10°)、及びφに120°を加算若しくは減算したものを挙げることができる。
【0027】
また、圧電膜7は、その材料がLNである場合においては、例えば、オイラー角(φ、θ、ψ)によって(0°,0°±20°,X°)と表されるものとされてよい。上記のX°は0°以上360°以下の値である。すなわち、X°は任意の角度をとることができる。
【0028】
圧電膜7の厚さは適宜に設定されてよい。例えば、後述する電極指27のピッチをpとする。このとき、例えば、圧電膜7の厚さt0は、0.1p以上又は0.2p以上とされてよく、また、0.6p以下又は0.5p以下とされてよく、前記の下限と上限とは適宜に組み合わされてよい。
【0029】
(導体層)
導体層9は、図示の例では、共振子15を構成するように形成されている。共振子15は、いわゆる1ポート弾性波共振子として構成されており、図1に概念的かつ模式的に示されている端子17A及び17B(図1)の一方から所定の周波数の電気信号が入力されると共振を生じ、その共振を生じた信号を端子17A及び17Bの他方から出力可能である。端子17A及び17Bは、例えば、複合基板2に設けられている。より詳細には、例えば、端子17A及び17Bは、導体層9によって圧電膜7上に構成されている。
【0030】
共振子15は、例えば、励振電極19と、励振電極19の両側に位置する1対の反射器21とを含んでいる。共振子15は、厳密には、弾性波の伝搬に係る圧電膜7及び多層膜5を含む。ただし、便宜上、励振電極19及び1対の反射器21の組み合わせを共振子15として表現することがある。
【0031】
1つの圧電膜7上には、1つの共振子15(別の観点では励振電極19)が設けられていてもよいし、後述するように、複数の共振子15が設けられていてもよい。図1及び図2では、図解を容易にするために、1つの共振子15のみが設けられている態様が例示されている。一般的には、1つの圧電膜7には複数の共振子15が設けられる。以下の説明では、図とは異なり、複数の共振子15が設けられている態様を前提とした説明をすることがある。
【0032】
励振電極19は、IDT電極によって構成されており、1対の櫛歯電極23を含んでいる。なお、図1では、視認性を良くするために、一方の櫛歯電極23にはハッチングを付している。各櫛歯電極23は、例えば、バスバー25と、バスバー25から互いに並列に延びる複数の電極指27と、複数の電極指27間においてバスバー25から突出するダミー電極29とを含んでいる。1対の櫛歯電極23は、複数の電極指27が互いに噛み合うように(交差するように)配置されている。
【0033】
バスバー25は、例えば、概略、一定の幅で弾性波の伝搬方向(D1方向)に直線状に延びる長尺状に形成されている。そして、一対のバスバー25は、弾性波の伝搬方向に直交する方向(D2方向)において互いに対向している。なお、バスバー25は、幅が変化したり、弾性波の伝搬方向に対して傾斜したりしていてもよい。
【0034】
各電極指27は、例えば、概略、一定の幅で弾性波の伝搬方向に直交する方向(D2方向)に直線状に延びる長尺状に形成されている。各櫛歯電極23において、複数の電極指27は、弾性波の伝搬方向に配列されている。また、一方の櫛歯電極23の複数の電極指27と他方の櫛歯電極23の複数の電極指27とは、基本的には交互に配列されている。
【0035】
複数の電極指27のピッチp(例えば互いに隣り合う2本の電極指27の中心間距離)は、励振電極19内において基本的に一定である。なお、励振電極19は、一部にピッチpに関して特異な部分を有していてもよい。特異な部分としては、例えば、大部分(例えば8割以上)よりもピッチpが狭くなる狭ピッチ部、大部分よりもピッチpが広くなる広ピッチ部、少数の電極指27が実質的に間引かれた間引き部が挙げられる。
【0036】
以下において、ピッチpという場合、特に断りがない限りは、上記のような特異な部分を除いた部分(複数の電極指27の大部分)のピッチをいうものとする。また、特異な部分を除いた大部分の複数の電極指27においても、ピッチが変化しているような場合においては、大部分の複数の電極指27のピッチの平均値をピッチpの値として用いてよい。
【0037】
電極指27の本数は、共振子15に要求される電気特性等に応じて適宜に設定されてよい。図1及び図2は模式図であることから、電極指27の本数は少なく示されている。実際には、図示よりも多くの電極指27が配列されてよい。後述する反射器21のストリップ電極33についても同様である。
【0038】
複数の電極指27の長さは、例えば、互いに同等である。なお、励振電極19は、複数の電極指27の長さ(別の観点では交差幅)が伝搬方向の位置に応じて変化する、いわゆるアポダイズが施されていてもよい。電極指27の長さ及び幅は、要求される電気特性等に応じて適宜に設定されてよい。
【0039】
ダミー電極29は、例えば、概略、一定の幅で弾性波の伝搬方向に直交する方向に突出する形状とされている。その幅は、例えば電極指27の幅と同等である。また、複数のダミー電極29は、複数の電極指27と同等のピッチで配列されており、一方の櫛歯電極23のダミー電極29の先端は、他方の櫛歯電極23の電極指27の先端とギャップを介して対向している。なお、励振電極19は、ダミー電極29を含まないものであってもよい。
【0040】
1対の反射器21は、弾性波の伝搬方向において複数の励振電極19の両側に位置している。各反射器21は、例えば、電気的に浮遊状態とされてもよいし、基準電位が付与されてもよい。各反射器21は、例えば、格子状に形成されている。すなわち、反射器21は、互いに対向する1対のバスバー31と、1対のバスバー31間において延びる複数のストリップ電極33とを含んでいる。複数のストリップ電極33のピッチ、及び互いに隣り合う電極指27とストリップ電極33とのピッチは、基本的には複数の電極指27のピッチと同等である。
【0041】
導体層9は、例えば、金属により形成されている。金属は、適宜な種類のものとされてよく、例えば、アルミニウム(Al)又はAlを主成分とする合金(Al合金)である。Al合金は、例えば、アルミニウム-銅(Cu)合金である。なお、導体層9は、複数の金属層から構成されていてもよい。例えば、Al又はAl合金からなる層と、圧電膜7との間に、これらの接合性を強化するためのチタン(Ti)からなる比較的薄い層が設けられていてもよい。導体層9の厚さは適宜に設定されてよい。例えば、導体層9の厚さは、0.04p以上0.17p以下とされてよい。
【0042】
導体層9は、基本的に、その全体が同一の材料及び厚さによって構成されている。例えば、励振電極19、反射器21及び配線(符号省略)は、互いに同一の材料及び厚さを有している。ただし、導体層9は、材料及び/又は厚さが他の部分と異なる部分を有していてもよい。例えば、端子17A及び17Bは、励振電極19、反射器21及び配線と材料及び厚さが同一の層と、この層の上に重なる他の材料からなる層とによって構成されていてもよい。
【0043】
特に図示しないが、圧電膜7の上面は、導体層9の上から、SiOやSi等からなる保護膜によって覆われていてもよい。保護膜はこれらの材料からなる複数層の積層体としてもよい。保護膜は、単に導体層9の腐食を抑制するためのものであってもよいし、温度補償に寄与するものであってもよい。保護膜が設けられる場合等において、励振電極19及び反射器21の上面又は下面には、弾性波の反射係数を向上させるために、絶縁体又は金属からなる付加膜が設けられてもよい。
【0044】
図1及び図2に示した構成は、適宜にパッケージされてよい。パッケージは、例えば、不図示の基板上に隙間を介して圧電膜7の上面を対向させるように図示の構成を実装し、その上からモールド樹脂によって封止を行うものであってもよいし、圧電膜7上に箱型のカバーを設けるウェハレベルパッケージ型のものであってもよい。
【0045】
