IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シチズンホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ シチズンマシナリーミヤノ株式会社の特許一覧

特開2024-125522角度位置決め機構及びタレット刃物台
<>
  • 特開-角度位置決め機構及びタレット刃物台 図1
  • 特開-角度位置決め機構及びタレット刃物台 図2
  • 特開-角度位置決め機構及びタレット刃物台 図3
  • 特開-角度位置決め機構及びタレット刃物台 図4
  • 特開-角度位置決め機構及びタレット刃物台 図5A
  • 特開-角度位置決め機構及びタレット刃物台 図5B
  • 特開-角度位置決め機構及びタレット刃物台 図6A
  • 特開-角度位置決め機構及びタレット刃物台 図6B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125522
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】角度位置決め機構及びタレット刃物台
(51)【国際特許分類】
   G12B 5/00 20060101AFI20240911BHJP
   B23B 29/24 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G12B5/00 Z
B23B29/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033374
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 矩義
【テーマコード(参考)】
2F078
3C046
【Fターム(参考)】
2F078CA03
2F078CC03
2F078CC04
2F078CC11
3C046NN22
(57)【要約】
【課題】角度位置決め機構において、旋回工具等回転体の回転の角度を精度よく位置決めして保持する。
【解決手段】ベースプレート21上に設けられ、軸C2の回りに回転するツールホルダ24(回転体)の回転の角度位置を位置決めする角度位置決め機構60は、ベースプレート21の、軸C2を中心とした所定の半径の周方向に沿って角度θ(第1の角度)の間隔で形成され、ツールホルダ24に向かって凹んだ複数の皿穴61(凹部)と、ツールホルダ24の、軸C2を中心とした所定の半径の周方向に沿って角度θ(第2の角度)の間隔で配置された、ベースプレート21に向かって突出する複数のプランジャー62(凸部材)と、を備え、プランジャー62が皿穴61に突入して、角度θと角度θとの差の分解能の角度で、ツールホルダ24の回転の角度位置を位置決めする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレート上に設けられ、前記ベースプレートに対して前記ベースプレートの面に直交する軸の回りに回転する回転体の回転の角度位置を位置決めする角度位置決め機構であって、
前記ベースプレートの、前記軸を中心とした所定の半径の周方向に沿って第1の角度の間隔で形成された、前記回転体に向かって凹んだ複数の凹部と、
前記回転体の、前記軸を中心とした前記所定の半径の周方向に沿って第2の角度の間隔で配置された、前記ベースプレートに向かって突出する複数の凸部材と、を備え、
前記凸部材が前記凹部に突入することにより、前記第1の角度と前記第2の角度との差の分解能の角度で、前記ベースプレートに対する前記回転体の回転の角度位置を位置決めする角度位置決め機構。
【請求項2】
複数の前記凸部材は、互いに異なる2つの半径の周方向に沿って分けて配置され、内周側の周方向に沿って並んだ前記凸部材と外周側の周方向に沿って並んだ前記凸部材とが、前記軸を中心とした角度位置に従って交互に配置され、
複数の前記凹部は、互いに異なる2つの半径の周方向に沿って分けて配置され、内周側の周方向に沿って並んだ前記凹部と外周側の周方向に沿って並んだ前記凹部とは、前記軸を中心とした同一の角度位置に配置されている、請求項1に記載の角度位置決め機構。
【請求項3】
複数の前記凸部材は、互いに異なる2つの半径の周方向に沿って分けて配置され、内周側の周方向に沿って並んだ前記凸部材と外周側の周方向に沿って並んだ前記凸部材とが、前記軸を中心とした角度位置に従って交互に配置され、
複数の前記凹部は、互いに異なる2つの半径の周方向に沿って分けて配置され、内周側の周方向に沿って並んだ前記凹部と外周側の周方向に沿って並んだ前記凹部とは、前記軸を中心とした角度位置に従って交互に配置されている、請求項1に記載の角度位置決め機構。
【請求項4】
前記凸部材はプランジャーであり、前記凹部は皿穴である、請求項1から3のうちいずれか1項に記載の角度位置決め機構。
【請求項5】
タレット面に固定されるベースプレートと前記ベースプレートに対して、前記タレット面に直交する軸回りに回転可能のツールホルダとを有する旋回工具と、
前記ツールホルダを前記回転体として、前記ツールホルダを前記軸回りの所定の角度位置に位置決めする、請求項1に記載の角度位置決め機構と、を備えたタレット刃物台。
【請求項6】
前記回転体及び前記ベースプレートのうち一方に表示された、前記ベースプレートに対して回転した角度の目盛り線を表した角度目盛りと、
前記回転体及び前記ベースプレートのうち他方に表示された、前記角度目盛りを指し示す指示線と、を有する角度表示部を備え、
