(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125475
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】流路形成用部材およびそれを備える医療用容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/10 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
A61J1/10 335C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033307
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梅垣 彦希
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA11
4C047BB13
4C047BB17
4C047BB20
4C047BB21
4C047BB22
4C047CC04
(57)【要約】
【課題】 流路を閉塞状態から開通状態へと移行できる構造を備えた流路形成用部材であって、一度の折り曲げ操作で所定部分を完全破断できる流路形成用部材およびそれを備える医療用容器を提供する。
【解決手段】 合成樹脂射出成形物である流路形成用部材10であって、分離用部30の流路形成部20に対する折り曲げ操作によって、環状薄肉部40が破断し、分離用部30を流路形成用部材10から分離可能となっている。流路形成用部材は、環状凹部50の上部に位置する分離用部側環状外面部51と、環状凹部50の下部に位置する流路形成部側環状外面部52とが、分離用部30の折り曲げ操作による環状薄肉部40の破断進行後かつ完全破断前に当接し、かつ当接により形成される両者の当接部が支点となり、環状薄肉部40の完全破断を補助するものとなっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂射出成形物である流路形成用部材であって、
前記流路形成用部材は、
内部流路と、
前記内部流路を閉塞する閉塞部と、
前記閉塞部よりも前記流路形成用部材の下方側となる外面に設けられ、かつ、前記流路形成用部材を、流路形成部と、前記閉塞部を有する分離用部とに区分する破断用の環状薄肉部を形成する環状凹部とを備え、
前記流路形成用部材は、前記分離用部の前記流路形成部に対する折り曲げ操作によって、前記環状薄肉部が破断し、前記分離用部を前記流路形成用部材から分離可能となっており、
さらに、前記流路形成用部材は、前記環状凹部の上部に位置する分離用部側環状外面部と、前記環状凹部の下部に位置する流路形成部側環状外面部とを備え、前記分離用部側環状外面部の一部と前記流路形成部側環状外面部の一部が、前記折り曲げ操作による前記環状薄肉部の破断進行後かつ完全破断前に当接し、かつ前記当接により形成される両者の当接部が支点となり、前記環状薄肉部の完全破断を補助するものとなっていることを特徴とする流路形成用部材。
【請求項2】
前記分離用部側環状外面部の一部と前記流路形成部側環状外面部の一部は、前記折り曲げ操作による前記環状薄肉部の破断が50%以上進行後かつ完全破断前に当接するものとなっている請求項1に記載の流路形成用部材。
【請求項3】
前記分離用部側環状外面部の一部と前記流路形成部側環状外面部の一部は、前記折り曲げ操作時において、前記流路形成部と前記分離用部とのなす角度が15~90°の範囲で当接するものとなっている請求項1に記載の流路形成用部材。
【請求項4】
前記分離用部側環状外面部および前記流路形成部側環状外面部の一方は、周方向に複数形成された突出リブまたは全周に亘って形成された環状突出リブを備え、前記分離用部側環状外面部および前記流路形成部側環状外面部の他方は、略水平に延びる環状水平面を備え、
前記突出リブまたは前記環状突出リブと前記環状水平面が、前記折り曲げ操作による前記環状薄肉部の破断進行後かつ完全破断前に当接し、かつ前記当接により形成される両者の当接部が支点となり、前記環状薄肉部の完全破断を補助するものとなっている請求項1に記載の流路形成用部材。
【請求項5】
前記突出リブまたは前記環状突出リブは、前記折り曲げ操作時において、前記流路形成部と前記分離用部とのなす角度が第1角度に達した際に前記環状水平面に当接する第1当接部と、前記第1角度よりも大きい第2角度に達した際に前記環状水平面に当接する第2当接部とを備える請求項4に記載の流路形成用部材。
【請求項6】
前記第1当接部は、前記折り曲げ操作による前記環状薄肉部の破断が50%以上進行後かつ完全破断前に前記環状水平面に当接し、前記第2当接部は、前記折り曲げ操作による前記環状薄肉部の破断が80%以上進行後かつ完全破断前に当接する請求項5に記載の流路形成用部材。
【請求項7】
前記第1角度は、15~90°の範囲であり、前記第2角度は、30~90°の範囲である請求項5に記載の流路形成用部材。
【請求項8】
前記環状薄肉部の厚さは0.2~0.3mmであり、前記環状薄肉部の外面および/または内面にスキン層が形成されている請求項1に記載の流路形成用部材。
【請求項9】
薬液が収納された軟質バッグと、前記軟質バッグに取り付けられた請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の流路形成用部材とを備える医療用容器であって、
前記流路形成用部材の前記流路形成部は、容器取付部と、前記容器取付部よりも下方に設けられたチューブ接続部と、前記容器取付部と前記チューブ接続部との間に設けられ外方に突出するフランジとを備え、
前記流路形成用部材は、前記容器取付部において前記軟質バッグに取り付けられ、前記流路形成部の上部および前記分離用部が前記軟質バッグ内に配置されていることを特徴とする医療用容器。
