(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125414
(43)【公開日】2024-09-18
(54)【発明の名称】絶縁回路基板
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20240910BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240910BHJP
H05K 3/20 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01L23/12 D
H01L23/36 C
H05K3/20 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107137
(22)【出願日】2024-07-03
(62)【分割の表示】P 2021024803の分割
【原出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】石塚 博弥
(57)【要約】 (修正有)
【課題】回路層の接合性を向上する絶縁回路基板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックス基板11に接合される第1層13及び第1層のセラミックス基板とは反対側に接合される第2層を備えるとともに、面積が大きい大回路部と大回路部より面積が小さい小回路部とに分断された回路層が形成された絶縁回路基板の製造方法であって、セラミックス基板の一方の面に第1層を形成するための複数の第1層用金属板をろう材を介して配置し、加圧しながら加熱してセラミックス基板に第1層を形成する第1接合工程と、第1接合工程後に第1層上に第2層を形成するための第2層用金属板141~143を配置し、該金属板を加圧しながら加熱して第1層上に第2層を形成する第2接合工程と、を備え、第2接合工程では、加圧面の小回路部の第2層用金属板に対応する領域が加圧面から突出し、その表面が凸曲面からなる突出部611を有する加圧板61で加圧する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板の一方の面に前記セラミックス基板に接合される第1層及び該第1層の前記セラミックス基板とは反対側に接合される第2層とを備えるとともに、面積が大きい大回路部と前記大回路部より面積が小さい小回路部とに分断された回路層が形成された絶縁回路基板の製造方法であって、
前記セラミックス基板の一方の面に前記第1層を形成するための複数の第1層用金属板をろう材を介して配置し、加圧しながら加熱して前記セラミックス基板に前記第1層を形成する第1接合工程と、
前記第1接合工程後に前記第1層上に前記第2層を形成するための複数の第2層用金属板を配置し、加圧しながら加熱して前記第1層上に前記第2層を形成する第2接合工程と、を備え、
前記第2接合工程では、加圧面の前記小回路部の前記第2層用金属板に対応する領域が前記加圧面から突出し、その表面が凸曲面からなる突出部を有する加圧板により加圧することを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記第1層用金属板は、純アルミニウムからなることを特徴とする請求項1に記載の絶縁回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記小回路部は、平面視略矩形状に形成され、短辺の長さが10mm以下で、かつ、面積が100mm2以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記第1接合工程では、前記セラミックス基板の他方の面に放熱層を形成するための放熱層用金属板をろう材を介して配置し、加圧しながら加熱して前記セラミックス基板に前記第1層とともに前記放熱層を形成し、
前記第2接合工程では、前記放熱層上にヒートシンクを配置し、加圧しながら加熱して前記第2層とともに前記放熱層に前記ヒートシンクを接合することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の絶縁回路基板の製造方法。
【請求項5】
セラミックス基板の一方の面に接合される複数の第1層及び該複数の第1層の前記セラ
ミックス基板とは反対側に接合される複数の第2層とを備える回路層が形成されており、前記回路層は、面積が大きい大回路部と前記大回路部より面積が小さい小回路部とからなり、前記小回路部は、平面視略矩形状に形成され、短辺の長さが10mm以下で、かつ、面積が100mm2以下であり、前記小回路部の前記第1層の高さは前記大回路部の前記第1層の高さより10μm~50μm小さく、前記小回路部の前記第1層の上に、前記大回路部の前記第2層と同じ厚さの前記小回路部の前記第2層が接合されていることを特徴とする絶縁回路基板。
