(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125532
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】歯ブラシ及び歯ブラシの製造方法
(51)【国際特許分類】
A46B 9/04 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
A46B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033391
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】592111894
【氏名又は名称】ヤマトエスロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167092
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹津 俊一
(72)【発明者】
【氏名】川浪 明日翔
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA03
3B202AA06
3B202AB23
3B202BA01
3B202EA01
3B202EF01
(57)【要約】
【課題】
歯の凹部、歯間、歯と歯茎との隙間などの口腔内の狭小部位を清掃し易く、しかも、一回の操作によってより広い面積の歯面を清掃することができる歯ブラシを提供するとともにこのような歯ブラシの製造方法を提供する。
【解決手段】
複数本の毛16が束ねられる毛束17を複数束備えるとともに、ヘッド部12の植毛面14に穿設される複数の植毛穴15に毛束が植設される本体を備え、複数本の毛の先端が、植毛面から離れる向きに突出する仮想の円錐体の母線により形成される外周面上にそれぞれ位置することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の毛が束ねられる毛束を複数束備えるとともに、ヘッド部の植毛面に穿設される複数の植毛穴に前記毛束が植設される本体を備え、
前記複数本の毛の先端が、前記植毛面から離れる向きに突出する仮想の円錐体の母線により形成される外周面上にそれぞれ位置する
ことを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
第1の前記植毛穴に植設される第1の前記毛束に束ねられる毛の本数と比べ、前記仮想の円錐体の中心軸に対する前記第1の植毛穴の中心線との距離よりも長い距離の位置に中心線を有する第2の前記植毛穴に植設される第2の前記毛束に束ねられる毛の本数は同じ又はそれよりも少ない
ことを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記第2の毛束に束ねられる毛の本数と比べ、前記中心軸に対する前記第2の植毛穴の中心線との距離よりも長い距離の位置に中心線を有する第3の前記植毛穴に植設される前記毛束である第3の毛束に束ねられる毛の本数は同じ又はそれよりも少ない
ことを特徴とする請求項2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
第1の前記植毛穴に植設される第1の前記毛束に束ねられる毛をJIS S3016に従って測定する場合の毛の硬さと比べて、前記仮想の円錐体の中心軸に対する前記第1の植毛穴の中心線との距離よりも長い距離の位置に中心線を有する第2の前記植毛穴に植設される第2の前記毛束に束ねられる毛を同じく測定する場合の毛の硬さは同じ又は小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記第2の毛束に束ねられる毛をJIS S3016に従って測定する場合の毛の硬さと比べて、前記中心軸に対する前記第2の植毛穴の中心線との距離よりも長い距離の位置に中心線を有する第3の前記植毛穴に植設される前記毛束である第3の毛束に束ねられる毛を同じく測定する場合の毛の硬さは同じ又はそれよりも小さい
ことを特徴とする請求項4に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
複数本の毛が束ねられる毛束を複数束備えるとともに、ヘッド部の植毛面に穿設される複数の植毛穴に前記毛束が植設される本体とを備え、
前記複数の植毛穴の略中央に位置する前記植毛穴である中央植毛穴に植設される前記毛束である中央毛束と、前記中央植毛穴の周囲に位置する前記植毛穴である周囲植毛穴に植設される前記毛束である周囲毛束とを有し、
前記周囲毛束に束ねられる前記毛の先端は、前記植毛面から離れる向きに突出する仮想の円錐体の母線により形成される外周面上にそれぞれ位置し、
前記中央毛束に束ねられる前記毛の毛丈は、前記中央植毛穴の中心線と最も近い位置に中心線を有する第1の前記周囲植毛穴に植設される第1の前記周囲毛束に束ねられる前記毛の平均毛丈よりも短い
ことを特徴とする歯ブラシ。
【請求項7】
前記第1の周囲毛束に束ねられる毛の本数と比べ、前記仮想の円錐体の中心軸に対する前記第1の周囲植毛穴の中心線との距離よりも長い距離の位置に中心線を有する第2の前記周囲植毛穴に植設される第2の前記周囲毛束に束ねられる毛の本数は同じ又はそれよりも少ない
ことを特徴とする請求項6に記載の歯ブラシ。
【請求項8】
前記第1の周囲毛束に束ねられる毛をJIS S3016に従って測定する場合の毛の硬さと比べて、前記仮想の円錐体の中心軸に対する前記第1の周囲植毛穴の中心線との距離よりも長い距離の位置に中心線を有する第2の前記周囲植毛穴に植設される第2の前記周囲毛束に束ねられる毛を同じく測定する場合の毛の硬さは同じ又はそれよりも小さい
ことを特徴とする請求項6に記載の歯ブラシ。
【請求項9】
前記中央毛束の束数は一束である
ことを特徴とする請求項6ないし8の何れかに記載の歯ブラシ。
【請求項10】
少なくとも一部の前記毛は、先端部分が、前記植毛面と平行である平行面に対して傾斜する端面である傾斜端面を有し、
前記傾斜端面は、前記仮想の円錐体の中心軸から遠い位置ほど前記植毛面に近づくように傾斜する
ことを特徴とする請求項1ないし8の何れかに記載の歯ブラシ。
【請求項11】
複数本の切り揃えられていない毛である用毛と、ヘッド部の植毛面に複数の植毛穴が穿設された本体とを準備するステップを含む準備工程と、前記用毛を束ねるとともに、これらの用毛が束ねられた用毛毛束を前記植毛穴に植設するステップを含む植設工程と、前記用毛毛束の植設後に少なくとも一部の前記用毛の先端部分を切り揃えるステップを含む円錐形毛切り工程とを有する歯ブラシの製造方法であって、
前記円錐形毛切り工程においては、前記少なくとも一部の用毛を、前記植毛面から離れる向きに突出する仮想の円錐体の母線により形成される外周面上にそれぞれ位置する長さまで切り揃える
ことを特徴とする歯ブラシの製造方法。
【請求項12】
前記準備工程においては、前記植毛面の外周部分に配置する前記植毛穴である外周植毛穴を穿設するとともに、前記外周部分に対する前記植毛面の内側に配置する前記植毛穴である内周植毛穴を穿設し、
前記植設工程は、一の前記内周植毛穴に植設される前記用毛毛束に束ねられる前記用毛の本数と比べ、一の前記外周植毛穴に植設される前記用毛毛束に束ねられる前記用毛の本数が同じ又はそれよりも少なくなるように構成する
ことを特徴とする請求項11に記載の歯ブラシの製造方法。
【請求項13】
前記準備工程においては、前記植毛面の外周部分に配置する前記植毛穴である外周植毛穴を穿設するとともに、前記外周部分に対する前記植毛面の内側に配置する前記植毛穴である内周植毛穴を穿設し、
前記植設工程は、一の前記内周植毛穴に植設される前記用毛毛束に束ねられる前記用毛をJIS S3016に従って測定する場合の毛の硬さと比べて、一の前記外周植毛穴に植設される前記用毛毛束に束ねられる前記用毛を同じく測定する場合の毛の硬さが同じ又はそれよりも小さくなるように構成する
ことを特徴とする請求項11に記載の歯ブラシの製造方法。
【請求項14】
前記円錐形毛切り工程において、前記少なくとも一部の各用毛を、その先端部分における端面に前記外周面と同じ向きの傾斜を持たせるように切り揃える
ことを特徴とする請求項11ないし13の何れかに記載の歯ブラシの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯ブラシ及び歯ブラシの製造方法に関し、詳細には使用者が歯を磨くための複数本の毛が束ねられた毛束が本体に植設された歯ブラシ及びこの歯ブラシを製造するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数本の毛が一束の毛束に束ねられ、この一束の毛束が一穴の植毛穴に植設されることにより植毛される歯ブラシがある(特許文献1)。こうした、一束の毛束を植設した歯ブラシを単一のタフトを有する歯ブラシと呼ぶこともある。また、特許文献1に開示された単一のタフトを有する歯ブラシは、複数本の毛の先端が、本体の植毛面から離れる向きに突出する仮想の円錐体の母線により形成される外周面に当接する。
【0003】
いわゆる単一のタフトを有する歯ブラシは、各毛の植毛方向から視るときに各毛の集合体が円形を成している。そのため、使用者が歯ブラシを操作する場合に、使用者の歯が一部の毛の先端に干渉することが少なく、より自在に歯ブラシを動かすことによって歯を効率的に磨くことができる。これと異なり、例えば各毛の集合体が植毛方向視において楕円形を成すときに、使用者の歯が楕円形の長軸方向の両端に植毛される毛の先端に干渉することがあり、そのような場合は比較的歯ブラシを自在に動かし難い。
【0004】
また、特許文献1に開示された歯ブラシは、毛の集合体の先端が全体で円錐体状を成すように形成されている。そのため、円錐体状の頂点及びその付近が歯の凹部、歯間、歯と歯茎との隙間などの狭小部位を清掃し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上で述べた従来の歯ブラシは、複数本の毛が一束の毛束に束ねられて植毛される。そのため、一本の歯ブラシにより多くの毛を植毛するためには、一束の毛束をより太くして、また、一穴の植毛穴の径をより大きくしなければならない。それに対して、植毛穴を大径にしてより太い毛束を植設するときには、そのぶん、植毛穴の内周面から一本一本の毛を内向きに押さえ付ける力が分散してしまい毛抜けが発生し易くなる。そのため、自ずと一束の毛束の太さが制限され、一本の歯ブラシに植毛することができる毛の本数が制限される。
【0007】
こうした従来の歯ブラシは、毛の本数が制限されることに伴い、一回の操作によって歯の歯面を刷掃することができる面積が制限される。そのため、上で述べた狭小部位だけでなく、歯面を含む歯の全体を清掃するためには多くの回数の操作を必要とする。また、そのように多くの回数の操作のために、歯ブラシは早く傷んでしまい、早々に交換しなければならない。
【0008】
そこで本発明は、このような問題に鑑み、歯の凹部、歯間、歯と歯茎との隙間などの口腔内の狭小部位を清掃し易く、しかも、一回の操作によってより広い面積の歯面を清掃することができる歯ブラシの提供と、このような歯ブラシの製造方法の提供とを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は複数本の毛が束ねられる毛束を複数束備えるとともに、ヘッド部の植毛面に穿設される複数の植毛穴に前記毛束が植設される本体を備え、前記複数本の毛の先端が、前記植毛面から離れる向きに突出する仮想の円錐体の母線により形成される外周面上にそれぞれ位置することを特徴とする歯ブラシを提供するものである。
【0010】
すなわち、本発明の歯ブラシは、毛の先端が仮想の円錐体の外周面上にそれぞれ位置することにより毛の集合体の一部又は全体が円錐体を成すように形成されている。そのため、この毛の集合体が、仮想の円錐体状の頂点に近い位置の毛から順に入り込んで口腔内の狭小部位を容易に清掃することができる。
【0011】