前記角度位置決め機構は、前記指示線が前記角度目盛りのいずれかの前記目盛り線に一致する角度位置に、前記ツールホルダ24を位置決めする、請求項5に記載のタレット刃物台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度位置決め機構及びタレット刃物台に関する。
【背景技術】
【0002】
自動旋盤等の工作機械に用いられるタレット刃物台は、タレットのタレット面に平行な面内で回転する旋回工具が設けられることがある。旋回工具は、タレット面に直交する軸回りに回転することで、タレット面に平行な面内で回転する。
【0003】
ここで、タレット面側と旋回工具側とのいずれか一方には、回転角度を示す角度目盛りが表示され、他方には指示線が表示されていて、旋回工具を手動で回転させる場合、使用者が手動で旋回工具を軸回り回転させる。そして、使用者は、目視により、指示線が所望とする回転角度に対応した角度目盛りに一致したことを認識したときに、旋回工具の回転を手で止めて、回転の角度の位置決めを行う。
【0004】
しかし、上述したように、目視のみに依存した操作では、個人の熟練度等に応じて回転角度の位置決め精度にばらつきが生じ得る。
【0005】
回転角度を検出する手法として、回転板と光検出センサとを用いたロータリーエンコーダが知られている。回転板は、例えば、円板の外周部にスリットが周方向に沿って多数並んで形成され、ロータリーエンコーダは、スリットを透過した光のパルスを光検出センサによって計数することで、回転板の回転角度を検出する。
【0006】
そして、回転板の回転角度の検出分解能を高めるために、回転板の半径方向の異なる位置に、それぞれ、周方向に沿う異なる角度のスリットが並ぶスリットパターンを形成し、半径方向の異なる位置にそれぞれ対応して設置された複数の光検出センサで検出された光の検出パターンに応じて、回転板の回転角度を検出するロータリーエンコーダが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このロータリーエンコーダは、半径方向の異なる位置に形成したスリットの角度を互いに素となるように設定することで、回転板の回転角度の検出分解能を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-177426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した先行技術文献に記載の技術は、光検出センサ等を用いて回転板の回転角度の検出精度を高めるものであるが、回転後の角度位置に回転体を固定するまでの間は、回転体を手で保持する必要があるときは、手で保持している間に角度位置がずれることもある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、旋回工具等回転体の回転の角度を精度よく位置決めして保持することができる角度位置決め機構及びタレット刃物台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1は、ベースプレート上に設けられ、前記ベースプレートに対して前記ベースプレートの面に直交する軸の回りに回転する回転体の回転の角度位置を位置決めする角度位置決め機構であって、前記ベースプレートの、前記軸を中心とした所定の半径の周方向に沿って第1の角度の間隔で形成された、前記回転体に向かって凹んだ複数の凹部と、前記回転体の、前記軸を中心とした前記所定の半径の周方向に沿って第2の角度の間隔で配置された、前記ベースプレートに向かって突出する複数の凸部材と、を備え、前記凸部材が前記凹部に突入することにより、前記第1の角度と前記第2の角度との差の分解能の角度で、前記ベースプレートに対する前記回転体の回転の角度位置を位置決めする角度位置決め機構である。
【0011】
本発明の第2は、タレット面に固定されるベースプレートと前記ベースプレートに対して、前記タレット面に直交する軸回りに回転可能のツールホルダとを有する旋回工具と、前記ツールホルダを前記回転体として、前記ツールホルダを前記軸回りの所定の角度位置に位置決めする、本発明に係る角度位置決め機構と、を備えたタレット刃物台である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る角度位置決め機構及びタレット刃物台によれば、旋回工具等回転体の回転の角度を精度よく位置決めして保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】タレット刃物台を示す概略斜視図である。
図2】タレット刃物台のタレットに設けられた角度位置決め機構を示す概略斜視図である。
図3】旋回工具の軸C2方向に沿って見た平面視の図である。
図4】旋回工具に設けられた角度表示部を示す斜視図である。
図5A】角度位置決め機構を示す、ハウジング及びベースプレートの厚さ方向の断面を示す断面図であり、ボールが皿穴に一致していない位置にある状態を示す。
図5B】角度位置決め機構を示す、ハウジング及びベースプレートの厚さ方向の断面を示す断面図であり、ボールが皿穴に一致した位置にある状態を示す。
図6A】プランジャーの配置を示す模式図である。
図6B】皿穴の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る角度位置決め機構及びタレット刃物台の実施形態は、以下の通り、図面を用いて説明される。