【請求項6】
セラミックス基板の一方の面に回路層が形成されており、前記回路層は、面積が大きい大回路部と前記大回路部より面積が小さい小回路部とからなり、前記小回路部は、平面視略矩形状に形成され、短辺の長さが10mm以下で、かつ、面積が100mm2以下であり、前記小回路部の高さは前記大回路部の高さより10μm~50μm小さいことを特徴とする絶縁回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁回路基板の製造方法及び絶縁回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁回路基板として、窒化アルミニウムを始めとするセラミックス基板からなる絶縁層の一方の面に回路層が接合されるとともに、他方の面に放熱層が接合され、この放熱層を介してヒートシンクが接合されたヒートシンク付き絶縁回路基板が知られている。
例えば、特許文献1に開示されているヒートシンク付き絶縁回路基板は、セラミックス基板の一方の面に回路層が接合されるとともに、セラミックス基板の他方の面に放熱層を介してヒートシンクが接合されてなり、ヒートシンクの天板部には、絶縁回路基板が収容される収容凹部が形成されている。
【0003】
ところで、回路層がセラミックス基板に接合される第1回路層(第1層)と、第1層上に接合される第2回路層(第2層)とからなる絶縁回路基板として特許文献2に記載の絶縁回路基板が提案されている。このような2層構造の回路層は、複数の小回路層(回路部)に分断されている。この特許文献2の絶縁回路基板では、複数の回路部はいずれも同じ面積とされているが、複数の回路部のそれぞれの大きさ(平面視における面積)が異なる絶縁回路基板も提案されている。この場合、セラミックス基板には、面積が小さい回路部(以下、小回路部という)と、面積が大きい回路部(以下、大回路部)と、がそれぞれ隙間を開けた状態で固定されることとなる。このような絶縁回路基板は、まず、セラミックス基板に回路層の第1層となる第1層用金属板を加圧しながら加熱して接合する第1接合工程と、第1接合工程後に第1層上に第2層用金属板を配置し、加圧しながら加熱して接合する第2接合工程とを経て製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-181549号公報
【特許文献2】特開2019-121794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、第1層となる第1層用金属板がセラミックス基板に接合される際に、小回路部となる第1層用金属板は、大回路部となる第1層用金属板に比べて、面方向に膨張した後の収縮が抑えられる結果、厚さが小さくなる傾向にある。このため、第1層上に第2層となる第2金属板を配置して接合しようとすると、第1層の小回路部の高さが、大回路部の高さに比べて小さいことから、押圧板によりこれら第2層用金属板の全体を押圧しようとすると、小回路部の第2層用金属板を押圧することができず、小回路部の接合性が低下する。この点、小回路部の第2層用金属板を適切に押圧するため、押圧板の小回路部の第2層用金属板に対応する領域を第1層の小回路部と大回路部との高さの差に合わせて突出させて押圧することも考えられるが、複数の回路部の大きさは、絶縁回路基板ごとに異なる他、その高さにもばらつきがあるため、押圧分布の不均一化を誘発し、回路部の第2層用金属板を適切に押圧できない場合がある。また、加圧板の突出部の面積が、小回路部の第2層用金属板の面積よりも小さいと、加圧時に突出部のエッジが食い込みその痕が残る場合がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、回路層の接合性を向上できる絶縁回路基板の製造方法及び絶縁回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の絶縁回路基板の製造方法は、セラミックス基板の一方の面に前記セラミックス基板に接合される第1層及び該第1層の前記セラミックス基板とは反対側に接合される第2層とを備えるとともに、面積が大きい大回路部と前記大回路部より面積が小さい小回路部とに分断された回路層が形成された絶縁回路基板の製造方法であって、前記セラミックス基板の一方の面に前記第1層を形成するための複数の第1層用金属板をろう材を介して配置し、加圧しながら加熱して前記セラミックス基板に前記第1層を形成する第1接合工程と、前記第1接合工程後に前記第1層上に前記第2層を形成するための複数の第2層用金属板を配置し、加圧しながら加熱して前記第1層上に前記第2層を形成する第2接合工程と、を備え、前記第2接合工程では、加圧面の前記小回路部の前記第2層用金属板に対応する領域が前記加圧面から突出し、その表面が凸曲面からなる突出部を有する加圧板により加圧する。
