(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125436
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】イミダゾール化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20240911BHJP
C07D 453/04 20060101ALI20240911BHJP
C07D 453/02 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C07D471/04 104A
C07D453/04 CSP
C07D453/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119593
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔
(72)【発明者】
【氏名】ソメシュ シャルマ
(72)【発明者】
【氏名】ビムチャラン マイティ
【テーマコード(参考)】
4C065
【Fターム(参考)】
4C065KK01
4C065KK02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】収率のよいフッ素化イミダゾールの製造方法、および光学純度の高いイミダゾール化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】下記の化合物Yを用いることにより、フッ素化イミダゾールを高収率で得ることができる。また、化合物Yとシンコニジンとの塩を再結晶により精製する工程を加えることで、高光学純度の化合物Yが得られる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(3S)-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-7-インドリジニル 4-メチルベンゼンスルホナートを製造する方法であって、2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸をフッ素化する工程を含む製造方法。
【請求項2】
フッ素化する工程が、求電子的フッ素化剤を用いる工程である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
求電子的フッ素化剤が、1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート)である、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
光学純度の高い2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸を用いる、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
光学純度の高い2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸が、2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)を経由して得られる2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸である、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が70%e.e.以上である、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が80%e.e.以上である、請求項5または6記載の製造方法。
【請求項8】
2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が95%e.e.以上である、請求項5から7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
さらに、a)2-メチル-2-プロパニル 3-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-3-オキソプロパノアートを臭素化して2-メチル-2-プロパニル 2-ブロモ-3-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-3-オキソプロパノアートを得る工程、b)2-メチル-2-プロパニル 2-ブロモ-3-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-3-オキソプロパノアートと6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジンカルボキシイミダミドとを環化反応に付して2-メチル-2-プロパニル 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボキシラートを得る工程、および、c)2-メチル-2-プロパニル 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボキシラートを脱保護反応に付して2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸を得る工程を含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項10】
臭素化の工程が、N-ブロモスクシンイミドを用いる工程である、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
環化反応の工程が、トリエチルアミンを用いる工程である、請求項9または10記載の製造方法。
【請求項12】
脱保護反応の工程が、ギ酸を用いる工程である、請求項9から11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
さらに、2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸の光学純度を高める工程を含む、請求項9から12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
光学純度を高める工程が、2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)を経由する工程である、請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が70%e.e.以上である、請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が80%e.e.以上である、請求項14または15記載の製造方法。
【請求項17】
2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が95%e.e.以上である、請求項14から16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
