(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125408
(43)【公開日】2024-09-18
(54)【発明の名称】パウチ型電池ケースおよびパウチ型二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/119 20210101AFI20240910BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240910BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240910BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20240910BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20240910BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20240910BHJP
【FI】
H01M50/119
H01M50/105
H01M50/121
H01M50/129
H01M50/133
H01M50/131
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024106756
(22)【出願日】2024-07-02
(62)【分割の表示】P 2022558527の分割
【原出願日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0045542
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】サン・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ス・ジ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ヒョン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・キョン・ユ
(57)【要約】
【課題】本発明は、シーラント層、ガスバリア層および表面保護層を含むパウチフィルム積層体を含むパウチ型電池ケースに関する。
【解決手段】前記シーラント層は、第1ポリマーで最内層として形成され、前記表面保護層は、第2ポリマーで最外層として形成され、前記ガスバリア層は、前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層され、厚さが60μm~100μmであり、結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜で形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体を収納するパウチ型電池ケースであって、
第1ポリマーで最内層として形成されるシーラント層と、
第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層と、
前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層され、厚さが60μm~100μmであり、結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層とを含むパウチフィルム積層体を含む、パウチ型電池ケース。
【請求項2】
前記アルミニウム合金薄膜は、
鉄を1.2wt%~1.7wt%含む、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項3】
前記アルミニウム合金薄膜は、
鉄を1.3wt%~1.7wt%含む、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項4】
前記アルミニウム合金薄膜は、
シリコンを0.2wt%以下含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項5】
前記アルミニウム合金薄膜は、
結晶粒度が10.5μm~12.5μmである、請求項2~4のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項6】
前記アルミニウム合金薄膜は、
合金番号がAA8021である、請求項1~5のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項7】
前記ガスバリア層は、
厚さが70μm~90μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項8】
前記シーラント層は、厚さが前記ガスバリア層の厚さの0.6倍~1.2倍である、請求項1~7のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項9】
前記シーラント層は、
厚さが30μm~90μmである、請求項1~8のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項10】
前記第1ポリマーは、
ポリプロピレン(PP)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項11】
前記表面保護層は、
厚さが6μm~25μmである、請求項1~10のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項12】
前記第2ポリマーは、
ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項13】
第3ポリマーで形成されると共に、前記表面保護層と前記ガスバリア層との間に積層される延伸補助層をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項14】
前記延伸補助層は、
厚さが20μm~50μmである、請求項13に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項15】
前記第3ポリマーは、
ナイロン(Nylon)を含む、請求項13または14に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項16】
前記パウチフィルム積層体の総厚さが180μm以上である、請求項1~15のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項17】
前記パウチフィルム積層体は、15mm×80mmのサイズで裁断した後、50mm/minの引張速度で引っ張りながら測定した引張強度が200N/15mm~300N/15mmであり、伸び率が105%~150%である、請求項1~16のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項18】
前記パウチフィルム積層体は、穿孔強度が30N以上である、請求項1~17のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項19】
正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体と、
前記電極組立体を収納するパウチ型電池ケースとを含み、
前記電池ケースは、
第1ポリマーで最内層として形成されるシーラント層と、
第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層と、
