(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125483
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】回転電機および絶縁部材
(51)【国際特許分類】
H02K 1/32 20060101AFI20240911BHJP
H02K 3/24 20060101ALI20240911BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H02K1/32 B
H02K3/24 P
H02K3/34 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033325
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】大図 達也
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅志
【テーマコード(参考)】
5H601
5H603
5H604
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601CC11
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD30
5H601EE26
5H601GA02
5H601GA22
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601HH13
5H603AA13
5H603AA14
5H603BB05
5H603BB12
5H603CA05
5H603CB02
5H603CC05
5H603CC17
5H603CD02
5H603CD05
5H603FA02
5H604AA02
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604DB01
5H604PB03
(57)【要約】
【課題】ステータコイル全体に対する冷却の向上を図ることができる回転電機の提供。
【解決手段】回転電機のステータは、ステータコイル21と、ステータコイル21を内包する絶縁部材23と、絶縁部材23に内包されたステータコイル21が挿入される複数のスロット22が形成された環状のステータコア20と、を備え、ステータコア20には、複数のスロット22のそれぞれに冷却媒体を導入する流路24a,24bが形成され、絶縁部材23には、スロット22に導入された冷却媒体を絶縁部材23により内包された空間の隙間32a,32bに導く開口230が形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータおよびステータとを備える回転電機であって、
前記ステータは、
ステータコイルと、
前記ステータコイルを内包する絶縁部材と、
前記絶縁部材に内包された前記ステータコイルが挿入される複数のスロットが形成された環状のステータコアと、
を備え、
前記ステータコアには、複数の前記スロットのそれぞれに冷却媒体を導入する流路が形成され、
前記絶縁部材には、前記スロットに導入された前記冷却媒体を前記絶縁部材により内包された空間に導く導入開口が形成されている、回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記内包された空間に導かれた前記冷却媒体は、前記ステータコイルのコイルエンド方向に流れて該コイルエンドに排出される、回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機において、
前記流路は、前記ステータコアの外周側領域であるコアバックに形成され、前記スロットのスロット底面に流出口を有し、
前記導入開口は、前記流出口に対向する第1開口領域と、該第1開口領域からステータコア径方向の内周側に伸延する第2開口領域とを有する、回転電機。
【請求項4】
請求項1に記載の回転電機において、
前記流路は、前記ステータコアの外周側領域であるコアバックに形成され、前記スロットのスロット底面に流出口を有し、
前記導入開口は、前記流出口に対向する第1開口領域、および/または、前記スロットのスロット側壁に対向する第2開口領域を有し、
少なくとも前記第1開口領域および前記第2開口領域が対向するスロット壁面には、窪み部が設けられている、回転電機。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の回転電機において、
前記ステータコイルの延在方向において前記導入開口よりも外側の領域には、前記絶縁部材と前記ステータコイルとの隙間を埋める充填材が設けられ、
前記ステータコイルの延在方向において前記導入開口が設けられている領域では、前記絶縁部材と前記ステータコイルとの間に隙間が形成されている、回転電機。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の回転電機において、
前記ステータコイルの延在方向における前記絶縁部材の両端領域には、前記絶縁部材と前記ステータコイルとの隙間を埋める充填材が設けられ、
前記絶縁部材の前記両端領域により挟まれた領域では、前記絶縁部材と前記ステータコイルとの間に隙間が形成されている、回転電機。
【請求項7】
請求項1に記載の回転電機において、
前記導入開口は、前記ステータコイルの延在方向において前記絶縁部材の一端側に配置され、
前記冷却媒体を前記スロットから前記ステータコアの外部へ排出する排出流路と、
