(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125478
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】検査支援装置および検査支援システム
(51)【国際特許分類】
B25B 23/14 20060101AFI20240911BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20240911BHJP
B23P 19/06 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B25B23/14 620G
E04G21/16 ESW
B25B23/14 610K
B25B23/14 610A
B23P19/06 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033315
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】片山 厚子
(72)【発明者】
【氏名】川越 貴子
(72)【発明者】
【氏名】裏橋 信夫
(72)【発明者】
【氏名】喜田 浩行
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和巳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊二
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 真吾
【テーマコード(参考)】
2E174
3C038
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA08
2E174DA12
2E174DA13
2E174DA63
2E174EA00
3C038AA04
3C038BC04
3C038CA05
3C038CA06
3C038CA07
(57)【要約】
【課題】接合部の検査手間の低減と検査精度の向上を実現する。
【解決手段】検査支援装置は、構造物を構成する2つの鉄骨部材にまたがって配置されるプレート部材と、鉄骨部材およびプレート部材に形成された複数の孔のそれぞれに挿入される高力ボルトと、各高力ボルトに螺合するナットと、各ナットとプレート部材との間に挟持される座金と、によって2つの鉄骨部材を接合する接合部の検査を支援する。検査支援装置は、高力ボルトとナットと座金との組み合わせである締結単位について、ナットを締め付ける締め付け工具による締め付けの際のナットの回転量に相関する第1の指標値を締め付け工具から取得する回転量取得部と、締結単位のそれぞれについて、第1の指標値に基づいて、ナットの回転角度であるナット回転角度の値が合格範囲内にあるか否かを判定したナット判定結果を導出する判定部と、ナット判定結果を含む検査結果を表示する表示制御部とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を構成する2つの鉄骨部材にまたがって配置されるプレート部材と、前記鉄骨部材および前記プレート部材に形成された複数の孔のそれぞれに挿入される高力ボルトと、各前記高力ボルトに螺合するナットと、各前記ナットと前記プレート部材との間に挟持される座金と、によって前記2つの鉄骨部材を接合する接合部の検査を支援する検査支援装置であって、
前記高力ボルトと前記ナットと前記座金との組み合わせである締結単位について、前記ナットを締め付ける締め付け工具による締め付けの際の前記ナットの回転量に相関する第1の指標値を前記締め付け工具から取得する回転量取得部と、
前記締結単位のそれぞれについて、前記第1の指標値に基づいて、前記ナットの回転角度であるナット回転角度の値が合格範囲内にあるか否かを判定したナット判定結果を導出する判定部と、
前記ナット判定結果を含む検査結果を表示する表示制御部と、を備える、検査支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査支援装置であって、
前記第1の指標値は、前記締め付け工具のモータの駆動により生じる第1の電流値と、前記締め付け工具によって前記ナットを締め付ける際のトルク値と、の少なくとも一方を含む、検査支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査支援装置であって、
前記判定部は、前記締め付け工具によって前記ナットを回転させる際の前記ナット回転角度を前記第1の指標値から算出し、前記第1の指標値から算出された前記ナット回転角度に基づいて前記ナット回転角度の値が合格範囲内にあるか否かを判定する、検査支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検査支援装置であって、
前記回転量取得部は、前記締結単位について、前記締め付け工具から、前記締め付け工具による締め付けの際の前記座金の回転量に相関する第2の指標値を取得し、
前記判定部は、前記締結単位のそれぞれについて、前記第2の指標値に基づいて、前記座金の回転角度である座金回転角度の値が合格範囲内にあるか否かを判定した座金判定結果を導出する、検査支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の検査支援装置であって、
前記第2の指標値は、前記座金の回転によって生じる第2の電流値を含み、
前記判定部は、前記締め付け工具によって前記ナットを回転させる際の前記座金回転角度を前記第2の指標値から算出し、前記第2の指標値から算出された前記座金回転角度に基づいて前記座金回転角度の値が合格範囲内にあるか否かを判定する、検査支援装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の検査支援装置であって、
前記回転量取得部は、前記締結単位について、前記締め付け工具から、前記締め付け工具による締め付けの際の前記高力ボルトの回転量に相関する第3の指標値を取得し、
前記判定部は、前記締結単位のそれぞれについて、前記第3の指標値に基づいて、前記高力ボルトの回転角度である高力ボルト回転角度の値が合格範囲内にあるか否かを判定した高力ボルト判定結果を導出する、検査支援装置。
【請求項7】
請求項6に記載の検査支援装置であって、
前記第3の指標値は、前記高力ボルトの回転によって生じる第3の電流値を含み、
前記判定部は、前記締め付け工具によって前記ナットを回転させる際の前記高力ボルト回転角度を前記第3の指標値から算出し、前記第3の指標値から算出された前記高力ボルト回転角度に基づいて前記高力ボルト回転角度の値が合格範囲内にあるか否かを判定する、検査支援装置。
【請求項8】
請求項7に記載の検査支援装置であって、
前記検査結果は、前記締結単位ごとの前記締め付け工具により締め付けが行われた作業日時を含む、検査支援装置。
【請求項9】
請求項8に記載の検査支援装置であって、
前記表示制御部は、複数の前記締結単位の前記検査結果を表示する際、前記締結単位ごとの前記作業日時の順番に整列して表示し、
前記検査結果は、前記作業日時に基づいて付された前記締結単位ごとの通し番号を含む、検査支援装置。
【請求項10】
請求項9に記載の検査支援装置であって、
前記表示制御部は、複数の前記締結単位の前記検査結果を表示する際、前記締結単位が存在する前記プレート部材ごとに前記検査結果を表示する、検査支援装置。
【請求項11】
請求項10に記載の検査支援装置であって、
前記表示制御部は、前記検査結果とともに前記構造物における前記プレート部材の位置を示す情報を表示する、検査支援装置。
【請求項12】
請求項11に記載の検査支援装置であって、
前記検査結果は、前記ナット回転角度と、前記座金回転角度と、前記高力ボルト回転角度とのうちの少なくとも1つを含む、検査支援装置。
【請求項13】
請求項12に記載の検査支援装置であって、
前記検査結果は、複数の前記締結単位について、前記ナット回転角度の平均値を含む、検査支援装置。
【請求項14】
請求項13に記載の検査支援装置であって、
