(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125427
(43)【公開日】2024-09-18
(54)【発明の名称】車両用内装部品
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240910BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60J5/00 501B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107711
(22)【出願日】2024-07-03
(62)【分割の表示】P 2020147051の分割
【原出願日】2020-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(72)【発明者】
【氏名】久保 尚己
(72)【発明者】
【氏名】荻原 佑太
(72)【発明者】
【氏名】小林 建斗
(72)【発明者】
【氏名】安川 淳
(72)【発明者】
【氏名】島田 宏地
(57)【要約】
【課題】側面衝突時におけるエネルギー吸収効率を向上させつつ、軽量かつコンパクトな衝撃吸収部材を備える車両用内装部品を提供する。
【解決手段】ドアパネル1b又はドアトリム1aの一方に取り付けられるプロテクター20と、を備えるサイドドア部品1であって、プロテクター20は、ドアパネル1b又はドアトリム1aの一方に取り付けられる固定部27a,28a,29aが形成された底面25と、ドアパネル1b又はドアトリム1aの他方に対向する対向面26と、を有し、片持ち形式でドアパネル1b又はドアトリム1aの一方に取り付けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネルと、前記ドアパネルに取り付けられるドアトリムと、前記ドアパネルと前記ドアトリムの間に配設されて、前記ドアパネル又は前記ドアトリムの一方に取り付けられる衝撃吸収部材と、を備える車両用内装部品であって、
前記衝撃吸収部材は、前記ドアパネル又は前記ドアトリムの一方に取り付けられる固定部が形成された底面と、前記ドアパネル又は前記ドアトリムの他方に対向する対向面と、を有し、
前記衝撃吸収部材は、片持ち形式で前記ドアパネル又は前記ドアトリムの一方に取り付けられていることを特徴とする車両用内装部品。
【請求項2】
前記衝撃吸収部材は、前記対向面と前記底面の間において、前方に配置される前面と、後方に配置される後面と、上方に配置される上面と、下方に配置される下面と、を有し、
前記衝撃吸収部材の前記上面及び前記下面は、前記対向面の側において、前記後面よりも後方又は前方に向かって突出する突出部を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品。
【請求項3】
前記衝撃吸収部材の前記対向面は、前方又は後方に向かうにつれて前記底面に近づく方向に傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の車両用内装部品。
【請求項4】
前記衝撃吸収部材の前記固定部は、前記底面から前記対向面に向かう方向に突出して形成されていることを特徴とする請求項2乃至3のいずれか一項に記載の車両用内装部品。
【請求項5】
前記対向面、前記前面及び前記底面は、コ字形断面を形成していることを特徴とする請求項2に記載の車両用内装部品。
【請求項6】
前記衝撃吸収部材の前記前面又は前記後面には、車両幅方向に延在する第1凹部が形成されており、
前記固定部は、車両前後方向において、前記第1凹部の底部よりも前側又は後側のいずれか一方にのみに設けられていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の車両用内装部品。
【請求項7】
前記衝撃吸収部材の前記後面には、複数の補強リブが設けられており、
複数の前記補強リブの間には、前記第1凹部の前記底部が対応して配置されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用内装部品。
【請求項8】
前記衝撃吸収部材の前記底面は、前記対向面に向かう方向に窪んだ第2凹部を備え、
車両上下方向において、前記第1凹部の一部が前第2凹部と同じ高さ位置に配置されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の車両用内装部品。
