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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125412
(43)【公開日】2024-09-18
(54)【発明の名称】多層光学ラミネートの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20240910BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C03C27/12 F
C03C27/12 Z
B32B17/10
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107093
(22)【出願日】2024-07-03
(62)【分割の表示】P 2020536143の分割
【原出願日】2018-12-19
(31)【優先権主張番号】62/611,110
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 一太
(72)【発明者】
【氏名】高森 克也
(57)【要約】      (修正有)
【課題】接着剤層を利用せずにガラスなどの光学基材間にフィルムを積層することによる、ゆず肌などの欠陥を含まない多層光学ラミネートの調製方法を提供する。
【解決手段】多層光学ラミネートの調製方法は、接着剤層を含まない第1ガラス基材10と接着剤層を含まない第2ガラス基材20との間に接着剤層を含まない光学フィルム30を配置することと、このラミネートを真空下に配置することと、次いで、このラミネートを圧力下で、光学フィルムの軟化温度よりも高い温度まで加熱することと、を含む。ガラス基材は接着剤層を含まないが、シラン表面処理を含んでもよい。得られた多層ラミネートは光学的に透明であり、光学フィルム30による反射光の散乱を示さない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネート物品の製造方法であって、
第1主面及び第2主面を有し、前記第2主面がポリビニルブチラールを含有する熱活性化接着剤層を含まない、第1ガラス基材を提供することと、
第1主面及び第2主面を有し、前記第1主面がポリビニルブチラールを含有する熱活性化接着剤層を含まない、第2ガラス基材を提供することと、
ポリマー材料の1つ以上の層を含む第1主面及び第2主面を有し、前記第1主面及び前記第2主面がポリビニルブチラールを含有する熱活性化接着剤層を含まない、第1光学フィルムを提供することと、
前記第1ガラス基材の前記第2主面が前記第1光学フィルムの前記第1主面に近接し、前記第1光学フィルムの前記第2主面が前記第2ガラス基材の前記第1主面に近接するように、前記第1ガラス基材、前記第1光学フィルム、及び前記第2ガラス基材を配列することにより、多層構造体を調製することと、
前記多層構造体を真空チャンバ内に配置することと、
前記第1ガラス基材の前記第2主面が前記第1光学フィルムの前記第1主面と直接表面接触し、前記第2ガラス基材の前記第1主面が前記第1光学フィルムの前記第2主面と直接表面接触するように、前記多層構造体を含む前記真空チャンバに真空を適用することと、
前記真空チャンバから前記真空を解放することと、
前記多層構造体を前記真空チャンバから取り出し、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイス内に前記多層構造体を配置することと、
大気圧よりも高い圧力を前記多層構造体に適用しながら、前記第1光学フィルムの前記第1及び第2主面の前記ポリマー材料の軟化温度、又はそれ以上の温度まで、前記熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を上昇及び保持することと、
前記熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの前記温度を室温まで低下させることと、
前記多層構造体への前記大気圧よりも高い圧力を解放して、光学的に透明であり、前記第1光学フィルムによる反射光の散乱を示さない多層物品を形成することと、を含み、
前記多層構造体を含む前記真空チャンバに真空が適用される際には、前記多層構造体が配置された前記熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を上昇させない、製造方法。
【請求項2】
ラミネート物品の製造方法であって、
第1主面及び第2主面を有し、前記第2主面がポリビニルブチラールを含有する熱活性化接着剤層を含まないシランカップリング剤処理済み表面である、第1ガラス基材を提供することと、
第1主面及び第2主面を有し、前記第1主面がポリビニルブチラールを含有する熱活性化接着剤層を含まないシランカップリング剤処理済み表面である、第2ガラス基材を提供することと、
ポリマー材料の1つ以上の層を含む第1主面及び第2主面を有し、前記第1主面及び前記第2主面がポリビニルブチラールを含有する熱活性化接着剤層を含まない、第1光学フィルムを提供することと、
前記第1ガラス基材の前記第2主面が前記第1光学フィルムの前記第1主面に近接し、前記第1光学フィルムの前記第2主面が前記第2ガラス基材の前記第1主面に近接するように、前記第1ガラス基材、前記第1光学フィルム、及び前記第2ガラス基材を配列することにより、多層構造体を調製することと、
前記多層構造体を真空チャンバ内に配置することと、
前記第1ガラス基材の前記第2主面が前記第1光学フィルムの前記第1主面と直接表面接触し、前記第2ガラス基材の前記第1主面が前記第1光学フィルムの前記第2主面と直接表面接触しているように、前記多層構造体を含む前記真空チャンバに真空を適用することと、
前記真空チャンバから前記真空を解放することと、
前記多層構造体を前記真空チャンバから取り出し、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイス内に前記多層構造体を配置することと、
大気圧よりも高い圧力を前記多層構造体に適用しながら、前記第1光学フィルムの前記第1及び第2主面の前記ポリマー材料の軟化温度、又はそれ以上の温度まで、前記熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を上昇及び保持することと、
前記熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの前記温度を室温まで低下させることと、
前記多層構造体への前記大気圧よりも高い圧力を解放して、光学的に透明であり、前記第1光学フィルムによる反射光の散乱を示さない多層物品を形成することと、を含み、
前記多層構造体を含む前記真空チャンバに真空が適用される際には、前記多層構造体が配置された前記熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を上昇させない、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多層光学ラミネート(laminate)の調製方法、及び光学ラミネートに関する。
【背景技術】
【0002】
多層光学ラミネートは、一緒に接着された3つ以上の材料層を含む光学構造体である。これらの光学ラミネートは、物品であってもよく、このことは、それらがそのまま使用されるか、又は他の層又は構造体と組み合わされて、物品を形成してもよいことを意味する。ラミネートは、多種多様な形状及び形態をとり得る。場合によっては、多層光学ラミネートは、ガラス又はポリマープレートなどの比較的剛性又は半剛性層と、フィルムなどの可撓性層との組み合わせを含んでもよい。多種多様な方法を使用して、層を一緒に接着することができ、多くの場合、接着剤層が使用される。
【0003】
多層光学ラミネートの例は、典型的には自動車のフロントガラスに使用される安全ガラスである。フロントガラスが飛散するのを防ぐために、一般に、安全ガラス構造体は、2層のガラスと、2層のガラスの間に挟まれた光学的に透明なフィルムとを有する多層物品である。フィルムは、ポリビニルブチラール(PVB)などの熱活性化接着剤によってガラスに接着されることが多い。PVBは、光学的に透明であり、室温では粘着性ではなく、室温にて自立型フィルムとして取り扱うことができるが、加熱すると粘着性になり、ガラス及びフィルムの両方に強く結合するため特に好適である。典型的には、ガラス/PVB/フィルム/PVB/ガラスの安全ガラスラミネートを調製し、オートクレーブ内に配置し、熱及び圧力に供して、ラミネート物品を形成する。このプロセスの変形は、米国特許出願公開第2010/0285310号(Izuraniら)に記載されており、これは、まず熱圧着によりラミネートされたフィルムを作製し、ラミネートされたフィルムを湾曲ガラスプレート間にラミネート(laminate)することによる、プラスチックフィルムが挿入されたラミネートされたガラスの作製について記載している。