また、本発明の歯ブラシは、本体が複数の植毛穴を有し、これらのそれぞれに毛束が植設される。そのため、植毛穴の穴数を増やして毛束の束数を増やすことにより、先端が、仮想の円錐体の外周面上に位置する毛の本数を増やすことができる。これにより、一部又は全体が円錐体を成す毛の集合体の表出面積を拡げることができ、そのぶん、一回の操作によってより広い面積の歯の歯面を清掃することができる。
【0012】
なお、毛の集合体の一部又は全体が仮想の円錐体を成すことにより、毛束の数を増やすときでも、円錐体の中心軸から遠くに位置する毛ほど短く、使用者の歯が各毛の先端に干渉する度合は低い。
【0013】
(2)また、第1の前記植毛穴に植設される第1の前記毛束に束ねられる毛の本数と比べ、前記仮想の円錐体の中心軸に対する前記第1の植毛穴の中心線との距離よりも長い距離の位置に中心線を有する第2の前記植毛穴に植設される第2の前記毛束に束ねられる毛の本数は同じ又はそれよりも少なくてもよい。
【0014】
ところで、複数の植毛穴のうち、一の植毛穴に植設される毛束に束ねられる毛の毛丈に比べて、他の植毛穴に植設される毛束に束ねられる毛の毛丈のほうが短い場合、前記の他の植毛穴に植設される毛束は剛性が高いことが知られている。また、複数の植毛穴に、束ねられる毛の本数が異なる毛束がそれぞれ植設される場合、本数の少ない方の毛束と比べて、本数の多い方の毛束は剛性が高いことが知られている。但し、これらの毛束に束ねられる毛の線径は同一とする。
【0015】
これに対して、本発明の歯ブラシの場合、仮想の円錐体の中心軸からより遠い位置に植設される第2の毛束に束ねられる毛の本数は、同じく中心軸からより近い位置に植設される第1の毛束に束ねられる毛の本数と比べて同じ又はそれよりも少ない。このとき、仮想の円錐体の中心軸からより遠い位置に植設される第2の毛束に束ねられる毛の毛丈は、同じく中心軸からより近い位置に植設される第1の毛束に束ねられる毛の毛丈と比べて短い。そのため、仮に、第2の毛束に束ねられる毛の本数が第1の毛束に束ねられる毛の本数よりも多いとき、第2の毛束は、毛の毛丈が短いことに加えて毛の本数が多いことにより第1の毛束に比べて剛性が高く、しかも、これら毛束の剛性の差が大きい。
【0016】
そして、第2の毛束が第1の毛束よりも仮想の円錐体の中心軸から遠い位置に植設されるため、使用者の歯に第1の毛束が当たるように歯ブラシを使用するときでも、第2の毛束は、歯よりも歯茎、上顎、唇、頬の内側等のような歯以外の口腔内の部位に当たる頻度が高い。
【0017】
それにもかかわらず、本発明の歯ブラシは、第2の毛束に束ねられる毛の本数が第1の毛束に束ねられる毛の本数と比べて多くないため、これら毛束の剛性の差が抑えられている。これにより、歯以外のこうした口腔内の部位を傷めてしまう虞が小さい。
【0018】
特に、第1の毛束に束ねられる毛の本数よりも第2の毛束に束ねられる毛の本数のほうが少ないときは、第2の毛束に束ねられる毛の本数を必要なだけ減らすことによって、もともと束ねられる毛の毛丈が短いことによる第2の毛束の剛性を調整することができる。そのため、本発明の歯ブラシは、歯以外の口腔内の部位を傷める虞がより小さい。
【0019】
(3)また、前記第2の毛束に束ねられる毛の本数と比べ、前記中心軸に対する前記第2の植毛穴の中心線との距離よりも長い距離の位置に中心線を有する第3の前記植毛穴に植設される前記毛束である第3の毛束に束ねられる毛の本数は同じ又はそれよりも少なくてもよい。
【0020】
すなわち、歯ブラシが上述の第1の植毛穴及び第2の植毛穴だけでなく、第2の植毛穴よりもさらに仮想の円錐体の中心軸から遠い位置に穿設される第3の植毛穴を有するときでも、第3の毛束に束ねられる毛の本数が第1の毛束又は第2の毛束に束ねられる毛の本数と比べて多くないため、第1の毛束又は第2の毛束の剛性と、第3の植毛穴に植設される第3の毛束の剛性との差が抑えられている。これにより、本発明の歯ブラシは、歯以外のこうした口腔内の部位を傷めてしまう虞が小さい。
【0021】
特に、第2の毛束に束ねられる毛の本数よりも第3の毛束に束ねられる毛の本数のほうが少ないときは、第3の毛束に束ねられる毛の本数を必要なだけ減らすことによって、仮想の円錐体の中心軸からさらに遠くもともと毛の毛丈が短いことによる第3の毛束の剛性を調整することができる。そのため、本発明の歯ブラシは、歯以外の口腔内の部位を傷める虞がより小さい。
【0022】
(4)また、第1の前記植毛穴に植設される第1の前記毛束に束ねられる毛をJIS S3016に従って測定する場合の毛の硬さと比べて、前記仮想の円錐体の中心軸に対する前記第1の植毛穴の中心線との距離よりも長い距離の位置に中心線を有する第2の前記植毛穴に植設される第2の前記毛束に束ねられる毛を同じく測定する場合の毛の硬さは同じ又は小さくてもよい。
【0023】
上述のように、本発明の歯ブラシの場合、仮想の円錐体の中心軸からより遠い位置に植設される第2の毛束に束ねられる毛の毛丈は、同じく中心軸からより近い位置に植設される第1の毛束に束ねられる毛の毛丈と比べて短い。そして、複数の植毛穴に、束ねられる毛の毛丈が異なる毛束がそれぞれ植設される場合、束ねられる毛の毛丈が長い方の毛束と比べて、同じく毛の毛丈が短い方の毛束は剛性が高いことが知られている。
【0024】
ところで、JIS S3016に従って測定する場合の毛の硬さ(以下、単に「JISによる硬さ」ともよぶ。)とは、毛束に束ねられる毛の本数、線径及び材質によって変化する硬さを所定の方法によって測定する硬さという。そして、第2の毛束に束ねられる毛のJISによる硬さは、第1の毛束に束ねられる毛のJISによる硬さよりも大きくない。
【0025】
そのため、束ねられる毛の毛丈の差により第2の毛束の剛性が第1の毛束の剛性よりも大きいことはあっても、毛束に束ねられるJISによる硬さの理由によってこれらの毛束の剛性の差が広がることはない。よって、本発明の歯ブラシは、第2の毛束に束ねられる毛のJISによる硬さが第1の毛束に束ねられる毛のJISによる硬さと比べて大きくないため、これら毛束の剛性の差が抑えられている。これにより、歯茎、上顎、唇、頬の内側等のような歯以外のこうした口腔内の部位を傷めてしまう虞が小さい。
【0026】
特に、第1の毛束に束ねられる毛のJISによる硬さよりも第2の毛束に束ねられる毛のJISによる硬さのほうが小さいときは、第2の毛束に束ねられる毛のJISによる硬さを必要なだけ低減させることによって、もともと束ねられる毛の毛丈が短いことによる第2の毛束の剛性を調整することができる。そのため、本発明の歯ブラシは、歯以外の口腔内の部位を傷める虞がより小さい。
【0027】
(5)また、前記第2の毛束に束ねられる毛をJIS S3016に従って測定する場合の毛の硬さと比べて、前記中心軸に対する前記第2の植毛穴の中心線との距離よりも長い距離の位置に中心線を有する第3の前記植毛穴に植設される前記毛束である第3の毛束に束ねられる毛を同じく測定する場合の毛の硬さは同じ又はそれよりも小さくてもよい。
【0028】
すなわち、歯ブラシが上述の第1の植毛穴及び第2の植毛穴だけでなく、第2の植毛穴よりもさらに仮想の円錐体の中心軸から遠い位置に穿設される第3の植毛穴を有するときでも、第3の毛束に束ねられる毛のJISによる硬さが第1の毛束又は第2の毛束に束ねられる毛のJISによる硬さと比べて大きくないため、第1の毛束又は第2の毛束の剛性と、第3の植毛穴に植設される第3の毛束の剛性との差が抑えられている。これにより、本発明の歯ブラシは、歯以外のこうした口腔内の部位を傷めてしまう虞が小さい。
【0029】
特に、第2の毛束に束ねられる毛のJISによる硬さよりも第3の毛束に束ねられる毛のJISによる硬さのほうが小さいときは、第3の毛束に束ねられる毛のJISによる硬さを必要なだけ低減させることによって、仮想の円錐体の中心軸からさらに遠くもともと毛の毛丈が短いことによる第3の毛束の剛性を調整することができる。そのため、本発明の歯ブラシは、歯以外の口腔内の部位を傷める虞がより小さい。
【0030】
(6)本発明は複数本の毛が束ねられる毛束を複数束備えるとともに、ヘッド部の植毛面に穿設される複数の植毛穴に前記毛束が植設される本体とを備え、前記複数の植毛穴の略中央に位置する前記植毛穴である中央植毛穴に植設される前記毛束である中央毛束と、前記中央植毛穴の周囲に位置する前記植毛穴である周囲植毛穴に植設される前記毛束である周囲毛束とを有し、前記周囲毛束に束ねられる前記毛の先端は、前記植毛面から離れる向きに突出する仮想の円錐体の母線により形成される外周面上にそれぞれ位置し、前記中央毛束に束ねられる前記毛の毛丈は、前記中央植毛穴の中心線と最も近い位置に中心線を有する第1の前記周囲植毛穴に植設される第1の前記周囲毛束に束ねられる前記毛の平均毛丈よりも短いことを特徴とする歯ブラシを提供するものである。
【0031】
すなわち、本発明の歯ブラシは、周囲毛束に束ねられる毛の先端が仮想の円錐体の外周面上にそれぞれ位置することにより周囲毛束に束ねられる毛の集合体の一部又は全体が円錐体の一部を成すように形成されている。そのため、この周囲毛束に束ねられる毛の集合体が、仮想の円錐体の中心軸から近い位置に植毛されている毛から順に口腔内の狭小部位に入り込んで清掃することができる。
【0032】
また、本発明の歯ブラシは、本体が複数の植毛穴を有し、これらのそれぞれに毛束が植設される。そのため、植毛穴の穴数を増やして毛束の束数を増やすことにより、先端が、仮想の円錐体の外周面上に位置する毛の本数を増やすことができる。これにより、一部又は全体が円錐体の一部を成す毛の集合体の表出面積を拡げることができ、そのぶん、一回の操作によってより広い面積の歯の歯面を清掃することができる。
【0033】
さらに、本発明の歯ブラシは、中央毛束に束ねられる毛の毛丈が第1の周囲毛束に束ねられる毛の平均毛丈よりも短いため、中央毛束に束ねられる毛の集合体の先端部分が第1の周囲毛束に束ねられる毛の集合体に囲まれることによって、植毛面に近付く向きに凹むようなスペースを形成する。この第1の周囲毛束に束ねられる毛の集合体に囲まれるスペースを凹状スペースとよぶ。そして、本発明の歯ブラシは、凹状スペースに固体又は半固体の薬剤を保持することにより、歯ブラシの使用中に使用者の唾液によって溶け出したこの薬剤を口腔内の部位に供給することができる。
【0034】
しかも、本発明の歯ブラシは、周囲毛束に束ねられる毛の先端が仮想の円錐体の母線により形成される外周面上にそれぞれ位置することにより、外用薬である薬剤をより仮想の円錐台の中心軸に近い位置において保持することができる。その結果、使用者は、薬剤を届けようとする口腔内の部位に仮想の円錐台の中心軸近辺が当たるように歯ブラシを把持することにより、溶け出した薬剤を狙い通りの部位に届けることができる。そして、同時に、周囲毛束に束ねられる毛の先端を薬剤を届ける部位及びその近傍の部位に当接させることができる。こうして、本発明の歯ブラシによって、使用者は口腔内の清掃と同時に効率良く外用薬を服用することができる。
【0035】
なお、周囲毛束に束ねられる毛の集合体の一部又は全体が仮想の円錐体の一部を成すことにより、毛束の数を増やすときでも、円錐体の中心軸から遠くに位置する毛ほど短く、使用者の歯が各毛の先端に干渉する度合は低い。
【0036】
(7)また、前記第1の周囲毛束に束ねられる毛の本数と比べ、前記仮想の円錐体の中心軸に対する前記第1の周囲植毛穴の中心線との距離よりも長い距離の位置に中心線を有する第2の前記周囲植毛穴に植設される第2の前記周囲毛束に束ねられる毛の本数は同じ又はそれよりも少なくてもよい。
【0037】
すなわち、本発明の歯ブラシの場合、仮想の円錐体の中心軸からより遠い位置に植設される第2の周囲毛束に束ねられる毛の本数は、同じく中心軸からより近い位置に植設される第1の周囲毛束に束ねられる毛の本数と比べて同じ又はそれよりも少ない。このとき、仮想の円錐体の中心軸からより遠い位置に植設される第2の周囲毛束に束ねられる毛の毛丈は、同じく中心軸からより近い位置に植設される第1の周囲毛束に束ねられる毛の毛丈と比べて短い。そのため、仮に、第2の周囲毛束に束ねられる毛の本数が第1の周囲毛束に束ねられる毛の本数よりも多いとき、第2の周囲毛束は、毛の毛丈が短いことに加えて毛の本数が多いことにより第1の周囲毛束に比べて剛性が高く、しかも、これら毛束の剛性の差が大きい。
【0038】
