(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125409
(43)【公開日】2024-09-18
(54)【発明の名称】積層型コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240910BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240910BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/00 G
H01F27/29 123
H01F17/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106768
(22)【出願日】2024-07-02
(62)【分割の表示】P 2023061614の分割
【原出願日】2019-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】比留川 敦夫
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高周波特性に優れる積層型コイル部品を提供する。
【解決手段】積層型コイル部品1は、複数の絶縁層31、35a、35bが積層され、コイル30を内蔵する積層体10と、コイルに電気的に接続されている外部電極21、22を備え、絶縁層とともに積層されたコイル導体32が電気的に接続され、積層体は、長さ方向xにおいて相対する端面11、12と、高さ方向yにおいて相対する主面13、14と側面とを有し、外部電極は、端面の少なくとも一部を覆い、積層体の積層方向とコイル軸方向とは、第1の主面と平行であり、積層方向に隣り合うコイル導体間の距離D
Cは、4μm以上、8μm以下であり、コイル導体は、ライン部とランド部とを有し、積層方向に隣り合うコイル導体のランド部は、ビア導体を介して互いに接続されており、ライン部の幅は、30μm以上、50μm以下であり、コイル導体の内径が、50μm以上、100μm以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が長さ方向に積層されてなり、内部にコイルを内蔵する積層体と、
前記コイルに電気的に接続されている第1の外部電極及び第2の外部電極と、を備え、
前記コイルは、前記絶縁層とともに前記長さ方向に積層された複数のコイル導体が電気的に接続されてなり、
前記積層体は、前記長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面と、前記長さ方向と直交する高さ方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、前記長さ方向及び前記高さ方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、を有し、
前記第1の外部電極は、前記第1の端面の少なくとも一部を覆い、
前記第2の外部電極は、前記第2の端面の少なくとも一部を覆い、
前記積層体の積層方向と前記コイルのコイル軸方向とは、前記第1の主面と平行であり、
前記積層方向に隣り合う前記コイル導体間の距離は、4μm以上、8μm以下であり、
前記コイル導体は、ライン部と、前記ライン部の端部に配置されるランド部と、を有し、
前記積層方向に隣り合う前記コイル導体の前記ランド部は、ビア導体を介して互いに接続されており、
前記ライン部の幅は、30μm以上、50μm以下であり、
50GHzでの透過係数S21が-1.2dB以上であることを特徴とする、積層型コイル部品。
【請求項2】
50GHzでの透過係数S21が-1.0dB以上である請求項1に記載の積層型コイル部品。
【請求項3】
前記ライン部の幅は、30μm以上、40μm以下である請求項1又は2に記載の積層型コイル部品。
【請求項4】
前記コイル導体の内径が、50μm以上、80μm以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の積層型コイル部品。
【請求項5】
前記積層方向に隣り合う前記コイル導体間の距離は、5μm以上、7μm以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の積層型コイル部品。
【請求項6】
前記コイル導体の積層数は40以上、60以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の積層型コイル部品。
【請求項7】
前記積層体の長さ寸法は、560μm以上、600μm以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の積層型コイル部品。
【請求項8】
前記積層方向における前記コイル導体の配置領域の寸法は、前記積層体の長さ寸法の85%以上、95%以下である請求項1~7のいずれか1項に記載の積層型コイル部品。
【請求項9】
前記積層方向における前記コイル導体の配置領域の寸法は、前記積層体の長さ寸法の90%以上、95%以下である請求項1~8のいずれか1項に記載の積層型コイル部品。
【請求項10】
前記第1の主面が実装面であり、
前記第1の外部電極は、前記第1の端面の一部と前記第1の主面の一部とを延伸して覆い、
前記第2の外部電極は、前記第2の端面の一部と前記第1の主面の一部とを延伸して覆う、請求項1~9のいずれか1項に記載の積層型コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気機器の通信速度の高速化、及び、小型化に応じて、積層型インダクタには高周波帯(例えば、50GHz以上のGHz帯)での高周波特性が充分であることが求められている。