【0008】
本発明では、小回路部の第2層用金属板を加圧板の加圧面から突出した突出部の凸曲面で押圧するのでことから、第1層の小回路部高さが大回路部の高さより小さくても小回路部の第2層用金属板を確実に押圧でき、回路層の接合性を高めることができる。また、加圧板の突出部の表面が凸曲面からなるので、加圧板の突出部の面積が、小回路部の第2層用金属板の面積よりも小さくても、その押圧による痕が残ることを抑制できる。さらに、第1層の小回路部の高さにばらつきがある場合でも、加圧板の突出部の表面が凸曲面からなることで、そのばらつきを吸収でき、適切に第2層用金属板を均一に加圧できる。
【0009】
本発明の絶縁回路基板の製造方法の好ましい態様としては、前記第1層用金属板は、純アルミニウムからなるとよい。
純アルミニウムは、アルミニウム合金や銅等に比べて変形しやすいので、本発明を特に有効に適用でき、回路層の接合性を向上できる。
【0010】
本発明の絶縁回路基板の製造方法において、前記小回路部は、平面視略矩形状に形成され、短辺の長さが10mm以下で、かつ、面積が100mm2以下であるものに適用することができる。
【0011】
本発明の絶縁回路基板の製造方法の好ましい態様としては、前記第1接合工程では、前記セラミックス基板の他方の面に前記放熱層を形成するための放熱層用金属板をろう材を介して配置し、加圧しながら加熱して前記セラミックス基板に前記第1層とともに放熱層を形成し、前記第2接合工程では、前記放熱層上に前記ヒートシンクを配置し、加圧しながら加熱して前記第2層とともに前記放熱層に前記ヒートシンクを接合するとよい。
【0012】
本発明の絶縁回路基板は、セラミックス基板の一方の面に接合される第1層及び該第1層の前記セラミックス基板とは反対側に接合される第2層とを備えるとともに、面積が大きい大回路部と前記大回路部より面積が小さい小回路部とに分断された回路層が形成されており、前記小回路部は、平面視略矩形状に形成され、短辺の長さが10mm以下で、かつ、面積が100mm2以下であり、前記小回路部の高さは前記大回路部の高さよりも10μm以上小さい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、絶縁回路基板の回路層の接合性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るヒートシンク付き絶縁回路基板を用いたパワーモジュールを示す断面図である。
【
図2】
図1に示すヒートシンク付き絶縁回路基板の上面図である。
【
図3】
図1に示すヒートシンク付き絶縁回路基板の製造工程における第1接合工程を示す図である。
【
図4】
図1に示すヒートシンク付き絶縁回路基板の製造工程の第2接合工程における絶縁回路基板にろう材を介して第2層用金属板及びヒートシンクを配置した状態を示す図である。
【
図5】ヒートシンク付き絶縁回路基板の製造工程の第2接合工程における第2層用金属板及びヒートシンクを加圧板で押圧する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
[ヒートシンク付き絶縁回路基板の概略構成]
本発明に係るヒートシンク付き絶縁回路基板の製造方法により製造されるヒートシンク付き絶縁回路基板1は、
図1に示すように、絶縁回路基板10に、複数のフィンが立設されたフィン一体型のヒートシンク20が接合されたものである。
そして、このヒートシンク付き絶縁回路基板1の表面に半導体チップ等の電子部品30が搭載されることにより、パワーモジュール100が製造される。
【0017】
[絶縁回路基板の構成]
ヒートシンク付き絶縁回路基板を構成する絶縁回路基板10は、セラミックス基板11と、セラミックス基板11の一方の面に積層された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面に積層された放熱層15とを備える。
セラミックス基板11は、回路層12と放熱層15の間の電気的接続を防止する絶縁材であって、例えば窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)等により形成され、その平面サイズは30mm~100mm、板厚は0.2mm~1.2mmである。
【0018】
回路層12は、複数の回路部121,122,123に分断されるとともに、セラミックス基板11に接合される第1層13と、第1層13の上面に接合される第2層14とを備えている。
これらのうち第1層13は、純度99質量%以上の純アルミニウムが用いられ、JIS規格では1000番台の純アルミニウム、特に1N90(純度99.9質量%以上:いわゆる3Nアルミニウム)又は1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)を用いることができる。
