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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125540
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】植物栽培設備
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/24 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
A01G9/24 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033404
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 次郎
(72)【発明者】
【氏名】坂井 義明
(72)【発明者】
【氏名】山本 和彦
(72)【発明者】
【氏名】手塚 達也
(72)【発明者】
【氏名】武田 康志
(72)【発明者】
【氏名】松下 悟
(72)【発明者】
【氏名】多田 誠人
(72)【発明者】
【氏名】大越 崇博
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029MA06
2B029MA08
2B029NA02
2B029NB05
2B029NB07
(57)【要約】
【課題】飽差を基準として段階的に換気制御することにより、温度、湿度調整を徐々に変更する制御を行うことを課題とする。
【解決手段】栽培室1の屋根部に設ける天窓35a,35bを開閉自在に構成し、温度センサ37や湿度センサ36による温度検出値又は湿度検出値と予め設定した温度設定値α又は湿度設定値βと比較し、いずれかが設定値α,βを超えると天窓35a,35bを開くよう制御する植物栽培設備において、栽培室1内に飽差センサ51を設け、飽差検出値が予め設定した規定値範囲内であるか否か判定され、規定値範囲外であると判定されると天窓35a,35bを開くが、規定値範囲内であると判定されると天窓5a,35bを閉じるよう構成した。
【選択図】 図6


【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培室(1)に設ける天窓(35a,35b)を開閉自在に構成し、温度センサ(37)や湿度センサ(36)による温度検出値又は湿度検出値と予め設定した温度設定値(α)又は湿度設定値(β)と比較し、いずれかが設定値(α,β)を超えると天窓(35a,35b)を開くよう制御する植物栽培設備において、栽培室(1)内に飽差センサ(51)を設け、飽差検出値が予め設定した規定値範囲内であるか否か判定され、規定値範囲外であると判定されると天窓(35a,35b)を開くが、規定値範囲内であると判定されると天窓(35a,35b)を閉じるよう構成したことを特徴とする植物栽培設備。
【請求項2】
制御部(C)には前記温度設定値(α)の年間に渡る換気設定温度を記憶する構成とした請求項1に記載の植物栽培設備。
【請求項3】
制御部(C)は各設定された日付から次の日付までの間は滑らかに変化するよう演算によって温度設定する構成とした請求項2に記載の植物栽培設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培設備に関する。
【背景技術】
【0002】
植物栽培設備において、温室内に設置された気温センサによる検出値と予め設定した換気開始温度及び換気停止温度とを比較することによって換気装置の運転を制御したり、また、栽培室内の温湿度より飽差を算出しミスト発生装置を制御する構成がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-93985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、温室の換気を気温で制御でき、また飽差基準でミスト発生を制御できる効果がある。
【0005】
しかしながら、ミスト装置では、部分的に湿度が高くなったり、あるいは調整が極端になったりし、植物にストレスを与える可能性が高い。
【0006】
