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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125520
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】コネクタおよびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20240911BHJP
   H01R 13/506 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
H01R13/506
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033372
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】曽根 隆
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE01
5E087EE07
5E087FF03
5E087FF06
5E087FF12
5E087LL04
5E087LL11
5E087LL12
5E087LL13
5E087MM05
5E087MM09
5E087MM12
5E087QQ03
5E087QQ04
5E087RR29
(57)【要約】
【課題】部品点数を削減することができるコネクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】コネクタ1は、電線Wの軸線方向Xの一方側の端末と接続される端子10と、端子10を保持すると共に、相手側コネクタ2に嵌合される筒状のハウジング20と、ハウジング20と相手側コネクタ2との間の環状の空間をシールするパッキン本体31と、パッキン本体31と一体に環状に形成されかつパッキン本体31よりも高い剛性を有した延長部32と、を有したパッキン30と、を備え、ハウジング20は、パッキン30が外周側に嵌合される内筒部22と、パッキン30および相手側コネクタ2の外周側に位置される外筒部21と、外筒部21から径方向内方に突出したランス部23と、を有し、パッキン30には、延長部32から径方向外方に突出し、ランス部23の軸線方向Xの他端面23aと係止される凸部33が設けられる。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の軸線方向の一方側の端末と接続される端子と、
前記端子を保持すると共に、相手側コネクタに嵌合される筒状のハウジングと、
前記ハウジングと前記相手側コネクタとの間の環状の空間をシールするパッキン本体と、前記パッキン本体の前記軸線方向の他方側で当該パッキン本体と一体に環状に形成されかつ前記パッキン本体よりも高い剛性を有した延長部と、を有したパッキンと、
を備え、
前記ハウジングは、前記パッキンが外周側に嵌合される内筒部と、前記パッキンおよび前記相手側コネクタの外周側に位置される外筒部と、前記外筒部から当該外筒部の径方向内方に突出したランス部と、を有し、
前記パッキンには、前記延長部から当該パッキンの径方向外方に突出し、前記ランス部の前記軸線方向の他端面と係止される凸部が設けられる、
コネクタ。
【請求項2】
前記ランス部は、前記外筒部に対して当該外筒部の径方向に沿って弾性変形可能に設けられ、かつ
前記ランス部の内面には、前記軸線方向の他方側に向かうにつれて当該ランス部の径方向内方に向かうように傾斜した傾斜面が設けられる、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記外筒部には、前記凸部と前記パッキンの周方向に係止される切欠部が設けられる、
請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記延長部には、前記パッキンの周方向に互いに間隔をあけて複数の前記凸部が設けられ、
前記外筒部には、複数の前記凸部に対応して複数の前記切欠部が設けられる、
請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
導電性を有する電線と、
前記電線の端末に設けられたコネクタと、を備え、
前記コネクタは、
前記電線の軸線方向の一方側の端末と接続される端子と、
前記端子を保持すると共に、相手側コネクタに嵌合される筒状のハウジングと、
前記ハウジングと前記相手側コネクタとの間の環状の空間をシールするパッキン本体と、前記パッキン本体の前記軸線方向の他方側で当該パッキン本体と一体に環状に形成されかつ前記パッキン本体よりも高い剛性を有した延長部と、を有したパッキンと、
を備え、
