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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125435
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 39/00 20060101AFI20240911BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20240911BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240911BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20240911BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20240911BHJP
   C08L 61/12 20060101ALI20240911BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240911BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C08L39/00
C08K3/38
C08K3/22
C08K5/3492
C08K5/541
C08L61/12
H01L23/30 R
H01L23/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119526
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 康貴
(72)【発明者】
【氏名】上村 和恵
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
5F136
【Fターム(参考)】
4J002BH02W
4J002BH02X
4J002CC06Y
4J002DE146
4J002DK006
4J002EU187
4J002EX038
4J002EX068
4J002EX078
4J002EX088
4J002FD206
4J002FD207
4J002FD208
4J002GJ02
4J002GQ00
4M109AA01
4M109BA07
4M109EA08
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB12
4M109EB16
4M109EC06
4M109EC09
5F136BC07
5F136DA27
(57)【要約】
【課題】熱伝導性、及び接着性を向上させることができる樹脂シートを提供すること。
【解決手段】(A)樹脂成分及び(C)熱伝導性フィラーを含有する樹脂組成物から形成される樹脂シートであって、前記(A)樹脂成分が、マレイミド樹脂を含有し、前記(C)熱伝導性フィラーを1種類又は2種類以上含有し、前記(C)熱伝導性フィラーの種類の数をnとした場合に、下記数式(F1)で表される前記(C)熱伝導性フィラーの対臨界充填量比が、0.95以上1.26以下である、樹脂シート。
(対臨界充填量比)=(V/CV)+(V/CV)+…+(V/CV)・・・(F1)
:前記(C)熱伝導性フィラーのうちのn種類目の熱伝導性フィラーの体積充填率
CV:前記(C)熱伝導性フィラーのうちのn種類目の熱伝導性フィラーの臨界体積充填率
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)樹脂成分及び(C)熱伝導性フィラーを含有する樹脂組成物から形成される樹脂シートであって、
前記(A)樹脂成分が、マレイミド樹脂を含有し、
前記(C)熱伝導性フィラーを1種類又は2種類以上含有し、
前記(C)熱伝導性フィラーの種類の数をnとした場合に、下記数式(F1)で表される前記(C)熱伝導性フィラーの対臨界充填量比が、0.95以上1.26以下である、
樹脂シート。
(対臨界充填量比)=(V/CV)+(V/CV)+…+(V/CV)・・・(F1)
:前記(C)熱伝導性フィラーのうちのn種類目の熱伝導性フィラーの体積充填率
CV:前記(C)熱伝導性フィラーのうちのn種類目の熱伝導性フィラーの臨界体積充填率
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂シートにおいて、
前記CVの値が、下記測定方法により測定される、
樹脂シート。
(CVの値の測定方法)
各熱伝導性フィラーの体積充填率を1%刻みで変化させた樹脂組成物を調製し、これらの樹脂組成物を用いて、それぞれ樹脂シートを作製する。次に、これらの樹脂シートの表面をレーザ顕微鏡で観察し(観察面積:1mm×1mm)、短軸20μm以上かつ長軸20μm以上の大きさの空隙の有無を確認する。体積充填率が低い樹脂シートから順に観察していき、初めて2つ以上の空隙が確認された樹脂シートの体積充填率よりも1%小さい値を、CVの値とする。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の樹脂シートにおいて、
前記樹脂組成物が、さらに(C1)窒化ホウ素粒子を含有する、
樹脂シート。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の樹脂シートにおいて、
前記樹脂組成物が、さらに(C2)アルミナ粒子を含有する、
樹脂シート。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
前記(A)樹脂成分が、(A1)第1のマレイミド樹脂を含有し、
前記(A1)第1のマレイミド樹脂が、1分子中に2つ以上のマレイミド基を有し、少なくとも1対の2つのマレイミド基を連結する結合基が、主鎖に4つ以上のメチレン基を有するマレイミド樹脂である、
樹脂シート。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
前記(A)樹脂成分が、さらに(A2)第2のマレイミド樹脂を含有し、
前記(A2)第2のマレイミド樹脂が、(A1)第1のマレイミド樹脂とは化学構造が異なるマレイミド樹脂である、
樹脂シート。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂シートにおいて、
前記(A2)第2のマレイミド樹脂が、1分子中に2つ以上のマレイミド基及び2つ以上のフェニレン基を含むマレイミド樹脂である、
樹脂シート。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
前記樹脂組成物が、さらに(B)密着性付与剤を有する化合物を含有する、
樹脂シート。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂シートにおいて、
前記(B)密着性付与剤が、(B1)トリアジン骨格を有する化合物を含有する、
樹脂シート。
【請求項10】
請求項9に記載の樹脂シートにおいて、
前記(B1)トリアジン骨格を有する化合物が、1分子中に、塩基性基を有し、かつトリアジン骨格を有する化合物である、
樹脂シート。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の樹脂シートにおいて、
前記(B1)トリアジン骨格を有する化合物が、1分子中に、トリアジン骨格及びイミダゾール構造を有する化合物である、
樹脂シート。
【請求項12】
請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
前記(B)密着性付与剤が、(B2)カップリング剤を含有する、
樹脂シート。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
前記(A)樹脂成分が、さらに(A3)アリル樹脂を含有する、
樹脂シート。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
半導体素子を封止すること、或いは、前記半導体素子と他の電子部品との間に介在させることに用いられる、
樹脂シート。
【請求項15】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
ヒートシンクと電子部品との間に介在させることに用いられる、
樹脂シート。
【請求項16】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の樹脂シートにおいて、
化合物半導体を用いた半導体素子を封止すること、或いは、前記化合物半導体を用いた半導体素子と他の電子部品との間に介在させることに用いられる、
樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体に用いる樹脂シートに、アルミナ等の高熱伝導性の材料を配合することが検討されている。特許文献1には、アルミナフィラーを含有するエポキシ樹脂組成物のシート状成形体である樹脂シートを、パワー半導体装置に適用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-160440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、200℃以上の高温動作が想定されるパワー半導体素子に適用するにあたり、特許文献1に記載の樹脂組成物は、耐熱性が十分とはいえなかった。また、熱伝導性のさらなる向上と、樹脂シートを被着体に強固に接着させることも課題であった。
【0005】
本発明は、熱伝導性、及び接着性を向上させることができる樹脂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、(A)樹脂成分及び(C)熱伝導性フィラーを含有する樹脂組成物から形成される樹脂シートであって、前記(A)樹脂成分が、マレイミド樹脂を含有し、前記(C)熱伝導性フィラーを1種類又は2種類以上含有し、
前記(C)熱伝導性フィラーの種類の数をnとした場合に、下記数式(F1)で表される前記(C)熱伝導性フィラーの対臨界充填量比が、0.95以上1.26以下である、樹脂シートが提供される。
(対臨界充填量比)=(V/CV)+(V/CV)+…+(V/CV)・・・(F1)
:前記(C)熱伝導性フィラーのうちのn種類目の熱伝導性フィラーの体積充填率
