(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125473
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】連続式固液分離装置における含水率一定制御方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/14 20190101AFI20240911BHJP
【FI】
C02F11/14 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033305
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】西原 康昭
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059BE04
4D059BE10
4D059BE15
4D059BE26
4D059BE55
4D059BE56
4D059BE62
4D059BJ03
4D059CB06
4D059CB07
4D059DB32
4D059DB33
4D059DB34
4D059DB36
4D059EA01
4D059EB01
4D059EB11
(57)【要約】
【課題】 固液分離装置の運転制御方法に関し、脱水ケーキの含水率を所定の範囲内となるようろ過室内へのエアブロー、脱水助材、および凝集剤の薬注率を制御する連続式固液分離装置における含水率一定制御方法を提供する。
【解決手段】 固液分離装から排出される脱水ケーキの含水率をリアルタイムに計測し、計測した含水率に応じて脱水助材、エアブロー、薬注率の順に増加、あるいは薬注率、エアブロー、脱水助材の順に減少させることで、固定費の高い凝集剤の使用量およびランニングコストの高い高圧空気の使用量を優先的に抑えつつ、連続式固液分離装の安定運転を継続させることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液汚泥に脱水助材と凝集剤を添加した調質汚泥を供給してろ液を分離するとともに、固液分離装置内の脱水ケーキに圧縮空気を噴射して含水率を調整する連続式固液分離装置において、
予め幅を持たせた脱水ケーキの基準含水率(W0)と、
脱水助材の基準供給量(A0)と、基準供給量の最大値である最大供給量(Amax),基準供給量の最小値である最小供給量(Amin),段階的に増減させる供給量幅(a)と、
圧縮空気の基準供給量(B0)と、基準供給量の最大値である最大供給量(Bmax),基準供給量の最小値である最小供給量(Bmin),段階的に増減させる供給量幅(b)と、
凝集剤の基準供給量(C0)と、基準供給量の最大値である最大供給量(Cmax),基準供給量の最小値である最小供給量(Cmin),段階的に増減させる供給量幅(c)と、
を設定して、
脱水ケーキの含水率(W)を測定し、
含水率の計測値(W)が基準含水率(W0)の範囲内の時は、固液分離装置の運転を継続し、
含水率の計測値(W)が予め設定した基準含水率(W0)より高い場合、脱水助材の供給量を供給量幅(a)だけ増加させ、脱水ケーキの含水率が基準含水率(W0)の範囲内に下降するまでこの操作を繰り返し、
脱水助材が最大供給量(Amax)となった時は、圧縮空気の供給量を供給量幅(b)だけ増加させ、脱水ケーキの含水率が基準含水率(W0)の範囲内に下降するまでこの操作を繰り返し、
圧縮空気が最大供給量(Bmax)となった時は、凝集剤の供給量を供給量幅(c)だけ増加させ、脱水ケーキの含水率が基準含水率(W0)の範囲内に下降するまでこの操作を繰り返すと共に、
含水率の計測値(W)が予め設定した基準含水率(W0)より低い場合、凝集剤の供給量を供給量幅(c)だけ減少させ、脱水ケーキの含水率が基準含水率(W0)の範囲内に上昇するまでこの操作を繰り返し、
凝集剤が最小供給量(Cmin)となった時は、圧縮空気の供給量を供給量幅(b)だけ減少させ、脱水ケーキの含水率が基準含水率(W0)の範囲内に上昇するまでこの操作を繰り返し、