前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層され、厚さが60μm~100μmであり、結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層とを含むパウチフィルム積層体を含む、パウチ型二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年4月14日付けの韓国特許出願第10-2020-0045542号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、パウチ型電池ケースおよびパウチ型二次電池に関し、より詳細には、引張強度および伸び率が改善して成形性が向上するパウチ型電池ケースおよびパウチ型二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、二次電池の種類としては、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池およびリチウムイオンポリマー電池などがある。このような二次電池は、デジタルカメラ、P-DVD、MP3P、携帯電話、PDA、ポータブルゲーム装置(Portable Game Device)、パワーツール(Power Tool)および電動自転車(E-bike)などの小型製品だけでなく、電気自動車やハイブリッド自動車といった高出力を要する大型製品と余剰発電電力や新再生可能エネルギーを貯蔵する電力貯蔵装置とバックアップ用電力貯蔵装置にも適用され使用されている。
【0004】
このような二次電池を製造するために、先ず、電極活物質スラリーを正極集電体および負極集電体に塗布して正極と負極を製造し、これをセパレータ(Separator)の両側に積層することで、所定形状の電極組立体(Electrode Assembly)を形成する。また、電池ケースに電極組立体を収納し、電解質を注入した後、シールする。
【0005】
二次電池は、電極組立体を収容するケースの材料に応じて、パウチ型(Pouch Type)および缶型(Can Type)などに分けられる。パウチ型(Pouch Type)は、柔軟なポリマー材料で製造されたパウチに電極組立体を収容する。また、缶型(Can Type)は、金属またはプラスチックなどの材料で製造されたケースに電極組立体を収容する。
【0006】
パウチ型二次電池のケースであるパウチは、柔軟性を有するパウチフィルム積層体にプレス加工を施し、カップ部を形成することで製造される。また、カップ部が形成されると、前記カップ部の収容空間に電極組立体を収納し、シーリング部をシールして二次電池を製造する。
【0007】
このようなプレス加工のうち、絞り(Drawing)成形は、プレス装置にパウチフィルム積層体を挿入し、パンチでパウチフィルム積層体に圧力を印加し、パウチフィルム積層体を延伸させることで行われる。パウチフィルム積層体は、複数の層で形成され、そのうち、内部に位置したガスバリア層は、金属で製造される。しかし、従来のパウチフィルム積層体は、カップ部の深さをより深く成形することに限界があり、カップ部の底部の角と開放部の角にフィレッティング(Filleting、面取り)を適用する時に、フィレッティングの半径を減少させるにも限界があった。また、カップ部の外壁を垂直に近く成形するにも限界があった。そのため、二次電池のデッドスペース(Dead Space)が増加し、電極組立体のサイズが減少して、体積に対してエネルギー効率が減少する問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、引張強度および伸び率が改善して成形性が向上するパウチ型電池ケースおよびパウチ型二次電池を提供することである。
【0009】
本発明の課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及していない他の課題は、以下の記載から当業者が明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の実施形態によるパウチ型電池ケースは、正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体を収納するパウチ型電池ケースであって、前記パウチ型電池ケースは、第1ポリマーで最内層として形成されるシーラント層と、第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層と、前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層され、厚さが60μm~100μmであり、結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層とを含むパウチフィルム積層体を含む。
【0011】
また、前記アルミニウム合金薄膜は、鉄を1.2wt%~1.7wt%含むことができる。
【0012】
また、前記アルミニウム合金薄膜は、鉄を1.3wt%~1.7wt%含むことができる。
【0013】
また、前記アルミニウム合金薄膜は、シリコンを0.2wt%以下含むことができる。
【0014】
また、前記アルミニウム合金薄膜は、結晶粒度が10.5μm~12.5μmであることができる。
【0015】
また、前記アルミニウム合金薄膜は、合金番号がAA8021であることができる。
【0016】
また、前記ガスバリア層は、厚さが70μm~90μmであることができる。
【0017】
また、前記シーラント層は、厚さがガスバリア層の厚さの0.6倍~1.2倍であることができ、例えば、30μm~90μmであることができる。
【0018】
また、前記第1ポリマーは、ポリプロピレン(PP)を含むことができる。
【0019】
また、前記表面保護層は、厚さが6μm~25μmであることができる。
【0020】
また、前記第2ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含むことができる。
【0021】
また、第3ポリマーで形成されると共に、前記表面保護層と前記ガスバリア層との間に積層される延伸補助層をさらに含むことができる。
【0022】
また、前記延伸補助層は、厚さが20μm~50μmであることができる。
【0023】
また、前記第3ポリマーは、ナイロン(Nylon)を含むことができる。
【0024】
また、前記パウチフィルム積層体の総厚さは、180μm以上、好ましくは180μm~210μmであることができる。
【0025】
また、前記パウチフィルム積層体は、15mm×80mmのサイズで裁断した後、50mm/minの引張速度で引っ張りながら測定した引張強度が200N/15mm~300N/15mmであり、伸び率が105%~150%であることができる。
【0026】
上記課題を解決するための本発明の実施形態によるパウチ型二次電池は、正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体と、前記電極組立体を収納するパウチ型電池ケースとを含み、前記電池ケースは、第1ポリマーで最内層として形成されるシーラント層と、第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層と、前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層され、厚さが60μm~100μmであり、結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層とを含む。