積層型コイル部品として、例えば、特許文献1には、絶縁性部材の積層方向とコイルの軸方向が実装面に対して平行である積層型インダクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の積層型インダクタにおいては、外部電極は積層体の両端部へのスパッタリング、真空蒸着等の手段によって形成されている。しかし、特許文献1に記載の積層型インダクタでは、50GHz以上のGHz帯での高周波特性が充分ではないおそれがある。
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、高周波特性に優れる積層型コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層型コイル部品は、複数の絶縁層が長さ方向に積層されてなり、内部にコイルを内蔵する積層体と、上記コイルに電気的に接続されている第1の外部電極及び第2の外部電極と、を備え、上記コイルは、上記絶縁層とともに上記長さ方向に積層された複数のコイル導体が電気的に接続されてなり、上記積層体は、上記長さ方向において相対する第1の端面及び第2の端面と、上記長さ方向と直交する高さ方向において相対する第1の主面及び第2の主面と、上記長さ方向及び上記高さ方向に直交する幅方向において相対する第1の側面及び第2の側面と、を有し、上記第1の外部電極は、上記第1の端面の少なくとも一部を覆い、上記第2の外部電極は、上記第2の端面の少なくとも一部を覆い、上記積層体の積層方向と上記コイルのコイル軸方向とは、上記第1の主面と平行であり、上記積層方向に隣り合う上記コイル導体間の距離は、4μm以上、8μm以下であり、上記コイル導体は、ライン部と、上記ライン部の端部に配置されるランド部と、を有し、上記積層方向に隣り合う上記コイル導体の上記ランド部は、ビア導体を介して互いに接続されており、上記ライン部の幅は、30μm以上、50μm以下であり、上記コイル導体の内径が、50μm以上、100μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高周波特性に優れる積層型コイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の積層型コイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1に示す積層型コイル部品の側面図であり、
図2(b)は、
図1に示す積層型コイル部品の正面図であり、
図2(c)は、
図1に示す積層型コイル部品の底面図である。
【
図3】
図3は、本発明の積層型コイル部品の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解斜視模式図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解平面模式図である。
【
図6】
図6は、コイル導体の繰り返し形状を模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の積層型コイル部品の他の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図8(a)は、
図7に示す積層型コイル部品の側面図であり、
図8(b)は、
図7に示す積層型コイル部品の正面図であり、
図8(c)は、
図7に示す積層型コイル部品の底面図である。
【
図9】
図9は、透過係数S21を測定する方法を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、試料1~5の透過係数S21を示すグラフである。
【
図11】
図11は、試料6~10の透過係数S21を示すグラフである。
【
図12】
図12は、試料11~15の透過係数S21を示すグラフである。
【
図13】
図13は、試料3及び16の透過係数S21を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の積層型コイル部品について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0010】
図1は、本発明の積層型コイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
図2(a)は、
図1に示す積層型コイル部品の側面図であり、
図2(b)は、
図1に示す積層型コイル部品の正面図であり、
図2(c)は、
図1に示す積層型コイル部品の底面図である。
【0011】
図1、
図2(a)、
図2(b)及び
図2(c)に示す積層型コイル部品1は、積層体10と第1の外部電極21と第2の外部電極22とを備えている。積層体10は、6面を有する略直方体形状である。積層体10の構成については後述するが、複数の絶縁層が長さ方向に積層されてなり、内部にコイルを内蔵している。第1の外部電極21及び第2の外部電極22は、それぞれ、コイルに電気的に接続されている。
【0012】
本発明の積層型コイル部品及び積層体では、長さ方向、高さ方向、幅方向を、
図1におけるx方向、y方向、z方向とする。ここで、長さ方向(x方向)と高さ方向(y方向)と幅方向(z方向)は互いに直交する。
【0013】
図1、
図2(a)、
図2(b)及び
図2(c)に示すように、積層体10は、長さ方向(x方向)に相対する第1の端面11及び第2の端面12と、長さ方向に直交する高さ方向(y方向)に相対する第1の主面13及び第2の主面14と、長さ方向及び高さ方向に直交する幅方向(z方向)に相対する第1の側面15及び第2の側面16とを有する。
【0014】
図1には示されていないが、積層体10は、角部及び稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。角部は、積層体の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体の2面が交わる部分である。
【0015】
第1の外部電極21は、
図1、
図2(a)、
図2(b)及び