【発明の概要】
【0004】
多層光学ラミネートの調製方法、及び多層光学ラミネートについて本明細書にて開示される。いくつかの実施形態では、ラミネート物品の調製方法は、第1主面及び第2主面を有し、第2主面が接着剤層を含まない、第1ガラス基材を提供することと、第1主面及び第2主面を有し、第1主面が接着剤層を含まない、第2ガラス基材を提供することと、ポリマー材料の1つ以上の層を含む第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第1光学フィルムを提供することと、第1ガラス基材の第2主面が第1光学フィルムの第1主面に近接し、第1光学フィルムの第2主面が第2ガラス基材の第1主面に近接するように、第1ガラス基材、第1光学フィルム、及び第2ガラス基材を配列することにより、多層構造体を調製することと、多層構造体を真空チャンバ内に配置することと、第1ガラス基材の第2主面が第1光学フィルムの第1主面と直接表面接触し、第2ガラス基材の第1主面が第1光学フィルムの第2主面と直接表面接触するように、多層構造体を含む真空チャンバに真空を適用することと、真空チャンバから真空を解放することと、多層構造体を真空チャンバから取り出し、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイス内に多層構造体を配置することと、大気圧よりも高い圧力を多層構造体に適用しながら、第1光学フィルムの第1及び第2主面のポリマー材料の軟化温度、又はそれ以上の温度まで、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を上昇及び保持することと、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を室温まで低下させることと、多層構造体への大気圧よりも高い圧力を解放して、光学的に透明であり、第1光学フィルムによる反射光の散乱を示さない多層物品を形成することと、を含む。
【0005】
他の実施形態では、ラミネート物品の調製方法は、第1主面及び第2主面を有し、第2主面が接着剤層を含まない処理済み表面である、第1ガラス基材を提供することと、第1主面及び第2主面を有し、第1主面が接着剤層を含まない処理済み表面である、第2ガラス基材を提供することと、ポリマー材料の1つ以上の層を含む第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第1光学フィルムを提供することと、第1ガラス基材の第2主面が第1光学フィルムの第1主面に近接し、第1光学フィルムの第2主面が第2ガラス基材の第1主面に近接するように、第1ガラス基材、第1光学フィルム、及び第2ガラス基材を配列することにより、多層構造体を調製することと、多層構造体を真空チャンバ内に配置することと、第1ガラス基材の第2主面が第1光学フィルムの第1主面と直接表面接触し、第2ガラス基材の第1主面が第1光学フィルムの第2主面と直接表面接触するように、多層構造体を含む真空チャンバに真空を適用することと、真空チャンバから真空を解放することと、多層構造体を真空チャンバからラミネートを取り出し、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイス内に多層構造体を配置することと、大気圧よりも高い圧力を多層構造体に適用しながら、第1光学フィルムの第1及び第2主面のポリマー材料の軟化温度、又はそれ以上の温度まで、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を上昇及び保持することと、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を室温まで低下させることと、多層構造体への大気圧よりも高い圧力を解放して、光学的に透明であり、第1光学フィルムによる反射光の散乱を示さない多層物品を形成することと、を含む。
【0006】
多層物品もまた開示されている。いくつかの実施形態では、多層物品は、第1主面及び第2主面を有する第1ガラス基材と、第1主面及び第2主面を有する第2ガラス基材と、ポリマー材料の1つ以上の層を含む第1主面及び第2主面を有する第1光学フィルムと、を含み、第1ガラス基材の第2主面が第1光学フィルムの第1主面に界面結合され、界面結合が接着剤層を含まず、第1光学フィルムの第2主面が第2ガラス基材の第1主面に界面結合され、界面結合が接着剤層を含まず、第1ガラス基板への第2主面及び第2ガラス基板の第1主面が処理済み又は未処理の表面であり、処理済み表面がシランカップリング剤処理済み表面を含み、多層物品が光学的に透明であり、第1光学フィルムによる反射光の散乱を示さない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本出願は、添付の図面と共に、本開示の様々な実施形態についての以下の詳細な説明を考慮することにより、更に完全に理解され得る。
図1】本開示の方法の実施形態の断面図である。
図2】本開示の方法の別の実施形態の断面図である。
図3】本開示の方法の更に別の実施形態の断面図である。
【0008】
以下の例示された実施形態の説明においては、本開示を実施することが可能な様々な実施形態を実例として示す添付の図面を参照する。本開示の範囲から逸脱することなく実施形態を利用することが可能であり、構造上の変更が行われ得る点は理解されるべきである。これらの図は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。図面で使用されている同様の番号は同様の構成要素を示す。しかし、特定の図中のある構成要素を示す数字の使用は、同じ数字を付した別の図中の構成要素を限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【発明の詳細な説明】
【0009】
多層光学ラミネートは、一緒に接着された3つ以上の材料層を含む光学構造体である。これらの光学ラミネートは、物品であってもよく、このことは、それらがそのまま使用されるか、又は他の層又は構造体と組み合わされて、物品を形成してもよいことを意味する。ラミネートは、多種多様な形状及び形態をとり得る。場合によっては、多層光学ラミネートは、ガラス又はポリマープレートなどの比較的剛性又は半剛性層と、フィルムなどの可撓性層との組み合わせを含んでもよい。多種多様な方法を使用して、層を一緒に接着することができ、多くの場合、接着剤層が使用される。
【0010】
より複雑な多層光学ラミネートが開発され、使用されるにつれて、これらのラミネートに対する要件はより厳しくなっている。ラミネートが構造上の制限を有するだけでなく、すなわち、離層又は別の点で構造上不合格にはならないが、高い光透過性を有する必要があり、この透過性は、様々な条件で維持されなければならず、換言すれば、ラミネートは光学的欠陥を発生させてはならない。ラミネートされたガラス中の気泡、局所離層、濁り、及び変色などの光学的欠陥の発生は、ラミネートの視覚的品質に悪影響を及ぼすが、その構造的安全性には影響を及ぼさない望ましくない現象である。これらの欠陥は、ラミネートの製造中に多くの影響によって生じ得る、及び/又はその寿命中に引き起こされ得る。
【0011】
これらの欠陥の多くは、接着剤層の使用によって対処することができる。しかし、接着剤層の使用によって作製され得る光学ラミネートの1つの欠陥は、「ゆず肌」として記載される現象である。多くの学問領域では、自動車上の金属シートの粗面、又は不適切に研磨されたレンズの粗面などの種々の異なる状況を説明するために、用語「ゆず肌欠陥」を使用する。光学ラミネートの分野では、それは幾分異なるが関連する意味を有する。光学ラミネートにおけるゆず肌欠陥の1つの有用な説明は、米国特許出願公開第2014/0220286号(Honeycuttら)の段落0008に提示されている。この段落は、ポリビニルブチラール(PVB)を使用して、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムがガラスプレートの間に積層されている状況を説明する。説明では、「2つのPVBシート間にPET層を含むラミネートに関連する更なる問題は、うねり又はゆず肌と呼ばれる別のタイプの光学的ひずみの形成である。PETが2層のPVBの間に積層される場合、PETはPVBのように「流れ」ず、そのため、ラミネートの脱気が優れていても、波状に見えるか、又は積層されたときにアップルソースのように見える表面を有するように見えることがある。」と述べられている。場合によっては、ゆず肌効果は、肉眼で見える視覚的欠陥として現れない場合があるが、光がラミネートを通過するとき、出射光は非平滑表面を有し得る。これは、蛍光管などの直線体の反射像をラミネートから観察することによって観察することができる。直線体光の反射は、平滑表面を有するべきであるのに対して、ゆず肌を示す例では、直線体光の反射の表面は、テクスチャ加工された表面又は波状の表面を有する。したがって、ラミネート構造に含まれるフィルムによる反射光の散乱が少ない又は全く散乱しない多層ラミネートを有することが望ましい。
