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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125555
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】受衝板を備える防舷装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/26 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
E02B3/26 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033436
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000196624
【氏名又は名称】西武ポリマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】福田 興士
(72)【発明者】
【氏名】小▲高▼ 聡
(57)【要約】
【課題】接岸エネルギをひずみエネルギだけでなく位置エネルギに変換して緩衝効果を向上することができる受衝板を備える防舷装置を提供する。
【解決手段】受衝板を備える防舷装置1は、岸壁Aに設置される防舷材10と、防舷材10の先端部に設けられる受衝板20とを備える防舷装置1であって、防舷材10の先端部と受衝板20との間に設けられ上下方向の回転軸を備えて回動可能に支持するヒンジ機構30を有し、ヒンジ機構30には、接岸による受衝板20の回動にともない受衝板20を上昇させて接岸エネルギの一部を位置エネルギに変換して緩衝する回転・昇降機構40を設けて構成される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
岸壁に設置される弾性部材の防舷材と、前記防舷材の先端部に設けられ船側が当たる受衝板とを備える防舷装置であって、
前記防舷材の先端部と前記受衝板との間に設けられ上下方向の回転軸を備え接岸角度に応じて回動可能に支持するヒンジ機構を有し、
前記ヒンジ機構には、接岸による前記受衝板の回動にともない前記受衝板を上昇させて接岸エネルギの一部を位置エネルギに変換して緩衝する回転・昇降機構を設けた、
ことを特徴とする受衝板を備える防舷装置。
【請求項2】
前記回転・昇降機構は、前記回転軸を中心に回動し昇降する2つの円筒体を備え、
一方の前記円筒体は、前記受衝板に取り付けられ、他方の前記円筒体は、前記防舷材に取り付けられ、
前記2つの円筒体の端面間には、互いが摺接して昇降するカム面を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の受衝板を備える防舷装置。
【請求項3】
前記受衝板と前記岸壁との間に、前記受衝板の回動位置を復元する復元機構を備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の受衝板を備える防舷装置。
【請求項4】
前記復元機構は、弾性体が介装された復元部と、前記受衝板と前記岸壁との間に前記復元部を連結する索条体と、で構成される、
ことを特徴とする請求項3に記載の受衝板を備える防舷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受衝板を備える防舷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶などの接岸時の船体や岸壁の損傷を防止するため岸壁に防舷装置が設置される。防舷装置は、ゴムなどの弾性部材の防舷材とその先端部に設けられ船側と接触する受衝板とで構成され、受衝板を介して加わる船舶の接岸エネルギを防舷材で吸収するようにしている。
防舷装置が設置された岸壁に船舶が角度を持って接岸すると、例えばゴムなどの弾性部材の防舷材に均一に荷重が加わらず大きな荷重が加わる側に大きく変形が生じてしまい本来の緩衝効果を発揮し得ない場合がある。