前記検査結果は、複数の前記締結単位について、前記ナット回転角度の合格範囲を含む、検査支援装置。
【請求項15】
請求項14に記載の検査支援装置であって、
前記検査結果は、前記第1の指標値と、前記第2の指標値と、前記第3の指標値とのうちの少なくとも1つを含む、検査支援装置。
【請求項16】
構造物を構成する2つの鉄骨部材にまたがって配置されるプレート部材と、前記鉄骨部材および前記プレート部材に形成された複数の孔のそれぞれに挿入される高力ボルトと、各前記高力ボルトに螺合するナットと、各前記ナットと前記プレート部材との間に挟持される座金と、によって前記2つの鉄骨部材を接合する接合部の検査を支援する検査支援システムであって、
前記ナットを締め付ける締め付け工具であって、測定装置を有する締め付け工具と、
端末装置と、を備え、
前記測定装置は、
前記高力ボルトと前記ナットと前記座金との組み合わせである締結単位について、前記締め付け工具による締め付けの際の前記ナットの回転量に相関する第1の指標値を測定する測定部と、
前記第1の指標値を前記端末装置に送信する測定装置側通信部と、
を有し、
前記端末装置は、
前記第1の指標値を前記測定装置から受信する端末装置側通信部と、
前記測定部によって測定された前記第1の指標値を取得する回転量取得部と、
前記締結単位のそれぞれについて、前記第1の指標値に基づいて前記ナットの回転角度であるナット回転角度の値が合格範囲内にあるか否かを判定したナット判定結果を導出する判定部と、
前記ナット判定結果を含む検査結果を表示する表示制御部と、
を有する、検査支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、検査支援装置および検査支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や土木構造物等の構造物を構成する2つの鉄骨部材(例えば、梁の端部部材と中央部部材)を接合する方法として、高力ボルト接合が広く用いられている。高力ボルト接合は、引っ張り耐力の高い高力ボルト(ハイテンションボルト)を所定の力で締め付けることにより、摩擦力を利用して部材間を接合する方法である。
【0003】
高力ボルトの接合の際には、接合される2つの鉄骨部材にまたがるようにプレート部材(スプライスプレート)が配置され、各鉄骨部材およびプレート部材に形成された複数の孔のそれぞれに高力ボルトが挿入され、各ナットとプレート部材との間に座金が挟持された状態となるように各高力ボルトにナットが螺合される。ナットの一次締めが行われた後、高力ボルト、ナット、座金およびプレート部材にわたって直線状のマークを付すマーキングが行われ、その後、ナットの本締めが行われる。ナットの本締めにより、ナットに付されたマークの位置が、高力ボルト、座金およびプレート部材に付されたマークの位置から、ナットの回転角度分だけずれる。ナットの本締め後、高力ボルトの締め付け検査が行われる。高力ボルト、ナット、座金およびプレート部材に付されたマークの位置に基づき、本締めによる各ナットの回転角度を特定する。
【0004】
従来、高力ボルトを用いた接合部が撮影された対象画像を取得し、対象画像を画像解析することによって、高力ボルト、ナット、座金およびプレート部材に付されたマークの位置を特定し、本締めによる各ナットの回転角度を特定する検査支援装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。検査支援装置は、各ナットの回転角度の特定から各ナットの回転角度が合格範囲内にあるか否かの判定までを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高力ボルトを用いた接合部を対象とした上記従来の締め付け検査では、各ナットの回転角度の特定から各ナットの回転角度が合格範囲内にあるか否かの判定までを行うものの、作業者によってマーキングを付す作業は必須である。そのため、依然として手間のかかる作業となっている。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される検査支援装置は、構造物を構成する2つの鉄骨部材にまたがって配置されるプレート部材と、前記鉄骨部材および前記プレート部材に形成された複数の孔のそれぞれに挿入される高力ボルトと、各前記高力ボルトに螺合するナットと、各前記ナットと前記プレート部材との間に挟持される座金と、によって前記2つの鉄骨部材を接合する接合部の検査を支援する検査支援装置である。本検査支援装置は、前記高力ボルトと前記ナットと前記座金との組み合わせである締結単位について、前記ナットを締め付ける締め付け工具による締め付けの際の前記ナットの回転量に相関する第1の指標値を前記締め付け工具から取得する回転量取得部と、前記締結単位のそれぞれについて、前記第1の指標値に基づいて、前記ナットの回転角度であるナット回転角度の値が合格範囲内にあるか否かを判定したナット判定結果を導出する判定部と、前記ナット判定結果を含む検査結果を表示する表示制御部と、を備える。
【0010】
本検査支援装置によれば、締め付け工具による締め付けの際のナットの回転量に相関する第1の指標値を取得し、第1の指標値に基づいて、ナット回転角度の合否を判定することができる。すなわち、本検査支援装置によれば、目視によってナット回転角度を特定したり、ナット回転角度の合格範囲を計算したり、各締結単位のナット回転角度が合格範囲内にあるか否かを判定したりする必要がないだけでなく、作業者が各締結単位にマーキングを付すことも要しない。作業者は、検査支援装置の操作によってナットの回転量に相関する第1の指標値を取得するだけで、各締結単位のナット回転角度が合格範囲内にあるか否かを判定することができる。従って、本検査支援装置によれば、締め付け検査にかかる手間を低減することができる。
【0011】
(2)上記検査支援装置において、前記第1の指標値は、前記締め付け工具のモータの駆動により生じる第1の電流値と、前記締め付け工具によって前記ナットを締め付ける際のトルク値と、の少なくとも一方を含む構成としてもよい。本検査支援装置によれば、締め付け工具による締め付けの際のナット回転角度が合格範囲内にあるか否かを、作業者の目視に頼らず、ナットの回転量に相関する数値データである第1の電流値またはトルク値に基づいて判定することができる。そのため、締め付け検査の検査精度を向上させることができる。
【0012】
(3)上記検査支援装置において、前記判定部は、前記締め付け工具によって前記ナットを回転させる際の前記ナット回転角度を前記第1の指標値から算出し、前記第1の指標値から算出された前記ナット回転角度に基づいて前記ナット回転角度の値が合格範囲内にあるか否かを判定する構成としてもよい。本検査支援装置によれば、締め付け工具による締付けの際のナット回転角度を、ナットの回転量に相関する数値データである第1の指標値から算出し、算出されたナット回転角度に基づいて、合格範囲内にあるか否かを判定することができる。そのため、締め付け検査の検査精度をより効果的に向上させることができる。
【0013】
(4)上記検査支援装置において、前記回転量取得部は、前記締結単位について、前記締め付け工具から、前記締め付け工具による締め付けの際の前記座金の回転量に相関する第2の指標値を取得し、前記判定部は、前記締結単位のそれぞれについて、前記第2の指標値に基づいて、前記座金の回転角度である座金回転角度の値が合格範囲内にあるか否かを判定した座金判定結果を導出する構成としてもよい。本検査支援装置によれば、締め付け工具による締め付けの際の座金回転角度が合格範囲内にあるか否かを、座金の回転量に相関する第2の指標値に基づいて判定することができる。従って、作業者がマーキングを付したり、目視によって座金の回転を確認したりすることなく、ナットの回転に伴って座金が回転する、いわゆる共回りの発生を検知することができる。
【0014】