1対の櫛歯電極23に電圧が印加されると、複数の電極指27によって圧電膜7に電圧が印加され、圧電体である圧電膜7が振動する。これにより、D1方向に伝搬する弾性波が励振される。弾性波は、複数の電極指27によって反射される。そして、複数の電極指27のピッチpを概ね半波長(λ/2)とする定在波が立つ。定在波によって圧電膜7に生じる電気信号は、複数の電極指27によって取り出される。このような原理により、弾性波装置1は、ピッチpを半波長とする弾性波の周波数を共振周波数とする共振子として機能する。なお、λは、通常、波長を示す記号であり、また、実際の弾性波の波長は2pからずれることもあるが、以下でλの記号を用いる場合、特に断りがない限り、λは2pを意味するものとする。
【0046】
弾性波は、適宜なモードのものが利用されてよい。例えば、本実施形態のように、多層膜5上に圧電膜7を重ねた構成においては、スラブモードの弾性波を利用することができる。スラブモードの弾性波の伝搬速度(音速)は、一般的なSAW(Surface Acoustic Wave)の伝搬速度よりも速い。例えば、一般的なSAWの伝搬速度が3000~4000m/sであるのに対して、スラブモードの弾性波の伝搬速度は10000m/s以上である。従って、スラブモードの弾性波を利用した場合においては、比較的高い周波数領域での共振及び/又はフィルタリングを実現することが容易化される。例えば、1μm以上のピッチpで5GHz以上の共振周波数を実現することも可能である。
【0047】
(複合基板の階段部)
図3A図1の領域IIIaの拡大図である。図3B図2の領域IIIbの拡大図である。
【0048】
図1図2図3A及び図3Bに示されているように、複合基板2の側面2aは、階段状の階段部41を有している。これにより、例えば、共振子15からその外側に漏れた弾性波が複合基板2の側面2aに到達したとき、当該弾性波が散乱されやすくなる。その結果、複合基板2の側面2aにて反射した弾性波に起因するスプリアスが低減される。
【0049】
このような階段部41は、図1に示すように、平面視において複合基板2の全周に亘って設けられていてもよいし、図示の例とは異なり、複合基板2の周囲の一部にのみ設けられていてもよい。後者の例としては、例えば、平面視において概略矩形状の複合基板2の4辺のうち、対向する2辺(その全長又は一部の長さ)にのみ階段部41が設けられている態様を挙げることができる。当該2辺は、例えば、弾性波の伝搬方向(D1方向)に交差する2辺である。ただし、当該2辺は、弾性波の伝搬方向に沿う2辺であっても構わない。
【0050】
なお、図示のように複合基板2の4つの側面2aに亘って階段形状が形成されている場合においては、例えば、全周に亘って1つの階段部41が設けられていると捉えられてもよいし、各側面2aに1つの階段部41が設けられて合計で4つの階段部41が設けられていると捉えられてもよい。同様に、平面視において複合基板2の周方向に階段形状が分散されている場合も、1つの階段部41が設けられていると概念されてもよいし、複数の階段部41が設けられていると概念されてもよい。ただし、実施形態の説明では、便宜上、いずれの態様においても、基本的に、1つの階段部41が設けられている概念で表現する。
【0051】
励振電極19と階段部41との位置関係は適宜に設定されてよい。例えば、平面視において、複数の電極指27の配置領域を弾性波の伝搬方向に沿って複合基板2の外側まで延長した仮想領域R1(図1)を仮定する。このとき、階段部41は、仮想領域R1内に位置する部分を有していてもよいし、有していなくてもよい。なお、図示の例のように、複合基板2の全周に亘って階段部41が形成されている態様は、階段部41が仮想領域R1内に位置する部分を有している態様の一例である。
【0052】
仮想領域R1は、より詳細には、1つの励振電極19について、+D1方向及び-D1方向の2方向に2つ仮定することができる。また、複数の励振電極19が設けられている場合においては、励振電極19の数の2倍の数の仮想領域R1(ただし、仮想領域R1同士が重複することもある。)を仮定することができる。階段部41は、2以上の仮想領域R1のいずれに位置する部分を有していてもよい。例えば、階段部41は、複数の仮想領域R1のうちの一部の仮想領域R1についてのみ、仮想領域R1内に位置する部分を有していてもよいし、全ての仮想領域R1それぞれについて、仮想領域R1内に位置する部分を有していてもよい。また、例えば、階段部41は、複数の仮想領域R1のうち、少なくとも、複合基板2の側面2aとのD1方向における距離が最も短い励振電極19の、その距離が短い側の仮想領域R1内に位置する部分を有していてもよい。
【0053】
階段部41は、例えば、その一部のみを特定の仮想領域R1内又は全部の仮想領域R1内に位置させてもよいし(換言すれば、階段部41は、特定の仮想領域R1内に位置しない部分、又は全ての仮想領域R1内に位置しない部分を有していてもよいし)、特定の仮想領域R1内又は全ての仮想領域R1内に位置する部分のみから構成されてもよい。また、階段部41は、特定の1以上の仮想領域R1又は全部の仮想領域R1に関して、仮想領域R1の幅(図1ではD2方向の長さ)の全体又は大部分(例えば仮想領域R1の幅の8割以上)に位置してもよいし(図示の例)、仮想領域R1の幅の一部にのみ位置してもよい。
【0054】
階段部41の形状及び寸法は、平面視における複合基板2の周方向の位置に関わらずに概略同様であってもよいし、周方向の位置によって異なっていてもよい。例えば、階段部41のうちD1方向に沿う側面2aに位置する部分の形状及び寸法と、階段部41のうちD2方向に沿う側面2aに位置する部分の形状及び寸法とは異なっていてもよい。
【0055】
ただし、以下の説明では、主として、階段部41の形状及び寸法が、平面視における複合基板2の周方向の位置に関わらずに概略同様である態様を例に取る。従って、以下の階段部41の形状及び寸法に係る説明は、特に断りが無い限り、また、矛盾が生じない限り、複合基板2の周方向の任意の位置(例えば4つの側面2aのうちの任意の側面2a)に適用されてよい。
【0056】
図1図2図3A及び図3Bに示すように、階段部41は、より詳細には、複合基板2の側面2aの外側から側面2aの内側への向き(図3A及び図3Bに示す範囲では-D1方向)に進みながら支持基板3側から圧電膜7側へ上る階段状である。換言すれば、実際の階段において踏まれる面に相当する面(以下、「踏み面41a」という。)は、+D3方向(圧電膜7の上面が面している方向)に面しているとともに、平面視において複合基板2の内側に位置するものほど+D3側に位置している。
【0057】
踏み面41aは、積層部4が含む膜(11及び/又は7)の上面のうち、上方へ露出する領域によって構成されている。より詳細には、図示の例では、各音響膜11は、その上面に重なる圧電膜7又は音響膜11よりも複合基板2の側面2aの外側(図3A及び図3Bに示す範囲では+D1方向)に位置する部分を有している。これにより、当該部分の上面は、踏み面41aを構成している。また、圧電膜7は、積層部4の最上層であるから、圧電膜7の上面は、積層部4の他の膜(音響膜11)に覆われていない。そして、圧電膜7の外縁は、多層膜5の上面の外縁よりも複合基板2の側面2aの内側(図3A及び図3Bに示す範囲では-D1方向)に位置している。これにより、圧電膜7の上面は、踏み面41aを構成している。
【0058】
なお、ここでいう上方への露出は、支持基板3、複数の音響膜11及び圧電膜7の相対位置に関してのものである。例えば、既述のように、圧電膜7の上面は、導体層9の上から保護層によって覆われていてもよく、この場合にも圧電膜7の上面は、上方に露出して踏み面41aを構成していると表現することがある。また、例えば、既述のように、音響膜11同士の間に介在する比較的薄い層が設けられてもよく、この薄い層が音響膜11の上面を覆っていても、音響膜11の上面が上方に露出して踏み面41aを構成していると表現することがある。また、例えば、支持基板3上には、積層部4を囲んで階段部41を埋没させる絶縁体(ここでは複合基板2とは別の部材と捉える。)が設けられていてもよく、このような場合においても、音響膜11の上面が上方に露出して踏み面41aを構成していると表現することがある。いずれにせよ、圧電膜7及び複数の音響膜11の側面の位置が互いにずれることによって、弾性波の散乱の作用が得られる。