【請求項9】
前記固定部は、車両前後方向において、前記後面及び前記第1凹部の底部よりも後側に設けられていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の車両用内装部品。
【請求項10】
前記ドアパネル又は前記ドアトリムの一方に取り付けられる他部材を更に備え、
前記他部材を前記ドアパネル又は前記ドアトリムの一方に取り付ける他部材固定部が、前記衝撃吸収部材の前記第1凹部の近傍に配置されていることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の車両用内装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装部品に係り、特に、衝撃吸収部材を備える車両用内装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に用いられるサイドドアとして、側面衝突時の衝撃を吸収するための合成樹脂製のプロテクター(衝撃吸収部材)を備えるものが知られている。例えば、特許文献1には、ドアパネル又はドアトリムの一方に取り付けられた箱状の衝撃吸収材を備えるサイドドア部品(車両用内装部品)に関し、衝撃吸収材における、ドアパネル又はドアトリムの他方に対向する対向面に、車両前後方向に延在する溝が形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のサイドドア部品が備える箱状のプロテクターは、剛性を保持する構造であり、エネルギー吸収性能の向上が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、側面衝突時におけるエネルギー吸収効率を向上させつつ、軽量かつコンパクトな衝撃吸収部材を備える車両用内装部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の車両用内装部品によれば、ドアパネルと、前記ドアパネルに取り付けられるドアトリムと、前記ドアパネルと前記ドアトリムの間に配設されて、前記ドアパネル又は前記ドアトリムの一方に取り付けられる衝撃吸収部材と、を備える車両用内装部品であって、前記衝撃吸収部材は、前記ドアパネル又は前記ドアトリムの一方に取り付けられる固定部が形成された底面と、前記ドアパネル又は前記ドアトリムの他方に対向する対向面と、を有し、前記衝撃吸収部材は、片持ち形式で前記ドアパネル又は前記ドアトリムの一方に取り付けられていることにより解決される。
【0007】
上記のように構成された本発明の車両用内装部品では、衝撃吸収部材が片持ち形式でドアパネル又はドアトリムの一方に取り付けられるため、側突時に対向面に加わる荷重応力初期の立ち上がりを緩やかにすることが可能となる。
【0008】
また、前記衝撃吸収部材は、前記対向面と前記底面の間において、前方に配置される前面と、後方に配置される後面と、上方に配置される上面と、下方に配置される下面と、を有し、前記衝撃吸収部材は、上面視及び下面視において逆L字型形状を有していると好ましい。
上記構成によれば、衝撃吸収部材の上面視及び下面視において逆L字型形状となるため、側突時に衝撃吸収部材に加わる衝撃を適切に吸収しつつ、衝撃吸収部材を軽量化することが可能となる。
【0009】
また、前記衝撃吸収部材の前記対向面は、前方又は後方に向かうにつれて前記底面に近づく方向に傾斜していると好ましい。
上記構成によれば、衝撃に対する当接面となる対向面が傾斜しているため、対向面の一方の端部を先に当接させることが可能となる。
【0010】
また、前記衝撃吸収部材の前記固定部は、前記底面から前記対向面に向かう方向に突出して形成されていると好ましい。
上記構成によれば、固定部が突出して形成されることで固定部の剛性が向上し、ドアパネル又はドアトリムに対する固定が安定する。
【0011】
また、前記対向面、前記前面及び前記底面は、コ字形断面を形成していると好ましい。
上記構成によれば、対向面、前面及び底面によってコ字形状の断面を形成するため、荷重を適切に受け止めて衝撃を吸収することが可能となる。
【0012】
また、前記衝撃吸収部材の前記前面又は前記後面には、車両幅方向に延在する第1凹部が形成されており、前記固定部は、車両前後方向において、前記第1凹部の底部よりも前側又は後側のいずれか一方にのみに設けられていると好ましい。