さらに、d)(3S)-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-7-インドリジニル 4-メチルベンゼンスルホナートをボラン試薬との反応に付して(3S)-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-7-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノンを得る工程、e)(3S)-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-7-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノンと1-(2-ブロモ-4-クロロフェニル)-1H-テトラゾールをカップリング反応に付して(3S)-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノンを得る工程、および、f)(3S)-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノンを脱保護反応に付して(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロ-3-ピリジニル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン 二水和物を得る工程を含む、請求項1または9記載の製造方法。
【請求項19】
ボラン試薬との反応の工程が、ビス(ピナコラト)ジボロンを用いる工程である、請求項18記載の製造方法。
【請求項20】
カップリング反応の工程が、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドを用いる工程である、請求項18または19記載の製造方法。
【請求項21】
脱保護反応の工程が、濃硫酸を用いる工程である、請求項18から20のいずれかに記載の製造方法。
【請求項22】
さらに、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロ-3-ピリジニル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン 二水和物を3-ヒドロキシ安息香酸と混合し、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸 (1/1)を得る工程を含む、請求項18記載の製造方法。
【請求項23】
光学純度の高い2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸の製造方法。
【請求項24】
2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)を経由する工程を含む、請求項23記載の製造方法。
【請求項25】
2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が70%e.e.以上である、請求項24記載の製造方法。
【請求項26】
2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が80%e.e.以上である、請求項24または25記載の製造方法。
【請求項27】
2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が95%e.e.以上である、請求項24から26のいずれかに記載の製造方法。
【請求項28】
2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸。
【請求項29】
2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)。
【請求項30】
(3S)-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-7-インドリジニル 4-メチルベンゼンスルホナート。
【請求項31】
(3S)-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イミダゾール化合物の製造方法に関する。さらに詳しくは、フッ素化イミダゾールの製造方法、および、光学純度の高いイミダゾール化合物の製造方法等に関する。本開示は、さらに、本発明の製造方法によるイミダゾール化合物の合成中に得られる中間体化合物等を含む。
【背景技術】
【0002】
血栓症およびその合併症である血栓塞栓症(以下、血栓塞栓性疾患)は、癌と並んで成人における死亡原因の上位を占め、近年重要な問題となっている。血栓塞栓性疾患は、血栓が血管傷害部位で形成されることにより、もしくはその血栓が遊離して血流に乗って別の血管内に運ばれ血管を閉塞することにより発生する。血栓塞栓性疾患には、例えば深部静脈血栓症と肺塞栓症の総称である静脈血栓塞栓症、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、その他種々の動脈および静脈血栓症等が含まれる。
【0003】
血管の損傷などで血管壁に発現した組織因子は、血液凝固カスケードの起点となり、血中に微量に存在する血液凝固第VII因子と複合体を形成する。本複合体は血液凝固第IX因子および血液凝固第X因子を活性化し、活性化血液凝固第X因子がプロトロンビンをトロンビンへ変換する。トロンビンはフィブリノーゲンをフィブリンへ変換し、最終的に不溶性フィブリンが形成する(開始期)。この過程で産生されたトロンビンは、開始期の血栓形成を促すと考えられ、止血に重要と考えられる一方で、血液凝固第XI因子を活性化し、活性化血液凝固第XI因子(以下、FXIaともいう。)を介して爆発的なトロンビン産生を引き起こし(増幅期)、その結果、血栓が増大することが報告されている(非特許文献1-3参照)。
【0004】
血栓塞栓性疾患の治療および/または予防には一般的に抗凝固薬剤が用いられているが、既存の抗凝固薬剤は、優れた抗血栓作用を示す一方で、出血合併症という重篤な副作用が問題となっているか、あるいは出血合併症を引き起こさないために、投与量が制限され、十分な抗血栓作用を発揮していない可能性が考えられる。このような状況下で、病的血栓の成長あるいは増大を抑制し、かつ止血血栓の形成に影響しない、新しい作用機序を有する血栓症や血栓塞栓症の治療剤および/または予防剤が必要とされている。その標的の一つとして、近年、FXIaが注目されている。血液凝固第XI因子は、血液凝固の調節に関与する血漿中セリンプロテアーゼの一つであり、活性化血液凝固第XII因子、トロンビン、または自身によってFXIaとなる。FXIaは、古典的血液凝固カスケードにおいては内因系あるいは接触系と呼ばれる血液凝固経路の構成因子の一つであり、Arg-AlaとArg-Val間のペプチド結合を選択的に切断することにより、血液凝固第IX因子を活性化する。FXIaの安全性は、血友病Cと呼ばれるヒトの血液凝固第XI因子欠損症において、主に術後または外傷後の軽度から中程度の出血を特徴とした観察結果から支持されている。さらに、FXIaの効果と安全性の高さについては、ヒトの血液凝固第XI因子欠損症の観察結果に加えて、血液凝固第XI因子欠損マウスを用いた実験的血栓症および出血モデルにおける実験結果およびサルまたはウサギを用いた実験的血栓症および出血モデルにおける抗血液凝固第XI因子中和抗体またはアンチセンスの実験結果から証明されている(非特許文献4-8参照)。