【0027】
本発明のその他の具体的な事項は、詳細な説明および図面に含まれている。
【発明の効果】
【0028】
本発明の実施形態によると、少なくとも以下のような効果がある。
【0029】
本発明によるパウチ型電池ケースは、ガスバリア層として、特定の厚さおよび結晶粒度を有するアルミニウム合金薄膜を含むパウチフィルム積層体を使用することで、パウチフィルム積層体の引張強度、伸び率および靭性(Toughness)を向上させた。前記パウチフィルム積層体を用いると、カップ部の成形時に、ピンホール(Pinhole)や亀裂が発生することなく成形深さを増加させることができ、カップ部の角の曲率半径を減少させることができ、電池組立体の収容空間の体積を増加させることができる。
【0030】
また、本発明によるパウチフィルム積層体は、穿孔強度に優れ、外部から大きい圧力を受けるか鋭い物体に刺されて破損しても、内部の電極組立体をより効果的に保護することができる。
【0031】
本発明による効果は、以上で例示している内容によって制限されず、より様々な効果が本明細書内に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態による二次電池の組立図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるパウチフィルム積層体の断面図である。
【
図3】合金番号AA8079のアルミニウム合金と合金番号AA8021のアルミニウム合金の鉄およびシリコンの含量を示すグラフである。
【
図4】合金番号AA8079のアルミニウム合金と合金番号AA8021のアルミニウム合金の引張強度、伸び率および結晶粒度を示すグラフである。
【
図5】実施例1で使用された合金番号AA8021のアルミニウム合金薄膜と、比較例3で使用された合金番号AA8079のアルミニウム合金薄膜の結晶粒を拡大したSEM写真である。
【
図6】本発明の製造例、比較例1および比較例2によるパウチフィルム積層体に対して、引張強度および伸び率を実験した結果グラフである。
【
図7】本発明の製造例、比較例1および比較例2によるパウチフィルム積層体に対して、穿孔強度を実験した結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の利点および特徴、また、それらを達成する方法は、添付の図面とともに詳細に後述している実施形態を参照すると明確になる。しかし、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態に実現されることができ、ただし、本実施形態は、本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。明細書の全体にわたり同一の参照符号は、同一の構成要素を指す。
【0034】
他の定義がなければ、本明細書で使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が共通して理解することができる意味で使用されることができる。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、明白に特別に定義されていない限り、理想的にもしくは過剰に解釈されない。
【0035】
本明細書で使用されている用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を制限するものではない。本明細書において、単数型は、句で特別に言及しない限り複数型も含む。明細書で使用される「含む(comprises)」および/または「含み(comprising)」は、言及された構成要素の他に一つ以上の他の構成要素の存在または追加を排除しない。
【0036】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明の一実施形態による二次電池1の組立図である。
【0038】
本発明の一実施形態によると、パウチフィルム積層体135の引張強度および伸び率が改善することで、靭性(Toughness)が増加し、パウチフィルム積層体135を成形してパウチ型電池ケース13を製造する時に、成形性が向上することができる。また、パウチフィルム積層体の穿孔強度に優れ、外部から大きい圧力を受けるか鋭い物体に刺されて破損しても、内部の電極組立体をより効果的に保護することができる。
【0039】
このために、本発明の一実施形態によるパウチ型電池ケース13は、正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体10を収納するパウチ型電池ケース13であって、第1ポリマーで最内層として形成されるシーラント層1351と、第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層1353と、前記表面保護層1353と前記シーラント層1351との間に積層され、厚さが60μm~100μmであり、結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層1352とを含むパウチフィルム積層体135を含む。
【0040】
また、本発明の一実施形態による二次電池1は、正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体10と、前記電極組立体10を収納するパウチ型電池ケース13とを含み、前記電池ケース13は、第1ポリマーで最内層として形成されるシーラント層1351と、第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層1353と、前記表面保護層1353と前記シーラント層1351との間に積層され、厚さが60μm~100μmであり、結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層1352とを含むパウチフィルム積層体135を含む。
【0041】
電極組立体10は、正極、セパレータ、負極を順に積層して形成する。先ず電極活物質とバインダーおよび導電材などを混合したスラリーを正極集電体および負極集電体に塗布して正極と負極を製造し、これをセパレータ(Separator)の両側に積層することで、所定の形状の電極組立体10を形成した後、電極組立体10を電池ケース13に挿入し電解液を注入した後、シールする。
【0042】
具体的には、電極組立体(Electrode Assembly)10は、正極および負極などの2種類の電極と、前記電極を互いに絶縁させるために電極の間に介在されるセパレータとを含む。このような電極組立体10は、スタック型、ゼリーロール型、スタックアンドフォールディング型などがある。2種類の電極、すなわち、正極と負極は、それぞれ、アルミニウムと銅を含む金属箔または金属網形態の電極集電体に活物質スラリーが塗布された構造である。活物質スラリーは、通常、粒状の活物質、導電材、バインダーなどを溶媒が添加された状態で撹拌して形成されることができる。溶媒は、後続工程で除去される。
【0043】
電極組立体10は、
図1に図示されているように、電極タブ(Electrode Tab)11を含む。電極タブ11は、電極組立体10の正極および負極とそれぞれ連結され、電極組立体10から一側の外部に突出し、電極組立体10の内部と外部との間に電子が移動可能な経路になる。電極組立体10の集電体は、電極活物質が塗布された部分と、電極活物質が塗布されていない末端部分、すなわち、無地部とで構成される。また、電極タブ11は、無地部を裁断して形成されるか、無地部に別の導電部材を超音波溶接などで連結して形成されることもできる。このような電極タブ11は、