【0012】
本開示は、接着剤層を利用せずにガラスなどの光学基材間にフィルムを積層することによる、ゆず肌などの欠陥を含まない多層光学ラミネートの調製方法を提供する。本開示では、フィルムは、ガラスに直接積層され、フィルムは、ゆず肌などの光学的欠陥を生成することなく、光学基材を一緒に接着する役割を果たす。
【0013】
別途指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で用いる構造寸法、量、及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解するものとする。したがって、特に反対の指示がない限り、上記明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本明細書で開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。端点による数値範囲の記載には、その範囲内に包含される全ての数(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)及びその範囲内の任意の範囲が含まれる。
【0014】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が別途明示していない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。例えば、「層」は、1つ又は2つ以上の層を有する実施形態を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、用語「又は」は、内容が別途明示していない限り、「及び/又は」を含む意味で通常用いられる。
【0015】
本明細書で使用するとき、「隣接する」という用語は、別の層に近接している2つの層を指す。隣接する層は互いに直接接触していてもよく、又は介在層があってもよい。隣接する層同士の間にはなにもない空間は存在しない。
【0016】
「室温」及び「周囲温度」という用語は、互換的に使用され、それらの従来の意味、すなわち20~25℃の温度を有する。
【0017】
別途指示がない限り、「光学的に透過的な」とは、可視光スペクトル(約400~約700nm)の少なくとも一部にわたって高い光透過率を有する層、フィルム、又は物品を指す。典型的には、光学的に透過的な層、フィルム、又は物品は、少なくとも90%の視感透過率を有する。
【0018】
別途指示がない限り、「光学的に透明」とは、可視光スペクトル(約400~約700nm)の少なくとも一部にわたって高い光透過率を有し、低いヘイズを呈する、層、フィルム、又は物品を指す。典型的には、光学的に透明な層、フィルム、又は物品は、少なくとも90%、多くの場合少なくとも95%の可視光透過率値、及び5%以下、多くの場合2%以下のヘイズ値を有する。視感透過率及びヘイズは、ASTM D1003-11に記載されているような技術を用いて測定できる。
【0019】
用語「アルキル」は、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである一価の基を指す。アルキルは、直鎖状、分岐状、環状、又はこれらの組み合わせであってもよく、典型的には、1~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~18個、1~12個、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられる。
【0020】
用語「アリール」は、芳香族及び炭素環である1価の基を指す。アリールは、芳香環に接続している又は縮合している、1~5個の環を有し得る。その他の環状構造は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであってもよい。アリール基の例としては、限定されるものではないが、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アントリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナントリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられる。
【0021】
「アルキレン」という用語は、アルカンのラジカルである二価の基を指す。アルキレンは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってもよい。アルキレンは、多くの場合、1~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレンは、1~18個、1~12個、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一の炭素原子上にあってもよく(すなわち、アルキリデン)、又は異なる炭素原子上にあってもよい。
【0022】
用語「アリーレン」は、炭素環でありかつ芳香族である二価の基を指す。この基は、接続しているか、縮合しているか、又はこれらの組み合わせである、1~5個の環を有する。その他の環は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、アリーレン基は、最大5個の環、最大4個の環、最大3個の環、最大2個の環、又は1個の芳香環を有する。例えば、アリーレン基は、フェニレンであってもよい。
【0023】
用語「アラルキレン」は、式、-R-Ar-[式中、Rはアルキレンであり、Arはアリーレンである(すなわち、アルキレンがアリーレンに結合している)。]の二価の基を指す。
【0024】
用語「アルコキシ」は、式-O-Rの一価の基を意味し、式中、Rはアルキル基である。
【0025】
ラミネート物品の調製方法について本明細書にて開示される。これらの方法は、多層構造体を形成することと、多層構造体を真空チャンバ内に配置することと、多層構造体を含む真空チャンバに真空を適用することと、真空チャンバから真空を解放することと、多層構造体を真空チャンバから取り出すことと、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイス内に多層構造体を配置することと、大気圧よりも高い圧力を多層構造体に適用しながら、温度を上昇及び保持することと、その後、温度を低下させることと、圧力を解放して、光学的に透明な多層物品を形成することと、を含む。
【0026】
多層構造体は、第1主面及び第2主面を有し、第2主面が接着剤層を含まない、第1ガラス基材を提供することと、第1主面及び第2主面を有し、第1主面が接着剤層を含まない、第2ガラス基材を提供することと、第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第1光学フィルムを提供することと、により調製される。第1光学フィルムは、ポリマー材料の1つ以上の層を含む。多層構造体は、第1ガラス基材の第2主面が第1光学フィルムの第1主面に近接し、第1光学フィルムの第2主面が第2ガラス基材の第1主面に近接するように、第1ガラス基材、第1光学フィルム、及び第2ガラス基材を配列することにより調製される。
【0027】
多層構造体を真空チャンバから取り出すと、第1ガラス基材の第2主面が第1光学フィルムの第1主面と直接表面接触し、第2ガラス基材の第1主面が第1光学フィルムの第2主面と直接表面接触する。
【0028】
多層構造体が熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイス内に配置される場合、温度は、第1光学フィルムの第1及び第2主面のポリマー材料の軟化温度、又はそれ以上の温度まで上昇及び保持される。第1光学フィルムの第1及び第2主面のポリマー材料が異なる材料を含む場合、温度は、異なる材料のより高い軟化温度、又はそれ以上の温度まで上昇及び保持される。
【0029】
多層構造体は、種々の方法で組み立てられてから、真空チャンバ内に配置され得る。いくつかの実施形態では、多層構造体を調製することは、フレーム内に第1及び第2ガラス基材並びに第1光学フィルムを配置することを含み、このフレームは、第1プレートが第1ガラス基材の第1主面と接触し、第2プレートが第2ガラス基材の第2主面と接触するように、第1及び第2プレートを含む。これらの実施形態のうちのいくつかでは、各プレートは、少なくとも1つのオリフィスを含み、このオリフィスは、圧縮空気圧源に接続されており、第1プレートのオリフィスが第1ガラス基材と流体接触しており、第2プレートのオリフィスが第2ガラス基材と流体接触しており、大気圧よりも高い圧力を多層構造体に適用することは、第1及び第2プレートのオリフィスを通して圧縮空気圧を適用することを含む。