そして、第2の周囲毛束が第1の周囲毛束よりも仮想の円錐体の中心軸から遠い位置に植設されるため、使用者の歯に第1の周囲毛束が当たるように歯ブラシを使用するときでも、第2の周囲毛束は、歯よりも歯茎、上顎、唇、頬の内側等のような歯以外の口腔内の部位に当たる頻度が高い。
【0039】
それにもかかわらず、本発明の歯ブラシは、第2の周囲毛束に束ねられる毛の本数が第1の周囲毛束に束ねられる毛の本数と比べて多くないため、これら毛束の剛性の差が抑えられている。これにより、歯以外のこうした口腔内の部位を傷めてしまう虞が小さい。
【0040】
特に、第1の周囲毛束に束ねられる毛の本数よりも第2の周囲毛束に束ねられる毛の本数のほうが少ないときは、第2の周囲毛束に束ねられる毛の本数を必要なだけ減らすことによって、もともと束ねられる毛の毛丈が短いことによる第2の周囲毛束の剛性を調整することができる。そのため、本発明の歯ブラシは、歯以外の口腔内の部位を傷める虞がより小さい。
【0041】
(8)また、前記第1の周囲毛束に束ねられる毛をJIS S3016に従って測定する場合の毛の硬さと比べて、前記仮想の円錐体の中心軸に対する前記第1の周囲植毛穴の中心線との距離よりも長い距離の位置に中心線を有する第2の前記周囲植毛穴に植設される第2の前記周囲毛束に束ねられる毛を同じく測定する場合の毛の硬さは同じ又はそれよりも小さくてもよい。
【0042】
すなわち、第2の周囲毛束に束ねられる毛のJISによる硬さは、第1の周囲毛束に束ねられる毛のJISによる硬さよりも大きくない。
【0043】
そのため、束ねられる毛の毛丈の差により第2の周囲毛束の剛性が第1の周囲毛束の剛性よりも大きいことはあっても、毛束に束ねられるJISによる硬さの理由によってこれらの毛束の剛性の差が広がることはない。よって、本発明の歯ブラシは、第2の周囲毛束に束ねられる毛のJISによる硬さが第1の周囲毛束に束ねられる毛のJISによる硬さと比べて大きくないため、これら毛束の剛性の差が抑えられている。これにより、歯茎、上顎、唇、頬の内側等のような歯以外のこうした口腔内の部位を傷めてしまう虞が小さい。
【0044】
特に、第1の周囲毛束に束ねられる毛のJISによる硬さよりも第2の周囲毛束に束ねられる毛のJISによる硬さのほうが小さいときは、第2の周囲毛束に束ねられる毛のJISによる硬さを必要なだけ低減させることによって、もともと束ねられる毛の毛丈が短いことによる第2の周囲毛束の剛性を調整することができる。そのため、本発明の歯ブラシは、歯以外の口腔内の部位を傷める虞がより小さい。
【0045】
(9)また、前記中央毛束の束数は一束であってもよい。
【0046】
すなわち、本発明の歯ブラシは、中央毛束の束数が一束のため、中央毛束の束数が二束以上である場合に比べて、中央毛束の周囲に位置する第1の周囲毛束に束ねられる毛の集合体によって囲まれる凹状スペースが狭い。そのため、例えば、中央毛束を挟んで位置する第1の周囲毛束と別の第1の周囲毛束との間隔が短い。それにより、これらの第1の周囲毛束の先端部分同士が寄り集まり易く、使用者は、薬剤の近い箇所においてより多くの毛を集中的に狙った部位に当接させることができる。こうして、本発明の歯ブラシによって、使用者はより効率良く口腔内の清掃と外用薬の服用とを行うことができる。
【0047】
(10)また、少なくとも一部の前記毛は、先端部分が、前記植毛面と平行である平行面に対して傾斜する端面である傾斜端面を有し、前記傾斜端面は、前記仮想の円錐体の中心軸から遠い位置ほど前記植毛面に近づくように傾斜してもよい。
【0048】
すなわち、本発明の歯ブラシの毛の先端部分が傾斜端面を有し、その傾斜端面は仮想の円錐体の母線により形成される外周面の向きと同じ向きに傾斜する。そのため、使用者が仮想の円錐体の外周面の一部が歯面に沿って当たるように歯を刷掃するとき、毛の傾斜端面は、外周面と同様に歯面に沿って当接する。これにより、毛の端面は、異なる向きに傾斜する場合又は植毛面と平行である場合と比べて、より広い面積において歯面と当接する。このことから、使用者が同じ回数だけ歯ブラシを動かして歯を磨くときに、本発明の歯ブラシはより効果的に歯面を刷掃することができる。
【0049】
(11)本発明は複数本の切り揃えられていない毛である用毛と、ヘッド部の植毛面に複数の植毛穴が穿設された本体とを準備するステップを含む準備工程と、前記用毛を束ねるとともに、これらの用毛が束ねられた用毛毛束を前記植毛穴に植設するステップを含む植設工程と、前記用毛毛束の植設後に少なくとも一部の前記用毛の先端部分を切り揃えるステップを含む円錐形毛切り工程とを有する歯ブラシの製造方法であって、前記円錐形毛切り工程においては、前記少なくとも一部の用毛を、前記植毛面から離れる向きに突出する仮想の円錐体の母線により形成される外周面上にそれぞれ位置する長さまで切り揃えることを特徴とする歯ブラシの製造方法を提供するものである。
【0050】
すなわち、本発明の歯ブラシの製造方法は、円錐形毛切り工程において仮想の円錐体の母線により形成される外周面に合わせて用毛を切り揃える。用毛を毛切りすることにより、切り揃えられた歯ブラシの毛を得ることができる。そして、製作者は、用毛を切り揃えるための刃物、用毛を切り揃える前の歯ブラシ又はこれらの両方を回転させることによって効率的に毛切りを行うことができる。
【0051】
また、こうして製作される歯ブラシは、本体が複数の植毛穴を有し、これらのそれぞれに毛束が植設される。そのため、植毛穴の穴数を増やして毛束の束数を増やすことにより、先端が、仮想の円錐体の外周面上に位置する毛の本数を増やすことができる。これにより、円錐体を成す毛の集合体の表出面積を拡げることができ、そのぶん、一回の操作によってより広い面積の歯の歯面を清掃することができる。
【0052】
(12)また、前記準備工程においては、前記植毛面の外周部分に配置する前記植毛穴である外周植毛穴を穿設するとともに、前記外周部分に対する前記植毛面の内側に配置する前記植毛穴である内周植毛穴を穿設し、前記植設工程は、一の前記内周植毛穴に植設される前記用毛毛束に束ねられる前記用毛の本数と比べ、一の前記外周植毛穴に植設される前記用毛毛束に束ねられる前記用毛の本数が同じ又はそれよりも少なくなるように構成してもよい。
【0053】
すなわち、こうして製作される歯ブラシは、外周植毛穴に植設される毛束に束ねられる毛の本数が内周植毛穴に植設される毛束に束ねられる毛の本数と比べて多くないため、毛丈の長さの差によるこれら毛束の剛性の差が抑えられている。その一方で、外周植毛穴に植設される毛束は、内周植毛穴に植設される毛束と比べて、歯よりも歯茎、上顎、唇、頬の内側等のような歯以外の口腔内の部位に当たる頻度が高い。そのため、外周植毛穴に植設される毛束に束ねられる毛の本数が内周植毛穴に植設される毛束に束ねられる毛の本数より多い場合に比べて、本発明の方法により製作される歯ブラシは、歯以外のこうした口腔内の部位を傷めてしまう虞が小さい。
【0054】
特に、内周植毛穴に植設される毛束に束ねられる毛の本数よりも外周植毛穴に植設される毛束に束ねられる毛の本数のほうが少ないときは、後者の毛束に束ねられる毛の本数を必要なだけ減らすことによって、もともと束ねられる毛の毛丈が短いことによる後者の毛束の剛性を調整することができる。そのため、本発明の歯ブラシは、歯以外の口腔内の部位を傷める虞がより小さい。
【0055】
(13)また、前記準備工程においては、前記植毛面の外周部分に配置する前記植毛穴である外周植毛穴を穿設するとともに、前記外周部分に対する前記植毛面の内側に配置する前記植毛穴である内周植毛穴を穿設し、前記植設工程は、一の前記内周植毛穴に植設される前記用毛毛束に束ねられる前記用毛をJIS S3016に従って測定する場合の毛の硬さと比べて、一の前記外周植毛穴に植設される前記用毛毛束に束ねられる前記用毛を同じく測定する場合の毛の硬さが同じ又はそれよりも小さくなるように構成してもよい。
【0056】
すなわち、こうして製作される歯ブラシは、外周植毛穴に植設される毛束に束ねられる毛のJISによる硬さが内周植毛穴に植設される毛束に束ねられる毛のJISによる硬さと比べて大きくないため、毛丈の長さの差によるこれら毛束の剛性の差が抑えられている。その一方で、外周植毛穴に植設される毛束は、内周植毛穴に植設される毛束と比べて、歯よりも歯茎、上顎、唇、頬の内側等のような歯以外の口腔内の部位に当たる頻度が高い。そのため、外周植毛穴に植設される毛束に束ねられる毛のJISによる硬さが、内周植毛穴に植設される毛束に束ねられる毛のJISによる硬さよりも大きい場合に比べて、本発明の方法により製作する歯ブラシは、歯以外のこうした口腔内の部位を傷めてしまう虞が小さい。
【0057】
特に、内周植毛穴に植設される毛束に束ねられる毛のJISによる硬さよりも外周植毛穴に植設される毛束に束ねられる毛のJISによる硬さのほうが小さいときは、後者の毛束に束ねられる毛のJISによる硬さを必要なだけ低減させることによって、もともと束ねられる毛の毛丈が短いことによる後者の毛束の剛性を調整することができる。そのため、本発明の歯ブラシは、歯以外の口腔内の部位を傷める虞がより小さい。
【0058】
(14)また、前記円錐形毛切り工程において、前記少なくとも一部の各用毛を、その先端部分における端面に前記外周面と同じ向きの傾斜を持たせるように切り揃えてもよい。
【0059】
すなわち、本発明の方法により製作される歯ブラシは、使用者が仮想の円錐体の外周面の一部が歯面に沿って当たるように歯を刷掃するとき、外周面と同じ向きの傾斜を有する毛の端面は、外周面と同様に歯面に沿って当接する。これにより、この毛の端面は、異なる向きに傾斜する場合又は植毛面と平行である場合と比べて、より広い面積において歯面と当接する。このことから、使用者が同じ回数だけ歯ブラシを動かして歯を磨くときに、本発明の歯ブラシはより効果的に歯面を刷掃することができる。
【発明の効果】
【0060】
このように本発明では、歯の凹部、歯間、歯と歯茎との隙間などの口腔内の狭小部位を清掃し易く、一回の操作によってより広い面積の歯面を清掃することができ、また、歯以外の口腔内の部位を傷めてしまう虞が小さい歯ブラシを提供する。また、こうした歯ブラシをより効率的に製作することができる歯ブラシの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】(a)本発明の第1の実施形態に係る歯ブラシの平面図である。(b)同じく歯ブラシの右側面図である。(c)同じく歯ブラシの正面図である。
【
図2】
図1の歯ブラシの毛を側面から模式的に表わす図である。
【
図3】
図1の歯ブラシを用いて歯磨きを行うときの模式図である。
【
図4】(a)
図1の歯ブラシのヘッド部を表わす平面図である。(b)同じくヘッド部を表わす断面の端面図である。
【
図5】(a)
図1の歯ブラシの第2毛束及び第3毛束の一部を表わす斜視図である。(b)同じく歯ブラシの第2毛の一部を表わす斜視図である。
【
図6】本発明の第1~第3の実施形態に係る歯ブラシの製造方法を表わすフローである。
【
図7】(a)(b)(c)本発明の第1の実施形態に係る歯ブラシの製造方法を説明するためのヘッド部の正面図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る歯ブラシの第1の変形例を示すヘッド部の平面図である。
【
図9】(a)本発明の第1の実施形態に係る歯ブラシの第2の変形例を示すヘッド部の平面図である。(b)同じくヘッド部の正面図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る歯ブラシの第3の変形例を示すヘッド部の平面図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る歯ブラシのヘッド部を表わす平面図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態に係る歯ブラシの変形例を示すヘッド部の平面図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態に係る歯ブラシのヘッド部を表わす平面図である。
【
図14】(a)歯ブラシに荷重を加える様子を模式的に表わす図である。(b)歯ブラシの毛の硬さを測定したときの数値を表わす表である。
