(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125559
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】紫外線吸収剤、およびその利用
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240911BHJP
C08K 5/3462 20060101ALI20240911BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20240911BHJP
C07D 239/26 20060101ALI20240911BHJP
C07D 401/04 20060101ALI20240911BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/3462
C08F2/50
C07D239/26
C07D401/04
G02B5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033451
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】折原 雄也
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 僚一
【テーマコード(参考)】
2H148
4C063
4J002
4J011
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA13
2H148CA14
2H148CA17
2H148CA19
2H148CA20
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC29
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4C063EE10
4J002AA001
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4J011TA02
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、溶解性が良好な紫外線吸収剤、それを含む紫外線吸収剤や樹脂組成物、成形体、塗膜の提供を目的とする。
【解決手段】340nm~390nmに吸収極大を有する、下記一般式(1)で示す紫外線吸収剤。
(一般式(1)中、R
1~R
3は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基等であり、Xは、置換基を有してもよい、水酸基を有するフェニル基、置換基を有してもよい、水酸基を有するナフチル基、置換基を有してもよい、水酸基を有するピリジル基、及び置換基を有してもよい、水酸基を有するキノリニル基より選ばれる1価の基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される紫外線吸収性化合物。
【化1】
一般式(1)中、R
1~R
3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコシキ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、-NR
4R
5、-NR
4COR
5、スルホ基、-SO
2NR
4R
5、-COOR
4、-CONR
4R
5、-OCOR
4、-OCONR
4R
5、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。R
4、R
5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、水酸基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはアルキル基の置換基を有してもよく、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基の炭素原子と炭素原子の間が一つまたは複数の-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良い。R
1~R
3は、互いに隣接する基同士がそれぞれ互いに環を形成していてもよい。Xは、下記一般式(2)~(5)から選ばれる1種を示す。
【化2】
一般式(2)~(5)中、R
21~R
30、R
221~R
228は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコシキ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、-NR
4R
5、-NR
4COR
5、スルホ基、-SO
2NR
4R
5、-COOR
4、-CONR
4R
5、-OCOR
4、-OCONR
4R
5、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。R
4、R
5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、水酸基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはアルキル基の置換基を有してもよく、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基の炭素原子と炭素原子の間が一つまたは複数の-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良い。R
21~R
30、R
221~R
228は、互いに隣接する基同士がそれぞれ互いに環を形成していてもよい。*は一般式(1)との結合部位を表す。
【請求項2】
請求項1に記載の紫外線吸収性化合物、ならびにNa、Mg、Al、K、Ca、およびFeからなる群から選ばれる1種以上の金属原子を含む金属成分を含む組成物であって、前記金属成分の含有量が前記組成物に対して0.1~50000ppmである、組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の紫外線吸収性化合物、ならびにトリアジン環含有化合物、ベンゾトリアゾール環含有化合物、およびベンゾフェノン環含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤(C)を含む、紫外線吸収性組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の紫外線吸収性化合物、および波長450~650nmの可視波長域の光を遮光する色材(D)を含む、着色組成物。
【請求項5】
前記色材(D)は、2種類以上の有彩色着色剤を含む、請求項4記載の着色組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の紫外線吸収性化合物、および波長600~1500nmの波長領域に極大吸収を有する近赤外線吸収剤(E)を含み、
波長600~1500nmの波長領域に極大吸収を有する近赤外線吸収剤(E)は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、およびジケトピロロピロールから選ばれる1種以上である、近赤外線吸収性組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の紫外線吸収性化合物、および樹脂を含む、樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂が熱可塑性樹脂である、請求項7記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の紫外線吸収性化合物、光重合性化合物および光重合開始剤を含む、感光性組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の樹脂組成物を成形してなる、成形体。
【請求項11】
請求項7に記載の樹脂組成物、または請求項9に記載の感光性樹脂組成物から形成されてなる、塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収剤およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置、ディスプレイ装置等からの発光、および自然光から特定の波長の光をカットするために光学フィルタが使用されている。特に紫外線やブルーライトは強いエネルギーをもっており、網膜にダメージを与えて眼疾患の原因となる場合がある。このため、紫外線やブルーライトの吸収剤として有用な化合物が求められている。特許文献1および2には、紫外~紫色領域に極大吸収を有する化合物が記載されている。
【0003】
従来の紫外線吸収剤としては、例えば特許文献1、2に記載の化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-33021号公報
【特許文献2】特開2002-356668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2に記載の化合物は、溶解性が十分ではなく、高濃度で樹脂組成物を調整した場合に、透明性の低下や、ブリードアウトの発生といった問題があった。このような樹脂組成物を調製する場合、紫外線吸収化合物を有機溶媒に高濃度に溶解させて取り扱いできることが望ましい。紫外線吸収化合物が高濃度に溶解した溶液を樹脂と混ぜることにより、紫外線吸収化合物が樹脂中に均一かつ高濃度に溶解した樹脂組成物を容易に得ることができる。
【0006】
本発明は、340nm~390nmの波長の光を吸収し、溶解性が良好な紫外線吸収剤、およびそれを含む樹脂組成物や成形体、塗膜の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の紫外線吸性化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化1】
【0008】
一般式(1)中、R
1~R
3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコシキ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、-NR
4R
5、-NR
4COR
5、スルホ基、-SO
2NR
4R
5、-COOR
4、-CONR
4R
5、-OCOR
4、-OCONR
4R
5、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。R
4、R
5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、水酸基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはアルキル基の置換基を有してもよく、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基の炭素原子と炭素原子の間が一つまたは複数の-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良い。R
1~R
3は、互いに隣接する基同士がそれぞれ互いに環を形成していてもよい。Xは下記一般式(2)~(5)から選ばれる1種を示す。
【化2】
【0009】
一般式(2)~(5)中、R21~R30、R221~R228は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコシキ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、-NR4R5、-NR4COR5、スルホ基、-SO2NR4R5、-COOR4、-CONR4R5、-OCOR4、-OCONR4R5、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。R4、R5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、水酸基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはアルキル基の置換基を有してもよく、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基の炭素原子と炭素原子の間が一つまたは複数の-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良い。R21~R30、R221~R228は、互いに隣接する基同士がそれぞれ互いに環を形成していてもよい。*は一般式(1)との結合部位を表す。
【0010】
また本発明は、前記一般式(1)に記載の紫外線吸収性化合物、ならびにNa、Mg、Al、K、Ca、およびFeからなる群から選ばれる1種以上の金属原子を含む金属成分を含む組成物であって、前記金属成分の含有量が前記組成物に対して0.1~50000ppmである、紫外線吸収剤に関する。
【発明の効果】
【0011】
上記の本発明によれば、溶解性が良好であり、340~390nm に吸収極大を有する紫外線吸収剤、それを含む樹脂組成物、感光性組成物、粘着剤、成形体、および塗膜を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の紫外線吸収性化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化3】
【0013】
一般式(1)中、R
1~R
3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコシキ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、-NR
4R
5、-NR
4COR
5、スルホ基、-SO
2NR
4R
5、-COOR
4、-CONR
4R
5、-OCOR
4、-OCONR
4R
5、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。R
4、R
5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、水酸基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはアルキル基の置換基を有してもよく、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基の炭素原子と炭素原子の間が一つまたは複数の-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良い。R
1~R
3は、互いに隣接する基同士がそれぞれ互いに環を形成していてもよい。Xは下記一般式(2)~(5)から選ばれる1種を示す。
【化4】
【0014】
一般式(2)~(5)中、R21~R30、R221~R228は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコシキ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、-NR4R5、-NR4COR5、スルホ基、-SO2NR4R5、-COOR4、-CONR4R5、-OCOR4、-OCONR4R5、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。R4、R5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、水酸基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはアルキル基の置換基を有してもよく、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基の炭素原子と炭素原子の間が一つまたは複数の-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良い。R21~R30、R221~R228は、互いに隣接する基同士がそれぞれ互いに環を形成していてもよい。*は一般式(1)との結合部位を表す。