(5)上記検査支援装置において、前記第2の指標値は、前記座金の回転によって生じる第2の電流値を含み、前記判定部は、前記締め付け工具によって前記ナットを回転させる際の前記座金回転角度を前記第2の指標値から算出し、前記第2の指標値から算出された前記座金回転角度に基づいて前記座金回転角度の値が合格範囲内にあるか否かを判定する構成としてもよい。本検査支援装置によれば、締め付け工具による締め付けの際の座金回転角度を、座金回転角度に相関する第2の電流値から算出することができる。従って、作業者がマーキングを付したり、目視によって座金および高力ボルトの回転を確認したりすることなく、より正確に共回りの発生を検知することができる。
【0015】
(6)上記検査支援装置において、前記回転量取得部は、前記締結単位について、前記締め付け工具から、前記締め付け工具による締め付けの際の前記高力ボルトの回転量に相関する第3の指標値を取得し、前記判定部は、前記締結単位のそれぞれについて、前記第3の指標値に基づいて、前記高力ボルトの回転角度である高力ボルト回転角度の値が合格範囲内にあるか否かを判定した高力ボルト判定結果を導出する構成としてもよい。本検査支援装置によれば、締め付け工具による締め付けの際の高力ボルトの回転角度が合格範囲内にあるか否かを、高力ボルトの回転量に相関する第3の指標値に基づいて判定することができる。従って、作業者がマーキングを付したり、目視によって高力ボルトの回転を確認したりすることなく、ナットの回転に伴って高力ボルトが回転する、いわゆる軸回りの発生を検知することができる。
【0016】
(7)上記検査支援装置において、前記第3の指標値は、前記高力ボルトの回転によって生じる第3の電流値を含み、前記判定部は、前記締め付け工具によって前記ナットを回転させる際の前記高力ボルト回転角度を前記第3の指標値から算出し、前記第3の指標値から算出された前記高力ボルト回転角度に基づいて前記高力ボルト回転角度の値が合格範囲内にあるか否かを判定する構成としてもよい。本検査支援装置によれば、締め付け工具による締め付けの際の高力ボルト回転角度を、高力ボルト回転角度に相関する第3の電流値から算出することができる。従って、作業者がマーキングを付したり、目視によって座金および高力ボルトの回転を確認したりすることなく、より正確に軸回りの発生を検知することができる。
【0017】
(8)上記検査支援装置において、前記検査結果は、前記締結単位ごとの前記締め付け工具により締め付けが行われた作業日時を含む構成としてもよい。本検査支援装置によれば、本検査支援装置によれば、検査結果が作業日時を含むため、検査の追跡可能性(トレーサビリティ)を向上させることができる。
【0018】
(9)上記検査支援装置において、前記表示制御部は、複数の前記締結単位の前記検査結果を表示する際、前記締結単位ごとの前記作業日時の順番に整列して表示し、前記検査結果は、前記作業日時に基づいて付された前記締結単位ごとの通し番号を含む構成としてもよい。本検査支援装置によれば、検査結果が通し番号を含むため、検査の追跡可能性をより効果的に向上させることができる。
【0019】
(10)上記検査支援装置において、前記表示制御部は、複数の前記締結単位の前記検査結果を表示する際、前記締結単位が存在する前記プレート部材ごとに前記検査結果を表示する構成としてもよい。本検査支援装置によれば、検査結果は、締結単位が存在するプレート部材ごとに表示されるため、検査の追跡可能性をより効果的に向上させることができる。
【0020】
(11)上記検査支援装置において、前記表示制御部は、前記検査結果とともに前記構造物における前記プレート部材の位置を示す情報を表示する構成としてもよい。本検査支援装置によれば、検査結果とともにプレート部材の位置を示す情報が表示されるため、検査の追跡可能性をより効果的に向上させることができる。
【0021】
(12)上記検査支援装置において、前記検査結果は、前記ナット回転角度と、前記座金回転角度と、前記高力ボルト回転角度とのうちの少なくとも1つを含む構成としてもよい。本検査支援装置によれば、検査結果が回転角度を含むため、検査の追跡可能性をより効果的に向上させることができる。
【0022】
(13)上記検査支援装置において、前記検査結果は、複数の前記締結単位について、前記ナット回転角度の平均値を含む構成としてもよい。本検査支援装置によれば、検査結果がナット回転角度の平均値を含むため、検査の追跡可能性をより効果的に向上させることができる。
【0023】
(14)上記検査支援装置において、前記検査結果は、複数の前記締結単位について、前記ナット回転角度の合格範囲を含む構成としてもよい。本検査支援装置によれば、検査結果がナット回転角度の合格範囲を含むため、検査の追跡可能性をより効果的に向上させることができる。
【0024】
(15)上記検査支援装置において、前記検査結果は、前記第1の指標値と、前記第2の指標値と、前記第3の指標値とのうちの少なくとも1つを含む構成としてもよい。本検査支援装置によれば、検査結果が、第1の指標値と、第2の指標値と、第3の指標値とを含むため、検査の追跡可能性をより効果的に向上させることができる。
【0025】
(16)本明細書に開示される検査支援システムは、構造物を構成する2つの鉄骨部材にまたがって配置されるプレート部材と、前記鉄骨部材および前記プレート部材に形成された複数の孔のそれぞれに挿入される高力ボルトと、各前記高力ボルトに螺合するナットと、各前記ナットと前記プレート部材との間に挟持される座金と、によって前記2つの鉄骨部材を接合する接合部の検査を支援する検査支援システムである。本検査支援システムは、前記ナットを締め付ける締め付け工具であって、測定装置を有する締め付け工具と、端末装置と、を備える。前記測定装置は、前記高力ボルトと前記ナットと前記座金との組み合わせである締結単位について、前記締め付け工具による締め付けの際の前記ナットの回転量に相関する第1の指標値を測定する測定部と、前記第1の指標値を前記端末装置に送信する測定装置側通信部と、を有する。前記端末装置は、前記第1の指標値を前記測定装置から受信する端末装置側通信部と、前記測定部によって測定された前記第1の指標値を取得する回転量取得部と、前記締結単位のそれぞれについて、前記第1の指標値に基づいて前記ナットの回転角度であるナット回転角度の値が合格範囲内にあるか否かを判定したナット判定結果を導出する判定部と、前記ナット判定結果を含む検査結果を表示する表示制御部とを有する。
【0026】
本検査支援システムによれば、締め付け工具による締め付けの際のナットの回転量に相関する第1の指標値を取得し、第1の指標値に基づいて、ナット回転角度の合否を判定することができる。すなわち、本検査支援システムによれば、目視によってナット回転角度を特定したり、ナット回転角度の合格範囲を計算したり、各締結単位のナット回転角度が合格範囲内にあるか否かを判定したりする必要がないだけでなく、作業者が各締結単位にマーキングを付すことも要しない。作業者は、検査支援装置の操作によってナットの回転量に相関する第1の指標値を取得するだけで、各締結単位のナット回転角度が合格範囲内にあるか否かを判定することができる。従って、本検査支援システムによれば、締め付け検査にかかる手間を低減することができる。
【0027】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、検査支援装置、検査支援システム、検査支援方法、それらの装置またはシステムの機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態における検査支援システム10の構成を示すブロック図
【
図2】検査システム用データD100のファイル構造を示す説明図
【
図3】検査支援システム10による検査項目の詳細を示す説明図
【
図4】本実施形態における高力ボルトの締め付け検査支援処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0029】
A.実施形態:
A-1.検査支援システム10の構成:
図1は、本実施形態における検査支援システム10の構成を示すブロック図である。検査支援システム10は、建築物や土木構造物等の構造物の検査業務を支援するためのものであり、サーバ装置100と、端末装置200と、図面データ保管サーバ300と、データ生成装置400と、締め付け工具500とを備える。締め付け工具500は、測定装置600を有する。サーバ装置100と、端末装置200と、図面データ保管サーバ300と、データ生成装置400と、測定装置600とは、ネットワークNWを介して、もしくは、例えばBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信方式等によって、互いに接続されている。
図1には、1つの端末装置200が示されているが、検査支援システム10に含まれる端末装置200の数は、2以上でもよい。端末装置200は、特許請求の範囲における検査支援装置に相当する。
【0030】
締め付け工具500は、後述するナットNUの締め付けを行う工具であり、モータ510と、図示しないソケットとを備える。締め付け工具500は、例えばシャーレンチである。モータ510は、ナットNUに嵌合するソケットを回転駆動させるモータである。締め付け工具500は、ソケットの回転駆動により、ナットNUを回転させることで締め付けを行う。
【0031】
測定装置600は、締め付け工具500のモータ510に流れる電流(以下、「モータ電流」という。)等を測定する装置であり、例えばコンピュータ等である。測定装置600は、制御部610と、記憶部620と、通信部630と、測定部640とを備える。記憶部620は、例えばハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)やROM、RAM等により構成されており、測定装置600を制御するための各種プログラム、例えば、後述する測定結果データD504(
図2参照)を生成するためのプログラムを記憶する。制御部610は、例えば中央制御ユニット(以下、「CPU」という。)等により構成されており、記憶部620から読み出した各種プログラムを実行する。通信部630は、近距離無線通信方式により、外部装置と通信を行うインターフェースである。測定部640は、例えば電流センサであり、モータ電流等の測定を行う。通信部630は、特許請求の範囲における測定装置側通信部の一例である。
【0032】
サーバ装置100は、後述する検査システム用データD100を取り扱うファイルサーバであり、例えばサーバ用コンピュータ等である。サーバ装置100は、制御部110と、記憶部120と、通信部130と、指示部140と、表示部150とを備える。記憶部120は、例えばHDDやROM、RAM等により構成されており、サーバ装置100を制御するための各種プログラムや、検査システム用データD100を記憶する。制御部110は、例えばCPU等により構成されており、記憶部120から読み出した各種プログラムを実行する。通信部130は、無線通信方式または有線通信方式により、外部装置と通信を行うインターフェースである。指示部140は、例えばキーボードやマウス等により構成され、作業者の指示を受け付ける。表示部150は、例えば液晶ディスプレイ等により構成される。
【0033】
端末装置200は、ナットNUの締め付け作業を実施する作業者が使用する装置であり、例えばタブレット型端末やスマートフォン、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のウェアラブルデバイス等である。端末装置200は、制御部210と、記憶部220と、通信部230と、表示部240とを備える。記憶部220は、例えばHDDやROM、RAMにより構成されており、端末装置200を制御するための各種プログラムを記憶する。通信部230は、無線通信方式、有線通信方式または近距離無線通信方式により、外部装置と通信を行うインターフェースである。表示部240は、例えば液晶ディスプレイ等により構成され、図面等を表示する。本実施形態では、表示部240は、タッチパネルを有し、作業者による指示を受け付ける指示受付部としても機能する。通信部230は、特許請求の範囲における端末装置側通信部の一例である。
【0034】
制御部210は、例えばCPU等により構成されており、記憶部220から読み出した各種プログラムを実行する。これにより、回転量取得部212、判定部214、表示制御部216等の制御部210の各機能が実現される。これら各機能については、後述の「A-3.検査支援処理」において説明する。
【0035】
図面データ保管サーバ300は、構造物の二次元図面(以下、単に「図面」という。)を表す図面データD301(
図2参照)を保管する装置である。図面データD301は、例えば構造物の平面図等を表すデータであり、例えばDXF形式のCADデータである。
【0036】
データ生成装置400は、検査システム用データD100を生成する装置である。サーバ装置100には、データ生成装置400により生成された検査システム用データD100が記憶される。
【0037】
図2は、検査システム用データD100のファイル構造を示す説明図である。検査システム用データD100は、システムデータD101と個別現場データD102とを含む。システムデータD101は、個別現場データD102を管理するためのデータであり、対象となる全ての構造物に共通に用いられる。システムデータD101は、例えば端末装置200の表示部240に複数種類のアイコンを表示するためのアイコン画像データD201を含む。
【0038】
個別現場データD102は、構造物の建設現場ごとに設定されるデータである。個別現場データD102は、例えば高力ボルト締め付け検査や配管検査等、構造物に対して実施される検査の種類ごとに設定される複数の検査種類別データD202を含む。各検査種類別データD202は、図面データD301と、地図情報データD302とを含む。地図情報データD302は、構造物のIDデータD401と位置データD402と属性データD403とが互いに関連付けられたデータであり、例えばShape形式のデータである。具体的には、地図情報データD302は、IDデータD401と、位置データD402と、属性データD403と、対応関係データD404とを含む。
【0039】
IDデータD401は、検査対象を識別するデータであり、例えば現場を特定する現場情報や、後述する各プレート部材PLに設定されたプレート番号を含む。位置データD402は、構造物の各検査対象に対する図面上の座標(以下、単に「検査対象の座標」という。)を示すデータであり、具体的には、図面データD301に含まれる座標データが流用される。属性データD403は、構造物の各検査対象の属性を示すデータであり、具体的には、アイコンデータD501と、検査データD502と、ID表示データD503とを含む。
【0040】
アイコンデータD501は、端末装置200の表示部240にアイコンを表示するためのデータであり、例えば、システムデータD101に含まれるアイコン画像データD201により表示可能な複数種類のアイコンから特定の種類のアイコンを選出するデータが含まれる。検査データD502は、構造物の各検査対象における検査内容および測定結果を示すデータである。検査データD502には、構造物の各検査対象に関する測定を行った測定結果を表す測定結果データD504が含まれる。ID表示データD503は、端末装置200の表示部240にIDデータD401を表示するためのデータである。
【0041】
対応関係データD404は、IDデータD401と位置データD402とを関連付けるとともに、IDデータD401と属性データD403とを関連付けるデータである。
【0042】
A-2.検査支援システム10による検査項目の詳細:
図3は、検査支援システム10による検査項目の詳細を示す説明図である。
図3Aから
図3Cには、プレート部材PLと、締結単位FUとが示されている。締結単位FUは、高力ボルトBOと、ナットNUと、座金WAとの組み合わせによって構成される。プレート部材PLと締結単位FUは、構造物における2つの図示しない鉄骨部材を接合する接合部を構成する。本実施形態で用いられる高力ボルトBOは、例えばトルシア形高力ボルトである。
【0043】
ここで、本実施形態における構造物の梁の接合部における高力ボルトBOの締め付け方法について、