【0015】
<構成>
図1はタレット刃物台100を示す概略斜視図、図2はタレット刃物台100のタレット10に設けられた角度位置決め機構60を示す概略斜視図、図3は旋回工具20の軸C2方向に沿って見た平面視の図である。
【0016】
(タレット刃物台)
タレット刃物台100は、本発明に係るタレット刃物台の一実施形態である。タレット刃物台100は、図1に示すように、多角柱状に形成されたタレット10を有する。図示のタレット10は、例えば正十角柱に形成されている。したがって、タレット10は、十角柱の周面が10個の平面(タレット面11)を有している。タレット10は正十角柱に限定されるものではなく、例えば正八角柱や正六角柱など他の正多角柱であってもよく、また、多角柱のタレット面11の幅が一定ではない多角柱であってもよい。
【0017】
各タレット面11には、バイト等の動かない固定工具や、ドリル刃等の軸回りに回転する回転工具が取り付けられている。固定工具は、図示を省略した主軸等に把持されて軸回りに回転する丸棒等のワークに押し付けられることでワークを旋削加工し、回転工具は回転しながら、図示を省略した主軸等に把持された丸棒等のワークに押し付けられることでワークを旋削加工する。
【0018】
タレット10は、タレット面11に対して相対的な位置関係が変化しない固定工具や回転工具の他に、図1,2に示すように、旋回工具20と、角度表示部65と、角度位置決め機構60と、を備えている。
【0019】
旋回工具20は、タレット面11に直交する軸C2回りに回転可能で、その回転の角度位置を調整することができる。旋回工具20は、軸C2に直交する面内の軸C3回りに回転する回転工具27を有している。旋回工具20は、軸C2回りに回転する角度位置を調整することにより、ワークの軸に対する回転工具27の傾斜角度(姿勢)を変化させることができる。
【0020】
旋回工具20は、ツール取付ベースプレート21(以下、ベースプレート21という。)と、ツールホルダ24と、を有している。
【0021】
ベースプレート21は、略平板状に形成されている。ベースプレート21は、下面21bがタレット面11に接した状態で、例えば複数の六角穴付きボルト31によって、タレット面11に固定されている。六角穴付きボルト31による固定によって、ベースプレート21は、タレット面11に対して動かない。ベースプレート21には、平板の厚さ方向に貫通した孔(図示を省略)が形成されている。また、ベースプレート21の上面21aには、一部が上方に突出した凸面21cが形成されている。凸面21cの外周縁21dは、後述するツールホルダ24が回転する軸C2を中心とする円弧に形成されている。ベースプレート21の上面21a及び凸面21cはタレット面11と平行である。
【0022】
ツールホルダ24は、ベースプレート21上に配置され、軸C2回りに回転可能に支持されている。ツールホルダ24は、ハウジング25と、回転工具27と、回転伝達機構26と、を備えている。ハウジング25の下面25bには、一部が上方に凹んだ凹面25cが形成されている。凹面25cの外周縁25dは、軸C2を中心とする円弧に形成されている。
【0023】
ハウジング25の下面25bがベースプレート21の上面21aに対向した状態で、ベースプレート21の凸面21cがハウジング25の凹面25cと接した状態となる。そして、ベースプレート21に対してツールホルダ24を軸C2回りに回転させたとき、ハウジング25の凹面25cの外周縁25dが、ベースプレート21の凸面21cの外周縁21dとわずかな隙間を介して沿った状態で、ツールホルダ24は軸C2回りに回転する。
【0024】
回転工具27はハウジング25から外部に突出して配置されている。回転工具27は、軸C3回りに回転する例えばドリル刃である。回転伝達機構26は、ハウジング25の内部に配置されている。回転伝達機構26は、タレット10内に設けられた回転駆動機構によって出力された回転駆動力を、回転工具27に伝達する。回転伝達機構26は、ベースプレート21に形成された前述の孔(図示省略)を通過して、タレット10内の回転駆動機構と噛み合う回転軸を含む。回転工具27は、回転駆動機構から出力された回転駆動力を回転伝達機構26から伝達されて、軸C3回りに回転する。
【0025】
ツールホルダ24は、ベースプレート21に対して軸C2回りに回転可能であるが、ツールホルダ24が軸C2回りに回転した状態においても、回転伝達機構26と回転駆動機構との噛み合いは維持される。
【0026】
ハウジング25には、図3に示すように、軸C2を中心とする所定の半径位置に、周方向に沿って延び厚さ方向に貫通した円弧状の長孔28が形成されている。一方、ベースプレート21の凸面21cの、軸C2を中心とした長孔28と同じ半径位置の周方向に沿った5つの位置に、ねじ孔22が形成されている。
【0027】
これら5つのねじ孔22のうち少なくとも1つに、ハウジング25の長孔28を通じて六角穴付きボルト29が締結される。図3に示した例では、2つのねじ孔22に、六角穴付きボルト29が締結されている。なお、図3においては、1つのねじ孔22だけ表示しており、図示を省略した他の4つのねじ孔22のうち2つのねじ孔22は、2つの六角穴付きボルト29にそれぞれ重なる位置に形成されている。
【0028】