CV:前記(C)熱伝導性フィラーのうちのn種類目の熱伝導性フィラーの臨界体積充填率
【0007】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記CVの値が、下記測定方法により測定されることが好ましい。
(CVの値の測定方法)
各熱伝導性フィラーの体積充填率を1%刻みで変化させた樹脂組成物を調製し、これらの樹脂組成物を用いて、それぞれ樹脂シートを作製する。次に、これらの樹脂シートの表面をレーザ顕微鏡で観察し(観察面積:1mm×1mm)、短軸20μm以上かつ長軸20μm以上の大きさの空隙の有無を確認する。体積充填率が低い樹脂シートから順に観察していき、初めて2つ以上の空隙が確認された樹脂シートの体積充填率よりも1%小さい値を、CVの値とする。
【0008】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記樹脂組成物が、さらに(C1)窒化ホウ素粒子を含有することが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記樹脂組成物が、さらに(C2)アルミナ粒子を含有することが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記(A)樹脂成分が、(A1)第1のマレイミド樹脂を含有し、前記(A1)第1のマレイミド樹脂が、1分子中に2つ以上のマレイミド基を有し、少なくとも1対の2つのマレイミド基を連結する結合基が、主鎖に4つ以上のメチレン基を有するマレイミド樹脂であることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記(A)樹脂成分が、さらに(A2)第2のマレイミド樹脂を含有することが好ましい。前記(A2)第2のマレイミド樹脂は、(A1)第1のマレイミド樹脂とは化学構造が異なるマレイミド樹脂である。
【0012】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記(A2)第2のマレイミド樹脂が、1分子中に2つ以上のマレイミド基及び2つ以上のフェニレン基を含むマレイミド樹脂であることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記樹脂組成物が、さらに(B)密着性付与剤を有する化合物を含有することが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記(B)密着性付与剤が、(B1)トリアジン骨格を有する化合物を含有することが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記(B1)トリアジン骨格を有する化合物が、1分子中に、塩基性基を有し、かつトリアジン骨格を有する化合物であることが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記(B1)トリアジン骨格を有する化合物が、1分子中に、トリアジン骨格及びイミダゾール構造を有する化合物であることが好ましい。
【0017】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記(B)密着性付与剤が、(B2)カップリング剤を含有することが好ましい。
【0018】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、前記(A)樹脂成分が、さらに(A3)アリル樹脂を含有することが好ましい。
【0019】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、半導体素子を封止すること、或いは、前記半導体素子と他の電子部品との間に介在させることに用いられることが好ましい。
【0020】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、ヒートシンクと電子部品との間に介在させることに用いられることが好ましい。
【0021】
本発明の一態様に係る樹脂シートにおいて、化合物半導体を用いた半導体素子を封止すること、或いは、前記化合物半導体を用いた半導体素子と他の電子部品との間に介在させることに用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、熱伝導性、及び接着性を向上させることができる樹脂シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係る積層体の断面概略図である。
図2】臨界体積充填率の測定のために、樹脂シート(アルミナ粒子含有)の表面をレーザ顕微鏡で観察した写真である(図2(A)でのアルミナ粒子の体積充填率は65%であり、図2(B)でのアルミナ粒子の体積充填率は75%である)。
図3】臨界体積充填率の測定のために、樹脂シート(窒化ホウ素粒子含有)の表面をレーザ顕微鏡で観察した写真である(図3(A)での窒化ホウ素粒子の体積充填率は30%であり、図3(B)での窒化ホウ素粒子の体積充填率は40%である)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[樹脂組成物]
まず、本実施形態に係る樹脂シートを形成するための樹脂組成物について説明する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)樹脂成分を含有する。本実施形態に係る(A)樹脂成分は、マレイミド樹脂を含有する。また、本実施形態に係る(A)樹脂成分は、(A1)第1のマレイミド樹脂を含有することが好ましい。
【0025】
((A)樹脂成分)
(A)樹脂成分(以下、単に「(A)」と称する場合がある)は、弾性率やガラス転移点など樹脂組成物の物性を制御する性質を有する。本実施形態における(A)樹脂成分は、前述のとおり、(A1)第1のマレイミド樹脂(以下、単に「(A1)」と称する場合がある)を含有することが好ましい。
【0026】
(A1)第1のマレイミド樹脂
本実施形態における(A1)第1のマレイミド樹脂は、1分子中に2つ以上のマレイミド基を有し、少なくとも1対の2つのマレイミド基を連結する結合基が、主鎖に4つ以上のメチレン基を有するマレイミド樹脂である。
ここで、2つのマレイミド基を連結する結合基は、硬化物の柔軟性の観点から、主鎖に6つ以上のメチレン基を有することが好ましく、主鎖に8つ以上のメチレン基を有することがより好ましく、主鎖に10以上のメチレン基を有することが特に好ましい。また、これらのメチレン基は、連結して、炭素数4以上のアルキレン基となっていることがより好ましい。このアルキレン基において、少なくとも1つの-CH-は、-CH-O-又は-O-CH-で置き換えられていてもよい。
また、2つのマレイミド基を連結する結合基は、硬化物の柔軟性の観点から、1つ以上の側鎖を有することが好ましい。この側鎖としては、アルキル基及びアルコキシ基等が挙げられる。さらに、2つ以上の側鎖がある場合には、側鎖同士が結合して、脂環構造を形成していてもよい。
【0027】
この(A1)の使用により、樹脂シートの耐熱性と接着性を両立できる。また、(A1)は他のマレイミド樹脂を用いた場合の相溶性も高い。
【0028】
本実施形態における(A1)第1のマレイミド樹脂は、硬化物の柔軟性及び耐熱性の観点から、下記一般式(1)で表されることが好ましい。
【0029】
【化1】
【0030】
前記一般式(1)において、nは、0以上の整数であり、1以上10以下の整数であることが好ましく、1以上5以下の整数であることがより好ましい。また、nの平均値は、0.5以上5以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましい。
及びLは、それぞれ独立に、炭素数4以上の置換もしくは無置換のアルキレン基であり、このアルキレン基において、少なくとも1つの-CH-は、-CH-O-又は-O-CH-で置き換えられていてもよい。このアルキレン基の炭素数は、硬化物の柔軟性の観点から、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上30以下であることが特に好ましい。また、アルキレン基の水素が置換されている場合、置換基は、炭素数1以上14以下のアルキル基、又は炭素数1以上14以下のアルコキシ基である。さらに、これらの置換基同士は、結合して、脂環構造又は複素環構造を形成していてもよい。
は、それぞれ独立に、炭素数4以上の置換もしくは無置換のアルキレン基(少なくとも1つの-CH-が-CH-O-又は-O-CH-で置き換えられているものを含む。)を有しない基であり、さらに、フタルイミド基を有する2価の基であることが好ましい。なお、フタルイミド基には、フタルイミドから誘導される基も含まれる。Xとして、具体的には、例えば、下記構造式(2)、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される基が挙げられる。
【0031】
【化2】
【0032】
【化3】
【0033】
【化4】
【0034】
前記一般式(3)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素、メチル基又はエチル基であり、メチル基であることが好ましい。
本実施形態における前記一般式(1)で表されるマレイミド樹脂としては、具体的には、例えば、下記一般式(5)、下記一般式(6)又は下記一般式(7)で表される化合物が挙げられる。
【0035】
【化5】
【0036】
【化6】
【0037】
【化7】
【0038】
前記一般式(5)において、nは、1以上5以下の整数である。
前記一般式(6)において、nは、1以上5以下の整数である。また、nの平均値は、1以上2以下である。
前記一般式(7)において、nは、1以上5以下の整数である。また、nの平均値は、1以上2以下である。
前記一般式(5)で表されるマレイミド樹脂の製品としては、Designer Molecules Inc.社製の「BMI-3000」等が挙げられる。
前記一般式(6)で表されるマレイミド樹脂の製品としては、Designer Molecules Inc.社製の「BMI-1700」等が挙げられる。
前記一般式(7)で表されるマレイミド樹脂の製品としては、Designer Molecules Inc.社製の「BMI-1500」等が挙げられる。