図3を用いて説明する。鉄骨梁の高力ボルト接合の際には、接合される2つの鉄骨梁にまたがってプレート部材PL(スプライスプレート)が配置される。各鉄骨梁およびプレート部材PLに形成された複数の孔のそれぞれに高力ボルトBOが挿入され、各ナットNUとプレート部材PLとの間に座金WAが挟持された状態となるように各高力ボルトBOにナットNUが螺合される。ナットNUの一次締めが行われた後、プレート部材PL上に各締結単位FUの通し番号を付し、その後、締め付け工具500によるナットNUの本締めが行われる。各締結単位FUのナットNUは、通し番号の順番に締め付けが行われる。なお、高力ボルトBOとしてトルシア形高力ボルトが用いられる場合には、ナットNUの本締めに伴い、ボルト軸部の先端に設けられたピンテールがねじ切られる。
【0044】
図3Aは、検査支援システム10による検査項目のうち、ナット回転角度θ
1の詳細を示す説明図である。締め付け工具500によってナットNUの締め付けが行われると、締め付けが行われる前に始点s1にあったナットNUの最外径に接する仮想円である仮想円Vc上の任意の点は、締め付けが行われた後に終点f1に変位する。このとき、高力ボルトBOの中心である中心点Pbと始点s1とを結ぶ仮想直線を仮想直線S1とし、中心点Pbと終点f1とを結ぶ仮想直線を仮想直線F1とすると、仮想直線S1と仮想直線F1との間の角度がナット回転角度θ
1に相当する。
【0045】
図3Bは、検査支援システム10による検査項目のうち、座金回転角度θ
2の詳細を示す説明図である。締め付け工具500によってナットNUの締め付けが行われると、いわゆる共回りが発生し、ナットNUの回転に伴って座金WAも回転する場合がある。このような場合、締め付けが行われる前に始点s2にあった座金WA上の任意の点は、締め付けが行われた後に終点f2に変位する。このとき、中心点Pbと始点s2とを結ぶ仮想直線を仮想直線S2とし、中心点Pbと終点f2とを結ぶ仮想直線を仮想直線F2とすると、仮想直線S2と仮想直線F2との間の角度が座金回転角度θ
2に相当する。
【0046】
図3Cは、検査支援システム10による検査項目のうち、高力ボルト回転角度θ
3の詳細を示す説明図である。締め付け工具500によってナットNUの締め付けが行われると、いわゆる軸回りが発生し、ナットNUの回転に伴って高力ボルトBOも回転する場合がある。このような場合、締め付けが行われる前に始点s3にあった高力ボルトBO上の任意の点は、締め付けが行われた後に終点f3に変位する。このとき、中心点Pbと始点s3とを結ぶ仮想直線を仮想直線S3とし、中心点Pbと終点f3とを結ぶ仮想直線を仮想直線F3とすると、仮想直線S3と仮想直線F3との間の角度が高力ボルト回転角度θ
3に相当する。
【0047】
A-3.検査支援処理:
次に、本実施形態の検査支援システム10における検査支援処理の動作例を説明する。検査支援処理は、検査システム用データD100を作製する支援準備処理と、生成された検査システム用データD100に基づいて端末装置200の表示部240に検査対象に関する測定結果を表示し、作業員による検査を支援する支援実施処理とを含む。
【0048】
(1)支援準備処理
支援準備処理自体は、本明細書で開示される新規な内容ではないため、以下、簡単に説明する。
【0049】
データ生成装置400は、個別現場データD102を生成する際に、図面データ保管サーバ300から対象となる構造物の図面データD301を取得する。また、データ生成装置400は、地図情報データD302を生成する。構造物では、検査の種類ごとに、検査の必要な検査対象と各検査対象の検査内容とが予め定められている。データ生成装置400は、例えば作業者から入力される現場情報やプレート番号からIDデータD401を生成する。また、データ生成装置400は、作業者が座標を読み取って入力した検査対象の座標を示すデータから位置データD402を生成する。さらに、データ生成装置400は、作業者から入力されるアイコンの種類や検査内容を特定するデータから属性データD403を生成する。
【0050】
データ生成装置400は、生成したIDデータD401と位置データD402と属性データD403とを関連付ける対応関係データD404を生成し、IDデータD401と、位置データD402と、属性データD403と、対応関係データD404とを含む地図情報データD302を生成する。データ生成装置400は、地図情報データD302を生成すると、図面データ保管サーバ300から取得した図面データD301と、地図情報データD302とを含む検査種類別データD202を生成する。データ生成装置400は、現場ごと、および、各現場において検査が実施される検査種類ごとに検査種類別データD202を生成し、個別現場データD102を生成する。データ生成装置400は、生成した個別現場データD102をサーバ装置100に保管させる。以上により、支援準備処理が完了する。
【0051】
(2)支援実施処理
図4は、本実施形態における高力ボルトの締め付け検査支援処理の流れを示すフローチャートである。以下では、検査支援処理の各工程について詳細に説明する。
【0052】
はじめに、締結単位FUごとに、モータ510の駆動により生じる電流値と、座金WAの回転により生じる電流値と、高力ボルトBOの回転により生じる電流値とを取得する(S110)。
【0053】
端末装置200の制御部210は、表示部240を介して作業者から検査開始の指示を受け付けると、検査処理を開始する。作業者は、検査開始の指示に併せて、現場情報、および、作業者を特定する作業者情報を入力する。制御部210は、現場情報および作業者情報を取得すると、取得した現場情報に基づいて、通信部230を介して、サーバ装置100から対象となる構造物の個別現場データD102を読み出し、記憶部220に記憶させる。記憶部220には、予めシステムデータD101が記憶されている。そのため、この時点において、端末装置200は、予め記憶されたシステムデータD101と、取得された個別現場データD102とにより、検査システム用データD100の取得を完了したことになる。
【0054】
作業員が締め付け工具500によるナットNUの締め付け作業を開始すると、測定装置600の制御部610は、測定処理を開始する。測定装置600の制御部610は、ナットNUの締め付け作業時に、測定部640を用いて各種電流値を測定する。このとき測定部640により測定される電流は、モータ電流の値(以下、「第1の電流値Iv1」という。)と、座金WAの回転により生じる電流値(以下、「第2の電流値Iv2」という。)と、高力ボルトBOの回転により生じる電流値(以下、「第3の電流値Iv3」という。)とを含む。
【0055】
制御部610は、締め付け工具500がナットNUの締め付け作業を終了すると、測定結果を表す数値データ(すなわち、電流値Iv1~Iv3)と各締結単位FUの作業日時を表す時刻データとを含む測定結果データD504を生成する。生成した測定結果データD504のファイル名は、高力ボルトBOのIDデータD401を含むファイル名が設定される。つまり、測定結果には、数値と時刻が含まれ、測定結果データD504には、IDデータD401が含まれることになる。
【0056】
測定装置600の制御部610は、通信部630を介して、生成した測定結果データD504を端末装置200に送信する。端末装置200の回転量取得部212は、通信部230を介して、測定装置600から送信された測定結果データD504を受信する。回転量取得部212は、受信した測定結果データD504のファイル名に含まれるIDデータD401に基づいて、記憶部220に記憶される複数の個別現場データD102から、作業員によって入力されたプレート番号に対応する地図情報データD302を選択する。回転量取得部212は、プレート番号に対応する地図情報データD302の属性データD403に含まれる検査データD502に、受信した測定結果データD504を追加して記憶部220に記憶する。
【0057】
次に、電流値Iv1~Iv3を用いて、締結単位FUごとのトルク値Tvと、ナット回転角度θ1と、座金回転角度θ2と、高力ボルト回転角度θ3とを算出する(S120)。
【0058】