前記ハウジングは、前記パッキンが外周側に嵌合される内筒部と、前記パッキンおよび前記相手側コネクタの外周側に位置される外筒部と、前記外筒部から当該外筒部の径方向内方に突出したランス部と、を有し、
前記パッキンには、前記延長部から当該パッキンの径方向外方に突出し、前記ランス部の前記軸線方向の他端面と係止される凸部が設けられる、
ワイヤハーネス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよびワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコネクタに関する技術として、例えば、特許文献1には、電線の軸線方向の一方側の端末と接続される端子と、端子を保持すると共に相手側コネクタに嵌合される筒状のハウジングと、ハウジングと相手側コネクタとの間の環状の空間をシールするパッキンと、パッキンの軸線方向の一方側への移動を制限するフロントホルダと、を備えたコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-39889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載のコネクタでは、例えば、部品点数の削減の点で更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、部品点数を削減することができるコネクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、電線の軸線方向の一方側の端末と接続される端子と、前記端子を保持すると共に、相手側コネクタに嵌合される筒状のハウジングと、前記ハウジングと前記相手側コネクタとの間の環状の空間をシールするパッキン本体と、前記パッキン本体の前記軸線方向の他方側で当該パッキン本体と一体に環状に形成されかつ前記パッキン本体よりも高い剛性を有した延長部と、を有したパッキンと、を備え、前記ハウジングは、前記パッキンが外周側に嵌合される内筒部と、前記パッキンおよび前記相手側コネクタの外周側に位置される外筒部と、前記外筒部から当該外筒部の径方向内方に突出したランス部と、を有し、前記パッキンには、前記延長部から当該パッキンの径方向外方に突出し、前記ランス部の前記軸線方向の他端面と係止される凸部が設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコネクタおよびワイヤハーネスは、ハウジングは、パッキンが外周側に嵌合される内筒部と、パッキンおよび相手側コネクタの外周側に位置される外筒部と、外筒部から径方向内方に突出したランス部と、を有し、パッキンには、延長部から径方向外方に突出し、ランス部の軸線方向の他端面と係止される凸部が設けられる。この構成により、コネクタおよびワイヤハーネスは、例えば、ハウジングの外筒部に設けられたランス部とパッキンの延長部に設けられた凸部との係止構造によって、パッキンのハウジングに対する軸線方向の一方側への移動を制限することができる。この結果、コネクタおよびワイヤハーネスは、部品点数を削減することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るコネクタが適用されるワイヤハーネスの例示的な斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るコネクタの例示的な分解斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るコネクタの例示的な幅方向と直交する断面図である。
図4図4は、実施形態に係るコネクタの例示的な軸線方向と直交する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0010】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るコネクタ1が適用されるワイヤハーネスWHの斜視図である。図1に示される本実施形態のコネクタ1は、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスWHに組み込まれるものである。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを束にして集合部品とし、コネクタ1等で当該複数の電線Wを各装置に接続するようにしたものである。ワイヤハーネスWHは、導電性を有する複数の電線Wと、複数の電線Wの端末に設けられるコネクタ1と、コネクタ1と接続される相手側コネクタ2と、を備えている。なお、ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、プロテクタや、固定具等を含んで構成されてもよい。
