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特開2024-125521ワイヤハーネス、電線保持構造、及びワイヤハーネス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125521
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス、電線保持構造、及びワイヤハーネス製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20240911BHJP
   H02G 3/32 20060101ALI20240911BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H02G3/30
H02G3/32
H02G3/04 062
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033373
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義直
【テーマコード(参考)】
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
5G357DA06
5G357DA10
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DE03
5G357DG06
5G363AA12
5G363BA02
5G363DA13
5G363DA15
5G363DA16
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】テープ巻きによる電線ホルダーと電線との間の保持力を向上させることができるワイヤハーネス、電線保持構造、及びワイヤハーネス製造方法を提供する。
【解決手段】ワイヤハーネスWHは、向かい合わせに組み合わせた状態で電線Wを保持する一対の分割体2A,2Bを含む電線ホルダー2と、電線ホルダー2から電線Wに渡って巻回されるテープ部材3とを備える。分割体2A,2Bは、本体10から軸線方向Xに沿って延在し、電線Wの外周面Waを覆うようにテープ部材3が巻回される被巻回部11と、被巻回部11に電線Wの外周面Waを電線露出面Waaとして露出させた切り欠き部12とを有する。テープ部材3は、被巻回部11の外面11a及び電線露出面Waaに渡り巻回された第1巻き部31と、第1巻き部31から被巻回部11の軸線方向Xの一方側に位置する電線Wに渡って巻き降ろされた第2巻き部32とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線を収容する電線溝部をそれぞれ有し、向かい合わせに組み合わせた状態において、前記電線溝部同士が対向して形成される電線挿通孔に前記電線を挿通して保持する一対の分割体を含む電線ホルダーと、
前記電線ホルダーが前記電線を保持した保持状態において、前記電線ホルダーから前記電線に渡って巻回されるテープ部材と、を備え、
前記分割体は、
前記電線溝部が形成された本体と、
前記保持状態において、前記本体から前記電線の軸線方向の一方に沿って延在し、前記電線の外周面を覆うように形成され、前記テープ部材が巻回される被巻回部と、を有し、
前記一対の分割体の少なくとも一方は、
前記被巻回部に前記電線の外周面を電線露出面として露出させた切り欠き部を有し、
前記テープ部材は、
前記電線ホルダーから前記電線に渡って巻回された巻回状態において、前記被巻回部の外面及び前記電線露出面に渡って巻回された第1巻き部と、
前記第1巻き部に連続し、かつ前記第1巻き部から前記被巻回部の前記軸線方向の一方側に位置する前記電線に渡って巻き降ろされた第2巻き部と、を有する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記第1巻き部は、
前記テープ部材が、前記一方の前記分割体の前記被巻回部の外面及び前記電線露出面に巻回される内側巻き部と、
前記テープ部材が、前記内側巻き部の外面及び他方の前記分割体の前記被巻回部の外面に巻回される外側巻き部と、を含む
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
電線を収容する電線溝部をそれぞれ有し、向かい合わせに組み合わせた状態において、前記電線溝部同士が対向して形成される電線挿通孔に前記電線を挿通して保持する一対の分割体を含む電線ホルダーと、
前記電線ホルダーが前記電線を保持した保持状態において、前記電線ホルダーから前記電線に渡って巻回されるテープ部材と、を備え、
前記分割体は、