制御部210の判定部214は、測定結果データD504に含まれる数値データ(つまり、電流値Iv1~Iv3)に基づいて、トルク値Tvおよび回転角度θ1~θ3を算出する。トルク値Tvおよび回転角度θ1~θ3を算出する方法は、例えば、予め電流値Iv1~Iv3と、トルク値Tvおよび回転角度θ1~θ3との相関を示す相関式を実験によって求め、実際の各締結単位FUの締め付け作業時に示された電流値Iv1~Iv3を上述の相関式に当てはめる方法が挙げられる。判定部214は、予め記憶部220に記憶されている上述の相関式を用いることにより、トルク値Tvおよび回転角度θ1~θ3を算出する。
【0059】
第1の電流値Iv1、および、締め付け工具500によってナットNUを締め付ける際のトルク値Tvは、締結単位FUが締め付け工具500によって締め付けられる際のナット回転角度θ1に相関する第1の指標値である。判定部214は、測定結果データD504における第1の電流値Iv1からトルク値Tvを算出し、さらに、トルク値Tvからナット回転角度θ1を算出する。第2の電流値Iv2は、締結単位FUが締め付け工具500によって締め付けられる際の座金回転角度θ2に相関する第2の指標値である。判定部214は、測定結果データD504における第2の電流値Iv2から座金回転角度θ2を算出する。第3の電流値Iv3は、締結単位FUが締め付け工具500によって締め付けられる際の高力ボルト回転角度θ3に相関する第3の指標値である。判定部214は、測定結果データD504における第3の電流値Iv3から高力ボルト回転角度θ3を算出する。
【0060】
次に、同一のプレート部材PL上の各締結単位FUについて、ナット回転角度θ1の平均値Av1を算出する(S130)。
【0061】
制御部210は、IDデータD401に基づいて、同一のプレート部材PL上に存在する複数の締結単位FUを選抜する。判定部214は、同一のプレート部材PL上に存在する複数の締結単位FUについてのナット回転角度θ1の平均値Av1を算出する。より詳細には、判定部214は、同一のプレート部材PL上にあるすべての締結単位FUについてのナット回転角度θ1を合計し、合計値を締結単位FUの個数で除することにより、ナット回転角度θ1の平均値Av1を算出する。
【0062】
次に、同一のプレート部材PL上の各締結単位FUについて、ナット回転角度θ1の合格範囲Pr1を算出する(S140)。
【0063】
各締結単位FUのナット回転角度θ1の合否は、複数の締結単位FUにおけるナット回転角度θ1の平均値Av1から所定の範囲内に収まっているか否かによって判定される。所定の範囲内とは、例えば平均値Av1を基準として±30度である。判定部214は、ナット回転角度θ1の平均値Av1に基づいて、ナット回転角度θ1の合格範囲Pr1を算出する。
【0064】
次に、各締結単位FUについて、回転角度θ1~θ3の値が合格範囲内にあるか否かを判定したナット判定結果Ju1と、座金判定結果Ju2と、高力ボルト判定結果Ju3とを導出する(S150)。
【0065】
各締結単位FUのナット回転角度θ1が合格範囲内にあるか否かを判定したナット判定結果Ju1は、ナット回転角度θ1の合格範囲Pr1に基づいて判定される。各締結単位FUのナット回転角度θ1が合格範囲Pr1の範囲に収まっていれば合格と判定され、各締結単位FUのナット回転角度θ1が合格範囲Pr1の範囲を超えていれば不合格と判定される。なお、ナット判定結果Ju1は、ナット回転角度θ1に相関する値である第1の指標値(すなわち、第1の電流値Iv1およびトルク値Tv)に基づいて直接的に判定されてもよい。
【0066】
各締結単位FUの座金回転角度θ2が合格範囲内にあるか否か(換言すれば、共回りが発生していないか否か)を判定した座金判定結果Ju2は、各締結単位FUの座金回転角度θ2が所定の角度以内であるかに基づいて判定される。所定の角度は、検査ごとに設定される。各締結単位FUの座金回転角度θ2が所定の角度以内に収まっていれば合格と判定され、各締結単位FUの座金回転角度θ2が所定の角度を超えていれば不合格と判定される。なお、座金判定結果Ju2は、座金回転角度θ2に相関する値である第2の指標値(すなわち、第2の電流値Iv2)に基づいて直接的に判定されてもよい。
【0067】
各締結単位FUの高力ボルト回転角度θ3が合格範囲内にあるか否か(換言すれば、軸回りが発生していないか否か)を判定した高力ボルト判定結果Ju3は、各締結単位FUの高力ボルト回転角度θ3が所定の角度以内であるかに基づいて判定される。所定の角度は、検査ごとに設定される。各締結単位FUの高力ボルト回転角度θ3が所定の角度以内に収まっていれば合格と判定され、各締結単位FUの高力ボルト回転角度θ3が所定の角度を超えていれば不合格と判定される。なお、高力ボルト判定結果Ju3は、高力ボルト回転角度θ3に相関する値である第3の指標値(すなわち、第3の電流値Iv3)に基づいて直接的に判定されてもよい。
【0068】
次に、検査画面HSを生成・表示する(S160)。
【0069】
図5は、検査画面HSの一例を示す説明図である。検査画面HSは、端末装置200の表示部240に表示される。検査画面HSは、ヘッダ領域HUと、部材表示領域HBと、検査結果表示領域HKとを含む。ヘッダ領域HUは、作業者情報に基づく作業者コード(例えば、123456)と、検査種類情報に基づく検査識別子(例えば、高力ボルト締め付け検査)と、フロア情報に基づくフロア識別子(例えば、07F)とを表示する領域である。部材表示領域HBは、対象構造部材の種類を示す識別子(例えば、梁)と、対象構造部材の種別を示す符号(例えば、PL2)と、構造物の通芯を基準とした構造物におけるプレート部材PLの位置を示す識別子(例えば、X通:1-1 Y通:A-B A通り側)とを表示する領域である。
【0070】
検査結果表示領域HKは、検査結果Trを表示する領域である。検査結果Trには、通し番号Snと、作業日時Wbと、電流値Iv1~Iv3と、トルク値Tvと、回転角度θ1~θ3と、判定結果Ju1~Ju3と、平均値Av1と、合格範囲Pr1とを含む。
【0071】
表示制御部216は、複数の締結単位FUの検査結果Trを表示する際、測定結果データD504の時刻データに基づいて、複数の締結単位FUの検査結果Trを作業日時Wbの順番に整列して表示する。複数の締結単位FUは、測定結果データD504の作業日時データに基づいて通し番号Snが付される。すなわち、ここで表示される通し番号Snは、締め付け作業時に、プレート部材PL上に付した各締結単位FUの通し番号と一致することになる。
【0072】
表示制御部216は、複数の締結単位FUの検査結果Trを表示する際、締結単位FUが存在するプレート部材PLごとに検査結果Trを表示する。検査結果表示領域HKに表示された電流値Iv1~Iv3と、トルク値Tvと、回転角度θ1~θ3と、平均値Av1と、合格範囲Pr1とは、測定装置600による実測値や、判定部214によって算出された値が表示される。判定結果Ju1~Ju3は、それぞれの項目が合格であったときは「OK」と表示され、不合格であったときは「NG」と表示される。
【0073】
次に、検査結果Trを記憶する(S170)。
【0074】
端末装置200の制御部210は、作業者による検査終了の指令を受け付けると、通信部230を介して、プレート番号に対応する検査データD502をサーバ装置100に送信する。サーバ装置100の制御部110は、端末装置200から送信された検査データD502を受信すると、プレート番号に対応する地図情報データD302の属性データD403に含まれる検査データD502を、受信した検査データD502に置き換えて記憶する。以上により、支援実施処理が完了する。