圧縮空気が最小供給量(Bmin)となった時は、脱水助材の供給量を供給量幅(a)だけ減少させ、脱水ケーキの含水率が基準含水率(W0)の範囲内に上昇するまでこの操作を繰り返す
ことを特徴とする連続式固液分離装置における含水率一定制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続式固液分離装置の運転制御方法に関し、特に、ろ過室内へのエアブロー、脱水助材、および凝集剤の薬注率を調整して排出される脱水ケーキの含水率を一定に制御する連続式固液分離装置における含水率一定制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水、し尿、あるいは食品生産加工排水等の有機性汚泥を連続的に濃縮・脱水する固液分離装置として、例えば、スクリュープレスやベルトプレスが一般に知られている。固液分離装置に供給される汚泥は季節・時間・天候等に応じて性状が変動するため、安定的に脱水ケーキを生成するために、固液分離装置の各種制御(搬送速度、圧入圧力、凝集剤供給量等)を必要とする。
【0003】
特に、脱水助剤(バイオマス)の添加量を増減させて凝集剤の使用量を削減するスクリュープレスの制御方法は特許文献1に記載されている。
【0004】
また、スクリュープレスの構造において、中空スクリュー軸に設けた多数の微細孔から圧縮空気をろ過室に送り、ケーキの水分を短時間に外部に排出するスクリュープレスは特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5835088号公報
【特許文献2】特開昭57-4398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
下水、し尿、あるいは食品生産加工排水等の有機性汚泥は、季節や天候、時間等で刻々と性状が変動しており、固液分離装置の運転あるいは汚泥の調質に対して様々な制御が行われていた。一般的には凝集剤の添加量を調整して汚泥の調質を行っているが、運転制御に多量の高価な凝集剤を使用することによるコストアップを抑制するため、先行文献2のように脱水助剤(バイオマス)の供給量制御を組み合わせる技術もある。しかし、多量の脱水助剤(バイオマス)を供給するため排出するケーキ量が増加し、後段設備の負荷が上昇するという懸念があった。
【0007】
また、ろ過室内の脱水ケーキに圧縮空気を送って水分を除去する技術は、固形物の圧縮性が低く粒子が粗い無機系スラリーには有効であるが、圧縮性が高い有機系スラリーには効果が低い。
【0008】
本発明は、流入する下水汚泥の性状変動に対応し、脱水ケーキの含水率を所定の範囲内となるようろ過室内へのエアブロー、脱水助材、および凝集剤の薬注率を制御する連続式固液分離装置における含水率一定制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、原液汚泥に脱水助材と凝集剤を添加した調質汚泥を供給してろ液を分離するとともに、固液分離装置内の脱水ケーキに圧縮空気を噴射して含水率を調整する連続式固液分離装置において、予め幅を持たせた脱水ケーキの基準含水率と、脱水助材の基準供給量と、基準供給量の最大値である最大供給量,基準供給量の最小値である最小供給量,段階的に増減させる供給量幅と、圧縮空気の基準供給量と、基準供給量の最大値である最大供給量,基準供給量の最小値である最小供給量,段階的に増減させる供給量幅と、凝集剤の基準供給量と、基準供給量の最大値である最大供給量,基準供給量の最小値である最小供給量,段階的に増減させる供給量幅と、を設定して、脱水ケーキの含水率を測定し、含水率の計測値が基準含水率の範囲内の時は、固液分離装置の運転を継続し、含水率の計測値が予め設定した基準含水率より高い場合、脱水助材の供給量を供給量幅だけ増加させ、脱水ケーキの含水率が基準含水率の範囲内に下降するまでこの操作を繰り返し、脱水