(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125554
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】圧着端子、及び、端子付き電線
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20240911BHJP
H01R 13/03 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R13/03 A
H01R13/03 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033433
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】弓立 隆博
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB02
5E085BB12
5E085CC03
5E085CC09
5E085DD14
5E085EE23
5E085EE24
5E085FF01
5E085HH06
5E085HH22
5E085HH27
5E085JJ06
5E085JJ38
(57)【要約】
【課題】電線との接合部位において適正な導通性能を確保することができる圧着端子、及び、端子付き電線を提供することを目的とする。
【解決手段】端子付き電線1は、絶縁性を有する絶縁被覆部W2で導電性を有する導体部W1を被覆した電線Wと、電線Wに接続される圧着端子10とを備え、当該圧着端子10は、電線Wの導体部W1に圧着して接続される電線接続部200を備える。また、電線接続部200は、相対的に軟質に構成され、導体部W1が配置される基部201と、相対的に硬質に構成され、基部201の端部から導体部W1の延在方向(軸線方向X)と交差する方向(幅方向Y)にそれぞれ突出して形成され、基部201上に配置された導体部W1を覆って加締められたバレル片202とを含んで構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する電線の導体部に圧着して接続される電線接続部を備え、
前記電線接続部は、
相対的に軟質に構成され、前記導体部が配置される基部と、
相対的に硬質に構成され、前記基部の端部から前記導体部の延在方向と交差する方向にそれぞれ突出して形成され、前記基部上に配置された前記導体部を覆って加締められたバレル片とを含んで構成されることを特徴とする、
圧着端子。
【請求項2】
前記バレル片は、前記基部と同一材料で形成され、当該基部より圧縮されて硬化され相対的に薄肉に形成された薄肉硬化部を含んで構成される、
請求項1に記載の圧着端子。
【請求項3】
前記基部、及び、前記バレル片は、導電性を有し、硬度が相互に異なる材料でそれぞれ形成される、
請求項1に記載の圧着端子。
【請求項4】
前記バレル片は、前記基部と同一材料で形成され、
前記基部の表面、及び、前記バレル片の表面には、導電性を有し、硬度が相互に異なるめっき層がそれぞれ設けられる、
請求項1に記載の圧着端子。
【請求項5】
絶縁性を有する絶縁被覆部で導電性を有する導体部を被覆した電線と、
前記電線に接続される圧着端子とを備え、
前記圧着端子は、
前記電線の前記導体部に圧着して接続される電線接続部を備え、
前記電線接続部は、
相対的に軟質に構成され、前記導体部が配置される基部と、
相対的に硬質に構成され、前記基部の端部から前記導体部の延在方向と交差する方向にそれぞれ突出して形成され、前記基部上に配置された前記導体部を覆って加締められたバレル片とを含んで構成されることを特徴とする、
端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着端子、及び、端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、電線の導体部に圧着して接続される導体圧着部(電線接続部)が設けられた端子付き電線が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的な圧着端子は、例えば、電線の導体部を構成する素線の数が相対的に多い太物電線を圧着して接続する場合、素線の各々を適正に巻き込むことができず、これに起因して、電線と端子との間で適正な導通領域を確保することができない虞がある。