【請求項10】
前記軟質バッグ内に、医療用液体が充填されている請求項9に記載の医療用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を閉塞状態から開通状態へと移行できる構造を備えた流路形成用部材およびそれを備える医療用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬液が収納された軟質バッグに取り付けられる流路形成用部材であって、流路を閉塞状態から開通状態へと移行する構造を備えているものが知られている。例えば、特許文献1(特開2009-154024)には、破断により開封可能な排出口が開示されている。バッグに設けられた排出口の管体は、バッグの内部に突出する突出部を形成しており、管体の外周全周に環状に設けられた脆弱部よりなる開封機構を備えている。そして、開封操作(バッグのシート材の上から管体を指でつまんで折り曲げること)によって脆弱部を破断することにより、排出口の内腔とバッグの内部とを連通させ、バッグ内の液体(医療用液体)を排出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような流路形成用部材を備え、かつ医療用液体が充填された医療用容器として、例えば、連続携行式腹膜透析(CAPD)用の腹膜透析液充填バッグがある。この腹膜透析液充填バッグは、患者自ら操作するのが一般的である。
高齢の患者において、腹膜透析液充填バッグに取り付けられている流路形成用部材の開封操作(所定部分を折り曲げて破断する操作)に必要な握力が足りず、自身で流路を確実に開通させること(所定部分を完全に破断すること)が困難な事例が報告されている。また、従来の流路形成用部材においては、所定部分を完全に破断して、流路を確実に開通させるために、折り曲げ操作を複数回行う必要がある場合があり、患者の負担となっている。
そこで、本発明の目的は、流路を閉塞状態から開通状態へと移行できる構造を備えた流路形成用部材およびそれを備える医療用容器であって、一度の折り曲げ操作で所定部分を完全破断できる流路形成用部材およびそれを備える医療用容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 合成樹脂射出成形物である流路形成用部材であって、
前記流路形成用部材は、
内部流路と、
前記内部流路を閉塞する閉塞部と、
前記閉塞部よりも前記流路形成用部材の下方側となる外面に設けられ、かつ、前記流路形成用部材を、流路形成部と、前記閉塞部を有する分離用部とに区分する破断用の環状薄肉部を形成する環状凹部とを備え、
前記流路形成用部材は、前記分離用部の前記流路形成部に対する折り曲げ操作によって、前記環状薄肉部が破断し、前記分離用部を前記流路形成用部材から分離可能となっており、
さらに、前記流路形成用部材は、前記環状凹部の上部に位置する分離用部側環状外面部と、前記環状凹部の下部に位置する流路形成部側環状外面部とを備え、前記分離用部側環状外面部の一部と前記流路形成部側環状外面部の一部が、前記折り曲げ操作による前記環状薄肉部の破断進行後かつ完全破断前に当接し、かつ前記当接により形成される両者の当接部が支点となり、前記環状薄肉部の完全破断を補助するものとなっている流路形成用部材。
【0006】
(2) 前記分離用部側環状外面部の一部と前記流路形成部側環状外面部の一部は、前記折り曲げ操作による前記環状薄肉部の破断が50%以上進行後かつ完全破断前に当接するものとなっている上記(1)に記載の流路形成用部材。
(3) 前記分離用部側環状外面部の一部と前記流路形成部側環状外面部の一部は、前記折り曲げ操作時において、前記流路形成部と前記分離用部とのなす角度が15~90°の範囲で当接するものとなっている上記(1)または(2)に記載の流路形成用部材。
(4) 前記分離用部側環状外面部および前記流路形成部側環状外面部の一方は、周方向に複数形成された突出リブまたは全周に亘って形成された環状突出リブを備え、前記分離用部側環状外面部および前記流路形成部側環状外面部の他方は、略水平に延びる環状水平面を備え、
前記突出リブまたは前記環状突出リブと前記環状水平面が、前記折り曲げ操作による前記環状薄肉部の破断進行後かつ完全破断前に当接し、かつ前記当接により形成される両者の当接部が支点となり、前記環状薄肉部の完全破断を補助するものとなっている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の流路形成用部材。
(5) 前記突出リブまたは前記環状突出リブは、前記折り曲げ操作時において、前記流路形成部と前記分離用部とのなす角度が第1角度に達した際に前記環状水平面に当接する第1当接部と、前記第1角度よりも大きい第2角度に達した際に前記環状水平面に当接する第2当接部とを備える上記(4)に記載の流路形成用部材。
(6) 前記第1当接部は、前記折り曲げ操作による前記環状薄肉部の破断が50%以上進行後かつ完全破断前に前記環状水平面に当接し、前記第2当接部は、前記折り曲げ操作による前記環状薄肉部の破断が80%以上進行後かつ完全破断前に当接する上記(5)に記載の流路形成用部材。
(7) 前記第1角度は、15~90°の範囲であり、前記第2角度は、30~90°の範囲である上記(5)または(6)に記載の流路形成用部材。
(8) 前記環状薄肉部の厚さは0.2~0.3mmであり、前記環状薄肉部の外面および/または内面にスキン層が形成されている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の流路形成用部材。