【0039】
本実施形態において、マレイミド樹脂中の(A1)の含有量は、マレイミド樹脂の固形分の全量基準(すなわち、溶媒を除くマレイミド樹脂の不揮発分の量を100質量%としたとき)で、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。マレイミド樹脂中の(A1)の含有量がこのような範囲にあることで、樹脂シート中における熱伝導性フィラー量の更なる増量が可能となる。マレイミド樹脂中の(A1)の含有量の上限値は、マレイミド樹脂の固形分の全量基準で、100質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。
【0040】
(A2)第2のマレイミド樹脂
本実施形態における樹脂組成物が含有する(A)樹脂成分は、樹脂シートの硬化物の250℃における貯蔵弾性率E’を上昇させる観点から、さらに(A2)として前記(A1)第1のマレイミド樹脂とは化学構造が異なる第2のマレイミド樹脂を含有していてもよい。本実施形態における(A2)第2のマレイミド樹脂(以下、単に「(A2)」と称する場合がある)は、前記(A1)第1のマレイミド樹脂とは化学構造が異なるものであり、かつ1分子中に2つ以上のマレイミド基を含むマレイミド樹脂であれば、特に限定されない。すなわち、(A2)第2のマレイミド樹脂は、1分子中に2つ以上のマレイミド基を有し、いずれの2つのマレイミド基を連結する結合基も、主鎖に4つ以上のメチレン基を有しないマレイミド樹脂である。樹脂シートが(A2)を含有することで、樹脂シートの硬化後の凝集性が向上する。このため、硬化後の樹脂シートの凝集破壊に起因した接着性低下を防止することができる。
【0041】
本実施形態における(A2)第2のマレイミド樹脂は、耐熱性の観点から、例えば、ベンゼン環を含むことが好ましく、ベンゼン環にマレイミド基が連結した構造を含むことがより好ましい。また、マレイミド化合物は、ベンゼン環にマレイミド基が連結した構造体を2つ以上備えていることが好ましい。
【0042】
本実施形態における(A2)第2のマレイミド樹脂は、1分子中に2つ以上のマレイミド基及び2つ以上のフェニレン基を含むことが好ましく、1分子中に2つ以上のマレイミド基及び1つ以上のビフェニル骨格を含むマレイミド樹脂(以下、単に「ビフェニルマレイミド樹脂」と称する場合がある)であることが好ましい。
【0043】
本実施形態における(A2)第2のマレイミド樹脂は、耐熱性及び接着性の観点から、下記一般式(8)で表されることが好ましい。
【0044】
【化8】
【0045】
前記一般式(8)において、n及びnは、それぞれ独立に、1以上2以下の整数であり、1であることがより好ましい。ただし、n及びnの合計は、3以下である。
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下のアルキル基であり、炭素数1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。複数のRは、互いに同一であるか又は異なる。複数のRは、互いに同一であるか又は異なる。
及びnは、それぞれ独立に、0以上4以下の整数であり、0以上2以下の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
は、1以上の整数であり、nの平均値は、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましく、1以上3以下であることがさらに好ましい。
【0046】
本実施形態における前記一般式(8)で表されるマレイミド樹脂としては、例えば下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
【0047】
【化9】
【0048】
前記一般式(9)において、nは前記一般式(8)のnと同様である。
前記一般式(9)で表されるマレイミド樹脂の製品としては、日本化薬株式会社製の「MIR-3000」等が挙げられる。
【0049】
また、本実施形態における(A2)第2のマレイミド樹脂は、1分子中に2つ以上のマレイミド基及び2つ以上のフェニレン基を含むマレイミド樹脂であることも好ましい。溶剤への溶解性を高くし、シート形成性を向上させる観点から、フェニレン基上に置換基を有することが好ましい。置換基としては、例えば、メチル基、及びエチル基等のアルキル基、及びアルキレン基等が挙げられる。
また、本実施形態における(A2)第2のマレイミド樹脂は、シート形成性の観点から、マレイミド基とフェニレン基との間にエーテル結合を有するマレイミド樹脂が好ましい。
【0050】
前記1分子中に2つ以上のマレイミド基及び2つ以上のフェニレン基を含むマレイミド樹脂は、例えば、下記一般式(10)で表される。
【0051】
【化10】
【0052】
前記一般式(10)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基であり、Lは、炭素数1以上3以下のアルキレン基であり、L及びLは、それぞれ独立に、炭素数1以上2以下のアルキレン基又は炭素数6以上10以下のアリーレン基であり、n10及びn11は、それぞれ独立に0又は1である。ただし、L、L及びLのうち、アルキレン基であるものの炭素数の合計は、3以下である。
【0053】
本実施形態において、(A)中のマレイミド樹脂((A1)及び(A2)の合計)の含有量は、(A)の固形分の全量基準(すなわち、溶媒を除く(A)の不揮発分の量を100質量%としたとき)で、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。(A)中のマレイミド樹脂の含有量の上限値は、(A)の固形分の全量基準で、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、92.5質量%以下であることがさらに好ましい。(A)中のマレイミド樹脂の含有量がこのような範囲にあることで、本実施形態に係る樹脂シートの硬化後の耐熱性を更に向上させることができる。
【0054】
(A3)アリル樹脂
本実施形態における樹脂組成物が含有する(A)樹脂成分は、さらに(A3)アリル樹脂を含有することが好ましい。(A3)アリル樹脂(以下、単に「(A3)」と称する場合がある)は、常温で液体であることが好ましい。(A)樹脂成分がアリル樹脂を含むことで、本実施形態に係る樹脂シートの反応温度を低下させつつ、樹脂シートの硬化後の剥離強度を向上させることがより容易となる。
【0055】
本実施形態において、マレイミド樹脂の合計量(A1+A2)の(A3)アリル樹脂に対する質量比(マレイミド樹脂の合計量(A1+A2)/(A3))が、1.5以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることが特に好ましい。
また、質量比(マレイミド樹脂の合計量(A1+A2)/(A3))が上記範囲であれば、樹脂シートの複素粘度ηを適宜に調整し、被着体への適用時の樹脂シートの流動性を確保しつつ、樹脂シートの硬化後の耐熱性のさらなる向上が実現される。さらに、質量比(マレイミド樹脂の合計量(A1+A2)/(A3))が上記範囲であれば、樹脂シートからのアリル樹脂のブリードアウトも抑制される。なお、質量比(マレイミド樹脂の合計量(A1+A2)/(A3))の上限値は、特に制限されない。例えば、質量比(マレイミド樹脂の合計量(A1+A2)/(A3))が、50以下であればよく、25以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることが特に好ましい。
【0056】
本実施形態における(A3)アリル樹脂は、アリル基を有する樹脂であれば、特に限定されない。本実施形態における(A3)アリル樹脂は、例えば、1分子中に2つ以上のアリル基を含むアリル樹脂であることが好ましい。
また、この(A3)アリル樹脂は、芳香環を有することが好ましい。さらに、この前記(A3)アリル樹脂におけるアリル基は、芳香環に直接結合していることが好ましい。また、この(A3)アリル樹脂は、ヒドロキシ基を有し、このヒドロキシ基が芳香環に直接結合していることが好ましい。
本実施形態におけるアリル樹脂は、下記一般式(11)で表されるものが挙げられる。
【0057】
【化11】
【0058】
前記一般式(11)において、R及びR10は、それぞれ独立に、アルキル基であり、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基及びエチル基からなる群から選択されるアルキル基であることがさらに好ましい。
前記一般式(11)において、n12は、1以上4以下であり、1以上3以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましい。また、前記一般式(14)で表されるアリル樹脂中において、n12が1である成分の比率が、90mol%以上であることが好ましい。
【0059】
本実施形態における(A3)アリル樹脂としては、前記一般式(11)で表されるアリルフェノール樹脂が好ましい。前記一般式(11)で表される化合物の中でも、フェニル基の4位にヒドロキシ基を有する4-ヒドロキシフェニル基を有していることが好ましい。また前記一般式(11)で表される化合物の中でも、フェニル基の3位又は5位にアリル基を有することが好ましい。また前記一般式(11)で表される化合物の中でも、アリル基のオルト位にヒドロキシ基を有することが好ましい。さらに前記一般式(11)で表される化合物の中でも、ジアリルビスフェノールA(2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン)が特に好ましい。これらのアリル樹脂は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
(A)樹脂成分として、前述の(A1)、(A2)、および(A3)を用いることによって、加熱を受けると三次元網状化し、所望する物性を有する樹脂硬化物を得ることができる。
【0061】
(A4)その他の樹脂成分
本実施形態の(A)樹脂成分は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、(A1)、(A2)、及び(A3)以外に(A4)その他の樹脂成分(以下、単に「(A4)」と称する場合がある)を含有していてもよい。