そのため、電線と端子との接合部位における導通性能に関して更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、電線との接合部位において適正な導通性能を確保することができる圧着端子、及び、端子付き電線を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る圧着端子は、導電性を有する電線の導体部に圧着して接続される電線接続部を備え、前記電線接続部は、相対的に軟質に構成され、前記導体部が配置される基部と、相対的に硬質に構成され、前記基部の端部から前記導体部の延在方向と交差する方向にそれぞれ突出して形成され、前記基部上に配置された前記導体部を覆って加締められたバレル片とを含んで構成されることを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線は、絶縁性を有する絶縁被覆部で導電性を有する導体部を被覆した電線と、前記電線に接続される圧着端子とを備え、前記圧着端子は、前記電線の前記導体部に圧着して接続される電線接続部を備え、前記電線接続部は、相対的に軟質に構成され、前記導体部が配置される基部と、相対的に硬質に構成され、前記基部の端部から前記導体部の延在方向と交差する方向にそれぞれ突出して形成され、前記基部上に配置された前記導体部を覆って加締められたバレル片とを含んで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る圧着端子、及び、端子付き電線は、電線との接合部位において適正な導通性能を確保することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る端子付き電線を表す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る圧着端子を表す模式的な平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すA-A断面図であり、第1実施形態に係る電線接続部を表す模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る圧着端子の電線との接合部位を表す模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る電線接続部を表す模式的な断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の変形例に係る電線接続部を表す模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係る電線接続部を表す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[第1実施形態]
図1~
図4に示す本実施形態に係る端子付き電線1は、例えば、車両等に使用されるワイヤハーネス等に適用されるものである。ここで、ワイヤハーネスは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の電線Wを各装置に接続するようにしたものである。本実施形態の端子付き電線1は、電線Wと、当該電線Wの端末に接合された圧着端子10とを備える。
【0012】
電線Wは、車両に配索され、各装置を電気的に接続するものである。電線Wは、導電性を有する線状の導体部W1と、当該導体部W1の外側を覆う絶縁性を有する絶縁被覆部W2とを含んで構成される。電線Wは、絶縁被覆部W2によって導体部W1を被覆した絶縁電線である。
【0013】
導体部W1は、導電性を有する金属、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等からなる複数の素線W1aを束ねた芯線である。導体部W1は、当該複数の素線W1aを撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆部W2は、導体部W1の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆部W2は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。
【0014】
電線Wは、導体部W1の断面形状(延在方向と交差する方向の断面形状)が略円形状、絶縁被覆部W2の断面形状が略円環形状となっており、全体として略円形状の断面形状となっている。電線Wは、少なくとも一方の端末において、絶縁被覆部W2が剥ぎ取られており、導体部W1が絶縁被覆部W2から露出している。電線Wは、絶縁被覆部W2から露出している当該導体部W1の端末に圧着端子10が設けられる。
【0015】
圧着端子10は、電線Wにおいて、絶縁被覆部W2の端末から露出する導体部W1に対して接合されることで、当該電線Wと電気的に接続され、導通される部材である。圧着端子10は、
図1等に示すように、導電性を有する相手方端子やアース部材等の接続対象物と電気的に接続される電気接続部100と、電線Wと電気的に接続される電線接続部200とを含んで構成される。また、電線接続部200は、
図1、
図2に示すように、電線Wの導体部W1に圧着して接続されるワイヤバレル部210と、電線Wの絶縁被覆部W2に圧着して接続される被覆バレル部220と、ワイヤバレル部210及び被覆バレル部220を連結する連結部230とを含んで構成される。また、電線接続部200は、基部201上に配置された電線Wの端末を、基部201から延出するバレル片202、203で加締めることで、電線Wに対して圧着端子10を圧着することができるものである。
【0016】