図1に図示されているように、電極組立体10の一側から同方向に並行して突出することもできるが、これに制限されず、それぞれ異なる方向に突出することもできる。
【0044】
電極組立体10の電極タブ11には、電極リード(Electrode Lead)12がスポット(Spot)溶接などで連結される。また、電極リード12の一部は、絶縁部14で周りが囲まれる。絶縁部14は、電池ケース13の第1ケース131と第2ケース132が熱融着するシーリング部134に限定して位置し、電極リード12を電池ケース13に接着させる。また、電極組立体10から生成される電気が電極リード12を介して電池ケース13に流れることを防止し、電池ケース13のシーリングを維持する。したがって、このような絶縁部14は、電気がよく通らない非伝導性を有する不導体で製造される。一般的に、絶縁部14としては、電極リード12に付着しやすく、厚さが比較的薄い絶縁テープを多く使用するが、これに制限されず、電極リード12を絶縁することができれば、様々な部材を使用することができる。
【0045】
電極リード12は、一端が前記電極タブ11と連結され、他端が前記電池ケース13の外部にそれぞれ突出する。すなわち、電極リード12は、正極タブ111に一端が連結され、正極タブ111が突出した方向に延びる正極リード121と、負極タブ112に一端が連結され、負極タブ112が突出した方向に延びる負極リード122とを含む。一方、正極リード121および負極リード122は、
図1に図示されているように、いずれも、他端が電池ケース13の外部に突出する。それにより、電極組立体10の内部で生成された電気を外部に供給することができる。また、正極タブ111および負極タブ112がそれぞれ様々な方向に向かって突出形成されることから、正極リード121および負極リード122もそれぞれ様々な方向に向かって延びることができる。
【0046】
正極リード121および負極リード122は、互いにその材料が異なることができる。すなわち、正極リード121は、正極集電体と同一のアルミニウム(Al)材料であり、負極リード122は、負極集電体と同一の銅(Cu)材料またはニッケル(Ni)がコーティングされた銅材料であることができる。また、電池ケース13の外部に突出した電極リード12の一部分は、端子部となり、外部端子と電気的に連結される。
【0047】
電池ケース13は、柔軟性の材料で製造されたパウチフィルム積層体を成形して形成される。以下、電池ケース13は、パウチとして説明する。電池ケース13は、電極リード12の一部、すなわち、端子部が露出するように電極組立体10を収容しシールされる。このような電池ケース13は、
図1に図示されているように、第1ケース131と第2ケース132を含む。第2ケース132には、カップ部133が形成され、電極組立体10を収容可能な収容空間1331が設けられ、第1ケース131は、前記電極組立体10が電池ケース13の外部に離脱しないように、前記収容空間1331を上部からカバーする。この際、
図1に図示されているように、第1ケース131にも収容空間1331が設けられたカップ部133が形成され、電極組立体10を上部から収容することもできる。第1ケース131と第2ケース132は、
図1に図示されているように、一側が互いに連結されて製造されることができるが、これに制限されず、互いに分離されて別に製造されるなど、様々に製造されることができる。
【0048】
電極組立体10の電極タブ11に電極リード12が連結され、電極リード12の一部分に絶縁部14が形成されると、第2ケース132のカップ部133に設けられた収容空間1331に電極組立体10が収容され、第1ケース131が前記空間を上部からカバーする。また、内部に電解液を注入し、第1ケース131と第2ケース132の縁部に形成されたシーリング部134をシールする。電解液は、二次電池1の充・放電時に電極の電気化学的反応によって生成されるリチウムイオンを移動させるためのものであり、リチウム塩と高純度有機溶媒類の混合物である非水系有機電解液または高分子電解質を用いたポリマーを含むことができる。このような方法により、パウチ型二次電池1が製造されることができる。
【0049】
図2は、本発明の一実施形態によるパウチフィルム積層体135の断面図である。
【0050】
本発明の一実施形態によるパウチ型二次電池1の電池ケース13は、パウチフィルム積層体135を絞り(Drawing)成形して製造される。すなわち、パウチフィルム積層体135をパンチなどで延伸させてカップ部133を形成することで製造される。本発明の一実施形態によると、このようなパウチフィルム積層体135は、
図2に図示されているように、シーラント層(Sealant Layer)1351と、ガスバリア層(Gas Barrier Layer)1352と、表面保護層(Surface Protection Layer)1353とを含み、必要に応じて、延伸補助層(Drawing Assistance Layer)1354をさらに含むことができる。
【0051】
シーラント層1351は、第1ポリマーで最内層として形成されて電極組立体10と直接接触する。ここで、最内層とは、前記ガスバリア層1352を基準として電極組立体10が位置する方向に向かう時に最後に位置した層を意味する。前記のような積層構造のパウチフィルム積層体135を、パンチなどを用いて絞り(Drawing)成形すると、一部が延伸されて袋状の収容空間1331を含むカップ部133が形成される。また、このような収容空間1331に電極組立体10が内部に収容されると、電解液を注入する。その後、上部パウチ131と下部パウチ132を互いに接触させ、シーリング部134に熱圧着を施すと、シーラント層1351同士が接着されることでパウチがシールされる。この際、シーラント層1351は、電極組立体10と直接接触するため、絶縁性を有する必要があり、電解液とも接触するため、耐食性を有する必要がある。また、内部を完全に密閉して内部と外部との物質の移動を遮断する必要があるため、高いシール性を有する必要がある。すなわち、シーラント層1351同士が接着されたシーリング部134は、優れた熱接着強度を有する必要がある。一般的に、このようなシーラント層1351を形成する第1ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、アクリル系高分子、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、アラミド、ナイロン、ポリエステル、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアリレート、テフロン(登録商標)、およびガラス繊維からなる群から選択される一つ以上の物質からなることができる。特に、主に、ポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系樹脂が使用される。ポリプロピレン(PP)は、引張強度、剛性、表面硬度、耐磨耗性、耐熱性などの機械的物性と耐食性などの化学的物性に優れ、シーラント層1351の形成に主に使用される。さらに、無延伸ポリプロピレン(Cated Polypropylene)または酸処理されたポリプロピレン(Acid Modified Polypropylene)またはポリプロピレン-ブチレン-エチレン三元共重合体で構成されることもできる。ここで、酸処理されたポリプロピレンは、MAH PP(マレイックアンハイドライドポリプロピレン)であることができる。また、シーラント層1351は、いずれか一つの物質からなる単一膜構造を有するか、2個以上の物質がそれぞれ層をなして形成された混合膜構造を有することができる。