【0011】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、および第3方向のうち、第1方向を「軸線方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、軸線方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に略直交する。軸線方向Xは、典型的には、電線Wの延在方向、コネクタ1に対する電線Wの挿通方向、コネクタ1と相手側コネクタ2との挿抜方向等に相当する。高さ方向Zは、典型的には、コネクタ1の厚さ方向(縦幅方向)等に相当する。幅方向Yは、典型的には、コネクタ1の幅方向(横幅方向)等に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、電線Wがコネクタ1に組み付けられた状態での方向として説明する。
【0012】
電線Wは、例えば、導電性を有する線状の導体部W1(図3参照)と、当該導体部W1の外側を覆う絶縁性を有する絶縁被覆部W2と、を含んで構成される。電線Wは、絶縁被覆部W2で導体部W1を被覆した絶縁電線である。本実施形態の導体部W1は、導電性を有する金属素線を複数束ねた芯線であるが、当該複数の金属素線を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆部W2は、導体部W1の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆部W2は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。本実施形態では、コネクタ1には、幅方向Yに互いに間隔をあけて二つの電線Wが設けられている。
【0013】
図2は、実施形態に係るコネクタ1の分解斜視図である。図2に示されるように、コネクタ1は、例えば、端子10と、ハウジング20と、パッキン30と、レバー部材40と、を備えている。コネクタ1は、例えば、ハイブリッド自動車や、電気自動車等の車両において、インバータからモータへ電力を供給する電力供給用の電線Wを有するワイヤハーネスWH等に用いられる。コネクタ1は、電線Wの軸線方向Xの一方側の端末と接続される端子10を保持すると共に、相手側コネクタ2と嵌合することで、当該端子10を介して電線Wと相手側コネクタ2とを電気的に接続することができる。
【0014】
端子10(図3参照)は、例えば、導電性を有する金属材で構成された雌端子であり、相手側コネクタ2の雄端子60と電気的に接続されるものである。端子10は、相手側コネクタ2の雄端子60と電気的に接続される電気接触部10aと、電線Wの端末と電気的に接続される電線接続部10bと、を有する。電気接触部10aは、例えば、雄端子60を電気接触部10a側に付勢する接点部材12を介して雄端子60と電気的に接続される。電線接続部10bは、例えば、電線Wの導体部W1と加締められて圧着されることで電線Wと電気的に接続される。図2に示されるように、コネクタ1には、幅方向Yに互いに間隔をあけて二つの端子10が設けられている。
【0015】
ハウジング20は、絶縁性を有する合成樹脂材料によって形成され、端子10や電線W等を収容するものである。ハウジング20は、例えば、外筒部21と、内筒部22と、後述するランス部23と、一対の突起部26と、一対の嵌合部27と、を含んで構成される。ハウジング20は、外筒部21と内筒部22とランス部23と一対の突起部26と一対の嵌合部27とが一体で形成されており、内筒部22の内部には電線Wを収容する収容空間部25が設けられている。収容空間部25は、軸線方向Xの他方側に向けて開放されており、当該軸線方向Xの他方側から電線Wが挿入される。収容空間部25は、電線Wに沿って軸線方向Xに延びると共に、幅方向Yに互いに仕切られている。
【0016】
外筒部21は、例えば、内筒部22における軸線方向Xの一端部に設けられ、全体として内筒部22の外周面に沿った環状に形成される。外筒部21と内筒部22との間には、パッキン30および相手側コネクタ2が挿入される環状の挿入空間部28が設けられている。挿入空間部28は、軸線方向Xの一方側に向けて開放されており、当該軸線方向Xの一方側からパッキン30および相手側コネクタ2が嵌合される。挿入空間部28における径方向(図3の高さ方向Z)に沿った開口幅、すなわち内筒部22と外筒部21との間の間隔は、パッキン30および相手側コネクタ2の筒状部51の厚さの合計よりも大きく設定されている。
【0017】
一対の突起部26は、例えば、レバー部材40の回動軸となるものであり、ハウジング20の幅方向Yの両端部に設けられている。一対の突起部26は、ハウジング20から幅方向Yの両側に向けて突出したピン状に形成され、レバー部材40の孔部44が回動可能に嵌合される。