そこで、特許文献1に開示され防舷装置では、防舷材を取付架台に対して回転可能に支持することで、船舶の接岸角度に応じて受衝板が回転し、防舷材の垂直方向にのみ圧縮が加わるようにして片側だけの変形を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-90024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された防舷装置では、受衝板を介して垂直に加わる接岸エネルギを防舷材で吸収して緩衝するものであるが、さらなる緩衝効果の向上が望まれている。
【0005】
本発明は、かかる要望に鑑みてなされたもので、接岸エネルギをひずみエネルギだけでなく位置エネルギに変換して緩衝効果を向上することができる受衝板を備える防舷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の受衝板を備えた防舷装置は、
岸壁に設置される弾性部材の防舷材と、前記防舷材の先端部に設けられ船側が当たる受衝板とを備える防舷装置であって、
前記防舷材の先端部と前記受衝板との間に設けられ上下方向の回転軸を備え接岸角度に応じて回動可能に支持するヒンジ機構を有し、
前記ヒンジ機構には、接岸による前記受衝板の回動にともない前記受衝板を上昇させて接岸エネルギの一部を位置エネルギに変換して緩衝する回転・昇降機構を設けた、
ことを特徴とする。
【0007】
前記回転・昇降機構は、前記回転軸を中心に回動し昇降する2つの円筒体を備え、一方の前記円筒体は、前記受衝板に取り付けられ、他方の前記円筒体は、前記防舷材に取り付けられ、前記2つの円筒体の端面間には、互いが摺接して昇降するカム面を備える、ことが好ましい。
【0008】
前記受衝板と前記岸壁との間に、前記受衝板の回動位置を復元する復元機構を備える、ことが好ましい。
【0009】
前記復元機構は、弾性体が介装された復元部と、前記受衝板と前記岸壁との間に前記復元部を連結する索条体と、で構成される、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の受衝板を備える防舷装置によれば、接岸エネルギをひずみエネルギだけでなく位置エネルギに変換して緩衝効果を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の受衝板を備える防舷装置の一実施の形態にかかる平面図である。
図2】本発明の一実施の形態の正面図である。
図3】本発明の一実施の形態の側面図である。
図4】本発明の一実施の形態のヒンジ機構および回転・昇降機構にかかり、(a)は概略側面図、(b)は初期状態の概略斜視図、(c)は上昇状態の概略斜視図である。
図5】本発明の一実施の形態のヒンジ機構および回転・昇降機構にかかり、(a)は上部の平面図および側面図、(b)は中間部の平面図および側面図、(c)は下部の平面図および側面図である。
図6】本発明の一実施の形態の復元機構の一部分を破断して示す断面図である。
図7】本発明の一実施の形態の傾斜接岸状態の平面図である。
図8】本発明の一実施の形態の受衝板の上昇状態の側面図である。
図9】本発明の一実施の形態にかかり、(a)は初期変形状態の平面図、(b)は最大変形状態の平面図、(c)は復元状態の平面図、(d)はヒンジ機構のない場合の変形状態を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の受衝板を備える防舷装置の一実施の形態について、図面の図1図9を参照して詳細に説明する。
本発明の受衝板を備える防舷装置1は、図1図3に示すように、岸壁Aに設置される弾性部材の防舷材10と、防舷材10の先端部に設けられ船側が当たる受衝板20とを備える防舷装置1であって、防舷材10の先端部と受衝板20との間に設けられ上下方向の回転軸31を備えて接岸角度に応じて回動可能に支持するヒンジ機構30を有し、ヒンジ機構30には、接岸による受衝板20の回動にともない受衝板20を上昇させて接岸エネルギの一部を位置エネルギに変換して緩衝する回転・昇降機構40を設けて構成される。
【0013】