【0059】
支持基板3、複数の音響膜11及び圧電膜7の上面のうち、最も下方にて露出している上面(図示の例では支持基板3の上面)は、階段の基準となる面(以下、「基準面41s」という。)である。換言すれば、基準面41sは、踏み面41aではない。階段の段数は、基準面からの段差の数を指すものとする。
【0060】
例えば、図示の例では、6層の音響膜11と、1層の圧電膜7とによって、合計で7段の階段形状が構成されている。換言すれば、図示の例では、階段部41は、2段以上の階段状とされている。別の観点では、図示の例では、階段の1段は、積層部4の1つ膜(7又は11)によって構成されている。6層の音響膜11の上面と、1層の圧電膜7の上面とは、合計で7個の踏み面41aを構成している。圧電膜7の上面は、最上段の踏み面41aを構成している。
【0061】
踏み面41a及び基準面41sは、例えば、D1方向に平行な平面状である。ただし、踏み面41a及び基準面41sは、D1方向に対して傾斜していてもよい。例えば、圧電膜7(又は音響膜11若しくは支持基板3)の上面のうち、大部分の領域又は励振電極19が配置されている領域に対して平行な方向をD1方向とする。このとき、踏み面41aは、複合基板2の側面2aの外側(図3A及び図3Bに示す範囲では+D1側)ほど+D3側又は-D3側に位置するように、D1方向に対して傾斜していてもよい。また、踏み面41a及び基準面41sは、凹凸を有していてもよい。
【0062】
踏み面41aに立ち上がる壁面41bは、積層部4の膜(7及び11)の側面によって構成されている。壁面41bの形状は、適宜な形状とされてよい。例えば、壁面41bは、平面状であってもよいし(図示の例)、平面状でなくてもよい。後者の場合、例えば、図3Bに示すような断面視において、壁面41bは、曲面状であってもよいし、角部を有する形状であってもよいし、全体として凸状であってもよいし、全体として凹状であってもよいし、凹部及び凸部の双方を有する形状であってもよい。
【0063】
図示の例では、壁面41bは、D3方向に平行な平面状である。換言すれば、壁面41bにおいて、上縁と下縁とはD1-D2平面に沿う方向の位置が同一である。ただし、上縁と下縁とはD1-D2平面に沿う方向の位置が互いに異なっていてもよい。例えば、上縁は、下縁に対して、複合基板2の側面2aの内側(図3Bでは-D1側)に位置してもよいし、複合基板2の側面2aの外側(図3Bでは+D1側)に位置してもよい。換言すれば、壁面41b(平面状に限らない)は、全体として、上方に向くようにD3方向に対して傾斜していてもよいし、下方に向くようにD3方向に対して傾斜していてもよい。
【0064】
以下の説明では、主として、壁面41bがD3方向に平行な態様を例に取る。従って、後述する踏み面41aの外縁41aa(又は内縁41ab)の平面視における形状の説明は、壁面41bの平面視における形状の説明と捉えることができる。従って、ここでは、壁面41bの平面視における形状の説明は省略する。なお、後述する外縁41aa(又は内縁41ab)の平面視における形状の説明は、壁面41bがD3方向に平行でない態様における壁面41bの平面視における形状(例えば概略形状)に援用されて構わない。
【0065】
踏み面41aにおいて、階段を下る側の縁部を外縁41aaというものとする。踏み面41aにおいて、階段を上る側の縁部を内縁41abというものとする。ただし、圧電膜7の上面によって構成されている踏み面41aについては内縁41abを定義しない。なお、図示の例では、既述のように、踏み面41aに立ち上がる壁面41bが踏み面41aに対して垂直である。このことから、図3Aに示す平面図においては、一の踏み面41aの内縁41abと、1段上の踏み面41aの外縁41aaとは重なっている。
【0066】
外縁41aaは、当該外縁41aaを含む踏み面41aを有する膜(7又は11)の上面の外縁によって構成されている。内縁41abは、当該内縁41abを含む踏み面41aを有する膜(7又は11)に重なる他の膜の下面の外縁によって規定されている。外縁41aa及び内縁41abの形状は適宜に設定されてよい。図示の例では、外縁41aa及び内縁41abは、直線状とされている。また、図示の例では、複合基板2のD2方向に沿う側面2aにおける外縁41aa及び内縁41abは、D2方向に平行であり、複合基板2のD1方向に沿う側面2aにおける外縁41aa及び内縁41abは、D1方向に平行である。また、図示の例では、外縁41aa及び内縁41abは互いに平行である。外縁41aa及び内縁41abのその他の形状については、後に変形例に係る図面を参照して説明する。
【0067】
各踏み面41aにおいて内縁41abから外縁41aaまでの長さ(踏み面41aの奥行)を長さd5とする。階段部41のうち仮想領域R1内に位置する部分において、踏み面41aの弾性波の伝搬方向(D1)に平行な長さを長さd6とする。長さd6は、長さd5の一種である。以下の説明では、基本的に長さd5の符号を用いるが、長さd5に関する説明は、矛盾等が生じない限り、長さd6の説明と捉えられてよい。
【0068】
図示の例では、長さd5は、複合基板2の周方向の位置によらずに一定である。また、複数の踏み面41a同士で長さd5は互いに同一である。1つの踏み面41aにおいて、長さd5は、当該踏み面41aを有する段の高さ(D3方向)、又はピッチpに比較して、小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。後述するように、長さd5は、複合基板2の周方向の位置によって、及び/又は踏み面41aによって異なることがある。階段部は、少なくとも一部の踏み面41aにおいて、及び/又は1つの踏み面41aの少なくとも一部において、長さd5が0.2p以上、0.5p以上又は1p以上とされてよい。
【0069】
(階段部の効果を考慮した設計)
上記のように、階段部41が設けられることによって、共振子15から漏れた弾性波が複合基板2の側面2aにおいて散乱されやすくなり、ひいては、共振子15に生じるスプリアスが低減される。このことから、例えば、スプリアスの低減に寄与している部位を縮小して小型化の効果を得てもよい。
【0070】
例えば、反射器21のストリップ電極33の本数を従来よりも少なくしてもよい。例えば、一般に、1つの反射器21において、ストリップ電極33の本数は、20本以上又は30本以上とされている(本開示に係る技術においてもそのように設定されて構わない。)。階段部41が設けられている場合においては、1つの反射器21が有するストリップ電極33の本数は、10本以下又は5本以下とされてよい。なお、1つの反射器21が有するストリップ電極33の本数の下限は、例えば、2本、3本又は4本とされてよい。
【0071】
また、例えば、励振電極19と圧電膜7の外縁とのD1方向(弾性波の伝搬方向)における距離(最短距離)をd1とする(図1及び図2)。このとき、距離d1は、従来よりも短くされてよい。例えば、距離d1は、10p(5λ)以下、及び/又は10μm以下とされてよい。なお、最も反射器21に近い電極指27と、最も励振電極19から離れているストリップ電極33との中心間距離は、概ね、ピッチpにストリップ電極33の本数を乗じて得られる長さである。従って、距離d1が10pというのは、10本のストリップ電極33の配置領域に概ね対応している。
【0072】
(階段部の変形例)
以下、階段部の種々の変形例について説明する。以下では、基本的に、実施形態(又は先に説明された変形例。本段落において、以下、同様。)との相違部分についてのみ述べる。特に言及が無い事項については、実施形態と同様とされたり、実施形態から類推されたりしてよい。また、実施形態の構成に対応又は類似する構成については、実施形態の構成と相違点があっても、実施形態の構成の符号を用いることがある。
【0073】
(第1変形例)