【0018】
一対の嵌合部27は、端子10を内部に保持すると共に、相手側コネクタ2に嵌合されるものである。一対の嵌合部27は、内筒部22の軸線方向Xの一端面から軸線方向Xの一方側に突出している。一対の嵌合部27は、例えば、端子10の周囲を覆う矩形の筒状に形成されており、相手側コネクタ2に嵌合される。一対の嵌合部27は、一対の端子10に対応して幅方向Yに互いに間隔をあけて設けられている。
【0019】
パッキン30は、水分や粉塵などの異物が外筒部21と内筒部22との間の環状の挿入空間部28からハウジング20の内部に入り込むことを抑制するものである。パッキン30は、ゴムや樹脂等の弾性変形可能な部材から形成されている。パッキン30は、全体として内筒部22の外周面に沿った環状に形成される。
【0020】
レバー部材40は、例えば、相手側コネクタ2に対してコネクタ1を低挿入力で嵌合させるものである。ここで、相手側コネクタ2は、例えば、上述した雄端子60と、雄端子60を収容するハウジング50と、を備えている。ハウジング50には、筒状部51や、フランジ部52、一対の接続部53、一対の突起部54等が設けられている。筒状部51は、上述したコネクタ1の挿入空間部28に沿った環状に形成され、当該挿入空間部28に嵌合されるものである。筒状部51は、挿入空間部28に取り付けられた状態で、パッキン30と外筒部21との間に位置される。
【0021】
フランジ部52は、筒状部51の軸線方向Xの一端部から径方向外方に突出し、取付対象物100に固定されるものである。フランジ部52には、軸線方向Xに沿って貫通した複数の孔部が設けられており、この孔部にはボルト80が挿通される。ハウジング50は、フランジ部52の孔部に挿通されたボルト80が取付対象物100に結合されることによって、当該取付対象物100に固定される。
【0022】
一対の接続部53は、雄端子60を内部に保持するものである。一対の接続部53は、筒状部51の軸線方向Xの一端面から軸線方向Xの一方側に突出している。一対の接続部53は、例えば、雄端子60の周囲を覆う矩形の筒状に形成されており、不図示の接続部材等に接続される。一対の接続部53は、一対の雄端子60に対応して幅方向Yに互いに間隔をあけて設けられており、取付対象物100に形成された開口部102を軸線方向Xに貫通した状態で取り付けられる。なお、取付対象物100における一対の開口部102の間には、相手側コネクタ2から軸線方向Xの一方側に突出した端子部材70が貫通する中心孔103が設けられている。
【0023】
一対の突起部54は、例えば、レバー部材40が係合されるものであり、ハウジング50の幅方向Yの両端部に設けられている。一対の突起部54は、ハウジング50から幅方向Yの両側に向けて突出したピン状に形成され、レバー部材40の長孔43が揺動可能に嵌合される。
【0024】
レバー部材40は、例えば、一対のレバー部41と、一対のレバー部41を連結する連結部42と、を有しおり、コネクタ1に対して相対回転可能に組み付けられている。レバー部材40は、例えば、一対のレバー部41に設けられた孔部44がコネクタ1の一対の突起部26に嵌合され、当該一対の突起部26を回動軸として回動する。一対のレバー部41には、それぞれ長孔43が形成されており、この長孔43には相手側コネクタ2の一対の突起部54が嵌合される。
【0025】
レバー部材40は、相手側コネクタ2の一対の突起部54を長孔43に嵌合した状態で、一対のレバー部41を一方側に回動することによって、長孔43の形状に沿ってコネクタ1を軸線方向Xに沿って相手側コネクタ2側に移動させる。これにより、レバー部材40は、相手側コネクタ2に対してコネクタ1を低挿入力で嵌合させることができる。一方で、レバー部材40は、相手側コネクタ2に対してコネクタ1を嵌合した状態で、一対のレバー部41を他方側に回動することによって、長孔43の形状に沿ってコネクタ1を相手側コネクタ2と離間する側に移動させる。これにより、レバー部材40は、相手側コネクタ2からコネクタ1を小さな力で抜去させることができる。
【0026】
図3は、実施形態に係るコネクタ1の幅方向Yと直交する断面図である。図3に示されるように、パッキン30は、例えば、パッキン本体31と、延長部32と、を含んで構成される。パッキン本体31は、パッキン30のうち軸線方向Xの一方側に位置される部分である。パッキン本体31は、例えば、ゴム等によって形成され、上述した挿入空間部28に沿った環状に形成される。パッキン本体31の外周面および内周面には、それぞれ複数のリップ部31aが設けられている。
【0027】