本実施の形態の受衝板を備える防舷装置1では、例えば図1図3に示すように、岸壁Aに設置される弾性部材からなる防舷材10は、左右一対のブロック状の防舷部11を備え、左右一対の防舷部11の先端部が板状の支持部12で連結されて一体の防舷材10とされ、支持部12を介して受衝板20が設けられる。
【0014】
防舷材10は、ゴムなどの弾性部材で左右一対のブロック状に形成された防舷部11を備え、防舷部11の基端部の両側に一体にフランジ部13が形成され、フランジ部13に対して中心側に角度を有して突き出すように防舷部11が形成されている。一対の防舷部11は、左右対称に配置されて一体の防舷材10が構成される。防舷材10は、防舷部11の先端部同士が近づくように岸壁Aから斜めに突き出して平面視略ハ字状に配置される。防舷材10は、アンカーボルト14によって岸壁Aの前面にフランジ部13を介して取り付けられる。
防舷材10の左右一対の防舷部11は、先端部同士が支持部12で連結され、一対の防舷部11を連結することで岸壁Aとの間に台形状の中空部を形成し、協働して緩衝機能を一体として発揮する。支持部12は、鋼材など金属材で作られ、前後の板材の間に格子状の補強板を配置して構成され、船舶Bによる接岸エネルギを伝達支持できる強度を有している。
【0015】
受衝板20は、図1図7に示すように、防舷材10の前方に設けられて船舶Bの舷側と直接接触し、接岸エネルギを後述するヒンジ機構30を介して防舷材10に伝達し支持するものであり、矩形の板状に形成される。受衝板20は、鋼材などの金属材、合成樹脂材、コンクリートなどで作られ、板材21の外面に摩擦係数の小さい保護パネル22を設けている。保護パネル22は、例えば合成樹脂材で構成され、板材21の全面を覆うように取り付けられる。
受衝板20は、重量を増大することで、後述する位置エネルギとして接岸エネルギの一部を吸収する場合の吸収エネルギの増大を図ることができ、これまでの受衝板のように軽量化を図る必要はない。また、受衝板20の外面以外の船側と接触しない部分に補助おもりを付加することで、位置エネルギとして吸収できる接岸エネルギの一部の増大を図ることも可能となる。
なお、防舷装置1では、具体例な大きさなどの寸法は、必要に応じて適宜定めれば良いものである。
【0016】
受衝板を備える防舷装置1では、図1図3図5等に示すように、ヒンジ機構30が設けられ、防舷材10の固定側となる支持部12に対して可動側となる受衝板20を上下方向(海面に対する垂直方向)を中心に回動可能に支持されている。
ヒンジ機構30では、回転軸31が上下2箇所の可動側アーム32,33と中間部1箇所の固定側アーム34とで支持されている。可動側アーム32,33おおよび固定側アーム34は、支持部12の幅に対応する横幅の水平板状の三角形状に形成され、底辺部分と一体のフランジ部を介して受衝板20の内面側または支持部12の外面側に水平に突き出してワッシャを介してボルト35で固定される。可動側アーム32,33および固定側アーム34には、三角形の頂点部分に回転軸31が上下方向に挿着されて回動可能とされている。ヒンジ機構30は、支持部12の長さに応じて、例えば上下3箇所にヒンジ機構30が設けられて3本の回転軸31を一直線上に配置することで一枚の受衝板20の荷重を支持できるようにし取付強度や円滑な回動を確保している。
【0017】
ヒンジ機構30により、支持部12に対して受衝板20が上下方向の回転軸31を中心に回動することで、図7図9(a)(b)に示すように、船舶Bが岸壁Aに対して角度を持って接岸する場合(傾斜接岸)でもヒンジ機構30の回転軸31による受衝板20の回動で舷側に受衝板20が密着し、接岸による圧縮力が支持部12を介して防舷材10の一対の防舷部11を均等に圧縮変形させ、防舷部11に加わる接岸エネルギがひずみエネルギとして緩衝(吸収)される。
このような受衝板を備える防舷装置1では、船舶Bからの圧縮力の大きさにかかわらず、防舷材10の防舷部11を均等に変形させることができ(図9(a)(b)参照)、従来例(図9(d)参照。なお、図中の符号は、実施例と同一としてある。)の受衝板20を支持部12に固定しただけの場合のように、荷重が加わる側の防舷部11だけを大きく変形させることを回避できる。これにより、防舷材10の2つの防舷部11の持つ緩衝能力を十分発揮させることができる。