本発明は、飽差を基準として段階的に換気制御することにより、温度、湿度調整を徐々に変更する制御を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、請求項1記載の発明は、栽培室1に設ける天窓35a,35bを開閉自在に構成し、温度センサ37や湿度センサ36による温度検出値又は湿度検出値と予め設定した温度設定値α又は湿度設定値βと比較し、いずれかが設定値α,βを超えると天窓35a,35bを開くよう制御する植物栽培設備において、栽培室1内に飽差センサ51を設け、飽差検出値が予め設定した規定値範囲内であるか否か判定され、規定値範囲外であると判定されると天窓5a,35bを開くが、規定値範囲内であると判定されると天窓5a,35bを閉じるよう構成した。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制御部Cには前記温度設定値αの年間に渡る換気設定温度を記憶する構成とした。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、制御部Cは各設定された日付から次の日付までの間は滑らかに変化するよう演算によって温度設定する構成とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によると、飽差を加味した天窓35a,35b開閉による制御によって、植物にストレスを与えにくい。
【0011】
請求項2に記載の発明によると、請求項1に記載の効果に加え、翌年以降も合理的な温度設定とすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によると、請求項2に記載の効果に加え、年間を通じて合理的な温度設定とすることができ、植物にストレスを与えない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態にかかる植物栽培設備の概要図である。
図2】同上植物栽培設備一部の概念図である。
図3】同上植物栽培設備一例の側断面を示す概要図である。
図4】同上植物栽培設備一例の平面を示す概要図である。
図5】(A)同上実施形態の遮蔽カーテンの平面図、(B)一部の側断面図である。
図6】同上実施形態における制御のフローチャート
図7】同上実施形態の一年の換気設定温度グラフである。
図8】同上の別例を示すグラフである。
図9】同上実施形態の氷室利用の栽培施設の概要図である。
図10】(A)同上実施形態の暖房用配管経路概要図、(B)従来の暖房用配管経路概要図である。
図11】同上実施形態のかん水配管一例を示す概要図である。
図12】同上実施形態の雨樋支持構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態の温室設備について以下説明する。
【0015】
図1は栽培施設の一例を示すものであり、この栽培施設は、温室である栽培室1と、該栽培室1に隣接する出荷室2とを備えている。前記栽培室1内の中央には作業者又は作業移動車(作業台車)3あるいは防除作業車等が通過できるメイン通路4を設けており、このメイン通路4は、路面がコンクリートで構成されたコンクリート通路である。メイン通路4の両側の側方位置には、栽培ユニットとなる栽培ベッド5を多数列配置した作物を栽培するための栽培スペース6を構成している。尚、前記栽培ベッド5は培地となるロックウールで形成された栽培床部であり、出荷室2内の養液供給装置7から各栽培ベッド5へ養液が供給される構成となっている。
【0016】
また、メイン通路4の両端には開閉扉を備える栽培室1への出入り口8を設け、一方の出入り口8を介して隣接する出荷室2へ行き来できる構成となっている。尚、他方の出入り口8は、栽培施設の屋外から出入りできる構成となっている。そして、作業移動車3をメイン通路4から各々の栽培ベッド5の間のサブ通路9に移動させ、該サブ通路9で栽培ベッド5に沿って作業移動車3を移動させながら栽培する植物に対する各種作業を行うことができる。サブ通路9は、各々の栽培ベッド5の左右間で前後方向に形成される通路となる。尚、作業移動車3は、サブ通路9上に敷設された温室全体を暖房する左右の暖房用管を走行用のレール13として走行する。
【0017】
前記出荷室2内には、前述した養液供給装置7と、収穫されたトマト等の収穫物(果実)を重量や大きさあるいは等級別に選別する選別装置10とを備えている。尚、該選別装置10が、栽培された作物を出荷前に処理する前処理装置となる。選別装置10は、収穫物を搬送して選別する選別コンベア11と、該選別コンベア11の両側の側方に設けられた各階級毎の収穫物収容部12とを備えて構成され、選別コンベア11から各収穫物収容部12へ収穫物を供給して各階級に選別する構成となっている。尚、前記選別コンベア11は、平面視でL字状に屈曲した構成となっている。また、各々の収穫物収容部12には収穫物を収容する収容箱を設けて、この収容箱ごとに収穫物を出荷すればよい。
【0018】