前記ステータコイルの延在方向において前記絶縁部材の他端側に配置され、前記内包された空間を流れた前記冷却媒体を前記排出流路へと導く排出開口と、をさらに備える回転電機。
【請求項8】
請求項1に記載の回転電機において、
前記ステータコイルを内包する前記絶縁部材は、
前記スロットのスロット底面およびスロット側壁に対向して配置されるシート状絶縁部材と、
前記スロットのスロット開口に固定される固定部材と、を備える回転電機。
【請求項9】
請求項1に記載の回転電機の前記ステータコアの前記スロットに挿入された前記ステータコイルを内包するシート状の絶縁部材であって、
前記スロットに導入された前記冷却媒体を、前記絶縁部材により内包された空間へ導く導入開口が形成されている、絶縁部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機および絶縁部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータコイルのコイルエンドを冷却する構成として、コイルエンドの上方から冷却媒体を供給する冷却管を備える回転電機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した回転電機では、コイルエンドに冷却媒体を供給して冷却する構成であるため、スロット内に収納されたコイル部分を含めたステータコイル全体に対する冷却が、不十分となる問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による回転電機は、ロータおよびステータとを備える回転電機であって、前記ステータは、ステータコイルと、前記ステータコイルを内包する絶縁部材と、前記絶縁部材に内包された前記ステータコイルが挿入される複数のスロットが形成された環状のステータコアと、を備え、前記ステータコアには、複数の前記スロットのそれぞれに冷却媒体を導入する流路が形成され、前記絶縁部材には、前記スロットに導入された前記冷却媒体を前記絶縁部材により内包された空間に導く導入開口が形成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ステータコイル全体に対する冷却の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の回転電機の概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、ステータコア20bを示す図である。
【
図8】
図8は、変形例1における絶縁部材を示す図である。
【
図9】
図9は、ステータコイルを内包するように折り曲げた状態の絶縁部材を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、変形例1におけるD2-D2断面図である。
【
図11】
図11は、変形例2における絶縁部材を示す図である。
【
図12】
図12は、変形例2におけるD2-D2断面図である。
【
図13】
図13は、変形例3における絶縁部材を示す図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態の回転電機の概略構成を示す図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態におけるA-A断面図である。
【
図17】
図17は、第2の実施形態における絶縁部材を示す図である。
【
図20】
図20は、変形例4における絶縁部材を示す図である。
【
図21】
図21は、変形例4におけるF2-F2断面図である。
【
図23】
図23は、変形例5における絶縁部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。また、以下の説明では、同一または類似の要素および処理には同一の符号を付し、重複説明を省略する場合がある。なお、以下に記載する内容はあくまでも本発明の実施の形態の一例を示すものであって、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、他の種々の形態でも実施をすることが可能である。
【0009】
(第1の実施形態)
図1~7は、第1の実施形態の回転電機1を説明する図である。
図1は、回転電機1のステータ2およびロータ3を、ロータ3の軸方向に沿ってz座標軸の正方向から見た図である。
図2は、
図1のA-A断面図である。回転電機1は、ケース4と、ケース4内に配置された環状のステータ2と、ステータ2の内周側に配置されたロータ3とを備える。ステータ2は、ステータコア20(20a,20b)、ステータコイル21を備える。
【0010】
図2に示すように、ステータコア20aはステータコア20bを挟むように一対設けられている。ステータコア20aとステータコア20bとは同一形状である。ステータコア20a,20bは、例えば、電磁鋼板を積層して形成される。また、冷却媒体導入用のステータコア20bについては、圧粉鉄心としたり、樹脂成型で構成したりしても良い。ステータコア20a,20bの内周側の領域には複数のスロット22が形成されている。
図3は、ステータコア20bを示す図である。ステータコア20bは、外形がステータコア20aよりも小さい。また、ステータコア20bには、スロット22のスロット底面220とコアバック200の外周面201との間を貫通する流路24bが形成されている。ステータコア20(20a,20b)の複数のスロット22のそれぞれには、ステータコイル21が収納されている。図示した例では、ステータコイル21には角線の導体が用いられているが、丸線の導体を用いても良い。
【0011】