【0030】
多種多様のガラス基材が好適である。ガラス基材は、それらを剛性基材にするのに十分な厚さであり、光学的に透明である。ガラス基材の厚さは、形成された多層物品の所望の総厚さなどの種々の要因に依存する。典型的には、形成された多層物品は、2.5ミリメートル以下の厚さを有することが望ましい。
【0031】
多種多様な光学フィルムが、本開示の方法での使用に好適である。本明細書で使用される場合、用語「光学フィルム」は、光学的効果を生み出すために使用できるフィルムを指す。光学フィルムは、典型的には、単層又は複数層であり得る、ポリマー含有フィルムである。光学フィルムは可撓性であり、任意の好適な厚さであり得る。光学フィルムは、多くの場合、電磁スペクトルの一部の波長(例えば電磁スペクトルの可視領域、紫外領域、又は赤外領域の波長)に対して、少なくとも部分的に透過性、反射性、反射防止性、偏光性、光学的に透明、又は拡散性である。例示的な光学フィルムとしては、限定されるものではないが、可視光鏡面フィルム、カラー鏡面フィルム、太陽光反射フィルム、赤外線反射フィルム、紫外線反射フィルム、輝度上昇フィルム、反射型偏光フィルム(デュアル輝度上昇フィルム等)、吸収性偏光フィルム、光学的に透明なフィルム、色付きフィルム、及び反射防止フィルムが挙げられる。
【0032】
一部の光学フィルムは、ポリマー含有材料(例えば、染料を含むポリマー又は含まないポリマー)の複数層、又は金属含有材料とポリマー材料との複数層等の複数層を有する。一部の光学フィルムは、異なる屈折率を有するポリマー材料の層を交互に有する。他の光学フィルムは、ポリマー層と金属含有層とを交互に有する。例示的な光学フィルムは、以下の特許に記載されている:米国特許第6,049,419号(Wheatleyら);同第5,223,465号(Wheatleyら);同第5,882,774号(Jonzaら);同第6,049,419号(Wheatleyら);米国再発行特許第34,605号(Schrenkら);米国特許第5,579,162号(Bjornardら);及び同第5,360,659号(Arendsら)。
【0033】
いくつかの特に好適な実施形態では、第1光学フィルムは、多層偏光フィルムを含む。多種多様のこのようなフィルムが好適である。好適な多層偏光フィルムの中には、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの交互層を含むものがある。
【0034】
本開示の多層光学ラミネートには、多種多様な温度及び圧力を使用することができる。いくつかの実施形態では、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を、少なくとも30分間、少なくとも120℃の温度まで上昇及び保持することが望ましい場合がある。他の実施形態では、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を、少なくとも1時間、少なくとも150℃の温度まで上昇及び保持することが望ましい場合がある。広範囲の圧力もまた、好適である。いくつかの特定の実施形態では、圧力は、少なくとも5Kg/cmである。
【0035】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1主面及び第2主面を有する第3ガラス基材であって、第3ガラス基材の第1主面が接着剤層を含まない、第3ガラス基材を提供することと、第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第2光学フィルムを提供することと、を更に含む。これらの実施形態では、多層構造体を調製することは、第2光学フィルムの第1主面が第2ガラス基材の第2主面に近接し、第2光学フィルムの第2主面が第3ガラス基材の第1主面に近接するように、第2光学フィルム及び第3ガラス基材を配列することを更に含む。第1光学フィルムのように、第2光学フィルムは、ポリマー材料の1つ以上の層を含む。第1光学フィルム及び第2光学フィルムは、同じであってもよいが、典型的には、それらは異なるフィルムである。第1及び第2光学フィルムのポリマー材料が異なる材料を含む場合、温度は、異なる材料のより高い軟化温度、又はそれ以上の温度まで上昇及び保持される。
【0036】
他の実施形態では、本方法は、第1主面及び第2主面を有する第3ガラス基材であって、第3ガラス基材の第1主面が接着剤層を含まない、第3ガラス基材を提供することと、第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第2光学フィルムを提供することと、第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第3光学フィルムを提供することと、を更に含む。これらの実施形態では、多層構造体を調製することは、第2光学フィルムの第1主面が第2ガラス基材の第2主面に近接し、第3光学フィルムの第1主面が第2光学フィルムの第2主面に近接し、第3光学フィルムの第2主面が第3ガラス基材の第1主面に近接するように、第2光学フィルム、第3光学フィルム、及び第3ガラス基材を配列することを更に含む。第1光学フィルムのように、第2及び第3光学フィルムは、ポリマー材料の1つ以上の層を含む。第1、第2、及び第3光学フィルムは、同じであってもよいが、典型的には、それらは異なるフィルムである。光学フィルムのポリマー材料が異なる材料を含む場合、温度は、異なる材料のより高い軟化温度、又はそれ以上の温度まで上昇及び保持される。
【0037】
追加のフィルム及びガラス基材を含む実施形態では、全体的な方法は同じままである。これらの実施形態では、多層構造体が調製され、上記と同じ方法で加工される。
【0038】
また、ラミネートの形成に関与するガラス基材の表面のうちの1つ以上が処理済み表面である、ラミネート物品の調製方法についてもまた本明細書にて開示される。処理済み表面は、依然として接着剤層を含まない。種々の表面処理が、処理済み表面を形成するのに好適である。
【0039】
この方法は、上記の方法と同様である。これらの方法は、多層構造体を形成することと、多層構造体を真空チャンバ内に配置することと、多層構造体を含む真空チャンバに真空を適用することと、真空チャンバから真空を解放することと、多層構造体を真空チャンバから取り出すことと、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイス内に多層構造体を配置することと、大気圧よりも高い圧力を多層構造体に適用しながら、温度を上昇及び保持することと、その後、温度を低下させることと、圧力を解放して、光学的に透明な多層物品を形成することと、を含む。
【0040】
多層構造体は、第1主面及び第2主面を有し、第2主面が接着剤層を含まない処理済み表面である、第1ガラス基材を提供することと、第1主面及び第2主面を有し、第1主面が接着剤層を含まない処理済み表面である、第2ガラス基材を提供することと、第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第1光学フィルムを提供することと、により調製される。第1光学フィルムは、ポリマー材料の1つ以上の層を含む。多層構造体は、第1ガラス基材の第2主面が第1光学フィルムの第1主面に近接し、第1光学フィルムの第2主面が第2ガラス基材の第1主面に近接するように、第1ガラス基材、第1光学フィルム、及び第2ガラス基材を配列することにより調製される。
【0041】
多層構造体を真空チャンバから取り出すと、第1ガラス基材の第2主面が第1光学フィルムの第1主面と直接表面接触し、第2ガラス基材の第1主面が第1光学フィルムの第2主面と直接表面接触する。
【0042】
多層構造体が熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイス内に配置される場合、温度は、第1光学フィルムの第1及び第2主面のポリマー材料の軟化温度、又はそれ以上の温度まで上昇及び保持される。第1光学フィルムの第1及び第2主面のポリマー材料が異なる材料を含む場合、温度は、異なる材料のより高い軟化温度、又はそれ以上の温度まで上昇及び保持される。
【0043】
多層構造体は、種々の方法で組み立てられてから、真空チャンバ内に配置され得る。いくつかの実施形態では、多層構造体を調製することは、フレーム内に第1及び第2ガラス基材並びに第1光学フィルムを配置することを含み、このフレームは、第1プレートが第1ガラス基材の第1主面と接触し、第2プレートが第2ガラス基材の第2主面と接触するように、第1及び第2プレートを含む。これらの実施形態のうちのいくつかでは、各プレートは、少なくとも1つのオリフィスを含み、このオリフィスは、圧縮空気圧源に接続されており、第1プレートのオリフィスが第1ガラス基材と流体接触しており、第2プレートのオリフィスが第2ガラス基材と流体接触しており、大気圧よりも高い圧力を多層構造体に適用することは、第1及び第2プレートのオリフィスを通して圧縮空気圧を適用することを含む。