(A4)その他の樹脂成分としては、(A1)、(A2)、及び(A3)以外の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は架橋剤等が挙げられる。
(A4)その他の樹脂成分を用いることで、樹脂シートの硬化後の剥離強度を向上させることや、(A1)、(A2)、(A3)又はその他の成分と接合させて樹脂シートの耐熱性を向上させることや、樹脂シートのハンドリング性、シート形成性を向上させることができる。
【0062】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂、及びメラミン樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(A4)として熱硬化性樹脂を用いることにより、樹脂シートの硬化後の剥離強度をさらに向上させ、かつ耐熱性を向上することができる。ただし、高耐熱性の観点から、(A)樹脂成分は、エポキシ樹脂を実質的に含まないことが好ましい。
【0063】
前記熱可塑性樹脂としては、硬化前の樹脂シートの複素粘度を所望の範囲に調整し易くなり、樹脂シートのハンドリング性、及びシート形成性を向上させることを目的として、脂肪族化合物であるか、芳香族化合物であるかを問わず広く選定できる。熱可塑性樹脂は、例えば、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、及びポリアミドイミド樹脂からなる群から選択される少なくともいずれかの樹脂であることが好ましく、耐熱性の観点からフェノキシ樹脂及びポリアミドイミド樹脂からなる群から選択される少なくともいずれかの樹脂であることがより好ましい。なお、ポリエステル樹脂は、全芳香族ポリエステル樹脂であることが好ましい。また、ポリアミドイミド樹脂としては、樹脂シートの柔軟性を向上させる観点から、ゴム変性のポリアミドイミド樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格(以下、ビスフェノールAを「BisA」と称する場合がある)、ビスフェノールF骨格(以下、ビスフェノールFを「BisF」と称する場合がある)、ビフェニル骨格、及びナフタレン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂であることが好ましく、ビスフェノールA骨格及びビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂であることがより好ましい。
【0065】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、樹脂シートの複素粘度を所望の範囲に調整し易くするという観点から、10,000以上1,000,000以下であることが好ましく、15,000以上800,000以下であることがより好ましく、20,000以上500,000以下であることがさらに好ましい。本明細書における重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算値である。
【0066】
本実施形態において(A4)として熱可塑性樹脂を使用する場合、その含有量は、樹脂組成物の固形分の全量基準(すなわち、溶媒を除く樹脂組成物の不揮発分の全量を100質量%としたとき)で、1.5質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。樹脂組成物の含有量の上限値は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂の含有量を上記範囲にすることで、造膜性を付与し、樹脂組成物をシート状に成形しやすくできる。
熱可塑性樹脂は、(A1)、(A2)、(A3)、又はその他の成分を接合する機能を持たせるために、官能基を有していてもよい。このように熱可塑性樹脂が官能基を有する場合、熱可塑性を有しつつも、熱硬化性も併せて有することができる。
【0067】
前記の架橋剤としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物等が挙げられる。架橋剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤を用いることで、(A1)、(A2)、(A3)又はその他の成分と接合させて樹脂シートのハンドリング性、シート形成性、耐熱性を向上させることや、樹脂シートの硬化前の初期接着性、及び凝集性を調節することができる。
【0068】
有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物、及びこれらの多価イソシアネート化合物の三量体、並びにこれら多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートレタンプレポリマー等が挙げられる。
有機多価イソシアネート化合物のさらに具体的な例としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、及びリジンイソシアネート等が挙げられる。有機多価イソシアネート化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
上記のような架橋剤を使用する場合、架橋剤の含有量は、前述の(A1)、(A2)、及び(A3)の合計量100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。架橋剤の含有量の上限値は、12質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0070】
本実施形態において、樹脂組成物中の(A)樹脂成分の含有量は、樹脂組成物の固形分の全量基準(すなわち、溶媒を除く樹脂組成物の不揮発分の全量を100質量%としたとき)で、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。また、(A)樹脂成分の含有量の上限値は、75質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。
(A)樹脂成分の含有量が上記範囲内であることで、樹脂シートのハンドリング性、シート形状維持性、及び樹脂組成物の耐熱性が向上する。
【0071】
(B)密着性付与剤
本実施形態において、樹脂組成物は、さらに(B)密着性付与剤(以下、単に「(B)」と称する場合がある)を含むことが好ましい。この(B)密着性付与剤により、樹脂組成物の硬化後の剥離強度をさらに向上できる。
(B)密着性付与剤としては、例えば(B1)トリアジン骨格を有する化合物や、(B2)カップリング剤が挙げられる。
【0072】
(B1)トリアジン骨格を有する化合物
(B1)トリアジン骨格を有する化合物(以下、単に「(B1)」と称する場合がある)としては、次のような化合物であることが好ましい。すなわち、(B1)は、1分子中に、塩基性基を有し、かつトリアジン骨格を有する化合物であることが好ましく、1分子中に、含窒素複素環を有し、かつトリアジン骨格を有する化合物であることがより好ましく、1分子中に、トリアジン骨格及びイミダゾール構造を有する化合物であることが好ましい。
トリアジン骨格及びイミダゾール構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(12)で表される化合物が挙げられる。
【0073】
【化12】
【0074】
前記一般式(12)において、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、ヒドロキシメチル基、又はフェニル基であり、水素原子、又は炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、水素原子、又は炭素数1以上3以下のアルキル基であることがより好ましい。R13は、水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、フェニル基、又はアリル基であり、炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル基であることがより好ましい。Lは、炭素数1以上5以下のアルキレン基であり、炭素数2以上4以下のアルキレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
【0075】
本実施形態におけるトリアジン骨格を有するイミダゾール化合物としては、具体的には、2,4-ジアミノ-6-[2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2-(2-エチル-4-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジン、及び2,4-ジアミノ-6-[2-(2-ウンデシル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。これらの化合物の中でも、樹脂組成物及び樹脂シートの剥離強度及び反応温度の観点から、2,4-ジアミノ-6-[2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジン、又は2,4-ジアミノ-6-[2-(2-エチル-4-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジンが好ましい。
【0076】
(B2)カップリング剤
(B2)カップリング剤(以下、単に「(B2)」と称する場合がある)としては、次のような化合物であることが好ましい。
(B2)カップリング剤は、前述の(A)樹脂成分に含まれる化合物が有する官能基と反応する基を有することが好ましい。(B2)カップリング剤を使用することで、樹脂シートの硬化物と被着体との間の剥離強度が向上する。
【0077】
(B2)カップリング剤としては、その取り扱いの容易性からシラン系(シランカップリング剤)が好ましい。(B2)カップリング剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