リップ部31aは、挿入空間部28に沿って環状に形成される襞状の止水部である。本実施形態では、パッキン本体31の外周面および内周面には、それぞれ軸線方向Xに並んで複数のリップ部31aが設けられており、これにより複数のリップ部31aが集合したリップ領域が形成されている。リップ領域における各リップ部31aは、コネクタ1に相手側コネクタ2が嵌合した状態で内筒部22の外周面および筒状部51の内周面に接触し当該内筒部22および筒状部51との間を止水する。リップ部31aは、弾性変形によって内筒部22の外周面および筒状部51の内周面に密着し、挿入空間部28を全周に亘ってシールするよう構成される。
【0028】
延長部32は、パッキン30のうち軸線方向Xの他方側に位置される部分である。延長部32は、例えば、合成樹脂等のパッキン本体31よりも高い剛性を有した材料によって形成され、パッキン本体31に沿った環状に形成される。そして、本実施形態では、延長部32とパッキン本体31とが、例えば、二色成型やインサート成型等によって一体成型されている。延長部32には、軸線方向Xの一方側に突出した突出部34が設けられている。突出部34には、例えば、延長部32の径方向(図3の高さ方向Z)に沿って貫通する開口部が設けられており、この開口部内にパッキン本体31の一部が係止されること等によって、延長部32のパッキン本体31に対する軸線方向Xの他方側への移動(抜け)が抑制されている。延長部32は、高剛性部や、樹脂部等とも称される。
【0029】
また、延長部32には、パッキン30の径方向外方に向けて突出した凸部33が設けられている。凸部33は、上述した外筒部21に設けられたランス部23と軸線方向Xに係止される部分である。ランス部23は、外筒部21から当該外筒部21の径方向内方に向けて爪状に突出している。凸部33は、パッキン30が外筒部21と内筒部22との間の挿入空間部28に取り付けられた状態で、ランス部23の軸線方向Xの他端面23aに係止される。すなわち、ランス部23は、パッキン30のハウジング20に対する軸線方向Xの一方側への移動を制限する抜け止め部として機能する。
【0030】
また、本実施形態では、ランス部23は、外筒部21に対して当該外筒部21の径方向に沿って弾性変形可能に設けられている。具体的には、本実施形態では、ランス部23の幅方向Yの両側には、軸線方向Xに沿って延びる一対のスリット29が設けられており、この一対のスリット29によってランス部23が板バネ状に弾性変形可能に構成される。また、ランス部23の内面には、傾斜面23bが設けられている。傾斜面23bは、軸線方向Xの他方側に向かうにつれて当該ランス部23の径方向内方に向かうように傾斜している。
【0031】
上記のように構成されるランス部23および凸部33は、ランス部23に対してパッキン30の凸部33が軸線方向Xの一方側から係合(嵌合)される。このとき、凸部33によってランス部23の傾斜面23bが径方向外方に押し広げられ、当該傾斜面23bを乗り越えることによってランス部23が自由状態に復帰し、凸部33がランス部23よりも軸線方向Xの他方側に挿入される。そして、ランス部23の軸線方向Xの他端面23aと凸部33とが係止されることで、パッキン30のハウジング20に対する軸線方向Xの一方側への移動(抜け)が制限される。
【0032】
図4は、実施形態に係るコネクタ1の軸線方向Xと直交する断面図である。図4に示されるように、本実施形態では、外筒部21には、凸部33とパッキン30の周方向に係止される切欠部24が設けられている。切欠部24は、ランス部23(図2、3参照)の軸線方向Xの他方側に隣接して形成され、外筒部21の径方向外方および軸線方向Xの他方側に向けて開口している。切欠部24には、上述したランス部23の軸線方向Xの他端面23aが臨んでいる。
【0033】
本実施形態では、切欠部24におけるパッキン30の周方向に沿った開口幅は、凸部33の周方向に沿った幅よりも僅かに大きく設定される。凸部33は、パッキン30が外筒部21と内筒部22との間の挿入空間部28に取り付けられた状態で、切欠部24の周方向の両縁部に係止される。すなわち、切欠部24は、パッキン30のハウジング20に対する周方向への移動を制限する回転止め部として機能する。
【0034】
また、本実施形態では、延長部32には、パッキン30の周方向に互いに間隔をあけて複数の凸部33が設けられている。具体的には、延長部32には、パッキン30の周方向に互いに間隔をあけて四つの凸部33が設けられている。また、外筒部21には、四つの凸部33に対応して四つの切欠部24およびランス部23がそれぞれ設けられている。なお、凸部33および切欠部24の数は、四つには限定されず、例えば、二つや、三つ、あるいは五つ以上の凸部33および切欠部24が設けられてもよい。
【0035】