前記電線溝部が形成された本体と、
前記保持状態において、前記本体から前記電線の軸線方向の一方に沿って延在し、前記電線の外周面を覆うように形成され、前記テープ部材が巻回される被巻回部と、を有し、
前記一対の分割体の少なくとも一方は、
前記被巻回部に前記電線の外周面を電線露出面として露出させた切り欠き部を有し、
前記テープ部材は、
前記電線ホルダーから前記電線に渡って巻回された巻回状態において、前記被巻回部の外面及び前記電線露出面に渡って巻回された第1巻き部と、
前記第1巻き部に連続し、かつ前記第1巻き部から前記被巻回部の前記軸線方向の一方側に位置する前記電線に渡って巻き降ろされた第2巻き部と、を有する
ことを特徴とする電線保持構造。
【請求項4】
電線を収容する電線溝部をそれぞれ有し、向かい合わせに組み合わせた状態において、前記電線溝部同士が対向して形成される電線挿通孔に前記電線を挿通して保持する一対の分割体を含む電線ホルダーの、一方の前記分割体の前記電線溝部に前記電線を収容する収容工程と、
前記収容工程の後に、前記一方の前記分割体と前記電線とに渡ってテープ部材を巻き回す第1テープ巻き工程と、
前記第1テープ巻き工程の後に、前記一方の前記分割体と他方の前記分割体とを相互に組み付ける組付け工程と、
前記組付け工程の後に、前記一方の前記分割体と前記他方の前記分割体とに渡って前記テープ部材を巻き回す第2テープ巻き工程と、
前記第2テープ巻き工程の後に、前記電線ホルダーと前記電線とに渡って前記テープ部材を巻き降ろす第3テープ巻き工程と、を含み、
前記分割体は、
前記電線溝部が形成された本体と、
前記電線ホルダーが前記電線を保持した保持状態において、前記本体から前記電線の軸線方向の一方に沿って延在し、前記電線の外周面を覆うように形成され、前記テープ部材が巻回される被巻回部と、を有し、
前記一対の分割体の少なくとも前記一方は、
前記被巻回部に前記電線の外周面を電線露出面として露出させた切り欠き部を有し、
前記第1テープ巻き工程では、前記一方の前記分割体の前記電線溝部に前記電線が収容された収容状態において、前記テープ部材を、前記一方の前記分割体の前記被巻回部の外面及び前記電線露出面に巻回して内側巻き部を形成し、
前記第2テープ巻き工程では、前記一方の前記分割体に前記他方の前記分割体が組み合わされた状態において、前記テープ部材を、前記内側巻き部から連続して、当該内側巻き部の外面及び前記他方の前記分割体の前記被巻回部の外面に巻回して外側巻き部を形成し、前記内側巻き部と前記外側巻き部とによって構成される第1巻き部を形成し、
前記第3テープ巻き工程では、前記テープ部材を、前記外側巻き部から連続して、かつ前記第1巻き部から前記被巻回部の前記軸線方向の一方側に位置する前記電線に渡って巻き降ろして第2巻き部を形成する
ことを特徴とするワイヤハーネス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス、電線保持構造、及びワイヤハーネス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に配索されるワイヤハーネスには、電線ホルダーが適用されたものがある。このようなワイヤハーネスでは、例えば、電線ホルダーに保持された電線と当該電線ホルダーとをより固定するために、電線ホルダーから電線に渡って粘着テープが巻回される場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-53392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のワイヤハーネスでは、電線ホルダーから電線に渡って粘着テープが巻回される場合、電線と粘着テープの接触面積が少なく、当該粘着テープによる電線の保持力低下の点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、テープ巻きによる電線ホルダーと電線との間の保持力を向上させることができるワイヤハーネス、電線保持構造、及びワイヤハーネス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスは、電線と、前記電線を収容する電線溝部をそれぞれ有し、向かい合わせに組み合わせた状態において、前記電線溝部同士が対向して形成される電線挿通孔に前記電線を挿通して保持する一対の分割体を含む電線ホルダーと、前記電線ホルダーが前記電線を保持した保持状態において、前記電線ホルダーから前記電線に渡って巻回されるテープ部材と、を備え、前記分割体は、前記電線溝部が形成された本体と、前記保持状態において、前記本体から前記電線の軸線方向の一方に沿って延在し、前記電線の外周面を覆うように形成