(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125472
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】スクリュープレスにおけるスクリュー軸トルク一定制御方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/125 20190101AFI20240911BHJP
B01D 29/17 20060101ALI20240911BHJP
B30B 9/14 20060101ALI20240911BHJP
C02F 11/14 20190101ALI20240911BHJP
【FI】
C02F11/125
B01D29/30 501
B30B9/14 Z ZAB
C02F11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033304
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】西原 康昭
【テーマコード(参考)】
4D059
4D116
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059BE04
4D059BE26
4D059BE55
4D059BE56
4D059BE62
4D059BJ03
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4D116QC34
4D116QC34A
4D116QC52
4D116VV12
(57)【要約】
【課題】 スクリュープレスの運転制御方法に関し、スクリュー軸のトルクを所定の範囲内となるようろ過室内へのエアブロー、脱水助材、および凝集剤の薬注率を制御するスクリュープレスにおけるスクリュー軸トルク一定制御方法を提供する。
【解決手段】 スクリュープレスのスクリュー軸のトルクをリアルタイムに計測し、計測したトルクに応じて脱水助材、エアブロー、薬注率の順に増加、あるいは薬注率、エアブロー、脱水助材の順に減少させることで、固定費の高い凝集剤の使用量およびランニングコストの高い高圧空気の使用量を優先的に抑えつつ、スクリュープレスの安定運転を継続させることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液汚泥に脱水助材と凝集剤を添加した調質汚泥を外筒スクリーン(5)の始端部に圧入供給し、回転するスクリュー軸(7)で外筒スクリーン(5)の後端側に搬送しながら外筒スクリーン(5)からろ液を分離するとともに、スクリュー軸(7)に設けた多数の微細孔(16)から圧縮空気をろ過室の脱水ケーキに供給するスクリュープレスのスクリュー軸トルク一定制御方法において、
予め幅を持たせたスクリュー軸(7)の基準トルク(T0)と、
脱水助材の基準供給量(A0)と、基準供給量の最大値である最大供給量(Amax),基準供給量の最小値である最小供給量(Amin),段階的に増減させる供給量幅(a)と、
圧縮空気の基準供給量(B0)と、基準供給量の最大値である最大供給量(Bmax),基準供給量の最小値である最小供給量(Bmin),段階的に増減させる供給量幅(b)と、
凝集剤の基準供給量(C0)と、基準供給量の最大値である最大供給量(Cmax),基準供給量の最小値である最小供給量(Cmin),段階的に増減させる供給量幅(c)と、
を設定して、
スクリュー軸(7)のトルク(T)を測定し、
トルクの計測値(T)が基準トルク(T0)の範囲内の時は、スクリュープレスの運転を継続し、
トルクの計測値(T)が予め設定した基準トルク(T0)より低い場合、脱水助材の供給量を供給量幅(a)だけ増加させ、スクリュー軸(7)のトルクが基準トルク(T0)の範囲内に上昇するまでこの操作を繰り返し、
脱水助材が最大供給量(Amax)となった時は、圧縮空気の供給量を供給量幅(b)だけ増加させ、スクリュー軸(7)のトルクが基準トルク(T0)の範囲内に上昇するまでこの操作を繰り返し、
圧縮空気が最大供給量(Bmax)となった時は、凝集剤の供給量を供給量幅(c)だけ増加させ、スクリュー軸(7)のトルクが基準トルク(T0)の範囲内に上昇するまでこの操作を繰り返すと共に、
