(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125485
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】アペリン遺伝子発現促進用組成物、カドヘリン遺伝子発現促進用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/15 20060101AFI20240911BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240911BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240911BHJP
A61K 129/00 20060101ALN20240911BHJP
【FI】
A61K36/15
A61P43/00 111
A61P9/00
A61K129:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033330
(22)【出願日】2023-03-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行者名:ライフサイエンス出版株式会社,刊行物名:薬理と治療,巻数:第51巻,号数:第1号,第129~134頁,発行年月日:2023年1月20日
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】田中 夏子
(72)【発明者】
【氏名】眞志喜 桜
(72)【発明者】
【氏名】本岡 香奈
(72)【発明者】
【氏名】藤木 航平
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 慎一郎
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AB03
4C088AC06
4C088BA09
4C088CA05
4C088MA02
4C088NA14
4C088ZA36
4C088ZC02
(57)【要約】
【課題】アペリン遺伝子発現促進、カドヘリン遺伝子発現促進等が可能な組成物を提供すること。
【解決手段】松樹皮を含有する組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
松樹皮を含有することを特徴とするアペリン遺伝子及び/又はカドヘリン遺伝子発現促進用組成物。
【請求項2】
松樹皮を含有することを特徴とする毛細血管の安定化用組成物。
【請求項3】
松樹皮を含有することを特徴とする毛細血管の血流改善用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アペリン遺伝子発現促進用組成物、カドヘリン遺伝子発現促進用組成物等に関する。より詳しくは、本発明は、松樹皮を含有する、アペリン遺伝子発現促進用組成物、カドヘリン遺伝子発現促進用組成物、毛細血管の安定化用組成物、毛細血管の血流改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血液は酸素、栄養物、ホルモンなどの情報伝達物質、老廃物および免疫細胞の運搬を担っており、全身に分布する毛細血管を通じて全身に運搬される。現代社会においては、ライフスタイルの変化や運動不足、ストレスによる自律神経失調などの様々な要因から、血液の循環(血流)の不調が問題となることが多い。血流の不調は、頭痛、肩凝り、肌のくすみ、冷え性、むくみ等の様々な症状を引き起こすため、健康上、美容上の観点から、毛細血管の血流を改善する方策が求められている。例えば、毛細血管の血流改善作用を有する成分としては、アルギニンやケンフェロールが知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-306865
【特許文献2】特開2021-075568
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、アペリン遺伝子発現促進効果、カドヘリン遺伝子発現促進効果、毛細血管の安定化効果、毛細血管の血流改善効果を有する組成物を提供することを目的とする。
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行った結果、松樹皮がアペリン遺伝子発現促進作用、カドヘリン遺伝子発現促進作用、毛細血管の安定化作用、毛細血管の血流改善作用を有することを新たに見出した。本発明は、かかる知見に基づき、完成された発明である。
【0006】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]松樹皮を含有することを特徴とするアペリン遺伝子及び/又はカドヘリン遺伝子発現促進用組成物。
[2]松樹皮を含有することを特徴とする毛細血管の安定化用組成物。
[3]松樹皮を含有することを特徴とする毛細血管の血流改善用組成物。