シランカップリング剤としては、アミノ基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤、及び、エポキシ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、[3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(フェニルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン等が挙げられる。
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等が挙げられる。
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
これらの化合物の中でも樹脂組成物及び樹脂シートの剥離強度の観点から、エポキシ基を有するシランカップリング剤がより好ましく、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランがよりさらに好ましい。
【0078】
(B)密着性付与剤は、(A)と(B)の合計含有量100質量部に対して、(B)の合計含有量0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることがよりさらに好ましい。また15質量部以下であることが好ましく、12質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることがよりさらに好ましい。このような範囲とすることで、樹脂シートの硬化物と被着体との間の剥離強度が向上する。
【0079】
(B)密着性付与剤は(B1)トリアジン骨格を有する化合物と、(B2)カップリング剤を併用することがより好ましい。併用することで樹脂組成物の硬化後の剥離強度をさらに向上できる。
【0080】
(B)密着性付与剤として(B1)トリアジン骨格を有する化合物を用いる場合は、(A)と(B)の合計含有量100質量部に対して、(B1)の含有量が0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることがよりさらに好ましい。また15質量部以下であることが好ましく、12質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることがよりさらに好ましい。このような範囲とすることで、樹脂シートの硬化物と被着体との間の剥離強度が向上する。
【0081】
(B)密着性付与剤として(B2)カップリング剤を用いる場合は、(A)と(B)の合計含有量100質量部に対して、(B2)の含有量が0.05質量部以上であることが好ましく、0.10質量部以上であることがより好ましく、0.50質量部以上であることがよりさらに好ましい。また10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがよりさらに好ましい。このような範囲とすることで、樹脂シートの硬化物と被着体との間の剥離強度が向上する。
【0082】
(C)熱伝導性フィラー
本実施形態において、樹脂組成物は、(A)及び(B)の他に、(C)熱伝導性フィラー(以下、単に「(C)」と称する場合がある)を含む。この(C)により、樹脂組成物の熱的特性及び機械的特性の少なくとも一方を向上させることができる。
(C)熱伝導性フィラーとしては、窒化ホウ素粒子、及びアルミナ粒子等が挙げられる。これらの中でも、(C1)窒化ホウ素粒子(以下、単に「(C1)」と称する場合がある)、及び(C2)アルミナ素粒子(以下、単に「(C2)」と称する場合がある)が、樹脂シートの熱拡散率を向上させる観点から好ましい。
(C)熱伝導性フィラーは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、(C)熱伝導性フィラーは、表面処理されていてもよい。
【0083】
(C)熱伝導性フィラーの平均粒径は、特に制限されない。(C1)窒化ホウ素粒子の平均粒径は、d50の値で0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、0.3μm以上であることがさらに好ましい。また、(C1)窒化ホウ素粒子の平均粒径の上限値は、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。
また、(C2)アルミナ粒子の平均粒径は、d50の値で、3μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましい。また、(C2)アルミナ粒子の平均粒径の上限値は、50μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることがさらに好ましい。
なお、(C)熱伝導性フィラーは、粒度分布に複数のピークを有していてもよい。このとき、ピーク毎に異なる種類の(C)熱伝導性フィラーが混合されていると判断してもよい。例えば、粒度分布に3つのピークがある場合には、3種類の(C)熱伝導性フィラーが混合されていると判断できる。
本明細書における、(C)熱伝導性フィラーの平均粒径は、動的光散乱法により測定した値とする。
【0084】
樹脂組成物中の(C1)窒化ホウ素粒子及び(C2)アルミナ粒子の含有量の合計は、樹脂組成物の固形分の全量基準(すなわち、溶媒を除く樹脂組成物の不揮発分の全量を100質量%としたとき)で、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、75質量%以上であることが特に好ましい。樹脂組成物中の(C1)及び(C2)の含有量の合計を上記下限以上にすることで、樹脂シートの熱拡散率を向上させることができる。
また、この含有量の合計の上限値は、90質量%以下であることが好ましく、88質量%以下であることがより好ましく、86質量%以下であることがさらに好ましく、84質量%以下であることが特に好ましい。樹脂組成物中の(C1)及び(C2)の含有量の合計を上記上限以下にすることで、樹脂シートの熱拡散率を向上させることができる。
【0085】
樹脂組成物が(C1)窒化ホウ素粒子及び(C2)アルミナ粒子の両方を含有する場合、樹脂組成物中の(C1)窒化ホウ素粒子と(C2)アルミナ粒子の質量比は、(C2)アルミナ粒子の質量を1とした場合、(C1)窒化ホウ素粒子の質量が0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。質量比を上記下限以上にすることで、樹脂シートの熱拡散率を向上させることができる。
また、上記の樹脂組成物が(C1)窒化ホウ素粒子及び(C2)アルミナ粒子の両方を含有する場合、樹脂組成物中の(C1)窒化ホウ素粒子と(C2)アルミナ粒子の質量比の上限値は、0.75以下であることが好ましく、0.6以下であることがより好ましい。質量比を上記上限以下にすることで、樹脂シートの熱硬化後の剥離強度を上昇させることができる。
【0086】
樹脂組成物中の(C)熱伝導性フィラーの含有量は、樹脂組成物の固形分の全量基準(すなわち、溶媒を除く樹脂組成物の不揮発分の全量を100質量%としたとき)で、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、75質量%以上であることが特に好ましい。樹脂組成物中の(C)熱伝導性フィラーの含有量を上記下限以上にすることで、樹脂シートの熱拡散率を向上させることができる。
また、(C)熱伝導性フィラーの含有量の上限値は、90質量%以下であることが好ましく、88質量%以下であることがより好ましく、86質量%以下であることがさらに好ましく、84質量%以下であることが特に好ましい。樹脂組成物中の(C)熱伝導性フィラーの含有量を上記上限以下にすることで、樹脂シートの熱硬化後の剥離強度を上昇させることができる。
【0087】
(D)硬化触媒
本実施形態に係る樹脂シートでは、樹脂組成物が、樹脂成分を含む場合、本発明の目的を損なわない限りにおいて、(D)硬化触媒をさらに含有してもよい。これにより、樹脂成分の硬化反応を効果的に進行させることが可能となり、樹脂シートを良好に硬化することが可能となる。硬化触媒の例としては、イミダゾール系硬化触媒、アミン系硬化触媒、リン系硬化触媒、トリアゾール系硬化触媒、チアゾール系硬化触媒、ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0088】
イミダゾール系硬化触媒の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、及び2-フェニル-4,5-ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール等が挙げられ、反応性の観点から、2-エチル-4-メチルイミダゾールを使用することが好ましい。なお、前述の(B)密着性付与剤として、トリアジン骨格及びイミダゾール構造を有する化合物を用いた場合、硬化触媒としても作用する。
【0089】
アミン系硬化触媒の具体例としては、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びN,N-ジメチルベンジルアミントリエチルアミン等の第三級アミン化合物が挙げられる。
【0090】
リン系硬化触媒の具体例としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p-メチルフェニル)ホスフィン、及びトリ(ノニルフェニル)ホスフィン等が挙げられる。
【0091】
トリアゾール系硬化触媒の具体例としては、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。
【0092】
チアゾール系硬化触媒の具体例としては、ベンゾチアゾール系化合物等が挙げられる。
【0093】
ラジカル重合開始剤の具体例としては、過酸化物、及びアゾ化合物等が挙げられる。
【0094】
これらの(D)硬化触媒は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(D)硬化触媒を使用する場合、これらの含有量は、(A)の合計含有量を100質量部とした際、15質量部以下であることが好ましく、12質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることが特に好ましい。
【0095】