トルクの計測値(T)が予め設定した基準トルク(T0)より高い場合、凝集剤の供給量を供給量幅(c)だけ減少させ、スクリュー軸(7)のトルクが基準トルク(T0)の範囲内に下降するまでこの操作を繰り返し、
凝集剤が最小供給量(Cmin)となった時は、圧縮空気の供給量を供給量幅(b)だけ減少させ、スクリュー軸(7)のトルクが基準トルク(T0)の範囲内に下降するまでこの操作を繰り返し、
圧縮空気が最小供給量(Bmin)となった時は、脱水助材の供給量を供給量幅(a)だけ減少させ、スクリュー軸(7)のトルクが基準トルク(T0)の範囲内に下降するまでこの操作を繰り返す
ことを特徴とするスクリュープレスにおけるスクリュー軸トルク一定制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュープレスの運転制御方法に関し、特に、外筒スクリーンの終端側から排出される脱水ケーキの含水率を一定にするために、ろ過室内へのエアブロー、脱水助材、および凝集剤の薬注率を調整してスクリュー軸のトルクを所定の範囲内に制御するスクリュープレスにおけるスクリュー軸トルク一定制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水、し尿、あるいは食品生産加工排水等の有機性汚泥を濃縮・脱水するスクリュープレスは一般に知られている。スクリュープレスは連続的に汚泥を濃縮・脱水する装置である。汚泥は季節・時間・天候等に応じて性状が変動するため、スクリュープレスにて安定的な性能維持のために、スクリュー軸の回転数、圧入圧力、凝集剤供給量等の制御方法を必要とする。
【0003】
特に、脱水ケーキの含水率と密接な関係のあるスクリュー軸トルクの指標に応じて制御を行う方法も公知であり、例えば、スクリュー軸のトルクを所定の範囲内となるよう圧入圧力と凝集剤の薬注率を制御するスクリュープレスにおけるスクリュー軸トルク一定制御方法は特許文献1に記載されている。
【0004】
また、脱水助剤(バイオマス)の添加量を増減させて凝集剤の使用量を削減するスクリュープレスの制御方法は特許文献2に記載されている。
【0005】
スクリュープレスの構造において、中空スクリュー軸に設けた多数の微細孔から圧縮空気をろ過室に送り、ケーキの水分を短時間に外部に排出するスクリュープレスは特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6489444号公報
【特許文献2】特許第5835088号公報
【特許文献3】特開昭57-4398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スクリュープレスで濃縮・脱水する下水、し尿、あるいは食品生産加工排水等の有機性汚泥は、季節や天候、時間等で刻々と性状が変動している。この変動に応じてスクリュープレスの運転あるいは汚泥の調質に対して様々な制御が行われていた。
先行文献1に記載のように、凝集剤の薬注率を調整する方法は公知であり、運転制御に多量の高価な凝集剤を使用することによるコストアップを抑制するため、先行文献2のように脱水助剤(バイオマス)の供給量制御を組み合わせることで凝集剤の使用量を低減できる。しかし、多量の脱水助剤(バイオマス)を供給するため排出するケーキ量が増加し、後段設備の負荷が上昇するという懸念があった。
【0008】
また、ろ過室内の脱水ケーキに圧縮空気を送って水分を除去する技術は、固形物の圧縮性が低く粒子が粗い無機系スラリーには有効であるが、圧縮性が高い有機系スラリーには効果が低い。
【0009】
本発明は、流入する下水汚泥の性状変動に対応し、スクリュー軸のトルクを所定の範囲内となるようろ過室内へのエアブロー、脱水助材、および凝集剤の薬注率を制御するスクリュープレスにおけるスクリュー軸トルク一定制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、原液汚泥に脱水助材と凝集剤を添加した調質汚泥を外筒スクリーンの始端部に圧入供給し、回転するスクリュー軸で外筒スクリーンの後端側に搬送しながら外筒スクリーンからろ液を分離するとともに、スクリュー軸に設けた多数の微細孔から圧縮空気をろ過室の脱水ケーキに供給するスクリュープレスのスクリュー軸トルク一定制御方法において、予め幅を持たせたスクリュー軸の基準トルクと、脱水助材の基準供給量と、基準供