本実施形態の圧着端子10は、電線接続部200において、導体部W1と効率的に凝着する基部201を軟らかく構成し、導体部W1を巻き込んで加締めることができるバレル片202を硬く構成することで、電線Wとの接合部位において適正な導通性能を確保することができる構成を実現したものである。以下、
図1~
図4を参照して、圧着端子10の各構成について詳細に説明する。
【0017】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「軸線方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、軸線方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、互いに直交する。また、軸線方向Xは、典型的には、電線Wの軸線方向であり、導体部W1の延在方向、基部201の延在方向等に相当する。また、幅方向Yは、基部201に対するバレル片202、203の延出方向等に相当する。以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、端子付き電線1が組み付けられた状態での方向として説明する。
【0018】
圧着端子10は、
図1、
図2に示すように、導電性を有する金属からなる一枚の板金を、各部に対応した形状にあわせて、打ち抜き加工、プレス加工、折り曲げ加工等の各種加工によって成形することで、各部が立体的に一体で形成される。なお、
図1は、電線Wに圧着端10を圧着した状態を示すものである。また、
図2は、電線Wに圧着端10を圧着する前の状態を示すものであり、圧着端10の電線接続部200が打ち抜かれて展開された状態を示すものである。
【0019】
電気接続部100は、端子付き電線1の端末側に設けられる部分である。本実施形態の端子付き電線1は、電気接続部100の形状が雌型の端子形状であり(
図1を参照)、雄型の端子形状の相手端子と電気的に接続される。なお、電気接続部100の形状は、特に限定されず、圧着端子10における接続対象物との接続形式は、特に限定されない。
【0020】
電線接続部200は、電気接続部100の一端側であり、相手端子と電気的に接続される側とは反対側に設けられ、当該電気接続部100と連結して形成されることで導通する部分である。本実施形態の電線接続部200は、
図1、
図2に示すように、基部201と、当該基部201から突出して形成される一対のバレル片202、及び、一対のバレル片203とを含んで構成される。そして、電線接続部200は、基部201上に配置された電線Wの端末が、一対のバレル片202、一対のバレル片203によって加締められることで、電線Wに対して圧着される。
【0021】
基部201は、軸線方向Xに沿って帯状に形成され、ワイヤバレル部210、連結部230、被覆バレル部220にわたって連続して形成されている。具体的に言えば、基部201は、軸線方向Xに沿って、ワイヤバレル部210を構成する第1基部201a、連結部230を構成する第2基部201b、及び、被覆バレル部220を構成する第3基部201cが構成されている。また、基部201は、第1基部201aの一端側に電気接続部100が形成されている。
【0022】
バレル片202は、帯状に形成され、基部201の一部である第1基部201aの幅方向Yに位置する両端部から幅方向Yにそれぞれ突出して形成されている突起片である。
【0023】
バレル片203は、バレル片202と同様に、帯状に形成され、基部201の一部である第3基部201cの両端部から幅方向Yにそれぞれ突出して形成されている突起片である。
【0024】
ワイヤバレル部210は、
図2に示すように、幅方向Yに沿って帯状に形成され、第1基部201aと、当該第1基部201aを挟んで位置する一対のバレル片202とによって構成される部分である。ワイヤバレル部210は、第1基部201a上に配置された電線Wの導体部W1に対して一対のバレル片202が加締められ、圧着されることで、当該導体部W1と電気的に接続される。バレル片202は、第1基部201aから幅方向Yに突出した長さが、導体部W1を覆って加締めている状態で、互いに重なり合わない(オーバーラップしない)長さに設定されている。そのため、ワイヤバレル部210は、一対のバレル片202で導体部W1を巻き込み、第1基部201aに対して導体部W1を押し付けることで、導体部W1を構成する素線W1aと凝着することができる(
図4を参照)。
【0025】
また、ワイヤバレル部210は、
図2に示すように、電線Wの導体部W1が配置される側の面(内面)に、複数のセレーションMが形成されている。セレーションMは、一方のバレル片202から他方のバレル片202にかけて、幅方向Yに沿って直線状に形成される溝部であり、各溝部は、軸線方向Xに沿って間隔を空けて配置されている。
【0026】
被覆バレル部220は、
図2に示すように、幅方向Yに沿って帯状に形成され、第3基部201cと、当該第3基部201cを挟んで位置する一対のバレル片203とによって構成される部分である。被覆バレル部220は、第3基部201c上に配置された電線Wの絶縁被覆部W2に対して一対のバレル片203が加締められ、圧着されることで、当該絶縁被覆部W2が固定される。