[4]松樹皮がフランス海岸松の樹皮の抽出物であることを特徴とする[1]~[3]に記載の組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物は、アペリン遺伝子発現促進効果、カドヘリン遺伝子発現促進効果、毛細血管の安定化効果、毛細血管の血流改善効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の組成物におけるアペリン遺伝子発現量を示す図である。
【
図2】本発明の組成物におけるカドヘリン遺伝子発現量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明は、松樹皮を必須成分とする。本発明で用いられる松樹皮の原料松としては、フランス海岸松(Pinus pinaster)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ等を挙げられが、これらに限定されない。これらの中でも、より高い効果を得ることができる点から、フランス海岸松が好ましい。
【0011】
本発明に用いる松樹皮としては、上記松の樹皮をそのまま用いてもよいが、松樹皮処理物を用いることが好ましい。本発明における松樹皮処理物とは、上記松の樹皮に処理を施したものを意味し、松樹皮の発酵物を含む概念である。松樹皮処理物としては、松の樹皮を粉砕して得られる松樹皮粉砕物、水及び/又は有機溶媒で抽出して得られる松樹皮抽出物等を挙げることができる。これらは単独、混合のいずれでも使用できる。これらの中でも、使用時の効果や安定性の観点から松樹皮抽出物を用いることが好ましい。なお、本発明における抽出物とは、液状のものだけではなく、抽出液を凍結乾燥等よって乾燥させたものや、賦形剤等を添加して乾燥し粉末化したものを含む概念である。
【0012】
松樹皮抽出物を得る際に使用する抽出溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、又はそれらの混合物が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ブタン、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、及び1,1,2-トリクロロエテンが挙げられ、含水有機溶媒としては、例えば、含水エタノール、含水プロピレングリコールが挙げられる。これらの水及び有機溶媒は単独で用いてもよいし、含水有機溶媒のように組合せて用いてもよい。これらの中でも、より高い効果を得ることができる点から、抽出溶媒としては、水又は含水エタノールを用いることが好ましく、水を用いることが特に好ましい。なお、抽出する際の溶媒の温度は、用いる溶媒の沸点以下であれば限定されない。
【0013】
松樹皮抽出物を得る方法については、制限はないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法等が挙げられる。また、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0014】
超臨界流体抽出法とは、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)等が用いられるが、二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0015】
超臨界流体抽出法では、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程と、目的成分と超臨界流体を分離する分離工程とを行う。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0016】
また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、抽出流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n-ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類を2~20W/V%程度添加し、この流体を用いて超臨界流体抽出を行うことによって、OPC(oligomeric proanthocyanidin:オリゴメリック・プロアントシアニジン)、カテキン類等の目的とする抽出物の抽出溶媒に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的な松樹皮抽出物を得る方法である。
【0017】
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点、抽出流体が残留しないという利点、溶媒の循環利用が可能であるため、脱溶媒工程等が省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0018】
上記の抽出により得られた松樹皮抽出物を、カラム法又はバッチ法により精製することが安全性の面から好ましい。カラム法としては、例えば、ダイヤイオンHP-20、Sephadex-LH20、キチン等の吸着性担体を用いた精製方法が挙げられる。
【0019】
松樹皮抽出物の市販品としては、例えば、フラバンジェノール(株式会社東洋新薬製。なお、「フラバンジェノール」は株式会社東洋新薬の登録商標)を用いることができる。