各スロット22にはステータコイル21のコイル辺を構成する4本のコイル導体が収納されている。スロット22内には、ステータコイル21(4本のコイル導体)の周囲を囲むように、すなわち、ステータコイル21を内包するように、絶縁部材23が設けられている。絶縁部材23には、例えば、絶縁紙や合成樹脂シートなどが用いられる。
【0012】
図2に示すように、ケース4には、冷却媒体をケース内に導入する貫通孔43が形成された冷媒導入部42が設けられている。貫通孔43は、ステータコア20bの外周面201と対向する位置に設けられている。ステータコア20bの外周面201とケース4の内周面とで挟まれた円環状の空間は、冷却媒体の流路24aを形成する。流路24aは、ケース4の貫通孔43およびステータコア20bの流路24bと連通している。
【0013】
上述したように、ステータコア20bの流路24bは、流路24aと連通している。流路24bは、スロット底面220に開口240を有する。スロット22内のスロットコイル21を内包する絶縁部材23には、開口240と対向する位置に開口230が形成されている。
【0014】
図4は、
図2のステータコア20aの部分のD1-D1断面図である。スロット22内には、絶縁部材23により内包されたステータコイル21が配置されている。絶縁部材23の内表面側には接着層30が設けられ、外表面側には発泡層31が設けられている。絶縁部材23は、接着層30によって各ステータコイル21の外周面に接着される。絶縁部材23とスロット22との隙間は、発泡層31により埋められている。例えば、接着層30には熱硬化性樹脂等が用いられ、発泡層31には発泡材に熱硬化性樹脂等を混合したものが用いられる。
【0015】
接着層30および発泡層31の各々は、シート状の絶縁部材23の内表面側および外表面側に予め塗布されている。そして、ステータコイル21の導体を絶縁部材23により包む。
図4に示すように、ステータコア20に形成されたスロット22は、スロット底面220と対向する内周側が若干開いた半閉型スロットになっている。絶縁部材23により内包されたステータコイル21を、スロット22に対してステータコア20の端面側から軸方向に挿入する。その後、接着層30および発泡層31の加熱硬化処理を行うことにより、絶縁部材23とステータコイル21とが接着されると共に、スロット22の壁面と絶縁部材23との隙間が発泡層31によって埋められる。なお、ステータコイル21は完全な直線状になっておらず、うねりや反りなどが有る。そのため、隣り合うステータコイル21の間には、隙間32aが生じやすい。
【0016】
図5は、
図2のステータコア20bの部分のD2-D2断面図である。D2-D2断面図は、
図2に示すように流路24bが設けられている部分の断面図である。上述したように、スロット22のスロット底面220には、流路24bの開口240が形成されている。絶縁部材23には、開口240に対向する位置に開口230が形成されている。そのため、開口240が対向する位置には、発泡層31も存在しない。また、D2-D2断面においては、絶縁部材23とステータコイル21との間には接着層30が設けられておらず、隙間32bが生じている。なお、接着層30の配置領域の詳細については後述する。
【0017】
図6は、シート状の絶縁部材23を展開したときの内表面側を示す図である。破線L1~L5は、絶縁部材23でステータコイル21を包む際の折り曲げ箇所を示している。開口230が形成されている破線L2と破線L3との間の領域が、スロット22のスロット底面220に対向する領域である。開口230に対して軸方向左側の領域R1および軸方向右側の領域R3には接着層30が設けられている。開口230が配置されている軸方向の中央領域R2には接着層30は設けられていない。D1-D1断面図(
図4)は、
図6の領域R3の部分を図示上下に断面したものである。D2-D2断面図(
図5)は、
図6の領域R2の部分を断面したものである。なお、図示は省略するが、絶縁部材23の外表面側には、開口230を除く全ての領域に発泡層31が設けられている。
【0018】
なお、ステータコイル21を絶縁部材23で内包する際の包み方については、
図4のD1-D1断面図に示すような形態に限定されない。例えば、
図7に示すようにシート状の絶縁部材23を折り曲げて、ステータコイル21を内包するようにしても良い。
【0019】
(冷却媒体経路の説明)
次いで、冷却媒体が流れる経路について説明する。冷却媒体は、ケース4の貫通孔43を介して外部から流路24aに供給される。冷却媒体としては、例えば、冷却油が用いられる。流路24aに供給された冷却媒体は、円環状の流路24a内を周方向に流れて、
図5の矢印E1で示すように各流路24bに流入する。
【0020】
流路24bに流入した冷却媒体は、
図5に示すように開口240および開口230を通って絶縁部材23とステータコイル21の間の隙間32bに流入する。そして、矢印E2に示すように、冷却媒体は、隙間32b内をステータコア20の内周側に向かって流れる。さらに、隙間32bの冷却媒体は、ステータコイル21間の隙間32aに侵入する。隙間32a,32bに侵入した冷却媒体は、
図2の矢印E3で示すように隙間32a,32b(不図示)をコイルエンド方向へと流れる。最終的には、ステータコイル21のコイルエンドへと排出される。
【0021】
上述したように、流路24bによりスロット22に導入された冷却媒体は、開口230から絶縁部材23による内包空間の隙間32a,32bへ導かれる。そのため、冷却媒体はステータコイル21に接触し、ステータコイル21を直接的に冷却する。その結果、冷却媒体によるステータコイル21の冷却を効率的に行うことができ、冷却効果の向上を図ることができる。また、冷却媒体は隙間32a,32bをコイルエンド方向に流れて、コイルエンドへと排出される。そのため、コイルエンドが排出された冷却媒体により冷却されると共に、冷却媒体がステータ2とロータ3とのエアギャップに侵入するのを防止することができる。