【0027】
そして、本実施形態の圧着端子10は、高導電性を有する金属材料、例えば、軟質な金属(例えば、銅、銅合金等)で構成された厚板で各部が形成されることで、電線Wと電気的に接続される電線接続部200が、軟質な金属で形成されている。また、ワイヤバレル部210は、圧着端子10の製造過程において、電線接続部200を構成する軟質な金属が圧縮された状態で硬化することで相対的に薄肉に形成される薄肉硬化部210Tを含んで構成されている。
【0028】
薄肉硬化部210Tは、ワイヤバレル部210が圧縮される際に、例えば、金属内部の空隙が潰れたり金属結晶が微細化されたりして結晶組織の密度が高まることにより、転位の動きが抑制されて強度が増している部分、または、塑性変形時に金属結晶内に転位の移動によるひずみが発生し、当該ひずみが蓄積して加工硬化することによって強度が増している部分である。本実施形態の薄肉硬化部210Tは、
図3に示すように、基部201を挟んで位置するバレル片202の全体に設けられている。また、薄肉硬化部210Tは、電線Wの導体部W1と凝着する第1基部201aの内面側から潰されて圧縮されることで形成され、第1基部201aの内面がバレル片202の内面より高さ方向Zに突出して位置している。また、薄肉硬化部210Tによってワイヤバレル部210が硬質化された範囲は、
図4に示すように、ワイヤバレル部210の幅方向Yの外側に位置するバレル片202の端部から、幅方向Yの内側に位置する所定の部位202kまでを含む範囲に形成されている。なお、ここでいう所定の部位202kとは、一対のバレル片202が、導体部W1を巻き込んだ状態で加締められる際に、熱膨張し、その後、熱収縮によって外側に向かって開く方向に収縮して動くときに起点となる部位である。
【0029】
そのため、ワイヤバレル部210は、第1基部201aと一対のバレル片202とが同一材料で形成され、共に軟質な材料で形成されたうえで、バレル片202に薄肉硬化部210Tが設けられることで、バレル片202が第1基部201aより硬質に構成されている。そして、ワイヤバレル部210は、導体部W1を巻き込んだ状態で加締められる際に、バレル片202より軟質な第1基部201aが内側に突出して位置していることで、電線Wの導体部W1に接しやすく、導体部W1を構成する素線W1と効率的に凝着することができる。そして、ワイヤバレル部210は、薄肉硬化部210Tによって硬質化された範囲が、加締め時に熱収縮の起点となる部位202kを含んで構成されていることで、収縮時に生じる応力によって当該部位202kに大きな変形が発生することを抑制することが期待できる。
【0030】
以上で説明した端子付き電線1は、絶縁性を有する絶縁被覆部W2で導電性を有する導体部W1を被覆した電線Wと、電線Wに接続される圧着端子10とを備え、当該圧着端子10は、電線Wの導体部W1に圧着して接続される電線接続部200を備える。また、電線接続部200は、相対的に軟質に構成され、導体部W1が配置される基部201と、相対的に硬質に構成され、基部201の端部から導体部W1の延在方向(軸線方向X)と交差する方向(幅方向Y)にそれぞれ突出して形成され、基部201上に配置された導体部W1を覆って加締められたバレル片202とを含んで構成される。
【0031】
このような構成によれば、バレル片202を硬く構成することで、加締め時にバレル片202に外力が加わった際に、当該部分に座屈等の圧縮変形が生じることを抑制し、電線Wの導体部W1を適正に巻き込んだ状態で、圧着端子10と電線Wの導体部W1とを圧着することができる。また、電線Wの導体部W1と凝着させやすくするために軟らかく構成されている基部201に対して、電線Wの導体部W1が、硬く構成されたバレル片202によって押し付けられ、互いが塑性変形して結合することによって、導体部W1と基部201とをより凝着させやすくすることができる。なお、この効果は、素線W1aの数が相対的に多い太物電線をバレル片202によって確実に巻き込み、基部201に対して各素線W1aを押し付けることで圧着する必要ある場合において、顕著に発揮することができ、当該効果により、導体部W1と基部201とを十分に凝着させることができる。したがって、本実施形態の圧着端子10、及び、端子付き電線1は、電線Wとの接合部位において適正な導通性能を確保することができ、軟質で厚板に形成された圧着端子10に電線Wを接合する場合においても、安価で汎用的な接合工法である圧着によって電線Wとの接続信頼性を十分に担保することができる。
【0032】
さらに、以上で説明したバレル片202は、基部201と同一材料で形成され、当該基部201より圧縮されて硬化され、相対的に薄肉に形成された薄肉硬化部210Tを含んで構成される。このような構成によれば、圧着端子10は、1種類の金属材料によって構成され、加締め工程を実施する前に、プレス加工等でバレル片202が圧縮されることで、バレル片202を基部201より硬く構成することができる。そのため、バレル片202を硬くするために、材料を追加で用意する必要がなく、圧着端子10の1個あたりの材料コストの増加を抑制することが期待できる。したがって、本実施形態の圧着端子10は、電線Wとの接合部位において適正な導通性能を確保することで、電線Wとの接続信頼性を十分に担保することができ、かつ、1個製造あたりの製造コストの増加を抑制することができる。