六角穴付きボルト29の締結を緩めた状態(締結解除状態)においては、ツールホルダ24の長孔28の周方向の各端面に六角穴付きボルト29の外周面が突き当たる角度範囲の任意の角度位置θで、ツールホルダ24を軸C2回りに回転させることができる。したがって、3つのねじ孔22のうち六角穴付きボルト29を締結するねじ孔22の選択を変えることで、軸C2回りのツールホルダ24の回転する角度範囲を変化させることができる。
【0029】
ツールホルダ24の長孔28の周方向の各端面に六角穴付きボルト29の外周面が突き当たる角度範囲のうち任意の角度位置θで六角穴付きボルト29を締結した状態(締結状態)においては、六角穴付きボルト29の頭部とベースプレート21の凸面21cとの間にハウジング25が挟まれて、ツールホルダ24を軸C2回りに回転させることができず、旋回工具20を、その角度位置に固定することができる。
【0030】
(角度表示部)
次に、タレット刃物台100の旋回工具20に設けられた角度表示部65について説明する。図4は旋回工具20に設けられた角度表示部65を示す斜視図である。旋回工具20には、図4に示すように、角度表示部65が形成されている。角度表示部65は、角度目盛り64と指示線63とを備えている。角度目盛り64は、ハウジング25の側面25eに表示されている。ハウジング25の側面25eのうち角度目盛り64が表示された部分は、平面視での輪郭が軸C2を中心とする円弧となる周面で形成されている。
【0031】
角度目盛り64は、ハウジング25の軸C2回りの回転角度を示すものであり、角度0[度]から角度90[度]まで1[度]間隔の目盛り線がハウジング25の周方向に沿って並んで表示されている。一方、ベースプレート21の側面21eには、1本の縦線である指示線63が表示されている。
【0032】
そして、ツールホルダ24の長孔28の周方向の各端面に六角穴付きボルト29の外周面が突き当たる角度範囲でツールホルダ24を軸C2回りに回転させたとき、角度表示部65はがツールホルダ24の基準線(図3参照)に対して回転した角度位置θに対応した角度を表示する。ここで、基準線は、回転工具27の軸C3がタレット10の回転中心である軸C1に平行となった向きである。
【0033】
角度表示部65は、回転工具27の軸C3が基準線に一致した向きにおいて、指示線63が角度目盛り64の角度0[度]の目盛り線を指し示し、回転工具27の軸C3が軸C1(基準線)及び旋回工具20の回転中心である軸C2にそれぞれ直交する向きにおいて、指示線63が角度目盛り64の角度90[度]の目盛り線を指し示すように、設定されている。
【0034】
(角度位置決め機構)
タレット刃物台100の旋回工具20に設けられた角度位置決め機構60について説明する。図5A及び図5Bは角度位置決め機構60を示す、ハウジング25及びベースプレート21の厚さ方向の断面を示す断面図であり、図5Aはボール62cが皿穴61に一致していない位置にある状態、図5Bはボール62cが皿穴61に一致した位置にある状態をそれぞれ示す。
【0035】
角度位置決め機構60は、図3に示すように、ツールホルダ24の長孔28の周方向の各端面に六角穴付きボルト29の外周面が突き当たる角度範囲のうち任意の角度位置θに、旋回工具20のツールホルダ24を軸C2回りに回転させたときに、ツールホルダ24を所望とする角度位置θに正確に位置決めするものである。
【0036】
具体的には、角度位置決め機構60は、ツールホルダ24を軸C2回りに回転させたとき、図4に示した指示線63が、角度目盛り64の1[度]ごとの目盛り線のそれぞれに一致するように、ツールホルダ24の回転を停止させる。つまり、指示線63が角度目盛り64の隣り合う2つの目盛り線の間を指し示す位置で、ツールホルダ24の回転を停止させないように、ツールホルダ24の回転の角度位置θを1[度]ごとに位置決めする。
【0037】
角度位置決め機構60は、図3に示すように、例えば複数個のプランジャー62(凸部材の一例)とプランジャー62よりも多い多数の皿穴61(凹部の一例)とを有する。プランジャー62は、ツールホルダ24(回転体の一例)のハウジング25に固定されている。皿穴61は、ベースプレート21の凸面21cに、凹んだ孔として形成されている。
【0038】
プランジャー62は、図5A,5Bに示すように、ケース62aとコイルスプリング62bとボール62cとで構成されている。ケース62aは、コイルスプリング62bとボール62cとを収容している。コイルスプリング62bは、押し縮められた状態で端部がケース62aとボール62cに接している。
【0039】
コイルスプリング62bは、押し縮められたことによる復元力(弾性力)により、ボール62cの一部をケース62aの下端から高さ方向Hの下方に突出させる押圧力をボール62cに作用させている。なお、ボール62cは、コイルスプリング62bから押圧力(付勢力)が作用した状態においても、自転可能である。
【0040】
コイルスプリング62bの押圧力によってケース62aから一部が突出したボール62cに対して、下方から上向きの荷重が作用すると、ボール62cは、コイルスプリング62bの押圧力(付勢力)に抗して高さ方向Hの上方に変位する。
【0041】
プランジャー62は、具体的には、ボール62cが、ハウジング25の凹面25cから下方に突出するように、ケース62aがツールホルダ24のハウジング25に固定されて、配置されている。
【0042】