【0044】
多種多様のガラス基材が好適である。ガラス基材は、それらを剛性基材にするのに十分な厚さであり、光学的に透明である。ガラス基材の厚さは、形成された多層物品の所望の総厚さなどの種々の要因に依存する。典型的には、形成された多層物品は、2.5ミリメートル以下の厚さを有することが望ましい。
【0045】
いくつかの特に好適な実施形態では、第1光学フィルムは、多層偏光フィルムを含む。多種多様のこのようなフィルムが好適である。好適な多層偏光フィルムの中には、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの交互層を含むものがある。
【0046】
本開示の多層光学ラミネートには、多種多様な温度及び圧力を使用することができる。いくつかの実施形態では、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を、少なくとも30分間、少なくとも120℃の温度まで上昇及び保持することが望ましい場合がある。他の実施形態では、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を、少なくとも1時間、少なくとも150℃の温度まで上昇及び保持することが望ましい場合がある。広範囲の圧力もまた、好適である。いくつかの特定の実施形態では、圧力は、少なくとも5Kg/cmである。
【0047】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1主面及び第2主面を有する第3ガラス基材であって、第3ガラス基材の第1主面が接着剤層を含まない処理済み表面である、第3ガラス基材を提供することと、第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第2光学フィルムを提供することと、を更に含む。これらの実施形態では、多層構造体を調製することは、第2光学フィルムの第1主面が第2ガラス基材の第2主面に近接し、第2光学フィルムの第2主面が第3ガラス基材の第1主面に近接するように、第2光学フィルム及び第3ガラス基材を配列することを更に含む。第1光学フィルムのように、第2光学フィルムは、ポリマー材料の1つ以上の層を含む。第1光学フィルム及び第2光学フィルムは、同じであってもよいが、典型的には、それらは異なるフィルムである。第1及び第2光学フィルムのポリマー材料が異なる材料を含む場合、温度は、異なる材料のより高い軟化温度、又はそれ以上の温度まで上昇及び保持される。
【0048】
他の実施形態では、本方法は、第1主面及び第2主面を有する第3ガラス基材であって、第3ガラス基材の第1主面が接着剤層を含まない処理済み表面である、第3ガラス基材を提供することと、第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第2光学フィルムを提供することと、第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第3光学フィルムを提供することと、を更に含む。これらの実施形態では、多層構造体を調製することは、第2光学フィルムの第1主面が第2ガラス基材の第2主面に近接し、第3光学フィルムの第1主面が第2光学フィルムの第2主面に近接し、第3光学フィルムの第2主面が第3ガラス基材の第1主面に近接するように、第2光学フィルム、第3光学フィルム、及び第3ガラス基材を配列することを更に含む。第1光学フィルムのように、第2及び第3光学フィルムは、ポリマー材料の1つ以上の層を含む。第1、第2、及び第3光学フィルムは、同じであってもよいが、典型的には、それらは異なるフィルムである。光学フィルムのポリマー材料が異なる材料を含む場合、温度は、異なる材料のより高い軟化温度、又はそれ以上の温度まで上昇及び保持される。
【0049】
追加のフィルム及びガラス基材を含む実施形態では、全体的な方法は同じままである。これらの実施形態では、多層構造体が調製され、上記と同じ方法で加工される。
【0050】
多種多様な表面処理が、本開示の方法に好適である。いくつかの実施形態では、第1、第2、及び第3ガラス基材の処理済み表面は、処理溶液を提供することと、処理溶液をガラス表面に適用して、連続的又は不連続的なコーティング層を形成することと、連続的又は不連続的なコーティング層を乾燥することと、を含む処理により調製される。処理溶液は、少なくとも1つのシランカップリング剤と溶媒とを含む。
【0051】
多種多様なシランカップリング剤が好適である。特に好適なシランカップリング剤は、一般的構造:ZSi-A-X[式中、各Zは、アルキル基又はアルコキシ基であり、ただし、少なくとも1つのZは、アルコキシ基であり、Aは、アルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を含む二価連結基であり、Xは、アミノ基-NR から選択される官能基であり、式中、各Rは、独立して、水素原子、アルキル基若しくはアリール基、イソシアネート基、又はエポキシ基である]のものである。
【0052】
溶媒がシランカップリング剤を可溶化することができ、乾燥によって容易に除去されるように十分に揮発性であれば、多種多様な溶媒が処理溶液を調製するのに好適である。好適な溶媒としては、アセトン若しくはMEK(メチルエチルケトン)などのケトン;ベンゼン若しくはトルエンなどの芳香族液体;酢酸エチルなどのエステル;ヘキサン若しくはヘプタンなどのアルカン;メタノール、エタノール若しくはプロパノールなどのアルコール;エチルエーテル若しくはTHF(テトラヒドロフラン)などのエーテル;又は塩化メチレン若しくは四塩化炭素などのハロゲン化アルカンが挙げられる。
【0053】
また、上記の方法を用いて調製される多層物品も開示される。いくつかの実施形態では、多層物品は、第1主面及び第2主面を有する第1ガラス基材と、第1主面及び第2主面を有する第2ガラス基材と、ポリマー材料の1つ以上の層を含む第1主面及び第2主面を有する第1光学フィルムと、を含み、第1ガラス基材の第2主面が第1光学フィルムの第1主面に界面結合され、界面結合が接着剤層を含まず、第1光学フィルムの第2主面が第2ガラス基材の第1主面に界面結合され、界面結合が接着剤層を含まず、第1ガラス基板への第2主面及び第2ガラス基板の第1主面が処理済み又は未処理の表面であり、処理済み表面がシランカップリング剤処理済み表面を含み、多層物品が光学的に透明である。
【0054】
他の実施形態では、多層物品が、第1主面及び第2主面を有する第2光学フィルムと、第1主面及び第2主面を有する第3ガラス基材と、を更に含み、第2ガラス基材の第2主面が第2光学フィルムの第1主面に界面結合され、界面結合が接着剤層を含まず、第2光学フィルムの第2主面が第3ガラス基材の第1主面に界面結合され、界面結合が接着剤層を含まず、第2ガラス基材の第2主面及び第3ガラス基材の第1主面が処理済み又は未処理の表面であり、処理済み表面がシランカップリング剤処理済み表面を含み、多層物品が光学的に透明であり、第1光学フィルムによる反射光の散乱を示さない。
【0055】
更に他の実施形態では、多層物品が、第1主面及び第2主面を有する第2光学フィルムと、第1主面及び第2主面を有する第3光学フィルムと、第1主面及び第2主面を有する第3ガラス基材と、を更に含み、第2ガラス基材の第2主面が第2光学フィルムの第1主面に界面結合され、界面結合が接着剤層を含まず、第2光学フィルムの第2主面が第3光学フィルムの第1主面に界面結合され、界面結合が接着剤層を含まず、第3光学フィルムの第2主面が第3ガラス基材の第1主面に界面結合され、第2ガラス基材の第2主面及び第3ガラス基材の第1主面が処理済み又は未処理の表面であり、処理済み表面がシランカップリング剤処理済み表面を含み、多層物品が光学的に透明であり、光学フィルムによる反射光の散乱を示さない。
【0056】
好適なガラス基材、光学フィルム、及び表面処理は、上で詳細に記述される。いくつかの実施形態では、第1光学フィルムは、多層偏光フィルムを含む。これらの実施形態のうちのいくつかでは、多層偏光フィルムが、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの交互層を含む。
【0057】
ガラス基材のうちの1つ以上が処理済み表面を含む実施形態では、処理済み表面は、一般的構造:ZSi-A-X[式中、各Zは、アルキル基又はアルコキシ基であり、ただし、少なくとも1つのZは、アルコキシ基であり、Aは、アルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を含む二価連結基であり、Xは、アミノ基-NR から選択される官能基であり、式中、各Rは、独立して、水素原子、アルキル基若しくはアリール基、イソシアネート基、又はエポキシ基である]を有するシランカップリング剤で処理された処理済み表面を含む。