栽培ベッド5の上側には、該栽培条に沿う誘引ワイヤ15を設け、栽培される植物Pの栽培株は、誘引ワイヤ15により誘引される構成となっており、誘引ワイヤ15から誘引フック16を介して垂れ下がる誘引紐17により誘引される。尚、誘引フック16は、誘引ワイヤ15に吊り下げられる構成であり、巻き付けた誘引紐17を適宜繰り出して下方に垂れ下がらせる周知の構成となっている。また、植物が所定の高さ(誘引フック16の近く)まで成長した以降は、誘引フック16から誘引紐17を繰り出しながら、順次誘引紐17を前記複数の栽培株の配列方向、すなわち栽培ベッド5の長手方向にずらせて植物の高さを低下させ、植物を継続的に栽培する。従って、例えばトマトを栽培する場合、トマトの茎が栽培ベッド5から誘引紐17を伝って伸長することになる。
【0019】
作業移動車3は、前後左右の走行車輪20と、作業者が搭乗する作業台21と、走行車輪20を駆動する駆動源となる電動モータを備え、作業者が作業台21に搭乗し機体を走行させながら、栽培植物の葉欠き、芽欠き及び収穫等の作業を行う周知の構成となっている。走行車輪20は、前記レール13に沿って移動できる。
【0020】
栽培室1は、鉄骨構造で枠組みされ、四周及び天井部にビニールを張設して温室とし、その平面視は矩形に構成され、長辺を東西方向に短辺を南北方向に設定している。栽培室1の外側四周において、多数の細霧噴出ノズル25を備えた細霧噴出手段26を備える。細霧噴出手段26は後述の水圧送ポンプや電磁弁を伴うものである。そして細霧噴出手段26は、上記長辺側の両外側面の第1細霧噴出手段26a及び第2細霧噴出手段26b、及び上記短辺側の両外側面の第3細霧噴出手段26c及び第4細霧噴出手段26dである。すなわち、図例では、方角北に面(北面)して第1細霧噴出手段26aを配置するもので、以下、南面に第2細霧噴出手段26bを、東面に第3細霧噴出手段26cを、西面に第4細霧噴出手段26dを配置する。これら第1~第4細霧噴出手段26a~26dの夫々には、第1電磁弁~第4電磁弁27a~27dを対応させてあり、ポンプ28駆動によって水タンク29から給水される水を第1~第4細霧噴出手段26a~26dに独立的に供給し又は遮断できる構成としている。ポンプ28駆動によって給水された水は第1電磁弁27aを介して第1細霧噴出手段26aに供給され複数の細霧噴出ノズル25から水は細霧化され噴出される。同様に、第2電磁弁27bを介して第2細霧噴出手段26bの細霧噴出ノズル25から、第3電磁弁27cを介して第3細霧噴出手段26cの細霧噴出ノズル25から、第4電磁弁27dを介して第4細霧噴出手段26dの細霧噴出ノズル25からそれぞれ水が細霧化され噴出される。
【0021】
噴出される細霧は外気温で気化し、その気化熱により栽培室1のビニール外側の空気を外気温度より低い温度に冷やすこととなる。そして、冷やされた空気は、栽培室1の側壁に設ける外気導入口30から栽培室1内に入り、栽培室1内温度を低下させることができる。したがって、夏季の日光によって昇温した栽培室1内を所謂細霧冷房することができ、植物生育環境や作業者の作業環境の改善を図ることができる。なお、外気導入口30は栽培室1の四周側壁に構成するもので、開閉自在の窓形態や冷気を導入し易く低位置に形成する通気孔形態など種々である。なお図例では、側壁の下方に作業者の足元程度の高さとして複数の開閉プレートを可動自在とした公知のブラインドスクリーン形態としている。
【0022】
本実施例では、栽培室1の四周に第1細霧噴出手段26a~第4細霧噴出手段26dを配置し、独立的に細霧噴出できる構成としたから、四周全体はもちろん必要な場所に選択的に細霧冷房を施すことができる。風向及び風速を検出できる風向計31を備え、風向と風速の検出値を制御部Cに入力できる構成とし、この検出値にもとづいて前記4台の第1電磁弁~第4電磁弁27a~27dのON,OFFを制御するものである。例えば所定風速以上の場合に、風向が北の場合には第1電磁弁27aをON他の制御弁27b~27dをOFFとし、第1細霧噴出手段26aのみを作動させる。このように構成すると、風向北の風を受けて細霧冷房された空気は栽培室1内に導入し易い。また、他の位置で細霧冷房された空気は風に流されて栽培室1内に導入し難い。したがって効率的な細霧噴出を行うことができる。図5に風向きと第1細霧噴出手段26a~第4細霧噴出手段26dの作動一例を示す。
【0023】