図5Aに示すように、プランジャー62のボール62cが皿穴61に一致していない位置にあるときは、ボール62cは、ベースプレート21の凸面21cにより上方に押圧され、コイルスプリング62bの押圧力(付勢力)に抗して上方に変位した状態となる。なお、ハウジング25がベースプレート21の凸面21cの面内方向に移動するときは、ボール62cは、上方に変位した状態のままで、凸面21cとの接触に従って自転する。
【0043】
一方、図5Bに示すように、プランジャー62のボール62cが皿穴61に一致した位置にあるときは、コイルスプリング62bの弾性力によりボール62cは皿穴61に突入する。そして、ボール62cが皿穴61に突入した状態から脱するためには、コイルスプリング62bの押圧力に抗してボール62cを上方に変位させる荷重が必要となる。
【0044】
したがって、ツールホルダ24は、コイルスプリング62bの押圧力に抗してボール62cを上方に変位させる荷重以上の荷重が作用しない範囲では、ボール62cが皿穴61に一致した位置に保持される。つまり、ツールホルダ24は、ベースプレート21の凸面21cの面内方向への動きが規制されて、ボール62cが皿穴61に一致した位置に位置決めされる。
【0045】
ボール62cが皿穴61に位置決めされた状態(図5B参照)では、コイルスプリング62bの押圧力に抗してボール62cを上方に変位させる荷重以上の荷重がかかると、ボール62cが上方に変位して皿穴61から脱し、ツールホルダ24をベースプレート21の凸面21cの面内方向に移動させることができる。
【0046】
図6Aはプランジャー62の配置を示す模式図、図6Bは皿穴61の配置を示す模式図である。本実施形態の角度位置決め機構60におけるプランジャー62は、例えば図6Aに示すように、軸C2を中心とした半径R1に沿った円周上に3個並んで配置されるとともに、軸C2を中心とした半径R2(>R1)に沿った円周上に3個並んで配置されている。つまり、本実施形態の角度位置決め機構60は、6個のプランジャー62を備えていて、3個ずつに分けたプランジャー62が互いに異なる2列の円周上に並んでいる。
【0047】
そして、6個のプランジャー62は、軸C2を中心とした回転の角度位置が大きくなるにしたがって、半径R1に沿った円周上と半径R2に沿った円周上とに、交互に配置されている。なお、以下の説明において、個々のプランジャー62を区別するときは、プランジャー62A,62B,62C,62D,62E,62Fと称することがある。
【0048】
半径R1に沿った円周上に並んだ3個のプランジャー62(プランジャー62A,62C,62E)は等角度2θの間隔で配置され、半径R2に沿った円周上に並んだ3個のプランジャー62(プランジャー62B,62D,62F)も等角度2θ間隔で配置されている。そして、半径R1に沿った円周上に並んだプランジャー62と、半径R2に沿った円周上に並んだプランジャー62とは、角度θ(第2の角度の一例)だけ角度位置がずれて配置されている。
【0049】
したがって、6個のプランジャー62A,62B,62C,62D,62E,62Fは、等角度θ間隔で配置されている。本実施形態においては、角度θは、例えば5[度]に設定されている。
【0050】
本実施形態の角度位置決め機構60における皿穴61は、例えば図6Bに示すように、軸C2を中心とした半径R1に沿った円周上に19個並んで配置されるとともに、軸C2を中心とした半径R2に沿った円周上に19個並んで配置されている。つまり、本実施形態の角度位置決め機構60は、38個の皿穴61を備えていて、19個ずつの皿穴61が互いに異なる2列の円周上に並んでいる。
【0051】
半径R1に沿った円周上に並んだ皿穴61は等角度θ(第1の角度の一例)の間隔で配置され、半径R2に沿った円周上に並んだ皿穴61も等角度θ間隔で配置されている。そして、半径R1に沿った円周上に並んだ皿穴61のうち一方の端に配置された1個を除いた18個の皿穴61と、半径R2に沿った円周上に並んだ皿穴61のうち他方の端に配置された1個を除いた18個の皿穴61とは、それぞれ同じ角度位置に配置されている。
【0052】
なお、半径R1に沿った円周上(内側の円周上)に並んだ皿穴61のうち一方の端に配置された1個の皿穴61は、半径R2に沿った円周上(外側の円周上)に並んだ皿穴61のうち一方の端に配置された皿穴61に対して、角度θの間隔をあけた位置に配置され、半径R2に沿った円周上に並んだ皿穴61のうち他方の端に配置された1個の皿穴61は、半径R1に沿った円周上に並んだ皿穴61のうち他方の端に配置された皿穴61に対して、角度θの間隔をあけた位置に配置される。
【0053】
したがって、内側の円周上の一方の端に配置された皿穴61から外側の円周上の他方の端に配置された皿穴61までの角度範囲αは、角度19θとなる。本実施形態においては、角度θは、例えば6[度]に設定されている。
【0054】
なお、角度範囲αに配置された内側の円周上の一方の端に配置された皿穴61から外側の円周上の他方の端に配置された皿穴61までは、ツールホルダ24の長孔28の周方向の各端面に六角穴付きボルト29の外周面が突き当たる角度範囲でツールホルダ24を軸C2回りに回転させたときにプランジャー62が通過する範囲に形成されている。
【0055】
また、本実施形態の角度位置決め機構60は、6個のプランジャー62のうちいずれかのプランジャー62のボール62cが皿穴61に一致した位置にあるときは、すなわち、いずれか1個のプランジャー62のボール62cがいずれか1つの皿穴61に突入してツールホルダ24が位置決めされた状態のとき、指示線63は角度目盛り64の1[度]間隔で表示されたいずれかの目盛り線を指し示すように設定されている。