図4Aは、第1変形例に係る複合基板2Aの階段部41Aの構成を示す断面図であり、図3Bに対応している。
【0074】
この図に示すように、階段部41Aの少なくとも1つの段は、積層部4の2つ以上の膜(7及び/又は11)によって構成されてもよい。図示の例では、音響膜11の上面によって構成された踏み面41aを有する段は、いずれも2つの音響膜11によって構成されている。この他、特に図示しないが、圧電膜7と、圧電膜7の下に重なる音響膜11とで1段が構成されてもよいし、3つ以上の膜によって1段が構成されてもよい。各段が含む膜の数は、段同士で同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0075】
積層方向において互いに隣り合っている2つの膜(7及び/又は11)同士の側面のずれ(長さd5参照)が比較的小さい場合、当該2つの膜は、共に1つの段を構成していると捉えられてよい。このときのずれ量は、複合基板2の寸法等によっても異なるが、例えば、0.1p未満又は0.01p未満である。
【0076】
また、支持基板3の上面は、音響膜11によって覆われていてもよい。換言すれば、階段部41Aの基準面41sは、上方に露出している音響膜11の上面のうち、最も下方に位置している面(図示の例では下から2層目の音響膜11の上面)によって構成されてもよい。なお、図示の例では、基準面41sからの段数は、3段となっている。
【0077】
別の観点では、階段部41Aは、複合基板2Aの側面において、支持基板3の上面から圧電膜7の上面までの全体に亘っていなくてもよく、一部にのみ位置していてもよい。この場合、上記一部は、圧電膜7側の一部であってもよいし、支持基板3側の一部であってもよいし、圧電膜7と支持基板3との間の一部であってもよい。
【0078】
例えば、図示の例では、階段部41Aは、圧電膜7の上面を最上段の踏み面41aとして含んでいるから、圧電膜7側の一部に位置しているといえる。また、例えば、図示の例とは異なり、圧電膜7は、圧電膜7の下に重なる音響膜11よりも複合基板2Aの側面の外側に張り出してもよい。この場合、圧電膜7は、複合基板2Aの側面の外側から側面の内側へ進みながら支持基板3側から圧電膜7側へ上る階段部を構成しているとはいえない。このようにして、圧電膜7と支持基板3との間の一部、又は支持基板3側の一部に階段部が構成されてもよい。
【0079】
なお、少なくとも1つの段が2以上の膜によって構成されるという構成と、支持基板3の上面から圧電膜7の上面までの範囲の一部にのみ階段部が設けられるという構成とは、互いに結合されている必要は無く、階段部に別々に適用されてよい。
【0080】
例えば、図4Aにおいて、支持基板3が最下層の音響膜11よりも複合基板2Aの側面の外側に張り出すことによって、支持基板3の上面から圧電膜7の上面までの全体に亘って、少なくとも1段が2以上の膜によって構成された階段部が構成されてもよい。また、例えば、図3Bにおいて、支持基板3又は支持基板3に近い音響膜11が、その上面に重なる膜よりも複合基板2の側面の外側に張り出さないことによって、圧電膜7側の一部にのみ、各段が1つの膜によって構成された階段部が構成されてもよい。
【0081】
特に図示しないが、支持基板3の上面が基準面41sを構成し、全ての音響膜11の側面が面一とされ、最上層の音響膜11の上面が第1段の踏み面41aを構成し、圧電膜7の上面が第2段の踏み面41aを構成することによって、2段の階段部が構成されてもよい。すなわち、第1段目は、全ての音響膜11を含んでもよい。なお、このような構成との比較において、図示した階段部41又は41Aは、最上層の音響膜11よりも下層の音響膜11の上面によって構成された踏み面41aを有しているものであるといえる。
【0082】
(第2変形例)
図4Bは、第2変形例に係る複合基板2Bの階段部41Bの構成を示す断面図であり、図3Bに対応している。
【0083】
この図に示すように、踏み面41aの奥行である長さd5は、踏み面41a(及び基準面41s)同士で異なっていてもよい。図示の例では、実施形態と同様に、階段部41Bは、支持基板3の上面から圧電膜7の上面の全体に亘っているとともに、各段は、1つの膜(7又は11)のみを含んでいる。ただし、長さd5が互いに異なる態様は、少なくとも1つの段が2つの膜を含む態様(図3A)に適用されてもよいし、階段部が支持基板3の上面から圧電膜7の上面までの範囲の一部にのみ位置している態様に適用されてもよい。
【0084】
各踏み面41aの長さd5は、他の全ての踏み面41aの長さ5dと異なっていてもよいし、複数の踏み面41aのうち一部の踏み面41aの長さd5のみが他の踏み面41aの長さ5dと異なっていてもよい。長さd5が互いに異なる2つの踏み面41aは、D3方向において互いに隣り合う2つの踏み面41a(その間に他の踏み面41aが介在しない2つの踏み面41a)であってもよいし、互いに隣り合っていない2つの踏み面41aであってもよい。また、相対的に長い又は短い長さd5を有する踏み面41aは、D3方向において、圧電膜7側に配置されてもよいし、支持基板3側に配置されてもよいし、圧電膜7と支持基板3との中央側に配置されてもよいし、そのような傾向が現れない態様で配置されてもよい。
【0085】
長さd5の差は適宜に設定されてよい。例えば、任意の2つの踏み面41aの長さd5を比較したとき、又は、複数の踏み面41aの長さd5のうち最長の長さd5と最短の長さd5を比較したとき、両者の差は、短い方の長さd5の1/2よりも短くてもよいし、同等でもよいし、長くてもよい。また、上記両者の差は、0.1p以上、0.2p以上又は0.5p以上とされてよい。
【0086】
(第3変形例)
図5Aは、第3変形例に係る複合基板2Cの構成を示す平面図である。この図では、便宜上、反射器21の図示は省略されている。また、励振電極19は、図1よりも模式的に示されている。階段部41の段数は、任意であるが、便宜上、図1よりも少なく示されている。
【0087】
この図に示すように、複合基板2Cの側面は、D1方向(弾性波の伝搬方向)及びD2方向(弾性波の伝搬方向に直交する方向)に対して傾斜していてもよい。特に図示しないが、複合基板2Cは、矩形状以外の形状(例えば平行四辺形)とされ、4側面のうちいずれか一部はD1方向又はD2方向に平行とされてもよい。
【0088】
別の観点では、階段部41のうち励振電極19に対して弾性波の伝搬方向(D1方向)の一方側に位置する部分(例えば仮想領域R1内に位置する部分)の外縁41aaは、伝搬方向に直交する方向(D2方向)に対して傾斜していてもよい。その傾斜の程度は任意である。例えば、傾斜角は、1°以上、5°以上、10°以上又は30°以上とされてよい。ここでは、実施形態の階段部41を例示しているが、外縁41aaが弾性波の伝搬方向に対して傾斜する態様は、変形例に係る階段部(例えば41A及び41B)に適用されても構わない。
【0089】
なお、実施形態の説明で述べたように、階段部41は、平面視において、複合基板2Cの全周に亘って設けられていてもよいし、周方向の一部にのみ設けられていてもよい。図示の例では、概ねD1方向において対向している2辺にのみ階段部41が位置している態様を例示している。
【0090】
(第4変形例)
図5Bは、第4変形例に係る複合基板2Dの構成を示す平面図であり、図5Aと同様の図である。
【0091】
第4変形例では、第3変形例と同様に、階段部41のうち励振電極19に対して弾性波の伝搬方向(D1方向)の一方側に位置する部分(例えば仮想領域R1内に位置する部分)の外縁41aaは、伝搬方向に直交する方向(D2方向)に対して傾斜している。その傾斜の程度等については、第3変形例と同様である。ただし、この変形例では、支持基板3の4つの側面は、D1方向又はD2方向のいずれかに対して平行である。
【0092】
別の観点では、階段部41Dは、平面視において、複合基板2Dの側面のうち仮想領域R1内に位置する部分に対して外縁41aaが傾斜している部分を仮想領域R1内に有している。さらに別の観点では、基準面41sのD1方向における長さは、D2方向の位置によって異なっている。