上記構成によれば、固定部が第1凹部に対して一方側にのみ設けられていることで、衝撃吸収部材の固定範囲が広がり、安定して荷重を受け止めることが可能となる。
【0013】
また、前記衝撃吸収部材の前記後面には、複数の補強リブが設けられており、複数の前記補強リブの間には、前記第1凹部の前記底部が対応して配置されていると好ましい。
上記構成によれば、第1凹部により複数の補強リブが分断されて配置されるため、コンパクトな空間で必要十分な剛性を得ることが可能となる。
【0014】
また、前記衝撃吸収部材の前記底面は、前記対向面に向かう方向に窪んだ第2凹部を備え、車両上下方向において、前記第1凹部の一部が前第2凹部と同じ高さ位置に配置されていると好ましい。
上記構成によれば、底面の第2凹部と、前面又は後面の第1凹部が、少なくとも一部が交差することになるため、固定面である底面と、前面又は後面の連結部の剛性が向上する。
【0015】
また、前記固定部は、車両前後方向において、前記後面及び前記第1凹部の底部よりも後側に設けられていると好ましい。
上記構成によれば、固定部が、前記後面及び前記第1凹部の底部、つまり、立壁を避けた位置に配置されるため、衝撃吸収部材の重量増加を抑制しつつ、固定部の剛性を効率的に向上させることが可能となる。
【0016】
また、前記ドアパネル又は前記ドアトリムの一方に取り付けられる他部材を更に備え、前記他部材を前記ドアパネル又は前記ドアトリムの一方に取り付ける他部材固定部が、前記衝撃吸収部材の前記第1凹部の近傍に配置されていると好ましい。
上記構成によれば、衝撃吸収部材の第1凹部の近傍にドアポケットなどの他部材固定部を配置することで、衝撃吸収部材の固定部の剛性を向上させつつ、衝撃吸収部材に対する荷重入力が、他部品に直接伝わらないようにすることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両用内装部品によれば、衝撃吸収部材が片持ち形式でドアパネル又はドアトリムの一方に取り付けられるため、側突時に対向面に加わる荷重応力初期の立ち上がりを緩やかにすることが可能となる。
また、本発明の車両用内装部品によれば、衝撃吸収部材の上面視及び下面視において逆L字型形状となるため、側突時に衝撃吸収部材に加わる衝撃を適切に吸収しつつ、衝撃吸収部材を軽量化することが可能となる。
また、本発明の車両用内装部品によれば、衝撃に対する当接面となる対向面が傾斜しているため、対向面の一方の端部を先に当接させることが可能となる。
また、本発明の車両用内装部品によれば、固定部が突出して形成されることで固定部の剛性が向上し、ドアパネル又はドアトリムに対する固定が安定する。
また、本発明の車両用内装部品によれば、対向面、前面及び底面によってコ字形状の断面を形成するため、荷重を適切に受け止めて衝撃を吸収することが可能となる。
また、本発明の車両用内装部品によれば、固定部が第1凹部に対して一方側にのみ設けられていることで、衝撃吸収部材の固定範囲が広がり、安定して荷重を受け止めることが可能となる。
また、本発明の車両用内装部品によれば、第1凹部により複数の補強リブが分断されて配置されるため、コンパクトな空間で必要十分な剛性を得ることが可能となる。
また、本発明の車両用内装部品によれば、底面の第2凹部と、前面又は後面の第1凹部が、少なくとも一部が交差することになるため、固定面である底面と、前面又は後面の連結部の剛性が向上する。
また、本発明の車両用内装部品によれば、固定部が、前記後面及び前記第1凹部の底部、つまり、立壁を避けた位置に配置されるため、衝撃吸収部材の重量増加を抑制しつつ、固定部の剛性を効率的に向上させることが可能となる。
また、本発明の車両用内装部品によれば、衝撃吸収部材の第1凹部の近傍にドアポケットなどの他部材固定部を配置することで、衝撃吸収部材の固定部の剛性を向上させつつ、衝撃吸収部材に対する荷重入力が、他部品に直接伝わらないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るサイドドア部品の正面図である。
【
図2】サイドドア部品を構成するドアトリムとドアパネルの
図1のII-II断面を示す模式図である。
【
図3】ドアトリムの車両幅方向外側の面を示す模式図である。
【
図5】プロテクターを外側前方から見た斜視図である。
【
図6】プロテクターを内側前方から見た斜視図である。
【
図13】プロテクターを前側下方から見た斜視図である。
【