助材が最大供給量となった時は、圧縮空気の供給量を供給量幅だけ増加させ、脱水ケーキの含水率が基準含水率の範囲内に下降するまでこの操作を繰り返し、圧縮空気が最大供給量となった時は、凝集剤の供給量を供給量幅だけ増加させ、脱水ケーキの含水率が基準含水率の範囲内に下降するまでこの操作を繰り返すと共に、含水率の計測値が予め設定した基準含水率より低い場合、凝集剤の供給量を供給量幅だけ減少させ、脱水ケーキの含水率が基準含水率の範囲内に上昇するまでこの操作を繰り返し、凝集剤が最小供給量となった時は、圧縮空気の供給量を供給量幅だけ減少させ、脱水ケーキの含水率が基準含水率の範囲内に上昇するまでこの操作を繰り返し、圧縮空気が最小供給量となった時は、脱水助材の供給量を供給量幅だけ減少させ、脱水ケーキの含水率が基準含水率の範囲内に上昇するまでこの操作を繰り返すもので、脱水ケーキの含水率を一定に制御して汚泥の性状変動に対して安定した脱水ケーキを排出できるとともに、費用面で運転管理に貢献できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、連続式固液分離装置から排出される脱水ケーキの含水率を一定に制御するもので、含水率を上昇させる際は、固定費の高い凝集剤の使用量およびランニングコストの高い高圧空気の使用量を優先的に抑えるとともに、含水率を下降させる際は、固定費の高い凝集剤の使用量を優先的に減少させ、次にランニングコストの高い高圧空気の使用量を優先的に減少させる。固液分離装置の急激な運転変化がなく、圧縮性が低いスラリーに対しても常時ろ過室内の汚泥性状を最適な状態で脱水運転できるとともに、費用面で運転管理に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明に係るスクリュープレスの概略説明図である。
【
図3】同じく、固液分離装置の運転制御システムである。
【
図4】同じく、運転制御システムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1はスクリュープレスの概略説明図であって、円筒状のスクリーン2に螺旋状のスクリュー羽根3を巻きかけたスクリュー軸4を内挿し、ろ過室5を形成している。スクリーン2の始端部に供給された原液汚泥はスクリュー軸4により搬送されつつ、液分がスクリーン2を透過して機外へ排出される。スクリーン2の終端部からは含水率の低下した脱水ケーキが排出される。
スクリュー軸4は内部が中空に構成されており、内部とろ過室5とを連通する多数の微細孔6を有している。ろ過処理中にスクリュー軸4内部に圧縮空気を供給し、微細孔6からろ過室5内へ圧縮空気を放出する。ろ過室5内の脱水ケーキの間隙を通過する際に水分を伴送し、スクリーン2から外部へ排出する。スクリュー軸4に設ける微細孔6の位置は、脱水ケーキの固形分量が増加する後段が望ましい。
【0013】
図2はベルトプレスの概略説明図であって、上下一対のろ布9,9と、一対のろ布9,9を無端状に張設する複数のロール10…とを備えている。一対のろ布9,9間に原液汚泥を供給し、挟持した状態で各ロール10を回動しつつ、液分がろ布9を透過して機外へ排出される。排出部では一対のろ布9,9が開いて脱水ケーキが排出される。
排出部の前段に圧縮空気を噴射するノズル11をろ布9に対向して備えており、ろ布9,9間に挟持された脱水ケーキの間隙を圧縮空気が通過する際に水分を伴送して外部へ排出する。
【0014】
スクリュープレスやベルトプレスは凝集スラリーを連続的に脱水処理できるもので、フィルタープレス等の従来のバッチ式脱水機と比較して、サイズが小さくコンパクトであり、電動機容量も小さく省電力である。また、連続式固液分離装置は搬送速度を最適に調整することで、安定的なろ過作用を発揮でき、最適含水率で連続脱水を行うことができる。
なお、ろ過室に圧縮空気を供給して脱水ケーキの含水率を低下できる連続式固液分離装置であれば、スクリュープレスやベルトプレス以外でも適用可能である。
【0015】