【0093】
図示の例では、全ての外縁41aaが複合基板2Dの側面(又はD2方向)に対して傾斜しており、また、複数の外縁41aaは、互いに平行である。ただし、図示の例とは異なり、一部の外縁41aaのみが複合基板2Dの側面に対して傾斜していてもよい。換言すれば、外縁41aa同士は互いに傾斜していてもよい。別の観点では、各踏み面41aにおいて、D1方向における長さd6は、D2方向の位置によって異なっていてよい。
【0094】
図5Bでは、外縁41aaが支持基板3の側面及び/又は他の外縁41aaに対して傾斜する構成が実施形態に適用された態様を例示している。ただし、この外縁41aaの傾斜は、変形例に適用されても構わない。例えば、外縁41aaの傾斜が第1及び第2変形例に適用されてよいことは明らかである。また、例えば、外縁41aaの傾斜が第3変形例に適用され、支持基板3の側面のうち仮想領域R1内に位置する部分、外縁41aaの仮想領域R1内に位置する部分、及びD1方向の3つが互いに傾斜していてもよい。
【0095】
(第5変形例)
図6Aは、第5変形例に係る複合基板2Eの階段部41Eの構成を示す平面図であり、図3Aに対応している。
【0096】
この図に示されているように、平面視において、踏み面41aの外縁41aa(又は内縁41ab)は、直線状でなくてもよい。図6Aの例では、外縁41aaは、繰り返し逆側へ曲がりながら延びている(蛇行している)。換言すれば、外縁41aaは、波形状を呈している。波形状を呈している外縁41aaは、第3及び第4変形例(図5A及び図5B)と同様に、平面視したときに、仮想領域R1(図1)において、D1方向及び/又は支持基板3の側面に対して傾斜している部分を有しているということができる。
【0097】
波形の具体的な形状は適宜に設定されてよい。例えば、波形は、正弦波、三角波、矩形波、のこぎり波又はこれらの波を変形した波とされてよい。波形は、直線(線分)を含んで構成されてもよいし、及び/又は曲線を含んで構成されてもよい。波形の半波長分の形状は、正弦波のように極大値又は極小値を通る線に対して対称であってもよいし、のこぎり波のように極大値又は極小値を通る線に対して非対称であってもよい。複数波長分の波形は、規則的であってもよいし、規則性を見出せなくてもよい。換言すれば、振幅及び/又は周期等の適宜なパラメータの値は、一定であってもよいし、一定でなくてもよい。
【0098】
複数の外縁41aa同士の関係も適宜に設定されてよい。例えば、一部の外縁41aa(ただし2以上の外縁41aa)又は全部の外縁41aaは、その形状(波形)が互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。換言すれば、一部の外縁41aa又は全部の外縁41aaは、振幅及び/又は周期等の適宜なパラメータの値が互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。一部の外縁41aa又は全部の外縁41aaは、その波形の周期が同等である場合において、位相(図示の範囲ではD2方向の位置)が互いに一致していてもよいし、互いに異なっていてもよい。外縁41aa同士の距離は、外縁41aaに沿う方向の位置によらずに一定であってもよいし、一定でなくてもよい。
【0099】
別の観点では、踏み面41aの奥行である長さd5(図3A)は、外縁41aaに沿う方向の位置によって異なっていてよい。なお、本変形例のように外縁41aaと内縁41abとが互いに平行でない態様においては、長さd5は、所定方向(例えば外縁41aaに概ね直交する方向)における踏み面41aの長さによって定義されたり、外縁41aa上の各点から内縁41abへの最短距離によって定義されたりしてよい。
【0100】
仮想領域R1(図1)内においては、既述のように、弾性波の伝搬方向における踏み面41aの長さd6が定義されてよい。そして、図示の例は、弾性波の伝搬方向に直交する方向(D2方向)の位置によって長さd6が異なっている態様の例となっている。この場合の長さd6の変動量は適宜に設定されてよい。例えば、1つの踏み面41aに関して、1つの仮想領域R1内における最長の長さd6と最短の長さd6との差は、最長の長さd6の1/10以上、1/5以上又は1/2以上とされてよい。なお、差の上限値は、最短の長さd6が0の場合の差であり、最長の長さd6の1倍である。また、例えば、1つの踏み面41aに関して、1つの仮想領域R1内における最長の長さd6と最短の長さd6との差は、0.1p以上、0.5p以上又は1p以上とされてよい。
【0101】
図示の例では、平面視において、支持基板3の上面(基準面41s)の外縁は、直線状である。換言すれば、上記外縁の起伏(例えば算術平均粗さによって大きさが評価されてよい。)は、踏み面41aの外縁41aaの起伏よりも小さい。別の観点では、支持基板3の側面の表面粗さは、積層部4の膜(7及び/又は11)の側面における表面粗さよりも小さい。例えば、1つの仮想領域R1内において、支持基板3の上面の外縁又は支持基板の側面の算術平均粗さは、0.5p以下若しくは0.1p以下(ただし、外縁41aa又は積層部4の膜の側面の算術平均粗さよりも小さい)とされてよい。
【0102】
ただし、図示の例とは異なり、支持基板3の上面の外縁の起伏の大きさは、踏み面41aの外縁41aaの起伏の大きさと同等以上とされてもよい。このような場合において、外縁41aaが支持基板3の上面の外縁又は支持基板3の側面に対して傾斜している部分を有しているか否かは、例えば、側面全体又は1つの仮想領域R1内において、支持基板3の上面の外縁又は支持基板3の側面の算術平均粗さが最小となるように設定された仮想直線又は仮想平面に対する傾斜の有無によって判断されてよい。
【0103】
第5変形例に係る構成(外縁41aaが直線状でない構成等)は、実施形態だけでなく、第5変形例以外の変形例に適用されてよい。例えば、第5変形例に係る構成が第1変形例(図4A)及び第3変形例(図5A)に適用可能であることは明らかである。また、例えば、第2変形例(図4B)に係る踏み面41a同士で長さd5(d6)が互いに異なる構成の説明は、適宜に第5変形例における外縁41aaの任意の一部(外縁41aa上の1点に着目してもよい)に援用されてよい。また、所定の長さ範囲(例えば仮想領域R1の幅)において第5変形例における外縁41aaの算術平均粗さが最小となるように設定された仮想的な外縁41aaを考えたときに、当該仮想的な外縁41aaについて、第2変形例及び/又は第4変形例(図5B)の説明が援用されてもよい。
【0104】
(第6変形例)
図6Bは、第6変形例に係る複合基板2Fの階段部41Fの構成を示す平面図であり、図3Aに対応している。
【0105】
第6変形例は、第5変形例と同様に、踏み面41aの外縁41aaが波形を呈する態様である。第5変形例の説明で述べたように、波形の具体的な形状は、種々の形状とされてよく、第6変形例は、波形が曲線を含む一例となっている。
【0106】
より詳細には、図示の例では、外縁41aaは、階段を下りる側(図示の範囲では+D1側)を凹側とする曲線を含んでいる。また、1つの外縁41aa内で複数の凹状の曲線が連なることによって、凹状の曲線同士の接続点を極大値とする波形が構成されている。曲線の曲率等は適宜に設定されてよい。図示の例では、複数の外縁41aaの波形は、互いに形状が類似するとともに位相が近い。ひいては、踏み面41aの奥行である長さd6の外縁41aaに沿う方向(図示の範囲ではD2方向)の位置に対する変化は比較的小さい。もちろん、図示の例とは異なり、長さd6の変化は大きくされてもよい。
【0107】
(弾性波装置の製造方法)
弾性波装置1の製造方法は、階段部41を形成するための工程を除いては、概略、公知の方法と同様とされたり、公知の方法を応用したものとされたりしてよい。階段部41は、種々の方法によって製造可能である。
【0108】