【
図15】(a)
図13の歯ブラシに植設される各毛束に模した毛束の硬さを測定したときの数値を表わす表である。(b)(a)の数値の算出時に用いた植毛面積について説明するための図である。
【
図16】本発明の第3の実施形態に係る歯ブラシの第1の変形例を示すヘッド部の平面図である。
【
図17】(a)
図16の歯ブラシに植設される各毛束に模した毛束の硬さを測定したときの数値を表わす表である。(b)(a)の数値の算出時に用いた植毛面積について説明するための図である。
【
図18】本発明の第3の実施形態に係る歯ブラシの第2の変形例を示すヘッド部の平面図である。
【
図19】(a)本発明の第4の実施形態及びその第1・第2変形例に係る歯ブラシのヘッド部を表わす平面図である。(b)同じくヘッド部を表わす断面の端面図である。
【
図20】(a)
図19の歯ブラシのヘッド部を表わす斜視図である。(b)
図19の歯ブラシを用いて歯磨きを行うときの模式図である。
【
図21】本発明の第4及び第5の実施形態に係る第1の歯ブラシの製造方法を表わすフローである。
【
図22】本発明の第4及び第5の実施形態に係る第2の歯ブラシの製造方法を表わすフローである。
【
図23】(a)(b)(c)本発明の第4の実施形態に係る歯ブラシの製造方法を説明するためのヘッド部の正面図である。
【
図24】本発明の第5の実施形態に係る歯ブラシのヘッド部を表わす平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態を、
図1~
図10を用いて説明する。
図1(a)~(c)において11は歯ブラシである。歯ブラシ11は先端にヘッド部12を有するとともにヘッド部12から基端に向けて延在するハンドル部13を有する。図においては、矢印Uの向きが歯ブラシ11の上方を示し、矢印Dの向きが同じく下方を示す。矢印Fの向きが同じく前方を示し、矢印Bの向きが同じく後方を示す。また、矢印Lの向きが同じく左方を示し、矢印Rの向きが同じく右方を示す。
図1(a)(b)(c)はそれぞれ歯ブラシ11の平面図、右側面図及び正面図を表わす。ヘッド部12及びハンドル部13は、飽和ポリエステル樹脂(PET)、ポリプロピレン樹脂(PP)等の合成樹脂によって一体的に形成される。
【0063】
ヘッド部12は上向きに面する植毛面14を有する。植毛面14には複数の植毛穴15が下向きに穿設される。各植毛穴15は上下方向の中心軸を有する略円柱状に形成される。また、各植毛穴15には複数本の毛16が植毛される。毛16の材料としてポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の合成樹脂を用いる。毛16の集合体は、
図1(a)の平面図に表わされるように略円形状に形成される。また、毛16の集合体は、
図1(b)(c)の右側面図及び正面図に表わされるように、巨視的に各毛16の上側部分を占める毛先端部16sによって略円錐体状に形成され、また、巨視的に各毛16の毛先端部16sの下方の部分を占める毛基端部16kによって略円柱状に形成される。略円錐体状に形成される集合体の底面は、略円柱状に形成される集合体の上面と上下に連続する。
【0064】
図2は一例の毛16である毛16iについて模式的に表わす。毛16iは上端である毛先端16ie、上側部分である毛先端部16is及びその下方の部分を占める毛基端部16ikを有する。想像線は、仮想の円錐体である仮想円錐体COと、その下方に連続する仮想の柱体である仮想柱体CYとを表わす。仮想円錐体COは植毛面14から離れる向きである上向きに突出する円錐体である。また、仮想円錐体COの無数の母線である円錐体母線Buは、上側ほど縮径する笠状の円錐体外周面Suを形成する。そして、各毛16の毛先端16eは円錐体外周面Su上にそれぞれ位置する。図は一例として毛16iの毛先端16ieが円錐体外周面Su上に位置している状態を表わす。また、図の符号Cは仮想円錐体COの中心軸を示す。
【0065】
図3は歯ブラシ11を用いて歯磨きを行うときの模式図を表わす。すなわち、歯ブラシ11を、毛16の集合体の、その仮想円錐体COの先端に相当する部分が歯Tと歯茎Gとの間の歯周ポケットP及びその近傍に当たるように歯を磨く状態を表わす。このとき、各毛16の毛先端16eは円錐体外周面Suに位置しているため、使用者は、複数本の毛16の毛先端16eを用いて歯面Tfを刷掃することができ、それと同時に歯周ポケットPの清掃を行うことができる。
【0066】
図4(a)(b)は、これまでの図において巨視的に表わした毛16の集合体を、複数本の毛16が束ねられている毛束17毎の形状が分かるように微視的に表わす。すなわち、一部の毛16は、
図4(a)の平面図の中央に配置される第1毛束17aに束ねられる。第1毛束17aは、同じく中央に穿設される第1植毛穴15aに植設される。このとき、仮想円錐体COの中心軸Cと、第1植毛穴15aの中心線である第1中心線C1とは一致する。すなわち、仮想円錐体COの中心軸Cと第1植毛穴15aの第1中心線C1との距離は0(ゼロ)である。また、毛束17は二折りした毛16と、この二折りした毛16の束同士の間に挟まれた平線とを植毛穴15に下向きに圧入することによって植設される。金属製の平線が植毛穴の内周面によって下向きに係止されることにより、毛16は上向きに脱抜することが少ない。
【0067】
先ず、第1植毛穴15aの外側に6個の第2植毛穴15bが配設される。6個の第2植毛穴15bは、それぞれの中心線である第2中心線C2が平面視において正六角形の頂点に位置している。また、第1中心線C1と一致する中心軸Cはこの正六角形の中心に位置している。そして、中心軸Cと第1中心線C1との距離が0(ゼロ)のため、中心軸Cと第2中心線C2との距離は、中心軸Cと第1中心線C1との距離よりも長い。
【0068】
次に、6個の第2植毛穴15bの外側に12個の第3植毛穴15cが配設される。12個の第3植毛穴15cは、それらの中心線である第3中心線C3が平面視において正十二角形の頂点に位置している。また、中心軸Cはこの正十二角形の中心に位置している。そして、中心軸Cと第3中心線C3との距離は、中心軸Cと第2中心線C2との距離よりも長い。
【0069】
各第2植毛穴15bにそれぞれ一束の毛束17である第2毛束17bが植設される。また、各第3植毛穴15cにそれぞれ一束の毛束17である第3毛束17cが植設される。
図4(b)は、
図4(a)に示した指示線A-A´によって切断するときの断面の端面図を表わす。各毛束17a,17b,17cに束ねられる毛16の毛先端16eが円錐体外周面Su上に位置するため、この円錐体外周面Suは中心軸Cから離れるほど低くなるように傾斜する。これにより、
図4(b)が示すように、第1毛束17aに束ねられる毛16である第1毛16aの毛丈、第2毛束17bに束ねられる毛16である第2毛16bの毛丈及び第3毛束17cに束ねられる毛16である第3毛16cの毛丈を比べると、第1毛16aの毛丈が最も長く、第2毛16bが次に長く、また、第3毛16cの毛丈が最も短い。
【0070】
また、各毛束17a,17b,17cに束ねられる毛16a,16b,16cの毛先端16eが円錐体外周面Su上に位置するため、中心軸Cに沿って配置される少数の第1毛16aを除き、これらの毛16a,16b,16cは、先端部分が、植毛面14と平行する平行面に対して傾斜する端面である傾斜端面16tを有する。この傾斜端面16tは、径方向において中心軸Cから遠い位置ほど植毛面14に近付くように傾斜する。例として、
図5(a)の斜視図は第2毛束17b及び第3毛束17cの一部の先端を表わす。また、
図5(b)の斜視図は例として第2毛束17bに束ねられる第2毛16bの先端部分を表わす。図の奥の第2毛16bよりも、図の手前の2本の第2毛16bのほうが径方向において中心軸Cから遠い位置に植毛されている。そして、それぞれの傾斜端面16tは、図の右上から左下への向きにおいて、植毛面14から離れる位置から植毛面14に近付く位置へと傾斜している。
【0071】
この実施形態においては、各植毛穴15a,15b,15cの穴径は略同一である。また、各毛16a,16b,16cの線径は略同一であり、一束の各毛束17a,17b,17cに束ねられる毛16の本数は略同一である。
【0072】
以上のような構成により、毛先端部16sの集合体が円錐体を成すように形成されているため、毛16の集合体が、仮想円錐体COの頂点に近い位置の毛16から順に入り込んで口腔内の狭小部位を容易に清掃することができる。
【0073】
また、歯ブラシ11は、ヘッド部12が複数の植毛穴15を有し、これらのそれぞれに毛束17が植設される。そのため、植毛穴15の穴数を増やして毛束17の束数を増やすことにより、毛先端16eが、仮想円錐体COの円錐体外周面Su上に位置する毛16の本数を増やすことができる。これにより、一部又は全体が仮想円錐体COを成す毛16の集合体の表出面積を拡げることができ、そのぶん、一回の操作によってより広い面積の歯Tの歯面Tfを清掃することができる。
【0074】
さらに、毛先端部16sの集合体が、仮想円錐体COを成すことにより、毛束17の数を増やすときでも、円錐体の中心軸Cから遠くに位置する毛16ほど短く、使用者の歯Tが各毛16の毛先端16eに干渉する度合は低い。また、仮想円錐体CO及び仮想柱体CYの横断面が円形又は正多角形であることにより、横断面が楕円、長円、長方形等である場合と異なり、中心軸Cと直交する全ての向きにおける中心軸Cから仮想円錐体COの外周面又は仮想円柱体CYの外周面まで距離は同長である。そのため、使用者が歯ブラシ11を自在な姿勢において動かし、また、自在な方向に動かすときでも、横断面が楕円、長円、長方形等である場合に比べて毛16の集合体の何れかの部分が歯Tに干渉する機会はより少ない。これにより、使用者は歯ブラシ11を用いて口腔内の部位をスムーズに清掃する上で不必要な力を加えずに済む。
【0075】
そして、歯ブラシ11の毛16の先端部分が傾斜端面16tを有し、その傾斜端面16tは仮想円錐体COの母線により形成される円錐体外周面Suの向きと同じ向きに傾斜する。そのため、使用者が仮想円錐体COの円錐体外周面Suの一部が歯面Tfに沿って当たるように歯を刷掃するとき、毛の傾斜端面16tは、円錐体外周面Suと同様に歯面Tfに沿って当接する。これにより、毛16の傾斜端面16tは、異なる向きに傾斜する場合又は植毛面14と平行である場合と比べて、より広い面積において歯面Tfと当接する。このことから、使用者が同じ回数だけ歯ブラシ11を動かして歯Tを磨くときに、歯ブラシ11はより効果的に歯面Tを刷掃することができる。
【0076】
図6は、この実施形態に係る歯ブラシ11を製造するための歯ブラシの製造方法S110を表わすフローを示す。歯ブラシの製造方法S110は、
図7(a)に示す複数本の切り揃えられていない毛である用毛18と、ヘッド部12の植毛面14に複数の植毛穴15が穿設された本体とを準備するステップを含む準備工程S120を含む。また、歯ブラシの製造方法S110は、準備工程S120の次に、用毛18を束ねるとともに、これらの用毛18が束ねられた用毛毛束18Tを各植毛穴15に植設するステップを含む植設工程S130を含む。用毛毛束18Tを
図7(b)に示す。さらに、歯ブラシの製造方法S110は、植設工程S130の次に、用毛18の先端部分を切り揃えるステップを含む円錐形毛切り工程S140を含む。用毛18の先端部分を切り揃えた後の毛16と、これらの毛16が束ねられて形成されている状態の毛束17とを
図7(c)に示す。
【0077】
また、円錐形毛切り工程S140においては、切り揃えた後において、中心軸Cに沿って配置される少数の第1毛16aを除いた毛16a,16b,16cの先端部分が傾斜端面16tを持つように用毛18を切り揃える。傾斜端面16tは
図5(b)に例示した通りである。
【0078】
以上のような構成により、歯ブラシの製造方法S110は、円錐形毛切り工程S140において仮想円錐体COの円錐体母線Buにより形成される円錐体外周面Suに合わせて用毛18を切り揃える。その目的において、製作者は、例えばこの円錐体外周面Suと略同形且つ略同大の内周面の凹状部を有する刃物を用い、この刃物を前記内周面の中心軸を中心にして回転させる、刃物の代わりに歯ブラシ11を回転させる、または、これらの両方を回転させることによって効率的に毛切りを行うことができる。刃物の前記内周面を