給量の最大値である最大供給量,基準供給量の最小値である最小供給量,段階的に増減させる供給量幅と、圧縮空気の基準供給量と、基準供給量の最大値である最大供給量,基準供給量の最小値である最小供給量),段階的に増減させる供給量幅と、凝集剤の基準供給量と、基準供給量の最大値である最大供給量,基準供給量の最小値である最小供給量,段階的に増減させる供給量幅と、を設定して、スクリュー軸のトルクを測定し、トルクの計測値が基準トルクの範囲内の時は、スクリュープレスの運転を継続し、トルクの計測値が予め設定した基準トルクより低い場合、脱水助材の供給量を供給量幅だけ増加させ、スクリュー軸のトルクが基準トルクの範囲内に上昇するまでこの操作を繰り返し、脱水助材が最大供給量となった時は、圧縮空気の供給量を供給量幅だけ増加させ、スクリュー軸のトルクが基準トルクの範囲内に上昇するまでこの操作を繰り返し、圧縮空気が最大供給量となった時は、凝集剤の供給量を供給量幅だけ増加させ、スクリュー軸のトルクが基準トルクの範囲内に上昇するまでこの操作を繰り返すと共に、トルクの計測値が予め設定した基準トルクより高い場合、凝集剤の供給量を供給量幅だけ減少させ、スクリュー軸のトルクが基準トルクの範囲内に下降するまでこの操作を繰り返し、凝集剤が最小供給量となった時は、圧縮空気の供給量を供給量幅だけ減少させ、スクリュー軸のトルクが基準トルクの範囲内に下降するまでこの操作を繰り返し、圧縮空気が最小供給量となった時は、脱水助材の供給量を供給量幅だけ減少させ、スクリュー軸のトルクが基準トルクの範囲内に下降するまでこの操作を繰り返すもので、スクリュー軸のトルクを一定に制御して汚泥の性状変動に対して安定した脱水ケーキを排出できるとともに、費用面で運転管理に貢献できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、スクリュープレスのスクリュー軸のトルクを一定に制御するもので、トルクを上昇させる際は、固定費の高い凝集剤の使用量およびランニングコストの高い高圧空気の使用量を優先的に抑えるとともに、トルクを下降させる際は、固定費の高い凝集剤の使用量を優先的に減少させ、次にランニングコストの高い高圧空気の使用量を優先的に減少させる。スクリュープレスの急激な運転変化がなく、圧縮性が低いスラリーに対しても常時ろ過室内の汚泥性状を最適な状態で脱水運転できるとともに、費用面で運転管理に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明に係るスクリュープレスの縦断面図である。
【
図3】同じく、運転制御システムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1はスクリュープレスの縦断面図であって、スクリュープレス1は架台2の前後のフレーム3,4間に、周部にろ過面を有する外筒スクリーン5にスクリュー羽根6を巻き掛けたスクリュー軸7を内設している。外筒スクリーン5の内部に配設したスクリュー軸7は始端側から終端側に向かってテーパー状にその径を増大させ、外筒スクリーン5とスクリュー軸7を延伸方向に向かって相対的な間隔を減少させるようにしている。そして、スクリュー軸7の前端部には汚泥の供給管8が連結しており、供給管8は外筒スクリーン5の始端側に開孔したスクリュー軸7の供給孔9に連通させている。スクリュー軸7の後端部にはスクリュー駆動軸10が連結しており、スクリュー駆動軸10には駆動用のスプロケット11を嵌着している。このスプロケット11をスクリュー駆動機12で駆動させ、スクリュー軸7を回転させる。供給孔9から供給された汚泥は、スクリュー羽根6によって始端側から終端側に向かって移送され、外筒スクリーン5からろ液を分離させながら濃縮・脱水するようになっている。必要に応じて外筒スクリーン5は回動自在としても良い。
【0014】
そして、脱水処理を行った直後の汚泥(脱水ケーキ)を外部へ排出する脱水ケーキ排出部13には、排出される脱水ケーキに背圧を作用させるためのテーパーコーン状のプレッサー(押圧板)14が備えられている。このプレッサー14は、エアーシリンダあるいは油圧シリンダ等のごとき流体圧シリンダ15によって軸方向(
図1において左右方向)へ往復動自在に設けられている。
【0015】