なお、ヒンジ機構30では、例えば岸壁Aに平行な直線に対して±10度程度の接岸角度の範囲で受衝板20を回動できるように設定される。
【0018】
さらに、受衝板を備える防舷装置1では、図3図5図8に示すように、回転・昇降機構40を備え、接岸による受衝板20の回動にともない受衝板20を上昇させて接岸エネルギの一部を位置エネルギに変換して緩衝(吸収)する。
回転・昇降機構40は、ヒンジ機構30の回転軸31に同心状に2つの円筒体が組み込まれカム機構で構成されており、固定側の円筒体の端面カム41と、端面カム41に接して昇降する可動側の円筒体の端面カム42とを備えて構成される。
【0019】
固定側の端面カム41は、円筒体の上端面が傾斜されたカム面43とされ、ヒンジ機構30の固定側アーム34と一体に設けられて回転軸31と同心状に配置され、カム面43が上方に突き出すように配置されている。可動側の端面カム42は、上側の可動側アーム32と一体に設けられて端面カム41と同一外径の円筒体とされ、円筒体の下端面が傾斜されたカム面44とされて下方に突き出すように配置されている。カム面43とカム面44とが同一角度の傾斜面とされ、互いのカム面43,44が逆方向に傾斜した状態で接触するようにしてある。すなわち、防舷材10と一体の固定側アーム34の端面カム41のカム面43と、受衝板20と一体の可動側アーム32に取り付けられた端面カム42のカム面44との2つの傾斜するカム面同士がカムのリフトが最小となる状態で、受衝板20が岸壁Aと平行となるように回動角度を初期設定する。
これにより、受衝板20が初期状態から左右いずれの方向に回動しても、端面カム42のカム面44が防舷材10側の端面カム41のカム面43に対してカムのリフトが生じるようになって昇降する。
【0020】
この回転・昇降機構40では、初期設定状態から船舶Bの接岸の角度によっていずれかの方向に受衝板20が回動すると、一体の端面カム42が回転軸31を中心に、防舷材10の支持部12に固定された端面カム41に沿って回動し、受衝板20と一体の端面カム42が押し上げられ、受衝板20が回動と同時に上昇する(図8参照)。
この受衝板20の上昇により、受衝板20の質量をm、受衝板20の上昇高さをh、重力加速度をgとすると、位置エネルギWとしてW=m・g・hが発生し接岸エネルギの一部が位置エネルギに変換された状態となる(図8参照)。
なお、受衝板20の回動による上昇を円滑に行うため、受衝板20と一体の端面カム42のカム面44に摩擦低減材45が取り付けられ、防舷材10の支持部12に固定された端面カム41の内側に摩擦低減材(図示せず)が取り付けてある。
【0021】
受衝板を備える防舷装置1では、回転・昇降機構40を設けることで、接岸エネルギが位置エネルギに変換された分だけ小さくなり、小さくなった接岸エネルギを防舷材10の防舷部11で吸収し緩衝すれば良いことになる。言い換えれば、これまでと同一仕様の防舷材10の防舷部11では、緩衝できる接岸エネルギが位置エネルギに変化された分だけ大きくなり緩衝性能の向上となる。あるいは、位置エネルギとして変換して緩衝する分だけ、防舷材10の防舷部11の緩衝性能を小さく設定することも可能となる。
【0022】
回転・昇降機構40は、海面に近い環境に設置されることから、ヒンジ機構30とともに、腐食に対する対処が望ましく、ステンレス鋼などの耐食性の金属材料や合成樹脂材料とし、あるいは、塗料などのコーティングを必要に応じて施工する。また、摩擦低減用の合成樹脂のブッシュなどを回動部分や摺接部分に介装することも好ましい。
なお、ヒンジ機構30および回転・昇降機構40の外周を回動と伸縮を許容できる状態(蛇腹状のゴムや合成樹脂の筒体)で覆って、内部にグリースなどを充填することも有効となる。
【0023】
さらに、受衝板を備える防舷装置1では、船舶Bが角度を持って接岸することにより回動した受衝板20を接岸後に元の回動位置に復元する復元機構50を備える。
復元機構50は、弾性体52が介装された復元部51と、受衝板20と岸壁Aとの間に復元部51を連結する索条体53と、で構成される。