【0015】
R1~R3、R21~R30、R221~R228において「置換基を有してもよいアルキル基」は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、2-エチルヘキシル基、ステアリル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2-メトキシエチル基、2-クロロエチル基、2-ニトロエチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基が挙げられる。これらの中でもメチル基、エチル基、n-プロピル基、t-ブチル基が、溶解性付与及び合成難易度の観点で好ましく、特にメチル基、tert-ブチル基がより好ましい。
【0016】
R1~R3、R21~R30、R221~R228において「置換基を有してもよいアルケニル基」は、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロぺニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基が挙げられる。これらの中でもビニル基、2-プロぺニル基が、溶解性付与及び合成難易度の観点で好ましい。
【0017】
R1~R3、R21~R30、R221~R228において「置換基を有してもよいアリール基」は、例えば、フェニル基、ナフチル基、4-メチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4-ブロモフェニル基、2-メトキシフェニル基、2,4-ジヒドロキシフェニル基、2,4-ジヒドロキシナフチル基、4-ジエチルアミノフェニル基、3-ニトロフェニル基、4-シアノフェニル基、4-ピリジニル基、6-ヒドロキシキノリニル基が挙げられる。これらの中でも2,4-ジヒドロキシフェニル基、2,4-ジヒドロキシナフチル基が、溶解性付与及び合成難易度の観点で好ましい。
【0018】
R1~R3、R21~R30、R221~R228において「置換基を有してもよいアラルキル基」は、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基が挙げられる。これらの中でもベンジル基が、溶解性付与及び合成難易度の観点で好ましい。
【0019】
R1~R3、R21~R30、R221~R228において「置換基を有してもよいアルコシキ基」とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、2-(ジエチルアミノ)エトキシ基が挙げられる。これらの中でもメトキシ基、エトキシ基が、溶解性付与及び合成難易度の観点で好ましい。
【0020】
R1~R3、R21~R30、R221~R228において「置換基を有してもよいアリールオキシ基」とは、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、4-メチルフェニルオキシ基、3,5-クロロフェニルオキシ基、4-クロロ-2-メチルフェニルオキシ基、4-tert- ブチルフェニルオキシ基、4-メトキシフェニルオキシ基、4-ジエチルアミノフェニルオキシ基、4-ニトロフェニルオキシ基が挙げられる。これらの中でもフェノキシ基、ナフチルオキシ基が、合成難易度の観点で好ましい。
【0021】
R1~R3、R21~R30、R221~R228において「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素が挙げられる。
【0022】
R1~R3、R21~R30、R221~R228はそれぞれ、互いに隣接する基同士がそれぞれ互いに環を形成していてもよい。前記環は、脂環でも、芳香環でも、複素環であっても良い。
【0023】
一般式(1)で示す化合物は、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【化5】
【0024】
(一般式(1)で表される紫外線吸収性化合物の製造方法) 一般式(1)で表される化合物は、例えば、下記式(6)、(7)で示すように、2-クロロピリミジン類と、フェノール類やナフトール類とを加熱して合成できる。下記のスキームにおいて、R1~R3、R21~R30、R221~R228は上記の式(1)における意味と同じであり、その好適態様も上記に説明した通りである。
【0025】
【0026】
【0027】
上記の反応において、酸触媒を用いることもできる。使用できる酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などのブレンステッド酸類や、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、三塩化鉄などのルイス酸、等が挙げられる。これらのなかでも、三塩化アルミニウムが収率の観点で好ましい。
【0028】
上記の反応は、溶媒存在下で行うことが好ましい。前記溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系炭化水素類; ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン等の芳香族炭化水素類; ブロモベンゼン、クロロトルエン、ジクロロベンゼン等の塩素系芳香族類; テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類; アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類; メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類; ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;等が挙げられる。これらの中でも、ジクロロエタン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ブロモベンゼンが収率の観点で好ましく、ニトロベンゼンがより好ましい。溶媒は、1種、または2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記の反応において反応温度は適宜設定すればよい。例えば0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上がさらに好ましく、また200℃ 以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。当該反応は還流下で行ってもよい。反応時間は特に限定されず、反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、また48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましい。反応時の雰囲気は、不活性ガス(窒素、アルゴン等)雰囲気下で行うことが好ましい。
【0030】
得られた生成物は、必要に応じて、ろ過、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィー、昇華、再結晶、晶析など公知の精製手段によって適宜精製することができる。
【0031】
本発明の紫外線吸収性化合物(以下、紫外線吸収剤(A)とする)は、ピリミジン環に結合する芳香環をもち、340~390nm付近の紫外領域の波長光を吸収する。また、構造由来の優れた耐光性を持つ。
【0032】
紫外線吸収剤(A)は優れた溶解性を有する。これは、比較的対称性の低いピリミジン環構造を有するためと推察される。
【0033】
紫外線吸収剤(A)は、結晶構造を持っていても、アモルファス構造でも良い。具体的には、紫外線吸収剤(A)のCuKα線によるX線回折パターンにおいて、5°~45°に回折ピークを有してもよいし、有してなくても良い。
【0034】
紫外線吸収剤(A)は、組成物中に溶解または粒子として存在できる。前記粒子は、平均一次粒子径5nm~100μm程度が好ましく、10nm~10μm程度がより好ましく、20nm~500nm程度がさらに好ましい。なお、平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡を使用して1,000~10,000倍の拡大画像中の一次粒子20個程度について、一次粒子の長径を算術平均して求めることができる。
【0035】
紫外線吸収剤(A)は、Na、Mg、Al、K、Ca、およびFeからなる群から選ばれる1種以上の金属原子を含む金属成分(B)を適当量含むことが好ましい。これにより、溶解性を損なわず、また従来よりも優れた耐光性、及び紫外線吸収性を確保できるという予想外の効果を有している。
【0036】
このような効果が得られるメカニズムを以下のように推測する。すなわち、紫外線吸収剤(A)は、分子構造に非共有電子対をもつピリミジン環部位を含むため、紫外線吸収剤(A)と金属原子との間で錯体を形成し、金属イオンを分子内に取り込みやすい。その結果、紫外線吸収剤(A)の結晶性が向上して、光照射による劣化が生じにくくなり、耐光性が向上すると推測する。一方、紫外線吸収剤(A)が金属イオンを取り込みすぎると、紫外線吸収剤成分の低下により、紫外線吸収性が低下し、また溶解性も低下する。紫外線吸収剤(A)に対し、金属原子を含む金属成分(B)の合計量を0.1~50000ppm(より好ましくは、0.1~10000ppm、または、0.1~1000ppm)とすることにより、分子内への金属イオンの取り込み量を適度にできるため、紫外線吸収性や、優れた溶解性を維持できる。
【0037】
<金属成分(B)>
紫外線吸収剤(A)に含まれる金属成分(B)は、Na、Mg、Al、K、Ca、およびFeからなる群から選ばれる1種以上の金属原子を含むことが好ましい。前記金属原子のうち、Alは前記合成法で用いられる酸触媒としてよく使用できることから、合成後の精製の方法によりAl量をコントロールすることで金属成分(B)の含有量をコントロールできる。また、紫外線吸収剤(A)の合成法によっては上記金属原子が全く含まれないこともあるため、紫外線吸収剤(A)を合成した後に別途、上記金属原子を添加して金属成分(B)の含有量をコントロールしてもよい。金属原子の測定には様々な方法が知られている。金属成分(B)の含有量は、例えば、紫外線吸収剤(A)に硝酸を加えてマイクロウェーブで分解処理した溶液を、適当な濃度に希釈して誘導結合プラズマ発光分析(ICP)を用いて簡便に定量することができる。金属成分(B)の含有量は、紫外線吸収剤(A)に対して0.1~50000ppmが好ましく、0.1~10000ppmがより好ましく、0.1~1000ppmがさらに好ましく、また1~48000ppmであってもよい。なお、金属成分(B)の含有量とは、Na、Mg、Al、K、Ca、およびFeの各イオンの含有量の合計値を意味する。
【0038】
<紫外線吸収剤(A)の精製方法>
金属成分(B)の含有量を調整するための合成後の紫外線吸収剤(A)の精製方法としては、紫外線吸収剤(A)の合成反応液に水を含むメタノール等の貧溶媒を加えて分液し、金属成分を取り除く方法;上記分液及び濾過後のウェットケーキ(金属成分の除去工程により濃縮された化合物)にメタノール等のアルコール又は水、もしくはその混合液をふりかけて洗浄する方法;ウェットケーキをメタノール等のアルコール又は水、もしくはその混合液にリスラリーして洗浄する方法;ウェットケーキに1~5%程度の希釈塩酸等の酸溶液をふりかけてリスラリーして洗浄する方法などが挙げられるが、その限りでない。
【0039】
〔組成物〕
本発明の実施形態の組成物は、トリアジン環含有化合物、ベンゾトリアゾール環含有化合物、およびベンゾフェノン環含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の第二の紫外線吸収剤(以下、「紫外線吸収剤(C)」とも記す。)を含有できる。紫外線領域全体の幅広い遮蔽を紫外線吸収剤(A)で行うよりも、紫外線吸収剤(A)と紫外線吸収剤(C)に含まれる上記化合物を組み合わせることで、紫外線領域を幅広く、簡易かつより効果的に遮蔽することができる。また、紫外線吸収剤(A)と紫外線吸収剤(C)に含まれる上記化合物が互いの化合物を保護するため、より良好な耐光性および耐熱性が得られる。
【0040】
紫外線吸収剤(A)の含有量は、組成物の不揮発分中、0.005~50質量%が好ましく、0.01~40質量%がより好ましい。目的の分光カット率によって紫外線吸収剤(A)の含有量を設計できる。
【0041】
<紫外線吸収剤(C)>
前記紫外線吸収剤(C)のうち、ベンゾトリアゾール系化合物は、例えば、2-(5メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートと2-エチルヘキシル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートの混合物、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、5%の2-メトキシ-1-メチルエチルアセテートと95%のベンゼンプロパン酸,3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-9側鎖および直鎖アルキルエステルの化合物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-エチルヘキシル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチル-フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-3-t-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1-3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-3-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチル-フェノール、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]等が挙げられる。
【0042】
市販品は、BASFジャパン社製「TINUVIN P」、「TINUVIN PS」、「TINUVIN 109」、「TINUVIN 234」、「TINUVIN 326」、「TINUVIN 328」、「TINUVIN 329」、「TINUVIN 360」、「TINUVIN 384-2」、「TINUVIN 900」、「TINUVIN 928」、「TINUVIN 99-2」、「TINUVIN 1130」、ADEKA社製「アデカスタブLA-29」、大塚化学社製「RUNA-93」等が挙げられる。
【0043】
前記紫外線吸収剤(C)のうち、トリアジン系化合物は、例えば、2-[4,6-ジ(2,4-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-オクチルオキシフェノール、2‐[4,6‐ビス(2,4‐ジメチルフェニル)‐1,3,5‐トリアジン‐2‐イル]‐5‐[3‐(ドデシルオキシ)‐2‐ヒドロキシプロポキシ]フェノール、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル-グリシド酸エステルの反応生成物、2,4-ビス「2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル」-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2'-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2'-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシロキシフェノール(III-5)ビスエチルヘキシロキシフェノール メトキシフェニルトリアジン等が挙げられる。