【0005】
以上の結果から、FXIaは抗血栓治療剤および/または予防剤を開発する上で、出血という副作用の無い非常に魅力的な標的であり、FXIa阻害剤は出血等の望ましくない副作用を持たない、非常に強力かつ安全な抗血栓治療剤または予防剤になることが期待されている。
【0006】
ところで、特許文献1には、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン(以下、化合物Xと略記することがある。)が、選択的な血液凝固第XIa因子阻害剤であり、血栓塞栓疾患等の治療薬として有用であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2016/093285号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2020/111268号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ブラッド・コアグレーション・アンド・フィブリノリシス(Blood Coagulation and Fibrinolysis)、2006年、第17巻、251-257頁
【非特許文献2】サイエンス(Science)、1991年、第253巻、909-912頁
【非特許文献3】ブラッド(Blood)、2003年、第102巻、953-955頁
【非特許文献4】ジャーナル・オブ・トロンボシス・アンド・ヘモスタシス(Journal of Thrombosis and Haemostasis)、2005年、第3巻、695-702頁
【非特許文献5】ジャーナル・オブ・トロンボシス・アンド・ヘモスタシス(Journal of Thrombosis and Haemostasis)、2006年、第4巻、1982-1988頁
【非特許文献6】ブラッド(Blood)、2012年、第119巻、2401-2408頁
【非特許文献7】ブラッド(Blood)、2009年、第113巻、936-944頁
【非特許文献8】ジャーナル・オブ・トロンボシス・アンド・ヘモスタシス(Journal of Thrombosis and Haemostasis)、2006年、第4巻、1496-1501頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
医薬品としての化合物Xの工業的生産スケールに適した製造方法(その過程の方法)を提供すること、および/または当該製造方法に適した新規中間体を提供することである。
【0010】
以下に示す、特許文献1の実施例2(10)に記載の化合物Xは、その化学構造中に、フッ素化されたイミダゾール環を有する。
【0011】
【0012】
イミダゾール環に直接フッ素を置換する反応は、通常、多くの副生成物が生じるので、低収率となる。例えば、特許文献1の実施例2(9)において、イミダゾール環への直接フッ素置換反応を行ったところ、収率は26%であった。
【0013】
フッ素置換反応として、カルボン酸の脱炭酸的フッ素化反応が知られている。しかしながら、ベンゼン、またはピロール環上のカルボキシル基をフッ素に置換する反応は知られているが、イミダゾール環上のカルボキシル基をフッ素に置換する反応は知られていない。
【0014】
ところで、化合物Xは、一つの不斉炭素原子を有する。化合物Xは、医薬品として用いられるため、高い光学純度が求められる。高光学純度の医薬品原薬を得るための方法の一つは、高光学純度の製造中間体化合物を使用することである。例えば、特許文献1の実施例2(9)においては、キラルカラムを用いた高速液体クロマトグラフ(HPLC)により光学分割を行い、高光学純度の化合物を得た。しかしながら、医薬品として供給するための、工業的大量の化合物を得る手法としては、キラルカラムを用いたHPLCによる光学分割は、原薬コストの観点からは好ましくない。
【0015】
したがって、本発明の課題は、具体的には、例えば、収率のよいフッ素化イミダゾールの製造方法、および、光学純度の高いイミダゾール化合物の製造方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討を行い、以下に示す2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸(以下、化合物Yと略記することがある。)を用いることにより、イミダゾール環にフッ素が置換した化合物を、大量かつ安全に、高収率で得られることを見出した。
【0017】
【0018】
また、更なる検討を重ねた結果、化合物Yは、天然アルカロイドの一つであるシンコニジン(CAS番号:485-71-2)と塩を形成すること、また、化合物Yとシンコニジンとの塩を再結晶により精製した後、遊離させることにより、高光学純度の化合物Yが得られることを見出した。
【0019】
すなわち、本発明は、例えば、
[1] (3S)-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-7-インドリジニル 4-メチルベンゼンスルホナートを製造する方法であって、2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸をフッ素化する工程を含む製造方法、
[2] 光学純度の高い2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸を用いる、[1]記載の製造方法、
[3] 光学純度の高い2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸の製造方法、
[4] 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸、2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)、(3S)-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-7-インドリジニル 4-メチルベンゼンスルホナート、および(3S)-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン等の実施態様を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、例えば、化合物Yを用いることにより、効率よくフッ素化されたイミダゾール化合物を得ることができる。また、この化合物Yを、シンコニジンとの塩として精製することによって、高光学純度の化合物Yを得ることができる。この高光学純度の化合物Yを製造中間体として用いることにより、高光学純度の化合物Xを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
特に具体的な定めのない限り、本明細書で使用される用語は、有機化学、医学、薬学、分子生物学、微生物学等の分野における当業者に一般に理解されるとおりの意味を有する。以下にいくつかの本明細書で使用される用語についての定義を記載するが、これらの定義は、本明細書において、一般的な理解に優先する。