スクリュー軸7は内部が中空に構成されており、内部とろ過室とを連通する多数の微細孔16を有している。ろ過処理中にスクリュー軸7内部に圧縮空気を供給し、微細孔16からろ過室内へ圧縮空気を放出する。ろ過室内の脱水ケーキの間隙を通過する際に水分を伴送し、外筒スクリーン5から外部へ排出する。スクリュー軸7に設ける微細孔の位置は、脱水ケーキの固形分量が増加する後段が望ましい。
【0016】
スクリュープレス1は凝集スラリーを連続的に脱水処理できるもので、ベルト型脱水機や遠心脱水機等の従来の連続式脱水機と比較して、サイズが小さくコンパクトであり、電動機容量も小さく省電力である。また、スクリュープレス1はろ過室内を最適圧力に維持することで、安定的なろ過作用を発揮でき、最適含水率で連続脱水を行うことができる。
【0017】
図2はこの発明に係るスクリュープレスにおけるスクリュー軸トルク一定制御方法の概略構成図であり、その運転制御システムについて説明する。
原液供給管31と脱水助材供給管32を原液調整槽33に連結している。原液調整槽33には原液供給管31から供給する汚泥等の処理原液と、脱水助材供給管32から供給する脱水助材とを攪拌混合するための攪拌装置34を設けている。
【0018】
脱水助材は粉砕して脱水助材貯留槽35に貯留しており、必要に応じて供給装置36で脱水助材供給管32を介して原液調整槽33に供給する。なお、脱水助材を後述する凝集混和槽39に供給してもよい。供給装置36は設備や脱水助材に応じてベルト式、スクリュー式等適宜選択してもよい。
【0019】
本実施例では、脱水助材として未利用バイオマスを用いている。未利用バイオマスとは、そのままの状態では利用価値が低く、通常は廃棄物として処分されているものである。具体的には、木質系の籾殻、間伐材等や、食品系の茶粕、植物残渣等の植物系廃棄物がある。
【0020】
また、添加するバイオマスによっては、原液調整槽33に供給する前に、原液に馴染みやすい形状・性状となるよう前処理を施してもよい。特に硬度の高いバイオマスの場合、膨張軟化処理を施した後、さらに綿状処理を施してもよい。バイオマスの植物繊維を細分化することにより、繊維が原液に馴染みやすくなり、真の含水率を低減することが可能である。
【0021】
バイオマスの比重は原液より軽いため、原液調整槽33にて原液とバイオマスを攪拌混合する。原液調整槽33内でバイオマスと原液は均等に混合された調質原液となる。攪拌装置34はバイオマスと原液を均等に攪拌混合するものであれば何でもよく、本実施例では撹拌翼を用いている。
【0022】
原液調整槽33で脱水助材と混合した調質原液は、圧入ポンプ37により調質原液供給管38を介して凝集混和槽39に圧送される。圧入ポンプ37の後段には計測器40(流量計、濃度計)を配設している。調質原液供給管38には凝集剤供給管41が連結されており、凝集剤溶解槽42から凝集剤供給ポンプ43により凝集剤(高分子凝集剤、無機凝集剤)が供給される。凝集剤供給ポンプ43の後段には凝集剤の供給量を計測するための流量計44を配設している。なお、凝集剤供給管41は凝集混和槽39に接続してもよい。
【0023】
凝集混和槽39には調質原液と凝集剤とを攪拌混合するための攪拌装置45を設けている。調質原液と凝集剤は凝集混和槽39で撹拌混合され、強力なフロックを生成する。脱水助材が凝集フロック同士を繋いで強力なフロックとなった凝集スラリーは、凝集スラリー供給管46を経てスクリュープレス1に圧入供給される。凝集スラリー供給管46にはスクリュープレス1に圧入供給される凝集スラリーの圧入圧力を計測するための圧力計47を配設している。
【0024】
スクリュー軸7には圧縮空気供給管48を連結しており、圧縮空気供給源49より調整弁50および流量計51を介してスクリュー軸7に圧縮空気を供給している。スクリュー軸7に供給された圧縮空気は微細孔16を通じてろ過室に侵入し、脱水ケーキ中の水分を外筒スクリーン5から外部に排出する。
【0025】
スクリュープレス1の駆動軸系(例えばスクリュー駆動軸10)にはトルク計52が配設してあり、原液性状の変動により増減するスクリュー軸7のトルクを計測している。このトルク計52で計測したトルクTと予め設定している基準トルクT0とを比較判断して、基準トルクT0となるようにスクリュー軸7への負荷を調整している。
【0026】