【0044】
市販品は、ケミプロ化成社製「KEMISORB 102」、BASFジャパン社製「TINUVIN 400」、「TINUVIN 405」、「TINUVIN 460」、「TINUVIN 477-DW」、「TINUVIN 479」、「TINUVIN 1577」、ADEKA社製「アデカスタブLA-46」、「アデカスタブLA-F70」、サンケミカル社製「CYASORB UV-1164」等が挙げられる。
【0045】
前記紫外線吸収剤(C)のうち、ベンゾフェノン系化合物は、例えば、2,4-ジ-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルフォン酸-3水温、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2,2-ジ-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ヘキシル 2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、1,4-ビス(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)ブタン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルフォニックアシッド、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0046】
市販品は、ケミプロ化成社製「KEMISORB 10」、「KEMISORB 11」、「KEMISORB 11S」、「KEMISORB 12」、「KEMISORB 111」、シプロ化成社製「SEESORB 101」、「SEESORB 107」、ADEKA社製「アデカスタブ1413」等が挙げられる。
【0047】
紫外線吸収剤(C)の含有量は、組成物の不揮発分中、0.005~50質量%が好ましく、0.01~40質量%がより好ましい。目的の分光カット率によって紫外線吸収剤の含有量を設計することができる。
【0048】
紫外線吸収剤(A)の含有量は、組成物の不揮発分中、0.005~50質量%が好ましく、0.01~40質量%がより好ましい。目的の分光カット率によって紫外線吸収剤(A)の含有量を設計できる。
【0049】
[色材(D)]
本発明の実施形態の組成物は、波長450~650nmの可視波長域に対して、波長域の80%以上を遮光する色材(D)(以下、色材(D)という)を含有できる。色材(D)は、2種類以上の有彩色着色剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤(A)は、紫外領域に強い吸収を持つため、450~650nmの特定の波長領域に吸収を持つ有彩色着色剤と組み合わせることで、700nm以下をカットして近赤外線領域の光を利用できるため例えば、目的に応じ適宜分光を調整するバンドパス材料として使用できる。また紫外線吸収剤(A)が前記色材(D)を紫外線から保護するため、組成物全体の耐光性および耐熱性が向上する。
【0050】
色材(D)は、例えば、青色色素、黄色色素、紫色色素、赤色色素等が挙げられる。
有機色素は、有機顔料を用いても良く、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、又はポリアゾ等のアゾ系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、又はビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料または金属錯体系顔料等が挙げられる。
また、有機色素として、染料を用いても良く、例えば、アントラキノン系染料、モノアゾ系染料、ジスアゾ系染料、オキサジン系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、トリフェニルメタン系染料などが挙げられる。染料を用いる際には。アニオン性染料、カチオン性染料の極性基を用いて樹脂中に取り込み溶解性を付与する方法が有効となる。
【0051】
(青色色素)
青色顔料は、例えばC.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79等が挙げられる。なお、「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 発行)を意味する。
【0052】
青色染料は、例えばC.I.アシッドブルー1、2、3、4、5、6、7、8、9、11、13、14、15、17、19、21、22、23、24、25、26、27、29、34、35、37、40、41、41:1、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、62、62:1、63、64、65、68、69、70、73、75、78、79、80、81、83、8485、86、88、89、90、90:1、91、92、93、95、96、99、100、103、104、108、109、110、111、112、113、114、116、117、118、119、120、123、124、127、127:1、128、129、135、137、138、143、145、147、150、155、159、169、174、175、176、183、198、203、204、205、206、208、213、227、230、231、232、233、235、239、245、247、253、257、258、260、261、262、264、266、269、271、272、273、274、277、278、280等が挙げられる。
【0053】
また、C.I.ダイレクトブルー1、2、3、4、6、7、8、8:1、9、10、12、14、15、16、19、20、21、21:1、22、23、25、27、29、31、35、36、37、40、42、45、48、49、50、53、54、55、58、60、61、64、65、67、79、96、97、98:1、101、106、107、108、109、111、116、122、123、124、128、129130、130:1、132、136、138、140、145、146、149、152、153、154、156、158、158:1、164、165、166、167、168、169、170、174、177、181、184、185、188、190、192、193、206、207、209、213、215、225、226、229、230、231、242、243、244、253、254、260、263等が挙げられる。
(黄色色素)
黄色顔料は、例えばC.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208等が挙げられる。
【0054】
黄色染料は、例えばC.I.アシッドイエロー2,3、4、5、6、7、8、9、9:1、10、11、11:1、12、13、14、15、16、17、17:1、18、20、21、22、23、25、26、27、29、30、31、33、34、36、38、39、40、40:1、41、42、42:1、43、44、46、48、51、53、55、56、60、63、65、66、67、68、69、72、76、82、83、84、86、87、90、94、105、115、117、122、127、131、132、136、141、142、143、144、145、146、149、153、159、166、168、169,172、174、175、178、180、183、187、188、189、190、191、192、199等が挙げられる。
【0055】
また、C.I.ダイレクトイエロー1、2、4、5、12、13、15、20、24、25、26、32、33、34、35、41、42、44、44:1、45、46、48、49、50、51、61、66、67、69、70、71、72、73、74、81、84、86、90、91、92、95、107、110、117、118、119、120、121、126、127、129、132、133、134等が挙げられる。
【0056】
(紫色色素)
紫色顔料は、例えばC.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50等が挙げられる。
【0057】
紫色染料は、例えばC.I.アシッドバイオレット1、2、3、4、5、5:1、6、7、7:1、9、11、12、13、14、15、16、17、19、20、21、23、24、25、27、29、30、31、33、34、36、38、39、41、42、43、47、49、51、63、67、72、76、96、97、102、103、109等が挙げられる。
【0058】
また、C.I.ダイレクトバイオレット1、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、17、18、21、22、25、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、51、52、54、57、58、61、62、63、64、71、72、77、78、79、80、81、82、83、85、86、87、88、93、97等が挙げられる。
(赤色色素)
赤色顔料は、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、1 01、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276等が挙げられる。
赤色顔料と同様にはたらくオレンジ色顔料は、例えばC.I.ピグメント オレンジ36、38、43、51、55、59、61等のオレンジ色顔料等が挙げられる。
赤色染料は、例えばC.I.アシッドレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、23、24、25、25:1、26、26:1、26:2、27、29、30、31、32、33、34、35、36、37、39、40、41、42、43、44、45、47、50、52、53、54、55、56、57、59、60、62、64、65、66、67、68、70、71、73、74、76、76:1、80、81、82、83、85、86、87、88、89、91、92、93、97、99、102、104、106、107、108、110、111、113、114、115、116、120、123、125、127、128、131、132、133、134、135、137、138、141、142、143、144、148、150、151、152、154、155、157、158、160、161、163、164、167、170、171、172、173、175、176、177、181、229、231、237、239、240、241、242、249、252、253、255、257、260、263、264、266、267、274、276、280、286、289、299、306、309、311、323、333、324、325、326、334、335、336、337、340、343、344、347、348、350、351、353、354、356、388等が挙げられる。
【0059】
また、C.I.ダイレクトレッド1、2、2:1、4、5、6、7、8、10、10:1、13、14、15、16、17、18、21、22、23、24、26、26:1、28、29、31、33、33:1、34、35、36、37、39、42、43、43:1、44、46、49、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、67、67:1、68、72、72:1、73、74、75、77、78、79、81、81:1、85、86、88、89、90、97、100、101、101:1、107、108、110、114、116、117、120、121、122、122:1、124、125、127、127:1、127:2、128、129、130、132、134、135、136、137、138、140、141、148、149、150、152、153、154、155、156、169、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、186、189、204、211、213、214、217、222、224、225、226、227、228、232、236、237、238等が挙げられる。
【0060】
色材(D)に中で染料は、良好な分光特性を有し、発色性に優れるものの、耐光性、耐熱性に問題がある場合が多い。そのため、これらの問題を改善するために、塩基性染料は、有機酸や過塩素酸を用いて造塩化する造塩化合物して用いることが好ましい。有機酸は、有機スルホン酸、有機カルボン酸が好ましい。中でもトビアス酸等のナフタレンスルホン酸、過塩素酸が耐性の面で好ましい。
また、アニオン基を有する樹脂と造塩化して用いることが好ましく、ベタイン構造を有する樹脂と有機酸とともに造塩する造塩化合物として用いることも好ましい。
また、酸性染料、直接染料を含むアニオン性染料は、カチオン性基を有する化合物やカチオン性基を有する樹脂をカウンターイオンとして用いた造塩化合物として用いることが耐熱性、耐光性、耐溶剤性の面で好ましい。また、造塩化合物の合成には、カチオン基を有する樹脂を用いることが好ましく、側鎖にカチオン基を有する樹脂と有機酸とともに造塩して用いることもより好ましい。
また、アニオン性染料はスルホンアミド化してスルホン酸アミド化合物として用いることでも、耐性の面で好ましく使用できる。
【0061】
色材(D)は、塗工用途において、青色顔料にPigment.Blue.15:3もしくはPigment.Blue.15:6、黄色色素にPigment.Yellow.139、紫色色素にPigment.Violet.23を用いることが好ましい。また、成形用途において、青色顔料にPigment.Blue.15:3もしくはPigment.Blue.15:6、黄色色素にPigment.Yellow.147、赤色色素にSolvent.Red.52を用いることが好ましい。
【0062】
色材(D)の含有量は、組成物の不揮発分中、0.005~50質量%が好ましく、0.005~20質量%がより好ましく、0.5~50質量%がより好ましい。目的の分光カット率によって紫外線吸収剤の含有量を設計することができる。
【0063】
本発明の実施形態の組成物は、必要に応じて色素誘導体を添加することができる。
【0064】
色素誘導体は、有機色素残基に酸性基、塩基性基、中性基などを有する化合物である。色素誘導体は、例えば、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基などの酸性置換基を有する化合物及びこれらのアミン塩、スルホンアミド基又は末端に3級アミノ基などの塩基性置換基を有する化合物、フェニル基又はフタルイミドアルキル基などの中性置換基を有する化合物が挙げられる。
有機色素は、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チアジンインジゴ系顔料、トリアジン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ベンゾイソインドール等のインドール系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ナフトール系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、等が挙げられる。