【0058】
本開示の方法及び物品は、図から更に理解され得る。図1は、本開示の方法の一実施形態を示す。図1では、組み立てられた多層構造体は、第1ガラス基材10、第2ガラス基材20、及び光学フィルム30を含む。光学フィルム30は、クリップ40によって第1ガラス基材10及び第2ガラス基材20に近接して適所に保持される。組み立てられた多層構造体は、真空チャンバ60内に置かれる。圧力プレート(pressure plate)50は、組み立てられた多層構造体の両側に置かれる。圧力プレート50は、Oリング51及び圧縮空気管55を有する。この構造体は、真空チャンバ60へ真空を適用して真空チャンバ60’とするプロセス工程Aに供される。第1ガラス基材10、第2ガラス基材20、及び光学フィルム30は、接触しており、空気管55によって提供される圧縮空気を用いた圧力プレート50によって一緒に保持され、圧縮空気圧はOリング51によって維持される。光学フィルム30は、クリップ40によって保持される。この構造体は、真空チャンバ60’から真空を解放し、多層アセンブリを真空チャンバから取り出し、オーブン70内に配置し、少なくとも120℃の温度まで加熱し、次いで室温まで冷却することを含む、プロセス工程Bに供される。第1ガラス基材10、第2ガラス基材20、及び光学フィルム30は、接触しており、空気管55によって提供される圧縮空気を用いた圧力プレート50によって一緒に保持され、圧縮空気圧はOリング51によって維持される。光学フィルム30は、クリップ40によって保持される。
【0059】
図2は、本開示の方法の別の実施形態を示す。図2では、組み立てられた多層構造体は、第1ガラス基材110、第2ガラス基材120、第3ガラス基材180、並びに光学フィルム130及び190を含む。光学フィルム130は、クリップ140によって第1ガラス基材110及び第2ガラス基材120に近接して適所に保持され、光学フィルム190は、クリップ140によって第2ガラス基材120及び第3ガラス基材180に近接して適所に保持される。組み立てられた多層構造体は、真空チャンバ160内に置かれる。圧力プレート150は、組み立てられた多層構造体の両側に置かれる。圧力プレート150は、Oリング151及び圧縮空気管155を有する。この構造体は、真空チャンバ160へ真空を適用して真空チャンバ160’とするプロセス工程Aに供される。第1ガラス基材110、光学フィルム130、第2ガラス基材120、光学フィルム190、及び第3ガラス基材180は、接触しており、空気管155によって提供される圧縮空気を用いた圧力プレート150によって一緒に保持され、圧縮空気圧はOリング151によって維持される。光学フィルム130及び190は、クリップ140によって保持される。この構造体は、真空チャンバ160’から真空を解放し、多層アセンブリを真空チャンバから取り出し、オーブン170内に配置し、少なくとも120℃の温度まで加熱し、次いで室温まで冷却することを含む、プロセス工程Bに供される。第1ガラス基材110、光学フィルム130、第2ガラス基材120、光学フィルム190、及び第3ガラス基材180は、接触しており、空気管155によって提供される圧縮空気を用いた圧力プレート150によって一緒に保持され、圧縮空気圧はOリング151によって維持される。光学フィルム130及び190は、クリップ140によって保持される。
【0060】
図3は、本開示の方法の別の実施形態を示す。図3では、組み立てられた多層構造体は、第1ガラス基材210、第2ガラス基材220、第3ガラス基材280、並びに光学フィルム230、290、及び300を含む。光学フィルム230は、クリップ240によって第1ガラス基材210及び第2ガラス基材220に近接して適所に保持され、光学フィルム290及び300は、クリップ240によって第2ガラス基材220及び第3ガラス基材280に近接して適所に保持される。組み立てられた多層構造体は、真空チャンバ260内に置かれる。圧力プレート250は、組み立てられた多層構造体の両側に置かれる。圧力プレート250は、Oリング251及び圧縮空気管255を有する。この構造体は、真空チャンバ260へ真空を適用して真空チャンバ260’とするプロセス工程Aに供される。第1ガラス基材210、光学フィルム230、第2ガラス基材220、光学フィルム290、光学フィルム300、及び第3ガラス基材280は、接触しており、空気管255によって提供される圧縮空気を用いた圧力プレート250によって一緒に保持され、圧縮空気圧はOリング251によって維持される。光学フィルム230、290、及び300は、クリップ240によって保持される。この構造体は、真空チャンバ260’から真空を解放し、多層アセンブリを真空チャンバから取り出し、オーブン270内に配置し、少なくとも120℃の温度まで加熱し、次いで室温まで冷却することを含む、プロセス工程Bに供される。第1ガラス基材210、光学フィルム230、第2ガラス基材220、光学フィルム290、光学フィルム300、及び第3ガラス基材280は、接触しており、空気管255によって提供される圧縮空気を用いた圧力プレート250によって一緒に保持され、圧縮空気圧はOリング251によって維持される。光学フィルム230、290、及び300は、クリップ240によって保持される。
【0061】
本開示は、以下の実施形態を含む。
【0062】
実施形態の中には、ラミネート物品の調製方法がある。実施形態1は、ラミネート物品の調製方法であって、第1主面及び第2主面を有し、第2主面が接着剤層を含まない、第1ガラス基材を提供することと、第1主面及び第2主面を有し、第1主面が接着剤層を含まない、第2ガラス基材を提供することと、ポリマー材料の1つ以上の層を含む第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第1光学フィルムを提供することと、第1ガラス基材の第2主面が第1光学フィルムの第1主面に近接し、第1光学フィルムの第2主面が第2ガラス基材の第1主面に近接するように、第1ガラス基材、第1光学フィルム、及び第2ガラス基材を配列することにより、多層構造体を調製することと、多層構造体を真空チャンバ内に配置することと、第1ガラス基材の第2主面が第1光学フィルムの第1主面と直接表面接触し、第2ガラス基材の第1主面が第1光学フィルムの第2主面と直接表面接触するように、多層構造体を含む真空チャンバに真空を適用することと、真空チャンバから真空を解放することと、多層構造体を真空チャンバから取り出し、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイス内に多層構造体を配置することと、大気圧よりも高い圧力を多層構造体に適用しながら、第1光学フィルムの第1及び第2主面のポリマー材料の軟化温度、又はそれ以上の温度まで、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を上昇及び保持することと、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を室温まで低下させることと、多層構造体への大気圧よりも高い圧力を解放して、光学的に透明であり、第1光学フィルムによる反射光の散乱を示さない多層物品を形成することと、を含む、調製方法を含む。
【0063】
実施形態2は、第1主面及び第2主面を有する第3ガラス基材であって、第3ガラス基材の第1主面が接着剤層を含まない、第3ガラス基材を提供することと、ポリマー材料の1つ以上の層を含む第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第2光学フィルムを提供することと、を更に含み、多層構造体を調製することが、第2光学フィルムの第1主面が第2ガラス基材の第2主面に近接し、第2光学フィルムの第2主面が第3ガラス基材の第1主面に近接するように、第2光学フィルム及び第3ガラス基材を配列することを更に含む、実施形態1に記載の方法である。
【0064】
実施形態3は、第1主面及び第2主面を有する第3ガラス基材であって、第3ガラス基材の第1主面が接着剤層を含まない、第3ガラス基材を提供することと、ポリマー材料の1つ以上の層を含む第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第2光学フィルムを提供することと、ポリマー材料の1つ以上の層を含む第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第3光学フィルムを提供することと、を更に含み、多層構造体を調製することが、第2光学フィルムの第1主面が第2ガラス基材の第2主面に近接し、第3光学フィルムの第1主面が第2光学フィルムの第2主面に近接し、第3光学フィルムの第2主面が第3ガラス基材の第1主面に近接するように、第2光学フィルム、第3光学フィルム、及び第3ガラス基材を配列することを更に含む、実施形態に記載の方法である。
【0065】