【0033】
[第2実施形態]
次に、
図5、
図6に示す第2実施形態に係る端子付き電線1A、1Bについて説明する。端子付き電線1A、1Bは、圧着端子10A、10Bの電線接続部200A、200Bを構成するワイヤバレル部210A、210Bの構成の点で、上記第1実施形態に係る端子付き電線1、圧着端子10と異なる。なお、第2実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0034】
圧着端子10A、10Bは、導電性を有する軟質な金属(例えば、銅、銅合金等)と、導電性を有する硬質な金属(例えば、銅合金、ニッケル、銀、ステンレス鋼等)とを組み合わせた金属材料で構成されている。
【0035】
ここでいう軟質な金属としての銅材、銅合金材は、高導電性を有する金属材料であり、銅の配合比が大きい材料である。軟質な金属は、例えば、銅の濃度が98wt%以上である材料、導電率が70%IACSを超えて、101%IACS以下である材料であることが好ましい。そのため、軟質な金属として、無酸素銅材(C1020)材等の純銅材や、純銅に近い銅合金材を使用することができる。
【0036】
また、ここでいう硬質な金属としての銅合金材は、軟質な金属と比べて銅の配合比が小さい材料である。硬質な金属は、例えば、導電率が70%IACS以下の材料、引張強度が250MPaを超える材料(高引張硬度材料)、ビッカース硬度がHV120を超える材料(高ビッカース硬度材料)であることが好ましい。そのため、硬質な金属として、メス端子等を構成するばね材を使用することができる。
【0037】
なお、金属材料の硬さとは、材料表面や表面近傍、材料全体の硬さであり、材料の傷つきにくさや、変形しにくさを示すものである。金属材料の硬さは、上述したビッカース硬さ(HV)の他に、ブリネル硬さ(HB)、ロックウェル硬さ(HRC)、ショア硬さ(HS)等の硬さ試験によって計算される数値から判断されるものであってもよく、その他の物性から判断されるものであってもよいが、その判断方法は、特に限定されない。
【0038】
そして、第2実施形態の各圧着端子10A、10Bは、ワイヤバレル部210A、210Bを構成する基部201A、201Bと、バレル片202A、202Bとが硬さが異なる材料で形成されることで、各部が異なる硬さで構成されている。
【0039】
例えば、
図5に示す圧着端子10Aワイヤバレル部210Aは、基部201Aの一部である第1基部201aAが、第1基部201aと同様に、銅、銅合金等の軟質な金属の中から選択された、1種類の金属材料によって構成されている。また、バレル片202Aは、上述したバレル片202とは異なり、ニッケル、銀、ステンレス鋼等の硬質な金属の中から選択された、1種類の金属材料によって構成されている。
図5に示ように、第1基部201aAとバレル片202Aは、一対のバレル片202Aが第1基部201aAを挟んで位置し、端面同士で接合されることで、1枚の板金として形成されている。
【0040】
また、
図6に示す圧着端子10Bのワイヤバレル部210Bは、基部201Bの一部である第1基部201aBが、上述した第1基部201aとは異なり、クラッド材(複数の金属が接合されること形成される金属材料)を含む材料で構成されている。また、バレル片202Bは、上述したバレル片202とは異なり、ニッケル、銀、ステンレス鋼等の硬質な金属の中から選択された、1種類の金属材料によって構成されている。
図6に示ように、第1基部201aBの外面側と一対のバレル片202Bとが同一材料で形成され、共に硬質な材料で形成されたうえで、電線Wの導体部W1と凝着する第1基部201aBの内面側のみが異なる材料で形成されて銅、銅合金等の軟質な材料で形成されていることで、第1基部201aBがバレル片202Bより軟質に構成されている。さらに言えば、第1基部201aBとバレル片202Bは、第1基部201aBの外面側と一対のバレル片202Bとを構成する一の金属材料に凹部が形成され、当該凹部に第1基部201aBの内面側を形成する他の金属材料を配置して接合することで、1枚の板金として形成されている。そのため、圧着端子10Bは、電線Wに対して加締められた際に、第1基部201aBの全体が軟質な材料で構成されている場合と比べて変形しづらくなる。したがって、圧着端子10Bは、ワイヤバレル部210Bの外面側の強度を十分に確保しつつ、電線Wの導体部W1と、第1基部201aBの内面とをより凝着させやすくすることできる。
【0041】