【0007】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(9) 薬液が収納された軟質バッグと、前記軟質バッグに取り付けられた上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の流路形成用部材とを備える医療用容器であって、
前記流路形成用部材の前記流路形成部は、容器取付部と、前記容器取付部よりも下方に設けられたチューブ接続部と、前記容器取付部と前記チューブ接続部との間に設けられ外方に突出するフランジとを備え、
前記流路形成用部材は、前記容器取付部において前記軟質バッグに取り付けられ、前記流路形成部の上部および前記分離用部が前記軟質バッグ内に配置されている医療用容器。
【0008】
(10) 前記軟質バッグ内に、医療用液体が充填されている上記(9)に記載の医療用容器。
【発明の効果】
【0009】
本発明の流路形成用部材は、環状凹部の上部に位置する分離用部側環状外面部と、環状凹部の下部に位置する流路形成部側環状外面部とを備え、分離用部側環状外面部の一部と流路形成部側環状外面部の一部が、分離用部の折り曲げ操作による環状薄肉部の破断進行後かつ完全破断前に当接し、そのような当接により形成される両者の当接部が支点となり、一度の折り曲げ操作での環状薄肉部の完全破断を補助することができる。また、分離用部の折り曲げ操作において、分離用部側環状外面部の一部と流路形成部側環状外面部の一部との当接部が支点となることで、比較的小さい折り曲げ角度で環状薄肉部を完全破断することができる。
【0010】
また、本発明の医療用容器は、上記のような流路形成用部材を備えており、流路形成用部材が、環状凹部の上部に位置する分離用部側環状外面部と、環状凹部の下部に位置する流路形成部側環状外面部とを備え、分離用部側環状外面部の一部と流路形成部側環状外面部の一部が、分離用部の折り曲げ操作による環状薄肉部の破断進行後かつ完全破断前に当接し、そのような当接により形成される両者の当接部が支点となり、一度の折り曲げ操作での環状薄肉部の完全破断を補助することができる。また、分離用部の折り曲げ操作において、分離用部側環状外面部の一部と流路形成部側環状外面部の一部との当接部が支点となることで、比較的小さい折り曲げ角度で環状薄肉部を完全破断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の流路形成用部材の実施例を示す正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の流路形成用部材の実施例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の流路形成用部材の実施例を示す底面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す流路形成用部材の分離用部の折り曲げ操作を説明するための正面説明図である。
【
図7】
図7は、
図6のC-C断面図であり、分離用部の折り曲げ操作による環状薄肉部の破断の進行について説明するための断面説明図である。
【
図8】
図8は、分離用部の折り曲げ操作において、分離用部側環状外面部の一部と流路形成部側環状外面部の一部が当接する態様を説明するための拡大断面説明図である。
【
図9】
図9は、分離用部の折り曲げ操作において、分離用部側環状外面部の一部と流路形成部側環状外面部の一部が当接する態様を説明するための拡大断面説明図である。
【
図10】
図10は、
図1に示す流路形成用部材から分離用部を分離した状態を示す断面説明図である。
【
図11】
図11は、本発明の医療用容器の実施例を示す正面図である。
【
図12】
図12は、
図1に示す医療用容器の流路形成用部材から分離用部を分離した状態を示す正面説明図である。
【
図13】
図13は、本発明の流路形成用部材の他の実施例を示す正面図である。
【
図15】
図15は、本発明の流路形成用部材の他の実施例を示す
図5に対応する拡大断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の流路形成用部材の他の実施例を示す
図5に対応する拡大断面図である。
【
図17】
図17は、本発明の医療用容器の他の実施例を示す正面図である。
【
図18】
図18は、本発明の流路形成用部材の他の実施例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の流路形成用部材およびそれを備える医療用容器を図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明の流路形成用部材10は、
図1ないし
図10に示すように、合成樹脂射出成形物(一体成形物)である流路形成用部材10であって、流路形成用部材10は、内部流路11と、内部流路11を閉塞する閉塞部31と、閉塞部31よりも流路形成用部材10の下方側(
図1における下方側)となる外面に設けられ、かつ、流路形成用部材10を、流路形成部20と、閉塞部31を有する分離用部30とに区分する破断用の環状薄肉部40を形成する環状凹部50とを備える。流路形成用部材10は、分離用部30の流路形成部20に対する折り曲げ操作によって、環状薄肉部40が破断し、分離用部30を流路形成用部材10から分離可能となっている。さらに、流路形成用部材10は、環状凹部50の上部に位置する分離用部側環状外面部(上部環状外面部)51と、環状凹部50の下部に位置する流路形成部側環状外面部(下部環状外面部)52とを備え、分離用部側環状外面部(上部環状外面部)51の一部と流路形成部側環状外面部(下部環状外面部)52の一部が、折り曲げ操作による環状薄肉部40の破断進行後かつ完全破断前に当接し、かつ当接により形成される両者の当接部が支点となり、環状薄肉部40の完全破断を補助するものとなっている。
【0013】
図1および