実施形態4は、多層構造体を調製することが、フレーム内に第1及び第2ガラス基材並びに第1光学フィルムを配置することを含み、フレームが、第1プレートが第1ガラス基材の第1主面と接触し、第2プレートが第2ガラス基材の第2主面と接触するように、第1及び第2プレートを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法である。
【0066】
実施形態5は、各プレートが、少なくとも1つのオリフィスを含み、オリフィスが、圧縮空気圧源に接続されており、第1プレートのオリフィスが第1ガラス基材と流体接触しており、第2プレートのオリフィスが第2ガラス基材と流体接触しており、大気圧よりも高い圧力を多層構造体に適用することが、第1及び第2プレートのオリフィスを通して圧縮空気圧を適用することを含む、実施形態4に記載の方法である。
【0067】
実施形態6は、第1光学フィルムが、多層偏光フィルムを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法である。
【0068】
実施形態7は、多層偏光フィルムが、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの交互層を含む、実施形態6に記載の方法である。
【0069】
実施形態8は、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を上昇及び保持することが、少なくとも30分間、温度を少なくとも120℃まで上昇させることを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法である。
【0070】
実施形態9は、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの圧力が、少なくとも5Kg/cmまで上昇される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法である。
【0071】
実施形態10は、ラミネート物品の調製方法であって、第1主面及び第2主面を有し、第2主面が接着剤層を含まない処理済み表面である、第1ガラス基材を提供することと、第1主面及び第2主面を有し、第1主面が接着剤層を含まない処理済み表面である、第2ガラス基材を提供することと、ポリマー材料の1つ以上の層を含む第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第1光学フィルムを提供することと、第1ガラス基材の第2主面が第1光学フィルムの第1主面に近接し、第1光学フィルムの第2主面が第2ガラス基材の第1主面に近接するように、第1ガラス基材、第1光学フィルム、及び第2ガラス基材を配列することにより、多層構造体を調製することと、多層構造体を真空チャンバ内に配置することと、第1ガラス基材の第2主面が第1光学フィルムの第1主面と直接表面接触し、第2ガラス基材の第1主面が第1光学フィルムの第2主面と直接表面接触するように、多層構造体を含む真空チャンバに真空を適用することと、真空チャンバから真空を解放することと、多層構造体を真空チャンバから取り出し、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイス内に多層構造体を配置することと、大気圧よりも高い圧力を多層構造体に適用しながら、第1光学フィルムの第1及び第2主面のポリマー材料の軟化温度、又はそれ以上の温度まで、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を上昇及び保持することと、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を室温まで低下させることと、多層構造体への大気圧よりも高い圧力を解放して、光学的に透明であり、第1光学フィルムによる反射光の散乱を示さない多層物品を形成することと、を含む、調製方法である。
【0072】
実施形態11は、第1ガラス基材及び第2ガラス基材の処理済み表面が、少なくとも1つのシランカップリング剤と、溶媒と、を含む処理溶液を提供することと、処理溶液をガラス表面に適用して、連続的又は不連続的なコーティング層を形成することと、連続的又は不連続的なコーティング層を乾燥することと、を含む処理によって調製される、実施形態10に記載の方法である。
【0073】
実施形態12は、シランカップリング剤が、一般的構造:ZSi-A-X[式中、各Zは、アルキル基又はアルコキシ基であり、ただし、少なくとも1つのZは、アルコキシ基であり、Aは、アルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を含む二価連結基であり、Xは、アミノ基-NR から選択される官能基であり、式中、各Rは、独立して、水素原子、アルキル基若しくはアリール基、イソシアネート基、又はエポキシ基である]のものである、実施形態11に記載の方法である。
【0074】
実施形態13は、第1主面及び第2主面を有する第3ガラス基材であって、第3ガラス基材の第1主面が接着剤層を含まない処理済み表面である、第3ガラス基材を提供することと、ポリマー材料の1つ以上の層を含む第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第2光学フィルムを提供することと、を更に含み、多層構造体を調製することが、第2光学フィルムの第1主面が第2ガラス基材の第2主面に近接し、第2光学フィルムの第2主面が第3ガラス基材の第1主面に近接するように、第2光学フィルム及び第3ガラス基材を配列することを更に含む、実施形態10~12のいずれか1つに記載の方法である。
【0075】
実施形態14は、第1主面及び第2主面を有する第3ガラス基材であって、第3ガラス基材の第1主面が接着剤層を含まない処理済み表面である、第3ガラス基材を提供することと、ポリマー材料の1つ以上の層を含む第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第2光学フィルムを提供することと、ポリマー材料の1つ以上の層を含む第1主面及び第2主面を有し、第1主面及び第2主面が接着剤層を含まない、第3光学フィルムを提供することと、を更に含み、多層構造体を調製することが、第2光学フィルムの第1主面が第2ガラス基材の第2主面に近接し、第3光学フィルムの第1主面が第2光学フィルムの第2主面に近接し、第3光学フィルムの第2主面が第3ガラス基材の第1主面に近接するように、第2光学フィルム、第3光学フィルム、及び第3ガラス基材を配列することを更に含む、実施形態10~12のいずれか1つに記載の方法である。
【0076】
実施形態15は、多層構造体を調製することが、フレーム内に第1及び第2ガラス基材並びに第1光学フィルムを配置することを含み、フレームが、第1プレートが第1ガラス基材の第1主面と接触し、第2プレートが第2ガラス基材の第2主面と接触するように、第1及び第2プレートを含む、実施形態10~14のいずれか1つに記載の方法である。
【0077】
実施形態16は、各プレートが、少なくとも1つのオリフィスを含み、オリフィスが、圧縮空気圧源に接続されており、第1プレートのオリフィスが第1ガラス基材と流体接触しており、第2プレートのオリフィスが第2ガラス基材と流体接触しており、大気圧よりも高い圧力を多層構造体に適用することが、第1及び第2プレートのオリフィスを通して圧縮空気圧を適用することを含む、実施形態15に記載の方法である。
【0078】
実施形態17は、第1光学フィルムが、多層偏光フィルムを含む、実施形態10~16のいずれか1つに記載の方法である。
【0079】
実施形態18は、多層偏光フィルムが、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの交互層を含む、実施形態17に記載の方法である。
【0080】
実施形態19は、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの温度を上昇及び保持することが、少なくとも30分間、温度を少なくとも120℃まで上昇させることを含む、実施形態10~18のいずれか1つに記載の方法である。
【0081】
実施形態20は、熱及び/又は圧力を供給することが可能なデバイスの圧力が、少なくとも5Kg/cmまで上昇される、実施形態10~19のいずれか1つに記載の方法である。
【0082】
多層物品もまた開示されている。実施形態21は、多層物品であって、第1主面及び第2主面を有する第1ガラス基材と、第1主面及び第2主面を有する第2ガラス基材と、ポリマー材料の1つ以上の層を含む第1主面及び第2主面を有する第1光学フィルムと、を含み、第1ガラス基材の第2主面が第1光学フィルムの第1主面に界面結合され、界面結合が接着剤層を含まず、第1光学フィルムの第2主面が第2ガラス基材の第1主面に界面結合され、界面結合が接着剤層を含まず、第1ガラス基板への第2主面及び第2ガラス基板の第1主面が処理済み又は未処理の表面であり、処理済み表面がシランカップリング剤処理済み表面を含み、多層物品が光学的に透明であり、第1光学フィルムによる反射光の散乱を示さない、多層物品を含む。