(E)その他の成分
本実施形態において、樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、さらに(E)その他の成分を含んでいてもよい。(E)その他の成分としては、例えば、着色材料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオントラップ剤、及びイオン捕捉剤からなる群から選択される少なくともいずれかの成分が挙げられる。
これらの(E)その他の成分は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(E)その他の成分を使用する場合、これらの含有量は、(A)の合計含有量を100質量部とした際、10質量部であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0096】
本実施形態において、樹脂シートが塗工により形成される場合には、樹脂組成物は溶媒を含むことが好ましい。溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の一般的な溶媒のほか、シクロヘキサノン(沸点:155.6℃)、ジメチルホルムアミド(沸点:153℃)、ジメチルスルホキシド(沸点:189.0℃)、エチレングリコールのエーテル類(セロソルブ)(沸点:120~310℃程度)、オルト-キシレン(沸点:144.4℃)等の高沸点溶媒等が挙げられる。
【0097】
[樹脂シート]
本実施形態に係る樹脂シートは、前述の本実施形態に係る樹脂組成物から形成される。
樹脂シートは、半導体素子の封止や、半導体素子と他の電子部品との間に介在させることに用いられる場合の、貼り付ける被着体の凹凸への追従性等の観点から、本実施形態に係る樹脂組成物のみからなることが好ましい。すなわち、樹脂シートは、例えばプリプレグのように、樹脂組成物と繊維シートを組み合わせたもの等のような複合材料ではないことが好ましい。
【0098】
本実施形態に係る樹脂シートにおいては、(C)熱伝導性フィラーの種類の数をnとした場合に、下記数式(F1)で表される(C)熱伝導性フィラーの対臨界充填量比が、0.95以上1.26以下であることが必要である。
(対臨界充填量比)=(V/CV)+(V/CV)+…+(V/CV)・・・(F1)
:(C)熱伝導性フィラーのうちのn種類目の熱伝導性フィラーの体積充填率
CV:(C)熱伝導性フィラーのうちのn種類目の熱伝導性フィラーの臨界体積充填率
なお、数式(F1)をより具体的に説明すると、対臨界充填量比は、nが1である場合には、下記数式(F1-1)で表される。
(対臨界充填量比)=(V/CV)・・・(F1-1)
nが2である場合には、下記数式(F1-2)で表される。
(対臨界充填量比)=(V/CV)+(V/CV)・・・(F1-2)
nが3である場合には、下記数式(F1-3)で表される。
(対臨界充填量比)=(V/CV)+(V/CV)+(V/CV)・・・(F1-3)
【0099】
対臨界充填量比が0.95未満では、熱伝導性が低下してしまう。他方、対臨界充填量比が1.26を超えると、樹脂シートの空隙が生じ、接着性に悪影響が生じる。また、同様の観点から、対臨界充填量比は、1以上であることが好ましく、1.04以上であることがより好ましく、1.1以上であることが特に好ましい。また、対臨界充填量比の上限値は、1.25以下であることが好ましく、1.23以下であることがより好ましく、1.2以下であることが特に好ましい。
【0100】
上記のVの値は、次のようにして算出できる。
すなわち、樹脂組成物中のn種類目の(C)熱伝導性フィラーの含有量と、その比重から、n種類目の(C)熱伝導性フィラーの占めるフィラー体積を算出する。また、樹脂組成物中の(C)の含有量及び有機成分((C)以外の成分)の含有量と、それらの比重から、樹脂組成物の占める組成物体積を算出する。
そして、下記数式(F2)により、Vの値を算出する。
=(n種類目のフィラー体積)/(組成物体積)×100・・・(F2)
【0101】
上記のCVの値は、次のようにして測定できる。
すなわち、各熱伝導性フィラーの体積充填率を1%刻みで変化させた樹脂組成物(なお、この樹脂組成物は、n種類目の熱伝導性フィラーおよび有機成分とからなる)を調製し、これらの樹脂組成物を用いて、それぞれ樹脂シートを作製する。次に、これらの樹脂シートの表面をレーザ顕微鏡で観察し(観察面積:1mm×1mm)、短軸20μm以上かつ長軸20μm以上の大きさの空隙の有無を確認する(図2及び図3参照)。なお、図2(B)及び図3(B)で観察される黒い部分が空隙である。図2(B)及び図3(B)では、既に臨界体積充填率を超えているために、数多くの空隙が観察される。
体積充填率が低い樹脂シートから順に観察していき、初めて2つ以上の空隙が確認された樹脂シートの体積充填率よりも1%小さい値を、CVの値とする。
【0102】
本実施形態に係る樹脂シートにおいては、(C)のフィラー体積充填率が、50%以上65%以下であることが好ましい。
フィラー体積充填率が50%以上であれば、熱伝導性を更に向上できる。他方、フィラー体積充填率が65%以下であれば、樹脂シートの接着性を向上できる。また、同様の観点から、フィラー体積充填率は、52%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましい。また、フィラー体積充填率の上限値は、64%以下であることが好ましく、62%以下であることがより好ましい。
【0103】
フィラー体積充填率は、次のようにして算出できる。
すなわち、樹脂組成物中の(C)の含有量と、それらの比重から、(C)の占めるフィラー体積を算出する。なお、(C)がn種類の(C)熱伝導性フィラーからなるとすると、1種類目の(C)熱伝導性フィラーの占めるフィラー体積から、n種類目の(C)熱伝導性フィラーの占めるフィラー体積までの合計が、フィラー体積である。また、樹脂組成物中の(C)の含有量及び有機成分((C)以外の成分)の含有量と、それらの比重から、樹脂組成物の占める組成物体積を算出する。なお、窒化ホウ素粒子、アルミナ粒子および有機成分の比重は、上記のとおりである。
そして、下記数式(F3)により、(C)のフィラー体積充填率を算出する。
(フィラー体積充填率)=(フィラー体積)/(組成物体積)×100・・・(F3)
【0104】
本実施形態に係る樹脂シートの熱硬化後の熱拡散率は、1.0×10-6/s以上であることが必要であり、1.1×10-6/s以上であることが好ましく、1.2×10-6/s以上であることがより好ましく、1.3×10-6/s以上であることがさらに好ましく、1.35×10-6/s以上ことがさらにより好ましく、1.5×10-6/s以上であることが特に好ましい。また、熱硬化後の熱拡散率の上限値は、1×10-5/s以下であることが好ましく、8×10-6/s以下であることがより好ましく、5×10-6/s以下であることがさらに好ましく、4×10-6/s以下であることがさらにより好ましく、3×10-6/s以下であることが特に好ましい。
樹脂シートの熱硬化後の熱拡散率がこのような範囲にあることで、高い熱伝導性を有する硬化物を得ることができる。樹脂シートの熱硬化後の熱拡散率は、後述する実施例に記載の方法により得られる特性値である。
【0105】
また、本実施形態に係る樹脂シートの熱硬化後の剥離強度は、2.0N/10mm超であることが好ましく、3.0N/10mm以上であることがより好ましく、5.0N/10mm以上であることがさらに好ましく、6.0N/10mm以上であることが特に好ましい。また、熱硬化後の剥離強度の上限値は、50N/10mm以下であることがより好ましく、40N/10mm以下であることがさらに好ましい。
本実施形態に係る樹脂シートの熱硬化後の剥離強度が2.0N/10mm超であれば、樹脂シートを封止材として用いた場合に、被着物に対して、高い接着性を維持することが可能である。
本実施形態に係る樹脂シートの熱硬化後の剥離強度は、例えば、樹脂組成物に用いる成分の種類(特に、硬化促進剤の種類)及び配合量を調整することにより、上記範囲に調整することができる。
なお、本実施形態に係る樹脂シートの熱硬化後の剥離強度は、後述の測定方法を用いて、熱硬化後の樹脂シートと被着物との間で、剥離角度90度の引き剥がし試験を行うことによって求めた。具体的には、実施例の記載のように、試験片を作成し、引き剥がし試験を行った。
本実施形態に係る樹脂シートにおいて、樹脂組成物がシート化されていることにより、被着体への適用が簡便になり、特に被着体が大面積である場合の適用が簡便になる。
樹脂組成物がシート状であれば、封止工程後の形状に対して適合した形状に予め形成されているので、適用するだけで、ある程度の均一性を保った封止材として供給できる。また、樹脂組成物がシート状であれば、取り扱い性に優れる。
【0106】
樹脂組成物をシート化する方法は、従来公知のシート化する方法を採用でき、特に限定されない。薄い樹脂シートが得られやすいという観点からは、樹脂シートは、樹脂組成物の塗膜であることが好ましい。樹脂組成物の塗膜である樹脂シートは、前記樹脂組成物を塗布する工程を含む製造方法により得ることができる。
ここで、塗布方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。また、塗布後に、必要に応じて、乾燥してもよい。乾燥条件についても、前記樹脂組成物が硬化しない条件であれば、特に限定されない。
本実施形態に係る樹脂シートは、帯状のシートであってもよく、ロール状に巻き取られた状態で提供されてもよい。ロール状に巻き取られた本実施形態に係る樹脂シートは、ロールから繰り出されて所望のサイズに切断する等して使用することができる。
【0107】
本実施形態に係る樹脂シートの厚さは、例えば、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。また、当該厚さは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、120μm以下であることがさらに好ましい。また、樹脂シートが樹脂組成物の塗膜である場合には、樹脂シートを薄くすることが容易であり、本実施形態に係る樹脂シートの厚さが、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。
【0108】
(熱硬化条件)