図4に示すように、流路形成用部材10は、流路形成部20を備える。本実施例では、流路形成部20は、流路形成用部材10の下側部分(
図1における下側部分)を構成する。流路形成部20は、内部に、上下方向に延びる中空部を有する。流路形成部20の上端に上端開口部21(環状薄肉部40の破断後に形成される)、下端に下端開口部22が形成されている。流路形成部20は、軸方向(上下方向)全長に亘って、軸方向に直交する面における断面が略円環形状となっている。流路形成部20は、流路形成用部材10からの分離用部30(後述する、閉塞部31を有する分離用部30)の分離によって、流路形成用部材10(流路形成部20)を上下方向に貫通する流路(内部流路11)を形成する。流路形成部20の上側部分は、外形(外径)および内形(内径)がともに上方に向かって縮小(縮径)するテーパ部23となっている。
【0014】
本実施例の流路形成部20は、中央部分に外方に向かって突出するフランジ24を備える。フランジ24の外形は略円形状である。本実施例では、フランジ24よりも上側の部分であって、テーパ部23よりも下側の部分が、容器取付部25となっており、フランジ24よりも下側の部分が、チューブ接続部26となっている。本実施例では、容器取付部25とチューブ接続部26の外形(外径)が略同一となっている。これにより、医療用において多く使われる一般的な内径を有するチューブを取り付ける(接続する)ことができる。なお、容器取付部25とチューブ接続部26の外形(外径)は異なっていてもよい。これにより、容器取付部25とチューブ接続部26のそれぞれに本来取り付けられるべき部材の誤取り付け(誤接続)を防止することができる。
【0015】
図1および
図4に示すように、流路形成用部材10は、閉塞部31を有する分離用部30を備える。本実施例では、分離用部30は、流路形成用部材10の上側部分(
図1における上側部分)を構成する。分離用部30は、内部に、上下方向に延びる中空部を有する。分離用部30の上端は閉塞部31によって閉塞されており、下端は開口している。分離用部30は、上端に閉塞部31を有する円筒形状である。流路形成用部材10の内部流路11は、分離用部30の閉塞部31によって閉塞されている。分離用部30は、閉塞部31の形成部位を除き、全長に亘って、略同一の外形(外径)および内形(内径)となっている。分離用部30の外形(外径)は、流路形成部20(ここでは、容器取付部25)の外形(外径)よりも小さくなっている。
【0016】
なお、閉塞部31は、分離用部30の上端ではなく、上部部位、中間部位、下部位に設けられていてもよい。さらに、分離用部30は、分離用部の上端または上部部位に位置する第1の閉塞部と、中間部位または下端部位に位置する第2の閉塞部を備えるものであってもよい。第2の閉塞部は、環状凹部50に近接する部位に設けることが好ましい。
【0017】
分離用部30の軸方向の長さL1は、流路形成部20の軸方向の長さL2よりも大きくすることができる。これにより、後述する分離用部30の折り曲げ操作(環状薄肉部40の破断操作)を行い易くなる。また、分離用部30の軸方向の長さL1は、流路形成部20の軸方向の長さL2よりも小さくすることもできる。これにより、流路形成用部材10をよりコンパクトに構成することができる。
【0018】
図1、
図4および
図5に示すように、流路形成用部材10は、閉塞部31よりも下側となる外面に設けられ、かつ、流路形成用部材10を、流路形成部20と、閉塞部31を有する分離用部30とに区分する破断用の環状薄肉部40を形成する環状凹部50とを備える。
図5に示すように、環状凹部50は、縦断面において略V字状で外方に向かって拡径する凹部であり、流路形成用部材10の外面に全周に亘って形成されている。なお、このような環状凹部50の内縁部の角度(後述する、分離用部側環状傾斜面部55と流路形成部側環状傾斜面部61とがなす角度)θ1は、60~120°であることが好ましい。
【0019】
環状凹部50の内縁部において、流路形成用部材10には、環状薄肉部40が形成されている。本発明は、
図5に示すように、環状薄肉部40の厚さt1は、0.2~0.3mmであり、環状薄肉部40の外面および/または内面にスキン層が形成されている場合、特に、環状薄肉部40の外面にスキン層が形成されている場合に有効である。
【0020】
ここで、スキン層とは、射出成形において、溶融樹脂が金型のキャビティ壁面に接した際に冷却され比較的急激に固化することにより形成される薄膜のような部分である。スキン層は、その他の部分(コア層)よりも高い引張強度を示す(破断し難い)ことが知られている。本実施例の流路形成用部材10は、合成樹脂射出成形物(一体成形物)であり、環状凹部50により形成される環状薄肉部40の厚さt1が0.2~0.3mmとなっていることにより、環状薄肉部40の外面および内面に適切なスキン層が形成されている。これにより、環状薄肉部40の破断性(破断操作のし易さ)を確保しつつ、環状薄肉部40の意図しない破断を防止することができる。
【0021】
本実施例では、流路形成用部材10は、環状凹部50の上部(分離用部30側部分)に位置する分離用部側環状外面部(上部環状外面部)51と、環状凹部50の下部(流路形成部20側部分)に位置する流路形成部側環状外面部(下部環状外面部)52とを備える。
【0022】
また、本実施例では、分離用部側環状外面部(上部環状外面部)51および流路形成部側環状外面部(下部環状外面部)52の一方(ここでは、分離用部側環状外面部(上部環状外面部)51)は、周方向に複数形成された突出リブまたは全周に亘って形成された環状突出リブ(ここでは、4つの突出リブ53)を備え、分離用部側環状外面部(上部環状外面部)51および流路形成部側環状外面部(下部環状外面部)の他方(ここでは、流路形成部側環状外面部(下部環状外面部)52)は、略水平に延びる環状水平面54を備える。後述するように、突出リブまたは環状突出リブ(ここでは、4つの突出リブ53のいずれか)と環状水平面54が、折り曲げ操作による環状薄肉部40の破断進行後かつ完全破断前に当接し、かつ当該当接により形成される両者の当接部が支点となり、環状薄肉部40の完全破断を補助するものとなっている。