【0022】
(変形例1)
図8は、変形例1における絶縁部材23Aを示す図である。上述した
図6の場合と同様に、
図8は、絶縁部材23Aを展開したときの内表面側を示す。破線L1~L5は、絶縁部材23Aでステータコイル21を包む際の折り曲げ箇所を示す。絶縁部材23Aでは、上述した開口230に代えて開口231が中央領域R2に形成されている。絶縁部材23Aの破線L2と破線L3との間の領域は、スロット22のスロット底面220に対向する領域である。
【0023】
開口231は、スロット底面220に対向する開口領域231aと、スロット22の側壁に対向する開口領域231bとを有する。接着層30は、開口231を除く絶縁部材23Aの内表面の全領域に設けられている。絶縁部材23Aの外表面側には、開口231を除く全ての領域に発泡層31が設けられている。
【0024】
図9は、ステータコイル21を内包するように折り曲げた状態の絶縁部材23Aを示す斜視図である。
図9では、ステータコイル21は想像線(二点鎖線)で示した。開口231(開口領域231a,231b)は、積層されたステータコイル21の側面が対向する面まで延在している。そのため、隣接するステータコイル21の間の隙間32aは、開口231から見える状態になっている。
【0025】
図10は、
図5において絶縁部材23に代えて絶縁部材23Aを用いた場合のD2-D2断面図を示す。開口231は、スロットコイル21を内包する絶縁部材23Aの、スロット22のスロット底面220および図示右側のスロット側壁221に対向する面に配置されている。その結果、スロットコイル21とスロット側壁221との間に隙間32cが生じる。流路24bの開口240からスロット22内に流入した冷却媒体は、一点鎖線の矢印E4で示すように、スロットコイル21とスロット側壁221との隙間32cをスロット底面側からステータコア内周側へと流れる。さらに、隙間32cの冷却媒体は、ステータコイル21間の隙間32aに流入する。そして、
図9の矢印E3で示すように、冷却媒体は隙間32a内を軸方向に沿って両端のコイルエンド方向に流れる。
【0026】
このように、変形例1における開口231は、開口240と対向する位置からスロット側壁221と対向する位置まで延在している。そのため、絶縁部材23Aにより内包される空間のステータコア内周側まで冷却媒体が流れやすくなり、内周側の隙間32aへの冷却媒体の流入を向上させることができる。その結果、ステータコイル21に対する冷却媒体の冷却効果を向上させることができる。
【0027】
(変形例2)
図11は、変形例2における絶縁部材23Bを示す図である。絶縁部材23Bでは、開口231が設けられている中央領域R2には、接着層30が設けられていない。絶縁部材23Bについてのその他の構成は、
図8に示す絶縁部材23Aと同様である。
図12は、
図5において絶縁部材23に代えて絶縁部材23Bを用いた場合のD2-D2断面図を示す。
図11に示したように中央領域R2には接着層30が設けられていない。そのため、上述した
図10の場合と異なり、ステータコイル21と絶縁部材23Bとの間に隙間32bが形成されている。
【0028】
流路24bの開口240からスロット22内に流入した冷却媒体は、一点鎖線の矢印E2,E4で示すように流れる。このように、変形例2の場合には、変形例1のE4の流れに加えてE2の流れが生じ、E2の場合にはステータコイル21と絶縁部材23Bとの隙間32bに流れ込む。隙間32bの冷却媒体はステータコイル21間の隙間32aに侵入し、隙間32a内を軸方向に沿って両端のコイルエンド方向に流れる。このように、変形例2における絶縁部材23Bでは、開口231が設けられている中央領域R2において隙間32bが形成される。そのため、ステータコイル21間の隙間32aに冷却媒体がより流入しやすくなり、冷却効率の向上を図ることができる。
【0029】
(変形例3)
図13は、変形例3における絶縁部材23Cを示す図である。絶縁部材23Cを
図6に示した絶縁部材23と比較すると、内表面側に設けられた接着層30の範囲のみが異なり、その他の構成は絶縁部材23と同様である。変形例3では、接着層30は、絶縁部材23Cの軸方向両端の領域R4にのみ設けられ、中央領域R2と領域R4との間の領域R5には設けられていない。
【0030】
図14は、スロット22内に収納された絶縁部材23Cおよびステータコイル21を、
図13の一点鎖線F1の部分で断面した場合の断面図(F1断面図と呼ぶことにする)を示したものである。F1断面図においては、絶縁部材23Cの内周面側に接着層30が設けられていないので、絶縁部材23Cとステータコイル21との間に隙間32bが生じる。そのため、絶縁部材23Cの開口231から流入した冷却媒体は、隙間32b内をステータコイル21の延在方向(ステータコア軸方向)に拡がる。すなわち、ステータコイル21の中央領域から両端領域へ冷却媒体が流れ易くなり、冷却媒体によるステータコイル21の冷却効果をより向上させることができる。
【0031】
なお、図示は省略するが、開口231が形成された絶縁部材23B(
図11参照)の場合も、
図13に示す絶縁部材23Cの場合と同様に、両端の領域R4にのみに接着層30を設けるようにしても良い。そのような構成とすることで、絶縁部材23Cの場合と同様の効果を奏することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