本実施形態に係る樹脂シートにおける熱硬化条件において、加熱温度は、50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがよりさらに好ましく、160℃以上であることがよりさらに好ましい。また、加熱温度の上限値は、300℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、230℃以下であることがよりさらに好ましく、210℃以下であることがよりさらに好ましい。
本実施形態に係る樹脂シートにおける熱硬化条件において、加熱時間は、10分以上であることが好ましく、20分以上であることがより好ましい。また、加熱時間の上限値は、10時間以下であることが好ましく、7時間以下であることがより好ましい。
樹脂シートにおける熱硬化条件が上記の範囲であることによって、低温及び短時間での樹脂シートの熱硬化を実現することができる。
【0109】
[積層体]
図1には、本実施形態に係る積層体1の断面概略図が示されている。
本実施形態の積層体1は、第一剥離材2と、第二剥離材4と、第一剥離材2及び第二剥離材4の間に設けられた樹脂シート3とを有する。樹脂シート3は、本実施形態に係る樹脂シートである。
【0110】
第一剥離材2、及び第二剥離材4は、剥離性を有し、第一剥離材2の樹脂シート3に対する剥離力と第二剥離材4の樹脂シート3に対する剥離力とに差があることが好ましい。第一剥離材2及び第二剥離材4の材質は特に限定されない。第一剥離材2の剥離力P1に対する第二剥離材4の剥離力P2の比(P2/P1)は、0.02≦P2/P1<1又は1<P2/P1≦50であることが好ましい。
【0111】
第一剥離材2、及び第二剥離材4は、例えば、剥離材そのものに剥離性がある部材の他、剥離処理が施された部材、又は剥離剤層が積層された部材等であってもよい。第一剥離材2、及び第二剥離材4に剥離処理が施されていない場合、第一剥離材2、及び第二剥離材4の材質としては、例えば、オレフィン系樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
第一剥離材2、及び第二剥離材4は、剥離基材と、剥離基材の上に剥離剤が塗布されて形成された剥離剤層とを備える剥離材とすることができる。剥離基材と剥離剤層とを備える剥離材とすることで、取り扱いが容易となる。また、第一剥離材2、及び第二剥離材4は、剥離基材の片面のみに剥離剤層を備えていてもよいし、剥離基材の両面に剥離剤層を備えていてもよい。
【0112】
剥離基材としては、例えば、紙基材、この紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、及びプラスチックフィルム等が挙げられる。紙基材としては、例えば、グラシン紙、コート紙、及びキャストコート紙等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等)、並びにポリオレフィンフィルム(例えば、ポリプロピレン、及びポリエチレン等)等が挙げられる。これらのうちでも、ポリエステルフィルムが好ましい。
【0113】
剥離剤としては、例えば、シリコーン樹脂で構成されたシリコーン系剥離剤;ポリビニルカーバメート、及びアルキル尿素誘導体等の長鎖アルキル基を含有する化合物で構成された長鎖アルキル基含有化合物系剥離剤;アルキド樹脂(例えば、不転化性アルキド樹脂、及び転化性アルキド樹脂等)で構成されたアルキド樹脂系剥離剤;オレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレン等)、アイソタクチック構造、又はシンジオタクチック構造を有するプロピレン単独重合体、及びプロピレン-α-オレフィン共重合体等の結晶性ポリプロピレン樹脂等)で構成されたオレフィン樹脂系剥離剤;天然ゴム、及び合成ゴム(例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、メチルメタクリレート-ブタジエンゴム、及びアクリロニトリル-ブタジエンゴム等)等のゴムで構成されたゴム系剥離剤;並びに(メタ)アクリル酸エステル系共重合体等のアクリル樹脂で構成されたアクリル樹脂系剥離剤等の各種剥離剤が挙げられ、これらを1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらのうちでも、アルキド樹脂系剥離剤が好ましい。特に、樹脂シート3が含む樹脂組成物の(B)バインダー成分として、フェノキシ樹脂を用いた場合には、一般的なシリコーン系剥離剤を採用すると、剥離材が意図せず樹脂シート3の使用前に剥がれてしまう懸念があるため、アルキド樹脂系剥離剤を用いることが好ましい。
【0114】
第一剥離材2、及び第二剥離材4の厚さは、特に限定されない。通常、1μm以上500μm以下であり、3μm以上100μm以下であることが好ましい。
剥離剤層の厚さは、特に限定されない。剥離剤を含む溶液を塗布して剥離剤層を形成する場合、剥離剤層の厚さは、0.01μm以上3μm以下であることが好ましく、0.03μm以上1μm以下であることがより好ましい。
【0115】
積層体1の製造方法は、特に限定されない。例えば、積層体1は、次のような工程を経て製造される。まず、第一剥離材2の上に、樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する。次に、この塗膜を乾燥させて、樹脂シート3を形成する。次に、樹脂シート3と、第二剥離材4とを常温で貼り合わせることで、積層体1が得られる。なお、この場合、第一剥離材2と第二剥離材4の剥離材の種類が同じ場合には、第一剥離材2の剥離力P1に対する第二剥離材4の剥離力P2の比(P2/P1)は、P2/P1<1となる可能性が高く、第一剥離材2と第二剥離材4の剥離材が異種のものであっても、樹脂組成物を塗布するのが第一剥離材2であることにより、P2/P1の値が小さくなる傾向がある。
【0116】
[本実施形態の効果]
本実施形態に係る樹脂シート及び積層体によれば、耐熱性に優れる樹脂シートの、熱硬化後の熱伝導性をも向上させ、さらに、熱硬化後の接着性を向上させることができる。
【0117】
上述のとおり、本実施形態に係る樹脂シートは、パワー半導体素子に好適に用いることができる。換言すれば、本実施形態に係る半導体装置において、半導体素子は、パワー半導体素子であることが好ましい。パワー半導体素子は、200℃以上の高温での動作も想定されている。パワー半導体素子を有する半導体装置に使用する材料には、耐熱性が要求される。本実施形態に係る樹脂シートは、耐熱性に優れるため、半導体装置においてパワー半導体素子を覆うこと、或いは、パワー半導体素子と他の部品との間に介在させることに用いられることに好適に用いられる。また、本実施形態に係る樹脂シートは、複数の半導体素子に一括して適用されることが好ましい。例えば、樹脂組成物がシート状であれば、複数の間隙が設けられたフレームの間隙ごとに半導体素子が配置された構造体に対して、樹脂シートを適用し、フレームと半導体素子を一括して封止する、いわゆるパネルレベルパッケージに使用することができる。
また、半導体素子の封止は、フリップチップ型の素子の裏面を保護するための被覆であってもよい。一般的な保護シートでは素子から発生する熱を遮断し、素子に熱がこもってしまうのに対し、本実施形態に係る樹脂シートをフリップチップ型の素子の裏面保護シートとして用いることで、効率的に素子から発生した熱を放散させることができる。
また、本実施形態に係る樹脂シートは、熱硬化後の熱伝導性に優れるため、パワー半導体素子から発生した熱をヒートシンク等に効率的に伝えることができる。すなわち、本実施形態に係る樹脂シートは、耐熱性及び熱伝導性に優れるため、200℃以上の高温動作が想定されるパワー半導体素子を封止すること、又はパワー半導体素子と他の電子部品との間に介在させることに用いることができ、パワー半導体素子から発生した熱を、ヒートシンク等に伝える能力に優れる。
【0118】
上述のとおり、本実施形態に係る樹脂シートは、化合物半導体を用いた半導体素子に好適に用いることができる。換言すれば、本実施形態に係る半導体装置において、半導体素子は、化合物半導体を用いた半導体素子であることが好ましい。化合物半導体を用いた半導体素子は、シリコン半導体素子とは異なる特性を有するので、パワー半導体素子、基地局用高出力デバイス、センサー、ディテクター、及びショットキーバリアダイオード等の用途に好ましく用いられる。これらの用途では、化合物半導体を用いた半導体素子の耐熱性にも着目しており、本実施形態の樹脂シートは、耐熱性に優れるため、化合物半導体を用いた半導体素子と組み合わされて好適に用いられる。また、本実施形態に係る樹脂シートは、熱硬化後の熱伝導性に優れるため、化合物半導体を用いた半導体素子から発生した熱を、ヒートシンク等に効率的に伝えることができる。
また、本実施形態に係る樹脂シートは、化合物半導体を用いた半導体素子を封止することに用いられることが好ましい。又は、本実施形態に係る樹脂シートは、化合物半導体を用いた半導体素子と他の電子部品との間に介在させることに用いられることが好ましい。他の電子部品としては、例えば、プリント配線基板、及びリードフレーム等が挙げられる。
シリコン半導体素子の動作温度の上限は175℃程度であるため、パワー半導体素子には高温動作が可能な化合物半導体を用いた半導体素子を用いることが好ましい。化合物半導体としては、炭化ケイ素、窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム、酸化ガリウム、ガリウムヒ素等が挙げられ、炭化ケイ素、窒化ガリウム、窒化アルミニウムガリウム及び酸化ガリウムのいずれか1種以上であることが好ましい。
本実施形態に係る樹脂シートは、耐熱性及び熱伝導性に優れるため、200℃以上の高温動作が想定される化合物半導体を用いた半導体素子を封止すること、又は化合物半導体を用いた半導体素子と他の電子部品との間に介在させることに用いることができ、これらの半導体素子から発生した熱を、ヒートシンク等に伝える能力に優れる。
【0119】
[実施形態の変形]
本発明は、前記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良等は、本発明に含まれる。
【0120】