【0023】
具体的には、流路形成用部材10の分離用部側環状外面部51は、分離用部側環状傾斜面部55を備える。分離用部側環状傾斜面部55は、流路形成用部材10の中心軸に対して直交する面(水平面)に対して、30~60°(
図5にθ2にて示す角度)で上方(分離用部30側方向)に傾斜していることが好ましい。
【0024】
流路形成用部材10の分離用部側環状外面部51は、周方向に複数(ここでは、4つ)形成された突出リブ53を備える。突出リブ53は、それぞれ、分離用部側環状傾斜面部55から外方(ここでは、環状凹部50内)に突出するように形成されている。なお、突出リブの数としては、2~12程度が好ましく、さらには、偶数個であることが好ましい。特に、4~8が好ましく、さらには、偶数個であることが好ましい。また、複数の突出リブ53は、周方向において等間隔(ここでは、90°ごと)に配置されている。なお、突出リブの数および周方向における配置は、このような態様に限られるものではない。
【0025】
本実施例では、突出リブまたは環状突出リブ(ここでは、突出リブ53)は、折り曲げ操作時において、環状薄肉部40の破断進行後かつ完全破断前に当接する当接部(折曲時当接部)56を備える。具体的には、本実施例では、突出リブまたは環状突出リブ(ここでは、突出リブ53)は、折り曲げ操作時において、流路形成部20と分離用部30とのなす角度が第1角度に達した際に環状水平面54に当接する第1当接部(折曲時第1当接部)56と、第1角度よりも大きい第2角度に達した際に環状水平面54に当接する第2当接部(折曲時第2当接部)57とを備える。
【0026】
具体的には、
図5に断面において示すように、突出リブ53は、略水平方向外方に延びる(言い換えれば、流路形成用部材10の中心軸に対して直交する方向に延びる)水平部58と、水平部58の外端から上方および外方に傾斜する傾斜部59と、傾斜部59の外端から略垂直方向に延びる垂直部60とを備える。そして、水平部58と傾斜部59の間(角部)に第1当接部56が形成され、傾斜部59と垂直部60の間(角部)に第2当接部57が形成されている。なお、水平部、傾斜部、および垂直部は、その形態(形成角度)が例示のものに限られるものではない。
【0027】
流路形成用部材10の流路形成部側環状外面部52は、流路形成部側環状傾斜面部61を備える。流路形成部側環状傾斜面部61は、流路形成用部材10の中心軸に対して直交する面(水平面)に対して、30~60°(
図5にθ3にて示す角度)で下方(流路形成部20側方向)に傾斜していることが好ましい。
【0028】
流路形成用部材10の流路形成部側環状外面部52は、略水平に延びる(言い換えれば、流路形成用部材10の中心軸に対して直交する方向に延びる)環状水平面54を備える。本実施例では、環状水平面54は、全周に亘って、流路形成部側環状傾斜面部61の下端から、略水平方向外方に向かって延びるように形成されている。環状水平面54の外端縁は、流路形成部20の外面に連続している。
【0029】
図5に示すように、折り曲げ操作によって当接する分離用部側環状外面部(上部環状外面部)51の一部と流路形成部側環状外面部(下部環状外面部)52の一部との最小間隔(ここでは、突出リブ53の水平部58と環状水平面54との間隔)d1は、0.1~1.0mmであることが好ましい。このような範囲とすることにより、流路形成用部材10の成形性を確保するとともに、環状薄肉部40の破断性(特に、破断開始時の破断操作のし易さ)を確保することができる。
【0030】
流路形成用部材10の形成材料としては、硬質の合成樹脂、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエステル(PET)、ポリスチレン、ポリアミド、硬質ポリ塩化ビニル、ABS樹脂等の樹脂材料を挙げることができる。流路形成用部材10の形成材料としては、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。流路形成用部材10は、例えば、上記の樹脂を用いた射出成形により一体成形することができる。
【0031】
流路形成用部材10における流路(内部流路11)の開通操作(流路を閉塞状態から開通状態へと移行する操作)について、
図6ないし
図10に示すように、説明する。
【0032】
図6に示すように、分離用部30の流路形成部20に対する折り曲げ操作を行なう。ここでは、分離用部30の上部に、
図6に白抜き矢印で示す方向(2つの突出リブ53が対向する方向)に力を加えることで、分離用部30を流路形成部20に対して折り曲げる。これにより、環状薄肉部40の破断が開始され、進行する。
【0033】
なお、以下では、分離用部30の折り曲げ操作による環状薄肉部40の破断の進行について%(パーセント)で示すが、これは、軸方向に直交する断面において、環状薄肉部40の破断した部分の面積比を示すものであり、例えば、
図7に示すように、環状薄肉部40の半分が破断した状態(
図7において、環状薄肉部40の破断していない部分をクロスハッチ部で示す)を「環状薄肉部40の破断が50%進行した状態」とするものである。
【0034】
そして、分離用部30の折り曲げ操作(環状薄肉部40の破断操作)を続けると、