図14】プロテクターを後側下方から見た斜視図である。
【
図15】プロテクターを底面側から見た斜視図である。
【
図16A】側突時のプロテクターの変形過程を説明する模式図(その1)である。
【
図16B】側突時のプロテクターの変形過程を説明する模式図(その2)である。
【
図16C】側突時のプロテクターの変形過程を説明する模式図(その3)である。
【
図16D】側突時のプロテクターの変形過程を説明する模式図(その4)である。
【
図16E】側突時のプロテクターの変形過程を説明する模式図(その4)である。
【
図17】変形例に係るプロテクターを外側から見た図である。
【
図18】変形例に係るプロテクターを後側下方から見た斜視図である。
【
図19】変形例に係るプロテクターを外側前方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)に係る車両用内装部品としてのサイドドア部品について、その構成例を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。そして、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0020】
また、以下の本書における説明中、「前後方向(車両前後方向)」とは、車両の前後方向に相当し、車両の走行方向と一致する方向である。また、「内外方向(車両内外方向)」とは、車両の幅方向(車両幅方向)と一致する方向である。「上下方向(車両上下方向)」とは、車両の高さ方向(車両高さ方向)を意味し、車両を正面から見たときの上下方向と一致している。
【0021】
<サイドドア部品1>
本実施形態に係るプロテクター20を備えるサイドドア部品1について
図1乃至
図16Eを参照して説明する。サイドドア部品1は、車両幅方向内側にあるドアトリム1aと、ドアトリム1aよりも車両幅方向外側にありドアトリム1aに重ねられて取り付けられるドアパネル1bと、から構成されている。ドアトリム1aは、具体的には
図2に示すように、基材樹脂層1aaと、基材樹脂層1aaの幅方向における内側に積層された表皮樹脂層1abとにより、多層構造に形成されている。
【0022】
そして、ドアトリム1aとドアパネル1bとの間には、インジェクション成形によって形成されたポリプロピレン等の合成樹脂製のプロテクター20が配設されている。
【0023】
衝撃吸収部材としてのプロテクター20は、サイドドア部品1の剛性を高め、車両の側突時に加わる衝撃(荷重)を吸収するための部材であり、本実施形態においてはドアトリム1aの基材樹脂層1aaにおけるドアパネル1b側の面に固定されている。なお、プロテクター20は、ポリプロピレン以外の合成樹脂材料から成るものでもよく、インジェクション成形ではない他の成形法によって成形されるものでもよい。
【0024】
また、プロテクター20やドアポケット1cは、
図3及び
図4に示すように、熱や超音波の付与によって形成される溶着部1dによって、ドアトリム1aに取り付けられている。ドアポケット1cをドアトリム1aに取り付けるドアポケット固定部1eは、プロテクター20の後述する前面凹部21c(第1凹部)の近傍、より詳細には前面凹部21cに囲まれた位置に配置されている(
図4)。このようにプロテクター20やドアポケット1cがドアトリム1aに取り付けられていることで、プロテクター20に対する荷重入力が、他部品であるドアポケット1cに直接伝わらないようにすることが可能となる。
【0025】
なお、プロテクター20やドアポケット1cを確実にドアトリム1aに固定することができるのであれば、プロテクター20やドアポケット1cは、溶着による溶着部1dではなく、タッピングスクリュー等の締結具やカシメによってドアトリム1aに取り付けられていてもよい。また、プロテクター20やドアポケット1cを、樹脂爪を孔や爪と嵌合させる方式でドアトリム1aに取り付けるように構成してもよい。
【0026】
<プロテクター20>
次に、
図5乃至
図15を参照して、プロテクター20の各部位の詳細について説明する。プロテクター20は、前面21、後面22、上面23、下面24、底面25、対向面26、上側取付板27、下側取付板28、中側取付板29を主構成要素として有している。
【0027】
プロテクター20は、ドアトリム1aに取り付けられた状態において、内外方向に、ドアトリム1aに取り付けられる固定部としての上側取付孔27a、下側取付孔28a、中側取付孔29aが形成された底面25と、ドアパネル1bに対向する対向面26と、を有している(