【0052】
一方、シーラント層1351の厚さは、後述するガスバリア層の厚さの0.6倍~1.2倍、好ましくは0.7倍~1.1倍、より好ましくは0.8倍~1.1倍であることができる。シーラント層の厚さがガスバリア層の厚さの0.6倍未満の場合には、シール耐久性が低下する可能性があり、1.2倍を超える場合には、パウチの総厚さが過剰に厚くなって成形性が低下する可能性がある。また、十分な絶縁性の確保のためには、シーラント層1351の厚さがガスバリア層の厚さの0.8倍以上であることがより好ましい。
【0053】
具体的には、前記シーラント層1351の厚さは、30μm~90μmであることができ、好ましくは、50μm~90μm、さらに好ましくは70μm~90μmであることができる。シーラント層1351の厚さが30μm未満の場合には、シール時に内部が破壊するなど、シール耐久性が低下する問題が発生する可能性があり、90μmを超える場合には、パウチの厚さが過剰に厚くなって成形性が低下する可能性があり、電池エネルギー密度(体積当たりのエネルギー)を低下させる可能性がある。また、十分な絶縁性の確保のためには、シーラント層1351の厚さが70μm以上であることがより好ましい。シーラント層の厚さが小さい場合、パウチフィルム積層体の絶縁破壊電圧が低くなって絶縁性が低下する可能性があり、絶縁性が劣るパウチフィルム積層体を用いて電池を製造する場合、不良率が高くなる可能性があるためである。
【0054】
ガスバリア層1352は、表面保護層1353とシーラント層1351との間に積層されてパウチの機械的強度を確保し、二次電池1の外部のガスまたは水分などの出入りを遮断し、電解液の漏れを防止する。
【0055】
ガスバリア層1352は、アルミニウム合金薄膜で形成され、特に、本発明の一実施形態によるガスバリア層1352は、厚さが60μm~100μmであり、結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜で形成されることができる。アルミニウム合金薄膜は、所定水準以上の機械的強度を確保することができ、且つ重量が軽く、電極組立体10と電解液による電気化学的性質に対する補完および放熱性などを確保することができる。
【0056】
より具体的には、本発明の一実施形態によるアルミニウム合金薄膜は、厚さが60μm~100μm、好ましくは70μm~90μmであり、結晶粒度が10μm~13μm、好ましくは10.5μm~12.5μm、さらに好ましくは11μm~12μmであることができる。アルミニウム合金薄膜の厚さおよび結晶粒度が前記範囲を満たす時に、カップ成形時にピンホール(Pinhole)や亀裂が発生することなく成形深さを増加させることができる。
【0057】
従来、ガスバリア層1352の厚さを30μm~50μmの厚さに形成することが一般的であった。しかし、ガスバリア層の厚さが30μm~50μmである場合、パウチフィルム積層体135を絞り成形しても、カップ部133の深さが深くなるか、カップ部133の外壁を垂直に近く成形するのに限界があり、カップ部133の角のフィレッティング曲率半径を減少させるにも限界があった。また、穿孔強度が弱くて電池ケース13が外部から衝撃を受けると、内部の電極組立体10が破損しやすい問題もあった。
【0058】
本発明は、このような問題を改善するために、ガスバリア層1352の厚さを60μm~100μm、特に、70μm~90μmに形成した。ガスバリア層の厚さが前記範囲を満たす場合、ガスバリア層1352の成形性が向上し、パウチフィルム積層体135を絞り成形する時に、カップ部133の深さが深く形成されることができ、カップ部133の外壁が垂直に近くなりカップ部133の角の曲率半径も減少することができる。これにより、収容空間1331の体積が増加することから、内部に収納される電極組立体10に電極およびセパレータをより多く積層することができ、体積に対するエネルギー効率が増加することができる。ただし、ガスバリア層1352の厚さが100μmより厚い場合には、パウチ全体の厚さが過剰に厚くなるため、かえって二次電池1の体積に対するエネルギー密度が低下し得る。
【0059】
また、ガスバリア層の厚さが前記範囲を満たす場合、パウチフィルム積層体135の穿孔強度が向上し、外部から大きい圧力を受けるか鋭い物体に刺されて破損しても、内部の電極組立体10をより効果的に保護することができる。ここで、穿孔強度に優れるとは、パウチフィルム積層体135に穴をあける時の強度が高いことを意味する。
【0060】
しかし、単にアルミニウム合金薄膜の厚さだけ増加させる場合、成形深さは増加させることができるものの、成形後にアルミニウム合金薄膜にピンホールやクラックが発生して密封耐久性に問題が発生する。そのため、本発明者らは、研究を重ねた結果、結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜を適用する場合、成形深さが増加してもピンホールやクラックの発生を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明者らの研究によると、アルミニウム合金薄膜の結晶粒度が13μmを超える場合には、アルミニウム合金薄膜の強度が低下して成形時にクラックやピンホールの発生が増加し、結晶粒度が10μm未満の場合には、アルミニウム合金薄膜の柔軟性が低下して成形性の向上に限界があった。
【0061】
一方、前記結晶粒度は、アルミニウム合金薄膜の組成およびアルミニウム合金薄膜の加工方法によって変化し、アルミニウム合金薄膜の厚さ方向の断面を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で観測して測定することができる。具体的には、本発明では、走査電子顕微鏡を用いて、アルミニウム合金薄膜の厚さ方向の断面のSEMイメージを取得し、前記SEMイメージから観察される結晶粒のうち任意の30個の結晶粒の最大径を測定した後、これらの平均値を結晶粒度として評価した。
【0062】
本発明によるアルミニウム合金薄膜には、アルミニウム以外の金属元素、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および亜鉛(Zn)からなる群から選択される1種または2種以上が含まれることができる。
【0063】
前記アルミニウム合金薄膜の鉄(Fe)含有量は1.2wt%~1.7wt%、好ましくは1.3wt%~1.7wt%、より好ましくは1.3wt%~1.45wt%であることができる。アルミニウム合金薄膜内の鉄(Fe)含有量が1.2wt%未満の場合には、アルミニウム合金薄膜の強度が低下して成形時にクラックおよびピンホールが発生することができ、1.7wt%を超える場合には、アルミニウム合金薄膜の柔軟性が低下して成形性の向上に限界がある。
【0064】
また、前記アルミニウム合金薄膜のシリコン(Si)含有量は、0.2wt%以下、好ましくは0.05~0.2wt%、より好ましくは0.08~0.19wt%、さらに好ましくは0.1~1.18wt%であることができる。シリコン含有量が0.2wt%を超える場合には、成形性が低下し得る。
【0065】
具体的には、本発明によるアルミニウム合金薄膜は、合金番号AA8021のアルミニウム合金であることができる。
【0066】
図3は、従来、電池用パウチに主に使用されていた合金番号AA8079のアルミニウム合金と本発明で使用される合金番号AA8021のアルミニウム合金の鉄およびシリコンの含量を示すグラフである。
【0067】