このような構成によれば、圧着端子10A、10Bは、上述した圧着端子10と同様に、基部201A、201Bを軟らかく構成し、バレル片202A、202Bを硬く構成することで、電線Wの導体部W1を適正に巻き込んだ状態で、圧着端子10と電線Wの導体部W1とを圧着することができ、導体部W1と基部201A、201Bとを十分に凝着させることができる。また、さらに言えば、圧着端子10A、10Bは、複数の金属材料を組み合わせことによって、基部201A、201Bと、バレル片202A、202Bとを異なる硬さで構成することができ、かつ、それらの材料を接合することで1枚の板金として形成することができる。そのため、バレル片202A、202Bを基部201A、201Bより硬くするために、プレス加工等で追加工を実施する必要がなく、圧着端子10A、10Bの1個あたりの時間コストの増加を抑制することが期待できる。したがって、圧着端子10A、10B、及び、端子付き電線1A、1Bは、電線Wとの接合部位において適正な導通性能を確保することで、電線Wとの接続信頼性を十分に担保することができ、かつ、1個製造あたりの製造コストの増加を抑制することができる。
【0042】
[第3実施形態]
次に、
図7に示す第3実施形態に係る端子付き電線1Cについて説明する。端子付き電線1Cは、圧着端子10Cの電線接続部200Cを構成するワイヤバレル部210Cの構成の点で、上記第1実施形態に係る端子付き電線1、圧着端子10、及び、第2実施形態に係る端子付き電線1A、1B、圧着端子10A、10Bと異なる。なお、第3実施形態では、上記第1実施形態、第2実施形態と同一の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0043】
圧着端子10Cは、導電性を有する金属の中から選択された金属材料によって構成されている。そして、圧着端子10Cは、ワイヤバレル部210Cを構成する基部201Cの表面と、バレル片202Cの表面とに、導電性を有し、かつ、硬さが異なるめっき層が形成されることで、各部が異なる硬さで構成されている。詳しく言えば、ワイヤバレル部210Cは、第1基部201aCと一対のバレル片202Cとが同一材料で形成されている。そして、第1基部201aCの表面201aFCには、錫等の軟質な金属からなる軟質なめっき層201aPCが設けられ、バレル片202Cの表面202FCには、銀等の硬質な金属からなる硬質なめっき層202PCが設けられていることで、バレル片202Cが第1基部201aCより硬質に構成されている。
【0044】
ここでいう軟質な金属としての錫は、電線Wの導体である導体部W1と比べて引張強度が低い、もしくは、硬度が低い材料である。
【0045】
また、ここでいう硬質な金属としての銀は、いわゆる硬質銀めっきに使用される銀であり、電線Wの導体である導体部W1と比べて引張強度が高い、もしくは、硬度が高い材料である。
【0046】
なお、金属の硬さとは、第2実施形態と同様に、材料表面や表面近傍、材料全体の硬さであり、材料の傷つきにくさや、変形しにくさを示すものである。金属材料の硬さは、ビッカース硬さ(HV)、ブリネル硬さ(HB)、ロックウェル硬さ(HRC)、ショア硬さ(HS)等の硬さ試験によって計算される数値から判断されるものであってもよく、その他の物性から判断されるものであってもよいが、その判断方法は、特に限定されない。
【0047】
このような構成によれば、圧着端子10Cは、上述した圧着端子10、10A、10Bと同様に、基部201Cを軟らかく構成し、バレル片202Cを硬く構成することで、電線Wの導体部W1を適正に巻き込んだ状態で、圧着端子10と電線Wの導体部W1とを圧着することができ、導体部W1と基部201Cとを十分に凝着させることができる。また、さらに言えば、圧着端子10Cは、基部201C及びバレル片202Cの内面や外面にめっき処理を施し、硬さが異なるめっき層を形成することによって、基部201Cとバレル片202Cとを異なる硬さで構成することができる。そのため、圧着端子10Cは、基部201Cやバレル片202Cの板厚を厚くすることなく、比較的簡易な方法で硬さを調整することができる。したがって、圧着端子10C、及び、端子付き電線1Cは、電線Wとの接合部位において適正な導通性能を確保することで、電線Wとの接続信頼性を十分に担保することができ、かつ、基部201Cやバレル片202Cに構造を追加したことによる電線接続部200Cの大型化を抑制することができる。
【0048】
なお、上述した本発明の実施形態に係る圧着端子、及び、端子付き電線は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0049】
例えば、基部を相対的に軟質に構成し、バレル片を相対的に硬質に構成する手法は、特に限定されない。
【0050】
また、本実施形態に係る端子付き圧着端子、及び、端子付き電線は、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1、1A、1B、1C 端子付き電線
10、10A、10B、10C 圧着端子
100 電気接続部
200、200A、200B、200C 電線接続部
201、201A、201B、201C 基部
201a、201aA、201aB、201aC 第1基部
201aFC 第1基部の表面
201aPC 第1基部のめっき層
202、202A、202B、202C バレル片
202FC バレル片の表面
202PC バレル片のめっき層
W 電線
W1 導体部
W2 絶縁被覆部
X 軸線方向(導体部の延在方向)
Y 幅方向
Z 高さ幅方向