以上のように、本実施形態のコネクタ1およびワイヤハーネスWHでは、ハウジング20は、パッキン30が外周側に嵌合される内筒部22と、パッキン30および相手側コネクタ2の外周側に位置される外筒部21と、外筒部21から径方向内方に突出したランス部23と、を有し、パッキン30には、延長部32から径方向外方に突出し、ランス部23の軸線方向Xの他端面23aと係止される凸部33が設けられる。この構成により、コネクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、ハウジング20の外筒部21に設けられたランス部23とパッキン30の延長部32に設けられた凸部33との係止構造によって、パッキン30のハウジング20に対する軸線方向Xの一方側への移動を制限することができる。この結果、コネクタ1およびワイヤハーネスWHは、従来のようなフロントホルダを廃止できる分、部品点数を削減することができ、ひいては当該コネクタ1およびワイヤハーネスWHの製造に要する手間や費用を低減することができる。
【0036】
ここで、コネクタ1およびワイヤハーネスWHでは、ゴム等によって形成されるパッキン本体31の剛性が比較的低いため、パッキン30のハウジング20に対する組付け作業性が低下したり、ハウジング20におけるパッキン30の保持力が低下したりしてしまう虞がある。その点、本実施形態によれば、パッキン30は、パッキン本体31と、パッキン本体31よりも高い剛性を有した延長部32と、を含んで構成されるため、例えば、パッキン30の組付け時の変形を抑制してハウジング20に対する組付け作業性を向上することができる。さらに、パッキン本体31よりも高い剛性を有した延長部32に設けられた凸部33とハウジング20のランス部23との係止構造ひいては回転止め構造によって、例えば、ハウジング20におけるパッキン30の保持力を向上することができる。
【0037】
また、本実施形態のコネクタ1およびワイヤハーネスWHでは、ランス部23は、外筒部21に対して当該外筒部21の径方向に沿って弾性変形可能に設けられ、かつランス部23の内面には、軸線方向Xの他方側に向かうにつれて当該ランス部23の径方向内方に向かうように傾斜した傾斜面23bが設けられる。この構成により、コネクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、パッキン30のハウジング20への組付け作業時に凸部33が傾斜面23bを押し上げるようにランス部23を径方向に沿って弾性変形させることによって、比較的容易にパッキン30をハウジング20の内筒部22と外筒部21との間の挿入空間部28に組付けることができる。
【0038】
また、本実施形態のコネクタ1およびワイヤハーネスWHでは、外筒部21には、凸部33とパッキン30の周方向に係止される切欠部24が設けられる。この構成により、コネクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、外筒部21に設けられた切欠部24とパッキン30の延長部32に設けられた凸部33との回転止め構造によって、パッキン30のハウジング20に対する周方向への移動を制限することができる。
【0039】
また、本実施形態のコネクタ1およびワイヤハーネスWHでは、延長部32には、パッキン30の周方向に互いに間隔をあけて複数の凸部33が設けられ、外筒部21には、複数の凸部33に対応して複数の切欠部24が設けられる。この構成により、コネクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、外筒部21に設けられた複数の切欠部24とパッキン30の延長部32に設けられた複数の凸部33との回転止め構造によって、パッキン30のハウジング20に対する周方向への移動をより確実に制限することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、パッキン30のパッキン本体31と延長部32とが二色成型やインサート成型等によって一体成型された場合が例示されたが、この例には限定されず、例えば、パッキン本体31と延長部32とが別体で形成され、爪嵌合等による係止構造によって一体化される構成でもよい。また、本実施形態では、コネクタ1がレバー式コネクタによって構成された場合が例示されたが、この例には限定されず、レバー式以外のコネクタによって構成されてもよい。
【0041】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 コネクタ
2 相手側コネクタ
10 端子
20 ハウジング
21 外筒部
22 内筒部
23 ランス部
23a 他端面
23b 傾斜面
24 切欠部
30 パッキン
31 パッキン本体
32 延長部
33 凸部
W 電線
WH ワイヤハーネス
X 軸線方向

図1
図2
図3
図4