【0023】
本発明において、再結晶とは、溶媒への溶解度の差を利用して、結晶性物質を精製することを意味する。実施例12に記載の操作も、再結晶の一態様である。
【0024】
本発明において、光学純度が高いとは、鏡像体過剰率(エナンチオマー過剰率、enantiomeric excess、またはe.e.等)の値が大きいことを意味する。2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)のe.e.として好ましくは、70%e.e.以上であり、より好ましくは、80%e.e.以上、85%e.e.以上または90%e.e.以上であり、特に好ましくは、95%e.e.以上である。
【0025】
化合物Yは、分子内に酸性部分と塩基性部分を有する。化合物Yに対して、種々の酸性化合物((+)-10-カンファースルホン酸、(+)-カンファー酸、D-(-)-キナ酸、(+)-cis-2-ベンズアミドシクロヘキサンカルボン酸、L-(+)-マンデル酸、(S)-(+)-2-フェニルプロパン酸、(S)-(+)-2-フェニルコハク酸、(+)-O-アセチル-L-マンデル酸、(R)-(-)-α-メトキシフェニル酢酸、(+)-ジアセチル-D-酒石酸、(+)-ジベンゾイル-D-酒石酸、(-)-モノ-(1R)-メンチルフタル酸、(R)-(+)-N-(1-フェニルエチル)フタル酸など)、および、種々の塩基性化合物((+)-デヒドロアビエチルアミン、キニン、シンコニン、(S)-フェネチルアミン、(S)-N-メチル-フェネチルアミン、(S)-N,N-ジメチル-フェネチルアミン、(S)-フェニルグリシノール、キニジン、シンコニジン、(R)-フェネチルアミンなど)を加え、工業的大量に光学純度の高い結晶を取得できる塩について検討した結果、再現よく光学純度の高い結晶を与えたのは、シンコニジンとの塩のみであった。
【0026】
本発明において、構造式中、点線
【0027】
【0028】
は、紙面の向こう側(すなわちα-配置)に結合していることを表わす。
【0029】
本発明において、求電子的フッ素化剤としては、例えば、1-フルオロピリジニウム トリフルオロメタンスルホナート、N-フルオロベンゼンスルホンイミド、および1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート)などが挙げられる。求電子的フッ素化剤として好ましくは、1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート)である。
【0030】
本願は、例えば、下記の実施態様を提供する。
[1] (3S)-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-7-インドリジニル 4-メチルベンゼンスルホナートを製造する方法であって、2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸をフッ素化する工程を含む製造方法、
[2] フッ素化する工程が、求電子的フッ素化剤を用いる工程である、[1]記載の製造方法、
[3] 求電子的フッ素化剤が、1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート)である、[2]記載の製造方法、
[4] 光学純度の高い2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸を用いる、[1]から[3]のいずれかに記載の製造方法、
[5] 光学純度の高い2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸が、2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)を経由して得られる2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸である、[4]記載の製造方法、
[6] 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が70%e.e.以上である、[5]記載の製造方法、
[7] 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が80%e.e.以上である、[5]または[6]記載の製造方法、
[8] 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が95%e.e.以上である、[5]から[7]のいずれかに記載の製造方法、
[9] さらに、a)2-メチル-2-プロパニル 3-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-3-オキソプロパノアートを臭素化して2-メチル-2-プロパニル 2-ブロモ-3-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-3-オキソプロパノアートを得る工程、b)2-メチル-2-プロパニル 2-ブロモ-3-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-3-オキソプロパノアートと6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジンカルボキシイミダミドとを環化反応に付して2-メチル-2-プロパニル 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボキシラートを得る工程、および、c)2-メチル-2-プロパニル 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボキシラートを脱保護反応に付して2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸を得る工程を含む、[1]記載の製造方法、
[10] 臭素化の工程が、N-ブロモスクシンイミドを用いる工程である、[9]記載の製造方法、
[11] 環化反応の工程が、トリエチルアミンを用いる工程である、[9]または[10]記載の製造方法、
[12] 脱保護反応の工程が、ギ酸を用いる工程である、[9]から[11]のいずれかに記載の製造方法、
[13] さらに、2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸の光学純度を高める工程を含む、[9]から[12]のいずれかに記載の製造方法、
[14] 光学純度を高める工程が、2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)を経由する工程である、[13]記載の製造方法、
[15] 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が70%e.e.以上である、[14]記載の製造方法、
[16] 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が80%e.e.以上である、[14]または[15]記載の製造方法、
[17] 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が95%e.e.以上である、[14]から[16]のいずれかに記載の製造方法、