前記栽培室1の屋根部は左右傾斜する天窓35a,35bに構成し、それぞれ棟部中心に開閉自在に設けられる。湿度センサ36や温度センサ37あるいは後述の日射量センサ45の検出値によって開閉制御される。すなわち、湿度や温度が所定以上に達すると天窓35a,35bは開かれて換気され、これらが所定範囲に収まると閉じられる構成である。なお、天窓35a,35bの開閉は駆動手段38(例えば正逆転駆動モータ)による。 図5において、栽培室1の天井1s部には、複数の遮光カーテン40を所定間隔おきに設けている。この遮光カーテン40は、巻取軸41に巻き取られて開くようになっている。栽培室1内の一端にはカーテン開閉モータ42を設けており、該モータ42の駆動によりカーテン開閉ワイヤ43を介して複数の遮光カーテン40を同時に巻取軸41から引き出す構成となっている。尚、この複数の遮光カーテン40により、栽培室1の天井部の全面を遮光することができる。カーテン開閉モータ42部には、該モータ42の回転位置により遮光カーテン40の開閉度(開閉量)を検出する遮光カーテン開閉センサ44を設けている。そして栽培室1外の南側には、日射量センサ45を設けている。この日射量センサ45により検出される日射量に基づいて、遮光カーテン40が所望の開閉度となるよう、カーテン開閉モータ42を駆動制御して遮光カーテン40の開閉度を変更し、日射量が大きいときは遮光カーテン40を大きく閉じて遮光率を上げるようになっている。また、遮光カーテン開閉センサ44の検出情報に基づいて、所定以上の遮蔽状態であるときに、前記第1細霧噴出手段26a~第4細霧噴出手段26dによる細霧冷房の実施を許容する構成とする。夏季の定植直後の植物の葉は薄く柔らかいため、細霧が付着すると葉やけを生じやすいが、上記のように構成すると、遮蔽状態になければ細霧冷房を実施できないため当該葉やけを回避できる。
【0024】
ところで、上記遮光カーテン40を穴あきパネルとし、上面に高反射フィルムを貼付し、下面に銀イオンを吹き付け加工した構成としてもよい。このように構成すると、上面の加工構成によって植物の生育促進,電気代節約に寄与し、下面の加工によってかびや汚れを予防でき、清掃作業の簡易化が図れる。
【0025】
また、栽培室1内に飽差センサ51を設け、制御部Cに検出値を送信し、制御部Cは、飽差を判定する。飽差が規定値範囲、すなわち3~6g/mでないと光合成できない知見に基づき、検出した飽差と予め設定した設定飽差の差に基づいて湿度補正、すなわち前記第1細霧噴出手段26a~第4細霧噴出手段26dによる細霧を制御することで、植物の生長量のコントロールが可能となる。
【0026】
また、上記飽差センサ51の検出結果は、前記天窓35a,35bの開閉制御においても有効に用いられる。図6のフローチャートに示すように、制御部Cは、湿度センサ36、温度センサ37及び飽差センサ51の各検出値を読み込み(S101)、温度検出値及び湿度検出値と予め設定した温度設定値α、湿度設定値βと比較し(S102,S103)、いずれかが設定値α,βを超える場合は、S104に移行して飽差検出値が前記規定値範囲内であるか否か判定され、規定値範囲外であると判定されると、天窓駆動手段38に開出力されるものである(S105)。S104で飽差検出値が前記規定値範囲内であると判定されると、当該環境条件を維持すべく天窓駆動手段38に開出力はなされないよう構成されている。したがって、換気のため天窓35a,35bを開くことで温度と湿度が同時に変わるため調整し難いが、上記のように飽差を基準とすることで天窓35a,35b開閉による制御が容易となる上、植物にストレスを与えにくい。
【0027】
なお、前記天窓駆動手段38としての正逆転モータ38a,38bは、可変モータ形態とし、前記飽差検出値と規定値との差の大小に応じて駆動速度を変更する構成としている。このように構成すると、飽差検出値と規定値との差が小さい場合は極力モータ速度を低下して換気による悪影響を防止することができ、ひいては植物にストレスを与えない。
【0028】
次いで、検出温度と予め設定した温度設定値αについて改良した環境制御について説明する。図7に示すグラフは、天窓35を開いて換気する換気設定温度の年間の推移を示すものである。夏場は冬場に対して高い設定としている。予め集積した換気設定温度を記憶することにより、翌年以降、対応する日の換気温度として採用できる。なお各設定された日付から次の日付までの間は滑らかに変化するよう演算によって温度設定している。例えば2月10日の換気設定温度は20℃とし、3月10日は21℃とすると、0.03℃/日であるから、実質制御可能な温度となるよう例えば4日分積算して2月14日は20.1℃に設定する。すなわち数値差を日数で割り規定の数値まで積算するものである。このように構成することで、翌年以降も合理的な温度設定とすることができる。
【0029】
図8は季節ごとの標準設定として記憶する例である。10月1日は秋設定の例、12月10日は冬設定の例、以下3月1日は春設定の例、5月20日は夏設定の例となる。そして設定した季節ごとの標準設定に適宜の期間を設け、その間は標準設定のままで設定するものである。適宜期間に該当しない狭間期間においては前記の滑らかな変化設定を利用して設定できる。また、図8の8月15日の例は定植後の育苗設定とし、植物の状態が異なる時期は季節による場合とは別に設定時期を設けておくものである。このように構成することで、翌年以降も合理的な温度設定とすることができる。