【0020】
本発明の組成物は、例えば、医薬品(医薬部外品を含む)や、化粧品や、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の所定機関より効能の表示が認められた機能性食品などのいわゆる健康食品等として用いることができる。
【0021】
本発明において「アペリン遺伝子発現促進用組成物」とは、アペリン遺伝子の発現促進作用を有する組成物をいう。アペリン遺伝子とは、内皮細胞どうしの細胞集塊を大きくし、毛細血管の血管径を大きくする働きを有する分泌性因子の遺伝子である。アペリン遺伝子の発現促進とは、アペリン遺伝子発現量の増加を指す。アペリン遺伝子の発現促進は、毛細血管の安定化に寄与することが知られている。
【0022】
本発明において「カドヘリン遺伝子発現促進用組成物」とは、カドヘリン遺伝子の発現促進作用を有する組成物をいう。カドヘリン遺伝子とは、細胞どうしの接着を誘導し、細胞組織の透過性を抑制する細胞接着因子の遺伝子であり、VE-カドヘリンなどが挙げられる。カドヘリン遺伝子の発現促進とは、カドヘリン遺伝子発現量の増加を指す。カドヘリン遺伝子の発現促進は、毛細血管の安定化に寄与することが知られている。
【0023】
本発明において「毛細血管の安定化用組成物」とは、毛細血管の安定化作用を有する組成物をいう。毛細血管の安定化とは、毛細血管の血管径の最適化、毛細血管の内皮細胞どうしの接着性の向上、血管の透過性抑制を指す。毛細血管の安定化は、例えば、アペリン遺伝子の発現促進、カドヘリン遺伝子の発現促進によりもたらされる。
【0024】
本発明において「毛細血管の血流改善用組成物」とは、毛細血管の血流改善作用を有する組成物をいう。毛細血管の血流改善とは、毛細血管における血流改善を指す。
【0025】
本発明の組成物は、アペリン遺伝子発現促進用組成物、カドヘリン遺伝子発現促進用組成物、毛細血管の安定化用組成物、毛細血管の血流改善用組成物の少なくとも1つとして用いることができ、かかるアペリン遺伝子発現促進用組成物、カドヘリン遺伝子発現促進用組成物、毛細血管の安定化用組成物、毛細血管の血流改善用組成物としては、松樹皮を含有し、それぞれアペリン遺伝子発現促進、カドヘリン遺伝子発現促進、毛細血管の安定化、毛細血管の血流改善の機能が発揮される点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではない。例えば、本発明に係る製品の本体、包装、説明書、宣伝物(広告媒体)のいずれかに、アペリン遺伝子発現促進用、カドヘリン遺伝子発現促進、毛細血管の安定化、毛細血管の血流改善の機能を表示したものが本発明の範囲に含まれる。
【0026】
本発明の組成物は、松樹皮が有効成分として表示されているものであってもよいが、松樹皮が有効成分として表示されているものに限られない。例えば、有効成分が表示されていないものであってもよい。また、一般的な食品や化粧品であっても、機能・用途を示唆して製造販売されるものは本発明の範囲に含まれる。例えば、摂取した人の個人的感想として機能・用途に言及する体験談をホームページ等に掲載して販売される食品や化粧品が挙げられる。
【0027】
具体的に、いわゆる健康食品や化粧品においては、アペリン遺伝子発現促進用組成物においては、例えば、「アペリン遺伝子の発現を促進する」、「アペリン遺伝子の発現を向上する」等を表示したものを例示することができる。カドヘリン遺伝子発現促進用組成物においては、例えば、「カドヘリン遺伝子の発現を促進する」、「カドヘリン遺伝子の発現を向上する」等を表示したものを例示することができる。毛細血管の安定化用組成物においては、例えば、「毛細血管の安定性を高める」、「毛細血管の血管径を改善する」、「毛細血管の血管径を最適化する」、「毛細血管の内皮細胞どうしの接着性を向上する」、「血管の透過性を改善する」等を表示したものを例示することができる。また、毛細血管の血流改善用組成物においては、「毛細血管の血液の流動性の維持に役立つ」、「毛細血管の血液の流れやすさの維持に役立つ」、「毛細血管の血流を改善する」、「末梢血流を改善する」、「毛細血管の血流を維持する」、「毛細血管の健やかな血流を保つ」、「毛細血管の健やかな末梢血流を保つ」、「低下した末梢の血流量を上昇させて正常に戻す」、「低下した末梢血流を正常に整える」等を表示したものを例示することができる。
【0028】
本発明の組成物は、経口用又は外用として使用することができる。本発明の組成物を経口用として用いる場合、その形態としては、例えば、経口的な使用に適した形態、具体的には、粉末状、粒状、顆粒状、錠状、液状、ジェル状、ペースト状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、ケーキ状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等の各形態が挙げられる。これらの中でも、摂取が容易である点から、顆粒状、錠状、カプセル状、液状が好ましく、顆粒状、錠状、カプセル状がより好ましい。ここで、顆粒状とは粉末を造粒したものをいい、直接飲用してもよく、水などの液体に溶かして飲用してもよい。また、ジェル状とは水とゲル化剤を含有し、粘性又は弾性を有する状態のものをいう。