され、前記テープ部材が巻回される被巻回部と、を有し、前記一対の分割体の少なくとも一方は、前記被巻回部に前記電線の外周面を電線露出面として露出させた切り欠き部を有し、前記テープ部材は、前記電線ホルダーから前記電線に渡って巻回された巻回状態において、前記被巻回部の外面及び前記電線露出面に渡って巻回された第1巻き部と、前記第1巻き部に連続し、かつ前記第1巻き部から前記被巻回部の前記軸線方向の一方側に位置する前記電線に渡って巻き降ろされた第2巻き部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るワイヤハーネス、電線保持構造、及びワイヤハーネス製造方法によれば、テープ巻きによる電線ホルダーと電線との間の保持力を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るワイヤハーネスの概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るワイヤハーネスに適用される電線保持構造の概略構成を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る電線ホルダーの概略構成を示す斜視図である。
図4図4は、実施形態に係る電線ホルダーの分解斜視図である。
図5図5は、実施形態に係るワイヤハーネス製造方法を表すフローチャートである。
図6図6は、実施形態に係るワイヤハーネス製造方法の第1テープ巻き工程における電線ホルダーの状態例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係るワイヤハーネス製造方法の第2テープ巻き工程における電線ホルダーの状態例を示す図である。
図8図8は、実施形態に係るワイヤハーネス製造方法の第3テープ巻き工程における電線ホルダーの状態例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれ、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0010】
[実施形態]
本実施形態に係るワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の電線Wを各装置に接続するようにしたものである。本実施形態のワイヤハーネスWHは、2本の電線Wと、編組体4と、シールドシェル5と、固定部材6と、電線ホルダー2及びテープ部材3を含む電線保持構造Vとを備える。なお、ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、コルゲートチューブ、グロメット、固定具電気接続箱等の種々の構成部品を含んで構成されてもよい。
【0011】
なお、以下の説明では、便宜上、図示のX方向、Y方向、及び、Z方向のうち、X方向を電線Wの「軸線方向X」といい、Y方向を電線ホルダー2の「幅方向Y」といい、Z方向を電線ホルダー2の「高さ方向Z」とする。軸線方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に直交する。特に、軸線方向Xは、一方を「第1軸線方向X1」、他方を「第2軸線方向X2」とする。以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向として説明する。
【0012】
電線Wは、例えば、導電性を有する複数の金属素線を束ねた芯線を、絶縁被覆部によって被覆した絶縁電線である。本実施形態における2本の電線Wは、同一の外径を有する。なお、電線Wは、導電性を有する棒状部材の外側を、絶縁性を有する被覆部によって覆った金属棒であってもよい。
【0013】
編組体4は、導電性を有する金属材料によって形成されている編組線を編み込むことによって形成されている。編組体4は、図1に示すように、軸線方向Xに沿って略円筒状に形成され、軸線方向Xにおいて先端側に配置される先端側部分41と、軸線方向Xにおいて基端側に配置される基端側部分42と、先端側部分41と基端側部分42との間に配置される縮径部分43とを有している。先端側部分41の大きさ(径方向の長さ)は、基端側部分42の大きさ(径方向の長さ)よりも大きく形成される。縮径部分43は、軸線方向Xにおいて、先端側から基端側へ向かうに従って大きさ(径方向の長さ)が徐々に小さくなる。編組体4は、シールドシェル5の外側に配置され、先端側部分41がシールドシェル5の端部を覆う状態で組み付けられることで、電線ホルダー2から延在する電線Wの一部を内側に収容することができる。
【0014】