[18] さらに、d)(3S)-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-7-インドリジニル 4-メチルベンゼンスルホナートをボラン試薬との反応に付して(3S)-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-7-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノンを得る工程、e)(3S)-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-7-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノンと1-(2-ブロモ-4-クロロフェニル)-1H-テトラゾールをカップリング反応に付して(3S)-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノンを得る工程、および、f)(3S)-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノンを脱保護反応に付して(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロ-3-ピリジニル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン 二水和物を得る工程を含む、[1]または[9]記載の製造方法、
[19] ボラン試薬との反応の工程が、ビス(ピナコラト)ジボロンを用いる工程である、[18]記載の製造方法、
[20] カップリング反応の工程が、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドを用いる工程である、[18]または[19]記載の製造方法、
[21] 脱保護反応の工程が、濃硫酸を用いる工程である、[18]から[20]のいずれかに記載の製造方法、
[22] さらに、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロ-3-ピリジニル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン 二水和物を3-ヒドロキシ安息香酸と混合し、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸 (1/1)を得る工程を含む、[18]記載の製造方法、
[23] 光学純度の高い2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸の製造方法、
[24] 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)を経由する工程を含む、[23]記載の製造方法、
[25] 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が70%e.e.以上である、[24]記載の製造方法、
[26] 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が80%e.e.以上である、[24]または[25]記載の製造方法、
[27] 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)の光学純度が95%e.e.以上である、[24]から[26]のいずれかに記載の製造方法、
[28] 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸、
[29] 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)、
[30] (3S)-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-7-インドリジニル 4-メチルベンゼンスルホナート、および、
[31] (3S)-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン。
【0031】
本明細書で引用するすべての文献は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0032】
上記の説明は、すべて非限定的なものであり、本発明は添付の特許請求の範囲において定義され、その技術的思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。以下、実施例にて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例0033】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
NMRの箇所に示されているカッコ内は測定に使用した溶媒を示す。
【0035】
本明細書中に用いた化合物名は、一般的にIUPACの規則に準じて命名を行なうコンピュータプログラム、Advanced Chemistry Development社のACD/Name(登録商標)を用いるかまたはIUPAC命名法に準じて命名したものである。
【0036】
以下の実施例におけるLC分析で用いられた測定時間、溶媒およびカラム条件を以下に示す。
条件a.カラムWaters XBridge C18、4.6mm x 50mm、2.5 μm;検出波長210nm;カラム温度30℃;移動相(A液)5mmol/L リン酸2水素カリウム水溶液(pH2.5)および(B液)アセトニトリル;流速1.0mL/min;分析時間6.0分;グラジエント:0分(A液/B液=70/30)、2.3分(A液/B液=20/80)、4.6分(A液/B液=20/80)、6.0分(A液/B液=70/30)
条件b.カラムWaters XBridge C18、4.6mm x 150mm、 3.5 μm;検出波長210nm;カラム温度30℃;移動相(A液)5mmol/L リン酸2水素カリウム水溶液(pH3.0)および(B液)アセトニトリル;流速1.0mL/min;分析時間30分;グラジエント:0分(A液/B液=95/5)、15分(A液/B液=20/80)、22分(A液/B液=20/80)、30分(A液/B液=95/5)
実施例1:エチル (2S)-6-(2,2-ジメチル-4-オキソ-4H-1,3-ジオキシン-6-イル)-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)-5-オキソヘキサノアート