復元機構50は、弾性体52を介装した復元部51に弾性力を蓄積し、復元部51を索条体53で受衝板20の両側の端部23と、岸壁Aとの中間部や端部に配置するよう連結し、復元部51に蓄積される弾性力で、回動した受衝板20を元の位置に引き戻すよう復元する。
この場合、復元部51には、弾性力によるひずみエネルギW1が蓄積される。
ひずみエネルギW1は、弾性体52のバネ定数をk、移動距離をxとすると、W1=1/2・k・xのひずみエネルギが発生し、接岸エネルギの一部がひずみエネルギに変換された状態となる。
また、図6図9(c)に示すように、傾斜接岸時に索条体53が引っ張り方向に伸びることで、ヒンジ機構30の回転軸31を回転支点とすることができ、ヒンジ機構30の回転を円滑にすることができる。
復元機構50では、復元部51に介装され弾性力を蓄積する弾性体52は、例えばコイルばねやゴム体で構成され、引張り方向の弾性力として蓄積し、索条体53は、例えばワイヤやチェーンなどが用いられ、受衝板20の両側の端部24と岸壁Aとの間を連結する。
復元部51は、例えば図6図9(c)に示すように、シリンダ54と、シリンダ54内を摺動するピストンと一体のロッド55を備え、シリンダ54の底部にピストンを位置させた状態のロッド55の引き抜き側に弾性体52が装着されてシリンダ54の頭部が閉じられてロッド55が貫通している。シリンダ54の一端には、例えば、索条体53の一方(受衝板側)のチェーン53aが連結され、ロッド55には、索条体53の他方(岸壁側)のチェーン53bが連結されて構成される。
復元機構50では、受衝板20のヒンジ機構30の回転軸31を中心とする回動により一方の索条体53のチェーン53aがたるむようになるが、他方の索条体53のチェーン53bには、ロッド55を介して引張り力が加わることで弾性体52がシリンダ54内に押し縮められ、縮んだ弾性体52の弾性力が受衝板20の回動位置を、回転軸31を支点として戻す復元力として作用する。
【0024】
このような受衝板を備える防舷装置1によれば、ヒンジ機構30を介して防舷材10の先端部に受衝板20を回動可能に設けることで、岸壁Aに対して角度を持って船舶Bが接岸する場合にあってもゴム製の防舷材10の一対の防舷部11をかたよることなく均等に変形させることで、緩衝性能の低下を招くことなく、接岸エネルギをひずみエネルギとして吸収し緩衝することができ、船舶Bや岸壁Aの損傷を防止する。
また、回転・昇降機構40を設けることで、船舶Bが角度を持って受衝板20に接触する場合に受衝板20が端面カム41と端面カム42によって回転軸31に沿って上昇し、船舶Bの接岸エネルギの一部を位置エネルギとして吸収することができ、一層緩衝性能を向上することができる。
これらにより、受衝板を備える防舷装置1では、これまでと同一の緩衝性能を確保する場合に、ゴムなどの弾性体の防舷材10の素材のグレードや防舷装置1全体の高さや大きさを小さくすることができ、コンパクトに構成し、設置スペースを小さくすることができる。
さらに、受衝板20の端部24と岸壁Aとの間にそれぞれ弾性体52が介装された復元部51を索条体53で連結してあるので、傾斜接岸により受衝板20が回動することで圧縮変形された防舷材10が圧縮状態から元の形状に戻る場合に、通常、受衝板20は回動したままとなる場合があるが、復元機構50により弾性体52が介装された復元部51に連結された索条体53が復元部51の伸びた状態から元の長さに戻ることにより受衝板20に引張り力が加わり、受衝板20を岸壁Aと平行な初期状態(角度0)に戻すことができる。
また、図6図9(c)に示すように、傾斜接岸時に索条体53が引っ張り方向に伸びることで、ヒンジ機構30の回転軸31を回転支点とすることができ、ヒンジ機構30の回転を円滑にすることができる。
【0025】
以上、実施の形態とともに、具体的に説明したように、本発明の受衝板を備える防舷装置1は、岸壁Aに設置される弾性部材の防舷材10と、防舷材10の先端部に設けられ船側が当たる受衝板20とを備える防舷装置1であって、防舷材10の先端部と受衝板20との間に設けられ上下方向の回転軸31を備え接岸角度に応じて回動可能に支持するヒンジ機構30を有し、ヒンジ機構30には、接岸による受衝板20の回動にともない受衝板20を上昇させて接岸エネルギの一部を位置エネルギに変換して緩衝する回転・昇降機構40を設けて構成される。