【0065】
色素誘導体は、それぞれ単独または2種以上を併用して使用できる。
【0066】
[近赤外線吸収剤(E)]
本発明の実施形態の組成物は、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、インジゴ化合物、インモニウム化合物、アントラキノン化合物、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、およびクロコニウム化合物からなる群から選ばれる1種以上の近赤外線吸収剤(以下、「近赤外線吸収剤(E)とも記す。」を含有でき、近赤外線吸収剤(E)は波長600~1500nmの波長領域に極大吸収を有する。これにより、目的に応じ適宜分光を調整でき、本発明の実施形態の紫外線吸収剤が近赤外線吸収剤(E)の劣化を抑制するため、耐久性が向上する。
【0067】
近赤外線吸収剤(E)は、波長600~1500nmに極大吸収を有する化合物である。なお、極大吸収は、800~1000nmが好ましい。
【0068】
シアニン化合物は、国際公開第2006/006573号、国際公開第2010/073857号、特開2013-241598号公報、特開2016-113501号公報、特開2016-113504号公報等;フタロシアニン化合物は、特開平4-23868号公報、特開平06-192584号公報、特開2000-63691号公報、国際公開第2014/208514号等;ナフタロシアニン化合物は、特開平11-152414号公報、特開2000-86919号公報、特開2009-29955号公報、国際公開第2018/186490号等;インジゴ化合物は、特開2013-230412号公報等;インモニウム化合物は、特開2005-336150号公報、特開2007-197492号公報、特開2008-88426号公報等;アントラキノン化合物は、特開昭62-903号公報、特開平1-172458号公報等;ピロロピロール化合物は、特開2009-263614号公報、特開2010-90313号公報、特開2011-068731号公報;スクアリリウム化合物は、特開2011-132361号公報、特開2016-142891号公報、国際公開第2017/135359号、国際公開第2018/225837号、特開2019-001987号公報、国際公開第2020/054718号等;クロコニウム化合物は、国際公開第2019/021767号等に記載の化合物が挙げられる。
【0069】
(スクアリリウム化合物)
スクアリリウム化合物は、下記一般式(8)で表される化合物が好ましい。
【0070】
【0071】
一般式(8)中、R1~R4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR10、-COR11、-COOR12、-OCOR13、-NR14R15、-NHCOR16、-CONR17R18、-NHCONR19R20、-NHCOOR21、-SR22、-SO2R23、-SO2OR24、-NHSO2R25、-SO2NR26R27、-B(OR28)2、および-NHBR29R30からなる群より選択されるいずれかを表す。R10~R30は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基からなる群より選択されるいずれかを表す。なお、-COOR12のR12が水素の場合(すなわち、カルボキシル基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO2OR24のR24が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。また、R1とR2、R3とR4は互いに結合して環を形成してもよい。
【0072】
「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR100、-COR101、-COOR102、-OCOR103、-NR104R105、-NHCOR106、-CONR107R108、-NHCONR109R110、-NHCOOR111、-SR112、-SO2R113、-SO2OR114、-NHSO2R115、または-SO2NR116R117等が挙げられる。
R100~R117は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアラルキル基を表す。なお、-COOR102のR102が水素の場合(すなわち、カルボキシル基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO2OR114のR114が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。
【0073】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~12がさらに好ましく、1~8が特に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
アルケニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がさらに好ましく、2~8が特に好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
アルキニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がさらに好ましく、2~8が特に好ましい。アルキニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
アリール基の炭素数は、6~25が好ましく、6~15がさらに好ましく、6~10が特に好ましい。
アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。アラルキル基の炭素数は、7~40が好ましく、7~30がさらに好ましく、7~25が特に好ましい。
ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~8の縮合環がさらに好ましく、単環または縮合数が2~4の縮合環が特に好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がさらに好ましく、3~12が特に好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては上述した「置換基」が挙げられる。
【0074】
スクアリリウム化合物は、耐光性、耐熱性の観点から、下記一般式(6)で表される化合物がより好ましい。
【0075】
【0076】
一般式(6)中、R5~R8は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR50、-COR51、-COOR52、-OCOR53、-NR54R55、-NHCOR56、-CONR57R58、-NHCONR59R60、-NHCOOR61、-SR62、-SO2R63、-SO2OR64、-NHSO2R65、-SO2NR66R67、-B(OR68)2、および-NHBR69R70からなる群より選択されるいずれかを表す。R50~R70は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基を表す。なお、-COOR52のR52が水素の場合(すなわち、カルボキシル基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO2OR64のR64が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。また、R5とR6、R7とR8はお互いに結合して環を形成してもよい。
【0077】
「置換基」は、上述の「置換基」と同様の意義である。
【0078】
以下、スクアリリウム化合物の具体例を示す。なお、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0079】
【0080】
【0081】
(ピロロピロール化合物)
ピロロピロール化合物は、下記一般式(10)で表される化合物が好ましい。
【0082】
【0083】
一般式(10)中、R1x及びR1yは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R2及びR3は、互いに結合して環を形成してもよく、R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-BR4xR4y又は金属原子を表し、R4は、R1x、R1y及びR3からなる群から選ばれる少なくとも1つと共有結合又は配位結合してもよく、R4xR4yは、それぞれ独立に、置換基を表す。一般式(10)は、特開2009-263614号公報、特開2011-68731号公報、及び国際公開第2015/166873号に記載されている。
【0084】
R1x及びR1yは、それぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。また、R1x及びR1yが表すアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有してもよく、無置換であってもよい。置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OCOR11、-SOR12、-SO2R13等が挙げられる。R11~R13は、それぞれ独立に、炭化水素基又はヘテロアリール基を表す。また、置換基としては、例えば、特開2009-263614号公報の段落0020~0022に記載の置換基が挙げられる。なかでも、置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OCOR11、-SOR12、-SO2R13が好ましい。R1x及びR1yで表される基としては、分岐アルキル基を有するアルコキシ基、又は-OCOR11で表される基を置換基として有するアリール基であることが好ましい。分岐アルキル基の炭素数は、3~30が好ましく、3~20がより好ましい。
【0085】
R2及びR3の少なくとも一方は電子吸引性基が好ましく、R2は電子吸引性基を表し、R3はヘテロアリール基を表すことがより好ましい。ヘテロアリール基は、5員環又は6員環が好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環又は縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~8の縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~4の縮合環がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。ヘテロアリール基は、窒素原子を1個以上有することが好ましい。一般式(10)における2個のR2同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、一般式(10)における2個のR3同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0086】
R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又は-BR4xR4yで表される基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基、又は-BR4xR4yで表される基であることがより好ましく、-BR4xR4yで表される基であることが特に好ましい。R4xR4yが表す置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基が好ましく、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基がより好ましく、アリール基が特に好ましい。これらの基は、更に置換基を有してもよい。一般式(10)における2個のR4同士は同一または異なっていてもよい。
【0087】
以下、ピロロピロール化合物の具体例を示す。以下の構造式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を表す。また、ピロロピロール化合物としては、例えば、特開2009-263614号公報の段落0016~0058、特開2011-68731号公報の段落0037~0052、特開2014-130343号公報の段落0014~0027、国際公開第2015/166873号の段落0010~0033に記載の化合物が挙げられる。なお、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0088】
【0089】
(ナフタロシアニン化合物)
ナフタロシアニン化合物は、下記一般式(11)で表される化合物が好ましい。
【0090】
【0091】
一般式(11)中、R1~R24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、カルボキシル基、スルホン基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、または置換基を有してもよいスルファモイル基を表す。
Zは、一般式(12)で示す単量体単位を含む重合体部位、または一般式(13)で表すリン化合物部位であり、*は、Alとの結合手である。)
【0092】
【0093】
一般式(12)中、Xは、-CONH-R25-、-COO-R26-、-CONH-R27-O-、または-COO-R28-O-を表し、R25~R28は、炭素原子と炭素原子の間が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていてもよいアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。R31は水素原子またはメチル基を表す。)
【0094】
【0095】
一般式(13)中、R29およびR30は、それぞれ独立に、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R29とR30は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0096】
以下、ナフタロシアニン化合物の具体例を示す。なお、本発明はこれらに限定されない。
【0097】
【0098】
近赤外線吸収剤(E)の含有量は、組成物の不揮発分中、0.005~50質量%が好ましく、0.01~40質量%がより好ましい。目的の分光カット率によって紫外線吸収剤の含有量を設計することができる。
【0099】
[樹脂]
本発明の実施形態の樹脂組成物は、樹脂を含有できる。樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0100】
本発明の紫外線吸収性化合物、および熱可塑性樹脂を含む組成物を説明する。組成物は、例えば、成形体用途に使用できる。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、シクロオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0101】
(ポリオレフィン樹脂)
ポリオレフィン樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、およびポリ-4-メチルペンテン、ならびにこれらの共重合体等が挙げられる。
ポリエチレンは、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。
ポリプロピレンは、例えば、結晶性または非晶性ポリプロピレン等が挙げられる。