図3に図示されているように、合金番号AA8079は、鉄を0.6wt%~1.2wt%含み、シリコンは0.05~0.3wt%含む。一般的に、アルミニウム合金に鉄が多く含有される場合には機械的強度が向上し、鉄が少なく含有される場合には柔軟性が向上する。合金番号AA8079のアルミニウム合金の場合、鉄が相対的に少なく含まれ、これを用いてガスバリア層1352を形成する場合、柔軟性が向上することはできるものの、強度が低下して成形性に限界が存在し得る。
【0068】
一方、合金番号AA8021は、
図3に図示されているように、鉄を1.2wt%~1.7wt%、特に、1.3wt%~1.7wt%含み、シリコンを0.05~1.9wt%、特に、0.08~0.19wt%含む。このような合金番号AA8021のアルミニウム合金でガスバリア層1352を形成する場合、鉄が相対的に多く含まれるため、引張強度(Tensile Strength)、伸び率(Elongation Rate)および穿孔強度(Puncture Strength)が改善することができる。
【0069】
図4には、合金番号AA8079のアルミニウム合金と合金番号AA8021のアルミニウム合金の引張強度(Rm)、伸び率(A)および結晶粒度(grain size)が図示されている。
【0070】
図4に図示されているように、AA8079は、引張強度および伸び率が小さくて成形性の増加に限界があり、結晶粒度が13μm~21μmと相対的に大きいため、延伸される時に内部応力の分散が十分でなく、ピンホール(Pinhole)が多くなる問題がある。
【0071】
一方、AA8021は、引張強度および伸び率が大きくて成形性に優れ、結晶粒度が10μm~13μmと相対的に小さいため、延伸される時に内部応力がより多く分散することができ、ピンホール(Pinhole)の発生を効果的に抑制することができる。
【0072】
一方、ある材料に引張力を印加した時に、引張強度と伸び率との関係をグラフで示すことができる。この際、グラフの縦軸を引張強度、横軸を伸び率とすると、グラフの下の面積が当該材料の靭性(Toughness)である。靭性とは、材料の破壊に対するねばり強さを示し、靭性が高いほど、材料が破壊しないまでより多く延伸することができる。合金番号AA8021のアルミニウム合金でガスバリア層1352を形成する場合、引張強度と伸び率が改善することから、靭性(Toughness)が増加し、成形性が向上することができる。
【0073】
表面保護層1353は、第2ポリマーで最外層として形成されて外部との摩擦および衝突から二次電池1を保護しながら、電極組立体10を外部から電気的に絶縁させる。ここで、最外層とは、前記ガスバリア層1352を基準として電極組立体10が位置する方向の反対方向に向かう時に最後に位置した層を意味する。このような表面保護層1353を形成する第2ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、アクリル系高分子、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、アラミド、ナイロン、ポリエステル、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアリレート、テフロン(登録商標)およびガラス繊維からなる群から選択される一つ以上の物質であることができる。特に、主に、耐磨耗性および耐熱性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマーが使用されることが好ましい。また、表面保護層1353は、いずれか一つの物質からなる単一膜構造を有するか、2個以上の物質がそれぞれ層をなして形成された混合膜構造を有することもできる。
【0074】
本発明の一実施形態によると、このような表面保護層1353の厚さが6μm~25μmであることができる。表面保護層1353の厚さが6μmより薄い場合には、外部絶縁性が低下する問題がある。逆に、仮に表面保護層1353の厚さが25μmより厚い場合には、パウチ全体の厚さが厚くなるため、かえって二次電池1の体積に対するエネルギー密度が低下し得る。
【0075】
一方、PETは、安価で耐久性に優れ、電気絶縁性に優れるが、前記ガスバリア層1352としてよく使用されるアルミニウムとの接着性も弱く、応力を印加して延伸される時の挙動も互いに相違する。したがって、表面保護層1353とガスバリア層1352を直接接着すると、絞り成形の途中に表面保護層1353とガスバリア層1352が剥離されることもある。そのため、ガスバリア層1352が均一に延伸されず、成形性が低下する問題が発生し得る。
【0076】
本発明の一実施形態によると、電池ケース13は、第3ポリマーで形成されると共に、表面保護層1353とガスバリア層1352との間に積層される延伸補助層1354をさらに含むことができる。延伸補助層1354は、表面保護層1353とガスバリア層1352との間に積層され、表面保護層1353とガスバリア層1352が延伸される時に剥離されることを防止する。このような延伸補助層1354を形成する第3ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、アクリル系高分子、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、アラミド、ナイロン、ポリエステル、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアリレート、テフロン(登録商標)およびガラス繊維からなる群から選択される一つ以上の物質であることができる。特に、ナイロン(Nylon)樹脂は、表面保護層1353のポリエチレンテレフタレート(PET)とは接着が容易であり、ガスバリア層1352のアルミニウム合金とは延伸される時の挙動が類似するため、第3ポリマーとしては、主にナイロン(Nylon)樹脂が使用されることが好ましい。また、延伸補助層1354は、いずれか一つの物質からなる単一膜構造を有するか、2個以上の物質がそれぞれ層をなして形成された混合膜構造を有することもできる。
【0077】
上述のように、本発明の一実施形態によると、ガスバリア層1352が略60μm~100μmの厚さを有することから、ガスバリア層1352の成形性が向上する。この際、延伸補助層1354も成形性を向上させるために、延伸補助層1354は、20μm~50μmの厚さを有することができ、特に、25μm~38μmの厚さを有することが好ましい。20μmより薄い場合には、延伸補助層1354がガスバリア層1352の向上した成形性に対応することができず、延伸される途中に破損する可能性がある。逆に、50μmより厚い場合には、パウチ全体の厚さが厚くなるため、二次電池1の体積が増加し、エネルギー密度が低下し得る。
【0078】
一方、本発明によるパウチフィルム積層体は、総厚さが180μm以上、好ましくは180μm~210μmであることができる。パウチフィルム積層体の厚さが180μm以上である場合には、従来に比べてカップ成形深さを深く形成することができる。一方、パウチフィルム積層体の総厚さが過剰に厚い場合には、二次電池の全体体積が増加するため好ましくない。
【0079】
一方、本発明によるパウチフィルム積層体は、特定の厚さおよび結晶粒度を有するアルミニウム合金薄膜を含むことで引張強度および伸び率に優れる。具体的には、本発明によるパウチフィルム積層体は、15mm×80mmのサイズに裁断した後、50mm/minの引張速度で引っ張りながら測定した引張強度が、200N/15mm~300N/15mm、好ましくは210N/15mm~270N/15mm、より好ましくは220N/15mm~250N/15mmであり、伸び率が、105%~150%、好ましくは105%~140%、さらに好ましくは105%~130%であることができる。このように、本発明によるパウチフィルム積層体は、引張強度および伸び率が高く、それによって靭性(Toughness)が増加し、カップ成形時に成形深さが大きい場合にもクラックの発生が少ない。