図2(c)に示すように、積層体10の第1の端面11の全部を覆い、かつ、第1の端面11から延伸して第1の主面13の一部、第2の主面14の一部、第1の側面15の一部、及び、第2の側面16の一部を覆っている。
また第2の外部電極22は、積層体10の第2の端面12の全部を覆い、かつ、第2の端面12から延伸して第1の主面13の一部、第2の主面14の一部、第1の側面15の一部、及び、第2の側面16の一部を覆っている。
【0016】
以上のように第1の外部電極21及び第2の外部電極22が配置されているため、積層型コイル部品1を基板上に実装する場合には、積層体10の第1の主面13、第2の主面14、第1の側面15、及び第2の側面16のいずれかが実装面となる。
【0017】
本発明の積層型コイル部品のサイズは特に限定されないが、0603サイズであることが好ましい。
【0018】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の長さ(
図2(a)中、両矢印L
1で示される長さ)は、0.63mm以下であることが好ましく、0.57mm以上であることが好ましく、0.60mm(600μm)以下、0.56mm(560μm)以上であることがより好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の幅(
図2(c)中、両矢印W
1で示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の高さ(
図2(b)中、両矢印T
1で示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
【0019】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層型コイル部品の長さ(
図2(a)中、両矢印L
2で示される長さ)は、0.63mm以下であることが好ましく、0.57mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層型コイル部品の幅(
図2(c)中、両矢印W
2で示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層型コイル部品の高さ(
図2(b)中、両矢印T
2で示される長さ)は、0.33mm以下であることが好ましく、0.27mm以上であることが好ましい。
【0020】
本発明の積層型コイル部品が0603サイズである場合、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さ(
図2(c)中、両矢印E
1で示される長さ)は、0.12mm以上、0.22mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さは、0.12mm以上、0.22mm以下であることが好ましい。
なお、積層体の第1の主面を覆う部分の第1の外部電極の長さ、及び、積層体の第1の主面を覆う部分の第2の外部電極の長さが一定でない場合、最も長い部分の長さが上記範囲にあることが好ましい。
【0021】
本発明の積層型コイル部品を構成する積層体が内蔵するコイルについて説明する。
コイルは、絶縁層とともに長さ方向に積層された複数のコイル導体が電気的に接続されることにより形成される。
【0022】
図3は、本発明の積層型コイル部品の一例を模式的に示す断面図であり、
図4は、
図3に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解斜視模式図であり、
図5は、
図3に示す積層型コイル部品を構成する絶縁層の様子を模式的に示す分解平面模式図である。
図3は、絶縁層、コイル導体及び連結導体、並びに、積層体の積層方向を模式的に示すものであり、実際の形状及び接続等を厳密には表していない。例えば、コイル導体はビア導体を介して接続されている。
【0023】
図3に示すように、積層型コイル部品1は、絶縁層とともに積層された複数のコイル導体32が電気的に接続されることにより形成されるコイルを内蔵する積層体10と、コイルに電気的に接続される第1の外部電極21及び第2の外部電極22を備える。
積層体10には、コイル導体が配置された領域と、連結導体41又は連結導体42が配置された領域とが存在する。積層体10の積層方向、及び、コイルの軸方向(
図3中、コイル軸Aを示す)は、第1の主面13に対して平行である。
【0024】
積層方向におけるコイル導体32の配置領域の寸法L3は、積層体10の長さ寸法L1の85%以上、95%以下となっていることが好ましく、90%以上、95%以下となっていることがより好ましい。積層方向におけるコイル導体32の配置領域の寸法L3が、積層体10の長さ寸法の85%以上、95%以下であると、積層体に占める連結導体の長さが短くなることに起因して、浮遊容量が小さくなり、高周波特性が向上する。
【0025】
積層体10の積層方向に隣り合うコイル導体32間の距離DCは、4μm以上、8μm以下である。積層体10の積層方向に隣り合うコイル導体32間の距離DCが4μm以上、8μm以下であると、高周波特性が向上する。
積層方向に隣り合うコイル導体間の距離DCが4μm未満であると、浮遊容量が増加し、高周波特性が低下してしまう。一方、積層方向に隣り合うコイル導体間の距離DCが8μmを超えると、コイルのインダクタンスが低下してしまう。
【0026】
図4及び
図5に示すように、積層体10は、
図3中の絶縁層31として、絶縁層31aと、絶縁層31bと、絶縁層31cと、絶縁層31dと、を有している。積層体10は、
図3中の絶縁層35aとして、絶縁層35a
1と、絶縁層35a
2と、絶縁層35a
3と、絶縁層35a
4と、を有している。積層体10は、
図3中の絶縁層35bとして、絶縁層35b
1と、絶縁層35b
2と、絶縁層35b
3と、絶縁層35b
4と、を有している。
【0027】
コイル30は、
図3中のコイル導体32として、コイル導体32aと、コイル導体32bと、コイル導体32cと、コイル導体32dと、を有している。