図3はこの発明に係る連続式固液分離装置における含水率一定制御方法の概略構成図であり、その運転制御システムについて説明する。
原液供給管31と脱水助材供給管32を原液調整槽33に連結している。原液調整槽33には原液供給管31から供給する汚泥等の処理原液と、脱水助材供給管32から供給する脱水助材とを攪拌混合するための攪拌装置34を設けている。
【0016】
脱水助材は粉砕して脱水助材貯留槽35に貯留しており、必要に応じて供給装置36で脱水助材供給管32を介して原液調整槽33に供給する。なお、脱水助材を後述する凝集混和槽39に供給してもよい。供給装置36は設備や脱水助材に応じてベルト式、スクリュー式等適宜選択してもよい。
【0017】
本実施例では、脱水助材として未利用バイオマスを用いている。未利用バイオマスとは、そのままの状態では利用価値が低く、通常は廃棄物として処分されているものである。具体的には、木質系の籾殻、間伐材等や、食品系の茶粕、植物残渣等の植物系廃棄物がある。
【0018】
また、添加するバイオマスによっては、原液調整槽33に供給する前に、原液に馴染みやすい形状・性状となるよう前処理を施してもよい。特に硬度の高いバイオマスの場合、膨張軟化処理を施した後、さらに綿状処理を施してもよい。バイオマスの植物繊維を細分化することにより、繊維が原液に馴染みやすくなり、真の含水率を低減することが可能である。
【0019】
バイオマスの比重は原液より軽いため、原液調整槽33にて原液とバイオマスを攪拌混合する。原液調整槽33内でバイオマスと原液は均等に混合された調質原液となる。攪拌装置34はバイオマスと原液を均等に攪拌混合するものであれば何でもよく、本実施例では撹拌翼を用いている。
【0020】
原液調整槽33で脱水助材と混合した調質原液は、圧入ポンプ37により調質原液供給管38を介して凝集混和槽39に圧送される。圧入ポンプ37の後段には計測器40(流量計、濃度計)を配設している。調質原液供給管38には凝集剤供給管41が連結されており、凝集剤溶解槽42から凝集剤供給ポンプ43により凝集剤(高分子凝集剤、無機凝集剤)が供給される。凝集剤供給ポンプ43の後段には凝集剤の供給量を計測するための流量計44を配設している。なお、凝集剤供給管41は凝集混和槽39に接続してもよい。
【0021】
凝集混和槽39には調質原液と凝集剤とを攪拌混合するための攪拌装置45を設けている。調質原液と凝集剤は凝集混和槽39で撹拌混合され、強力なフロックを生成する。脱水助材が凝集フロック同士を繋いで強力なフロックとなった凝集スラリーは、凝集スラリー供給管46を経て固液分離装置1に供給される。凝集スラリー供給管46には固液分離装置1に供給される凝集スラリーの圧力を計測するための圧力計47を配設している。
【0022】
固液分離装置1には圧縮空気供給管48を連結しており、圧縮空気供給源49より調整弁50および流量計51を介して固液分離装置1に圧縮空気を供給している。搬送中の脱水ケーキに供給された圧縮空気は、脱水ケーキ中の水分をろ材から外部に排出する。
【0023】
固液分離装置1の排出部には脱水ケーキ槽52を設けてあり、排出された脱水ケーキを一時的に貯留している。脱水ケーキ槽52には含水率計53を配設してあり、原液性状の変動により増減する脱水ケーキの含水率を計測している。この含水率計53で計測した含水率Wと予め設定している基準含水率W0とを比較判断して、基準含水率W0となるように固液分離装置1への負荷を調整している。
なお、含水率は公知の方法で計測しており、固液分離装置1の排出部近傍や次工程への搬送装置で計測してもよい。
【0024】
具体的には、供給装置36、凝集剤供給ポンプ43あるいは調整弁50に指令を与え、それぞれ脱水助材供給量、凝集剤供給量あるいは圧縮空気供給量を増減して含水率一定制御運転を行うようにしている。実際には、含水率計53で計測した検知信号を制御装置54に送信し、制御装置54で比較判断し、制御装置54から供給装置36、凝集剤供給ポンプ43あるいは調整弁50に指令を与えている。