1.0mol/L リチウムヘキサメチルジシラジドのトルエン溶液(17.5mL)を-20℃まで冷却した。2,2,6-トリメチル-1,3-ジオキシン―4-オン(CAS番号:5394-63-8)(2.65g)を追加し、15分撹拌後、1.1mol/L ジエチル亜鉛のトルエン溶液(9.45mL)を添加した。さらに、1,4-ジメチルベンゼン(0.3mL)加えた後、2-エチル 1-(2-メチル-2-プロパニル) (2S)-5-オキソ-1,2-ピロリジンジカルボキシラート(CAS番号:144978-12-1)(3.0g)のトルエン(12mL)溶液を滴加した。反応溶液を3時間撹拌後、6.0mol/L 塩酸水溶液(15mL)に30℃以下で反応溶液を添加した。30分以上撹拌し、分液後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(15mL)を加え、1時間撹拌した。反応液をセライト(商品名)でろ過し、トルエン(6mL)で洗浄し、撹拌分液した。有機層に水(15mL)を加え、撹拌分液後、有機層を15mLまで濃縮し、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
HPLC保持時間(分):2.77(条件a)。
実施例2:エチル (3S)-7-ヒドロキシ-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジンカルボキシラート
アセトニトリル(15mL)に、メタンスルホン酸(3.36g)を加え、75℃まで加熱した後、実施例1で製造した化合物(4.66g)のトルエン溶液を滴加し、3時間撹拌した。反応液に4.0mol/L 水酸化ナトリウム水溶液(8.2mL)を10℃以下で加え、撹拌分液し、有機層を回収した。水層に酢酸エチル(15mL)を加え、撹拌分液し、有機層に抽出した。有機層を混合し、エタノール(15mL)を加え、濃縮し、エタノール(15mL)を加え、濃縮し、エタノール(15mL)を加えた。濃縮液にDNHシリカゲル(1.5g)を添加し、1時間撹拌後、ろ過し、エタノール(15mL)でかけ洗い後、12mLまで濃縮した。酢酸イソプロピル(30mL)を加え、50℃まで加熱後、12mLまで濃縮した後、別途エタノールで溶解後に酢酸イソプロピルを添加し、析出させた種晶(3.0mg)を加え、1時間撹拌した。酢酸イソプロピル(30mL)を2時間かけて添加し、0℃まで冷却後、ろ過し、以下の物性値を有する標題化合物(15g)を得た。
1H-NMR(CDCl3):δ 1.26-1.29、2.30-2.36、2.61-2.72、3.13-3.17、4.21-4.24、5.20-5.23、6.45-6.46。
HPLC保持時間(分):0.75(条件a)。
実施例3:エチル (3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジンカルボキシラート
p-トルエンスルホニルクロリド(9.0g)に、アセトニトリル(10mL)とトルエン(50mL)を加え、撹拌した中に、実施例2で製造した化合物(10g)、アセトニトリル(35mL)、ジイソプロピルエチルアミン(8.7g)の溶液を加えた。1時間撹拌した後、N,N-ジメチルエチレンジアミン(395mg)を加え、1時間撹拌した。反応液にトルエン(30mL)と7.1%塩酸水溶液(70mL)を加え、撹拌後分液した。有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(70mL)で1回、水(70mL)で1回洗浄した後、有機層を濃縮し、以下の物性値を有する標題化合物(15g)を得た。
1H-NMR(CDCl3):δ 1.28、2.24-2.36、2.46-2.55、2.98-3.10、3.11-3.24、4.23、4.93-5.15、5.80-5.94、6.15、7.31-7.46、7.79。
HPLC保持時間(分):2.30(条件a)。
実施例4:2-メチル-2-プロパニル 3-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-3-オキソプロパノアート
テトラヒドロフラン(64mL)を-5℃に冷却し、1.6mol/L ノルマルブチルリチウムのノルマルヘキサン溶液(53.1mL)、ジイソプロピルエチルアミン(11.9mL)を加え、30分間撹拌した。反応液にリチウムブロミド(1.1g)のテトラヒドロフラン(16mL)溶液を加え、-70℃まで冷却した。実施例3で製造した化合物(16g)のトルエン(40mL)溶液を加え、30分間撹拌した後、プロピオン酸(15.7mL)を添加し、0℃まで昇温し、クエンチ液とした。別容器にテトラヒドロフラン(32mL)と5%硫酸水素カリウム水溶液(112mL)を加え、0℃に冷却し、クエンチ液を添加した。撹拌後に分液し、有機層を1.0mol/L 塩酸水溶液(112mL)で1回、5%炭酸ナトリウム水溶液(112mL)で1回、水(48mL)で1回洗浄した。有機層を0℃に冷却し、別途テトラヒドロフラン/トルエン(5:2)で溶解後にノルマルヘプタンを添加し再結晶して取得した種晶(16mg)を加え、17時間撹拌した。ノルマルヘプタン(64mL)を加え、室温に昇温し、ノルマルヘプタン(272mL)を加え、1時間熟成後、生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで以下の物性値を有する標題化合物(17.1g)を得た。
1H-NMR(CDCl3):δ 1.46、2.31-2.38、2.42-2.52、2.94-3.10、3.13-3.30、3.51、3.83、5.22、5.86、6.08-6.23、7.36、7.71-7.86。
HPLC保持時間(分):2.69(条件a)。
実施例5:2-メチル-2-プロパニル 2-ブロモ-3-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-3-オキソプロパノアート
アセトニトリル(177mL)に、実施例4で製造した化合物(23.7g)、リチウムブロミド(2.8g)を加え、混合した。内温15℃でN-ブロモスクシンイミド(9.2g)を投入し、5時間撹拌した。N,N-ジメチルホルムアミド(130g)と水(47mL)を添加し、1時間撹拌後、結晶の析出を確認した。水(190mL)を追加し、15℃で熟成後、生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで以下の物性値を有する標題化合物(22.2g)を得た。
1H-NMR(CDCl3):δ 1.51、2.33-2.58、3.02-3.14、3.17-3.33、5.31-5.37、5.40、5.84、6.15、7.36、7.68-7.88。
HPLC保持時間(分):2.97(条件a)。
実施例6:N,N-ジベンジル-6-フルオロ-2-ピリジンアミン
6-フルオロ-2-ピリジンアミン(CAS番号:1597-32-6)(113g)のテトラヒドロフラン(299mL)溶液を10℃に冷却し、40%ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドのテトラヒドロフラン溶液(1029mL)を加え、30分間撹拌した。反応溶液にベンジルブロミド(361g)を加え、17時間撹拌後、13.7%塩酸水溶液(896mL)を滴加し、撹拌後分液した。有機層にトルエン(565mL)を加え、2.5%炭酸水素ナトリウム水溶液(226g)で1回、水(226g)で1回洗浄した。有機層を濃縮し、以下の物性値を有する標題化合物(290g)を得た。
1H-NMR(CDCl3):δ 4.74、6.07-6.20、6.21-6.34、7.14-7.37、7.37-7.50。
HPLC保持時間(分):20.0(条件b)。
実施例7:6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロニコチノニトリル
実施例6で製造した化合物(285g)にトルエン(500g)を加え、0℃に冷却し、イソシアン酸クロロスルホニル(159g)を添加後に2時間撹拌した。反応溶液にN,N-ジメチルホルムアミド(142g)を滴加し、室温で16時間撹拌した。10℃に冷却し、水(854g)を加えた後、トルエン(2468g)を添加し撹拌した。分液後、有機層を1%炭酸水素ナトリウム/1%塩化ナトリウム水溶液(854g)、水(854g)で洗浄した。洗浄した有機層を濃縮し、ノルマルヘプタン(1168g)を加え、5℃に冷却し、1時間熟成後、生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで以下の物性値を有する標題化合物(286g)を得た。
1H-NMR(CDCl3):δ 4.78、6.25-6.42、7.13-7.42、7.60。
HPLC保持時間(分):18.9(条件b)。
実施例8:6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジンカルボキシイミダミド 塩酸塩 (1:1)
実施例7で製造した化合物(94.0g)にトルエン(940mL)と1,2-ジメトキシエタン(154mL)を加え、0℃まで冷却した。1.0mol/L リチウムヘキサメチルジシラジドのトルエン溶液(662mL)を添加し、10℃で2時間撹拌した。反応液を0℃に冷却した4.0mol/L 塩酸の酢酸エチル溶液(444mL)に滴加し、析出した結晶をろ過し、得た湿結晶を水(254mL)とアセトニトリル(28mL)の混液で洗浄し、生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで以下の物性値を有する標題化合物(270g)を得た。
1H-NMR(CDCl3):4.88、6.62-6.72、7.20-7.42、7.84-7.93,9.05。
HPLC保持時間(分):1.92(条件a)。
実施例9:6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジンカルボキシイミダミド
実施例8で製造した化合物(19.0g)のテトラヒドロフラン(95mL)溶液に7.4%水酸化ナトリウム水溶液(95mL)を5℃で加え、撹拌後分液し、有機層を得た。別容器に水(142mL)、イソプロパノール(47mL)、別途酢酸エチルで溶解後ノルマルヘプタンを添加して再結晶で取得した種晶(190mg)を加えて、撹拌した。内温20℃にて有機層を1時間かけて滴加し、その後0℃に冷却し、1時間撹拌した。生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで以下の物性値を有する標題化合物(14.9g)を得た。
1H-NMR(CDCl3):δ 4.80、6.29-6.71、7.20-7.42、7.74-7.91、8.09。
HPLC保持時間(分):1.92(条件a)。
実施例10:2-メチル-2-プロパニル 2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボキシラート
実施例5で製造した化合物(14.8g)および実施例9で製造した化合物(10.3g)のテトラヒドロフラン(222mL)溶液に室温下でトリエチルアミン(5.7g)を加え、21時間撹拌した。カルボニルジイミダゾール(11.4g)を加え、室温で18時間撹拌した。反応溶液を74mLまで濃縮し、メタノール(178mL)、水(30mL)を添加し、結晶を析出させた。1時間撹拌後、水(44mL)を添加した。生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで以下の物性値を有する標題化合物(13.1g)を得た。
1H-NMR(CDCl3):δ 1.28-1.85、2.21、2.40、2.55、2.97、3.24-3.51、4.77、5.76、6.02-6.26、6.35、7.01-7.51、7.65-7.91、8.07、9.74。
HPLC保持時間(分):4.46(条件a)。
実施例11:2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸
【0037】
【0038】
実施例10で製造した化合物(60g)およびギ酸(110g)のアセトニトリル(150mL)溶液を75℃に加熱し、7時間撹拌した。25℃に冷却し、アセトニトリル(60mL)を添加すると結晶が析出した。アセトニトリル(1140mL)を追加し、2.5時間撹拌した。生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで以下の物性値を有する標題化合物(52.4g)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6):δ 1.96-2.04、2.08、2.37、2.94-3.09、3.16-3.51、4.81、5.68、6.07、6.15、6.58、7.18-7.39、7.44、7.73-8.02、12.58、13.05。
HPLC保持時間(分):3.35(条件a)。
実施例12:2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-5-[(3S)-7-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル]-1H-イミダゾール-4-カルボン酸 (R)-4-キノリニル[(2S,4S,5R)-5-ビニル-1-アザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル]メタノール (1:1)
【0039】
【0040】
実施例11で製造した化合物(48g)、シンコニジン(20.5g)にテトラヒドロフラン(269mL)、アセトン(627mL)を加え、室温下で69時間撹拌した。析出した結晶を濾別し、得られた母液を144mLまで濃縮した。濃縮液にエタノール(336mL)を加え、240mLまで濃縮したのち、室温下でエタノール(1200mL)を添加した。懸濁液を2.5時間撹拌し、生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで以下の物性値を有する標題化合物(36.0g、97.2%e.e.)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6):δ 1.39-1.57、1.60-1.83、1.91-2.06、2.22-2.33、2.33-2.39、2.85-3.10、3.10-3.24、3.44、4.80、4.91-5.08、5.38、5.67、5.75-5.94、6.13、6.53-6.62、7.21-7.38、7.41-7.50、7.57、7.69-7.77、7.83、8.02、8.30、8.85。
HPLC保持時間(分):0.63、3.35(条件a)。
【0041】
実施例12で製造した化合物の光学純度は、以下の条件により分析したところ、その保持時間は6.44分であった。一方、その鏡像体の保持時間は4.47分であった。