シールドシェル5は、図1に示す電線ホルダー2を車両のボディ等に固定する際に、ボルト等の締結部材によって当該ボディ等に締結される部材である。シールドシェル5は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等の導電性を有する金属板によって成形される。シールドシェル5は、当該シールドシェル5が車両のボディ等に締結された状態において、当該ボディ等と電気的に接続され接地(アース)される。
【0015】
固定部材6は、金属材料によって形成されているシールドリングであり、例えば、メタルタイ、又は、圧着リング等の締結部材によって構成されるものである。固定部材6は、図1に示すように、軸線方向Xに沿って略円筒状に形成され、編組体4の先端側部分41の外側に配置された状態で加締められることで、当該先端側部分41を締め付けてシールドシェル5の端部に固定することができる。
【0016】
本実施形態に係る電線保持構造Vは、図1に示すワイヤハーネスWHに適用されるものである。電線保持構造Vは、後述する電線ホルダー2と、テープ部材3とを含んで構成される。電線保持構造Vは、2本の電線Wを保持し、車両側に固定されたシールドシェル5に係止されることで、電線Wを車両側に固定することができる。
【0017】
電線ホルダー2は、同一形状の一対の分割体2A,2を含んで構成され、一対の分割体2A,2Bを向かい合わせに組み合わせた状態で2本の電線Wを保持するものである。
【0018】
一対の分割体2A,2Bは、それぞれが、本体10と、被巻回部11と、切り欠き部12と、一対の電線溝部15とを有する。各分割体2A,2Bは、絶縁性を有する樹脂材料等によって一体成形される。
【0019】
本体10は、各分割体2A,2Bにおいて、2本の電線Wを収容、保持する主たる部材を構成する。本体10は、図3に示すように、一対の分割体2A,2Bが向かい合わせに組み合わせた状態において、幅方向Yに隣接する2つの電線挿通孔2aを形成する。電線挿通孔2aは、一対の分割体2A,2Bが向かい合わせに組み合わせた状態において、電線溝部15同士が対向して形成される。本体10は、一対の分割体2A,2Bが向かい合わせに組み合わせた状態において、相手側の本体10と互いに係合する。
【0020】
被巻回部11は、電線ホルダー2が電線Wを保持した保持状態において、本体10から電線Wの軸線方向Xの一方(第1軸線方向X1)に沿って延在し、電線Wの外周面Waを覆うように形成され、テープ部材3が巻回される部分である。被巻回部11は、軸線方向Xから視た断面形状がJ字状に形成される。被巻回部11は、電線ホルダー2が電線Wを保持した保持状態において、外面11aの反対側に形成される内面11bが電線Wの外周面Waに対向するように形成される。被巻回部11は、平面部21と、曲面部22とで構成される。被巻回部11は、平面部21及び曲面部22が一体的に形成されたものである。
【0021】
平面部21は、当該平面部21に対応する部分の外面11aが曲面でなく平坦面を形成する。平面部21は、幅方向Yに沿って延在し、かつ平板状に形成される。平面部21は、幅方向Yの一方の端部が曲面部22に連結している。また、平面部21は、上記保持状態で電線ホルダー2を高さ方向Zから視た場合、幅方向Yの他方の端部が、2本の電線Wのうち他方側を覆うことなく、一方側のみを覆う位置に形成される。
【0022】
曲面部22は、当該曲面部22に対応する部分の外面11aが平坦面でなく曲面を形成する。曲面部22は、電線ホルダー2が電線Wを保持した保持状態において、一方側の電線Wの外周面Waに沿って形成される。曲面部22は、上記保持状態で電線ホルダー2を幅方向Yから視た場合、高さ方向Zの一方の端部が、電線Wの高さ方向Z(径方向)の略半分を覆う位置に形成される。すなわち、被巻回部11は、上記保持状態で電線ホルダー2を幅方向Yから視た場合、一方側の電線Wの外周面Waの一部を覆うように形成される。
【0023】
切り欠き部12は、被巻回部11に電線Wの外周面Waを電線露出面Waaとして露出させた部分である。切り欠き部12は、本体10を高さ方向Zから視た場合、被巻回部11に対して幅方向Yに隣接して形成される。切り欠き部12は、一対の分割体2A,2Bを向かい合わせに組み合わせた状態で高さ方向Zから視た場合、一方の分割体(例えば、図3では分割体2B)における被巻回部11の内面11bを露出させている。
【0024】
電線溝部15は、それぞれが電線Wに対応して形成され、本体10の高さ方向Zにおける電線側から本体側に向けて凹んだ部分である。電線溝部15は、本体10の軸線方向Xの両端が開口し、軸線方向Xから視た断面形状がU字状または半円形状に形成される。電線溝部15は、一対の分割体2A,2Bが向かい合わせに組み合わせた状態において、高さ方向Zに対向して電線挿通孔2aを形成する。