図8に示すように、分離用部側環状外面部(上部環状外面部)51の一部(ここでは、突出リブ53の第1当接部56)と流路形成部側環状外面部(下部環状外面部)52の一部(ここでは、環状水平面54)が当接する。流路形成用部材10においては、このような当接により形成される両者の当接部が支点となり、一度の折り曲げ操作での環状薄肉部40の完全破断を補助することができる。また、分離用部30の折り曲げ操作(環状薄肉部40の破断操作)において、分離用部側環状外面部(上部環状外面部)51の一部と流路形成部側環状外面部(下部環状外面部)52の一部との当接部が支点となることで、比較的小さい折り曲げ角度で環状薄肉部40を破断することができる。
【0035】
なお、分離用部側環状外面部(上部環状外面部)51の一部(ここでは、第1当接部56)と流路形成部側環状外面部(下部環状外面部)52の一部(ここでは、環状水平面54)は、折り曲げ操作による環状薄肉部40の破断が50%以上進行後かつ完全破断前に当接するものであることが好ましい。また、分離用部側環状外面部(上部環状外面部)51の一部と流路形成部側環状外面部(下部環状外面部)52の一部は、折り曲げ操作時において、流路形成部20と分離用部30とのなす角度(ここでは、第1当接部56と環状水平面54が当接する際の流路形成部20(の中心軸)と分離用部30(の中心軸)とのなす角度θ4(
図8参照))が15~90°の範囲で当接するものであることが好ましい。
【0036】
そして、本実施例の流路形成用部材10においては、
図9に模擬的に示すように、突出リブ53の第1当接部56と環状水平面54との当接後、さらに分離用部30の折り曲げ操作を続ける(言い換えれば、流路形成部20に対して分離用部30をさらに傾ける)ことで、突出リブ53の第2当接部57と環状水平面54が当接するようになっている。これにより、突出リブ53の第2当接部57と環状水平面54との当接により形成される両者の当接部が支点となり、環状薄肉部40の完全破断を補助することができる。
【0037】
より具体的には、
図9に示すものでは、第1当接部56と環状水平面54の当接後まもなく、環状薄肉部40が完全破断するものとなっている(
図9には環状薄肉部40が完全破断したように示されている)が、仮に、第1当接部56と環状水平面54の当接時に環状薄肉部40が完全破断しなかった場合には、第2当接部57と環状水平面54が当接することにより、第1当接部56と環状水平面54が当接した場合とは異なる点が支点となり、環状薄肉部40の完全破断を補助する。この場合でも、一度の折り曲げ操作での環状薄肉部40の完全破断をより確実に補助することができるようになっている。
【0038】
なお、本実施例の流路形成用部材10においては、第1当接部56は、折り曲げ操作による環状薄肉部40の破断が50%以上進行後かつ完全破断前に環状水平面54に当接し、第2当接部57は、折り曲げ操作による環状薄肉部40の破断が80%以上進行後かつ完全破断前に当接するものであることが好ましい。また、第1角度θ4(第1当接部56と環状水平面54が当接する際の流路形成部20(の中心軸)と分離用部30(の中心軸)とのなす角度θ4(
図8参照))は、15~90°の範囲であり、第2角度θ5(第2当接部57と環状水平面54が当接する際の流路形成部20(の中心軸)と分離用部30(の中心軸)とのなす角度θ5(
図9参照))は、30~90°の範囲であることが好ましい。
【0039】
上述のような分離用部30の折り曲げ操作によって、
図10に示すように、環状薄肉部40が破断し、分離用部30が流路形成用部材10から分離される。これにより、流路形成用部材10において流路(内部流路11)が開通する(流路が閉塞状態から開通状態へと移行する)こととなる。
【0040】
次いで、本発明の流路形成用部材を備える医療用容器を図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明の医療用容器1は、
図11に示すように、薬液(ここでは、医療用液体)71が収納された軟質バッグ70と、軟質バッグ70に取り付けられた上述の流路形成用部材10とを備える医療用容器1である。流路形成用部材10の流路形成部20は、容器取付部25と、容器取付部25よりも下方に設けられたチューブ接続部26と、容器取付部25とチューブ接続部26との間に設けられ外方に突出するフランジ24とを備える。流路形成用部材10は、容器取付部25において軟質バッグ70に取り付けられ、流路形成部20の上部および分離用部30が軟質バッグ70内に配置されている。
【0041】
なお、軟質バッグ70内に、医療用液体71が充填されていることが好ましい。そのような医療用液体としては、例えば、慢性腎不全に対して行なわれる透析治療法の1つであるCAPD治療において用いられる腹膜透析液や、生理食塩水、電解質溶液、リンゲル液、高カロリー輸液、ブドウ糖液、注射用水、アミノ酸電解質溶液等が挙げられる。
【0042】
より具体的には、本実施例の軟質バッグ70は、バッグ本体72と、排出用チューブ73とを備えている。
【0043】
バッグ本体72は、軟質合成樹脂により形成されている。バッグ本体72は、インフレーション成形法により筒状に成形されたものが好ましい。なお、バッグ本体72は、例えば、ブロー成形法、共押出インフレーション法などの種々の方法により製造されたものでもよい。
【0044】
バッグ本体72は、水蒸気バリヤー性を有することが好ましい。水蒸気バリヤー性の程度としては、水蒸気透過度が、50g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下であることが好ましく、より好ましくは10g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下であり、さらに好ましくは1g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下である。この水蒸気透過度は、JISK7129(A法)に記載の方法により測定される。このようにバッグ本体72が水蒸気バリヤー性を有することにより、医療用容器1の内部からの水分の蒸散が防止できる。その結果、充填される薬液(医療用液体)71の減少、濃縮を防止することができる。また、医療用容器1の外部からの水蒸気の侵入も防止することができる。