図15は、第2の実施形態の回転電機1Aの概略構成を示す図である。
図15は回転電機1Aを側方から見た図であり、ケース4のみを断面図とした。第2の実施形態の回転電機1においては、ステータコア20は、3つのステータコア20a1,20a2,20a3と2つのステータコア20b1,20b2とを備えている。ステータコア20a1~20a3およびステータコア20b1,20b2はオープンスロットであり、スロット22のスロット開口は楔40(後述する
図16参照)により閉じられている。その他の形状については、ステータコア20a1,20a2,20a3は上述したステータコア20aと同一であり、ステータコア20b1,20b2は上述したステータコア20bと同一である。ただし、ステータコア20a1,20a2,20a3については、軸方向の長さがステータコア20aと異なる。
【0033】
ケース4は、ステータコア20b1に対応した軸方向位置に、貫通孔43aが形成された冷媒導入部42aを備える。また、ケース4はステータコア20b2に対応した軸方向位置に、貫通孔43bが形成された冷媒排出部42bを備える。
【0034】
図16は、回転電機1Aを、
図1のA-A断面図の場合と同様に断面した断面図である。そのため、
図16の断面図も、
図1の場合と同様にA-A断面図と呼ぶことにする。スロット22内に収納されたステータコイル21は、ステータコイル21の束の三方(スロット開口側を除く三方)を覆う絶縁部材23Dと、残りの一方を覆う楔40とにより内包されている。楔40の材料には絶縁材が用いられ、非磁性材料または磁性材料(例えば、磁性材含有樹脂、磁性を有する圧粉樹脂等)のいずれを選択しても良い。
【0035】
冷媒導入部42aが設けられた領域のケース内周面とステータコア20b1の外周面201との間には、円環状の流路24a1が形成されている。同様に、冷媒排出部42bが設けられた領域のケース内周面とステータコア20b2の外周面201との間には、円環状の流路24a2が形成されている。流路24a1は、冷媒導入部42aの貫通孔43aおよびステータコア20b1の流路24bと連通している。流路24a2は、冷媒排出部42bの貫通孔43bおよびステータコア20b2の流路24bと連通している。
【0036】
図17は、絶縁部材23Dを展開したときの内表面側を示す図である。絶縁部材23Dの内表面側の軸方向の両端領域R6には、発泡層31が設けられている。折り曲げ箇所を示す破線L2と破線L3との間の領域が、スロット22のスロット底面220に対向する領域である。破線L2よりも図示上側の領域、および、破線L3よりも図示下側の領域は、スロット22の側壁に対向する領域である。それらの領域には、両端領域R6に近接して開口232a,232bがそれぞれ設けられている。開口232aの軸方向位置は、絶縁部材23Dをスロット22に装着したときにステータコア20b1の流路24bの開口240(
図16参照)と対向するように設定されている。一方、開口232bの軸方向位置は、絶縁部材23Dをスロット22に装着したときにステータコア20b2の流路24bの開口240(
図16参照)と対向するように設定されている。
【0037】
ステータコイル21をスロット22に装着する場合には、先ず、折り曲げた絶縁部材23Dをスロット22(スロット底面およびスロット側壁)に固定する。固定には接着剤等が用いられる。次いで、その絶縁部材23Dにより囲まれた空間に、ステータコイル21を配置する。この場合、ステータコイル21間に隙間が生じるように、各ステータコイル21を配置するようにしても良い。そして、スロット22のスロット開口に楔40を固定する。その後、発泡層31を加熱硬化させる。この加熱硬化処理によって、流動状態となった発泡材がステータコイル21間に侵入し、絶縁部材23Dの両端領域R6におけるステータコイル21間の隙間は発泡材によって埋められることになる。両端領域R6の間の領域においては、ステータコイル21と絶縁部材23Dとの間、および、ステータコイル21間に隙間(後述する隙間32a,32b)が生じる。
【0038】
図16に示すように、ステータコア20b1,20b2のスロット22の内壁には、流路24bの開口240が設けられている領域から絶縁部材23Dの開口232a,232bが対向する領域にかけて、窪み222が形成されている(
図18も参照)。そのため、窪み222が設けられているスロット領域においては、絶縁部材23Dとスロット壁面との間に隙間32g(
図18参照)が形成されることになる。絶縁部材23Dの内表面側の両端領域R6に設けられている発泡層31が加熱硬化処理されることで、軸方向両端領域における各ステータコイル21間の隙間に流れ込んだ発泡材は、隙間を埋めるとともに膨張する。その結果、発泡層31が設けられていない領域では、ステータコイル21の周囲に隙間32a,32bが形成される。
【0039】
図18は、
図15に示す回転電機1AのF2-F2断面図である。F2-F2断面図はステータコア20b1の部分を断面する。なお、冷媒排出口42bに対応したステータコア20b2の部分の断面も、
図18に示すF2-F2断面図と同様である。F2-F2断面の部分においては、
図16に示した窪み222がスロット22の壁面に形成されている。そのため、楔40の近くを除いて、スロット22の壁面と絶縁部材23Dとの間に隙間32gが形成される。また、F2-F2断面においては、絶縁部材23Dの内表面側に発泡層31が設けられておらず(