放熱層15は、純度99質量%以上の純アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられ、JIS規格では1000番台のアルミニウム、特に1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)を用いることができる。
【0019】
本実施形態においては、第1層13及び放熱層15は、純度が99.99%以上の純アルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなるアルミニウム板とされ、その厚さは0.4mm~1.6mmに設定されており、第1層13の厚さ寸法と放熱層15の厚さ寸法とが同一に設定されている。
一方、第2層14は、A6063系等のアルミニウム合金が用いられており、その厚さは0.5mm~1.5mmに設定されており、後述するヒートシンク20の中央部21の厚さ寸法と同一の厚さ寸法に設定されている。
【0020】
また、回路部121,122のそれぞれは、同じ平面サイズに形成されるとともに、回路部123に比べてその平面サイズ(面積)が大きく形成されている。例えば、回路部121,122の
図2の横方向の幅w1は15mm~40mm、縦方向の幅w2は15mm~90mmに設定され、回路部123の
図2の横方向の幅w3は2mm~10mm、縦方向の幅w4は2mm~10mmに設定されている。この回路部123の横方向の幅w3及び縦方向の幅w4のいずれか短い方(短辺)が10mm以下であり、かつ、その面積が100mm
2以下であることが好ましい。さらに、回路部123の高さは、回路部1221,122の高さよりも10μm以上小さく設定されている。
なお、以下の説明では、回路部123は、回路部121,122に比べてその面積が小さいため、小回路部123とし、回路部121,122を大回路部121,122として説明する。
【0021】
[ヒートシンクの構成]
この絶縁回路基板10に接合されるヒートシンク20は、A6063系等のアルミニウム合金からなる板材により形成される。そして、放熱層15に接合されるヒートシンクの中央部21に、絶縁回路基板10の少なくとも一部が収容される収容凹部22が形成され、収容凹部22の外周側に厚肉部分が残されることにより周壁部23が形成されている。この収容凹部22の底面に絶縁回路基板10の放熱層15が、Al-Si-Mg系のろう材を介して積層し、これらを積層方向に加圧して加熱することにより絶縁回路基板10にヒートシンク20が接合される。
【0022】
また、ヒートシンク20は、中央部21の厚み寸法(収容凹部22の底面部分の厚み寸法)が周壁部23の厚み寸法よりも薄く形成されている。本実施形態においては、ヒートシンク20がA6063系アルミニウム合金からなる総厚2.1mm~6.8mmの板材により形成され、周壁部23の厚み寸法が2.1mm~6.8mm、収容凹部22の底面部分の厚み寸法が0.5mm~1.5mmに設定されている。このヒートシンク20の中央部21の下面21bには、複数のピン状フィン25が立設され、このピン状フィン25の先端位置は水平面上に揃えられ、下面21bの表面からほぼ等しい立設高さとなるように形成されている。
なお、ヒートシンク20に立設されるフィンの形状は特に限定されるものではなく、本実施形態のようなピン状フィン25の他、ひし形フィンや帯板状のフィン等を形成することもできる。
【0023】
なお、パワーモジュール100を構成する電子部品30は、回路層12の表面に形成されたNiめっき(不図示)上に、Sn‐Ag‐Cu系、Zn‐Al系、Sn‐Ag系、Sn‐Cu系、Sn‐Sb系もしくはPb‐Sn系等のはんだ材を用いて接合される。
図1中の符号31が、そのはんだ接合層を示す。また、電子部品30と回路層12の端子部との間は、アルミニウムからなるボンディングワイヤ(不図示)により接続される。
【0024】
次に、本実施形態のヒートシンク付き絶縁回路基板1の製造方法について説明する。
その製造方法は、セラミックス基板11に回路層12のうちの第1層13及び放熱層15を形成する第1接合工程と、絶縁回路基板10に第2層14を形成するとともに、放熱層15にヒートシンク20を接合する第2接合工程と、を備える。以下、この工程順に説明する。
【0025】
(第1接合工程)
回路層12の第1層13となる複数(
図3に示す例では3つ)の第1層用金属板131~133、セラミックス基板11、放熱層用金属板15を、
図3に示すように、それぞれAl-Si系、Al-Ge系、Al-Cu系、Al-Mg系、Al-Mn系、又はAl-Si-Mg系ろう材箔16を介して積層し、その積層体を相互に平行な平坦面からなる加圧面を有する加圧板31,32により挟持するとともに積層方向に加圧した状態で加熱した後、冷却することにより、セラミックス基板11の一方の面11aに第1層13、他方の面11bに放熱層15が接合される。ろう材箔16は加熱により溶融し、第1層13や放熱層15中に拡散して、これらをセラミックス基板11と強固に接合する。