【0045】
このようなバッグ本体72の形成材料としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーあるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。そして、使用する樹脂材料は、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)に耐えられる耐熱性、耐水性を有していることが好ましい。
【0046】
バッグ本体72の形成材料として、ポリオレフィンを含むものであるのが好ましい。バッグ本体72の形成材料として、特に好ましいものとして、ポリエチレンまたはポリプロピレンに、スチレン-ブタジエン共重合体やスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーあるいはエチレン-プロピレン共重合体やエチレン-ブテン共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマーをブレンドし柔軟化した軟質樹脂を挙げることができる。この材料は、高強度で柔軟性に富み、耐熱性(特に滅菌時の耐熱性)、耐水性が高い他、加工性が特に優れ、製造コストの低減を図ることができる点で好ましい。
【0047】
また、バッグ本体72は、前述したような材料よりなる単層構造のもの(単層体)であってもよいし、また種々の目的で、複数の層(特に異種材料の層)を重ねた多層積層体であってもよい。多層積層体の場合、複数の樹脂層を重ねたものであってもよいし、少なくとも1層の樹脂層に金属層を積層したものであってもよい。複数の樹脂層を重ねたものの場合、それぞれの樹脂の利点を併有することができ、例えば、バッグ本体72の耐衝撃性を向上させたり、耐ブロッキング性を付与したりすることができる。また、金属層を有するものの場合、バッグ本体72のガスバリヤー性等を向上させることができる。例えば、アルミ箔等のフィルムが積層された場合、ガスバリヤー性の向上とともに、遮光性を付与したりすることができる。また、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の酸化物からなる層を形成した場合、ガスバリヤー性の向上とともに、バッグ本体72の透明性を維持することができ、内部の視認性を確保することができる。なお、バッグ本体72が多層積層体である場合、その内表面部分を形成する材料が、前述した材料であるのが好ましい。
【0048】
バッグ本体72を構成するシート材の厚さは、その層構成や用いる素材の特性(柔軟性、強度、水蒸気透過性、耐熱性等)等に応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、100~500μm程度であるのが好ましく、200~360μm程度であるのがより好ましい。
【0049】
排出用チューブ73は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)等の軟質樹脂からなり、可撓性を有するチューブであることが好ましい。排出用チューブ73は、その外面において、バッグ本体72に熱融着、超音波融着、高周波融着等によって液密に取り付けられている。排出用チューブ73の内部は、バッグ本体72と連通しており、バッグ本体72の内部を外部に連通できるようになっている。なお、本実施例では、排出用チューブ73は、後述するように排出用チューブ73越しに分離用部30の折り曲げ操作を行うことができる程度の比較的高い可撓性を有するもの(材質および厚さ)であることが好ましい。
【0050】
流路形成用部材10は、容器取付部25において、軟質バッグ70(排出用チューブ73)に取り付けられている。具体的には、容器取付部25の外形(外径)は、排出用チューブ73の内形(内径)よりも大きくなっており、排出用チューブ73の弾性変形下で液密に取り付けられている。なお、容器取付部25と排出用チューブ73とは、取付後の高温蒸気滅菌等による熱の付加により、接触部が液密状態に融着したものであってもよい。
【0051】
図11に示すように、流路形成用部材10は、軟質バッグ70への取り付け状態において、流路形成部20の先端上部および分離用部30が軟質バッグ70(排出用チューブ73および/またはバッグ本体72)内に配置されており、閉塞部31を有する分離用部30が医療用液体71中に配置されている。
【0052】
本実施例の医療用容器1においては、流路形成用部材10のチューブ接続部26に所定の輸液用チューブ74を接続した後、軟質バッグ70(バッグ本体72および/または排出用チューブ73)越しに分離用部30の折り曲げ操作を行うことができる。そして、分離用部30の折り曲げ操作によって、環状薄肉部40を破断し、分離用部30を流路形成用部材10から分離することにより、流路形成用部材10の流路(内部流路11)を開通させることで、医療用容器1を開封する(医療用液体71の排出を可能にする)ことができる。
【0053】
なお、流路形成用部材10の分離用部30は、内部に、上下方向に延びる中空部を有し、上端に閉塞部31を有する円筒形状となっている。これにより、
図12に示すように、医療用液体71中に配置され、環状薄肉部40の破断によって流路形成用部材10から分離された分離用部30は、浮力によって上方に移動する。これにより、分離した分離用部30によって内部流路11が再度閉塞されることが防止される。また、医療用液体71中に分離用部30が浮遊することにより、流路形成用部材10における流路(内部流路11)の開通(医療用容器1の開封)や液体排出時における液面位置を外部から容易に確認することができる。