図7(c)において符号Dによって模式的に示す。
【0079】
また、こうした回転を伴う毛切りを行うことにより、複数本の毛16a,16b,16cの傾斜端面16tを同時に形成することが容易となる。
【0080】
[変形例]
本発明の第1の実施形態の変形例を、
図8~
図10を用いて例示する。特に記載をしない限り、これら変形例における歯ブラシ111~113の構成は、上述の歯ブラシ11の構成と共通する。
【0081】
第1の変形例における歯ブラシ111のヘッド部121を
図8の平面図に示す。第1の変形例においては、上述の歯ブラシ11と同様に、図の中央に配置される第1毛束171aが、同じく中央に穿設される第1植毛穴151aに植設される。仮想円錐体COの中心軸Cと第1植毛穴151aの第1中心線C1との距離は0(ゼロ)である。また、上述の歯ブラシ11と同様に、第1植毛穴151aの外側に6個の第2植毛穴151bが配設される。6個の第2植毛穴151bは、それぞれの中心線である第2中心線C2が平面視において正六角形の頂点に位置している。また、第1中心線C1と一致する中心軸Cはこの正六角形の中心に位置している。そして、中心軸Cと第1中心線C1との距離が0(ゼロ)のため、中心軸Cと第2中心線C2との距離は、中心軸Cと第1中心線C1との距離よりも長い。
【0082】
次に、6個の第2植毛穴151bの外側に6個の第3-1植毛穴151c1と6個の第3-2植毛穴151c2が配設される。各第3-1植毛穴151c1の中心線である第3-1中心線C3-1は、6個の第2植毛穴151bの外側に描かれる仮想の正六角形の各辺における中点に位置している。各第3-2植毛穴151c2の中心線である第3-2中心線C3-2は、この仮想の正六角形の頂点に位置している。また、仮想円錐体COの中心軸Cはこの仮想の正六角形の中心に位置している。そして、中心軸Cと第3-1中心線C3-1との距離は、中心軸Cと第2中心線C2との距離よりも長い。また、中心軸Cと第3-2中心線C3-2との距離は、中心軸Cと第3-1中心線C3-1との距離よりも長い。
【0083】
そして、各植毛穴151a,151b,151c1,151c2にそれぞれ植設される毛束171a,171b,171c1,171c2に束ねられる毛161の毛先端161eが円錐体外周面Su上に位置する。この円錐体外周面Suは中心軸Cから離れるほど低くなるように傾斜する。これにより、第1毛束171aに束ねられる毛16である第1毛161aの毛丈、第2毛束171bに束ねられる毛161である第2毛161bの毛丈、第3-1毛束171c1に束ねられる毛161である第3-1毛161c1の毛丈及び第3-2毛束171c2に束ねられる毛161である第3-2毛161c2の毛丈を比べると、第1毛161aの毛丈が最も長く、第2毛161bが次に長く、第3-1毛161c1がその次に長く、また、第3-2毛161c2の毛丈が最も短い。
【0084】
第2の変形例における歯ブラシ112のヘッド部122を
図9(a)の平面図に示す。第2の変形例においては、上述の歯ブラシ11と同様に、図の中央に配置される第1毛束172aが、同じく中央に穿設される第1植毛穴152aに植設される。仮想円錐体COの中心軸Cと第1植毛穴152aの第1中心線C1との距離は0(ゼロ)である。また、上述の歯ブラシ11と同様に、第1植毛穴152aの外側に6個の第2植毛穴152bが配設される。6個の第2植毛穴152bは、それぞれの中心線である第2中心線C2が平面視において正六角形の頂点に位置している。また、第1中心線C1と一致する中心軸Cはこの正六角形の中心に位置している。そして、中心軸Cと第1中心線C1との距離が0(ゼロ)のため、中心軸Cと第2中心線C2との距離は、中心軸Cと第1中心線C1との距離よりも長い。
【0085】
次に、6個の第2植毛穴152bの外側に12個の第3植毛穴152cが配設される。12個の第3植毛穴152cは、それらの中心線である第3中心線C3が平面視において正十二角形の頂点に位置している。また、中心軸Cはこの正十二角形の中心に位置している。そして、中心軸Cと第3中心線C3との距離は、中心軸Cと第2中心線C2との距離よりも長い。
【0086】
さらに、12個の第3植毛穴152cの外側に18個の第4植毛穴152dが配設される。18個の第4植毛穴152dは、それらの中心線である第4中心線C4が平面視において正十八角形の頂点に位置している。また、中心軸Cはこの正十八角形の中心に位置している。そして、中心軸Cと第4中心線C4との距離は、中心軸Cと第3中心線C3との距離よりも長い。
【0087】
そして、各植毛穴152a,152b,152c,152dにそれぞれ植設される毛束172a,172b,172c,172dに束ねられる毛162の毛先端162eが、
図9(b)の正面図が示すように円錐体外周面Su上に位置する。この円錐体外周面Suは中心軸Cから離れるほど低くなるように傾斜する。これにより、第1毛束172aに束ねられる毛162である第1毛162aの毛丈、第2毛束172bに束ねられる毛162である第2毛162bの毛丈、第3毛束172cに束ねられる毛162である第3毛162cの毛丈及び第4毛束172dに束ねられる毛162である第4毛162dを比べると、第1毛162aの毛丈が最も長く、第2毛162bが次に長く、第3毛162cがその次に長く、また、第4毛161dの毛丈が最も短い。
【0088】
また、中心軸Cに沿って配置される少数の第1毛162aを除き、これらの毛162a,162b,162c,162dは、先端部分が、植毛面142と平行する平行面に対して傾斜する端面である傾斜端面162tを有する。この傾斜端面162tは、径方向において中心軸Cから遠い位置ほど植毛面142に近付くように傾斜する。
【0089】
第3の変形例における歯ブラシ113のヘッド部123を
図10の平面図に示す。第3の変形例においては、これまでの例と異なり、図の中央に3束の第1毛束173aがそれぞれ第1植毛穴153aに植設される。これら3個の第1植毛穴153aはそれぞれの第1中心線C1が平面視において正三角形の頂点に位置するように配設されている。また、仮想円錐体COの中心軸Cはこの正三角形の中心に位置している。
【0090】
また、3個の第1植毛穴153aの外側に、それぞれ第2毛束173bが植設される9個の第2植毛穴153bが配設される。これら9個の第2植毛穴153bは、それぞれの中心線である第2中心線C2が平面視において正九角形の頂点に位置している。また、中心軸Cはこの正九角形の中心に位置している。そして、中心軸Cと第2中心線C2との距離は、中心軸Cと第1中心線C1との距離よりも長い。
【0091】
これら以外に、これら9個の第2植毛穴153bの外側に、第3中心線C3が正十二角形の頂点に位置する12個の第3植毛穴153cが配設され、また、これら12個の第3植毛穴153cの外側に、第4中心線C4が正十二角形の頂点に位置する12個の第4植毛穴153dが配設されることを除けば、この第3の変形例の構成は第2の変形例の構成と共通する。
【0092】
なお、本明細書において一の植毛穴及びその一の植毛穴に植設される毛束並びに前記一の植毛穴よりも外側に穿設される植毛穴及びその外側に穿設される植毛穴に植設される毛束を、それぞれ第1の植毛穴及び第1の毛束並びに第2の植毛穴及び第2の毛束に読み替えてもよい。また、第1植毛穴及び第1毛束、第2植毛穴及び第2毛束並びに第3植毛穴及び第3毛束を、それぞれ第1の植毛穴及び第1の毛束、第2の植毛穴及び第2の毛束並びに第3の植毛穴及び第3の毛束に読み替えてもよい。また、第1植毛穴及び第1毛束、第2植毛穴及び第2毛束並びに第3-1植毛穴及び第3-1毛束を、それぞれ第1の植毛穴及び第1の毛束、第2の植毛穴及び第2の毛束並びに第3の植毛穴及び第3の毛束に読み替えてもよい。また、第1植毛穴及び第1毛束、第2植毛穴及び第2毛束並びに第3-2植毛穴及び第3-2毛束を、それぞれ第1の植毛穴及び第1の毛束、第2の植毛穴及び第2の毛束並びに第3の植毛穴及び第3の毛束に読み替えてもよい。また、第1植毛穴及び第1毛束、第3-1植毛穴及び第3-1毛束並びに第3-2植毛穴及び第3-2毛束を、それぞれ第1の植毛穴及び第1の毛束、第2の植毛穴及び第2の毛束並びに第3の植毛穴及び第3の毛束に読み替えてもよい。また、第1植毛穴及び第1毛束、第2植毛穴及び第2毛束並びに第4植毛穴及び第4毛束を、それぞれ第1の植毛穴及び第1の毛束、第2の植毛穴及び第2の毛束並びに第3の植毛穴及び第3の毛束に読み替えてもよい。さらに、第1植毛穴及び第1毛束、第3植毛穴及び第3毛束並びに第4植毛穴及び第4毛束を、それぞれ第1の植毛穴及び第1の毛束、第2の植毛穴及び第2の毛束並びに第3の植毛穴及び第3の毛束に読み替えてもよい。
【0093】
そして、第2植毛穴及び第2毛束、第3-1植毛穴及び第3-1毛束並びに第3-2植毛穴及び第3-2毛束を、それぞれ第1の植毛穴及び第1の毛束、第2の植毛穴及び第2の毛束並びに第3の植毛穴及び第3の毛束に読み替えてもよい。また、第2植毛穴及び第2毛束、第3植毛穴及び第3毛束並びに第4植毛穴及び第4毛束を、それぞれ第1の植毛穴及び第1の毛束、第2の植毛穴及び第2の毛束並びに第3の植毛穴及び第3の毛束に読み替えてもよい。
【0094】
また、植毛面の外周部分に配置する植毛穴を外周植毛穴に読み替えてもよい。そのとき、この外周部分に配置される植毛穴よりも植毛面の内側に配置される植毛穴を内周植毛穴に読み替えてもよい。
【0095】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態を、
図11及び
図12を用いて説明する。
図11の歯ブラシ21は先端にヘッド部22を有するとともに、図示しないが、ヘッド部22から基端に向けて延在するハンドル部23を有する。
図11はヘッド部22の平面図を表わす。ヘッド部22は上向きに面する植毛面24を有する。植毛面24には複数の植毛穴25が下向きに穿設される。各植毛穴25は上下方向の中心線を有する略円柱状に形成される。また、各植毛穴25には毛束27が植設される。各毛束27には複数本の毛26が束ねられる。
【0096】
図11には、仮想円錐体COの中心軸C、第1植毛穴25aの第1中心線C1、各第2植毛穴25bの第2中心線C2及び各第3植毛穴25cの第3中心線C3が表わされている。第1中心線C1は中心軸Cと一致する。そして、中心軸Cと第1中心線C1との距離が0(ゼロ)のため、中心軸Cと第2中心線C2との距離は、中心軸Cと第1中心線C1との距離よりも長い。また、中心軸Cと第3中心線C3との距離は、中心軸Cと第2中心線C2との距離よりも長い。
【0097】
この実施形態において、各毛26の線径は略同一である。その一方で、第2植毛穴25bの穴径は第1植毛穴25aの穴径よりも小さい。また、第3植毛穴25cの穴径は第2植毛穴25bの穴径よりも小さい。そして、各第2植毛穴25bに植設される第2毛束27bに束ねられる第2毛26bの本数は、第1植毛穴25aに植設される第1毛束27aに束ねられる第1毛26aの本数よりも少ない。また、各第3植毛穴25cに植設される第3毛束27cに束ねられる第3毛26cの本数は、第2毛束27bに束ねられる第2毛26bの本数よりも少ない。なお、
図11に示す植毛穴は模式的に描いたものであり、これらの穴径の違いが表わされていない。
【0098】
例えば、各毛26a,26b,26cの線径が0.18mmであるとき、穴径1.8mmの第1植毛穴25aに植設される第1毛束27aには36本の第1毛26aが束ねられる。また、穴径1.7mmの各第2植毛穴25bに植設される第2毛束27bには32本の第2毛26bが束ねられる。また、穴径1.6mmの第3植毛穴25cに植設される第3毛束27cには24本の第3毛26cが束ねられる。これらの本数は、各植毛穴25に圧入した後の二折りした状態の毛26の本数をそれぞれカウントし、合わせて2本とカウントする場合の本数である。また、歯ブラシ21の製作の都合上、実際に束ねられる毛26の本数には誤差が生じる場合がある。
【0099】
この実施形態に係る歯ブラシ21を製造するための歯ブラシの製造方法S210を