【0029】
本発明の組成物を外用として用いる場合、その形態としては、例えば、軟膏状、クリーム状、ジェル状、ローション状、乳液状、パック状、湿布状等の各形態が挙げられる。これらの中でも、塗布が容易である点から、クリーム状、ジェル状、ローション状、乳液状、パック状が好ましく、クリーム状、ジェル状、ローション状、乳液状がより好ましい。
【0030】
本発明の組成物における松樹皮の含有量としては、その効果の奏する範囲で適宜含有させればよい。例えば、本発明の組成物を経口用として用いる場合、本発明の組成物中に、乾燥質量換算で、0.0001~70質量%含有させることができ、0.001~60質量%含有させることが好ましく、0.01~50質量%含有させることがより好ましい。本発明の組成物を外用として用いる場合、本発明の組成物中に、乾燥質量換算で、0.00001~50質量%含有させることができ、0.0001~20質量%含有させることが好ましく、0.001~10質量%含有させることがより好ましい。
【0031】
本発明の組成物を経口用として用いる場合、本発明における組成物の摂取量としては特に制限はないが、より高い効果を得ることができる点から、松樹皮の摂取量が、1日当たり、0.1mg以上となるように摂取することが好ましく、1mg以上となるように摂取することがより好ましく、10mg以上となるように摂取することがさらに好ましい。その上限は、例えば、1000mgであり、好ましくは500mgであり、より好ましくは200mgである。本発明の組成物を外用として用いる場合、本発明における組成物の塗布量としては特に制限はないが、より高い効果を得ることができる点から、松樹皮の塗布量が、1日当たり、0.0001mg以上となるように塗布することが好ましく、0.001mg以上となるように塗布することがより好ましく、0.01mg以上となるように塗布することがさらに好ましい。その上限は、例えば、10mgであり、好ましくは5mgであり、より好ましくは1mgである。
【0032】
本発明の組成物は、必要に応じて、松樹皮以外の他の成分を添加して、公知の方法によって製造することができる。
【実施例0033】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
<実施例1及び2 アペリン遺伝子発現促進作用及びカドヘリン遺伝子発現促進作用の評価>
本発明の組成物における、アペリン遺伝子発現促進作用、カドヘリン遺伝子発現促進作用について評価した。
【0035】
[被験物質]
被験物質には、松樹皮としてフランス海岸松の樹皮の水抽出物(株式会社東洋新薬製)を使用した。
【0036】
[アペリン遺伝子発現の測定]
細胞はヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC:Lonza製)を使用し、EGM-2培地(Lonza製)で培養した。アペリン遺伝子発現評価において、松樹皮を投与した群を実施例1、松樹皮を投与しなかった群を比較例1とした。実施例1では、松樹皮を終濃度5μg/mlとなるように培地に溶解し、HUVECに添加した。比較例1では、松樹皮を含まない培地をHUVECに添加した。培地添加24時間後、RNeasy Mini Kit(QIAGEN製)を用いてRNAを回収し、ReverTra Ace(R)qPCR RT Master Mix(TOYOBO製)を用いてcDNAを合成した。得られたcDNAを鋳型として、Rotor-Gene SYBR Green PCR Kit(QIAGEN製)を用いてリアルタイムPCRを行った。内在性コントロールとしてACTINβを使用した。プライマーは、アペリン遺伝子に対するプライマー(QIAGEN製)、ACTINβ遺伝子に対するプライマー(QIAGEN製)を使用した。
【0037】
[カドヘリン遺伝子発現の測定]
細胞はヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC:Lonza製)を使用し、EGM-2培地(Lonza製)で培養した。カドヘリン遺伝子発現評価において、松樹皮を投与した群を実施例2、松樹皮を投与しなかった群を比較例2とした。実施例2では、松樹皮を終濃度10μg/mlとなるように培地に溶解し、HUVECに添加した。比較例2では、松樹皮を含まない培地をHUVECに添加した。培地添加24時間後、RNeasy Mini Kit(QIAGEN製)を用いてRNAを回収し、ReverTra Ace(R)qPCR RT Master Mix(TOYOBO製)を用いてcDNAを合成した。得られたcDNAを鋳型として、Rotor-Gene SYBR Green PCR Kit(QIAGEN製)を用いてリアルタイムPCRを行った。内在性コントロールとしてACTINβを使用した。プライマーは、VE-カドヘリン遺伝子に対するプライマー(QIAGEN製)、ACTINβ遺伝子に対するプライマー(QIAGEN製)を使用した。
【0038】
[統計解析]