図5及び
図6)。
【0028】
また、プロテクター20は、ドアトリム1aに取り付けられた状態において、対向面26と底面25の間において、前後方向の前方に配置される前面21と、後方に配置される後面22と、上下方向の上方に配置される上面23と、下方に配置される下面24と、を有している(
図5及び
図6)。
【0029】
換言すると、プロテクター20は、ドアトリム1aに取り付けられた状態において、前後方向の前側に位置して上下方向及び内外方向に延在する前面21と、前面21に対して裏面となる後面22と、前面21の上側、下側、内側及び外側の周縁から前後方向の後側にそれぞれ延在する上面23、下面24、底面25及び対向面26を主に有して、形成されている。
【0030】
(前面21)
前面21は、前後方向の前側に位置して上下方向及び内外方向に延在する前壁である(
図7)。前面21は、前面上部21a及び前面下部21bが、前面凹部21cによって上下に区分けされている。前面凹部21cは、底部21dを有しており、前面上部21a及び前面下部21bに対して後面22側に窪んで形成されている。また、前面凹部21cは、底面25から対向面26に渡って内外方向に延在して形成されている。
【0031】
(後面22)
後面22は、前面21に対して裏面となる面であり、プロテクター20の前後方向の後側に位置して上下方向及び内外方向に延在している(
図8)。後面22は、後面上部22a及び後面下部22bが、後面中部22cによって上下に区分けされている。
【0032】
後面上部22aは、前面21の前面上部21aに対応しており、後面下部22bは、前面21の前面下部21bに対応しており、後面中部22cは、前面凹部21cの底部21dに対応している。後面中部22cを基準として、後面上部22a及び後面下部22bは、前方に向かって窪んでおり、窪みの中に複数の補強リブ22d1,22d2,22d3が立設して形成されている。
【0033】
後面上部22aの窪みには、上面23と後面中部22cを連結し、上下方向及び前後方向に延在する2つの補強リブ22d1と、底面25と対向面26を連結し、内外方向及び前後方向に延在する1つの補強リブ22d2の合計3つの補強リブが後面22から立設して形成されている(
図8)。また、後面下部22bの窪みには、下面24と後面中部22cを連結し、上下方向及び前後方向に延在する2つの補強リブ22d3が後面22から立設して形成されている(
図8)。なお、補強リブ22d1,22d2,22d3の数は特に限定されず、さらに複数設けるようにしてもよい。
【0034】
補強リブ22d1,22d2と補強リブ22d3の間には、前面凹部21cの底部21dに対応する後面中部22cが配置されている。前面凹部21cの底部21dに対応する後面中部22cにより複数の補強リブ22d1,22d2と補強リブ22d3が分断されて配置されるため、換言すると、補強リブ22d1,22d2と補強リブ22d3が、後面上部22a及び後面下部22bに分かれて配置されるため、コンパクトな空間で必要十分な剛性を得ることが可能となる。
【0035】
さらには、補強リブ22d1,22d2,22d3が、金型が配置されて形成される開放側である後面22側に露出するように形成されているため、金型の形状を変更することで、補強リブ22d1,22d2,22d3の形状を容易に変更することができる。したがって、補強リブ22d1,22d2,22d3の形状を変更することによって、例えば、格子状の他、トラス状等の幾何学状に変更することによって、剛性の調整を容易に行うことができる。
【0036】
(上面23)
上面23は、前面21及び後面22の上側の周縁から後側に延在しており、プロテクター20の上下方向の上側に位置して前後方向及び内外方向に延在している(
図9)。上面23は、対向面26の側(つまり、内外方向の外側)において、後面22よりも後方に向かって突出する上面突出部23aを有している。上面23は、プロテクター20の上面突出部23aの内側に切り欠き23bを有しており、上面視において逆L字型となっている。
【0037】
(下面24)
下面24は、前面21及び後面22の下側の周縁から後側に延在しており、プロテクター20の上下方向の下側に位置して前後方向及び内外方向に延在している(