図17参照)、ステータコイル21と周囲の絶縁部材23Dおよび楔40との間およびステータコイル21間に隙間32bが生じている。なお、図示は省略しているが、楔40の周囲には発泡層31が設けられている。そのため、楔40が固定されている部分においては、楔40とステータコア20との隙間は発泡層31の発泡材によって封止されている。
【0040】
図19は、
図15のF3-F3断面図である。F3-F3断面図は、ステータコア20a1の部分であって、かつ、
図17の発泡層31が設けられている左側の両端領域R6の部分を断面したものである。ステータコイル21と絶縁部材23Dおよび楔40との間、および、ステータコイル21間は発泡層31の発泡材によって埋められている。
【0041】
図16,18において、一点鎖線の矢印は冷却媒体の流れを示す。
図16に示すように、冷媒導入部42aの貫通孔43aから流路24a1に供給された冷却媒体は、流路24a1内を周方向に流れる。流路24a1内の冷却媒体は、流路24a1に連通する各流路24bを介して、各スロット22内の隙間32gに流入する。
図18に示すように、隙間32gの冷却媒体は、絶縁部材23Dの開口232aから絶縁部材23Dにより包まれた内側の空間(内包空間)に流入する。
【0042】
このように、窪み222を設けて隙間32gを形成することにより、開口232aが設けられている領域の隙間空間が大きくなる。その結果、ステータコイル21間の隙間32aおよび絶縁部材23Dとステータコイル21との隙間32bに、冷却媒体が流入しやすくなる。絶縁部材23Dの内包空間に流入した冷却媒体は、
図16の一点鎖線の矢印E5で示すように、隙間32a,32b内を軸方向に沿って絶縁部材23Dの軸方向反対側(図示左側)へ流れる。
【0043】
絶縁部材23Dの内包空間の軸方向反対側に達した冷却媒体は、矢印E6で示すように、図示左側の開口232bを通って絶縁部材23Dの内包空間から窪み222の隙間32gに流出する。隙間32gに流出した冷却媒体は、ステータコア20b2の流路24bを通って流路24a2に流入し、最終的には貫通孔43bを通ってケース4に設けられた冷媒排出部42bから排出される。
【0044】
以上のように、第2の実施形態では、
図16に示すように、コイル両端の隙間が発泡層31の発泡材で埋められ、両端領域の間の領域において隙間32a,32bを形成した。そのため、開口232aから絶縁部材23Dの内包空間の一端側に流入した冷却媒体は、隙間32a,32b内を内包空間の他端側へ流れ易くなる。その結果、冷却媒体によるコイル直接冷却の冷却効果向上を図ることができる。
【0045】
また、隙間32a,32b内を図示左方向に流れた冷却媒体を、絶縁部材23Dの開口232bからステータコア20b2の流路24bに導き、ケース4の冷媒排出部42bから外部に排出するようにした。そのため、冷却媒体の回収が容易となると共に、冷却媒体の影響によるフリクション悪化を防止できる。
【0046】
(変形例4)
図20,21は、第2の実施形態に関する変形例(変形例4)を説明する図である。
図20は、変形例4における絶縁部材23Eを展開したときの内表面側を示す図である。開口233a,233bは、スロット底面が対向する破線L2,L3間の領域から、スロット側壁が対向する領域(図示上下の領域)に若干だけ延在している。開口233a,233bの軸方向位置は、
図17に示した絶縁部材23Dの開口232a,232bの軸方向位置と同一である。絶縁部材23Eの内表面側の両端領域R6には、発泡層31が設けられている。
【0047】
図21は、絶縁部材23Eを用いた場合のF2-F2断面図である。変形例4では、ステータコア20b1のスロット22の壁面に設けられた窪み222は、開口233a,233bが対向する領域に形成されている。その他の構成は、
図18に示すF2-F2断面図と同様である。一点鎖線の矢印は冷却媒体の流れを示す。流路24a1から流路24bを介してスロット22内に流入した冷却媒体は、窪み222とステータコイル21との間の空間に流れ込んだ後に、開口233aから絶縁部材23Eと楔40とにより形成される内包空間の一端側に流入する。そして、
図16の矢印E5の場合と同様に、隙間32a,32bを内包空間の他端側に流れ、開口333bから流出する。開口333bから流出した冷却媒体は、ステータコア20b2の流路24bから流路24a2へ流出し、貫通孔43bを介して冷媒排出部42bから排出される。
【0048】
(変形例5)
図22は、第2の実施形態に関する変形例5を説明する図である。
図22は、上述した
図16において変形例5の絶縁部材23Fとに置き換えた場合の、ステータコア20とケース4の構成を示すである。
図22においても、
図16の場合と同様のA-A断面図とした。変形例5では、ステータコア20は9つのステータコア20a4,20b1,20a5,20c、20dを備える。まず、軸方向中央にステータコア20a4を配置し、その図示右方向に、ステータコア20b1、ステータコア20a5、ステータコア20c、ステータコア20dの順に配置した。一方、中央にステータコア20a4の左側の構成は右側の構成と対称な配置となっており、ステータコア20a4の左方向に、ステータコア20b1、ステータコア20a5、ステータコア20c、ステータコア20dが順に配置されている。ケース4の中央に設けられた冷媒導入部42aには、一対のステータコア20b1のそれぞれに対向する一対の貫通孔43aが形成されている。ステータコア20a4,20a5の構造(軸垂直断面の形状)は、ステータコア20aと同様である。また、ステータコア20c、20dの構造(軸垂直断面の形状)については後述する。
【0049】