【0028】
コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dは、各々、絶縁層31a、絶縁層31b、絶縁層31c、及び、絶縁層31dの主面上に配置されている。
【0029】
コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dの長さは、各々、コイル30の3/4ターンの長さである。つまり、コイル30の3ターンを構成するためのコイル導体の積層数は4である。積層体10においては、コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dが1つの単位(3ターン分)として繰り返し積層されている。
【0030】
コイル導体32aは、ライン部36aと、ライン部36aの端部に配置されるランド部37aと、を有している。コイル導体32bは、ライン部36bと、ライン部36bの端部に配置されるランド部37bと、を有している。コイル導体32cは、ライン部36cと、ライン部36cの端部に配置されるランド部37cと、を有している。コイル導体32dは、ライン部36dと、ライン部36dの端部に配置されるランド部37dと、を有している。
【0031】
絶縁層31a、絶縁層31b、絶縁層31c、及び、絶縁層31dには、各々、ビア導体33a、ビア導体33b、ビア導体33c、及び、ビア導体33dが積層方向に貫通するように配置されている。
【0032】
コイル導体32a及びビア導体33a付きの絶縁層31aと、コイル導体32b及びビア導体33b付きの絶縁層31bと、コイル導体32c及びビア導体33c付きの絶縁層31cと、コイル導体32d及びビア導体33d付きの絶縁層31dとは、1つの単位(
図4及び
図5中の点線で囲まれた部分)として繰り返し積層されている。これにより、コイル導体32aのランド部37aと、コイル導体32bのランド部37bと、コイル導体32cのランド部37cと、コイル導体32dのランド部37dとは、ビア導体33a、ビア導体33b、ビア導体33c、及び、ビア導体33dを介して接続される。つまり、積層方向に隣り合うコイル導体のランド部は、ビア導体を介して互いに接続される。
【0033】
以上により、積層体10に内蔵されるソレノイド状のコイル30が構成される。
【0034】
積層方向から平面視したとき、コイル導体32a、コイル導体32b、コイル導体32c、及び、コイル導体32dで構成されるコイル30は、円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。積層方向から平面視したとき、コイル30が多角形状である場合、多角形の面積相当円の直径をコイル30のコイル径とし、多角形の重心を通り積層方向に延伸する軸をコイル30のコイル軸とする。
【0035】
積層方向から平面視したとき、ランド部37a、ランド部37b、ランド部37c、及び、ランド部37dの径は、各々、
図5に示すように、ライン部36a、ライン部36b、ライン部36c、及び、ライン部36dの線幅よりも大きいことが好ましい。
【0036】
積層方向から平面視したとき、ランド部37a、ランド部37b、ランド部37c、及び、ランド部37dは、各々、
図5に示すような円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。積層方向から平面視したとき、ランド部37a、ランド部37b、ランド部37c、及び、ランド部37dが多角形状である場合、多角形の面積相当円の直径を各ランド部の径とする。
【0037】
絶縁層35a1、絶縁層35a2、絶縁層35a3、及び、絶縁層35a4には、各々、ビア導体33pが積層方向に貫通するように配置されている。絶縁層35a1、絶縁層35a2、絶縁層35a3、及び、絶縁層35a4の主面上には、ビア導体33pに接続されるランド部が配置されていてもよい。
【0038】
ビア導体33p付きの絶縁層35a1と、ビア導体33p付きの絶縁層35a2と、ビア導体33p付きの絶縁層35a3と、ビア導体33p付きの絶縁層35a4とは、コイル導体32a及びビア導体33a付きの絶縁層31aと重なるように積層されている。これにより、ビア導体33p同士がつながって第1の連結導体41を構成し、第1の連結導体41が第1の端面11に露出する。その結果、第1の外部電極21とコイル30とが、第1の連結導体41を介して互いに接続される。
【0039】
第1の連結導体41は、上述したように、第1の外部電極21とコイル30との間を直線状に接続することが好ましい。第1の連結導体41が第1の外部電極21とコイル30との間を直線状に接続するとは、積層方向から平面視したとき、第1の連結導体41を構成するビア導体33p同士が重なっていることを意味し、ビア導体33p同士は厳密に直線状に並んでいなくてもよい。
【0040】
絶縁層35b1、絶縁層35b2、絶縁層35b3、及び、絶縁層35b4には、各々、ビア導体33qが積層方向に貫通するように配置されている。絶縁層35b1、絶縁層35b2、絶縁層35b3、及び、絶縁層35b4の主面上には、ビア導体33qに接続されるランド部が配置されていてもよい。
【0041】
ビア導体33q付きの絶縁層35b1と、ビア導体33q付きの絶縁層35b2と、ビア導体33q付きの絶縁層35b3と、ビア導体33q付きの絶縁層35b4とは、コイル導体32d及びビア導体33d付きの絶縁層31dと重なるように積層されている。これにより、ビア導体33q同士がつながって第2の連結導体42を構成し、第2の連結導体42が第2の端面12に露出する。その結果、第2の外部電極22とコイル30(コイル導体32d)とが、第2の連結導体42を介して互いに接続される。
【0042】
第2の連結導体42は、上述したように、第2の外部電極22とコイル30との間を直線状に接続することが好ましい。第2の連結導体42が第2の外部電極22とコイル30との間を直線状に接続するとは、積層方向から平面視したとき、第2の連結導体42を構成するビア導体33q同士が重なっていることを意味し、ビア導体33q同士は厳密に直線状に並んでいなくてもよい。