例えば、積層部4が含む複数の膜(11及び7)は、下方のものから順に成膜及びパターニングがなされて形成されてよい。このとき、マスクによって規定される各膜の外縁を上方のものほど内側に位置させることによって、階段部41が形成されてよい。各膜の外縁を規定するマスクのパターンによって、階段部41の外縁41aaに任意の形状を付与することができる。
【0109】
また、例えば、弾性波装置1は、複数の弾性波装置1を含むウェハが分割されることによって(弾性波装置1を個片化することによって)作製されてよい。弾性波装置1の個片化は、ダイシングブレードによってウェハを切削することによって行われてよい。このとき、弾性波装置1の上方から切削し、かつブレードがウェハに付与する圧力等を適宜に設定すると、上方の層ほどブレードの近くの部位(縁部)が割れやすくなる。この現象を利用して、上方の層ほど外縁を内側に位置させて階段部41を形成してもよい。このときの階段部41の外縁41aaの形状は、例えば、第5及び第6変形例(図6A及び図6B)のように波形状を呈しやすい。
【0110】
また、ブレードによるウェハの分割に代えて、レーザによってウェハを分割してもよい。このとき、レーザ光の強度等を適宜に設定することによって、上方の層ほど外縁が内側に位置するようにウェハの捨て代を除去する。このような方法によって、階段部41を実現してもよい。
【0111】
以上のとおり、本実施形態及びその変形例においては、弾性波装置1は、複合基板2(及び2A~2F。以下、実施形態に係る符号のみを代表して示すことがある。)と、複合基板2の上面に位置している励振電極19と、を有している。複合基板2は、支持基板3と、多層膜5と、圧電膜7とを有している。多層膜5は、支持基板3の上面に積層されている複数の音響膜11を有しており、積層方向において互いに隣り合う音響膜11同士で材料が互いに異なる。圧電膜7は、多層膜5の上面に重なっている。励振電極19は、圧電膜7の上面に位置している。複合基板2の側面2aは、側面2aの外側から側面2aの内側への向きに進みながら支持基板3側から圧電膜7側へ上る2段以上の階段状の階段部41を有している。
【0112】
従って、例えば、既述のように、複合基板2の側面2aにおいて不要な弾性波が散乱され、側面2aにおいて反射した不要な弾性波によって生じるスプリアスを低減できる。また、階段部41は、側面2aの外側から側面2aの内側への向きに進みながら支持基板3側から圧電膜7側へ上る2段以上の階段状であることから、全体として、支持基板3側ほど外側へ位置する傾斜面を構成していることになる。従って、階段部41に到達した弾性波は、圧電膜7とは反対側(-D3側)へ反射されやすい。その結果、側面2aに単に凹凸を形成した態様に比較して、不要な弾性波に起因するスプリアスを低減しやすい。
【0113】
階段部41は、多層膜5内において最上層となる音響膜11よりも下層の音響膜11の上面によって構成されている踏み面41aを含んでよい。換言すれば、多層膜5の側面は、階段部41を構成している、少なくとも1つの踏み面41aを有してよい。
【0114】
この場合、例えば、多層膜5の側面において上述した効果と同様の効果が奏される。すなわち、不要な弾性波は、散乱されつつ、かつ下方へ反射される。従って、圧電膜7から多層膜5に漏れた不要な弾性波が圧電膜7に戻る蓋然性を低減しやすい。
【0115】
階段部41は、圧電膜7の上面を最上段の踏み面41aとしてよい。最上段を含む少なくとも2段の各段は、複数の音響膜11及び圧電膜7のうちの2層以下の膜によって構成されてよい。
【0116】
この場合、階段部41は、1段の高さ(D3方向の長さ。いわゆる蹴上げ)が比較的小さい部分を積層部4(多層膜5及び圧電膜7)の上部に有していると言える。一方、漏れた弾性波のエネルギーが大きいのは、積層部4の上部である。従って、例えば、不要な弾性波を散乱させたり、下方へ反射したりする上述の効果が向上する。
【0117】
階段部41は、支持基板3の上面から圧電膜7の上面に亘ってよい。その各段は、複数の音響膜11及び圧電膜7の2層以下の膜によって構成されてよい。
【0118】
この場合、階段部41は、積層部4の側面の全体に亘って、1段の高さが比較的小さい部分を有していると言える。従って、例えば、不要な弾性波を散乱させる効果が向上する。
【0119】
階段部41の連続する少なくとも2段の各段が複数の音響膜11及び圧電膜7の1層のみによって構成されてよい(第2変形例(図4A)を除く種々の各例を参照。)。
【0120】
この場合、例えば、階段部41の1段の高さが小さいことから、不要な弾性波を散乱させ効果が向上する。
【0121】
励振電極19は、圧電膜7の平面視において、弾性波の伝搬方向(D1方向)に沿って配列されている複数の電極指27を有してよい。階段部41は、圧電膜7の平面視において複数の電極指27の配置領域をD1方向に沿って複合基板2の外側まで延長した仮想領域R1内に位置してよい。
【0122】
この場合、例えば、弾性波が最も漏れやすい方向に階段部41が位置することになる。その結果、不要な弾性波を散乱させたり、反射したりする効果が向上する。
【0123】
階段部41の少なくとも1段は、圧電膜7の平面視において、踏み面41aの下りる側の縁部(外縁41aa)が、弾性波の伝搬方向に直交する方向(D2方向)に対して傾斜している部分を仮想領域R1内に有してよい(図5A図6B)。
【0124】
この場合、例えば、平面視において、励振電極19からD1方向に漏れて階段部41に到達した弾性波は、D1方向に対して傾斜した方向に反射されやすくなる。その結果、反射された弾性波が励振電極19に戻ってスプリアスを生じる蓋然性が低減される。
【0125】
階段部41の少なくとも1段は、圧電膜7の平面視において、踏み面41aの下りる側の縁部(外縁41aa)が、繰り返し逆側へ曲がりながら延びている部分(換言すれば波形を呈している部分)を仮想領域R1内に有してよい(図6A及び図6B)。
【0126】
この場合、例えば、弾性波は、断面視において階段部41によって散乱されるだけでなく、平面視においても外縁41aa(別の観点では壁面41b)の波形によって散乱されることになる。その結果、複合基板2の側面2aにおいて反射した弾性波に起因するスプリアスを低減する効果が向上する。
【0127】
階段部41の少なくとも1段は、複数の音響膜11のいずれかの上面によって踏み面41aが構成されており、かつ圧電膜7の平面視において、踏み面41aの弾性波の伝搬方向(D1方向)に平行な方向の長さd6がD1方向に直交する方向(D2方向)の位置によって異なっている部分を仮想領域R1内に有してよい(図6A及び図6B)。
【0128】
この場合、例えば、踏み面41aの外縁41aa(別の観点では踏み面41aを上面とする層の壁面41b)で反射する弾性波と、踏み面41aの内縁41ab(別の観点では踏み面41aを含む上面に重なる層の壁面41b)で反射する弾性波との重畳の態様が、D2方向の位置によって異なることになる。その結果、例えば、反射した弾性波のエネルギーが分散されやすくなる。ひいては、スプリアスが低減される。
【0129】
階段部41のうち少なくとも2段は、複数の音響膜11のいずれかの上面によって踏み面が構成されてよい。当該2段の踏み面は、仮想領域R1内における弾性波の伝搬方向(D1方向)の長さd6が互いに異なってよい(図4B図6A及び図6B)。
【0130】
この場合、例えば、踏み面41aの外縁41aaで反射する弾性波と、踏み面41aの内縁41abで反射する弾性波との重畳の態様が、階段部41の段同士で異なることになる。その結果、例えば、反射した弾性波のエネルギーが分散されやすくなる。ひいては、スプリアスが低減される。
【0131】
階段部41の少なくとも1段は、圧電膜7の平面視において、支持基板3の側面のうち仮想領域R1内に位置する部分に対して踏み面41aの下りる側の縁部(外縁41aa)が傾斜している部分を仮想領域R1内に有してよい(図5B図6A及び図6B)。
【0132】
この場合、例えば、階段部41の外縁41aaの形状は、支持基板3の側面に沿う形状に限定されないから、複合基板2全体の設計の自由度が高い。その結果、例えば、弾性波の散乱及び/又は反射に関して効果的な向きで外縁41aaの向きを設定することが容易化される。