【0054】
このような医療用容器1は、特に、CAPD(連続携行式腹膜透析)治療に好適に用いられる。そのようなCAPD治療は、患者が自宅や職場で行うものであり、患者自身が上述のような医療用容器1の開封操作を行うものである。そのため、一度の折り曲げ操作での環状薄肉部40の完全破断を補助することができる流路形成用部材10を備えることは大きな利点となる。
【0055】
以下に、本発明の流路形成用部材およびそれを備える医療用容器の別の実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の説明においては、上述した流路形成用部材10およびそれを備える医療用容器1と略同様の構成については、対応する名称および符号を用い、それらを参照するものとする。
【0056】
図13に示す流路形成用部材10aにおいては、分離用部側環状外面部(上部環状外面部)51aは、全周に亘って形成された環状突出リブ62を備える。本実施例では、
図14に示すように、環状突出リブ62は、全周に亘って断面が上述した突出リブ53と同様の形状となっており、略水平方向外方に延びる水平部58aと、水平部58aの外端から上方および外方に傾斜する傾斜部59aと、傾斜部59aの外端から略垂直方向に延びる垂直部60aとを備える。そして、水平部58aと傾斜部59aの間(角部)に第1当接部56aが形成され、傾斜部59aと垂直部60aの間(角部)に第2当接部57aが形成されている。
【0057】
流路形成用部材10aでは、環状突出リブ62(第1当接部56a、第2当接部57a)と流路形成部側環状外面部(下部環状外面部)52の環状水平面54が、分離用部30の折り曲げ操作による環状薄肉部40の破断進行後かつ完全破断前に当接し、かつ当該当接により形成される両者の当接部が支点となり、環状薄肉部40の完全破断を補助するものとなっている。
【0058】
図15に示す流路形成用部材10bのように、流路形成部側環状外面部(下部環状外面部)52bが周方向に複数形成された突出リブ53b(または環状突出リブ)を備え、分離用部側環状外面部(上部環状外面部)51bが略水平に延びる環状水平面54bを備えていてもよい。
【0059】
突出リブまたは環状突出リブの形態は、上述のものに限られるものではない。例えば、
図16に示す流路形成用部材10cのように、分離用部側環状外面部(上部環状外面部)51cに形成された突出リブ53c(または環状突出リブ)は、第1当接部56と第2当接部57とを備えるものでなくてもよい。本実施例では、突出リブ53cは、略水平方向外方に延びる水平部58cと、水平部58cの外端から略垂直方向に延びる垂直部60cとを備える。そして、水平部58cと垂直部60cの間(角部)に当接部63が形成されている。
【0060】
流路形成用部材10cでは、突出リブ53c(当接部63)と流路形成部側環状外面部(下部環状外面部)52の環状水平面54が、分離用部30の折り曲げ操作による環状薄肉部40の破断進行後かつ完全破断前に当接し、かつ当該当接により形成される両者の当接部が支点となり、環状薄肉部40の完全破断を補助するものとなっている。
【0061】
図17に示す医療用容器1dにおいては、流路形成用部材10が容器取付部25において、直接、バッグ本体72に熱融着、超音波融着、高周波融着等によって液密に取り付けられている。これにより、流路形成用部材10は、軟質バッグ70への取り付け状態において、流路形成部20の先端上部および分離用部30が軟質バッグ70(バッグ本体72)内に配置されており、閉塞部31を有する分離用部30が医療用液体71中に配置されている。医療用容器1dでは、軟質バッグ70(バッグ本体72)越しに分離用部30の折り曲げ操作を行うことができる。そして、分離用部30の折り曲げ操作によって、環状薄肉部40を破断し、分離用部30を流路形成用部材10から分離することにより、流路形成用部材10の流路(内部流路11)を開通させることで、医療用容器1dを開封する(医療用液体71の排出を可能にする)ことができる。
【0062】
図17に示す実施例では、流路形成用部材10として、上述した複数の突出リブ53を備えるものが用いられている。この場合、複数の突出リブ53は、径方向において向かい合うものであることが好ましい。さらに、突出リブ53が、バック本体72の正面と裏面を向くように、流路形成用部材10がバッグ本体72に取り付けられていることが好ましい。
【0063】
また、上述したすべての実施例の流路形成用部材10において、
図18に示す流路形成用部材10eのように、分離用部30の折り曲げ操作を補助する構造を設けてもよい。本実施例では、フランジ24eが、2つの突出リブ53が対向する方向(
図18の左右方向)に延びる長径部27と、他の2つの突出リブ53が対向する方向(
図18の紙面垂直方向)に延びる短径部28とを備えている。これにより、分離用部30の折り曲げ操作を補助(例えば、折り曲げ方向をガイドしたり、長径部27を把持して折り曲げ操作を行う等)し、分離用部側環状外面部(上部環状外面部)51の一部と流路形成部側環状外面部(下部環状外面部)52の一部とを適切に当接させ、環状薄肉部40を破断することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 医療用容器
10 流路形成用部材
11 内部流路
20 流路形成部
24 フランジ
25 容器取付部
26 チューブ接続部
30 分離用部
31 閉塞部
40 環状薄肉部
50 環状凹部
51 分離用部側環状外面部
52 流路形成部側環状外面部
53 突出リブ
54 環状水平面
56 第1当接部
57 第2当接部
62 環状突出リブ
70 軟質バッグ
71 医療用液体