図23は、絶縁部材23Fを展開したときの内表面側を示す図である。絶縁部材23Fの内表面側には、軸方向の両端領域R6と中央領域R7に発泡層31が設けられている。絶縁部材23Fでは、中央領域R7の両側に近接して一対の開口233aが設けられ、各両端領域R6に近接して開口233bがそれぞれ設けられている。
図22に示すように、絶縁部材23Fをスロット22内に装着すると、各開口233aはステータコア20b1の流路24bに対向する。一方、絶縁部材23Fの開口233bは、ステータコア20cに対向する。
【0050】
図22に戻って、各ステータコア20b1のスロット22の壁面には、開口233aが対向する領域に窪み222がそれぞれ形成されている。これらの窪み222の形状は、
図21に示した窪み222の形状と同一である。
図23の中央領域R7は、ステータコア20a4のスロット22内に配置される領域である。また、
図23の両端領域R6は、ステータコア20dのスロット22内に配置される領域である。そのため、ステータコア20a4および20dのスロット22内の絶縁部材23Fと楔40とにより形成される内包空間においては、ステータコイル21と絶縁部材23Fおよび楔40との間、および、ステータコイル21間の隙間が発泡層31で埋められ、封止されている。
【0051】
図24は、ステータコア20b1における軸に垂直な断面図(20b1断面図)である。上述したように、ステータコア20b1のスロット22には、絶縁部材23Fの開口233aが対向する領域に窪み222が設けられている。そのため、開口233aが設けられているスロット領域に、大きな隙間空間が形成されることになる。流路24bからスロット22に流入した冷却媒体は、この隙間空間に流入した後に、絶縁部材23Fと楔40とにより形成される内包空間に流入する。内包空間に流入した冷却媒体は、
図22の歯一点鎖線の矢印E7で示すように、内包空間内の隙間(ステータコイル21の周囲の隙間32a,32b)を軸方向端部へと流れる。
【0052】
図25は、ステータコア20cにおける軸に垂直な断面図(20c断面図)である。ステータコア20cのスロット22には、絶縁部材23Fの開口233bが対向する領域に窪み222が設けられている。また、スロット底面に凹部223が形成されている。凹部233内の空間は、冷却媒体を排出するための流路24dの一部を構成している。一点鎖線の矢印は冷却媒体の流れを示しており、冷却媒体は、絶縁部材23Fの内包空間から開口233bを通ってスロット22内へ流出する。スロット22内に流出した冷却媒体は、窪み222の部分から凹部223の流路24dに流れ込む。
【0053】
図26は、ステータコア20dにおける軸に垂直な断面図(20d断面図)である。ステータコア20dには、ステータコア20cの場合と同様の凹部223がスロット底面に形成されている。ステータコア20dの凹部223内の空間は、流路24dの残りの一部を構成している。すなわち、
図22に示すように、ステータコア20cの流路24dとステータコア20dの流路とは連通している。絶縁部材23Fの開口233bからステータコア20cの凹部223内の空間に流入した冷却媒体は、流路24dを通ってステータコア20dの端面から排出される。ステータコア20dの端面から排出された冷却媒体は、コイルエンドに流れてコイルエンドを冷却する。
【0054】
このように、変形例6では、冷却媒体をコイル温度の高い中央付近からコイルエンド方向へと流し、さらに、ステータコア20dの端面から排出してコイルエンドへ導くようにした。そのため、冷却媒体によりステータコイル21の全体が効率よく冷却される。また、冷却媒体がステータ2とロータ3とのエアギャップに侵入するのを防止できるので、冷却媒体によるフリクション悪化を防止することができる。
【0055】
上述のように、第2の実施形態では、楔40をスロット22毎に設ける構成とした。しかし、この構成に限らず、例えば、
図27に示すように複数のスロット22に跨って楔40を設けるようにしても良い。
図27は、
図26の20d断面図に相当する断面図である。
【0056】
なお、第2の実施形態では、スロット22はオープンスロットで、スロット開口に楔40を固定する構成であったが、第2の実施形態のステータコア20、ケース4および絶縁部材23D~23Fの構成は、第1の実施形態における半閉型のスロット22の場合にも適用することができる。その場合、第2の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0057】
以上説明した本発明の実施形態および変形例によれば、以下の作用効果を奏する。
【0058】
・
図1~6等に示すように、回転電機1のステータ2は、ステータコイル21と、ステータコイル21を内包する絶縁部材23と、絶縁部材23に内包されたステータコイル21が挿入される複数のスロット22が形成された環状のステータコア20と、を備える。そして、ステータコア20には、複数の前記スロット22のそれぞれに冷却媒体を導入する流路24a,24bが形成され、絶縁部材23には、スロット22に導入された冷却媒体を絶縁部材23により内包された空間(例えば、隙間32a,32b)へ導く導入開口(開口230)が形成されている。
【0059】
流路24bによりスロット22に導入された冷却媒体は、開口230から絶縁部材23により内包された空間の隙間32a,32bへ導かれ、ステータコイル21に接触する。その結果、ステータコイル21は冷却媒体により直接冷却され、ステータコイル21に対する冷却効果の向上を図ることができる。
【0060】
(2)上記(1)において、