【0075】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の端末装置200は、構造物を構成する2つの鉄骨部材にまたがって配置されるプレート部材PLと、鉄骨部材およびプレート部材PLに形成された複数の孔のそれぞれに挿入される高力ボルトBOと、各高力ボルトBOに螺合するナットNUと、各ナットNUとプレート部材PLとの間に挟持される座金WAと、によって2つの鉄骨部材を接合する接合部の検査を支援する。端末装置200は、高力ボルトBOとナットNUと座金WAとの組み合わせである締結単位FUについて、ナットNUを締め付ける締め付け工具500による締め付けの際のナットNUの回転量に相関する第1の指標値を締め付け工具500から取得する回転量取得部212と、締結単位FUのそれぞれについて、第1の指標値に基づいて、ナットNUの回転角度であるナット回転角度の値が合格範囲Pr1内にあるか否かを判定したナット判定結果Ju1を導出する判定部214と、前記ナット判定結果Ju1を含む検査結果Trを表示する表示制御部216とを備える。
【0076】
このように、本実施形態の端末装置200によれば、締め付け工具500による締め付けの際のナットNUの回転量に相関する第1の指標値を取得し、第1の指標値に基づいて、ナット回転角度θ1の合否を判定することができる。すなわち、端末装置200によれば、目視によってナット回転角度θ1を特定したり、ナット回転角度θ1の合格範囲Pr1を計算したり、各締結単位FUのナット回転角度θ1が合格範囲Pr1内にあるか否かを判定したりする必要がないだけでなく、作業者が各締結単位FUにマーキングを付すことも要しない。作業者は、端末装置200の操作によってナットNUの回転量に相関する第1の指標値を取得するだけで、各締結単位FUのナット回転角度θ1が合格範囲Pr1内にあるか否かを判定することができる。従って、端末装置200によれば、締め付け検査にかかる手間を低減することができる。
【0077】
また、本実施形態の端末装置200では、第1の指標値は、締め付け工具500のモータ510の駆動により生じる第1の電流値Iv1と、締め付け工具500によってナットNUを締め付ける際のトルク値Tvとの少なくとも一方を含む。本実施形態の端末装置200によれば、締め付け工具500による締め付けの際のナット回転角度θ1が合格範囲Pr1内にあるか否かを、作業者の目視に頼らず、ナットNUの回転量に相関する数値データである第1の電流値Iv1またはトルク値Tvに基づいて判定することができる。そのため、締め付け検査の検査精度を向上させることができる。
【0078】
また、本実施形態の端末装置200では、判定部214は、締め付け工具500によってナットNUを回転させる際のナット回転角度θ1を第1の指標値から算出し、第1の指標値から算出されたナット回転角度θ1に基づいてナット回転角度θ1の値が合格範囲Pr1内にあるか否かを判定する。本実施形態の端末装置200によれば、締め付け工具500による締め付けの際のナット回転角度θ1を、ナットNUの回転量に相関する数値データである第1の指標値から算出し、算出されたナット回転角度θ1に基づいて、合格範囲Pr1内にあるか否かを判定することができる。そのため、締め付け検査の検査精度をより効果的に向上させることができる。
【0079】
また、本実施形態の端末装置200では、回転量取得部212は、締結単位FUについて、締め付け工具500から、締め付け工具500による締め付けの際の座金WAの回転量に相関する第2の指標値を取得し、判定部214は、締結単位FUのそれぞれについて、第2の指標値に基づいて、座金WAの回転角度である座金回転角度θ2の値が合格範囲Pr1内にあるか否かを判定した座金判定結果Ju2を導出する。本実施形態の端末装置200によれば、締め付け工具500による締め付けの際の座金回転角度θ2が合格範囲内にあるか否かを、座金WAの回転量に相関する第2の指標値に基づいて判定することができる。従って、作業者がマーキングを付したり、目視によって座金WAの回転を確認したりすることなく、ナットNUの回転に伴って座金WAが回転する、いわゆる共回りの発生を検知することができる。
【0080】
また、本実施形態の端末装置200では、第2の指標値は、座金WAの回転によって生じる第2の電流値Iv2を含み、判定部214は、締め付け工具500によってナットNUを回転させる際の座金回転角度θ2を第2の指標値から算出し、第2の指標値から算出された座金回転角度θ2に基づいて座金回転角度θ2の値が合格範囲内にあるか否かを判定する。本実施形態の端末装置200によれば、締め付け工具500による締め付けの際の座金回転角度θ2を、座金回転角度θ2に相関する第2の電流値Iv2から算出することができる。従って、作業者がマーキングを付したり、目視によって座金WAの回転を確認したりすることなく、より正確に共回りの発生を検知することができる。
【0081】
また、本実施形態の端末装置200では、回転量取得部212は、締結単位FUについて、締め付け工具500から、締め付け工具500による締め付けの際の高力ボルトBOの回転量に相関する第3の指標値を取得し、判定部214は、締結単位FUのそれぞれについて、第3の指標値に基づいて、高力ボルトBOの回転角度である高力ボルト回転角度θ3の値が合格範囲内にあるか否かを判定した高力ボルト判定結果Ju3を導出する。本実施形態の端末装置200によれば、締め付け工具500による締め付けの際の高力ボルト回転角度θ3が合格範囲内にあるか否かを、高力ボルトBOの回転量に相関する第3の指標値に基づいて判定することができる。従って、作業者がマーキングを付したり、目視によって高力ボルトBOの回転を確認したりすることなく、ナットNUの回転に伴って高力ボルトBOが回転する、いわゆる軸回りの発生を検知することができる。
【0082】
また、本実施形態の端末装置200では、第3の指標値は、高力ボルトBOの回転によって生じる第3の電流値Iv3を含み、判定部214は、締め付け工具500によってナットNUを回転させる際の高力ボルト回転角度θ3を第3の指標値から算出し、第3の指標値から算出された高力ボルト回転角度θ3に基づいて高力ボルト回転角度θ3の値が合格範囲内にあるか否かを判定する。本実施形態の端末装置200によれば、締め付け工具500による締め付けの際の高力ボルト回転角度θ3を、高力ボルト回転角度θ3に相関する第3の電流値Iv3から算出することができる。従って、作業者がマーキングを付したり、目視によって高力ボルトBOの回転を確認したりすることなく、より正確に軸回りの発生を検知することができる。
【0083】
また、本実施形態の端末装置200では、検査結果Trは、締結単位FUごとの締め付け工具500により締め付けが行われた作業日時Wbを含む。本実施形態の端末装置200によれば、検査結果Trが作業日時Wbを含むため、検査の追跡可能性(トレーサビリティ)を向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態の端末装置200では、表示制御部216は、複数の締結単位FUの検査結果Trを表示する際、締結単位FUごとの作業日時Wbの順番に整列して表示し、検査結果Trは、作業日時Wbに基づいて付された締結単位FUごとの通し番号を含む。本実施形態の端末装置200によれば、検査結果Trが通し番号Snを含むため、検査の追跡可能性をより効果的に向上させることができる。
【0085】
また、本実施形態の端末装置200では、表示制御部216は、複数の締結単位FUの検査結果Trを表示する際、締結単位FUが存在するプレート部材PLごとに検査結果Trを表示する。本実施形態の端末装置200によれば、検査結果Trが締結単位FUが存在するプレート部材PLごとに表示されるため、検査の追跡可能性をより効果的に向上させることができる。
【0086】
また、本実施形態の端末装置200では、表示制御部216は、検査結果Trとともに構造物におけるプレート部材PLの位置を示す情報を表示する。本実施形態の端末装置200によれば、検査結果Trとともにプレート部材PLの位置を示す情報が表示されるため、検査の追跡可能性をより効果的に向上させることができる。
【0087】
また、本実施形態の端末装置200では、検査結果Trは、ナット回転角度θ1と、座金回転角度θ2と、高力ボルト回転角度θ3とのうちの少なくとも1つを含む。本実施形態の端末装置200によれば、検査結果Trが回転角度θ1~θ3を含むため、検査の追跡可能性をより効果的に向上させることができる。
【0088】