【0133】
弾性波装置1は、励振電極19に対して弾性波の伝搬方向(D1方向)の両側に位置する2つの反射器21を更に有してよい。各反射器21は、D1方向に配列されている複数のストリップ電極33を有してよい。各反射器21において、複数のストリップ電極33は10本以下とされてよい。
【0134】
この場合、例えば、既述のように、階段部41によってスプリアスが低減されていることから、ストリップ電極33の本数を10本以下にしても、大きなスプリアスが生じる蓋然性が低減される。そして、ストリップ電極33の本数を10本以下にすることによって、弾性波装置1を小型化することが容易化される。
【0135】
圧電膜7の外縁のうち仮想領域R1に位置する部分と励振電極19との距離d1は、複数の電極指27のピッチの10倍以下とされてよい。
【0136】
この場合、例えば、既述のように、階段部41によってスプリアスが低減されていることから、距離d1を短くしても、圧電膜7の外縁(別の観点では圧電膜7の側面)にて反射した弾性波によって大きなスプリアスが生じる蓋然性が低減される。そして、距離d1を短くすることによって、弾性波装置1を小型化することが容易化される。
【0137】
(実施例)
実施形態又は変形例に係る弾性波装置1に対して具体的なパラメータの値を設定し、その電気的特性をシミュレーション計算によって求めた。そして、階段部41によって種々の効果(上述した効果、及びまだ述べていない効果)が得られることを確認した。具体的には、以下のとおりである。
【0138】
図7Aは、実施例に係る共振子15のインピーダンスに係る特性を示す図である。
【0139】
この図において、横軸は周波数f(MHz)を示している。左側の縦軸は、インピーダンスの絶対値|Z|(Ω)を示している。右側の縦軸は、インピーダンスの位相θ(°)を示している。線L1は、共振子15の|Z|の値を示している。線L2は、共振子15のθの値を示している。
【0140】
公知のように、共振子15は、|Z|の値が極小値(矢印にて示す)となる共振周波数(図示の例では約5800MHz)と、|Z|の値が極大値となる反共振周波数(図示の例では約6000MHz)とを有している。また、θの値は、共振周波数と反共振周波数との間において大きくなる。一般に、特性が良いとされる共振子15では、共振周波数における|Z|が小さく、反共振周波数における|Z|が大きく、共振周波数と反共振周波数との間の範囲におけるθの値が90°に近く、また、上記範囲の外側におけるθの値が-90°に近い。
【0141】
図7Bは、共振子15の共振抵抗r0を示す図である。
【0142】
この図において、横軸は、踏み面41aの長さd6(μm)を示している。縦軸は、共振抵抗r0(Ω)を示している。共振抵抗r0は、共振周波数におけるインピーダンスの絶対値|Z|である。図中の折れ線は、共振子15のr0の値を示している。
【0143】
ここでは、複合基板2として、実施形態及び第1変形例(図4A)と類似のものが想定された。すなわち、踏み面41aの外縁41aaは、実施形態と同様に、弾性波の伝搬方向(D1方向)に直交している。長さd6は、複数の踏み面41a同士で同一である。階段部41Aの各段は、積層部4の複数の膜(7及び11)の2つの膜によって構成さえている。また、共振子15において、複数の電極指27の本数は50本とされた。各反射器21におけるストリップ電極33の本数は10本とされた。ピッチpは1μmとされた。
【0144】
この図において、長さd6が0の態様は、複合基板2の側面が階段部41を有していない態様(すなわち比較例)に対応している。そして、階段部41を設けることによって、また、長さd6を大きくすることによって、共振抵抗r0は小さくなっている。すなわち、共振子15の特性が向上している。特に、長さd6が1μm(1pに相当)以上になると、共振抵抗r0の低減の効果が顕著となる。ただし、長さd6が4μm(4pに相当)を超えると、共振抵抗r0の低減の効果は若干鈍化する。また、長さd6が0.5p未満においては、共振抵抗r0の低減の効果は得られなかった。上記より、共振抵抗r0の観点からは、長さd6は、0.5p以上又は1p以上とされてよく、また、5p以下又は4p以下とされてよく、上記の下限と上限とは適宜に組み合わされてよい。
【0145】
図8Aは、実施例に係る共振子15のBode-Qに係る特性を示す図である。
【0146】
この図において、横軸は周波数f(MHz)を示している。縦軸は、Bode-Q(無次元量)を示している。図中の線は、共振子15のBode-Qの値を示している。Bode-Qは、Bode氏の理論に基づくQ値であり、その値が大きいほど、共振子15の特性が良いことを示す。図中、矢印は、共振周波数(図示の例では約5800MHz)付近のBode-Qの値を指している。Bode-Qの値は、共振周波数付近において大きくなっている。
【0147】
図8Bは、共振子15の共振周波数におけるBode-Qの値を示す図である。
【0148】
この図において、横軸は、踏み面41aの長さd6(μm)を示している。縦軸は、Bode-Q(無次元量)を示している。図中の折れ線は、共振子15のBode-Qの値を示している。複合基板2及び共振子15の条件は、図7Bと同様である。
【0149】
この図において、長さd6が0の態様は、複合基板2の側面が階段部41を有していない態様(すなわち比較例)に対応している。そして、階段部41を設けることによって、また、長さd6を大きくすることによって、Bode-Qの値は大きくなっている。すなわち、共振子15の特性が向上している。具体的には、長さd6が0μmを若干超えただけで、Bode-Qの値が大きくなる。ただし、長さd6が2μm(2pに相当)を超えると、Bode-Qの値を大きくする効果は鈍化し、長さd6が4μm(4pに相当)に到達すると、Bode-Qの値を大きくする効果は頭打ちとなる。ただし、効果が頭打ちになるといっても、比較例に比較すれば、Bode-Qの値を大きくする効果は得られている。上記より、Bode-Qの効果の観点からは、長さd6は、0p超5p以下(又は4p以下若しくは2p以下)とされてよい。
【0150】
図9Aは、実施例に係る共振子15のインピーダンスに係る特性を示す図である。
【0151】
この図は、図7Aよりもより広い周波数範囲において共振子15のインピーダンスの特性を示した図となっている。図9Aの横軸及び縦軸は、横軸の具体的な値の範囲を除いて、図7Aの横軸及び縦軸と同様である。図中に矢印で示すように、共振子15においては、共振周波数及び反共振周波数から比較的離れた周波数(例えば図示の例では約2000MHz)にスプリアスが生じることがある。
【0152】
図9Bは、図9Aにおいて示したスプリアス(約2000HMz)におけるインピーダンスの位相θを示す図である。
【0153】
この図において、横軸は、踏み面41aの長さd6(μm)を示している。縦軸は、スプリアス(約2000HMz)におけるインピーダンスの位相θ(°)を示している。図中の折れ線は、共振子15のθの値を示している。
【0154】
ここでは、複合基板2として、実施形態と類似のものが想定された。すなわち、踏み面41aの外縁41aaは、実施形態と同様に、弾性波の伝搬方向(D1方向)に直交している。長さd6は、複数の踏み面41a同士で同一である。階段部41Aの各段は、積層部4の複数の膜(7及び11)の1つの膜によって構成されている。また、共振子15において、複数の電極指27の本数は50本とされた。各反射器21におけるストリップ電極33の本数は5本とされた。ピッチpは1μmとされた。
【0155】
この図において、長さd6が0の態様は、複合基板2の側面が階段部41を有していない態様(すなわち比較例)に対応している。そして、階段部41を設けることによって、スプリアス(より詳細にはθ)は小さくなっている。具体的には、長さd6が0μmを若干超えただけで、スプリアスが低減される。ただし、長さd6が0.1μm(0.1pに相当)を超えると、スプリアスの低減の効果は概ね一定となる(若干低下する)。上記より、スプリアス低減の効果の観点からは、長さd6は0p超の範囲で適宜に設定されてよい。