図6のフローにより示す。歯ブラシの製造方法S210は、準備工程S220、植設工程S230及び円錐形毛切り工程S240を含む。この植設工程S230において、各第2植毛穴25bに植設される第2用毛毛束28Tbに束ねられる第2用毛28bの本数は、第1植毛穴25aに植設される第1用毛毛束28Taに束ねられる第1用毛28aの本数よりも少ない。また、各第3植毛穴25cに植設される第3用毛毛束28Tcに束ねられる第3用毛28cの本数は、各第2用毛毛束28Tbに束ねられる第2用毛28bの本数よりも少ない。
【0100】
他の構成は第1の実施形態と共通とする。
【0101】
以上の構成により、歯ブラシ21の毛26a,26b,26cは、それらの毛丈が、第3毛26c、第2毛26b及び第1毛26aの順に短い。そのために、仮に各毛束27a,27b,27cにそれぞれ束ねられる毛26の本数が同数の場合は、毛束27の剛性が第3毛束27c、第2毛束27b及び第1毛束27aの順に高い。しかし、本実施形態の歯ブラシ21は、植毛される毛26の本数を、必要なだけ、第1毛26a、第2毛26b及び第3毛26cの順に減らすことができる。
【0102】
これにより、各毛束27a,27b,27cに束ねられる毛26の毛丈が第3毛26c、第2毛26b及び第1毛26aの順に短いにもかかわらず、各毛束27の剛性を同一又は第3毛束27c、第2毛束27b及び第1毛束27aの順に低くすることによって、仮想円錐体COの中心軸Cよりも遠い位置に植設される毛束27の剛性を同一に又は低く抑えることができる。その結果、より頻度高く歯茎、上顎、唇、頬の内側等のような歯以外の口腔内の部位に当たる毛束27の剛性を同一に又は低く抑えることができる。こうして、歯ブラシ21は、これらの歯以外の口腔内の部位を傷める虞が小さい。
【0103】
なお、上記の例において植毛穴の穴径を変えることによってそれらの植毛穴に植設される毛束に束ねられる毛の本数を変えているが、植設時の疎密を変えることによって毛の本数を変えてもよい。
【0104】
[変形例]
本発明の第2の実施形態の変形例を
図12を用いて例示する。特に記載をしない限り、この変形例における歯ブラシ211の構成は、上述の歯ブラシ21の構成と共通する。
【0105】
変形例における歯ブラシ211のヘッド部221を
図12の平面図に示す。
図12には、仮想円錐体COの中心軸C、第1植毛穴251aの第1中心線C1、各第2植毛穴251bの第2中心線C2、各第3植毛穴251cの第3中心線C3及び各第4植毛穴251dの第4中心線C4が表わされている。第1中心線C1は中心軸Cと一致する。そして、中心軸Cと第1中心線C1との距離が0(ゼロ)のため、中心軸Cと第2中心線C2との距離は、中心軸Cと第1中心線C1との距離よりも長い。また、中心軸Cと第3中心線C3との距離は、中心軸Cと第2中心線C2との距離よりも長い。さらに、中心軸Cと第4中心線C4との距離は、中心軸Cと第3中心線C3との距離よりも長い。
【0106】
また、第4植毛穴251dの穴径は第3植毛穴251cの穴径よりも小さい。そして、各第4植毛穴251dに植設される第4毛束271dに束ねられる第4毛261dの本数は、各第3植毛穴251cに植設される第3毛束271cに束ねられる第3毛261cの本数よりも少ない。なお、
図12に示す植毛穴は模式的に描いたものであり、これらの穴径の違いが表わされていない。
【0107】
例えば、各毛261a,261b,261c,261dの線径が0.18mmであるとき、穴径1.8mmの第1植毛穴25aに植設される第1毛束271aには36本の第1毛261aが束ねられる。また、穴径1.7mmの各第2植毛穴251bに植設される第2毛束271bには32本の第2毛261bが束ねられる。また、穴径1.6mmの第3植毛穴251cに植設される第3毛束271cには24本の第3毛261cが束ねられる。そして、穴径1.5mmの第4植毛穴251dに植設される第4毛束271dには20本の第4毛261dが束ねられる。
【0108】
なお、図示しないが、第2の実施形態においても、第1の実施形態について例示した第1の変形例のような第3-1毛束が第3-1植毛穴に植設されるとともに、第3-2毛束が第3-2植毛穴に植設されてもよい。または、第1の実施形態について例示した第3の変形例のような3束の第1毛束が3個の第1植毛穴にそれぞれ植設されてもよい。
【0109】
また、第1の実施形態において述べた第1の植毛穴、第1の毛束、第2の植毛穴、第2の毛束、第3の植毛穴及び第3の毛束への読み替えを第2の実施形態についても適用することができる。さらに、同じく内周植毛穴及び外周植毛穴への読み替えを第2の実施形態についても適用することができる。
【0110】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態を、
図13~
図18を用いて説明する。
図13の歯ブラシ31は先端にヘッド部32を有するとともに、図示しないが、ヘッド部32から基端に向けて延在するハンドル部33を有する。
図13はヘッド部32の平面図を表わす。ヘッド部32は上向きに面する植毛面34を有する。植毛面34には複数の植毛穴35が下向きに穿設される。各植毛穴35は上下方向の中心軸を有する略円柱状に形成される。また、各植毛穴35には毛束37が植設される。各毛束37には複数本の毛36が束ねられる。
【0111】
図13には、仮想円錐体COの中心軸C、第1植毛穴35aの第1中心線C1、各第2植毛穴35bの第2中心線C2及び各第3植毛穴35cの第3中心線C3が表わされている。第1中心線C1は中心軸Cと一致する。そして、中心軸Cと第1中心線C1との距離が0(ゼロ)のため、中心軸Cと第2中心線C2との距離は、中心軸Cと第1中心線C1との距離よりも長い。また、中心軸Cと第3中心線C3との距離は、中心軸Cと第2中心線C2との距離よりも長い。
【0112】
この実施形態において、各第2毛束37bに束ねられる第2毛36bの線径は第1毛束37aに束ねられる第1毛36aの線径よりも小さい。また、各第3毛束37cに束ねられる第3毛36cの線径は第2毛36bの線径よりも小さい。
【0113】
この実施形態に係る歯ブラシ31を製造するための歯ブラシの製造方法S310を
図6のフローにより示す。歯ブラシの製造方法S310は、準備工程S320、植設工程S330及び円錐形毛切り工程S340を含む。この植設工程S330において、各第2用毛毛束38Tbに束ねられる第2用毛38bは、各第1用毛毛束38Taに束ねられる第1用毛38aと比べて線径が小さい。また、各第3用毛毛束38Tcに束ねられる第3用毛38cは、各第2用毛毛束28Tbに束ねられる第2用毛28bと比べて線径が小さい。
【0114】
他の構成は第1の実施形態と共通とする。
【0115】
ところで、JIS S3016-1995は、歯ブラシの毛の硬さの試験方法を定めている。
図14(a)は、押し具によって試料である歯ブラシに対し10mm/minの速度で荷重を加える様子を模式的に表わす。このときの歯ブラシの毛は、長さが7.00±0.15mmに水平に切り揃えられたものを用いることが規定されている。この数値の通り、線径が小さいほど硬さも小さい。
【0116】
そして、
図14(b)の表は、試料である歯ブラシの毛の線径を変えるときの、上述のJIS S3016に従って測定した毛の硬さの数値を示す。線径はmilの単位によって表わす。1milは0.0254mmに相当する。また、毛の硬さはN/cm2の単位によって表わす。この表に表わされる通り、線径が大きくなるにつれ、JISによる硬さは大きい。
【0117】
このような構成により、歯ブラシ31の毛36a,36b,36cは、それらの毛丈が、第3毛36c、第2毛36b及び第1毛36aの順に短い。そのために、仮に各毛束37a,37b,37cにそれぞれ束ねられる毛36の線径が同一の場合は、毛束37の剛性が第3毛束37c、第2毛束37b及び第1毛束27aの順に高い。しかし、本実施形態の歯ブラシ31は、植毛される毛36の線径を、必要なだけ、第1毛36a、第2毛36b及び第3毛36cの順に小さくすることができる。
【0118】
これにより、各毛束37a,37b,37cに束ねられる毛36の毛丈が第3毛36c、第2毛36b及び第1毛36aの順に短いにもかかわらず、各毛36の線径を第1毛36a、第2毛36b及び第3毛36cの順に小さくして各毛束37の剛性を同一又は第3毛束37c、第2毛束37b及び第1毛束37aの順に低くすることができる。そして、仮想円錐体COの中心軸Cよりも遠い位置に植設される毛束37の剛性を同一に又は低く抑えることができる。その結果、歯茎、上顎、唇、頬の内側等のような歯以外の口腔内の部位に頻度高く当たる毛束37の剛性を同一に又は低く抑えることができる。こうして、歯ブラシ31は、これらの歯以外の口腔内の部位を傷める虞が小さい。
【0119】
歯ブラシ31の実施例として、発明者は
図15(a)の表に示す第1毛束~第3毛束を植設した歯ブラシ31Aを製作するとともに、歯ブラシ31Aの第1毛束~第3毛束の硬さを測定した。このとき、毛の長さの条件である7.00mm±0.15mmの条件以外の試験条件は、JIS S3016-1995に定められた試験方法に従った。そして、試験のための毛束毎の毛の長さは、毛束の先端が傾斜するのに対して、仮想円錐体COの円錐体外周面Suの高さのうち最も低い高さを採用して、一の毛束に束ねられる毛の毛丈を
図15(a)の表の通り均一のものとした。さらに、第2毛束及び第3毛束の硬さを算出するとき、力の値を除する植毛面積として、各第2植毛穴又は各第3植毛穴の内接円と外接円とに囲まれる円環状の図形の面積を採用した。例えば第3毛束の場合、力の値を除する植毛面積は
図15(b)のハッチングを施して表わす円環状の円形の面積に相当する。
【0120】
この表が示す通り、毛丈が第3毛束、第2毛束及び第1毛束の順に短いにもかかわらず、硬さは第3毛束、第2毛束及び第1毛束の順に小さかった。すなわち、線径が小さいほど毛束の硬さが小さかった。しかも、この実施例において第1植毛穴~第3植毛穴の穴径を変えなかったため、第3毛束、第2毛束及び第1毛束のそれぞれに束ねられる第3毛~第1毛の本数はこの順に多かった。このように、第1毛束、第2毛束及び第3毛束の順に本数が多いにもかかわらず、硬さが第3毛束、第2毛束及び第1毛束の順に小さかったことからも、線径が小さいことは、なおさらに毛束の硬さを小さくすることの効果をもたらすことが認められた。
【0121】
なお、この実施例において、第1植毛穴35a~第3植毛穴35cの穴径が同一の形態を例示したが、本実施形態の歯ブラシ31の第2植毛穴35b及び第3植毛穴35cの穴径を小さくしてもよい。これにより、第1毛束37aと比べ毛36b,36cの本数を同一にする又は減らすことによって、さらに第2毛束37b及び第3毛束37cの剛性を低く抑えることができる。
【0122】
[変形例]
本発明の第3の実施形態の変形例を
図16~
図18を用いて例示する。特に記載をしない限り、これら変形例における歯ブラシ311,312の構成は、上述の歯ブラシ31の構成と共通する。
【0123】
第1の変形例における歯ブラシ311のヘッド部321を
図16の平面図に示す。上述の歯ブラシ31と異なり、第1の変形例における歯ブラシ311は、6個の第2植毛穴351bの外側に6個の第3-1植毛穴351c1と6個の第3-2植毛穴351c2が配設される。各第3-1植毛穴351c1の中心線である第3-1中心線C3-1は、6個の第2植毛穴351bの外側に描かれる仮想の正六角形の各辺における中点に位置している。各第3-2植毛穴351c2の中心線である第3-2中心線C3-2は、この仮想の正六角形の頂点に位置している。また、仮想円錐体COの中心軸Cはこの仮想の正六角形の中心に位置している。
【0124】
歯ブラシ311の実施例として、発明者は
図17(a)の表に示す第1毛束、第2毛束、第3-1毛束及び第3-2毛束を植設した歯ブラシ311Aを製作するとともに各毛束の硬さを測定した。このとき、毛の長さの条件である7.00mm±0.15mmの条件以外の試験条件は、JIS S3016-1995に定められた試験方法に従った。そして、試験のための毛束毎の毛の長さは、仮想円錐体COの円錐体外周面Suの高さの平均値を採用して、一の毛束に束ねられる毛の毛丈を