また、本実施形態の端末装置200では、検査結果Trは、複数の締結単位FUについて、ナット回転角度θ1の平均値Av1を含む。本実施形態の端末装置200によれば、検査結果Trがナット回転角度θ1の平均値Av1を含むため、検査の追跡可能性をより効果的に向上させることができる。
【0089】
また、本実施形態の端末装置200では、検査結果Trは、複数の締結単位FUについて、ナット回転角度θ1の合格範囲Pr1を含む。本実施形態の端末装置200によれば、検査結果Trがナット回転角度θ1の合格範囲Pr1を含むため、検査の追跡可能性をより効果的に向上させることができる。
【0090】
また、本実施形態の端末装置200では、検査結果Trは、第1の指標値と、第2の指標値と、第3の指標値とのうちの少なくとも1つを含む。本実施形態の端末装置200によれば、検査結果Trが、第1の指標値と、第2の指標値と、第3の指標値とを含むため、検査の追跡可能性をより効果的に向上させることができる。
【0091】
また、本実施形態の検査支援システム10は、構造物を構成する2つの鉄骨部材にまたがって配置されるプレート部材PLと、鉄骨部材およびプレート部材PLに形成された複数の孔のそれぞれに挿入される高力ボルトBOと、各高力ボルトBOに螺合するナットNUと、各ナットNUとプレート部材PLとの間に挟持される座金WAと、によって2つの鉄骨部材を接合する接合部の検査を支援する。検査支援システム10は、ナットNUを締め付ける締め付け工具500であって、測定装置600を有する締め付け工具500と、端末装置200と、を備える。測定装置600は、高力ボルトBOとナットNUと座金WAとの組み合わせである締結単位FUについて、締め付け工具500による締め付けの際のナットNUの回転量に相関する第1の指標値を測定する測定部640と、第1の指標値を端末装置200に送信する通信部630と、を有する。端末装置200は、第1の指標値を測定装置600から受信する通信部230と、測定部640によって測定された第1の指標値を取得する回転量取得部212と、締結単位FUのそれぞれについて、第1の指標値に基づいてナットNUの回転角度であるナット回転角度θ1の値が合格範囲Pr1内にあるか否かを判定したナット判定結果Ju1を導出する判定部214と、ナット判定結果Ju1を含む検査結果Trを表示する表示制御部216と、を有する。
【0092】
本実施形態の検査支援システム10によれば、締め付け工具500による締め付けの際のナットNUの回転量に相関する第1の指標値を取得し、第1の指標値に基づいて、ナット回転角度θ1の合否を判定することができる。すなわち、検査支援システム10によれば、目視によってナット回転角度θ1を特定したり、ナット回転角度θ1の合格範囲Pr1を計算したり、各締結単位FUのナット回転角度θ1が合格範囲Pr1内にあるか否かを判定したりする必要がないだけでなく、作業者が各締結単位FUにマーキングを付すことも要しない。作業者は、端末装置200の操作によってナットNUの回転量に相関する第1の指標値を取得するだけで、各締結単位FUのナット回転角度θ1が合格範囲Pr1内にあるか否かを判定することができる。従って、検査支援システム10によれば、締め付け検査にかかる手間を低減することができる。
【0093】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0094】
上記実施形態では、検査支援システム10は、サーバ装置100と、端末装置200と、締め付け工具500とに加えて、図面データ保管サーバ300と、データ生成装置400とを備える例を示したが、図面データ保管サーバ300とデータ生成装置400とが1つのサーバにより構成されていてもよい。また、図面データD301が、例えばサーバ装置100に取得されて記憶部120に記憶されている場合には、図面データ保管サーバ300は必ずしも必要ではない。また、検査システム用データD100が、サーバ装置100から端末装置200に直接送信され、属性データD403が、端末装置200からサーバ装置100に直接送信される場合には、データ生成装置400は必ずしも必要ではない。
【0095】
上記実施形態では、測定装置600の通信部630は、近距離無線通信方式によって外部装置との通信を行っているが、無線通信方式または有線通信方式によって外部装置との通信を行ってもよい。また、上記実施形態では、通信部630は、測定結果データD504を直接的に端末装置200に送信しているが、無線通信方式または有線通信方式を有していれば、ネットワークNWおよびサーバ装置100を介して、端末装置200に送信してもよい。
【0096】
上記実施形態において端末装置200に備えられている構成の一部は、測定装置600に備えられていてもよい。例えば、測定装置600が判定部214を備えていてもよい。このような場合、測定部640が測定した数値データを用いて、測定装置600が備える判定部214が、回転角度θ1~θ3およびトルク値Tvの算出、および、判定結果Ju1~Ju3の導出の一部または全部を実施してもよい。
【0097】
上記実施形態では、測定部640は、ナット回転角度θ1に相関する第1の指標値のうち、第1の電流値Iv1を測定しているが、測定部640は、トルク値Tvを測定するものであってもよい。
【0098】
上記実施形態では、判定部214は、第1の電流値Iv1からトルク値Tvを算出し、さらに、トルク値Tvからナット回転角度θ1を算出しているが、第1の電流値Iv1から直接的にナット回転角度θ1を算出してもよい。
【0099】
上記実施形態では、測定装置600は、必ずしもに締め付け工具500設けられていなくてもよく、測定装置600は、締め付け工具500から独立した別の装置であってもよい。
【0100】
上記実施形態における端末装置200の構成は、あくまで一例であり、種々変形が可能である。例えば、端末装置200は、撮影部等を備えていてもよい。
【0101】
上記実施形態では、端末装置200の表示部240が、操作受付部を兼ねている例を示したが、端末装置200は、表示部240とは別に操作受付部を備えていてもよい。
【0102】
上記実施形態における検査システム用データD100の構造は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0103】
上記実施形態では、構造物の図面として二次元図面のみを用いる例を示したが、二次元図面と三次元図面とを用いてもよい。
【0104】
上記実施形態における高力ボルトBOの締め付け方法は、あくまで一例であり、種々変形が可能である。例えば、本締めの前に行われる一次締めが省略されてもよい。また、プレート部材PL上に各締結単位FUの通し番号を付す工程が省略されてもよい。
【0105】
上記実施形態における検査画面HSはあくまで一例であり、種々変形が可能である。例えば、検査画面HSに表示された検査結果Trは、座金判定結果Ju2と高力ボルト判定結果Ju3との両方を含んでいるが、少なくとも一方を含んでいればよい。
【符号の説明】
【0106】
10:検査支援システム 100:サーバ装置 110:制御部 120:記憶部 130:通信部 140:指示部 150:表示部 200:端末装置 210:制御部 212:回転量取得部 214:判定部 216:表示制御部 220:記憶部 230:通信部 240:表示部 300:図面データ保管サーバ 400:データ生成装置 500:締め付け工具 510:モータ 600:測定装置 610:制御部 620:記憶部 630:通信部 640:測定部 NW:ネットワーク PL:プレート部材 FU:締結単位 BO:高力ボルト NU:ナット WA:座金 Pb:中心点 s1~s3:始点 f1~f3:終点 S1~S3:仮想直線 F1~F3:仮想直線 θ1: ナット回転角度 θ2: 座金回転角度 θ3: 高力ボルト回転角度 HB:部材表示領域 HK:検査結果表示領域 HS:検査画面 HU:ヘッダ領域 Tr:検査結果 Iv1:第1の電流値 Iv2:第2の電流値 Iv3:第3の電流値 Tv:トルク値 Ju1:ナット判定結果 Ju2:座金判定結果 Ju3:高力ボルト判定結果 Av1:平均値 Pr1:合格範囲 Sn:通し番号 Wb:作業日時