【0080】
また、本発明によるパウチフィルム積層体は、特定の厚さおよび結晶粒度を有するアルミニウム合金薄膜を含むことで穿孔強度に優れる。具体的には、本発明によるパウチフィルム積層体は、穿孔強度が30N以上、好ましくは30N~40Nであることができる。
【0081】
以下、具体的な実施例により、本発明をより詳細に説明する。
【0082】
(実施例1)
幅266mm、長さ50m、厚さ80μmを有する合金番号AA8021のアルミニウム(Al)合金薄膜の一面に、幅266mm、長さ50m、厚さ25μmを有するナイロンフィルム、および幅266mm、長さ50m、厚さ12μmを有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを、ウレタン接着剤を使用して、ドライラミネーション方式で順に接着し、表面保護層、延伸補助層およびガスバリア層を形成した。
【0083】
次に、無延伸ポリプロピレン(CPP)を高温で溶融させた後、前記アルミニウム(Al)合金薄膜の他面に共押出して厚さ60μmのシーラント層を形成し、パウチフィルム積層体を製造した。パウチフィルム積層体の総厚さは183μmであった。
【0084】
(実施例2)
シーラント層を厚さ80μmに形成した以外は、実施例1と同一の方法でパウチフィルム積層体を製造した。パウチフィルム積層体の総厚さは203μmであった。
【0085】
(比較例1)
ガスバリア層として厚さが40μmである合金番号AA8021のアルミニウム合金薄膜、延伸補助層として厚さが15μmであるナイロンフィルムを使用し、シーラント層の厚さを80μmに形成した以外は、実施例1と同一の方法でパウチフィルム積層体を製造した。パウチフィルム積層体の総厚さは153μmであった。
【0086】
(比較例2)
ガスバリア層として厚さが50μmである合金番号AA8021のアルミニウム合金薄膜を使用した以外は、前記実施例1と同一の方法でパウチフィルム積層体を製造した。パウチフィルム積層体の総厚さは153μmであった。
【0087】
(比較例3)
ガスバリア層として厚さが80μmである合金番号AA8079のアルミニウム合金薄膜を使用した以外は、実施例1と同一の方法でパウチフィルム積層体を製造した。パウチフィルム積層体の総厚さは183μmであった。
【0088】
(比較例4)
ガスバリア層として厚さが80μmである合金番号AA8079のアルミニウム合金薄膜を使用した以外は、実施例2と同一の方法でパウチフィルム積層体を製造した。パウチフィルム積層体の総厚さは203μmであった。
【0089】
(比較例5)
ガスバリア層として厚さが40μmである合金番号AA8079のアルミニウム合金薄膜を使用し、延伸補助層として厚さが15μmであるナイロンフィルムを使用し、シーラント層の厚さを80μmに形成した以外は、実施例1と同一の方法でパウチフィルム積層体を製造した。パウチフィルム積層体の総厚さは153μmであった。
【0090】
【0091】
(実験例1:結晶粒度の測定)
前記実施例1および比較例3でガスバリア層として使用されたアルミニウム合金薄膜AA8021およびAA8079の厚さ方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、結晶粒度を測定した。具体的には、走査電子顕微鏡を用いて取得されたアルミニウム合金薄膜の厚さ方向の断面のSEMイメージで観察される30個の結晶粒の最大径を測定した後、これらの平均値を計算する方法で測定した。
【0092】
図5には、AA8021アルミニウム合金薄膜のSEMイメージとAA8079アルミニウム合金薄膜のSEMイメージが図示されている。図示されているSEMイメージに基づいて結晶粒度を測定したところ、AA8021の結晶粒度は11.6μm、AA8079の結晶粒度は16.8μmであった。
【0093】
(実験例2:成形性の評価)
実施例1~2、比較例1~5で製造されたパウチフィルム積層体をそれぞれ90mm×150mmの同一のサイズで裁断した後、横32mm×縦55mmのサイズの成形部を有する電池ケース成形装置で成形深さを変化させて成形を行った。また、それぞれのサンプルでクラックが発生する時の成形深さを記録した。ここで、電池ケース成形装置のパンチと成形部は、コーナーと角にフィレッティング(Filleting、面取り)が施され、パンチのコーナーは2mm、角は1mmの曲率を有し、成形部のコーナーは2.3mm、角は1mmの曲率を有した。また、パンチと成形部のクリアランス(Clearance)は0.3mmであった。測定結果は下記表2に示した。
【0094】
【0095】
前記表2に記載のように、本発明の実施例1および2によるパウチフィルム積層体は、クラックが発生せず、15.0mm以上の深さまで成形が可能であるのに対し、ガスバリア層の厚さおよび/または結晶粒度が本願発明の範囲から逸脱する比較例1~5のパウチフィルム積層体は、15.0mm未満の成形深さでクラックが発生した。したがって、本発明のガスバリア層の厚さおよび結晶粒度を満たす場合、パウチフィルム積層体の成形性が向上することを確認することができる。例えば、本発明の製造例によるパウチフィルム積層体を用いて電池ケースを製造すると、第2ケースおよび第1ケースにそれぞれカップ部が一つずつ形成され、深さ30mm以上の収容空間を有することができる。したがって、より厚い電極組立体が収容されることができ、二次電池の体積に対するエネルギー効率が増加することができる。
【0096】
(実験例3:引張強度および伸び率の評価)
実施例1~2、比較例1~5で製造されたパウチフィルム積層体をそれぞれ15mm×80mmの同一のサイズで5個ずつ裁断した後、引張強度試験機(メーカー:Shimadzu、モデル:AGX-V)の下部治具にそれぞれのサンプルを固定した。そして、上部治具でそれぞれのサンプルを、上端から30mmの地点まで固定した後、上部治具を下部治具から50mm/minの速度で離れるようにしてサンプルを引張した。その後、パウチフィルム積層体が破断する直前の引張強度と伸び率を測定した。測定結果は下記表3および表4に示した。
【0097】
【0098】
【0099】
図6は、本発明の実施例1、比較例1および比較例2によるパウチフィルム積層体に対して、引張強度および伸び率を実験した結果グラフである。
図6および表3~4により、実施例1および2のパウチフィルム積層体が、比較例1~5のパウチフィルム積層体に比べて優れた引張強度および伸び率を有することを確認することができる。
【0100】
一方、引張強度と伸び率との間のグラフにおいて、下の面積が当該材料の靭性(Toughness)であり、
図6に図示されているように、本発明の実施例1によるパウチフィルム積層体のグラフ面積が、比較例1および比較例2によるパウチフィルム積層体のグラフ面積よりも広いことが分かり、これは、本発明による実施例1のパウチフィルム積層体が優れた靭性を有することを示す。
【0101】
(実験例4:穿孔強度(Puncture Strength)の評価)
実施例1~2および比較例1~5で製造されたパウチフィルム積層体をそれぞれ90mm×80mmの同一のサイズで10個ずつ裁断した後、穿孔強度試験機(メーカー:Shimadzu、モデル:AGX-V)の治具に水平に固定した。直径1.0mm、チップの曲率0.5mmであるピンを前記設置されたサンプルの上方に垂直に設置した。そして、前記ピンを前記サンプルにそれぞれ落下し、サンプルの穿孔強度を測定した。測定結果は下記表5に示した。