図9等に示すように、絶縁部材23Aにより内包された空間に導かれた冷却媒体は、矢印E3に示すように、ステータコイル21のコイルエンド方向に流れてコイルエンドに排出される。その結果、冷却媒体によりコイルエンドも冷却されることになり、冷却媒体を効率的に利用することができる。また、冷却媒体はコイルエンドに排出されるので、冷却媒体がステータ2とロータ3とのエアギャップに侵入して生じるフリクション悪化を、防止することができる。
【0061】
(3)上記(1)において、
図8~10等に示すように、流路24bは、ステータコア20の外周側領域であるコアバック200に形成され、スロット22のスロット底面220に開口240を有し、開口231は、開口240に対向する第1の開口領域231aと、第1開口領域231aからステータコア径方向の内周側に伸延する第2の開口領域231bとを有する。
【0062】
このように、開口231は、開口240と対向する第1開口領域231aから、スロット側壁221と対向する開口領域231bまで延在しているので、絶縁部材23Aにより内包される空間のステータコア内周側まで冷却媒体が流れやすくなる。その結果、内周側の隙間32aへの冷却媒体の流入を効率良く行わせることができ、ステータコイル21に対する冷却媒体の冷却効果を向上させることができる。
【0063】
(4)上記(1)において、
図18,21等に示すように、流路24bは、ステータコア20b1の外周側領域であるコアバックに形成され、スロット22のスロット底面220に開口240を有する。そして、例えば、
図18に示すように、開口232aはスロット側壁221に対向し、スロット底面220および開口232aが対向するスロット22の壁面には窪み222が設けられている。また、
図21に示す例では、開口233aは、開口240に対向する開口領域およびスロット側壁221に対向する開口領域を有し、開口233aが対向するスロット22の壁面には窪み222が設けられている。
【0064】
このように、開口232a,233aが対向するスロット22の壁面に窪み222を設けることにより、絶縁部材23D,23Eの内包領域に冷却媒体がより流入しやすくなる。また、ステータコイル21の開口232a,233aに面する部分が、ステータコア20b1に接触するのを抑制することができ、絶縁性向上を図ることができる。
【0065】
(5)上記(1)~(4)のいずれかにおいて、
図4~6等に示すように、ステータコイル21の延在方向において開口230よりも外側の領域R1,R3には、絶縁部材23とステータコイル21との隙間を埋める充填材(接着層30)が設けられ、ステータコイル21の延在方向において開口230が設けられている領域R2では、絶縁部材23とステータコイル21との間に隙間が形成されている。
【0066】
領域R2において絶縁部材23とステータコイル21との間に隙間32bが形成されているので、絶縁部材23により形成される内包空間のステータ内周側の領域に、冷却媒体が流入し易くなる。そのため、ステータコイル冷却の効率向上を図ることができる。
【0067】
(6)上記(1)~(4)のいずれかにおいて、
図13,14等に示すように、ステータコイル21の延在方向における絶縁部材23Cの両端の領域R4には、絶縁部材23Cとステータコイル21との隙間32bを埋める充填材(接着層30)が設けられ、絶縁部材23Cの両端の領域R4により挟まれた領域R2,R5では、絶縁部材23Cとステータコイル21との間に隙間32b、32dが形成されている。両端の領域R4の隙間32bを接着層30で埋めることで、領域R4間のステータコイル21が内包された空間の隙間を冷却媒体が流れ易くなる。
【0068】
(7)上記(1)において、
図16,17に示すように、絶縁部材23Dの開口232aは、ステータコイル21の延在方向において絶縁部材23Dの一端側に配置され、冷却媒体をスロット22からステータコア20の外部へ排出する流路24a2,24bと、ステータコイル21の延在方向において絶縁部材23Dの他端側に配置され、絶縁部材23Dにより内包された空間(例えば、隙間32a,32b)を流れた冷却媒体を流路24dへと導く開口232bと、をさらに備える。このような構成とすることで、隙間32a,32b内を一端側から他端側に流れた冷却媒体を、流路24a2,24bからステータコア20の外部に排出することができる。そのため、冷却媒体を回収が容易となると共に、冷却媒体の影響によるフリクション悪化を防止できる。
【0069】
(8)上記(1)において、
図19等に示すように、ステータコイル21を内包する絶縁部材は、スロット22のスロット底面220およびスロット側壁221に対向して配置されるシート状絶縁部材(絶縁部材23D)と、スロット22のスロット開口に固定される固定部材(楔40)と、を備えるような構成としても良い。なお、固定部材は、ステータコイル21をスロット内からの離脱を防止できるものであれば、上述した楔40に限定されるものではない。
【0070】
以上説明した各種の実施の形態や変形例はあくまでも一例であり、発明の特徴を損なわない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1,1A…回転電機、2…ステータ、3…ロータ、4…ケース、20,20a,20a1~20a5,20b,20b1…ステータコア、21…ステータコイル、22…スロット、23,23A~23F…絶縁部材、24,24a,24a1,24a2,24b,24d…流路、30…接着層、31…発泡層、32a,32b,32c,32g…隙間、40…楔、42,42a…冷媒導入部、42b…冷媒排出部、43,43a,43b…貫通孔、200…コアバック、220…スロット底面、221…スロット側壁、222…窪み,223…凹部、230,231,232a,232b,233a,233b,240…開口、231a,231b…開口領域