アペリン遺伝子発現及びカドヘリン遺伝子発現は、松樹皮を投与した群(実施例1、2)について、松樹皮を投与しなかった群(比較例1、2)と比較した対応のないt検定を実施した。有意水準は両側検定で0.05とし、統計解析はSPSS Statistics28(IBM)を使用して行った。なお、多重性については考慮しなかった。また、データは平均値±標準偏差で示した。アペリン遺伝子発現及びカドヘリン遺伝子発現について、結果を
図1、2に示す。
【0039】
図1に示すように、アペリン遺伝子発現評価において、松樹皮を投与した群(実施例1)は、松樹皮抽出物を投与しなかった群(比較例1)に比して、アペリン遺伝子発現量の顕著な増加が認められた。また、
図2に示すように、カドヘリン遺伝子発現評価において、松樹皮を投与した群(実施例2)は、松樹皮抽出物を投与しなかった群(比較例2)に比して、VE-カドヘリン遺伝子発現量の顕著な増加が認められた。以上から、松樹皮はアペリン遺伝子発現促進作用及びカドヘリン遺伝子発現促進作用を有することが示された。従って、松樹皮がアペリン遺伝子発現促進作用及びカドヘリン遺伝子発現促進作用を有することから、本発明の組成物は、アペリン遺伝子発現促進、カドヘリン遺伝子発現促進、毛細血管の安定化に優れた効果を発揮することができる。
【0040】
<実施例3 毛細血管の血流改善作用の評価>
本発明の組成物を摂取することにより、毛細血管の血流改善効果が発揮されることを確認するため、ヒト臨床試験を行った。
【0041】
[試験食品]
実施例3には、フランス海岸松の樹皮の水抽出物(株式会社東洋新薬製)と、粉末還元麦芽糖水飴、微結晶セルロース、ショ糖脂肪酸エステル、微粒二酸化ケイ素とを混合し、打錠したものを使用した。1日摂取目安量は0.25g×2粒であり、実施例3に含まれるフランス海岸松の樹皮の水抽出物は1日摂取目安量あたり80mgである。
【0042】
[被験者]
倫理的配慮により試験開始前に同意が得られた40歳以上59歳以下の冷え性に悩む健康女性9名を被験者として選定した。
【0043】
[試験方法]
本試験は摂取期間8週間のオープン試験として実施した。試験期間中は、1日1回、1回2粒の実施例3の錠剤を水またはぬるま湯とともに摂取させた。なお、実施例3の錠剤を噛んで摂取しても良いこととした。摂取前検査(以下、摂取前)、摂取4週間後検査(以下、摂取4週間後)、摂取8週間後検査(以下、摂取8週間後)の計3回にわたり、毛細血管血流検査を行った。毛細血管血流検査は、毛細血管測定器(GOKO Bscan-ZD:GOKO映像機器株式会社製)を用いて、安静後、座位にて利き手と逆の手の薬指爪郭部を測定した。解析は、GOKO-VIP(GOKO映像機器株式会社製)、GOKO Measure Plus(GOKO映像機器株式会社製)を用いて実施した。
【0044】
[統計解析]
摂取前、摂取4週間後、摂取8週間後の実測値について、摂取前と比較したDunnett検定を実施した。有意水準は両側検定で0.05とし、統計解析はSPSS Statistics28(IBM)を使用して行った。また、統計データに関しては平均値±標準誤差で示した。結果を表1に示す。
【0045】
【0046】
表1に示すように、毛細血管血流は摂取4週間後及び摂取8週間後において、摂取前と比較して有意な増加を示した。以上から、松樹皮は毛細血管の血流改善作用を有することが示された。従って、本発明の組成物は、毛細血管の血流改善に優れた効果を発揮することができる。
【0047】
実施例の結果に基づいて、以下に本発明の製造例を示す。
【0048】
[顆粒剤の製造]
下記の各成分からなる混合物を造粒し、顆粒剤(3000mg)を製造した。得られた顆粒剤を1日あたり1包摂取する。本顆粒剤は、アペリン遺伝子発現促進、カドヘリン遺伝子発現促進、毛細血管の安定化、毛細血管の血流改善に有効である。
【0049】
【0050】
[錠剤の製造]
下記の各成分からなる錠剤(300mg)を製造した。得られた錠剤を1日あたり3粒摂取する。本錠剤は、アペリン遺伝子発現促進、カドヘリン遺伝子発現促進、毛細血管の安定化、毛細血管の血流改善に有効である。
【0051】
【0052】
[ハードカプセル剤の製造]
下記の各成分からなる混合物をハードカプセルに封入し、ハードカプセル剤(400mg)を製造した。得られたハードカプセル剤を1日あたり2粒摂取する。本ハードカプセル剤は、アペリン遺伝子発現促進、カドヘリン遺伝子発現促進、毛細血管の安定化、毛細血管の血流改善に有効である。
【0053】
【0054】
[化粧水の製造]
下記の各成分からなる化粧水を製造した。本化粧水は、アペリン遺伝子発現促進、カドヘリン遺伝子発現促進、毛細血管の安定化、毛細血管の血流改善に有効である。
【0055】
【0056】
[乳液の製造]
下記の各成分からなる乳液を製造した。本乳液は、アペリン遺伝子発現促進、カドヘリン遺伝子発現促進、毛細血管の安定化、毛細血管の血流改善に有効である。
【0057】
【0058】
[化粧用クリームの製造]
下記の各成分からなる化粧用クリームを製造した。本化粧用クリームは、アペリン遺伝子発現促進、カドヘリン遺伝子発現促進、毛細血管の安定化、毛細血管の血流改善に有効である。
【0059】
本発明の組成物は、アペリン遺伝子発現促進、カドヘリン遺伝子発現促進、毛細血管の安定化、毛細血管の血流改善を可能とし、健康食品や化粧品等として用いることができることから、産業上有用である。