このときの接合条件は、必ずしも限定されるものではないが、真空雰囲気中で、積層方向の加圧力が0.3MPa~1.5MPaで、630℃以上655℃以下の加熱温度に20分以上120分以下保持するのが好適である。
【0026】
この第1接合工程では、第1層用金属板131~133のそれぞれは、各回路部121~123の平面サイズに対応した大きさで、厚さはすべて同じとされ、それぞれがセラミックス基板10に接合される。この点、第1層の小回路部123は、大回路部121,122よりも小さく、具体的には、短辺が10mm以下であり、かつ、その面積が100mm2以下と小さい。このように小回路部123となる第1層用金属板133は、大回路部121,122となる第1層用金属板131,132に比べて小さいことから、後述するように、大回路部121,122となる第1層用金属板131,132に比べて厚さが小さくなる傾向にある。このため、第1層の小回路部123の高さが大回路部121,122の高さより小さくなり、例えば、加熱後に冷却した後の第1層の小回路部123と第1層の大回路部121,122との高さの差w5は、10μm~50μmとなる。
【0027】
(第2接合工程)
次に、
図4に示すように、第1層13上にAl-Si-Mg系ろう材箔16を介して複数(
図4に示す例では3つ)の第2層用金属板141~143を配置し、かつ、絶縁回路基板10の放熱層15の下面と、ヒートシンク20の収容凹部22の底面との間にAl-Si-Mg系ろう材箔16を介在させ、積層方向に加圧した状態で加熱することにより、第1層13と複数の第2層用金属板141~143及び放熱層15とヒートシンク20とを接合する。これにより、セラミックス基板11の両面に複数の回路部121~123からなる回路層12及び放熱層13が接合された絶縁回路基板10が形成され、この絶縁回路基板10にヒートシンク20が接合される。
この積層方向の加圧力は、0.1MPa~0.5MPaで、590℃以上615℃以下の加熱温度に3分以上20分以下保持するのが好適である。
【0028】
ここで、第1層の小回路部123の高さが第1層の大回路部121,122の高さより小さく、高さの差w5が生じている。このため、例えば、加圧面が平坦面からなる加圧板を用いて第2接合工程を実行すると、第1層上に配置された小回路層123の第2層用金属板143を押圧することができず、回路層12の接合性が低下する。
【0029】
このため、本実施形態では、第2接合工程において、加圧面の第1層上に配置される小回路部123の第2層用金属板143に対応する領域が加圧面から突出し、その表面が凸曲面からなる半球面状の加圧板61と、平坦面からなる加圧面を有する加圧板62を用いてこれらを加圧している。これら加圧板61及び加圧板62は、例えば、カーボンやセラミックス、金属の削りだしなどにより形成されている。
【0030】
加圧板61の突出部611以外の領域は平坦面とされており、突出部611により小回路部123の第2層用金属板143を押圧し、平坦面により大回路部121,122の第2層用金属板141,142を押圧する。また、突出部611の高さは、第1層の小回路部123と大回路部121,122との高さの差w5より大きく設定され、例えば15μm以上70μm以下に設定されている。このような加圧板61を用いることにより、大回路部121,122の第2金属層用金属板141,142を加圧板61の平坦面で加圧するとともに、小回路部123の第2層用金属板143を突出部611の凸曲面で押圧することから、これら第2層用金属板141~143を略均一に押圧することが可能となっている。
【0031】
本実施形態では、小回路部123の第2層用金属板143を加圧板61の突出部611の凸曲面で押圧するので、第1層の小回路部123の高さが大回路部121,122の高さより小さくても小回路部123の第2層用金属板143を確実に押圧できるので、回路層12の接合性を高めることができる。また、加圧板61の突出部611が半球面状に形成され、その表面が凸曲面とされているので、加圧板61の突出部611の面積が、小回路部123の第2層用金属板143の面積よりも小さくても、その押圧による痕が残ることを抑制できる。さらに、第1層の小回路部123の高さにばらつきがある場合でも、加圧板61の突出部611が半球面状に形成され、その高さが15μm~70μmに設定されていることで、そのばらつきを吸収でき、適切に第2層用金属板141~143を均一に加圧できる。
【0032】
回路層12の第1層13を形成する純アルミニウムは、アルミニウム合金や銅等に比べてセラミックス基板11に接合される際の加熱により、変形しやすいので、本実施形態を特に有効に適用でき、回路層12の接合性を向上できる。
【0033】