【0102】
【0103】
図7は、本発明の実施例1、比較例1および比較例2によるパウチフィルム積層体に対して穿孔強度を実験した結果グラフである。
図7および表5により、本発明の実施例1および2のパウチフィルム積層体が、比較例1~5のパウチフィルムに比べて優れた穿孔強度を有することを確認することができる。すなわち、本発明によるパウチフィルム積層体が外部から大きい圧力を受けるか鋭い物体に刺されて破損しても、内部の電極組立体をより効果的に保護することができる。
【0104】
(実験例5:絶縁性の評価)
実施例1および実施例2により製造されたパウチフィルム積層体をそれぞれ90mm×150mmの同一のサイズで裁断してから60度の真空オーブンで24時間保管した後、ドライルームで絶縁破壊電圧を測定した。具体的には、前記パウチフィルム積層体の両側に厚さ5tのアルミニウム薄膜を配置し、測定装置の(+)電極を前記パウチフィルム積層体のガスバリア層に連結し、(-)電極をシーラント層に接触したアルミニウム薄膜に連結した後、100V/sの速度で電圧を印加しながら測定されたリーク電流が0.5mA以上である時の印加電圧を絶縁破壊電圧として評価した。測定結果は下記表6に示した。
【0105】
【0106】
前記表6により、シーラント層の厚さが80μmである実施例2のパウチフィルム積層体の絶縁破壊電圧が、シーラント層の厚さが60μmである実施例1のパウチフィルム積層体より高いことを確認することができ、これは、シーラント層の厚さが80μmである時に、より優れた絶縁特性を有することを示す。
【0107】
本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須な特徴を変更しなくても他の具体的な形態に実施され得ることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施形態は、すべての面において例示的なものであって限定的なものではないことを理解すべきである。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲またその均等概念から導き出される様々な実施形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【符号の説明】
【0108】
1 二次電池
10 電極組立体
11 電極タブ
12 電極リード
13 電池ケース
14 絶縁部
111 正極タブ
112 負極タブ
121 正極リード
122 負極リード
131 第1ケース
132 第2ケース
133 カップ部
134 シーリング部
135 パウチフィルム積層体
1331 収容空間
1351 シーラント層
1352 ガスバリア層
1353 表面保護層
1354 延伸補助層
【手続補正書】
【提出日】2024-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体を収納するパウチ型電池ケースであって、
第1ポリマーで最内層として形成されるシーラント層と、
第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層と、
前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層され、アルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層とを含むパウチフィルム積層体を含み、
前記パウチフィルム積層体は総厚さが180μm以上であり、
前記シーラント層の厚さは前記ガスバリア層の厚さの0.6倍~1.2倍である、パウチ型電池ケース。
【請求項2】
前記アルミニウム合金薄膜は、
鉄を1.2wt%~1.7wt%含む、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項3】
前記アルミニウム合金薄膜は、
シリコンを0.2wt%以下含む、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項4】
前記アルミニウム合金薄膜は、
結晶粒度が10μm~13μmである、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項5】
前記アルミニウム合金薄膜は、
合金番号がAA8021である、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項6】
前記ガスバリア層は、
厚さが60μm~100μmである、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項7】
前記シーラント層は、
厚さが30μm~90μmである、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項8】
前記第1ポリマーは、
ポリプロピレン(PP)を含む、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項9】
前記表面保護層は、
厚さが6μm~25μmである、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項10】
前記第2ポリマーは、
ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項11】
第3ポリマーで形成されると共に、前記表面保護層と前記ガスバリア層との間に積層される延伸補助層をさらに含む、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項12】
前記延伸補助層は、
厚さが20μm~50μmである、請求項11に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項13】
前記第3ポリマーは、
ナイロン(Nylon)を含む、請求項11に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項14】
前記パウチフィルム積層体は、15mm×80mmのサイズで裁断した後、50mm/minの引張速度で引っ張りながら測定した引張強度が200N/15mm~300N/15mmであり、伸び率が105%~150%である、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項15】
前記パウチフィルム積層体は、穿孔強度が30N以上である、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項16】
正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体と、
前記電極組立体を収納するパウチ型電池ケースとを含み、
前記パウチ型電池ケースは、
第1ポリマーで最内層として形成されるシーラント層と、
第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層と、
前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層され、アルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層とを含むパウチフィルム積層体を含み、
前記パウチフィルム積層体は総厚さが180μm以上であり、
前記シーラント層の厚さは前記ガスバリア層の厚さの0.6倍~1.2倍である、パウチ型二次電池。
【外国語明細書】