図10)。下面24は、対向面26の側(つまり、内外方向の外側)において、後面22よりも後方に向かって突出する下面突出部24aを有している。下面24は、プロテクター20の下面突出部24aの内側に切り欠き24bを有しており、下面視において逆L字型となっている。
【0038】
(底面25)
底面25は、前面21及び後面22の内側の周縁から前後方向の後側に延在しており、プロテクター20の内外方向の内側に位置して上下方向及び前後方向に延在している(
図11)。底面25は、底面上部25a及び底面下部25bが、底面凹部25cによって上下に区分けされている。底面凹部25cは、底面上部25a及び底面下部25bに対して対向面26側(つまり、車両内外方向の外側)に窪んで形成されている。また、底面凹部25cは、前面21から後面22を越えて前後方向に延在して形成されている。
【0039】
(対向面26)
対向面26は、プロテクター20がドアトリム1aに固定された状態において、ドアパネル1bに対向する位置に配置される面である。対向面26は、対向面上部26a及び対向面下部26bが、対向面中部26cによって上下に区分けされている(
図12)。対向面上部26a、対向面下部26b、対向面中部26cは、前面上部21a、前面下部21b、前面凹部21cの底部21dそれぞれの外側の周縁から前後方向後側に延在している。対向面26は、その後端に自由端部26dを有している。
【0040】
(上側取付板27)
上面23の上側(換言すると、プロテクター20における上下方向の上側)には、上側取付板27が底面25の底面上部25aから連続して形成されている(
図12乃至
図15)。詳細には、上側取付板27は、上面23の内側の周縁から上方に延びており、上下方向及び前後方向に延在するように形成されている。
【0041】
上側取付板27は、板厚方向(内外方向)に貫通する上側取付孔27a(固定部)を有し、この上側取付孔27aに溶着が施されて形成される溶着部1dによって、ドアトリム1aに固定される。上側取付板27は、その前後方向にそれぞれ、上下方向に延在するリブ27bを有しており、底面上部25aに対して外側(対向面26に近づく方向)に向けて若干窪んでいる。
【0042】
(下側取付板28)
下面24の下側(換言すると、プロテクター20における上下方向の下側)には、下側取付板28が底面25の底面下部25bから連続して形成されている(
図12乃至
図15)。詳細には、下側取付板28は、下面24の内側の周縁から下方に延びており、上下方向及び前後方向に延在するように形成されている。
【0043】
下側取付板28は、板厚方向(内外方向)に貫通する下側取付孔28a(固定部)を有し、この下側取付孔28aに溶着が施されて形成される溶着部1dによって、ドアトリム1aに固定される。下側取付板28は、その前後方向にそれぞれ、上下方向に延在するリブ28bを有しており、底面上部25aに対して外側(対向面26に近づく方向)に向けて若干窪んでいる。
【0044】
(中側取付板29)
底面凹部25cの後側(換言すると、プロテクター20における前後方向の後側)には、中側取付板29が底面25の底面凹部25cから連続して形成されている(
図12乃至
図15)。詳細には、中側取付板29は、底面25の後側の周縁から後方に延びており、上下方向及び前後方向に延在するように形成されている。
【0045】
中側取付板29は、板厚方向(内外方向)に貫通する中側取付孔29a(固定部)を有し、この中側取付孔29aに溶着が施されて形成される溶着部1dによって、ドアトリム1aに固定される。中側取付板29は、その上下方向にそれぞれ、前後方向に延在するリブ29bを有しており、底面25に対して外側(対向面26に近づく方向)に向けて若干窪むことで底面凹部25cが形成されている。
【0046】
<プロテクター20の特徴について>
プロテクター20は、上側取付孔27a、下側取付孔28a及び中側取付孔29aのそれぞれに溶着が施されて形成される3箇所の溶着部1dによってドアトリム1aに片持ち形式で取り付けられている(
図13)。
【0047】
ここで、「片持ち」とは、一端が固定され、且つ、他端が自由端であることを意味する。また、「片持ち状態」とは、一端が固定された状態で、且つ、他端が自由端を有している状態を意味する。また、「片持ち構造」とは、一端が固定された状態で、且つ、他端が自由端を有している構造(カンチレバー)を意味する。
【0048】