分析条件:カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IH-3 3μm 4.6mm×250mm;移動相 メタノール/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸/ジエチルアミン=950/50/1/1;流速1.0mL/min。
実施例13:(3S)-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-7-インドリジニル 4-メチルベンゼンスルホナート
【0042】
【0043】
実施例12で製造した化合物(3.0g)にジクロロメタン(30mL)と13.7%塩酸水溶液(18mL)を加え、10分間撹拌した。分液し、有機層に炭酸水素ナトリウム(0.76g)と水(18mL)から調製した水溶液を加え、分液し、有機層を取得した。有機層に対して、エタノール(6mL)および炭酸水素ナトリウム(0.76g)と水(18mL)から調製した水溶液を加えた。次に1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート)(selectfluor(登録商標))(1.38g)と水(12mL)から調製した水溶液を加え、1時間撹拌した。13.7%塩酸水溶液(2.1mL)を添加し、分液後、水層を除去した。有機層に水(21mL)を添加し、洗浄後分液する操作を3回繰り返し、得られた有機層にN-メチルピロリドン(18mL)を加えた。有機層を18mLまで濃縮し、イソプロパノール(15mL)を加え、18mLまで濃縮した。40℃に加熱後、イソプロパノール(9mL)と水(6mL)を濃縮液に加え、別途ジクロロメタンで溶解後エタノールを添加して再結晶して得られた種晶(60mg)を添加した。1時間撹拌した後、懸濁液を室温に冷却した。水(12mL)を添加し、17時間撹拌し、生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで以下の物性値を有する標題化合物(1.6g)を得た。
1H-NMR(CDCl3):δ 2.46-2.52、2.81-2.95、3.07-3.20,3.26-3.46、4.63-4.88,5.73-5.85、5.90-6.00、6.12-6.22、6.31-6.43、7.16-7.41、7.79、7.97-8.20、10.67-10.96。
HPLC保持時間(分):3.87(条件a)。
実施例14:(3S)-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-7-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン
実施例13で製造した化合物(1.9g)、ビス(ピナコラト)ジボロン(856mg)、酢酸ナトリウム(827mg)、テトラヒドロフラン(13.4mL)を混合した後、酢酸パラジウム(12.6mg)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(53.6mg)を添加し、70℃に加熱後22時間撹拌し、標題化合物を得た。
HPLC保持時間(分):2.83(条件a)。
実施例15:(3S)-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-3-{2-[6-(ジベンジルアミノ)-2-フルオロ-3-ピリジニル]-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル}-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン
【0044】
【0045】
実施例14で製造した化合物に1-(2-ブロモ-4-クロロフェニル)-1H-テトラゾール(国際公開第2014/028318号パンフレットの実施例1に記載、CAS番号:1501463-24-6)(802mg)、リン酸水素二カリウム(2.45g)、テトラヒドロフラン(24.8mL)、水(9.55mL)を添加した後、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド(83.1mg)を加え、60℃で22時間撹拌した。反応液を室温に冷却し、10%塩化ナトリウム水溶液(10mL)を加え、分液した。有機層を濃縮後、酢酸エチル(5.7mL)を加えて再度濃縮し、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(中性シリカ、酢酸エチル=100)した。得られた溶液は濃縮後、アセトニトリル(7.6mL)を加えて、濃縮する操作を2回実施した。別途テトラヒドロフランに溶解後、アセトニトリルを添加して再結晶した種晶(1.9mg)を濃縮液に添加し、25℃で24時間、0℃にて24時間撹拌することで、生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで標題化合物(1.10g)を得た。
1H-NMR(CDCl3):δ 2.35-2.53、2.79-2.92、2.94-3.07、3.18-3.41、4.61-4.93、5.64、5.84、6.28-6.46、7.13-7.44、7.48-7.56、7.58、8.08、8.57、10.77-11.07。
HPLC保持時間(分):3.53(条件a)。
実施例16:(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロ-3-ピリジニル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン 二水和物
濃硫酸(11.4mL)に実施例15で製造した化合物(2.85g)を加え、室温下で1時間撹拌し、反応液とした。別容器にて、水(28.5mL)、硫酸アンモニウム(2.85g)、テトラヒドロフラン(28.5mL)を加え、撹拌した中に反応液とアンモニア水をpH調整しながら添加した。添加完了後、pH7に調節し、分液した。有機層を20%リン酸水素二ナトリウム(14.3mL)/20%リン酸二水素ナトリウム(14.3mL)で洗浄した後、活性炭(428mg)を添加し、濾別した。ろ液をアセトニトリルで溶媒置換し、アセトニトリル(14.3mL)溶液にした後、水(1.43mL)、別途アセトンに溶解後、水を添加して再結晶した種晶(2.85mg)を添加し、1時間撹拌後、水(27mL)を加え、生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで標題化合物(1.93g)を得た。
1H-NMR(CD3OD):δ 9.31、7.91、7.74-7.65、6.44、6.21、6.03、5.83、3.39-3.06、2.62-2.48。
HPLC保持時間(分):1.93(条件a)。
【0046】
化合物Xと3-ヒドロキシ安息香酸の共結晶((3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸 (1/1))は、実施例16で製造した化合物を用いて、特許文献2の実施例5に記載の条件に付すことにより、製造することができる。
本発明の製造方法によれば、化合物Yを用いることで、血液凝固第XIa因子阻害剤である化合物Xの製造中間体となるフッ素化イミダゾール化合物を、効率よく得ることができる。加えて、高光学純度の化合物Yを製造中間体として用いることで、光学純度の高い化合物Xを医薬品として提供することができる。