本実施形態では、短辺の長さが10mm以下で、かつ、面積が100mm2以下の平面視略矩形状の小回路部123を備えるヒートシンク付き絶縁回路基板1においても、回路層12の接合性を向上できる。
【0034】
その他、細部構成は実施形態の構成のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、回路層12の第2層14及びヒートシンク20をA6063系等のアルミニウム合金からなることとしたが、これに限らず、純銅又は銅合金により形成してもよい。この場合、第2接合工程においては、第1層13と第2層用金属板141~143との間及び放熱層15とヒートシンク20との間にろう材箔16を配置する必要はなく、例えば、真空雰囲気下で加圧力を0.3MPa以上3.5MPa以下、加熱温度を400℃以上548℃未満とし、この状態で5分以上240分以下保持することにより固相拡散接合させればよい。
【0035】
上記実施形態では、第2接合工程において、加圧板61により第2層用金属板141~143を加圧するとともに加圧板62によりヒートシンク20のピン状フィン25に対応する領域のみを押圧することとしたが、これに限らない。例えば、加圧板61を
図5に示すよりも拡大し、加圧板61における突出部611の外側に位置する平坦面により第2層用金属板141,142及びヒートシンク20の周壁部23の上面24を加圧するとともに、加圧板62も同様に拡大するとともに周壁部23の下面に対応する領域を突出させて周壁部23の下面を加圧するようにしてもよい。
【0036】
また、上記加圧板61及び加圧板62を拡大して接合時にヒートシンク20の周壁部23を同時に加圧する方法に代えて、接合後にヒートシンク付き絶縁回路基板1の中央部と周壁部とをそれぞれ異なる加圧板を用いて押圧する矯正工程を実行することとしてもよい。この矯正工程は、例えば、上記特許文献2に記載に基づいて実行すればよい。
【0037】
上記実施形態では、ヒートシンク付き絶縁回路基板1について説明したが、これに限らず、例えば、セラミックス基板11に回路層12及び放熱層13が形成されたもの、セラミックス基板11に回路層12のみが形成されたものも本発明の権利範囲である。
【0038】
上記実施形態では、回路層12が大回路部121,122と小回路部123からなる例を説明したが、大回路部及び小回路部の数は適宜設定可能である。小回路部が複数ある場合には、加圧板61の小回路部の第2層用金属板に対応する複数の領域を突出させればよい。
【0039】
上記実施形態では、加圧板61の突出部611は、半球面状であることとしたが、これに限らず、半楕円球面状に突出していてもよい。つまり、突出部611の表面が凸曲面を有する形状であればよい。
【符号の説明】
【0040】
1 ヒートシンク付き絶縁回路基板
10 絶縁回路基板
11 セラミックス基板
12 回路層
121,122 大回路部(回路部)
123 小回路部(回路部)
13 第1層
131,132,133 第1層用金属板
14 第2層
141,142,143 第2層用金属板
15 放熱層
150 放熱装用金属板
16 ろう材箔
20 ヒートシンク
21 中央部
22 収容凹部
23 周壁部
24 上面
24A 下面
25 ピン状フィン
61 加圧板
611 突出部
62 加圧板
【手続補正書】
【提出日】2024-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板の一方の面に接合される複数の第1層及び該複数の第1層の前記セラミックス基板とは反対側に接合される複数の第2層とを備える回路層が形成されており、前記回路層は、面積が大きい大回路部と前記大回路部より面積が小さい小回路部とからなり、前記小回路部は、平面視略矩形状に形成され、短辺の長さが10mm以下で、かつ、面積が100mm2以下であり、前記小回路部の前記第1層は、前記大回路部の第1層よりも残留応力が大きく、厚さが小さいことを特徴とする絶縁回路基板。
【請求項2】
前記大回路部の前記第2層と前記小回路部の前記第2層とは同じ厚さであることを特徴とする請求項1に記載の絶縁回路基板。
【請求項3】
前記第1層は純アルミニウムからなることを特徴とする請求項1に記載の絶縁回路基板。
【請求項4】
前記第2層はアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の絶縁回路基板。
【請求項5】
セラミックス基板の一方の面に回路層が形成されており、前記回路層は、面積が大きい大回路部と前記大回路部より面積が小さい小回路部とからなり、前記小回路部は、平面視略矩形状に形成され、短辺の長さが10mm以下で、かつ、前記大回路部よりも残留応力が大きく、厚さが小さいことを特徴とする絶縁回路基板。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、絶縁回路基板に関する。