具体的には、供給装置36、凝集剤供給ポンプ43あるいは調整弁50に指令を与え、それぞれ脱水助材供給量、凝集剤供給量あるいは圧縮空気供給量を増減してトルク一定制御運転を行うようにしている。実際には、トルク計52で計測した検知信号を制御装置53に送信し、制御装置53で比較判断し、制御装置53から供給装置36、凝集剤供給ポンプ43あるいは調整弁50に指令を与えている。
【0027】
なお、スクリュープレス1を安定して運転するために、圧入圧力を一定に制御する方法を同時に行ってもよい。圧入圧力一定制御は、凝集スラリー供給管46に配設している圧力計47で計測した圧力に応じて、スクリュー軸7の回転数を調整するものである。
【0028】
本発明に係る運転制御方法は、スクリュープレス1を安定して運転するために、スクリュープレス1のトルクを一定に制御することを基本としている。そこで、トルクを一定にするために、スクリュープレス1に供給される脱水助材供給量、凝集剤供給量あるいは圧縮空気供給量を制御するものである。
【0029】
スクリュープレス1の運転が開始されると、スクリュー軸7のトルクは、リアルタイムにトルク計52で計測されて制御装置に送られる。
【0030】
一般的には、流入原液の性状が変動し、処理原液の固形物量が増加(減少)すると、スクリュープレス1に供給する圧入圧力が大きく(小さく)なり、その負荷変動に応じてスクリュー軸7のトルクも大きく(小さく)なる。
【0031】
そこで、本発明の制御装置では、トルク計52の計測値Tをあらかじめ設定した基準トルクT0と比較判断して、計測値Tが基準トルクT0から外れていた場合、供給装置36、凝集剤供給ポンプ43あるいは調整弁50に指令を与えて脱水助材供給量、凝集剤供給量あるいは圧縮空気供給量を制御し、スクリュープレス1への運転負荷を調整する。このような負荷調整により、容易にスクリュープレス1のトルクを基準トルクT0に維持することができる。
基準トルクT0は、ある程度の幅を持たせて設定することができ、トルクの計測値Tがその設定幅内にある時は、現状を維持した状態で通常運転を継続する。
【0032】
より詳しく説明すると、トルクの計測値Tが基準トルクT0より低い場合には、制御装置53は供給装置36に指令を与え、凝集スラリーの固形物量を増加させる。固形物量が増加した調質原液をスクリュープレス1に供給することにより、スクリュープレス1のトルクを上昇させることができる。
【0033】
また、脱水助材の供給量を増加させてもトルクの計測値Tが基準トルクT0に復帰しない場合は、制御装置53から調整弁50に指令を与え、圧縮空気の供給量を増加させる。ろ過室を搬送させる脱水ケーキに噴射する圧縮空気量を増加させ、脱水ケーキの含水率を低下させることにより、スクリュープレス1のトルクを上昇させることができる。
【0034】
さらに、圧縮空気の供給量を増加させてもトルクの計測値Tが基準トルクT0に復帰しない場合は、制御装置53から凝集剤供給ポンプ43に指令を与え、凝集剤の供給量を増加させる。凝集フロックの強度が強まった調質原液をスクリュープレス1に供給することにより、スクリュープレス1のトルクを上昇させることができる。
【0035】
一方、トルクの計測値Tが基準トルクT0より高い場合には、制御装置53は凝集剤供給ポンプ43に指令を与え、凝集剤の供給量を減少させる。凝集フロックの強度が弱まった調質原液をスクリュープレス1に供給することにより、スクリュープレス1のトルクを下降させることができる。
【0036】
また、凝集剤の供給量を減少させてもトルクの計測値Tが基準トルクT0に復帰しない場合は、制御装置53から調整弁50に指令を与え、圧縮空気の供給量を減少させる。ろ過室を搬送させる脱水ケーキに噴射する圧縮空気量を減少させ、脱水ケーキの含水率の低下を抑えることにより、スクリュープレス1のトルクを下降させることができる。
【0037】
さらに、圧縮空気の供給量を減少させてもトルクの計測値Tが基準トルクT0に復帰しない場合は、制御装置53から供給装置36に指令を与え、凝集スラリーの固形物量を減少させる。固形物量が減少した調質原液をスクリュープレス1に供給することにより、スクリュープレス1のトルクを下降させることができる。
【0038】
トルクを上昇させる際は、固定費の高い凝集剤の使用量およびランニングコストの高い高圧空気の使用量を優先的に抑えるとともに、トルクを下降させる際は、固定費の高い凝集剤の使用量を優先的に減少させ、次にランニングコストの高い高圧空気の使用量を優先的に減少させる