これらを用いた共重合体は、例えば、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、α-オレフィンとエチレンあるいはプロピレンの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体等が挙げられる。
これらの中でも結晶性または非晶性ポリプロピレン、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体が好ましく、プロピレン-エチレンブロック共重合体がより好ましい。また、安価、かつ、比重が小さいために成形品を軽量化できる観点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0102】
ポリオレフィン樹脂の数平均分子量は、30,000~500,000程度である。
【0103】
ポリオレフィン樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、1~100(g/10分)が好ましい。なお、MFRはJISK-7210に準拠して求めた数値である。
【0104】
(ポリカーボネート樹脂)
ポリカーボネート樹脂は、非晶性樹脂であり、芳香族ジヒドロキシ化合物に、ホスゲン或いは炭酸ジエステル等のカーボネート前駆体を反応させて合成する。ホスゲンを用いる合成反応の場合は、例えば、界面法が好ましい。また、炭酸ジエステルを用いる合成反応の場合、溶融状で反応させるエステル交換法が好ましい。
【0105】
芳香族ジヒドロキシ化合物は、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。また、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4'-ジヒドロキシジフェニル類を混合して使用してもよい。
【0106】
カーボネート前駆体は、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類等が挙げられる。
【0107】
芳香族ジヒドロキシ化合物およびカーボネート前駆体は、それぞれ単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0108】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、15,000~30,000が好ましく、16,000~27,000がより好ましい。なお、本明細書における粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算される値である。
【0109】
ポリカーボネート樹脂の市販品は、例えば、ユーピロンH-4000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量16,000)ユーピロンS-3000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量23,000)、ユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量27,000)等が挙げられる。
【0110】
(ポリアクリル樹脂)
ポリアクリル樹脂は、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エチル等のモノマーおよび必要に応じて使用する他のモノマーを公知の方法で重合した化合物である。ポリアクリル樹脂は、例えば、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体等が挙げられる。前記モノマーの他に、例えば、ブタジエン、α-メチルスチレン、無水マレイン酸等のモノマーを加えて重合することもでき、モノマー量と分子量によって耐熱性、流動性、衝撃性を調整できる。
【0111】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、分子の主鎖にエステル結合を有する樹脂であり、ジカルボン酸(その誘導体を含む)と、ジオール(2価アルコールまたは2価フェノール)とから合成した重縮合物;ジカルボン酸(その誘導体を含む)と、環状エーテル化合物とから合成した重縮合物;環状エーテル化合物の開環重合物等が挙げられる。ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールでの重合体によるホモポリマー、複数の原料を使用するコポリマー、これらを混合するポリマーブレンド体等が挙げられる。なお、ジカルボン酸の誘導体とは、酸無水物、エステル化物等である。ジカルボン酸は、脂肪族および芳香族の2種類のジカルボン酸があり、耐熱性が向上する観点から、芳香族ジカルボン酸がより好ましい。
【0112】
芳香族ジカルボン酸は、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシルフェニル酢酸、m-フェニレンジグリゴール酸、p-フェニレンジグリコール酸、ジフェニルジ酢酸、ジフェニル-p,p'-ジカルボン酸、ジフェニル-4,4'-ジ酢酸、ジフェニルメタン-p,p'-ジカルボン酸、ジフェニルエタン-m,m'-ジカルボン酸、スチルベンジルカルボン酸、ジフェニルブタン-p,p'-ジカルボン酸、ベンゾフェノン-4,4'-ジカルボン酸、ナフタリン-1,4-ジカルボン酸、ナフタリン-1,5-ジカルボン酸、ナフタリン-2,6-ジカルボン酸、ナフタリン-2,7-ジカルボン酸、p-カルボキシフェノキシ酢酸、p-カルボキシフェノキシブチル酸、1,2-ジフェノキシプロパン-p,p'-ジカルボン酸、1,5-ジフェノキシペンタン-p,p'-ジカルボン酸、1,6-ジフェノキシヘキサン-p,p'-ジカルボン酸、p-(p-カルボキシフェノキシ)安息香酸、1,2-ビス(2-メトキシフェノキシ)-エタン-p,p'-ジカルボン酸、1,3-ビス(2-メトキシフェノキシ)プロパン-p,p'-ジカルボン酸、1,4-ビス(2-メトキシフェノキシ)ブタン-p,p'-ジカルボン酸、1,5-ビス(2-メトキシフェノキシ)-3-オキシペンタン-p,p'-ジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸は、例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、コルク酸、マゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0113】
2価アルコールは、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,4-ジオール、cis-2-ブテン-1,4-ジオール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの中でもエチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
2価フェノールは、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA等が挙げられる。
環状エーテル化合物は、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0114】
ジカルボン酸及び2価アルコールは、それぞれ単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0115】
(ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂は、結晶性樹脂であり、例えば、カルボン酸成分と、アミノ基を2個以上有する化合物(Am)とを脱水縮合反応させて合成できる。
【0116】
カルボン酸成分は、例えば、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。なお、カルボン酸成分は、3以上のカルボキシル基を有する化合物を使用できる。
アミノ基を2個以上有する化合物(Am)は、例えば、公知のものを使用することができ、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジアミン等の脂環式ポリアミンを含む脂肪族ポリアミン;フェニレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン;1,3-ジアミノ-2-プロパノール、1,4-ジアミノ-2-ブタノール、1-アミノ-3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1-オール、4-(2-アミノエチル)-4,7,10-トリアザデカン-2-オール、3-(2-ヒドロキシプロピル)-o-キシレン-α,α'-ジアミン等のジアミノアルコールが挙げられる。
ポリアミド樹脂の市販品は、例えば、6ナイロン(東レ社製)、66ナイロン(東レ社製)、610ナイロン(東レ社製)等が挙げられる。
【0117】
(ポリエーテルイミド樹脂)
ポリエーテルイミド樹脂は、ガラス転移温度が180℃超の非晶性樹脂であり、透明性良好で高強度、高耐熱性、高弾性率および広範な耐薬品性を有している。そのため自動車、遠隔通信、航空宇宙、電気/電子、輸送およびヘルスケアなどの多様な用途で広範に使用されている。
ポリエーテルイミド樹脂の製造プロセスの1つは、ビスフェノールA二ナトリウム塩(BPA・Na2)などのジヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩とビス(ハロフタルイミド)との重合によるものである。得られたポリエーテルイミドの分子量は2つの方法で制御できる。第1の方法は、ジヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩に対して、モル過剰のビス(ハロフタルイミド)を使用することである。第2の方法は、末端キャッピング剤を形成する無水フタル酸などの単官能性化合物の存在下でビス(無水ハロフタル酸)を調製することである。無水フタル酸は、有機ジアミンの一部と反応してモノハロ-ビス(フタルイミド)を形成する。モノハロ-ビス(フタルイミド)は、成長中のポリマー鎖におけるフェノキシド末端基との反応による重合ステップにおいて、末端-キャッピング剤として働く。
ポリエーテルイミド樹脂の市販品は、例えば、ULTEM(サウジ基礎産業公社製)等が挙げられる。
【0118】
(シクロオレフィン樹脂)
シクロオレフィン樹脂は、主鎖および又は側鎖に脂環構造を有する非晶性樹脂である。脂環構造の種類は、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、およびビニル脂環式炭化水素重合体、ならびにこれらの水素化物等が挙げられる。これらの中でも成形性と透明性に優れることから、ノルボルネン重合体が好ましい。ノルボルネン単量体は、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)等が挙げられる。
シクロオレフィン樹脂の市販品は、例えば、トパス(ポリプラスチックス社製)、アペル(三井化学社製)等が挙げられる。
【0119】
(ポリビニルアセタール樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタールが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂より好ましい。ポリビニルブチラール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドを酸性条件下で反応させて合成できる。
【0120】
熱可塑性樹脂は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0121】
樹脂組成物において紫外線吸収性化合物の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.05~1質量部がより好ましい。
【0122】
樹脂組成物は、例えば、紫外線吸収性化合物を高濃度で配合したマスターバッチとして製造することが好ましい。マスターバッチを作製し、次いで、希釈樹脂(熱可塑性樹脂)と溶融混錬して成形体を作製すると、マスターバッチを経ず作製した成形体と比較して、紫外線吸収性化合物を成形体中に均一に分散し易く、紫外線吸収剤の凝集を抑制できる。これにより、成形体の透明性が向上する。
マスターバッチは、例えば、紫外線吸収性化合物と熱可塑性樹脂を溶融混練し、ペレタイザーを使用してペレット状に製造できる。なお、紫外線吸収性化合物の凝集を防ぐため、予め、紫外線吸収性化合物とワックスを溶融混練した分散体を作製した後、熱可塑性樹脂と共に、溶融混錬してマスターバッチを作製することが好ましい。ここで、分散体の作製は、例えば、ブレンドミキサー又は3本ロールミルを用いることが好ましい。
【0123】
樹脂組成物をマスターバッチとして作製する場合、紫外線吸収性化合物の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましい。マスターバッチ(X)と希釈用樹脂(Y)との質量比は、X/Y=1/5~1/100が好ましい。この範囲にすると成形品は、良好な光特性が得やすい。
【0124】
また、本発明の実施形態の樹脂組成物は、例えば、液状マスターバッチとして作製し、次いで、希釈樹脂(熱可塑性樹脂)とともに溶融混錬して成形体を作製することができる。
液状マスターバッチは、紫外線吸収性化合物を液体樹脂に溶解もしくは分散させて得られる。
【0125】
液体樹脂は、25℃の粘度が8,000mPa・s以下の樹脂である。なお、粘度は、10~5,000mPa・sが好ましく、100~3,000mPa・sがより好ましい。上記範囲内であると、紫外線吸収性化合物を液状マスターバッチ中に容易に分散できる。本明細書における粘度はJIS K7117-1:1999に従ってB型粘度計を用いて25℃で測定した値である。
【0126】
液体樹脂の含有量は、液状マスターバッチ100質量部中、50質量%以上が好ましく、60~95質量%がより好ましく、70~90質量%がさらに好ましい。この範囲内になると、例えば、溶融混錬の際、溶融粘度を抑制できるため、紫外線吸収性化合物を分散し易くなる。この液状マスターバッチを使用すると、透明性が高い成形体が得られる。
【0127】
また、液体樹脂の数平均分子量(Mn)は、1000~5000が好ましく、1000~3000がより好ましい。Mnが1000以上により成形体の成形性と透明性を両立し易い。また、Mnが3000以下により、分散性と帯電防止性が向上する。
【0128】
液体樹脂は、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ系樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、またはアセチルクエン酸トリブチル等が挙げられるが、主剤樹脂がポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリカーボネートなどの高い成型温度が必要な場合にも、耐熱性が高く、帯電防止性も優れる点で、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、またはアセチルクエン酸トリブチルが好ましい。
【0129】
(脂肪族ポリエステル樹脂)
脂肪族ポリエステル樹脂は、脂肪族多価カルボン酸と多価アルコールとの反応によって得られる樹脂である。
【0130】
脂肪族多価カルボン酸は、カルボキシル基を2つ以上有する脂肪族カルボン酸である。脂肪族多価カルボン酸は、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、トリカルバリル酸、1,3,6-ヘキサントリカルボン酸、1,3,5-ヘキサントリカルボン酸等が挙げられる。