【0056】
(作用)
以上のように構成された本実施形態の角度位置決め機構60及びタレット刃物台100について、図3に示すように、ツールホルダ24をベースプレート21に対して、基準線から角度θだけ回転させた状態を回転させた状態を説明する。
【0057】
角度位置決め機構60は、いずれか1個のプランジャー62のボール62cがいずれか1つの皿穴61に突入してツールホルダ24が位置決めされた状態のとき、指示線63は角度目盛り64の1[度]間隔で表示されたいずれかの目盛り線を指し示すように設定されている。
【0058】
そして、角度位置決め機構60は、6個のプランジャー62は間隔が角度θ=6[度]、皿穴61の間隔が角度θ=5[度]であるため、ツールホルダ24が角度1[度]回転する毎に、いずれかの1個のプランジャー62のボール62cがベースプレート21のいずれか1個の皿穴61に一致する。
【0059】
例えば、図3に示した角度θが例えば56[度]のとき、角度表示部65の指示線63は角度目盛り64の1[度]間隔で表示された目盛り線のうち56[度]を表す目盛り線を指し示し、このとき1つのプランジャー62、例えば図6Aに示したプランジャー62Aが皿穴61の位置に一致しているとする。この状態では、プランジャー62Aのボール62cが皿穴61に突入して、ツールホルダ24は、角度θ=56[度]の角度位置に位置決めされている。このとき、他のプランジャー62B,62C,62D,62E,62Fはいずれも皿穴61に一致していない。
【0060】
ツールホルダ24が角度θ=56[度]の角度位置に位置決めされた状態から、ツールホルダ24を回転させるためには、コイルスプリング62bの押圧力に抗してボール62cを凸面21cに乗り上げさせる荷重以上の荷重を生じるような強いトルクをツールホルダ24に作用させる必要がある。
【0061】
したがって、使用者が手動でツールホルダ24を回転させる場合、手に伝わる抵抗感(節度感)によって、ツールホルダ24が、指示線63が角度目盛り64のいずれかの目盛り線に一致する位置に、位置決めされていることを認識することができる。そして、角度表示部65の表示を目視することにより、ツールホルダ24が角度θ=56[度]の角度位置に位置決めされていることを認識することができる。
【0062】
ツールホルダ24が角度θ=56[度]の角度位置に位置決めされた状態から、ツールホルダ24に強いトルクを掛けてツールホルダ24を回転させると、プランジャー62Aが皿穴61の位置から脱して、凸面21c上に乗り上げる。このとき、角度表示部65の指示線63は、角度目盛り64の56[度]を表す目盛り線と57[度]を表す目盛り線の間を指し示す。また、6個のプランジャー62のいずれも、ボール62cは皿穴61の位置に一致しないため、軽いトルクでツールホルダ24は回転を続ける。
【0063】
そして、ツールホルダ24の回転の角度θが57[度]に到達すると、角度表示部65の指示線63は角度目盛り64の57[度]を表す目盛り線を指し示し、このときプランジャー62Bが皿穴61の位置に一致して、プランジャー62Bのボール62cが皿穴61に突入し、ツールホルダ24は角度θ=57[度]の角度位置に位置決めされる。このとき、他のプランジャー62A,62C,62D,62E,62Fはいずれも皿穴61に一致していない。
【0064】
ツールホルダ24が角度θ=57[度]の角度位置に位置決めされた状態から、ツールホルダ24に強いトルクを掛けてツールホルダ24を回転させると、角度56[度]の角度位置に位置決めされた状態から回転させた場合と同様に、プランジャー62Bが皿穴61の位置から脱して、凸面21c上に乗り上げる。このとき、角度表示部65の指示線63は、角度目盛り64の57[度]を表す目盛り線と58[度]を表す目盛り線の間を指し示す。また、6個のプランジャー62のいずれも、ボール62cは皿穴61の位置に一致しないため、軽いトルクでツールホルダ24は回転を続ける。
【0065】
そして、ツールホルダ24の回転の角度θが58[度]に到達すると、角度表示部65の指示線63は角度目盛り64の58[度]を表す目盛り線を指し示し、このときプランジャー62Cが皿穴61の位置に一致して、プランジャー62Cのボール62cが皿穴61に突入し、ツールホルダ24は角度θ=58[度]の角度位置に位置決めされる。
【0066】
ツールホルダ24が角度θ=58[度]の角度位置に位置決めされた状態から、ツールホルダ24に強いトルクを掛けてツールホルダ24を回転させると、プランジャー62Cが皿穴61の位置から脱し、6個のプランジャー62のいずれも、ボール62cは皿穴61の位置に一致しないため、軽いトルクでツールホルダ24は回転を続ける。このとき、角度表示部65の指示線63は、角度目盛り64の58[度]を表す目盛り線と59[度]を表す目盛り線の間を指し示す。
【0067】
以下、同様にして、ツールホルダ24の回転の角度θが59[度]に到達すると、角度表示部65の指示線63は角度目盛り64の59[度]を表す目盛り線を指し示し、このときプランジャー62Dが皿穴61の位置に一致して、プランジャー62Dのボール62cが皿穴61に突入し、ツールホルダ24は角度θ=59[度]の角度位置に位置決めされる。
【0068】
ツールホルダ24が角度θ=59[度]の角度位置に位置決めされた状態から、ツールホルダ24に強いトルクを掛けてツールホルダ24を回転させると、軽いトルクでツールホルダ24は回転を続ける。このとき、指示線63は、59[度]を表す目盛り線と60[度]を表す目盛り線の間を指し示す。