図17の表の通り均一のものとした。ただし、第3-1中心線C3-1における円錐体外周面Suの高さが6.26mmであり、第3-2中心線C3-2における円錐体外周面Suの高さが6.0mmであるのに対して、試作品製作の都合上、第3-1毛束に束ねられる毛の毛丈を第3-2毛束に束ねられる毛の毛丈である6.0mmと合わせた歯ブラシ311Aを製作して硬さを測定した。また、第2毛束及び第3-1毛束と第3-2毛束とを合わせた第3毛束の硬さを算出するとき、力の値を除する植毛面積として、
図17(b)の例に示すような各第2植毛穴又は各第3-1植毛穴及び各第3-2植毛穴と内接する略角丸正六角形と、これら植毛穴と外接する略正六角形とに囲まれる幅太の角丸正六角形状の図形の面積を採用した。例えば第3-1毛束と第3-2毛束とを合わせた第3毛束の場合、力の値を除する植毛面積は
図17(b)のハッチングを施して表わす角丸正六角形状の図形の面積に相当する。
【0125】
この表が示す通り、毛丈が第3-1毛束又は第3-2毛束、第2毛束及び第1毛束の順に短いにもかかわらず、硬さは第3-1毛束又は第3-2毛束、第2毛束及び第1毛束の順に小さかった。すなわち、線径が小さいほど毛束の硬さが小さかった。しかも、この実施例において第1植毛穴、第2植毛穴、第3-1植毛穴及び第3-2植毛穴の穴径を変えなかったため、第3-1毛又は第3-2毛、第2毛及び第1毛の本数はこの順に多かった。このように、第1毛束、第2毛束及び第3-1毛束又は第3-2毛束の順に本数が多いにもかかわらず、硬さが第3-1毛束又は第3-2毛束、第2毛束及び第1毛束の順に小さかったことからも、線径が小さいことは、なおさらに毛束の硬さを小さくすることの効果をもたらすことが認められた。
【0126】
なお、この変形例において、第1植毛穴351a、第2植毛穴351b、第3-1植毛穴351c1及び第3-2植毛穴351c2の穴径が同一の形態を例示したが、本変形例の歯ブラシ311の第2植毛穴351b、第3-1植毛穴351c1又は第3-2植毛穴351c2の穴径を小さくしてもよい。これにより、第1毛束371aと比べ毛361b,361c1,361c2の本数を同一にする又は減らすことによって、さらに第2毛束371b、第3-1毛束371c1及び第3-2毛束371c2の剛性を低く抑えることができる。
【0127】
第2の変形例における歯ブラシ312のヘッド部322を
図18の平面図に示す。
図18には、仮想円錐体COの中心軸C、第1植毛穴352aの第1中心線C1、各第2植毛穴352bの第2中心線C2、各第3植毛穴352cの第3中心線C3及び各第4植毛穴352dの第4中心線C4が表わされている。第1中心線C1は中心軸Cと一致する。
【0128】
この変形例において、各第2毛束372bに束ねられる第2毛362bの線径は第1毛束372aに束ねられる第1毛362aの線径よりも小さい。また、各第3毛束372cに束ねられる第3毛362cの線径は第2毛362bの線径よりも小さい。さらに、各第4毛束372dに束ねられる第4毛362dの線径は第3毛362cの線径よりも小さい。
【0129】
なお、第1の実施形態について例示した第3の変形例のような3束の第1毛束が3個の第1植毛穴にそれぞれ植設されてもよい。
【0130】
また、第1の実施形態において述べた第1の植毛穴、第1の毛束、第2の植毛穴、第2の毛束、第3の植毛穴及び第3の毛束への読み替えを第3の実施形態についても適用することができる。さらに、同じく内周植毛穴及び外周植毛穴への読み替えを第3の実施形態についても適用することができる。
【0131】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態を
図19~
図23を用いて説明する。
図19(a)(b)の歯ブラシ41は先端にヘッド部42を有するとともに、
図20(a)に示すようにヘッド部42から基端に向けて延在するハンドル部43を有する。ヘッド部42は上向きに面する植毛面44を有する。植毛面44には複数の植毛穴45が下向きに穿設される。各植毛穴45は上下方向の中心線を有する略円柱状に形成される。また、各植毛穴45には毛束47が植設される。各毛束47には複数本の毛46が束ねられる。
【0132】
歯ブラシ41は、複数の植毛穴45a,45b,45c,45dの平面視略中央に位置する第1植毛穴45aに植設される第1毛束47aを有する。第1植毛穴45aの中心線C1は、上向きに突出する仮想の円錐体である仮想円錐体COの中心軸Cと一致する。また、第1植毛穴45aの周囲に配設される6個の第2植毛穴45bにそれぞれ植設される第2毛束47bを有する。中心軸Cと6個の第2植毛穴45bの中心線C2は、平面視においてそれぞれ正六角形の中心位置と頂点位置とに位置している。また、各第2植毛穴45bの周囲に配設される12個の第3植毛穴45cにそれぞれ植設される第3毛束47cを有する。中心軸Cと12個の第3植毛穴45cの中心線C3は、平面視においてそれぞれ正十二角形の中心位置と頂点位置とに位置している。さらに、各第3植毛穴45cの周囲に配設される18個の第4植毛穴45dにそれぞれ植設される第4毛束47dを有する。中心軸Cと18個の第4植毛穴45dの中心線C4は、平面視においてそれぞれ正十八角形の中心位置と頂点位置とに位置している。
【0133】
第1毛束47aに束ねられる第1毛46aの毛丈である第1毛丈H1は、第2植毛穴45bに植設される第2毛束47bに束ねられる第2毛46bの平均毛丈である第2毛丈H2よりも短い。第2植毛穴45bは、第1中心線C1と最も近い位置の中心線である第2中心線C2を有する。また、第2~第4毛46b,46c,46dの先端である毛先端46eは仮想円錐体COの無数の母線である円錐体母線Buが形成する円錐体外周面Su上に位置する。そして、第3毛束47cに束ねられる第3毛46cの毛丈は第2毛46bの毛丈よりも短く、第4毛束47dに束ねられる第4毛46dの毛丈は第3毛46cの毛丈よりも短い。
【0134】
このように第1毛丈H1が第2毛丈H2よりも短いため、第1毛46aの集合体の先端部分は第2毛46bの集合体に囲まれる。これにより、第1毛束47aと各第2毛束47bとは下向きに凹むスペースである凹状スペース49を形成する。
図20(a)の斜視図は斜め上方から視た凹状スペース49を示している。そして、毛46の集合体は、巨視的に上側部分が略円錐台状に形成され且つそれよりも下方の部分が略円柱状に形成されるとともに、略円錐台状の先端から下向きに凹む凹状スペース49を有するように形成される。
【0135】
この実施形態に係る歯ブラシ41の他の構成は第1~第3の実施形態と共通とする。
【0136】
以上の構成により、歯ブラシ41は、第2~第4毛46b~46dの毛先端46eが円錐体外周面Su上にそれぞれ位置することにより第2~第4毛46b~46dの集合体の一部又は全体が円錐体の一部を成すように形成されている。そのため、この第2~第4毛46b~46dの集合体が、中心軸Cから近い位置に植毛されている毛46から順に口腔内の狭小部位に入り込んで清掃することができる。
【0137】
また、歯ブラシ41は、ヘッド部42が複数の植毛穴45を有し、これらのそれぞれに毛束47が植設される。そのため、植毛穴45の穴数を増やして毛束47の束数を増やすことにより、先端が、円錐体外周面Su上に位置する毛46の本数を増やすことができる。これにより、一部又は全体が仮想円錐体COの一部を成す毛46の集合体の表出面積を拡げることができ、そのぶん、一回の操作によってより広い面積の歯Tの歯面Tfを清掃することができる。
【0138】
また、第2~第4毛46b~46dの集合体の一部又は全体が仮想円錐体COの一部を成すことにより、毛束47の数を増やすときでも、中心軸Cから遠くに位置する毛46ほど短く、使用者の歯Tが各毛46の毛先端46eに干渉する度合は低い。
【0139】
さらに、歯ブラシ41は、凹状スペース49を有し、この凹状スペース49に固体又は半固体の薬剤を保持することにより、歯ブラシ41の使用中に使用者の唾液によって溶け出したこの薬剤を口腔内の部位に供給することができる。
【0140】
しかも、歯ブラシ41は、第2~第4毛46b~46dの毛先端46eが円錐体外周面Su上にそれぞれ位置することにより、外用薬である薬剤を中心軸Cに近い位置において保持することができる。その結果、使用者は、薬剤を届けようとする口腔内の部位に中心軸C近辺が当たるように歯ブラシ41を把持することにより、溶け出した薬剤を狙い通りの部位に届けることができる。そして、同時に、第2~第4毛46b~46dの毛先端46eを薬剤を届ける部位及びその近傍の部位に当接させることができる。
図20(b)の模式図は、溶け出した薬剤を狙う部位である歯周ポケットPに届けるとともに毛46を歯周ポケットP及びその近傍の歯、歯茎などに当接させる状態を表わす。こうして、歯ブラシ41によって、使用者は口腔内の清掃と同時に効率良く外用薬を服用することができる。
【0141】
特に、歯ブラシ41のように、凹状スペース49が第1毛束47aの上方とその近傍の空間に限られているため、例えば、第1毛束47aを挟んで位置する第2毛束47bと別の第2毛束47bとの間隔が短い。それにより、これらの第2毛束47bの先端部分同士が寄り集まり易く、使用者は、薬剤の近い箇所においてより多くの毛を集め、集中的に一箇所に当接させることができる。こうして、歯ブラシ41によって、使用者はより効率良く口腔内の清掃と外用薬の服用とを行うことができる。
【0142】
この実施形態に係る歯ブラシ41を製造するための歯ブラシの製造方法S410A,S410Bを表わすフローをそれぞれ
図21及び
図22に示す。歯ブラシの製造方法S410A,S410Bには、第1毛束47aを植設する前に第1毛束47aのための用毛である第1用毛48aを毛切りする方法である第1の歯ブラシの製造方法S410Aと、植設した後に第1用毛48aを毛切りする方法である第2の歯ブラシの製造方法S410Bとがある。いずれの方法も、
図23(a)が示すような複数本の切り揃えられていない用毛48と、ヘッド部42の植毛面44に複数の植毛穴45が穿設された歯ブラシ41の本体とを準備するステップを含む準備工程S420を有する。
【0143】
また、第1の歯ブラシの製造方法S410Aは、植設前毛切りステップS430Ak、第1植設ステップS431A及び第2植設ステップS432を含む第1の植設工程S430Aを有する。植設前毛切りステップS430Akにおいては、切り揃えた後に第1毛46aとなる用毛である第1用毛48aを所定の長さまで切り揃える。そして、第1植設ステップS431Aにおいては、その第1毛46aを束ねた第1毛束47aを第1植毛穴45aに植設する。また、第2植設ステップS432においては、第1用毛48a以外の用毛18を束ねるとともに、これらが束ねられた用毛毛束である第2~第4用毛毛束48Tb~48Tdを各植毛穴45b~45dに植設する。
【0144】
一方で、第2の歯ブラシの製造方法S410Bは、第1植設ステップS431B、植設後毛切りステップS430Bk及び第2植設ステップS432を含む第2の植設工程S430Bを有する。第1植設ステップS431Bにおいては、第1用毛48aを束ねた用毛毛束である第1用毛毛束48Taを第1植毛穴45aに植設する。そして、植設後毛切りステップ430Bkにおいては、その第1用毛48aを所定の長さまで切り揃えることにより、植設された状態の第1毛束47aを形成する。第2植設ステップS432は第1の歯ブラシの製造方法S410Bと共通する。各歯ブラシの製造方法S410A,S410Bにおける第2植設ステップ432を経た状態を
図23(b)に示す。
【0145】
そして、いずれの方法も円錐形毛切り工程S440を有する。円錐形毛切り工程S440は、第2~第4用毛毛束48Tb~48dに束ねられる用毛48の先端部分を切り揃えるステップを含む。このとき、仮想円錐体COの円錐体母線Buにより形成される円錐体外周面Suに合わせて用毛48を切り揃える。例えばこの円錐体外周面Suと略同形且つ略同大の内周面の凹状部を有する刃物を用い、この刃物を前記内周面の中心軸を中心にして回転させる、刃物の代わりに歯ブラシ41を回転させる、または、これらの両方を回転させる。
図23(c)は、符号Dによって刃物の前記内周面を模式的に示し、また、第1毛束47aと、第2~第4用毛毛束48Tb~48dに束ねられる用毛48が切り揃えられることにより形成された第2~第4毛束47b~dとを示す。