【0043】
なお、第1の連結導体41を構成するビア導体33pと第2の連結導体42を構成するビア導体33qとの各々にランド部が接続されている場合、第1の連結導体41及び第2の連結導体42の形状は、ランド部を除いた形状を意味する。
【0044】
図4及び
図5では、コイル30の3ターンを構成するためのコイル導体の積層数が4である場合、すなわち、繰り返し形状が3/4ターン形状である場合を例示したが、コイルの1ターンを構成するためのコイル導体の積層数は特に限定されない。
例えば、コイルの1ターンを構成するためのコイル導体の積層数が2、すなわち、繰り返し形状が1/2ターン形状であってもよい。
【0045】
積層方向から平面視したときに、コイルを構成するコイル導体は互いに重なることが好ましい。また、積層方向から平面視したとき、コイルの形状は円形であることが好ましい。なお、コイルがランド部を含む場合には、ランド部を除いた形状(すなわちライン部の形状)をコイルの形状とする。
また、連結導体を構成するビア導体にランド部が接続されている場合には、ランド部を除いた形状(すなわちビア導体の形状)を連結導体の形状とする。
【0046】
なお、
図4に示すコイル導体は、繰り返しパターンが円形となるような形状であるが、繰り返しパターンが四角形等の多角形となるようなコイル導体であってもよい。
またコイル導体の繰り返し形状は3/4ターン形状ではなく、1/2ターン形状であってもよい。
【0047】
図6は、コイル導体の繰り返し形状を模式的に示す平面図である。
図6に示すように、コイル導体32の繰り返し形状は円形となっている。
コイル導体32の内径R
cは50μm以上、100μm以下となっている。また、コイル導体32を構成するライン部の幅W
cは30μm以上、50μm以下となっている。
【0048】
積層方向に隣り合うコイル導体間の距離を4μm以上、8μm以上とし、コイル導体のライン部の幅を30μm以上、50μm以下とし、コイル導体の内径を50μm以上、100μm以上とすることで、積層方向に隣り合うコイル導体間の浮遊容量が小さくなるため、高周波特性が向上し、50GHzでの透過係数S21を-1.2dB以上とすることができる。
積層型コイル部品の50GHzでの透過係数S21が-1.2dB以上である場合、例えば、光通信回路内のバイアスティー(Bias-Tee)回路等に好適に使用できる。透過係数S21は、入力信号に対する透過信号の電力の比から求められる。周波数毎の透過係数S21は、例えば、ネットワークアナライザを用いて求められる。透過係数S21は、基本的に無次元量であるが、通常、常用対数をとってdB単位で表される。
【0049】
ライン部の幅は、30μm以上、50μm以下であり、より好ましくは30μm以上、40μm以下である。ライン部の線幅が30μmよりも小さい場合、コイルの直流抵抗が大きくなる。ライン部の線幅が50μmよりも大きい場合、コイルの静電容量が大きくなるため、積層型コイル部品の高周波特性が低下する。
ライン部の幅を30μm以上、40μm以下とすることにより、積層型コイル部品の50GHzでの透過係数S21を-1.0dB以上とすることができる。
【0050】
コイル導体の内径は、50μm以上、100μm以下であり、より好ましくは、50μm以上、80μm以下である。
コイル導体の内径が50μmよりも小さい場合、コイルのインダクタンスが低下してしまう。コイル導体の内径が100μmよりも大きい場合、コイルの静電容量が大きくなるため、積層型コイル部品の高周波特性が低下する。
コイル導体の内径を50μm以上、80μm以下とすることにより、積層型コイル部品の50GHzでの透過係数S21を-1.0dB以上とすることができる。
【0051】
積層方向に隣り合うコイル導体間の距離は4μm以上、8μm以下であり、好ましくは、5μm以上、7μm以下である。
積層方向に隣り合うコイル導体間の距離を5μm以上、7μm以下とすることにより、積層型コイル部品の50GHzでの透過係数S21を-1.0dB以上とすることができる。
【0052】
積層方向から平面視したとき、コイル導体において、ランド部の外周縁は、ライン部の内周縁と接していることが好ましい。これにより、ライン部の外周縁の外側に位置するランド部の面積が充分小さくなり、ランド部に起因する浮遊容量が充分小さくなるため、積層型コイル部品の高周波特性がより向上する。
【0053】
積層方向から平面視したときのランド部の形状は、円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。ランド部の形状が多角形状である場合、多角形の面積相当円の直径をランド部の径とする。
【0054】
コイル導体の厚みは特に限定されないが、3μm以上、6μm以下であることが好ましい。
【0055】
コイル導体の積層数は特に限定されないが、40以上、60以下であることが好ましい。
コイル導体の積層数が40未満であると、浮遊容量が大きくなり、透過係数S21が低下する。一方、コイル導体の積層数が60を超えると、直流抵抗(Rdc)が大きくなる。
コイル導体の積層数を40以上、60以下とすることで、50GHzでの透過係数S21を向上させることができる。
【0056】
本発明の積層型コイル部品は、積層方向から平面視したときに、ランド部が、ライン部の内周縁よりも内側に位置せず、かつ、ライン部と部分的に重なることが好ましい。
ランド部がライン部の内周縁よりも内側に位置すると、インピーダンスが低下してしまうことがある。
また、積層方向から平面視したときに、ランド部の径は、ライン部の線幅の1.05倍以上、1.3倍以下であることが好ましい。
ランド部の径がライン部の線幅の1.05倍未満であると、ランド部とビア導体との接続が不充分となることがある。一方、ランド部の径がライン部の線幅の1.3倍を超えると、ランド部に起因する浮遊容量が大きくなるため、高周波特性が低下することがある。