【0025】
テープ部材3は、絶縁性を有する樹脂材料等によって帯状に形成され、電線ホルダー2が電線Wを保持した保持状態において、電線ホルダー2から電線Wに渡って巻回されることで、電線ホルダー2に対して電線Wの軸線方向Xへの移動を規制することができる部材である。本実施形態のテープ部材3は、図2に示すように、テープ部材3の一部が重なった状態で、隙間なく連続して螺旋状にまかれている。
【0026】
テープ部材3は、図2に示すように、当該テープ部材3が電線ホルダー2から電線Wに渡って巻回された巻回状態において、第1巻き部31と、第2巻き部32とを有する。
【0027】
第1巻き部31は、テープ部材3が電線ホルダー2から電線Wに渡って巻回された巻回状態において、被巻回部11の外面11a及び電線露出面Waaに渡って巻回された部分である。第1巻き部31は、第2巻き部32に対して第2軸線方向X2側に位置し、当該第2巻き部32に連続している。第1巻き部31は、テープ部材3が、分割体Bにおける被巻回部11の外面11a及び電線露出面Waa、並びに、分割体Aにおける被巻回部11の外面11a及び電線露出面Waaに渡って巻回された部分である。第1巻き部31は、内側巻き部33と、外側巻き部34とを含むものである。
【0028】
内側巻き部33は、図6に示すように、テープ部材3が、一方の分割体2Bの被巻回部11の外面11a及び電線露出面Waaに巻回される部分である。内側巻き部33は、分割体Bの電線溝部15に電線Wが収容された収容状態で、テープ部材3が、当該分割体Bの被巻回部11の外面11a、電線露出面Waa、2本の電線Wの外周面Waに渡って巻回される。内側巻き部33は、第1巻き部31における巻き始め側に相当し、外側巻き部34より先にテープ部材3が巻かれる。内側巻き部33では、分割体Bの被巻回部11の外面11a、電線露出面Waa、2本の電線Wの外周面Waに対して、テープ部材3が軸線方向Xと直交する方向に1~3回程度巻かれている。
【0029】
外側巻き部34は、テープ部材3が、内側巻き部33の外面33a及び他方の分割体2Aの被巻回部11の外面11aに巻回される部分である。外側巻き部34は、テープ部材3により内側巻き部33が形成された後、分割体Bに分割体Aを組み合わせた状態において、テープ部材3が、内側巻き部33の外面33a及び分割体Aの被巻回部11の外面11aに巻回される。外側巻き部34では、内側巻き部33の外面33a及び分割体Aの被巻回部11の外面11aに対して、テープ部材3が軸線方向Xと直交する方向に1~3回程度巻かれている。
【0030】
第2巻き部32は、第1巻き部31に連続し、かつ第1巻き部31から被巻回部11の軸線方向Xの一方側に位置する電線Wの外周面Waに渡って巻き降ろされた部分である。第2巻き部32では、テープ部材3の一部が重なった状態で、隙間なく連続して螺旋状にまかれている。
【0031】
次に、図1図2図4図5図6図7図8を参照して、上記のように構成されるワイヤハーネスWHの製造方法(ワイヤハーネス製造方法)について説明する。以下の説明では、図5のフローチャートを基に説明しつつ、適宜他図を参照する。以下で説明するワイヤハーネスWHの製造方法は、作業員が種々の装置、機器、治具等を用いて手作業で行ってもよいし、種々の製造装置によって自動で行われるものであってもよい。
【0032】
本実施形態のワイヤハーネスWHの製造方法は、図5に示すように、収容工程(ステップS1)と、第1テープ巻き工程(ステップS2)と、組付け工程(ステップS3)と、第2テープ巻き工程(ステップS4)と、第3テープ巻き工程(ステップS5)とを含む。なお、このワイヤハーネスWHの製造方法は、作業員によって手作業で行われるものとして説明する。
【0033】
まず、組立作業者は、収容工程として、図4に示すように、電線ホルダー2における一方の分割体2Bの電線溝部15に電線Wを収容する(ステップS1)。ここでは、分割体2Bの各電線溝部15に電線Wが収容される。
【0034】
次に、組立作業者は、収容工程の後に、図6に示すように、第1テープ巻き工程として、分割体2Bと電線Wとに渡ってテープ部材3を巻き回す(ステップS2)。ここでは、テープ部材3は、内側巻き部33として、一方の分割体2Bの被巻回部11の外面11a及び電線露出面Waaに巻回される。テープ部材3は、分割体Bの電線溝部15に電線Wが収容された収容状態で、当該分割体Bの被巻回部11の外面11a、電線露出面Waa、2本の電線Wの外周面Waに渡って巻回されることで、分割体2Bに対して2本の電線Wを容易に固定することができる。
【0035】
次に、組立作業者は、第1テープ巻き工程の後に、図7に示すように、組付け工程として、一方の分割体2Bと他方の分割体2Aとを相互に組み付ける(ステップS3)。