【0025】
なお、固液分離装置1を安定して運転するために、他の制御方法(例えば圧入圧力一定制御や搬送速度制御等)を同時に行ってもよい。
【0026】
本発明に係る運転制御方法は、固液分離装置1を安定して運転するために、固液分離装置1の含水率を一定に制御することを基本としている。そこで、含水率を一定にするために、固液分離装置1に供給される脱水助材供給量、凝集剤供給量あるいは圧縮空気供給量を制御するものである。
【0027】
固液分離装置1の運転が開始されると、固液分離装置1の排出部から排出される脱水ケーキの含水率は、リアルタイムに含水率計53で計測されて制御装置54に送られる。
【0028】
そこで、本発明の制御装置では、含水率計53の計測値Wをあらかじめ設定した基準含水率W0と比較判断して、計測値Wが基準含水率W0から外れていた場合、供給装置36、凝集剤供給ポンプ43あるいは調整弁50に指令を与えて脱水助材供給量、凝集剤供給量あるいは圧縮空気供給量を制御し、固液分離装置1への運転負荷を調整する。このような負荷調整により、容易に固液分離装置1から排出される含水率を基準含水率W0に維持することができる。
基準含水率W0は、ある程度の幅を持たせて設定することができ、含水率の計測値Wがその設定幅内にある時は、現状を維持した状態で通常運転を継続する。
【0029】
より詳しく説明すると、含水率の計測値Wが基準含水率W0より高い場合には、制御装置54は供給装置36に指令を与え、凝集スラリーの固形物量を増加させる。固形物量が増加した調質原液を固液分離装置1に供給することにより、脱水ケーキの含水率を下降させることができる。
【0030】
また、脱水助材の供給量を増加させても含水率の計測値Wが基準含水率W0に復帰しない場合は、制御装置54から調整弁50に指令を与え、圧縮空気の供給量を増加させる。搬送中の脱水ケーキに噴射する圧縮空気量を増加させ、脱水ケーキの含水率を下降させることができる。
【0031】
さらに、圧縮空気の供給量を増加させても含水率の計測値Wが基準含水率W0に復帰しない場合は、制御装置54から凝集剤供給ポンプ43に指令を与え、凝集剤の供給量を増加させる。凝集フロックの強度が強まった調質原液を固液分離装置1に供給することにより、脱水ケーキの含水率を下降させることができる。
【0032】
一方、含水率の計測値Wが基準含水率W0より低い場合には、制御装置54は凝集剤供給ポンプ43に指令を与え、凝集剤の供給量を減少させる。凝集フロックの強度が弱まった調質原液を固液分離装置1に供給することにより、脱水ケーキの含水率を上昇させることができる。
【0033】
また、凝集剤の供給量を減少させても含水率の計測値Wが基準含水率W0に復帰しない場合は、制御装置54から調整弁50に指令を与え、圧縮空気の供給量を減少させる。搬送中の脱水ケーキに噴射する圧縮空気量を減少させ、脱水ケーキの含水率を上昇させることができる。
【0034】
さらに、圧縮空気の供給量を減少させても含水率の計測値Wが基準含水率W0に復帰しない場合は、制御装置54から供給装置36に指令を与え、凝集スラリーの固形物量を減少させる。固形物量が減少した調質原液を固液分離装置1に供給することにより、脱水ケーキの含水率を上昇させることができる。
【0035】
含水率を下降させる際は、固定費の高い凝集剤の使用量およびランニングコストの高い高圧空気の使用量を優先的に抑えるとともに、含水率を上昇させる際は、固定費の高い凝集剤の使用量を優先的に減少させ、次にランニングコストの高い高圧空気の使用量を優先的に減少させる
このように制御することで、脱水ケーキの含水率を容易に基準値内に制御することができ、固液分離装置1の安定運転を継続させることができるとともに、費用面で運転管理に貢献できる。
【0036】
一旦、供給装置36、凝集剤供給ポンプ43あるいは調整弁50の供給量を変更すると、一定時間経過後に再度含水率を測定し、計測値Wが基準含水率W0内に復帰するまで上記動作を繰り返す。
【0037】