【0146】
また、円錐形毛切り工程S440においては、切り揃えた後において、第1毛46aを除いた毛46b~46dの先端部分が傾斜端面46tを持つように用毛48を切り揃える。傾斜端面46tは
図5(b)に例示した通りである。
【0147】
この実施形態に係る歯ブラシの製造方法S410A,S410Bの他の構成は第1~第3の実施形態と共通とする。
【0148】
[変形例]
本発明の第4の実施形態の変形例を
図19(a)(b)、
図21及び
図22を用いて例示する。特に記載をしない限り、これら変形例における歯ブラシ411,412の構成は、上述の歯ブラシ41の構成と共通する。
【0149】
第1の変形例において、歯ブラシ411の各毛461の線径は略同一である。その一方で、第2の実施形態における第2植毛穴25b,251b以降の植毛穴と同様に、本変形例における第3植毛穴451cの穴径は第2植毛穴451bの穴径よりも小さい。また、第4植毛穴451dの穴径は第3植毛穴451cの穴径よりも小さい。そして、各第3植毛穴451cに植設される第3毛束471cに束ねられる第3毛461cの本数は、第2植毛穴451bに植設される第2毛束471bに束ねられる第2毛461bの本数よりも少ない。また、各第4植毛穴451dに植設される第4毛束471dに束ねられる第4毛461cの本数は、第3毛束471cに束ねられる第3毛461cの本数よりも少ない。
【0150】
この第1の変形例に係る歯ブラシ411を製造するための歯ブラシの製造方法S410A,S410Bは、
図21及び
図22が示すように、準備工程S4220、植設工程S430A,S430B及び円錐形毛切り工程S440を含む。この植設工程S430A,S430Bの第2植設ステップS432において、各第3植毛穴451cに植設される第3用毛毛束481Tcに束ねられる第3用毛481cの本数は、第2植毛穴451bに植設される第2用毛毛束481Tbに束ねられる第2用毛481bの本数よりも少ない。また、各第4植毛穴451dに植設される第4用毛毛束481Tdに束ねられる第4用毛481dの本数は、各第3用毛毛束481Tcに束ねられる第3用毛481cの本数よりも少ない。
【0151】
次に、第2の変形例において、第3の実施形態における第2毛束37b,371b,372b以降の毛束に束ねられる毛と同様に、本変形例における各第3毛束472cに束ねられる第3毛462cの線径は第2毛束472bに束ねられる第2毛462bの線径よりも小さい。また、各第4毛束472dに束ねられる第4毛462dの線径は第3毛462cの線径よりも小さい。
【0152】
この第2の変形例に係る歯ブラシ412を製造するための歯ブラシの製造方法S410A,S410Bは、
図21及び
図22が示すように、準備工程S420、植設工程S430A,S430B及び円錐形毛切り工程S440を含む。この植設工程S430A,S430Bの第2植設ステップS432において、各第3用毛毛束482Tcに束ねられる第3用毛482cは、各第2用毛毛束482Tbに束ねられる第2用毛482bと比べて線径が小さい。また、各第4用毛毛束482Tdに束ねられる第4用毛482dは、各第3用毛毛束482Tcに束ねられる第3用毛482cと比べて線径が小さい。
【0153】
なお、本明細書において第1植毛穴及び第1毛束を、それぞれ中央植毛穴及び中央毛束に読み替えてもよい。また、第2植毛穴及び第2毛束、第3植毛穴及び第3毛束又は第4植毛穴及び第4毛束を、それぞれ周囲植毛穴及び周囲毛束に読み替えてもよい。また、第2植毛穴及び第2毛束並びに第3植毛穴及び第3毛束を、それぞれ第1の周囲植毛穴及び第1の周囲毛束並びに第2の周囲植毛穴及び第2の周囲毛束に読み替えてもよい。さらに、第2植毛穴及び第2毛束並びに第4植毛穴及び第4毛束を、それぞれ第1の周囲植毛穴及び第1の周囲毛束並びに第2の周囲植毛穴及び第2の周囲毛束に読み替えてもよい。
【0154】
また、植毛面の外周部分に配置する植毛穴である第4植毛穴を外周植毛穴に読み替えてもよい。そのとき、この第4植毛穴よりも植毛面の内側に配置される植毛穴を内周植毛穴に読み替えてもよい。
【0155】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態を
図24の平面図を用いて説明する。
図24の歯ブラシ51は先端にヘッド部52を有するとともに、図示はしないが、ヘッド部52から基端に向けて延在するハンドル部53を有する。ヘッド部52は上向きに面する植毛面54を有する。植毛面54には複数の植毛穴55が下向きに穿設される。各植毛穴55は上下方向の中心線を有する略円柱状に形成される。また、各植毛穴55には毛束57が植設される。各毛束57には複数本の毛56が束ねられる。
【0156】
本実施形態においては、第4の実施形態の例と異なり、図の中央に3束の第1毛束57aがそれぞれ第1植毛穴55aに植設される。仮想円錐体COの中心軸Cは、3個の第1植毛穴55aの第1中心線C1がそれぞれ頂点位置に位置する正三角形の中心に位置している。そして、第2植毛穴55b~第4植毛穴55d及び第2毛束57b~第4毛束57dの平面視における配置は、第1の実施形態における第3の変形例に係る歯ブラシ113の配置と共通する。しかし、側面視においては、各第1毛束57aに束ねられる第1毛56aの毛丈である第1毛丈H1は、第2植毛穴55bに植設される第2毛束57bに束ねられる第2毛56bの平均毛丈である第2毛丈H2よりも短い。第2植毛穴45bは、第1中心線C1と最も近い位置の中心線である第2中心線C2を有する。また、第2~第4毛56b,56c,56dの先端である毛先端56eは仮想円錐体COの無数の母線である円錐体母線Buが形成する円錐体外周面Su上に位置する。そして、第3毛束57cに束ねられる第3毛56cの毛丈は第2毛56bの毛丈よりも短く、第4毛束57dに束ねられる第4毛56dの毛丈は第3毛56cの毛丈よりも短い。
【0157】
このように第1毛丈H1が第2毛丈H2よりも短いため、3束の第1毛束57aに束ねられる第1毛56aの集合体の先端部分は、9束の第2毛束57bに束ねられる第2毛56bの集合体に囲まれる。これにより、各第1毛束57aと各第2毛束57bとは下向きに凹むスペースである凹状スペース59を形成する。
【0158】
この実施形態に係る歯ブラシ51の他の構成は第4の実施形態と共通とする。また、この実施形態においても、第4の実施形態における第1及び第2の変形例と同様の変形例を適用してもよい。すなわち、第2毛束571b~第4毛束571dのそれぞれに束ねられる第2毛561b~第4毛561dの本数が順に少なくてもよい。また、第2毛束572b~第4毛束572dのそれぞれに束ねられる第2毛562b~第4毛562dの線径が順に小さくてもよい。
【0159】
この実施形態に係る歯ブラシ51を製造するための歯ブラシの製造方法S510A,S510Bを表わすフローは、
図21及び
図22に示す第4の実施形態に係る歯ブラシ41を製造するための歯ブラシの製造方法S410A,S410Bを表わすフローと同様である。すなわち、歯ブラシの製造方法S510A,S510Bには、第1毛束57aを植設する前に第1毛束57aのための用毛である第1用毛58aを毛切りする方法である第1の歯ブラシの製造方法S510Aと、植設した後に第1用毛58aを毛切りする方法である第2の歯ブラシの製造方法S510Bとがある。いずれの歯ブラシの製造方法S510A,S510Bとも、準備工程S520、植設工程S530A,S530B及び円錐形毛切り工程S540を有する。
【0160】
その他にも、この実施形態に係る歯ブラシの製造方法S510A,S510Bの構成は、3束の第1毛束57a又は第1用毛毛束58aを植設する以外、第4の実施形態と共通とする。
【0161】
なお、第4の実施形態において述べた中央植毛穴、中央毛束、周囲植毛穴、周囲毛束、第1の周囲植毛穴、第1の周囲毛束、第2の周囲植毛穴及び第2の周囲毛束への読み替えを第5の実施形態についても適用することができる。さらに、同じく内周植毛穴及び外周植毛穴への読み替えを第5の実施形態についても適用することができる。
【0162】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0163】
例えば、毛の集合体は、巨視的に上側部分が略円錐体状又は略円錐台状に形成されるとともにそれよりも下方の部分が略柱状に形成されるだけでなく、全体が略円錐体状又は略円錐台状に形成されてもよい。
【0164】
また、仮想円錐体COの中心軸Cと第1植毛穴の第1中心線C1とが一致する例、または、同じく中心軸Cと正三角形の中心とが一致する例を挙げたが、第1毛の毛丈、第2毛の毛丈、第3毛の毛丈及び第4毛の毛丈の順に長ければ、中心軸Cはこれら第1中心線C1又は正三角形の中心とずれていてもよい。
【0165】
また、第2の実施形態における第2毛束以降の毛束並びに第4及び第5の実施形態における第3毛束以降の毛束に、それらの内側の毛束よりも少ない本数の毛が束ねられる例を挙げたが、これらの本数は、内側の毛束よりも少なくない場合があってもよい。すなわち、毛丈が短いことによって歯以外の口腔内の部位を傷める虞が小さければ、例えば、第2の実施形態における第1毛束と第2毛束との本数、第2の実施形態の変形例における第1~第3毛束の本数、第4の実施形態の第1の変形例における第2及び第3毛束の本数などが同一であってもよい。
【0166】
また、第3の実施形態及びその変形例における第2毛束以降の毛束並びに第4及び第5の実施形態における第3毛束以降の毛束に束ねられる毛の線径が、それらの内側の毛束に束ねられる毛の線径よりも小さい例を挙げたが、これらの線径は、内側の毛束に束ねられる毛よりも小さくない場合があってもよい。すなわち、毛丈が短いことによって歯以外の口腔内の部位を傷める虞が小さければ、例えば、第3の実施形態及びその第1の変形例における第1毛の線径と第2毛の線径、その第2の変形例における第1~第3毛の線径、第4の実施形態の第2の変形例における第2毛の線径と第3毛の線径などが同一であってもよい。
【0167】
また、3個の第1植毛穴が穿設される例を挙げたが、第1植毛穴は、それらの第1中心線C1が正三角形以外の正多角形の頂点に位置するように、4個以上穿設されてもよい。また、第2以降の植毛穴も、例示した数以外の数の植毛穴が穿設されてもよい。
【0168】
また、第1~第3毛束若しくは第1~第3-2毛束が植設される例又は第1~第4毛束が植設される例を挙げたが、毛の集合体が歯Tに干渉する影響が大きくなければ、第4毛束の周りにも第5以降の毛束を植設してもよい。
【0169】
さらに、第1~第3毛束、第1~第3-2毛束、第1~第4毛束又は第1~第5以降の毛束に束ねられる毛は、各毛束単位における材質が同一でなくともよく、また、毛束毎の毛の材質が均一でなくともよい。第3の実施形態及びその変形例、第4の実施形態の第2の変形例並びに第5の実施形態の一部の例において、毛の線径を変えることによってJISによる硬さを変化させるが、例えば、毛束毎に毛の材質を変える又は各毛束に束ねられる毛毎に材質を変えることによって、これらの実施形態と同様にJISによる硬さを変化させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明は、使用者の口腔内の汚れを清掃するための歯ブラシに利用できる。
【符号の説明】
【0171】
11,21,31,41,51 歯ブラシ
12,22,32,42,52 ヘッド部
14,24,34,44,54 直毛面
15,25,35,45,55 植毛穴
16,26,36,46,56 毛
17,27,37,47,57 毛束
18,28,38,48,58 用毛
18T,28T,38T,48T,58T 用毛毛束
49,59 凹状スペース
CO 仮想円錐体
T 歯
Tf 歯面
S110,S210,S310,S410A,S410B,S510A,S510B 歯ブラシの製造方法
S120,S220,S320,S420,S520 準備工程
S130,S230,S330,S430A,S430B,S530A,S530B 植設工程
S140,S240,S340,S440,S540 円錐毛切り工程