【0156】
(分波器)
図10は、弾性波装置1の利用例としての分波器101の構成を模式的に示す回路図である。この図の紙面左上に示された符号から理解されるように、この図では、櫛歯電極23が二叉のフォーク形状によって模式的に示され、反射器21は両端が屈曲した1本の線で表わされている。
【0157】
図示の分波器101は、より詳細には、デュプレクサとして構成されている。分波器101は、例えば、送信端子105からの送信信号をフィルタリングしてアンテナ端子103へ出力する送信フィルタ109と、アンテナ端子103からの受信信号をフィルタリングして1対の受信端子107に出力する受信フィルタ111とを有している。
【0158】
送信フィルタ109は、例えば、複数の共振子15(15S及び15P)がラダー型に接続されて構成された、ラダー型フィルタによって構成されている。すなわち、送信フィルタ109は、送信端子105とアンテナ端子103との間で直列に接続された複数(1つでも可)の直列共振子15Sと、その直列のライン(直列腕)と基準電位部(符号省略)とを接続する複数(1つでも可)の並列共振子15P(並列腕)とを有している。
【0159】
受信フィルタ111は、例えば、共振子15と、多重モード型フィルタ(ダブルモード型フィルタを含むものとする。)113とを含んで構成されている。多重モード型フィルタ113は、弾性波の伝搬方向に配列された複数(図示の例では3つ)の励振電極19と、その両側に配置された1対の反射器21とを有している。
【0160】
上記の構成において、複数の共振子15(15S、15P及び受信フィルタ111の共振子15)及び多重モード型フィルタ113のそれぞれは、これまでに説明した共振子15と同様に、複合基板2の上面に導体層9が設けられることによって構成されている。すなわち、分波器101の少なくとも一部は、これまでに説明した弾性波装置1によって構成されている。アンテナ端子103、送信端子105、受信端子107及び基準電位部は、例えば、図1において模式的に示した端子17A又は17Bに相当し、導体層9によって構成されてよい。
【0161】
分波器101の複数の励振電極19(及び反射器21)は、1つの複合基板2に設けられてもよいし、2以上の複合基板2に分散して設けられてもよい。例えば、送信フィルタ109を構成する複数の共振子15は、例えば、同一の複合基板2に設けられてよい。同様に、受信フィルタ111を構成する共振子15及び多重モード型フィルタ113は、例えば、同一の複合基板2に設けられてよい。送信フィルタ109及び受信フィルタ111は、例えば、同一の複合基板2に設けられてもよいし、互いに異なる複合基板2に設けられてもよい。上記の他、例えば、複数の直列共振子15Sを同一の複合基板2に設けるとともに、複数の並列共振子15Pを他の同一の複合基板2に設けてもよい。
【0162】
別の観点では、1つの複合基板2を有する弾性波装置1は、分波器101の全部を構成していてもよいし、分波器101の一部のみを構成していてもよい。また、弾性波装置1は、フィルタ(例えば送信フィルタ109又は受信フィルタ111)の全部を構成していてもよいし、フィルタの一部のみを構成していてもよい。図1に示した模式図のように、弾性波装置1は、単に共振子15を構成しても構わない。
【0163】
なお、上記の説明からも理解されるように、弾性波装置1は、1ポート弾性波共振子(共振子15)を有さないものであってもよい。例えば、弾性波装置1は、共振子15を有さず、多重モード型フィルタ113を有するものであってもよい。また、図10に示すデュプレクサの構成は、あくまで一例であり、例えば、受信フィルタ111が送信フィルタ109と同様にラダー型フィルタによって構成されたり、逆に、送信フィルタ109が多重モード型フィルタ113を有していたりしてもよい。
【0164】
(通信装置)
図11は、弾性波装置1(別の観点では分波器101)の利用例としての通信装置151の要部を示すブロック図である。通信装置151は、電波を利用した無線通信を行うものであり、例えば、上記の分波器101を含んでいる。
【0165】
通信装置151において、送信すべき情報を含む送信情報信号TISは、RF-IC(Radio Frequency Integrated Circuit)153によって変調及び周波数の引き上げ(搬送波周波数を有する高周波信号への変換)がなされて送信信号TSとされる。送信信号TSは、バンドパスフィルタ155によって送信用の通過帯以外の不要成分が除去され、増幅器157によって増幅されて分波器101(送信端子105)に入力される。そして、分波器101(送信フィルタ109)は、入力された送信信号TSから送信用の通過帯以外の不要成分を除去し、その除去後の送信信号TSをアンテナ端子103からアンテナ159に出力する。アンテナ159は、入力された電気信号(送信信号TS)を無線信号(電波)に変換して送信する。
【0166】
また、通信装置151において、アンテナ159によって受信された無線信号(電波)は、アンテナ159によって電気信号(受信信号RS)に変換されて分波器101(アンテナ端子103)に入力される。分波器101(受信フィルタ111)は、入力された受信信号RSから受信用の通過帯以外の不要成分を除去して受信端子107から増幅器161へ出力する。出力された受信信号RSは、増幅器161によって増幅され、バンドパスフィルタ163によって受信用の通過帯以外の不要成分が除去される。そして、受信信号RSは、RF-IC153によって周波数の引き下げ及び復調がなされて受信情報信号RISとされる。
【0167】
なお、送信情報信号TIS及び受信情報信号RISは、適宜な情報を含む低周波信号(ベースバンド信号)でよく、例えば、アナログの音声信号もしくはデジタル化された信号である。無線信号の通過帯は、適宜に設定されてよく、比較的高周波の通過帯(例えば5GHz以上)とされても構わない。変調方式は、位相変調、振幅変調、周波数変調もしくはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせのいずれであってもよい。回路方式は、図11では、ダイレクトコンバージョン方式を例示したが、それ以外の適宜なものとされてよく、例えば、ダブルスーパーヘテロダイン方式であってもよい。また、図11は、要部のみを模式的に示すものであり、適宜な位置にローパスフィルタやアイソレータ等が追加されてもよいし、また、増幅器等の位置が変更されてもよい。
【0168】
本開示に係る技術は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0169】
利用が意図されている弾性波は、スラブモードの弾性波に限定されず、一般的なSAWであってもよいし、弾性境界波(ただし、広義のSAWの一種である)であってもよいし、BAWであってもよい。これらの弾性波は、例えば、実施形態と同様に、1対の櫛歯電極を含むIDT電極によって構成された励振電極によって励振されてよい。
【0170】
励振電極は、IDT電極に限定されない。例えば、弾性波装置は、圧電膜をその厚み方向に挟んで対向する2つの励振電極を有するSMR(solid mounted resonator)型のBAW共振器とされてよい。換言すれば、弾性波装置は、圧電膜の上面に位置する励振電極と、圧電膜の下面に位置する励振電極とを有してよい。このとき、励振電極は、平板状とされてよい。
【0171】
実施形態では、階段部の1段の高さは、最小のもので、積層部内の1つの膜の厚さとされた。ただし、1つの膜の側面に段差が形成されることによって、1段の高さは、1つの膜の厚さ未満とされても構わない。
【符号の説明】
【0172】
1…弾性波装置、2…複合基板、3…支持基板、5…多層膜、7…圧電膜、11(11A、11B)…音響膜、19…励振電極、41…階段部。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11