【0069】
ツールホルダ24の回転の角度θが60[度]に到達すると、角度表示部65の指示線63は角度目盛り64の60[度]を表す目盛り線を指し示し、このときプランジャー62Eが皿穴61の位置に一致して、プランジャー62Eのボール62cが皿穴61に突入し、ツールホルダ24は角度θ=60[度]の角度位置に位置決めされる。
【0070】
ツールホルダ24が角度θ=60[度]の角度位置に位置決めされた状態から、ツールホルダ24に強いトルクを掛けてツールホルダ24を回転させると、軽いトルクでツールホルダ24は回転を続ける。このとき、指示線63は、60[度]を表す目盛り線と61[度]を表す目盛り線の間を指し示す。
【0071】
ツールホルダ24の回転の角度θが61[度]に到達すると、角度表示部65の指示線63は角度目盛り64の61[度]を表す目盛り線を指し示し、このときプランジャー62Fが皿穴61の位置に一致して、プランジャー62Fのボール62cが皿穴61に突入し、ツールホルダ24は角度θ=61[度]の角度位置に位置決めされる。
【0072】
ツールホルダ24が角度θ=61[度]の角度位置に位置決めされた状態から、ツールホルダ24に強いトルクを掛けてツールホルダ24を回転させると、軽いトルクでツールホルダ24は回転を続ける。このとき、指示線63は、61[度]を表す目盛り線と62[度]を表す目盛り線の間を指し示す。
【0073】
ツールホルダ24の回転の角度θが62[度]に到達すると、角度表示部65の指示線63は角度目盛り64の62[度]を表す目盛り線を指し示し、このときプランジャー62Aが皿穴61の位置に一致して、プランジャー62Aのボール62cが皿穴61に突入し、ツールホルダ24は角度θ=62[度]の角度位置に位置決めされる。
【0074】
角度位置決め機構60は、θ=63[度]以上の角度1[度]ごとの各角度位置及びθ=55[度]以下の角度1[度]ごとの各角度位置においても、上述したθ=56~62[度]の角度1[度]ごとの各角度位置での位置決めと同様の動作によって、ツールホルダ24を位置決めする。
【0075】
このように、本実施形態の角度位置決め機構60及び角度位置決め機構60を備えたタレット刃物台100は、旋回工具20を回転させたとき、旋回工具20を、指示線63が角度目盛り64のいずれかの目盛り線に精度よく一致した状態に保持して位置決めすることができる。
【0076】
これにより、角度位置決め機構60及びタレット刃物台100は、旋回工具20が位置決めされた状態で使用者がツールホルダ24に手を添えていても、または仮にツールホルダ24から手を離しても、ツールホルダ24が自重等により不測の動きをして、停止した角度位置から動くのを防止又は抑制することができる。
【0077】
この結果、角度位置決め機構60及びタレット刃物台100は、六角穴付きボルト29をねじ孔22に締結してツールホルダ24を固定する操作の間にツールホルダ24の向きが変化する等を防止することができる。
【0078】
本実施形態の角度位置決め機構60及び角度位置決め機構60を備えたタレット刃物台100は、皿穴61の間隔の角度θとプランジャー62の間隔の角度θとの差の角度Δθ(=θ-θ)で規定される分解能の角度位置に、ツールホルダ24を精度よく位置決めすることができる。
【0079】
ここで、例えば、1個のプランジャー62と角度1[度]ごとに形成された皿穴61とによっても、角度1[度]の分解能で位置決めすることはできる。しかし、皿穴61を、分解能に対応した間隔の角度、例えば角度1[度]ごとの間隔で1列に並べて形成すると、皿穴61は物理的な大きさを有するため、隣り合う皿穴61同士が繋がっていったいとなるため、個々に独立した皿穴61を形成することができず、角度1[度]ごとに明確な節度感を発生させることができない。
【0080】
これに対して、本実施形態の角度位置決め機構60及び角度位置決め機構60を備えたタレット刃物台100は、プランジャー62も皿穴61も、所望とする分解能の角度に比べて大きな角度の間隔で配置することができるため、プランジャー62及び皿穴61の配置の容易化又は構成全体の小型化を図ることができる。
【0081】
本実施形態の角度位置決め機構60及び角度位置決め機構60を備えたタレット刃物台100は、6個のプランジャー62を内周側の円周上と外周側の円周上との2列に、角度θだけ間隔をずらせて配置しているため、6個のプランジャー62を角度θの間隔で1列に並べる構成に比べて、プランジャー62を配置するためのスペース大きく確保することができる。
【0082】
このため、本実施形態の角度位置決め機構60は、6個のプランジャー62を角度θの間隔で1列に並べる構成のように、大きさの小さいプランジャーを選択して使用する必要が無い。
【0083】
なお、本実施形態の角度位置決め機構60及び角度位置決め機構60を備えたタレット刃物台100は、6個のプランジャー62を内周側の円周上と外周側の円周上との2列に、角度θだけ間隔をずらせて配置しているため、6個のプランジャー62を角度θの間隔で1列に並べる構成に比べて、同じ大きさのプランジャーを用いる場合に、角度位置の位置決めの分解能を高くする効果ということもできる。
【0084】
本発明に係る角度位置決め機構及びタレット刃物台は、複数個のプランジャーを2列に分けて配列したものに限定されず、1つの半径の円周上に1列に並べたものであってもよい。この場合、本発明に係る角度位置決め機構及びタレット刃物台は、皿穴も2列に並べて形成する必要は無く、プランジャーが移動する円周上のみに形成すればよい。