脱水助材供給量、凝集剤供給量あるいは圧縮空気供給量を段階的に増減する供給量幅は予め設定しておく。それぞれの上限、下限を設定し、上限あるいは下限に達すると警報を発するか、あるいは運転を自動停止して調査ができるようにしてもよい。
【実施例0038】
図4はこの実施の形態に係る運転制御システムのフローチャートである。
A.初期設定
脱水ケーキの基準含水率W0(最大基準含水率Wmax,最小基準含水率Wmin)を設定する。本実施例では、最大基準含水率Wmaxと最小基準含水率Wminの間を基準含水率W0として幅を持たせている。
脱水助材の基準供給量A0,最大供給量Amax,最小供給量Amin,段階的に増減させる供給量幅aを設定する。
圧縮空気の基準供給量B0,最大供給量Bmax,最小供給量Bmin,段階的に増減させる供給量幅bを設定する。
凝集剤の基準供給量C0,最大供給量Cmax,最小供給量Cmin,段階的に増減させる供給量幅cを設定する。
【0039】
B.運転開始
上記基準値W0,A0,B0,C0にて各機器を運転する。
【0040】
C.含水率比較
固液分離装置1から排出される脱水ケーキの含水率を測定し、基準含水率W0と比較する。
含水率の計測値Wが基準含水率W0内にある場合は、各機器の運転を現状の状態で維持する。
計測値Wが基準含水率W0より大きい場合は、フローチャートのDへ移行して、固液分離装置1に供給する脱水助材供給量、凝集剤供給量あるいは圧縮空気供給量を段階的に増加させる制御を行う。
計測値Wが含水率W0より小さい場合は、フローチャートのLへ移行して凝集剤供給量、圧縮空気供給量あるいは脱水助材供給量を段階的に減少させる制御を行う。
【0041】
D.脱水助材の最大供給量比較
上記フローチャートCにおいて、含水率の計測値Wが基準含水率W0より大きい場合は、脱水助材の供給量を増加させるべく、段階的に増加させる供給量幅aを加味した供給量Aと最大供給量Amaxとを比較する。
変更後の脱水助材の供給量Aが最大供給量Amaxより小さい場合は、フローチャートのEへ移行して脱水助材の供給量を段階的に増加させる制御を行う。
変更後の脱水助材の供給量Aが最大供給量Amax以上となる場合は、フローチャートのFへ移行して、圧縮空気の供給量を段階的に増加させる制御を行う。
【0042】
E.脱水助材(増)
上記フローチャートDにおいて、変更後の脱水助材の供給量Aが最大供給量Amaxより小さい場合は、供給装置36を調整し、予め設定した供給量幅aだけ脱水助材の供給量を増大させる制御を行う。
【0043】
F.圧縮空気の最大供給量比較
上記フローチャートDにおいて、脱水助材の供給量Aが最大供給量Amax以上となる場合は、圧縮空気を増加させるべく、段階的に増加させる供給量幅bを加味した供給量Bと最大供給量Bmaxとを比較する。
変更後の圧縮空気の供給量Bが最大供給量Bmaxより小さい場合は、フローチャートのGへ移行して圧縮空気の供給量を段階的に増加させる制御を行う。
変更後の圧縮空気の供給量Bが最大供給量Bmax以上となる場合は、フローチャートのHへ移行して、凝集剤の供給量を段階的に増加させる制御を行う。
【0044】
G.圧縮空気(増)
上記フローチャートFにおいて、変更後の圧縮空気の供給量Bが最大供給量Bmaxより小さい場合は、調整弁50を調整し、予め設定した供給量幅bだけ圧縮空気の供給量を増大させる制御を行う。
【0045】
H.凝集剤の最大供給量比較
上記フローチャートFにおいて、圧縮空気の供給量Bが最大供給量Bmax以上となる場合は、凝集剤を増加させるべく、段階的に増加させる供給量幅cを加味した供給量Cと最大供給量Cmaxとを比較する。
変更後の凝集剤の供給量Cが最大供給量Cmaxより小さい場合は、フローチャートのJへ移行して凝集剤の供給量を段階的に増加させる制御を行う。
変更後の凝集剤の供給量Cが最大供給量Cmax以上となる場合は、フローチャートのKへ移行して、警報を発するか、あるいは固液分離装置1の運転を自動停止させる制御を行う。
【0046】
J.凝集剤(増)