【0131】
多価アルコールは、水酸基を2つ以上有するアルコールである。多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-オクタデカンジオール等の脂肪族グリコール及びジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0132】
脂肪族カルボン酸および多価アルコールは、それぞれ単独または2種類以上併用して使用できる。
【0133】
脂肪族ポリエステル樹脂の凝固点は、-5℃以下が好ましく、-50℃~-10℃がより好ましい。
【0134】
脂肪族ポリエステル樹脂の市販品は、例えば、アデカサイザーPN‐170(株式会社ADEKA製、25℃での粘度800mPa・s、凝固点-15℃、アジピン酸ポリエステル)、アデカサイザーP-200(株式会社ADEKA製、25℃での粘度2,600mPa・s、凝固点-20℃、アジピン酸ポリエステル)、アデカサイザーPN-250(株式会社ADEKA製、25℃での粘度4,500mPa・s、凝固点-20℃、アジピン酸ポリエステル)等が挙げられる。
【0135】
(ポリエーテル樹脂)
ポリエーテル樹脂は、アルキレンオキシ基の繰り返し単位を有する樹脂である。アルキレンオキシ基の炭素数は1~6が好ましい。ポリエーテル樹脂は、25℃における粘度が10,000mPa・s以下が好ましい。この粘度であれば、液状マスターバッチ用途の使用に適している。なお、アルキレンオキシ基の炭素数は、2~4が好ましい。これにより相溶性が向上する一方、吸水性を抑制できる。
【0136】
ポリエーテル樹脂は、例えば、いずれも繰り返し単位中の炭素数が2であるポリエチレングリコール、いずれも繰り返し単位中の炭素数が3であるポリトリメチレングリコールおよびポリプロピレングリコール、及びいずれも繰り返し単位中の炭素数が4であるポリテトラメチレングリコールおよびポリブチレングリコール等が挙げられる。
【0137】
(ポリエーテルエステル樹脂)
ポリエーテルエステル樹脂は、脂肪族多価カルボン酸樹脂とアルキレングリコール樹脂とのエステル化合物である。
【0138】
ポリエーテルエステル樹脂の市販品は、例えば、アデカサイザーRS‐107(株式会社ADEKA製、25℃での粘度20mPa・s、凝固点-47℃、アジピン酸エーテルエステル系樹脂)、アデカサイザーRS-700(株式会社ADEKA製、25℃での粘度30mPa・s、凝固点-53℃、ポリエーテルエステル系樹脂)等が挙げられる。
【0139】
ポリエーテルエステル樹脂の凝固点は、-5℃以下が好ましく、-50℃~-10℃がより好ましい。
【0140】
本明細書の樹脂組成物は、可塑剤分散液を作製し、次いで、希釈樹脂(熱可塑性樹脂)とともに溶融混錬して成形体を作製することができる。
【0141】
樹脂組成物において紫外線吸収性化合物の含有量は、可塑剤分散液中、0.1~30質量%が好ましい。
【0142】
可塑剤分散液は、紫外線吸収性化合物を可塑剤に溶解もしくは分散して作製する。
【0143】
可塑剤とは、分子量1000未満の化合物であり、例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、ポリエステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、エポキシ化植物油、セバシン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でもトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール-ジ-n-ヘプタノエートが好ましく、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエートがより好ましい。
【0144】
可塑剤は、単独または2種類以上併用して使用できる。
【0145】
可塑剤の含有量は、可塑剤分散液中、60~99.9質量%が好ましい。
【0146】
(樹脂型分散剤)
本発明における液状マスターバッチ、及び可塑剤分散液は樹脂型分散剤を含んでもよい。これにより、液状マスターバッチ及び可塑剤分散液中で、紫外線吸収性化合物がより均一に分散されるため、成形体はさらに高い透明性が得られる。また、樹脂型分散剤を含むことで、液状マスターバッチ及び可塑剤分散液の保存安定性が向上する。
【0147】
樹脂型分散剤は、紫外線吸収性化合物及び色材に吸着する性質を有する吸着部位と、紫外線吸収性化合物及び色材以外の成分と相溶性のある緩和部位とを有する樹脂である。樹脂型分散剤は、塩基性分散剤、酸性分散剤、中性分散剤又は両性分散剤等が挙げられる。樹脂型分散剤の主骨格は、例えば、ポリウレタン骨格、ポリオレフィン骨格、ポリ(メタ)アクリル骨格、ポリエステル骨格、ポリアミド骨格、ポリカーボネート骨格、ポリエーテル骨格、ポリシロキサン骨格、ポリビニル骨格、ポリイミド骨格、ポリウレア骨格等が挙げられ、さらにこれらの骨格の複合樹脂でもよい。また、樹脂型分散剤の分子構造に制限は無く、ランダム構造、ブロック構造、鎖状構造、櫛型構造又は星型構造等が挙げられる。
【0148】
また、樹脂型分散剤が酸性基又は塩基性基を有する場合、その一部もしくは全てが中和されていてもよい。
【0149】
酸性基としては、例えば、スルホ基、フェノール部位、リン酸基またはカルボキシル基が挙げられる。これらの中でもカルボキシル基が好ましい。
【0150】
塩基性基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、及び4級アンモニウム塩部位が挙げられる。中でも、3級アミノ基、及び4級アンモニウム塩部位が好ましい。
【0151】
上記分散剤のうち少量の添加量で分散体の粘度が低くなるという理由から、塩基性官能基を有する樹脂型分散剤及び塩基性官能基を有する高分子分散剤が好ましく、窒素原子含有グラフト共重合体、側鎖に3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、含窒素複素環などを含む官能基を有する、窒素原子含有アクリル系ブロック共重合体、ウレタン系樹脂型分散剤及びウレタン系高分子分散剤などが好ましい。
【0152】
樹脂型分散剤は、単独または2種類以上併用して使用できる。
【0153】
樹脂型分散剤の含有量は、紫外線吸収剤100質量部に対して5~200質量%程度が好ましく、10~100質量%程度がより好ましい。
【0154】
樹脂型分散剤の市販品は、例えば、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk-101、103、107、108、110、111、116、130、140、154、161、162、163、164、165、166、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155またはAnti-Terra-U、203、204、またはBYK-P104、P104S、220S、6919、またはLactimon、Lactimon-WSまたはBykumen等、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE-3000、9000、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、33500、32600、34750、35100、36600、38500、41000、41090、53095、55000、76500等、BASF社製のEFKA-46、47、48、452、4008、4009、4010、4015、4020、4047、4050、4055、4060、4080、4400、4401、4402、4403、4406、4408、4300、4310、4320、4330、4340、450、451、453、4540、4550、4560、4800、5010、5065、5066、5070、7500、7554、1101、120、150、1501、1502、1503等、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPA111、PB711、PB821、PB822、PB824等が挙げられる。
【0155】
なお、樹脂型分散剤が有機溶剤に溶解した状態の場合は、液体樹脂を添加し、減圧して加熱し、溶媒を留去して使用することが好ましい。その場合、これを含有する液状マスターバッチも有機溶剤を含まないため、工程面でも使用しやすい。
【0156】
<液状マスターバッチの製造方法>
液状マスターバッチは、紫外線吸収性化合物と液状樹脂を混合することで作製できる。なお、作製には、樹脂型分散剤を用いることが好ましい。混合には、例えば、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、またはアトライター等の装置を使用できる。
【0157】
<可塑剤分散液の製造方法>
可塑剤分散液は、紫外線吸収性化合物と可塑剤を混合することで作製できる。なお、作製には、樹脂型分散剤を用いることが好ましい。混合には、前記「液状マスターバッチの製造方法」で説明した装置を使用できる。
【0158】
本明細書の組成物は、熱可塑性樹脂、紫外線吸収性化合物以外に任意成分として、酸化防止剤、光安定剤、分散剤、ワックス等を含有できる。
【0159】
紫外線吸収性化合物と熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物は、例えば、塗料として使用できる。
【0160】
熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が、30℃以上の樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、例えば、ニトロセルロース、ポリエステル等が挙げられる。
【0161】
塗料は、樹脂型分散剤としてカルボキシル基を有する樹脂型分散剤を含んでもよい。カルボキシル基を有する樹脂型分散剤の分子構造は、櫛型又は直鎖状等が挙げられる。
【0162】
(櫛型の樹脂型分散剤)
カルボキシル基を有する櫛型の樹脂型分散剤としては、例えば、下記(S1)又は(S2)が挙げられる。
【0163】
[樹脂型分散剤(S1)]
樹脂型分散剤(S1)は、国際公開第2008/007776号、特開2008-029901号公報、及び特開2009-155406号公報等の公知の方法で製造することができる。
例えば、水酸基を有する重合体の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物である樹脂型分散剤;及び水酸基を有する化合物の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物の存在下に、エチレン性不飽和単量体を重合した重合体である樹脂型分散剤等が挙げられる。
【0164】
[樹脂型分散剤(S2)]
樹脂型分散剤(S2)は、国際公開第2008/007776号、特開2009-155406号公報、特開2010-185934号公報、及び特開2011-157416号公報等の公知の方法で製造することができる。
例えば、水酸基を有する化合物の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物の存在下に、水酸基、t-ブチル基あるいはオキセタン骨格、ブロックイソシアネートなどの熱架橋基を有するエチレン性不飽和単量体とそれ以外を重合した側鎖をもつ樹脂型分散剤;さらにその側鎖の水酸基にイソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体を反応させて得られる樹脂型分散剤等が挙げられる。
【0165】
(直鎖状の樹脂型分散剤)
直鎖状の樹脂型分散剤は、公知の方法を利用して製造することができ、例えば、特開2009-251481号公報、特開2007-23195号公報、及び特開平8-143651号公報、に示されるような公知の方法を利用して合成することができる。直鎖の分散剤の製造方法の一例として、カルボキシル基を有する分散剤は、片末端に1つの水酸基を有するビニル系重合体を原料として、トリカルボン酸無水物を水酸基に付加することによって製造することができる。
【0166】
(その他の樹脂型分散剤)
その他の樹脂型分散剤としては、紫外線吸収性化合物及び色材に吸着する性質を有する親和性部位と、紫外線吸収性化合物や色材担体と相溶性のある部位とを有し、添加化合物及び色材に吸着して着色剤担体への分散を安定化する作用を有するものであればよく、前述と重複するものも含めて、具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミド及びその塩等の油性分散剤、(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコ-ル、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂、水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、リン酸エステル系等が用いられ、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
塩基性官能基を有する高分子分散剤としては、窒素原子含有グラフト共重合体、側鎖に3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、含窒素複素環などを含む官能基を有する、窒素原子含有アクリル系ブロック共重合体及びウレタン系高分子分散剤などが挙げられる。
【0167】
樹脂型分散剤の市販品は、前記同様である。
【0168】
次に、本発明の紫外線吸収性化合物、および光硬化性樹脂を含む感光性組成物を説明する。感光性組成物は、例えば、ハードコート層、トップコート層、各種積層体の中間層などの塗膜層用途に使用できる。この場合、感光性組成物は、紫外線吸収性化合物、光重合性化合物および光重合開始剤を含むことが好ましい。また、感光性組成物中の紫外線吸収剤は光硬化性部位を含むことがより好ましい。また、感光性組成物は、樹脂を含有できる。また、感光性組成物は、光硬化性組成物として公知の添加剤及び必要に応じて有機溶剤を含有できる。
【0169】
光重合性化合物は、モノマーおよびオリゴマーを含む。光重合性化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0170】
光重合開始剤は、例えば、アセトフェノンアセトフェノン環含有化合物、ベンゾイン環含有化合物、ベンゾフェノン環含有化合物、チオキサントン環含有化合物、トリアジン環含有化合物、オキシムエステル系化合物、ホスフィン系化合物、キノン系化合物、ボレート系化合物、カルバゾール環含有化合物、イミダゾール環含有化合物、チタノセン系化合物等が挙げられる。これらの中でも高感度の面でオキシムエステル系化合物が好ましい。
【0171】
次に、本発明の実施形態の紫外線吸収性化合物、および熱硬化性樹脂を含む、熱硬化性組成物を説明する。熱硬化性組成物は、例えば、塗料、粘着剤用途に使用できる。この場合、熱硬化性組成物は、紫外線吸収性化合物、熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、さらに硬化剤を含むことが好ましい。換言すると熱硬化性組成物は、紫外線吸収剤、熱硬化性樹脂(粘着性樹脂)、および硬化剤を含有することが好ましい。なお、熱硬化性樹脂は、樹脂単独で硬化可能な樹脂、および樹脂と硬化剤が反応して硬化する樹脂を含む。
【0172】
粘着性樹脂は、ガラス転移温度が-50~-20℃の樹脂である。粘着性樹脂の種類は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ウレタン樹脂等が挙げられる。また、粘着性樹脂は、硬化剤と反応可能な官能基を有することが好ましい。官能基は、例えば、カルボキシル基、水酸基等が挙げられる。