プロテクター20は、内外方向において、一端側(底面25側)がドアトリム1aに固定されており、他端側(対向面26側)が自由端部26dとなっている。このように、プロテクター20が片持ち形式でドアトリム1aに取り付けられていると、側突時に対向面26に加わる荷重応力初期の立ち上がりを緩やかにすることが可能となる。
【0049】
具体的には、
図16A乃至
図16Eに示されるように、側突時にドアパネル1bが変形して対向面26に荷重が加わると、まず、対向面26の自由端部26dが内側へと変形する(
図16B)。このとき、対向面26が内側へと変位するにつれて切り欠き23b,24bを起点として、上面23及び下面24が湾曲するようにして潰れる(
図16C乃至
図16E)。より詳細には、対向面26が内側へと変位するにつれて上面23の上面突出部23a及び下面24の下面突出部24aが内側前方に向かうようにプロテクター20が変形する。
【0050】
このように、側突時のプロテクター20の変形過程において、プロテクター20が片持ち形式でドアトリム1aに取り付けられていると、対向面26に加わる荷重応力初期の立ち上がりが緩やかになるため、エネルギー吸収効率が向上する。
【0051】
固定部を備える上側取付板27、下側取付板28及び中側取付板29は、それぞれリブ27b、リブ28b及びリブ29bを有しており、底面25から対向面26に向かう方向に突出して形成されている。このような構成によれば、固定部が突出して形成されることで固定部の剛性が向上し、ドアトリム1aに対するプロテクター20の固定が安定する。
【0052】
固定部を備える上側取付板27、下側取付板28及び中側取付板29が、底面25から突出した形状であると、ドアトリム1aの基材と固定部の固定座面との間に空間が配置されることになる。リブ27b、リブ28b及びリブ29bによって、ドアトリム1aの基材表面と固定部の固定座面の間に空間を設けた状態で溶着により溶着部1dを形成することで、溶着後の固定が安定なものとなり、外観も良好となる。
【0053】
プロテクター20の上面23及び下面24は、対向面26の側(つまり、外側)に、後面22よりも後方に向かって突出する上面突出部23a及び下面突出部24aを有している(
図9及び
図10)。このような構成によれば、プロテクター20の上面視及び下面視において逆L字型構造(逆L字型形状)となるため、側突時にプロテクター20に加わる衝撃を適切に吸収しつつ、プロテクター20を軽量化することが可能となる。
【0054】
ここで、プロテクター20の上面視及び下面視において逆L字型構造とは、上面23及び下面24において、上面突出部23a及び下面突出部24aが存在することで、後面22よりも後側に切り欠き23b及び切り欠き24bが形成されていることを意味している。このようにして、側突に対する衝撃吸収性能を鑑みて、強くする部位と弱くする部位を考慮すると、90度回転した逆L字型構造を適切に形成することが可能となる。
【0055】
プロテクター20の対向面26は、その後端の自由端部26dから前方に向かうにつれて底面25に近づく方向(内側)に傾斜している(
図9及び
図10)。このように、衝撃に対する当接面となる対向面26が傾斜していることで、対向面26の一方の端部である自由端部26dを先に当接させることが可能となる。また、ドアパネル1bに当接する対向面26が、傾斜面になっていることで、プロテクター20を製造する金型の構造を簡素なものとなる。
【0056】
また、片持ち形式でドアトリム1aに取り付けられたプロテクター20の当接面である対向面26の自由端部26dの内側に位置する底面25に固定部が形成されていることで、加重を確実に受け止めて、衝撃を吸収させることが可能となる。
【0057】
プロテクター20の上面視において、上面突出部23aと対向する位置に固定部としての上側取付孔27a及び上側取付板27が配置されている。また、プロテクター20の下面視において、下面突出部24aと対向する位置に固定部としての下側取付孔28a及び下側取付板28が配置されている(
図9及び
図10)。このような構成によれば、対向面26、前面21、底面25によってコ字形状(略U字形状)の断面を形成するため、荷重を適切に受け止めて衝撃を吸収することが可能となる。
【0058】
プロテクター20の前面21には、幅方向に延在する前面凹部21c(第1凹部)が形成されており、固定部としての上側取付孔27a、下側取付孔28a及び中側取付孔29aは、前後方向において、前面凹部21cの底部21dよりも後側にのみに設けられている(
図12乃至