このように制御することで、スクリュープレス1のトルクを容易に基準値内に制御することができ、スクリュープレスの安定運転を継続させることができるとともに、費用面で運転管理に貢献できる。
【0039】
一旦、供給装置36、凝集剤供給ポンプ43あるいは調整弁50の供給量を変更すると、一定時間経過後に再度トルクを測定し、計測値Tが基準トルクT0内に復帰するまで上記動作を繰り返す。
【0040】
脱水助材供給量、凝集剤供給量あるいは圧縮空気供給量を段階的に増減する供給量幅は予め設定しておく。それぞれの上限、下限を設定し、上限あるいは下限に達すると警報を発するか、あるいは運転を自動停止して調査ができるようにしてもよい。
【実施例0041】
図3はこの実施の形態に係る運転制御システムのフローチャートである。
A.初期設定
スクリュー軸7の基準トルクT0(最大基準トルクTmax,最小基準トルクTmin)を設定する。本実施例では、最大基準トルクTmaxと最小基準トルクTminの間を基準トルクT0として幅を持たせている。
脱水助材の基準供給量A0,最大供給量Amax,最小供給量Amin,段階的に増減させる供給量幅aを設定する。
圧縮空気の基準供給量B0,最大供給量Bmax,最小供給量Bmin,段階的に増減させる供給量幅bを設定する。
凝集剤の基準供給量C0,最大供給量Cmax,最小供給量Cmin,段階的に増減させる供給量幅cを設定する。
【0042】
B.運転開始
上記基準値T0,A0,B0,C0にて各機器を運転する。
【0043】
C.トルク比較
スクリュープレス1のスクリュー軸7のトルクを測定し、基準トルクT0と比較する。
トルクの計測値Tが基準トルクT0内にある場合は、各機器の運転を現状の状態で維持する。
計測値Tが基準トルクT0より小さい場合は、フローチャートのDへ移行して、スクリュープレス1に供給する脱水助材供給量、凝集剤供給量あるいは圧縮空気供給量を段階的に増加させる制御を行う。
計測値Tが基準トルクT0より大きい場合は、フローチャートのLへ移行して凝集剤供給量、圧縮空気供給量あるいは脱水助材供給量を段階的に減少させる制御を行う。
【0044】
D.脱水助材の最大供給量比較
上記フローチャートCにおいて、トルクの計測値Tが基準トルクT0より小さい場合は、脱水助材の供給量を増加させるべく、段階的に増加させる供給量幅aを加味した供給量Aと最大供給量Amaxとを比較する。
変更後の脱水助材の供給量Aが最大供給量Amaxより小さい場合は、フローチャートのEへ移行して脱水助材の供給量を段階的に増加させる制御を行う。
変更後の脱水助材の供給量Aが最大供給量Amax以上となる場合は、フローチャートのFへ移行して、圧縮空気の供給量を段階的に増加させる制御を行う。
【0045】
E.脱水助材(増)
上記フローチャートDにおいて、変更後の脱水助材の供給量Aが最大供給量Amaxより小さい場合は、供給装置36を調整し、予め設定した供給量幅aだけ脱水助材の供給量を増大させる制御を行う。
【0046】
F.圧縮空気の最大供給量比較
上記フローチャートDにおいて、脱水助材の供給量Aが最大供給量Amax以上となる場合は、圧縮空気を増加させるべく、段階的に増加させる供給量幅bを加味した供給量Bと最大供給量Bmaxとを比較する。
変更後の圧縮空気の供給量Bが最大供給量Bmaxより小さい場合は、フローチャートのGへ移行して圧縮空気の供給量を段階的に増加させる制御を行う。
変更後の圧縮空気の供給量Bが最大供給量Bmax以上となる場合は、フローチャートのHへ移行して、凝集剤の供給量を段階的に増加させる制御を行う。
【0047】
G.圧縮空気(増)
上記フローチャートFにおいて、変更後の圧縮空気の供給量Bが最大供給量Bmaxより小さい場合は、調整弁50を調整し、予め設定した供給量幅bだけ圧縮空気の供給量を増大させる制御を行う。
【0048】
H.凝集剤の最大供給量比較
上記フローチャートFにおいて、圧縮空気の供給量Bが最大供給量Bmax以上となる場合は、凝集剤を増加させるべく、段階的に増加させる供給量幅cを加味した供給量Cと最大供給量Cmaxとを比較する。
変更後の凝集剤の供給量Cが最大供給量Cmaxより小さい場合は、フローチャートのJへ移行して凝集剤の供給量を段階的に増加させる制御を行う。