【0085】
また、本発明に係る角度位置決め機構及びタレット刃物台は、複数個のプランジャーを3列以上に分けて配列したものとしてもよい。
【0086】
本実施形態の角度位置決め機構60及び角度位置決め機構60を備えたタレット刃物台100は、6個のプランジャー62を用いたものであるが、これは、プランジャー62の間隔が角度θ=5[度]であり、皿穴61の間隔の角度θ=6[度]と位置決めの分解能の角度1[度]とに基づいて、プランジャー62の全体の角度範囲を、角度θと角度θの最小公倍数である30[度]にするために設定されたものである。
【0087】
したがって、プランジャー62の間隔が角度θ=6[度]であり、皿穴61の間隔の角度θ=7[度]、位置決めの分解能の角度1[度]である場合は、プランジャー62の全体の角度範囲を、角度θと角度θの最小公倍数である42[度]にするために、プランジャー62の数を7個にすればよい。
【0088】
なお、角度位置決め機構60及び角度位置決め機構60を備えたタレット刃物台100は、プランジャー62の間隔の角度θと皿穴61の間隔の角度θとの大小関係を、上述した実施形態における大小関係と反対にしてもよい。この場合、プランジャー62の数は、6個のままでよい。
【0089】
このように、本実施形態の角度位置決め機構60及び角度位置決め機構60を備えたタレット刃物台100におけるプランジャー62の数は、プランジャー62の間隔の角度θ、皿穴61の間隔の角度θ、位置決めの角度の分解能に応じて、種々変更することができる。したがって、本発明に係る角度位置決め機構及びタレット刃物台におけるプランジャーの数は、本実施形態の6個に限定されるものではない。
【0090】
本実施形態の角度位置決め機構60及び角度位置決め機構60を備えたタレット刃物台100におけるプランジャー62の数は、位置決めの分解能を、角度1[度]に設定したため、プランジャー62の間隔の角度θと皿穴61の間隔の角度θとの差を1[度]に設定したが、位置決めの分解能を、角度0.5[度]に設定する場合は、プランジャー62の間隔の角度θと皿穴61の間隔の角度θとの差を0.5[度]に設定すればよい。この場合、例えば、内周側に並ぶ皿穴61と外周側に並ぶ皿穴61とを角度2.5[度]だけずらせて配置するとともに、内周側に並ぶプランジャー62と外周側に並ぶプランジャー62とを角度2[度]だけずらせて配置し、プランジャー62の数を増やせばよい。
【0091】
本実施形態の角度位置決め機構60及び角度位置決め機構60を備えたタレット刃物台100におけるプランジャー62は、コイルスプリング62bによってボール62cに押圧力を付与する構成であるが、プランジャー62としてはコイルスプリング62bに代えて、エア圧等によってボール62cに押圧力を付与するものでもよい。
【0092】
また、本実施形態の角度位置決め機構60及び角度位置決め機構60を備えたタレット刃物台100におけるプランジャー62は、ボール62cに代えてピンを適用してもよい。
【0093】
本発明に係る角度位置決め機構及び角度位置決め機構を有するタレット刃物台は、凸部材としてプランジャー62以外の凸部材を適用してもよい。そのような凸部材としては、ベースプレート21に形成された皿穴61等の凹部に向かって突出して凹部に突入した位置と凹部から上方に押し上げられてベースプレート21の凸面21cに乗り上げた位置との間で、例えば弾性力によって変位することができるものであればよい。また、本発明に係る角度位置決め機構及び角度位置決め機構を有するタレット刃物台は、凹部として皿穴61以外の他の凹んだ凹部を適用してもよい。
【0094】
本実施形態の角度位置決め機構60及び角度位置決め機構60を備えたタレット刃物台100は、凸部の一例としてプランジャー62を適用し、凹部の一例として皿穴61を適用したが、本発明に係る角度位置決め機構及びタレット刃物台は、凸部としてプランジャー62以外の他の凸状の部分を有する構成を適用してもよく、また、凹部として皿穴61以外の他の凹状の部分を有する構成を適用してもよい。
【0095】
本実施形態の角度位置決め機構60は、タレット刃物台100に設けられた旋回工具20の回転の角度の位置決めを行う機構として適用したものであるが、本発明に係る角度位置決め機構は、タレット刃物台に設けられた旋回工具の回転の角度の位置決めを行う機構に限定されず、他の回転体の回転の角度の位置決めを行う機構として適用することもできる。
【0096】
本発明に係る角度位置決め機構及び角度位置決め機構を備えたタレット刃物台は、角度位置の検出のために、光検出センサ、磁気センサ、電気的なセンサ等電力を消費するセンサ等を用いるものではない。したがって、本発明に係る角度位置決め機構及びタレット刃物台は、光検出センサ、磁気センサ、電気的なセンサ等電力を消費するセンサ等を用いるものに比べて消費電力を抑制することができ、環境に配慮した技術である。
【符号の説明】
【0097】
10 タレット
20 旋回工具
21 ツール取付ベースプレート(ベースプレート)
24 ツールホルダ(回転体)
25 ハウジング
60 角度位置決め機構
61 皿穴(凹部)
62 プランジャー(凸部材)
65 角度表示部
100 タレット刃物台
C2 軸
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B