【0057】
本明細書において、積層方向に隣り合うコイル導体間の距離とは、ビアを介して接続されているコイル導体間の積層方向における最短距離である。従って、積層方向に隣り合うコイル導体間の距離と、浮遊容量を発生させるコイル導体間の距離とは、必ずしも一致しない。
【0058】
本発明の積層型コイル部品において、実装面は特に限定されないが、第1の主面が実装面であることが好ましい。
第1の主面が実装面である場合には、第1の外部電極が、第1の端面の一部と第1の主面の一部とを延伸して覆い、第2の外部電極が、第2の端面の一部と第1の主面の一部とを延伸して覆うことが好ましい。
【0059】
第1の主面が実装面である場合の外部電極の形状の例について、
図7、
図8(a)、
図8(b)及び
図8(c)を用いて説明する。
図7は、本発明の積層型コイル部品の他の一例を模式的に示す斜視図であり、
図8(a)は、
図7に示す積層型コイル部品の側面図であり、
図8(b)は、
図7に示す積層型コイル部品の正面図であり、
図8(c)は、
図7に示す積層型コイル部品の底面図である。
【0060】
図7、
図8(a)、
図8(b)及び
図8(c)に示す積層型コイル部品2は、積層体10と第1の外部電極121と第2の外部電極122とを備えている。積層体10の構成については、
図1、
図2(a)、
図2(b)及び
図2(c)に示した積層型コイル部品1を構成する積層体10と同じである。
【0061】
第1の外部電極121は、
図7及び
図8(b)に示すように、積層体10の第1の端面11の一部を覆い、かつ、
図7及び
図8(c)に示すように、第1の端面11から延伸して第1の主面13の一部を覆って配置されている。
図8(b)に示すように、第1の外部電極121は、第1の端面11のうち、第1の主面13と交わる稜線部を含む領域を覆っているが、第1の端面11から延伸して第2の主面14を覆っていてもよい。
【0062】
なお、
図8(b)では、積層体10の第1の端面11を覆う部分の第1の外部電極121の高さは一定であるが、積層体10の第1の端面11の一部を覆う限り、第1の外部電極121の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1の端面11において、第1の外部電極121は、端部から中央部に向かって高くなる山なり形状であってもよい。また、
図8(c)では、積層体10の第1の主面13を覆う部分の第1の外部電極121の長さは一定であるが、積層体10の第1の主面13の一部を覆う限り、第1の外部電極121の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1の主面13において、第1の外部電極121は、端部から中央部に向かって長くなる山なり形状であってもよい。
【0063】
図7及び
図8(a)に示すように、第1の外部電極121は、さらに、第1の端面11及び第1の主面13から延伸して第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていてもよい。この場合、
図8(a)に示すように、第1の側面15及び第2の側面16を覆う部分の第1の外部電極121は、いずれも、第1の端面11と交わる稜線部及び第1の主面13と交わる稜線部に対して斜めに形成されていることが好ましい。なお、第1の外部電極121は、第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていなくてもよい。
【0064】
第2の外部電極122は、積層体10の第2の端面12の一部を覆い、かつ、第2の端面12から延伸して第1の主面13の一部を覆って配置されている。第1の外部電極121と同様、第2の外部電極122は、第2の端面12のうち、第1の主面13と交わる稜線部を含む領域を覆っている。
また、第1の外部電極121と同様に、第2の外部電極122は、第2の端面12から延伸して、第2の主面14の一部、第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆っていてもよい。
【0065】
第1の外部電極121と同様、積層体10の第2の端面12の一部を覆う限り、第2の外部電極122の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第2の端面12において、第2の外部電極122は、端部から中央部に向かって高くなる山なり形状であってもよい。また、積層体10の第1の主面13の一部を覆う限り、第2の外部電極122の形状は特に限定されない。例えば、積層体10の第1の主面13において、第2の外部電極122は、端部から中央部に向かって長くなる山なり形状であってもよい。
【0066】
第1の外部電極121と同様、第2の外部電極122は、さらに、第2の端面12及び第1の主面13から延伸して、第2の主面14の一部、第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていてもよい。この場合、第1の側面15及び第2の側面16を覆う部分の第2の外部電極122は、いずれも、第2の端面12と交わる稜線部及び第1の主面13と交わる稜線部に対して斜めに形成されていることが好ましい。なお、第2の外部電極122は、第2の主面14の一部、第1の側面15の一部及び第2の側面16の一部を覆って配置されていなくてもよい。
【0067】
以上のように第1の外部電極121及び第2の外部電極122が配置されているため、積層型コイル部品2を基板上に実装する場合には、積層体10の第1の主面13が実装面となる。
【0068】
積層体の第1の端面を覆う部分の第1の外部電極の高さ(
図8(b)中、両矢印E
2で示される長さ)は、0.10mm以上、0.20mm以下であることが好ましい。同様に、積層体の第2の端面を覆う部分の第2の外部電極の高さは、0.10mm以上、0.20mm以下であることが好ましい。この場合、外部電極に起因する浮遊容量を低減することができる。