変更後の凝集剤の供給量Cが最大供給量Cmax以上となる場合は、フローチャートのKへ移行して、警報を発するか、あるいはスクリュープレス1の運転を自動停止させる制御を行う。
【0049】
J.凝集剤(増)
上記フローチャートHにおいて、変更後の凝集剤の供給量Cが最大供給量Cmaxより小さい場合は、凝集剤供給ポンプ43を調整し、予め設定した供給量幅cだけ凝集剤の供給量を増大させる制御を行う。
【0050】
K.警報・運転停止
一定時間経過後に再度トルクを測定し、計測値Tが基準トルクT0内に復帰するまで上記動作を繰り返す。凝集剤が最大供給量に達してもトルクの計測値Tが基準値T0内に復帰しない場合は、警報を発するか、あるいはスクリュープレス1の運転を自動停止する。
【0051】
L.凝集剤の最小供給量比較
上記フローチャートCにおいて、トルクの計測値Tが基準トルクT0より大きい場合は、凝集剤の供給量を減少させるべく、段階的に減少させる供給量幅cを加味した供給量Cと最小供給量Cminとを比較する。
変更後の凝集剤の供給量Cが最小供給量Cminより大きい場合は、フローチャートのMへ移行して凝集剤の供給量を段階的に減少させる制御を行う。
変更後の凝集剤の供給量Cが最小供給量Cmin以下となる場合は、フローチャートのNへ移行して、圧縮空気の供給量を段階的に減少させる制御を行う。
【0052】
M.凝集剤(減)
上記フローチャートLにおいて、変更後の凝集剤の供給量Cが最大供給量Cminより大きい場合は、凝集剤供給ポンプ43を調整し、予め設定した供給量幅cだけ凝集剤の供給量を減少させる制御を行う。
【0053】
N.圧縮空気の最小供給量比較
上記フローチャートLにおいて、凝集剤の供給量Cが最小供給量Cmin以下となる場合は、圧縮空気を減少させるべく、段階的に減少させる供給量幅bを加味した供給量Bと最小供給量Bminとを比較する。
変更後の圧縮空気の供給量Bが最小供給量Bminより大きい場合は、フローチャートのPへ移行して圧縮空気の供給量を段階的に減少させる制御を行う。
変更後の圧縮空気の供給量Bが最小供給量Bmin以下となる場合は、フローチャートのQへ移行して、脱水助材の供給量を段階的に減少させる制御を行う。
【0054】
P.圧縮空気(減)
上記フローチャートNにおいて、変更後の圧縮空気の供給量Bが最小供給量Bminより大きい場合は、調整弁50を調整し、予め設定した供給量幅bだけ圧縮空気の供給量を増大させる制御を行う。
【0055】
Q.脱水助材の最小供給量比較
上記フローチャートNにおいて、圧縮空気の供給量Bが最小供給量Bmin以下となる場合は、脱水助材の供給量を減少させるべく、段階的に減少させる供給量幅aを加味した供給量Aと最小供給量Aminとを比較する。
変更後の脱水助材の供給量Aが最小供給量Aminより小さい場合は、フローチャートのRへ移行して脱水助材の供給量を段階的に減少させる制御を行う。
変更後の脱水助材の供給量Aが最小供給量Amin以下となる場合は、フローチャートのSへ移行して、警報を発するか、あるいはスクリュープレス1の運転を自動停止させる制御を行う。
【0056】
R.脱水助材(減)
上記フローチャートQにおいて、変更後の脱水助材の供給量Aが最小供給量Aminより大きい場合は、供給装置36を調整し、予め設定した供給量幅aだけ脱水助材の供給量を減少させる制御を行う。
【0057】
S.警報・運転停止
一定時間経過後に再度トルクを測定し、計測値Tが基準トルクT0内に復帰するまで上記動作を繰り返す。脱水助材が最小供給量に達してもトルクの計測値Tが基準値T0内に復帰しない場合は、警報を発するか、あるいはスクリュープレス1の運転を自動停止する。
【0058】
なお、脱水助材、凝集剤あるいは圧縮空気の供給量を変更すると、一定時間経過後に再度圧入圧力を測定し、計測値Tが基準トルクT0内に復帰するまで上記動作を繰り返す。
【0059】
本実施例では、トルク計52によりスクリュー軸7のトルクを計測しているが、スクリュー軸7のトルクを計測する際の電流値に応じて制御することも本実施例と同様である。
本発明のスクリュープレスにおけるスクリュー軸トルク一定制御方法は、スクリュー軸への負荷を調整し、トルクを一定に制御することで安定した脱水性能を維持できる。したがって、処理原液の性状が季節や天候等で刻々と変動する下水汚泥を固液分離する各種固液分離装置、特に連続式のスクリュープレスに適用できる。