上記フローチャートGにおいて、変更後の凝集剤の供給量Cが最大供給量Cmaxより小さい場合は、凝集剤供給ポンプ43を調整し、予め設定した供給量幅aだけ凝集剤の供給量を増大させる制御を行う。
【0047】
K.警報・運転停止
一定時間経過後に再度含水率を測定し、計測値Wが基準含水率W0内に復帰するまで上記動作を繰り返す。凝集剤が最大供給量に達しても含水率の計測値Wが基準値W0内に復帰しない場合は、警報を発するか、あるいは固液分離装置1の運転を自動停止する。
【0048】
L.凝集剤の最小供給量比較
上記フローチャートCにおいて、含水率の計測値Wが基準含水率W0より小さい場合は、凝集剤の供給量を減少させるべく、段階的に減少させる供給量幅cを加味した供給量Cと最小供給量Cminとを比較する。
変更後の凝集剤の供給量Cが最小供給量Cminより大きい場合は、フローチャートのMへ移行して凝集剤の供給量を段階的に減少させる制御を行う。
変更後の凝集剤の供給量Cが最小供給量Cmin以下となる場合は、フローチャートのNへ移行して、圧縮空気の供給量を段階的に減少させる制御を行う。
【0049】
M.凝集剤(減)
上記フローチャートLにおいて、変更後の凝集剤の供給量Cが最大供給量Cminより大きい場合は、凝集剤供給ポンプ43を調整し、予め設定した供給量幅aだけ凝集剤の供給量を減少させる制御を行う。
【0050】
N.圧縮空気の最小供給量比較
上記フローチャートLにおいて、凝集剤の供給量Cが最小供給量Cmin以下となる場合は、圧縮空気を減少させるべく、段階的に減少させる供給量幅bを加味した供給量Bと最小供給量Bminとを比較する。
変更後の圧縮空気の供給量Bが最小供給量Bminより大きい場合は、フローチャートのPへ移行して圧縮空気の供給量を段階的に減少させる制御を行う。
変更後の圧縮空気の供給量Bが最小供給量Bmin以下となる場合は、フローチャートのQへ移行して、脱水助材の供給量を段階的に減少させる制御を行う。
【0051】
P.圧縮空気(減)
上記フローチャートNにおいて、変更後の圧縮空気の供給量Bが最小供給量Bminより大きい場合は、調整弁50を調整し、予め設定した供給量幅bだけ圧縮空気の供給量を増大させる制御を行う。
【0052】
Q.脱水助材の最小供給量比較
上記フローチャートNにおいて、圧縮空気の供給量Bが最小供給量Bmin以下となる場合は、脱水助材の供給量を減少させるべく、段階的に減少させる供給量幅aを加味した供給量Aと最小供給量Aminとを比較する。
変更後の脱水助材の供給量Aが最小供給量Aminより大きい場合は、フローチャートのRへ移行して脱水助材の供給量を段階的に減少させる制御を行う。
変更後の脱水助材の供給量Aが最小供給量Amin以下となる場合は、フローチャートのSへ移行して、警報を発するか、あるいは固液分離装置1の運転を自動停止させる制御を行う。
【0053】
R.脱水助材(減)
上記フローチャートQにおいて、変更後の脱水助材の供給量Aが最小供給量Aminより大きい場合は、供給装置36を調整し、予め設定した供給量幅aだけ脱水助材の供給量を減少させる制御を行う。
【0054】
S.警報・運転停止
一定時間経過後に再度含水率を測定し、計測値Wが基準含水率W0内に復帰するまで上記動作を繰り返す。脱水助材が最小供給量に達しても含水率の計測値Wが基準値W0内に復帰しない場合は、警報を発するか、あるいは固液分離装置1の運転を自動停止する。
【0055】
なお、脱水助材、凝集剤あるいは圧縮空気の供給量を変更すると、一定時間経過後に再度圧入圧力を測定し、計測値Wが基準含水率W0内に復帰するまで上記動作を繰り返す。
本発明の連続式固液分離装置における含水率一定制御方法は、固液分離装置の前段あるいは固液分離装置内で原液汚泥を調質し、含水率を一定に制御することで安定した脱水性能を維持できる。したがって、脱水ケーキを受け入れる後段の設備の負荷や調整も容易となり、処理原液の性状が季節や天候等で刻々と変動する下水汚泥を固液分離する各種連続式固液分離装置に適用できる。