【0173】
硬化剤は、例えば、イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤、アジリジン硬化剤、金属キレート硬化剤等が挙げられる。
【0174】
<<成形体>>
本発明の実施形態の成形体は、紫外線吸収性化合物と樹脂などを含む樹脂組成物を溶融混錬して成形して作製することができる。樹脂組成物がマスターバッチである場合、マスターバッチと希釈樹脂を溶融混錬して成形体を作製することが好ましい。なお、本発明の実施形態において成型体は型に樹脂を投入し物品を得るものである。また、成形体は、プラスチックフィルムなど型を使用せずに得た物品と成型体を含む。なお、希釈樹脂は、既に説明した熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0175】
溶融混練には、例えば、単軸混練押出機、二軸混練押出機、タンデム式二軸混練押出機等を用いることが好ましい。溶融混錬温度は、熱可塑性樹脂の種類により異なるが、通常150~320℃程度である。
【0176】
成形方法は、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形などが挙げられる。押出成形は、例えば、コンプレッション成形、パイプ押出成形、ラミネート成形、Tダイ成形、インフレーション成形、溶融紡糸等が挙げられる。
【0177】
成形温度は、希釈樹脂の軟化点によるが、通常160~320℃である。
【0178】
本発明の実施形態の成形体は、例えば、医薬品包装材、食品包装材、ディスプレイ、ガラス中間膜、光学レンズ、太陽電池、ウィンドウフィルム、眼鏡レンズ用途に使用することができる。
【0179】
医薬品包装材及び食品包装材は、熱可塑性樹脂に、例えば、ポリエステル樹脂、及びシクロオレフィン樹脂等を使用することが好ましい。これら成形体は、柔軟性および視認性が向上し、内容物の劣化を抑制できる。
【0180】
ディスプレイ、ガラス中間膜、光学レンズ、太陽電池用途で使用できる成形体は、熱可塑性樹脂から構成されている成形体であれば何でもよいが、所望の波長に対して透明な性質を有する樹脂からなるフィルムであることが好ましい。このような成形体を構成する樹脂としては、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート系樹脂、脂環構造を有するオレフィンポリマー系樹脂(脂環式オレフィンポリマー系樹脂)、セルロースエステル系樹脂などが挙げられる。
【0181】
<<塗膜>>
本発明の実施形態の塗膜は、紫外線吸収性化合物と樹脂を含む樹脂組成物、および有機溶剤などを含む塗料を基板などに塗工して乾燥し作製することができる。例えば、ハードコート層、トップコート層、各種積層体の中間層などの塗膜層、粘着剤層などが挙げられる。
【0182】
ハードコート層、トップコート層、各種積層体の中間層などの塗膜層は、例えば、ディスプレイ用材料、センサー用材料、光学制御材料、各種産業用被覆材、自動車用部品、家電製品、住宅等の建材、トイレタリー用品などの用途で、基材などに塗工して紫外線を遮蔽する膜を形成し、有機材料などの劣化を抑制することができる。
【0183】
粘着剤層は、例えば、剥離シート上に塗工し、乾燥することで粘着剤層を形成し、粘着剤層上に基材を貼り合わせて粘着シートを作製できる。
【0184】
本明細書の粘着シートは、例えば、ディスプレイ(例えば、テレビ、パソコン、スマホ等)、自動車用部品、センサー用部材、家電製品、住宅等の建材、ガラス中間膜用途などの用途で、各基材に貼り合わせる使用することが好ましい。粘着シートは、本発明の実施形態の紫外線吸収性化合物を含むことで、バックライト及び太陽光に含まれる紫外線、並びに可視光の短波長領域の光を吸収し、目及び人体への悪影響を抑制すること、並びにディスプレイの表示素子の劣化を抑制することができる。なお、シート、フィルムおよびテープは同義語である。
【0185】
<用途および効果>
本発明の紫外線吸収性化合物、それを用いた樹脂組成物、成形体および塗膜を以下の用途に用いることで、波長380nm未満の紫外線、および380nm付近のブルーライト領域の光から、有機物や人体に与えるダメージを低減することが可能である。
【0186】
ディスプレイ用途では、例えば、テレビ、パソコン、スマホ等に使用できる光学フィルム等で使用できる。本発明の成形体もしくは塗膜を使用した積層体は、ディスプレイのバックライトに含まれる紫外線や可視光の短波長領域の光を吸収することで、目への悪影響を抑制することができ、また、太陽光に含まれる紫外線や可視光の短波長領域の光を吸収することで、ディスプレイの表示素子の劣化を抑制できる。
【0187】
ガラス中間膜用途では、例えば自動車や建築物等の合わせガラス等で使用できる。上記の組成物を含む成形体を使用した合わせガラスは、太陽光に含まれる紫外線や可視光の短波長領域の光を吸収することで、目や人体への悪影響を抑制することができる。
【0188】
レンズ用途では、例えば眼鏡や光学センサー等に使用できるレンズ等で使用できる。上記の樹脂組成物を含む成形体を使用したレンズは、例えば眼鏡用途では太陽光に含まれる紫外線や可視光の短波長領域の光を吸収することで、目や人体への悪影響を抑制することができ、光学センサー用途ではノイズに成り得る不要な波長の光をカットすることで、センサーの感度を高めることができる。
【0189】
一般的に、紫外線および380nm程度の可視光短波長領域の光は樹脂を劣化するため、本発明の実施形態の紫外線吸収性化合物を使用すると樹脂を使用する用途全般において樹脂の劣化を低減できるため、成形体及び塗膜の寿命を延ばし、結果として廃棄物を削減できる。
【0190】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値または下限値は、他の段階の数値範囲の上限値または下限値と任意に組み合わせることができる。
【実施例0191】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明は実施例に限定ない。なお、「質量部」は「部」、「質量%」は「%」と記載する。
【0192】
本発明の実施形態の一般式(1)で示される紫外線吸収剤(A)の同定に使用した機器は、次の通りである。
(NMR)
BRUKER製 AVANCE400
(1H-NMRの内部標準物質として、テトラメチルシランを用い、ケミカルシフト値はδ値(ppm)、カップリング定数はHertzで示した。またsはsinglet、dはdoublet、mはmultipletの略とする。)
(LC-MS)
Waters製 ACQUITY UPLC H-Class/MS TAP XEVO TQD
(元素分析)
リガク製 蛍光X線分析装置 ZSX Primus[II]
【0193】
<紫外線吸収剤1の製造方法>
2L四つ口フラスコに、ニトロベンゼンを400部、2-クロロ-4,6-ジフェニルピリミジンを40部、塩化アルミニウムを20.2部仕込み、撹拌して懸濁させた。次に、氷水で冷却しながら、2-ナフトールを21.8部少しずつ添加した。次いで、80℃で5時間撹拌した。反応終了後、徐々に室温に戻しながら終夜攪拌した。その後、メタノールを120部、酢酸エチルを70部、1M塩酸を100部仕込み、1時間攪拌後、ろ別し、紫外線吸収剤1を含むウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを水200部中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別した後、メタノール45部をふりかけて洗浄した。濾別して得られたウェットケーキを80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収剤1を51.1部得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3‐d1):δ10.07(s,1H),8.76(d,J=4.0Hz,1H),8.10-8.06(m,4H),7.90-7.80(m,2H),7.78(m,1H),7.61-7.54(m,1H),7.53-7.54(m,5H),7.44-7.37(m,2H),7.10(d,J=9.2Hz,1H)
LC-MS:m/z=374.4
元素分析:C(83.4%),H(4.9%),N(7.4%),O(4.3%)
【0194】
【0195】
<紫外線吸収剤2~28の製造方法>
【0196】
<紫外線吸収剤2の製造方法>
紫外線吸収剤1の製造で使用した2-クロロ-4,6-ジフェニルピリミジン40部、塩化アルミニウム20.2部、2-ナフトール21.8部の代わりに、それぞれ、2,4-ジクロロピリミジン40部、塩化アルミニウム72.3部、2-ナフトール78.2部を使用した以外は、紫外線吸収剤1の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤2を89.8部得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3‐d1):δ9.08(1H,d,J=4.4Hz),8.88(1H,d,J=2.8Hz),8.27(1H,d,J=4.4Hz),7.92-7.80(5H,m),7.60-7.48(2H,m),7.45-7.35(2H,m),7.32-7.21(2H,m)
LC-MS:m/z=364.4
元素分析:C(79.1%),H(4.4%),N(7.7%),O(8.8%)
【0197】
【0198】
<紫外線吸収剤3の製造方法>
紫外線吸収剤1の製造で使用した2-クロロ-4,6-ジフェニルピリミジン40部、塩化アルミニウム20.2部、2-ナフトール21.8部の代わりに、それぞれ、2,4,6-トリクロロピリミジン40部、塩化アルミニウム88.1部、2-ナフトール95.3部を使用した以外は、紫外線吸収剤1の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤3を105.6部得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3‐d1):Δ9.02-8.96(1H,m),8.92-8.85(1H,m),8.27-8.15(2H,m),8.13-8.07(2H,m),7.97-7.77(4H,m),7.67-7.35(5H,m),7.32-7.21(4H,m)
LC-MS:m/z=506.6
元素分析:C(80.6%),H(4.4%),N(5.5%),O(9.5%)
【0199】
【0200】
<紫外線吸収剤4の製造方法>
紫外線吸収剤1の製造で使用した2-クロロ-4,6-ジフェニルピリミジン40部、塩化アルミニウム20.2部、2-ナフトール21.8部の代わりに、それぞれ、2-クロロピリミジン40部、塩化アルミニウム47.0部、2-ナフトール50.9部を使用した以外は、紫外線吸収剤1の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤4を74.2部得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3‐d1):δ10,07(s,1H),8.84-8.72(m,3H),7.90-7.80(m,2H),7.60-7.42(m,2H),7.32-7.27(m,1H),7.12-7.06(m,1H)
LC-MS:m/z=222.2
元素分析:C(75.7%),H(4.5%),N(12.6%),O(7.2%)
【0201】
【0202】
上記の通り、紫外線吸収剤4のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。他の紫外線吸収剤も上記同様にNMRで構造同定を行ったがデータは省略する。
【0203】
<紫外線吸収剤5の製造方法>
紫外線吸収剤1の製造で使用した2-クロロ-4,6-ジフェニルピリミジン40部、塩化アルミニウム20.2部、2-ナフトール21.8部の代わりに、それぞれ、2-クロロ-4,6-ジメチルピリミジン40部、塩化アルミニウム37.8部、2-ナフトール40.8部を使用した以外は、紫外線吸収剤1の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤5を65.9部得た。
LC-MS:m/z=250.3
元素分析:C(76.8%),H(5.7%),N(11.2%),O(6.3%)
【0204】
【0205】
<紫外線吸収剤6の製造方法>
紫外線吸収剤4の製造で使用した2-ナフトール50.9部の代わりに、6-tert-ブチル-2-ナフトール70.6部を使用した以外は、紫外線吸収剤4の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤6を91.5部得た。
LC-MS:m/z=278.3
元素分析:C(77.6%),H(6.5%),N(10.1%),O(5.78%)
【0206】
【0207】
<紫外線吸収剤7の製造方法>
紫外線吸収剤1の製造で使用した2-クロロ-4,6-ジフェニルピリミジン40部、塩化アルミニウム20.2部、2-ナフトール21.8部の代わりに、それぞれ、2-クロロ-4-(トリフルオロメチル)ピリミジン40部、塩化アルミニウム29.5部、2-ナフトール31.9部を使用した以外は、紫外線吸収剤1の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤7を59.3部得た。
LC-MS:m/z=290.2
元素分析:C(62.1%),H(3.1%),N(9.7%),O(5.5%),F(19.6%)
【0208】
【0209】
<中間生成物8の製造方法>
紫外線吸収剤1の製造で使用した2-クロロ-4,6-ジフェニルピリミジン40部、塩化アルミニウム20.2部、2-ナフトール21.8部の代わりに、それぞれ、2,4-ジクロロ-5-メトキシピリミジン40部、塩化アルミニウム30.1部、2-ナフトール32.5部を使用した以外は、紫外線吸収剤1の製造と同様の操作を行い、中間生成物8を58.8部得た。
LC-MS:m/z=286.7
元素分析:C(62.8%),H(3.9%),N(9.8%),O(11.2%),Cl(12.3%)
【0210】
<紫外線吸収剤8の製造方法>
紫外線吸収剤1の製造で使用した2-クロロ-4,6-ジフェニルピリミジン40部、塩化アルミニウム20.2部、2-ナフトール21.8部の代わりに、それぞれ、中間生成物8を40部、塩化アルミニウム18.8部、ピリジン11.1部を使用した以外は、紫外線吸収剤1の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤8を43.3部得た。
LC-MS:m/z=329.3
元素分析:C(72.9%),H(4.6%),N(12.8%),O(9.7%)
【0211】
【0212】
<中間生成物9の製造方法>
紫外線吸収剤2の製造で使用した塩化アルミニウム72.3部、2-ナフトール78.2部の代わりに、それぞれ、塩化アルミニウム36.2部、2-ナフトール39.1部を使用した以外は、紫外線吸収剤2の製造と同様の操作を行い、中間生成物9を66.1部得た。
LC-MS:m/z=256.7
元素分析:C(65.5%),H(3.6%),N(10.9%),O(6.2%),Cl(13.8%)
【0213】
<紫外線吸収剤9の製造方法>
紫外線吸収剤1の製造で使用した2-クロロ-4,6-ジフェニルピリミジン40部、塩化アルミニウム20.2部、2-ナフトール21.8部の代わりに、それぞれ、中間生成物9を40部、塩化アルミニウム21.0部、1,3-ジメトキシベンゼン21.7部を使用した以外は、紫外線吸収剤1の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤9を45.9部得た。
LC-MS:m/z=316.