かかる構成によれば、ヒンジ機構30を介して防舷材10の先端部に受衝板20を回動可能に設けることで、岸壁Aに対して角度を持って船舶Bが接岸する場合にあって防舷材10をかたよることなく均等に変形させることで、緩衝性能の低下を招くことなく、接岸エネルギをひずみエネルギとして吸収し緩衝することができ、船舶Bや岸壁Aの損傷を防止する。
また、回転・昇降機構40を設けることで、船舶Bが角度を持って受衝板20に接触する場合に受衝板20が回転・昇降機構40によって持ち上がるようになり、船舶Bの接岸エネルギの一部を位置エネルギとして吸収し緩衝することができ、一層緩衝性能を向上することができる。
これらにより、受衝板20を備える防舷装置1では、これまでと同一の緩衝性能を確保する場合に、弾性体の防舷材10の素材のグレードや防舷装置1全体の高さや大きさを小さくすることができ、コンパクトに構成し、設置スペースを小さくすることができる。
【0026】
本発明の受衝板を備える防舷装置1は、回転・昇降機構40が回転軸31を中心に回動し昇降する2つの端面カム(円筒体)41,42を備え、一方の端面カム42は、受衝板20に取り付けられ、他方の端面カム41は、防舷材10に取り付けられ、2つの端面カム41,42の端面間には、互いが摺接して昇降するカム面43,44を備える。
かかる構成によれば、回転・昇降機構40を、回転軸31と同心状の端面カム41,42の間に互いが摺接するカム面43,44を備えて構成することで、コンパクトに構成して船舶Bの接岸エネルギの一部を位置エネルギとして吸収し緩衝することができ、一層緩衝性能を向上することができる。
【0027】
本発明の受衝板を備える防舷装置1は、受衝板20と岸壁Aとの間に、受衝板20の回動位置を復元する復元機構50を備える。
かかる構成によれば、復元機構50によって圧縮変形した防舷材10が圧縮状態から元の形状に戻る場合に、受衝板20が回動したままとならずに復元力が加わり、受衝板20を岸壁Aと平行な初期状態に戻すことができる。
【0028】
本発明の受衝板を備える防舷装置1は、復元機構50を弾性体52が介装された復元部51と、受衝板20と岸壁Aとの間に復元部51を連結する索条体53と、で構成される。
かかる構成によれば、復元機構50を弾性体52が介装された復元部51と索条体53により簡単に構成することができ、圧縮変形した防舷材10が圧縮状態から元の形状に戻る場合に、受衝板20が回動したままとならずに弾性体52が介装された復元部51により索条体53が伸びた状態から元の長さに戻ることによる引張り力で、受衝板20を岸壁Aと平行な初期状態に戻すことができ、安定した状態の受衝板20で船舶Bを接岸することができる。また、復元機構50により、接岸エネルギの一部をひずみエネルギとして吸収し、緩衝性能を向上することもできる。
【0029】
なお、上記の実施の形態では、本願の各発明の構成および効果について説明したが、これに限らず本発明は、それぞれを単独で構成することも、各発明を任意に組み合わせて構成することができ、各構成を組み合わせた効果を奏するものとなる。
本願発明は、上記実施の形態により何ら限定するものではなく、要旨を逸脱しない範囲で変形を加えることもできるものである。例えば、ヒンジ機構、回転・昇降機構、復元機構の構成は、他の機械要素による構成であっても良く、各機構が必要な機能をなすことができるものであれば良い。
【符号の説明】
【0030】
1 受衝板を備える防舷装置
A 岸壁
B 船舶
10 防舷材
11 防舷部
12 支持部
13 フランジ部
14 アンカーボルト
20 受衝板
21 板材
22 保護パネル
23 端部
30 ヒンジ機構
31 回転軸
32 可動側アーム
33 可動側アーム
34 固定側アーム
35 ボルト
40 回転・昇降機構
41 端面カム
42 端面カム
43 カム面
44 カム面
45 摩擦低減材
50 復元機構
51 復元部
52 弾性体
53 索条体
53a チェーン
53b チェーン
54 シリンダ
55 ロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9