前記実施形態では、第一剥離材と、第二剥離材と、第一剥離材及び第二剥離材の間に設けられた樹脂シートとを有する積層体について説明したが、その他にも、樹脂シートの一方の面のみに剥離材を有する積層体であってもよい。
【0121】
また、前記半導体装置の実施形態では半導体封止用途について説明したが、本発明の樹脂シートは、その他にも、回路基板用絶縁材料(例えば、硬質プリント配線板材料、フレキシブル配線基板用材料、及びビルドアップ基板用層間絶縁材料等)、ビルドアップ用接着フィルム、並びに接着剤等として用いることができる。
【実施例0122】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0123】
[実施例及び比較例]
[樹脂組成物の調製]
表1に示す配合割合(質量%(固形分換算の割合))にて各成分を溶媒に溶解または分散させることで、実施例1~3、並びに比較例1~3に係る樹脂組成物を調製した。なお、実施例及び比較例における(A)、(B)及び(C)の含有量を表1に示す。
樹脂組成物の調製に用いた材料は以下の通りである。
【0124】
(A)樹脂成分
・第1のマレイミド樹脂-1:長鎖アルキル型マレイミド樹脂(温度25℃において固体、前記一般式(5)で表されるマレイミド樹脂)
・第1のマレイミド樹脂-2:長鎖アルキル型マレイミド樹脂(温度25℃において液状、前記一般式(7)で表されるマレイミド樹脂)
・第2のマレイミド樹脂:ビフェニル基を有するマレイミド樹脂(前記一般式(9)で表されるマレイミド樹脂、日本化薬株式会社製「MIR-3000」)
・アリル樹脂:ジアリルビスフェノールA(大和化成工業株式会社製「DABPA」)
【0125】
(B)密着性付与剤
・トリアジン骨格を有する化合物(トリアジン化合物):2,4-ジアミノ-6-[2-(2-エチル-4-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジン(四国化成工業株式会社製「2E4MZ-A」)
・カップリング剤:3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
【0126】
(C)熱伝導性フィラー
・アルミナ粒子:(昭和電工株式会社製「CB-A20S」、平均粒径(d50):20μm)
・窒化ホウ素粒子-1:(昭和電工株式会社製「UHP-2」、平均粒径(d50):11μm)
・窒化ホウ素粒子-2:(昭和電工株式会社製「UHP-S2」、平均粒径(d50):0.7μm)
【0127】
[樹脂シートを含む積層体の作製]
第一剥離材(アルキド樹脂系剥離剤から形成される剥離層を設けたポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ38μm)上に、ナイフコーターにて樹脂ワニス(シクロヘキサノンに、樹脂組成物を溶解して調製した塗布用溶液、固形分濃度は、72質量%とした。)を塗布し、90℃で1分間及び115℃で1分間乾燥した。乾燥後の樹脂組成物の厚さは表1に示す通りであった。乾燥炉から出した直後に、乾燥後の樹脂組成物と、第二剥離材(シリコーン系剥離剤から形成される剥離層を設けたポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ38μm)とを常温で積層し、第一剥離材、樹脂組成物からなる樹脂シート、及び第二剥離材がこの順で積層された積層体を作製した。
【0128】
<樹脂シートの物性確認及び評価>
[樹脂シートのフィラー体積充填率]
樹脂組成物中の(C)の含有量と、それらの比重から、(C)の占めるフィラー体積を算出した。なお、本実施例等では、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子-1、および窒化ホウ素粒子-2という3種類の(C)を用いているので、アルミナ粒子の占めるフィラー体積と、窒化ホウ素粒子-1の占めるフィラー体積と、窒化ホウ素粒子-2の占めるフィラー体積との合計が、フィラー体積である。また、樹脂組成物中の(C)の含有量及び有機成分((A)と(B)の合計)の含有量と、それらの比重から、樹脂組成物の占める組成物体積を算出した。なお、窒化ホウ素粒子の比重は、2.27とし、アルミナ粒子の比重は、3.9とした。また、有機成分の比重は、1.2とした。
そして、下記数式(F3)により、(C)のフィラー体積充填率(全フィラーの体積充填率の合計)を算出した。得られた結果を表1に示す。
(フィラー体積充填率)=(フィラー体積)/(組成物体積)×100・・・(F3)
【0129】
[樹脂シートの対臨界充填量比]
下記数式(F1)で表される(C)熱伝導性フィラーの対臨界充填量比を、下記の測定又は計算により求めた。得られた結果を表1に示す。
(対臨界充填量比)=(V/CV)+…+(V/CV)・・・(F1)
:(C)熱伝導性フィラーのうちのn種類目の熱伝導性フィラーの体積充填率
CV:(C)熱伝導性フィラーのうちのn種類目の熱伝導性フィラーの臨界体積充填率
なお、本実施例等では、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子-1、および窒化ホウ素粒子-2という3種類の(C)を用いているので、具体的には、下記数式(F1-3)により算出できる。
(対臨界充填量比)=(V/CV)+(V/CV)+(V/CV)・・・(F1-3)
:アルミナ粒子の体積充填率
CV:アルミナ粒子の臨界体積充填率
:窒化ホウ素粒子-1の体積充填率
CV:窒化ホウ素粒子-1の臨界体積充填率
:窒化ホウ素粒子-2の体積充填率
CV:窒化ホウ素粒子-2の臨界体積充填率
【0130】
上記のVの値は、次のようにして算出した。
すなわち、樹脂組成物中のn種類目の(C)熱伝導性フィラーの含有量と、その比重から、n種類目の(C)熱伝導性フィラーの占めるフィラー体積を算出した。また、樹脂組成物中の(C)の含有量及び有機成分((C)以外の成分)の含有量と、それらの比重から、樹脂組成物の占める組成物体積を算出した。なお、窒化ホウ素粒子、アルミナ粒子および有機成分の比重は、上記のとおりとした。
そして、下記数式(F2)により、Vの値を算出した。
=(n種類目のフィラー体積)/(組成物体積)×100・・・(F2)
【0131】
上記のCVの値は、次のようにして測定した。
すなわち、各熱伝導性フィラーの体積充填率を1%刻みで変化させた樹脂組成物(なお、この樹脂組成物は、n種類目の熱伝導性フィラーおよび有機成分とからなる)を調製し、これらの樹脂組成物を用いて、それぞれ樹脂シートを作製した。次に、これらの樹脂シートの表面をレーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製、製品名「VK-9500」)で観察し(観察面積:1mm×1mm)、短軸20μm以上かつ長軸20μm以上の大きさの空隙の有無を確認した。
体積充填率が低い樹脂シートから順に観察していき、初めて2つ以上の空隙が確認された樹脂シートの体積充填率よりも1%小さい値を、CVの値とした。
なお、CVの値は、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子-1、および窒化ホウ素粒子-2のそれぞれについて測定した。
アルミナ粒子の臨界体積充填率の測定において、樹脂シートの表面をレーザ顕微鏡で観察した写真を図2に示す。図2(A)でのアルミナ粒子の体積充填率は65%であり、図2(B)でのアルミナ粒子の体積充填率は75%である。
窒化ホウ素粒子-1の臨界体積充填率の測定において、樹脂シートの表面をレーザ顕微鏡で観察した写真を図3に示す。図3(A)での窒化ホウ素粒子の体積充填率は30%であり、図3(B)での窒化ホウ素粒子の体積充填率は40%である。
測定の結果、CV(アルミナ粒子の臨界体積充填率)は、72%であり、CV(窒化ホウ素粒子-1の臨界体積充填率)は、35%であり、CV(窒化ホウ素粒子-2の臨界体積充填率)は、37%であった。
【0132】
[樹脂シートの厚さ]
株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG-02J」、標準規格:JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠)を用いて測定した。得られた結果を表1に示す。
【0133】
[樹脂シートの熱硬化後における熱拡散率の測定]
樹脂シートを厚さ200μmとなるように貼り合わせ、温度200℃にて4時間の熱硬化条件で硬化を行って試料とした。なお、積層体の第一剥離材及び第二剥離材は、貼り合わせの過程で適宜除去した。この試料について、熱拡散率測定装置(株式会社アイフェイズ製「ai-Phase Mobile 1」)を用いて温度波法により、熱拡散率を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0134】
[剥離強度の測定]
銅板(JIS―C1220P仕様、厚さ400μm)に、得られた積層体における樹脂シートの一方の面を、ラミネート温度130℃にて減圧圧着することで貼り合わせ(ラミネート装置:ニッコー・マテリアルズ株式会社製「V-130」;条件:到達圧力100Pa、加圧力0.3MPa、時間30秒間)、次いで、樹脂シートの他方の面に、銅箔(大きさ50mm×10mm、厚さ150μm、JIS H 3100仕様)を、上記と同じ条件で減圧圧着することで貼り合せた。なお、積層体における樹脂シートの第二剥離材及び第一剥離材は、それぞれSiウェハ及び銅板に貼り付ける前に剥離した。その後、温度200℃にて4時間の熱硬化条件で樹脂シートを硬化させて、試料とした。この試料について、引っ張り試験機(株式会社島津製作所製「オートグラフAG-IS」)を用いて、剥離速度50mm/分、剥離角度90度の条件で銅箔を硬化後の樹脂シートから引き剥がし、銅箔と硬化後の樹脂シートとの剥離強度(単位:N/10mm)を測定した。測定は、25℃、相対湿度50%の環境下で行った。得られた結果を表1に示す。なお、比較例1の試料は、接着性が低すぎて、剥離強度の測定ができなかったので、「NG」と判定した。
【0135】
【表1】
【0136】
表1に示す結果からも明らかな通り、実施例1~3で得られた樹脂シートにおいては、対臨界充填量比が0.95以上1.26以下の範囲内であり、剥離強度が高く、また、熱硬化後の熱拡散率が高いことが分かった。
【符号の説明】
【0137】
1…積層体、2…第一剥離材、3…樹脂シート、4…第二剥離材。
図1
図2
図3