なお、積層体の第1の端面を覆う部分の第1の外部電極の高さ、及び、積層体の第2の端面を覆う部分の第2の外部電極の高さが一定でない場合、最も高い部分の高さが上記範囲にあることが好ましい。
【0069】
図7、
図8(a)、
図8(b)及び
図8(c)に示す積層型コイル部品2は、
図1、
図2(a)、
図2(b)及び
図2(c)に示す積層型コイル部品1と比較して、外部電極が設けられている面積が小さいため、積層型コイル部品1よりも浮遊容量を低減し、高周波特性を向上させることができる。
【0070】
図7、
図8(a)、
図8(b)及び
図8(c)に示す外部電極の形状を採用する場合、第1の連結導体及び第2の連結導体は、コイル導体のうち、第1の主面に最も近い部分に接続されていることが好ましい。これにより、第1の端面及び第2の端面を覆う第1の外部電極121及び第2の外部電極122の高さE
2を低くすることができる。高さE
2が低くなることにより、外部電極とコイルとの間の浮遊容量を低減し、高周波特性を向上させることができる。
【0071】
[積層型コイル部品の製造方法]
本発明の積層型コイル部品の製造方法の一例について説明する。
【0072】
最初に、後に絶縁層となるセラミックグリーンシートを作製する。例えば、まず、フェライト材料に、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、分散剤と、等を加えて混練し、スラリー状にする。その後、ドクターブレード法等の方法によって、厚みが10~25μm程度のセラミックグリーンシートを作製する。
セラミックグリーンシートの厚みが10~25μm程度であると、積層体において積層方向に隣接するコイル導体間の距離を4μm以上、8μm以下に調整しやすい。
【0073】
フェライト材料としては、例えば、下記の方法で作製されるものが挙げられる。まず、鉄、ニッケル、亜鉛、及び、銅の酸化物原料を混合し、800℃で1時間仮焼成する。その後、得られた仮焼成物をボールミルによって粉砕し、乾燥させることによって、平均粒径が約2μmのNi-Zn-Cu系のフェライト材料(酸化物混合粉末)を作製する。
【0074】
フェライト材料を用いてセラミックグリーンシートを作製する場合、高いインダクタンスを得るためには、フェライト材料の組成が、Fe2O3:40mоl%以上、49.5mоl%以下、ZnO:5mоl%以上、35mоl%以下、CuO:4mоl%以上、12mоl%以下、残部:NiO及び微量添加剤(不可避不純物を含む)、であることが好ましい。
【0075】
セラミックグリーンシートの材料としては、上述したフェライト材料等の磁性材料以外に、例えば、ガラスセラミック材料等の非磁性材料、磁性材料及び非磁性材料の混合材料、等を用いてもよい。
【0076】
次に、セラミックグリーンシートに、後にコイル導体及びビア導体となる導体パターンを形成する。例えば、まず、セラミックグリーンシートにレーザー加工を施すことによって、直径20μm以上、30μm以下程度のビアホールを形成する。そして、銀ペースト等の導電性ペーストをビアホールに充填し、ビア導体用導体パターンを形成する。更に、セラミックグリーンシートの主面上に、銀ペースト等の導電性ペーストを用いて、スクリーン印刷等の方法によって、厚みが11μm程度のコイル導体用導体パターンを印刷する。コイル導体用導体パターンとしては、例えば、
図4及び
図5に示すようなコイル導体に相当する導体パターンなどを印刷する。
このとき、コイル導体用導体パターンの形状を、得られるコイル導体のコイル径が50μm以上、100μm以下、かつ、ライン部の幅が30μm以上、50μm以下となるような形状とする。
【0077】
その後、乾燥させることによって、セラミックグリーンシートにコイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンが形成された構成を有するコイルシートが得られる。コイルシートにおいては、コイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンが互いに接続されている。
【0078】
また、コイルシートとは別に、セラミックグリーンシートにビア導体用導体パターンが形成された構成を有するビアシートを作製する。ビアシートのビア導体用導体パターンは、後に連結導体を構成するビア導体となる導体パターンである。
【0079】
次に、個片化及び焼成後に実装面と平行なコイル軸を有するコイルが積層体の内部に形成されるように、コイルシートを所定の順序で積層させる。
更に、コイルシートの積層体の上下にビアシートを積層させる。
コイルシートの積層数は40以上、60以下であることが好ましい。
【0080】
次に、コイルシート及びビアシートの積層体を熱圧着して圧着体を得た後、所定のチップサイズとなるように切断することによって、個片化したチップを得る。個片化したチップに対しては、例えば、バレル研磨を施すことによって、角部及び稜線に丸みを付けてもよい。
【0081】
次に、個片化したチップに対して、所定の温度及び時間で脱バインダ処理及び焼成を施すことによって、内部にコイルを内蔵する積層体(焼成体)を形成する。この際、コイル導体用導体パターン及びビア導体用導体パターンは、各々、焼成後にコイル導体及びビア導体となる。コイルは、コイル導体同士がビア導体を介して接続されてなる。また、積層体の積層方向とコイルのコイル軸方向とは、実装面と平行になる。
【0082】
次に、銀ペースト等の導電性ペーストを所定の厚みに引き伸ばした層に、積層体を垂直に浸漬して焼き付けることによって、積層体の5面(端面、両主面及び両端面)に外部電極の下地電極層を形成する。
また、銀ペースト等の導電性ペーストを所定の厚みに引き伸ばした層に、積層体を斜めに浸漬して焼き付けることによって、積層体の4面(主面、端面、及び、両側面)に外部電極の下地電極層を形成することができる。