【0083】
実施形態22は、物品が、第1主面及び第2主面を有する第2光学フィルムと、第1主面及び第2主面を有する第3ガラス基材と、を更に含み、第2ガラス基材の第2主面が第2光学フィルムの第1主面に界面結合され、界面結合が接着剤層を含まず、第2光学フィルムの第2主面が第3ガラス基材の第1主面に界面結合され、界面結合が接着剤層を含まず、第2ガラス基材の第2主面及び第3ガラス基材の第1主面が処理済み又は未処理の表面であり、処理済み表面がシランカップリング剤処理済み表面を含み、多層物品が光学的に透明であり、光学フィルムによる反射光の散乱を示さない、実施形態21に記載の多層物品である。
【0084】
実施形態23は、物品が、第1主面及び第2主面を有する第2光学フィルムと、第1主面及び第2主面を有する第3光学フィルムと、第1主面及び第2主面を有する第3ガラス基材と、を更に含み、第2ガラス基材の第2主面が第2光学フィルムの第1主面に界面結合され、界面結合が接着剤層を含まず、第2光学フィルムの第2主面が第3光学フィルムの第1主面に界面結合され、界面結合が接着剤層を含まず、第3光学フィルムの第2主面が第3ガラス基材の第1主面に界面結合され、第2ガラス基材の第2主面及び第3ガラス基材の第1主面が処理済み又は未処理の表面であり、処理済み表面がシランカップリング剤処理済み表面を含み、多層物品が光学的に透明であり、光学フィルムによる反射光の散乱を示さない、実施形態21に記載の多層物品である。
【0085】
実施形態24は、第1光学フィルムが、多層偏光フィルムを含む、実施形態21~23のいずれか1つに記載の多層物品である。
【0086】
実施形態25は、多層偏光フィルムが、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの交互層を含む、実施形態24に記載の多層物品である。
【0087】
実施形態26は、第1ガラス基材の第2主面及び第2ガラス基材の第1主面が、処理済み表面を含み、処理済み表面が、一般的構造:ZSi-A-X[式中、各Zは、アルキル基又はアルコキシ基であり、ただし、少なくとも1つのZは、アルコキシ基であり、Aは、アルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を含む二価連結基であり、Xは、アミノ基-NR から選択される官能基であり、式中、各Rは、独立して、水素原子、アルキル基若しくはアリール基、イソシアネート基、又はエポキシ基である]を有するシランカップリング剤で処理された処理済み表面を含む、実施形態21~25のいずれか1つに記載の多層物品である。
【実施例0088】
これらの実施例は、単に例示目的のみのものであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。本明細書の実施例及び他の箇所における全ての部、百分率、比などは、別途指示がない限り、重量に基づくものである。使用した溶媒類及び他の試薬類は、特記しない限り、Sigma-Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin)より入手した。次の略称を使用する:mm=ミリメートル、Pa=パスカル、min=分、hr=時間、Kg=キログラム、cm=センチメートル。
【0089】
【表1】
【0090】
試験方法
ゆず肌試験
直線体蛍光管を以下に記載の構造体上で照らしたときに生成された反射像を観察することによって、ゆず肌試験を行った。ゆず肌の有無は、容易に視覚的に知覚された。試験の結果は、ゆず肌が観察されない場合には「良」、又はゆず肌が観察された場合には「NG」として報告される。
【0091】
結合試験
結合試験は、層間の結合接着が、ウォータージェット切断プロセスに耐えるほど十分高いかどうかを指す。データは、ウォータージェット切断プロセス中に離層が発生しない場合には「良」、ウォータージェット切断は成功したが、ウォータージェット切断プロセス中にいくらかの離層が生じる場合には「可」、又は構造体がウォータージェット切断に耐えることができない場合には「NG」として提示される。
【0092】
反り試験
反りは、ウォータージェット切断前の直径300mmのスタックの平坦性を指し、視覚的に観察することによって検出される。データは、反りが観察されない場合には「良」、反りがいくらか観察される場合には「可」、又は構造体が非常にゆがむ場合には「NG」として提示される。
【0093】
実施例1~2及び比較例C1~C2
3枚のガラスプレートと3枚の光学フィルムとのラミネートされたスタックを含む平坦レンズ光学物品の例。それぞれの場合において、形成された光学物品は、直径34mm、厚さ約2.5mmであった。物品は、ラミネートされたスタック構造体を組み立てて加工することによって作製された。
【0094】
ラミネートスタック構造体の組み立て及び加工を一般化した:
各物品について、ラミネートスタックアセンブリを、次の順序で配列した:
ガラスプレート/APフィルム/PFS/PF/プレートフィルム/ガラスプレート。
【0095】
ラミネートスタックアセンブリを組み立てて加工するための一般的な手順は、以下のとおりであった。
【0096】
1)各フィルムを個々のリングフレームに取り付けた。
2)ガラスプレートと、リングフレームを有するフィルムとを、真空チャンバ内で、Oリングを備えた2枚の厚さ30mmのアルミニウムプレスプレート(pressing plate)の間に順に配置して、ガラスプレートに対してアルミニウムプレスプレートを封止し、その構造体全体を、2枚のアルミニウムプレスプレート間にボルトで一緒に保持した。
3)真空チャンバを50Paの圧力までポンプダウンし、アセンブリの層をプレスプレートと共にプレスした。
4)真空を破り、プレスプレートと共にスタックを取り出す。
5)スタックを全てまとめて、空気循環オーブンに1hr置く。
6)スタックを取り出し、室温まで放冷する。
7)ガラス縁部に沿ってスタックを切り出す。
8)ウォータージェットで最終直径(34mm)に切断する。
【0097】
比較例C1
比較例C1について、アセンブリが次の順序になるように、OCAを使用してアセンブリを結合した:
ガラスプレート/OCA/APフィルム/OCA/PFS/OCA/PF/OCA/プレートフィルム/OCA/ガラスプレート。
【0098】
得られた構造体は、ゆず肌試験(上述)に不合格であり、更なる試験はされなかった。
【0099】
実施例1~2及び比較例C2
実施例1~2及び比較例C2では、OCAを使用せず、それらの違いは、実施例1及び2では、真空チャンバ内の真空が破られる直前に、構造体の2つの外側ガラスプレートに対して、アルミニウムプレスプレートの入り口を介して圧縮空気圧(5Kg/cm)を適用したことであった。比較例C2では、圧縮空気圧を適用しなかった。実施例1及び比較例C2では、スタックを、1時間、150℃の温度で加熱し、実施例2では、スタックを、1時間、100℃の温度で加熱した。これらの条件の概要、並びにゆず肌試験、結合試験、及び反り試験(上述)の結果を表1に示す。
【0100】
【表2】
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材及び第2の基材の間に配置され、前記第1の基材及び前記第2の基材に界面結合された、多層光学フィルムを含む、多層物品であって、
前記界面結合がポリビニルブチラールを含有する熱活性化接着剤層を含まず、
前記多層物品が、ASTM D1003-11に従い、90%以上の視感透過率及び5%以下のヘイズを有する、
多層物品。
【請求項2】
前記多層光学フィルムが、多層偏光フィルムを含む、請求項1に記載の多層物品。
【請求項3】
前記多層偏光フィルムが、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの交互層を含む、請求項2に記載の多層物品。
【請求項4】
前記第1の基材の前記多層光学フィルム側の主面及び前記第2の記載の前記多層光学フィルム側の主面が、処理済み表面を含み、前記処理済み表面が、一般的構造:ZSi-A-X[式中、各Zは、アルキル基又はアルコキシ基であり、ただし、少なくとも1つのZは、アルコキシ基であり、Aは、アルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を含む二価連結基であり、Xは、アミノ基-NR から選択される官能基であり、式中、各Rは、独立して、水素原子、アルキル基若しくはアリール基、イソシアネート基、又はエポキシ基である]を有するシランカップリング剤で処理された処理済み表面を含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の多層物品。