【0036】
次に、組立作業者は、組付け工程の後に、図8に示すように、第2テープ巻き工程として、分割体2Bと分割体2Aとに渡ってテープ部材3を巻き回す(ステップS4)。ここでは、テープ部材3は、外側巻き部34として、内側巻き部33の外面33a及び他方の分割体2Aの被巻回部11の外面11aに巻回される。テープ部材3は、テープ部材3により内側巻き部33が形成された後、分割体Bに分割体Aを組み合わせた状態において、内側巻き部33の外面33a及び分割体Aの被巻回部11の外面11aに巻回されることで、テープ部材3により、上記収容状態の分割体Bに対して分割体Aを容易に固定することができる。
【0037】
次に、組立作業者は、第2テープ巻き工程の後に、図2に示すように、第3テープ巻き工程として、電線ホルダー2と電線Wとに渡ってテープ部材3を巻き降ろして(ステップS5)、このワイヤハーネスWHの製造方法を終了する。ここでは、テープ部材3は、第1巻き部31に連続し、かつ第1巻き部31から被巻回部11の軸線方向Xの一方側に位置する電線Wの外周面Waに渡って巻き降ろされる。つづいて、組立作業者は、電線ホルダー2に対して、編組体4、シールドシェル5、固定部材6を取り付けた後、当該固定部材6を締め付けてシールドシェル5に編組体4を固定して、図1に示すワイヤハーネスWHを製造する。
【0038】
以上説明したワイヤハーネスWH、電線保持構造V、ワイヤハーネスWH製造方法は、電線ホルダー2が、電線Wを収容する電線溝部15をそれぞれ有し、向かい合わせに組み合わせた状態において、電線溝部15同士が対向して形成される電線挿通孔2aに電線Wを挿通して保持する一対の分割体2A,2Bを含むものである。この構成により、ワイヤハーネスWHは、当該ワイヤハーネスWHの組立の際に、一対の分割体2A,2Bに2本の電線Wを容易に組み付けることができる。また、分割体2A,2Bは、テープ部材3が巻回される被巻回部11と、被巻回部11に電線Wの外周面Waを電線露出面Waaとして露出させた切り欠き部12とを有する。この構成により、ワイヤハーネスWHは、電線Wの電線露出面Waaと電線ホルダー2側の被巻回部11の外面11aが電線ホルダー2の周方向に連続するので、従来のワイヤハーネスと比較して、テープ部材3を螺旋状に巻回せずとも、周方向に巻くことで電線露出面Waaとテープ部材3との接地面を増やすことができる。この結果、以上で説明したワイヤハーネスWH、電線保持構造V、ワイヤハーネスWH製造方法は、テープ巻きによる電線ホルダーと電線との間の保持力を向上させることができる。
【0039】
また、ワイヤハーネスWH、電線保持構造V、ワイヤハーネスWH製造方法は、第1巻き部31において、テープ部材3により、一方の分割体2Bの被巻回部11の外面11a及び電線露出面Waaに巻回される内側巻き部33が形成される。この構成により、第1巻き部31は、テープ部材3により分割体2Bに対して2本の電線Wを容易に固定することができる。また、ワイヤハーネスWH、電線保持構造V、ワイヤハーネスWH製造方法は、第1巻き部31において、テープ部材3により、内側巻き部33の外面33a及び他方の分割体2Aの被巻回部11の外面11aに巻回される外側巻き部34が形成される。この構成により、第1巻き部31は、テープ部材3により、電線溝部15に電線Wが収容された収容状態の分割体Bに対して分割体Aを容易に固定することができる。
【0040】
なお、上記実施形態では、電線ホルダー2は、同径の2本の電線Wを保持する構成を揺するが、これに限定されるものではない。例えば、電線ホルダー2は、異径の2本の電線Wを保持する構成であってもよいし、同径の3本以上の電線Wを保持する構成であってもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、電線ホルダー2を構成する一対の分割体2A,2Bは、同一形状を有するが、これに限定されるものではなく、互いに異なる形状であってよい。
【0042】
また、上記実施形態では、切り欠き部12は、一対の分割体2A,2Bのそれぞれに形成されているが、いずれか一方にのみ形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
2 電線ホルダー
2a 電線挿通孔
2A,2B 分割体
3 テープ部材
4 編組体
5 シールドシェル
6 固定部材
10 本体
11 被巻回部
12 切り欠き部
15 電線溝部
31 第1巻き部
32 第2巻き部
33 内側巻き部
34 外側巻き部
V 電線保持構造
W 電線
WH ワイヤハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8