図15)。このような構成によれば、前面凹部21cの反対側に固定部が配置され、プロテクター20の固定範囲が広がることで、安定して荷重を受け止めることが可能となる。また、固定部が、後面22及び前面凹部21c(第1凹部)の底部21d、つまり、立壁を避けた位置に配置されるため、プロテクター20の重量増加を抑制しつつ、固定部の剛性を効率的に向上させることが可能となる。
【0059】
プロテクター20の前面21が備える前面凹部21c(第1凹部)の一部が、上下方向において、底面25が備える底面凹部25c(第2凹部)と同じ高さ位置に配置されている(
図6、
図7、
図11及び
図15)。このような構成によれば、前面凹部21cと底面凹部25cが、少なくとも一部が交差することになるため、ドアトリム1aに対する固定面である底面25と、前面21や後面22の連結部の剛性が向上する。また、前面凹部21cと底面凹部25cが、上下方向において少なくとも一部がずれて交差することで、底面25と、前面21や後面22の連結部の剛性が更に向上する。
【0060】
<変形例>
次に、変形例に係る衝撃吸収部材としてのプロテクター20Xについて、
図17乃至
図19を参照して説明する。なお、以下の本変形例の説明においては、上記実施形態と同じものについては、同じ名称・符号(数字)として説明を省略し、相違点を中心に説明をする。
【0061】
プロテクター20Xは、対向面26Xに補強リブ26Xe,26Xfを備えている。具体的には、対向面上部26Xa、対向面下部26Xb及び対向面中部26Xcのそれぞれに、補強リブ26Xeが1つずつ立設して設けられている。また、対向面上部26Xa及び対向面中部26Xcの周縁部には、上下方向及び前方を囲むように補強リブ26Xfが形成されている。
【0062】
各補強リブ26Xe,26Xfは、前方から後方に向かうにしたがって内側に近づくように傾斜していると好適である。このように、対向面26Xに補強リブ26Xe,26Xfが形成されていることで、衝撃を好適に受け止めることが可能となる。
【0063】
また、上記実施形態においては、プロテクター20は、ドアトリム1aに取り付けられ、ドアパネル1bに対向する位置に取り付けられるものとして説明したが、その取付の関係性は逆であってもよい。つまり、ドアトリム1aとドアパネル1bとの間において衝撃を好適に吸収できれば、プロテクター20の取付対象はどちらであってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、車両の右側に配置されるサイドドア部品1を例として説明したが、サイドドア部品を車両の左側に配置される形態とすることも可能である。さらに、プロテクター20における各固定部の配置は、上記の実施形態に限られるものではなく、前後方向を逆の位置関係とすることも可能である。
【0065】
なお、上記実施形態においては、車両用内装部品を例に説明したが、車両に限らず、航空機、船舶、産業機械等の乗物用の内装部品に本発明の技術思想を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 サイドドア部品(車両用内装部品)
1a ドアトリム
1aa 基材樹脂層
1ab 表皮樹脂層
1b ドアパネル
1c ドアポケット(他部材)
1d 溶着部
1e ドアポケット固定部
20,20X プロテクター(衝撃吸収部材)
21,21X 前面
21a,21Xa 前面上部
21b,21Xb 前面下部
21c,21Xc 前面凹部(第1凹部)
21d,21Xd 底部
22,22X 後面
22a,22Xa 後面上部
22d1 補強リブ
22d2 補強リブ
22b,22Xb 後面下部
22d3 補強リブ
22c,22Xc 後面中部
23,23X 上面
23a 上面突出部
23b 切り欠き
24,24X 下面
24a 下面突出部
24b 切り欠き
25,25X 底面
25a,25Xa 底面上部
25b,25Xb 底面下部
25c,25Xc 底面凹部(第2凹部)
26,26X 対向面
26a,26Xa 対向面上部
26b,26Xb 対向面下部
26c,26Xc 対向面中部
26d,26Xd 自由端部
26Xe 補強リブ
26Xf 補強リブ
27,27X 上側取付板
27a,27Xa 上側取付孔(固定部)
27b,27Xb リブ
28,28X 下側取付板
28a,28Xa 下側取付孔(固定部)
28b,28Xb リブ
29 中側取付板
29a,29Xa 中側取付孔(固定部)
29b,29Xb リブ