【0083】
次に、下地電極層に対して、めっきによって、所定の厚みのニッケル被膜及びスズ被膜を順次形成する。その結果、外部電極が形成される。
【0084】
以上により、本発明の積層型コイル部品が製造される。
【実施例0085】
以下、本発明の積層型コイル部品をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0086】
[試料の作製]
(試料1)
(1)所定の組成を有するフェライト材料(仮焼粉末)を準備した。
【0087】
(2)上記仮焼粉末に有機バインダ(ポリビニルブチラール系樹脂)、有機溶剤(エタノール及びトルエン)をPSZボールとともにポットミルに入れ、湿式で充分に混合粉砕し、磁性体スラリーを作製した。
【0088】
(3)ドクターブレード法により、上記磁性体スラリーをシート状に成形加工し、これを矩形に打ち抜くことにより、厚さ12μmのセラミックグリーンシートを複数枚作製した。
【0089】
(4)Ag粉末と有機ビヒクルを含む内部導体用の導電性ペーストを準備した。
【0090】
(5)ビアシートの作製
セラミックグリーンシートの所定箇所にレーザーを照射することにより、ビアホールを形成した。ビアホールに導電性ペーストを充填してビア導体を形成、その周囲に円形に導電性ペーストをスクリーン印刷することにより、ランド部を形成した。
【0091】
(6)コイルシートの作製
セラミックグリーンシートの所定箇所にビアホールを形成し、導電性ペーストを充填してビア導体を形成した後、ランド部及びライン部からなるコイル導体を印刷し、コイルシートを得た。
【0092】
(7)これらのシートを
図4及び
図5に示した順序で、コイル導体の積層数が56となるように積層した後、加熱、加圧し、ダイサーで切断して個片化することにより積層成形体を作製した。
【0093】
(8)積層成形体を焼成炉に入れて、大気雰囲気下、500℃の温度で脱バインダ処理を行い、その後、900℃の温度で焼成することにより、積層体(焼成済み)を作製した。
得られた積層体30個の寸法をマイクロメーターを用いて測定し平均値を求めたところ、L=0.60mm、W=0.30mm、T=0.30mmであった。
【0094】
(9)Ag粉末とガラスフリットを含有する外部電極用の導電性ペーストを塗膜形成槽に流し込み、所定厚みの塗膜が形成されるようにした。この塗膜に、積層体の外部電極を形成する箇所を浸漬した。
【0095】
(10)浸漬後、800℃程度の温度で焼き付けることで、外部電極の下地電極を形成した。
【0096】
(11)電解めっきで、下地電極の上にNi皮膜及びSn皮膜を順次形成して、外部電極を形成した。
以上により、
図1、
図2(a)、
図2(b)及び
図2(c)に示す形状の外部電極、並びに、
図3、
図4及び
図5に示すような積層体の内部構造を有する積層型コイル部品(試料1)を作製した。
試料1では、積層方向に隣り合うコイル導体間の距離D
cを4μm、コイル内径R
cを100μm、ライン部の幅W
cを30μmとした。また、コイル導体の厚さを6μmとし、積層方向におけるコイル導体の配置領域の寸法を、積層体の長さ寸法の93.3%とした。
【0097】
(透過係数S21の測定)
図9は、透過係数S21を測定する方法を模式的に示す図である。
図9に示すように、信号経路61とグランド導体62を設けた測定用治具60に試料(積層型コイル部品1)をはんだ付けした。積層型コイル部品1の第1の外部電極21が信号経路61に接続され、第2の外部電極22がグランド導体62に接続される。
【0098】
ネットワークアナライザ63を用いて、試料への入力信号と透過信号の電力を求め、周波数を変化させて透過係数S21を測定した。ネットワークアナライザ63には、信号経路61の一端と他端が接続される。
測定結果を
図10に、60GHzにおける透過係数S21を表1にそれぞれ示す。
図10は、実施例で作製した試料の透過係数S21を示すグラフである。なお、透過係数S21は、0dBに近いほど損失が少ないことを示す。
【0099】
(試料2~16)
積層方向に隣り合うコイル導体間の距離D
c、コイルの内径R
c及びライン部の幅W
cを表1に示したように変更したほかは、試料1と同様の手順で積層型コイル部品(試料2~16)を作製し、透過係数S21を測定した。結果を表1、
図10、
図11、
図12及び
図13に示す。
図10は、試料1~5の透過係数S21を示すグラフであり、
図11は、試料6~10の透過係数S21を示すグラフであり、
図12は、試料11~15の透過係数S21を示すグラフであり、
図13は、試料3及び16の透過係数S21を示すグラフである。
全ての試料について、積層体の長さ寸法に対する積層方向におけるコイル導体の配置領域の寸法の割合は、試料1と同じく93.3%であった。
なお、試料11~16については、コイル導体の配置領域の寸法、及び、コイル導体の厚さは変更せずに、コイル導体の積層数及びセラミックグリーンシートの厚さを変更した。
また、試料3、試料8及び試料12は、積層方向に隣り合うコイル導体間の距離、コイルの内径及びライン部の幅が全て同じである。
【0100】
【0101】
表1の結果より、本発明の積層型コイル部品は、50GHzにおける透過係数S21が-1.2dB以上であり、高周波特性に優れることがわかった。
さらに、ライン部の幅Wcを30μm以上、40μm以下とするか、コイルの内径Rcを50μm以上、80μm以下とするか、積層方向に隣り合うコイル導体間の距離Dcを5μm以上、7μm以下とすることにより、50GHzにおける透過係数S21を-1.0dB以上とすることができることがわかった。
また、試料16の結果より、ライン部の幅Wcを30μm以上、40μm以下とし、コイルの内径Rcを50μm以上、80μm以下とし、積層方向に隣り合うコイル導体間の距離Dcを5μm以上、7μm以下とすることにより、50GHzにおける透過係数S21をさらに低下させることができることがわかった。