【0030】
上記のように、年間にあるいは季節毎に換気設定温度を設定するが、天窓35の開閉制御は温度湿度に加えて前記飽差検出に基づくものとし、年間を通じて合理的な温度設定とすることができ、植物にストレスを与えない。
【0031】
次いで、図9に基づき氷室の雪を夏季の栽培室1冷却に利用する構成について説明する。氷室55で溶けた冷水は熱交換ポンプ56を経由して熱交換器57に至り熱交換された冷水が栽培室1に供給される構成である。なお、熱交換器57の熱交換水は原水タンク58に貯水され適宜に養液として利用される構成である。このように構成すると、栽培室1内における植物を高温障害になることを防ぐことができる。また、氷室55で溶けだした水は純度が高いので熱交換して利用した後は植物に潅水する養液として利用することで有効利用できる。
【0032】
前記熱交換システムには温水ボイラ59を備え、主として冬季に利用する。温水は熱交換器57にて熱交換され温水が栽培室1に供給されることとなる。
【0033】
図10(A)は温水ボイラ59Aの湯を循環する暖房制御における配管60への供給方法の改良に関する。ボイラ59Aの湯はポンプ61、第1の三方切替弁62を介して配管60の第1管路60a側に又は第2管路60b側に供給でき、第2三方切替弁63を経てボイラ59Aに還元される。第1管路60aと第2管路60bは途中放熱管路60cを有して連通している。したがって、図10(B)の従来構成の場合には循環経路が一定のため強風側が常時低温状態となる欠点があるが、上記図10(A)の場合には、温水が第1管路60a→放熱管路60c→第2管路60bの経路を辿るか、第2管路60b→放熱管路60c→第1管路60aの経路を辿るよう選択設定できる構成であるから、前記風向計31の検出情報及び風力情報に基づいて、強風の吹き付ける側にはボイラ59A直後の熱い温水が流通するよう設定することにより、強風下であっても栽培室1全体を暖房することができる。
【0034】
また、暖房制御においては、専用の空調設備を設置する構成があり、栽培室1の設定温度(例えば18℃)となるよう暖房温度制御される。ところが、無風時に対して強風状態では栽培室1の熱が奪われ易く、暖房機64は頻繁にON、OFFを繰り返すこととなる。通常設定温度に達すると暖房機64停止、設定温度マイナスT(例えば1℃)まで下がる(17℃=18℃-1℃)と暖房機(図示せず)を運転再開となるが、ここで、風速情報を加味し、強風時には温度変動が激しくなるため、変動を加味して19℃で暖房機を停止し、17℃で再開となるよう自動的に温度幅を広げていくものである。このように構成すると、暖房機のON、OFFの切替頻度を少なくできる。
【0035】
次いで、図11に基づき潅水用バッファタンクの溢出防止構成について説明する。かん水配管ライン65に圧力計66を設け、かん水戻りライン67に流量計68と調合電動弁69を設け、調合電動弁69は原水供給ライン70と連通している。配管の経年変化により配管の圧力が変わり余計な負荷がかかるようになるが、上記の構成では、圧力計66でかん水配管ライン65の圧力を測定し、圧力が高圧過ぎる場合には調合電動弁69を適度な開度で開いてバッファタンク71に戻す。そして調合電動弁69により原水供給は減少しバッファタンク71の溢出を防止できる。
【0036】
次いで、図12に基づき、園芸用大型栽培施設におけるアルミ製屋根の基礎不動沈下時の雨樋レベル修正構造について説明する。アルミ製屋根75の下端部において、桁76に対して雨樋77を支持させる構成とし、桁76は桁受けプレート78に支持されている。この桁受けプレート78は支柱79に対して上下調整可能に構成している。すなわち、支柱79の上部補強部79aに鞘管ナット80を固定し、一方桁受けプレート78の下面には調整ボルト81を固定し、この調整ボルト81を鞘管ナット80と螺合させている。符号82はロック用ナットである。したがって支柱79に対して桁受けプレート78および桁76を上下調整可能に構成している。したがって、支持地盤に不動沈下が起こり、雨樋77がレベル不良となり、オーバーフロー、滞留、逆流が起こった際、雨樋77部の防水工事や、大掛かりなものは支柱79部でレベル修正をしていたが、桁76と雨樋77のレベル調整で対応でき、作業が簡単容易である。
【符号の説明】
【0037】
1 栽培室
35a 天窓
35b 天窓
36 湿度センサ
37 温度センサ
51 飽差センサ
C 制御部
α 温度設定値
β 湿度設定値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12