元素分析:C(73.7%),H(5.1%),N(7.8%),O(13.4%)
【0214】
【0215】
<紫外線吸収剤10の製造方法>
中間生成物8の製造で使用した塩化アルミニウム30.1部、2-ナフトール32.5部の代わりに、それぞれ、塩化アルミニウム60.2部、2-ナフトール65.1部を使用した以外は、中間生成物8の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤10を82.2部得た。
LC-MS:m/z=394.4
元素分析:C(75.7%),H(5.1%),N(7.1%),O(12.1%)
【0216】
【0217】
<紫外線吸収剤11の製造方法>
紫外線吸収剤1の製造で使用した2-クロロ-4,6-ジフェニルピリミジン40部、塩化アルミニウム20.2部、2-ナフトール21.8部の代わりに、それぞれ、2,4,5,6-テトラクロロピリミジン40部、塩化アルミニウム74.2部、1,6-ジヒドロキシナフタレン89.1部を使用した以外は、紫外線吸収剤1の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤11を99.0部得た。
LC-MS:m/z=589.0
元素分析:C(69.3%),H(3.6%),N(4.8%),O(16.3%),Cl(6.0%)
【0218】
【0219】
<紫外線吸収剤12の製造方法>
紫外線吸収剤4の製造で使用した6-tertーブチル-2-ナフトール70.6部の代わりに、5-メトキシ‐2-ナフトール61.4部を使用した以外は、紫外線吸収剤4の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤12を84.5部得た。
LC-MS:m/z=252.3
元素分析:C(77.6%),H(6.5%),N(10.1%),O(5.78%)
【0220】
【0221】
<紫外線吸収剤13の製造方法>
紫外線吸収剤4の製造で使用した6-tert-ブチル-2-ナフトール70.6部の代わりに、1,3-ジヒドロキシベンゼン38.8部を使用した以外は、紫外線吸収剤4の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤13を62.0部得た。
LC-MS:m/z=188.2
元素分析:C(63.8%),H(4.3%),N(14.9%),O(17.0%)
【0222】
【0223】
<紫外線吸収剤14の製造方法>
紫外線吸収剤4の製造で使用した6-tert-ブチル-2-ナフトール70.6部の代わりに、1,3-ジヒドロキシナフタレン56.5部を使用した以外は、紫外線吸収剤(A-4)の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤14を79.0部得た。
LC-MS:m/z=238.2
元素分析:C(70.6%),H(4.3%),N(11.8%),O(13.4%)
【0224】
【0225】
<紫外線吸収剤15の製造方法>
紫外線吸収剤4の製造で使用した6-tert-ブチル-2-ナフトール70.6部の代わりに、2,3-ジヒドロキシナフタレン56.5部を使用した以外は、紫外線吸収剤4の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤15を77.2部得た。
LC-MS:m/z=238.2
元素分析:C(70.6%),H(4.3%),N(11.8%),O(13.4%)
【0226】
【0227】
<紫外線吸収剤16の製造方法>
紫外線吸収剤4の製造で使用した6-tert-ブチル-2-ナフトール70.6部の代わりに、6-アセチル-2-ナフトール65.7部を使用した以外は、紫外線吸収剤4の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤16を87.8部得た。
LC-MS:m/z=264.3
元素分析:C(72.7%),H(4.6%),N(10.6%),O(12.1%)
【0228】
【0229】
<紫外線吸収剤17の製造方法>
紫外線吸収剤4の製造で使用した6-tert-ブチル-2-ナフトール70.6部の代わりに、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸66.4部を使用した以外は、紫外線吸収剤4の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤17を86.3部得た。
LC-MS:m/z=266.2
元素分析:C(67.6%),H(3.8%),N(10.5%),O(18.0%)
【0230】
【0231】
<紫外線吸収剤18の製造方法>
紫外線吸収剤1の製造で使用した2-クロロ-4,6-ジフェニルピリミジン40部、塩化アルミニウム20.2部、2-ナフトール21.8部の代わりに、それぞれ、2-クロロピリミジン-5-カルボン酸エチル40部、塩化アルミニウム28.9部、2-ナフトール31.2部を使用した以外は、紫外線吸収剤1の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤18を57.5部得た。
LC-MS:m/z=294.3
元素分析:C(69.4%),H(4.8%),N(9.5%),O(16.3%)
【0232】
【0233】
<紫外線吸収剤19の製造方法>
500mL三角フラスコに、N-メチル-2-ピロリドンを100部、紫外線吸収剤17を10部、メチルヒドロキノンを0.01部、メタクリル酸グリシジルを5.4部、N,N-ジメチルベンジルアミンを0.3部仕込み、100℃に昇温して4時間撹拌した後、40℃まで降温させ反応液を得た。次いで、前記反応液に、メタノールを100部、35%塩酸を50部、水を50部、少しずつ滴下した。30分撹拌後濾別し、得られたウェットケーキを40℃で真空乾燥し、紫外線吸収剤19を13.3部得た。
LC-MS:m/z=408.4
元素分析:C(64.7%),H(5.0%),N(6.9%),O(23.5%)
【0234】
【0235】
<紫外線吸収剤20の製造方法>
500mL三角フラスコに、N-メチル-2-ピロリドンを100部、紫外線吸収剤17を10部、塩化チオニルを4.5部加え、室温で5分攪拌した。その後、水冷しながらジブチルアミンを5.4部仕込み、室温で4時間撹拌させ反応液を得た。次いで、前記反応液に、メタノールを100部、35%塩酸を50部、水を50部、少しずつ滴下した。30分撹拌後濾別し、得られたウェットケーキを40℃で真空乾燥し、紫外線吸収剤20を13.5部得た。
LC-MS:m/z=377.5
元素分析:C(73.2%),H(7.2%),N(11.1%),O(8.5%)
【0236】
【0237】
<紫外線吸収剤21の製造方法>
紫外線吸収剤4の製造で使用した6-tert-ブチル-2-ナフトール70.6部の代わりに、6-ヒドロキシナフタレン-2-スルホン酸79.1部を使用した以外は、紫外線吸収剤4の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤21を98.4部得た。
LC-MS:m/z=302.3
元素分析:C(55.6%),H(3.4%),N(9.3%),O(21.2%)
【0238】
【0239】
<紫外線吸収剤22の製造方法>
紫外線吸収剤1の製造で使用した2-クロロ-4,6-ジフェニルピリミジン40部、塩化アルミニウム20.2部、2-ナフトール21.8部の代わりに、それぞれ、2,5-ジクロロピリミジン40部、塩化アルミニウム36.2部、2-ナフトール39.1部を使用した以外は、紫外線吸収剤1の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤22を65.5部得た。
LC-MS:m/z=256.7
元素分析:C(65.5%),H(3.5%),N(10.9%),O(6.3%),Cl(13.8%)
【0240】
【0241】
<紫外線吸収剤23の製造方法>
紫外線吸収剤4の製造で使用した6-tert-ブチル-2-ナフトール70.6部の代わりに、7-ブロモ-2-ナフトール78.7部を使用した以外は、紫外線吸収剤4の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤23を98.6部得た。
LC-MS:m/z=301.1
元素分析:C(55.8%),H(3.0%),N(9.3%),O(5.3%),Br(26.5%)
【0242】
【0243】
<紫外線吸収剤24の製造方法>
紫外線吸収剤4の製造で使用した6-tert-ブチル-2-ナフトール70.6部の代わりに、4-ヒドロキシピリジン33.5部を使用した以外は、紫外線吸収剤4の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤24を57.9部得た。
LC-MS:m/z=173.2
元素分析:C(62.4%),H(4.1%),N(24.3%),O(9.3%)
【0244】
【0245】
<紫外線吸収剤25の製造方法>
紫外線吸収剤4の製造で使用した6-tert-ブチル-2-ナフトール70.6部の代わりに、6-キノリノール51.2部を使用した以外は、紫外線吸収剤4の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤25を71.2部得た。
LC-MS:m/z=223.2
元素分析:C(69.9%),H(4.1%),N(18.8%),O(7.2%)
【0246】
【0247】
<紫外線吸収剤26の製造方法>
紫外線吸収剤4の製造で使用した6-tert-ブチル-2-ナフトール70.6部の代わりに、1-ピレノール77.0部を使用した以外は、紫外線吸収剤4の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤26を94.7部得た。
LC-MS:m/z=296.3
元素分析:C(81.1%),H(4.1%),N(9.5%),O(5.4%)
【0248】
【0249】
<紫外線吸収剤27の製造方法>
紫外線吸収剤1の製造で使用した2-クロロ-4,6-ジフェニルピリミジン40部、塩化アルミニウム20.2部、2-ナフトール21.8部の代わりに、それぞれ、2-クロロ-4-フェニルキナゾリン40部、塩化アルミニウム22.4部、2-ナフトール24.2部を使用した以外は、紫外線吸収剤1の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤27を53.9部得た。
LC-MS:m/z=348.4
元素分析:C(82.7%),H(8.1%),N(4.6%),O(4.6%)
【0250】
【0251】
<紫外線吸収剤28の製造方法>
紫外線吸収剤4の製造で使用した6-tert-ブチル-2-ナフトール70.6部の代わりに、2,3-ジヒドロキシナフタレン28.3部を使用した以外は、紫外線吸収剤4の製造と同様の操作を行い、紫外線吸収剤28を62.6部得た。
LC-MS:m/z=374.4
元素分析:C(68.3%),H(3.8%),N(17.7%),O(10.1%)
【0252】
【0253】
(比較化合物1)
従来公知の紫外線吸収剤である下記比較化合物1。
【0254】
【0255】
(比較化合物2)
従来公知の紫外線吸収剤である下記比較化合物2。
【0256】
【0257】
(実施例1-1~1-28、比較例1-1および1-2)
紫外線吸収剤1~28、比較化合物1、2について、以下の測定、および評価を行った。結果を表1に示す。
【0258】
<溶液分光>
【0259】
紫外線吸収剤1~28、比較化合物1および2について、紫外~可視吸収スペクトルを測定した。結果を表1に示す。また、吸光度測定用の溶液調整方法、および測定条件は以下の通りである。
【0260】
<溶液調整方法>
(実施例1-1)
紫外線吸収剤1を1部、テトラヒドロフランを1000部混合し、完全に溶解させた。続いて、先の溶解液3部、テトラヒドロフラン97部を均一に混合し、濃度30ppmの溶液を調整した。
【0261】
紫外線吸収剤2~28、比較化合物1および2においても、表1に記載の濃度になるように調整した。
【0262】
<測定条件>
装置:U-3500(株式会社日立製作所製)
測定波長:300~700nm
溶媒:テトラヒドロフラン
濃度:表1に記載
【0263】
[極大吸収波長]
得られた吸収スペクトルにおいて、340nm~400nmの極大吸収波長(以下、λmax1とする)を表1に示す。
【0264】
[グラム吸光係数]
上記で得られた吸収スペクトルより、各紫外線吸収剤のλmax1におけるグラム吸光係数を算出し、下記基準により評価した。グラム吸光係数は、モル吸光係数をモル質量で除算した値を表す。
A:グラム吸光係数が30以上
B:グラム吸光係数が20以上、30未満
C:グラム吸光係数が20未満
【0265】
<溶解性試験>
【0266】
紫外線吸収剤1~28、比較化合物1、2について、溶解性試験を行った。
各材料をシクロヘキサノンに所定量加え、室温で攪拌し、溶解性を下記基準により評価した。AA、A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
AA:10質量%以上の濃度で濁りが認められなかった。
A:5質量%以上の濃度で濁りが認められた。
B:3質量%以上の濃度で濁りが認められた。
C:1質量%以上の濃度で濁りが認められた。
【0267】
【0268】
表1に示す通り、本発明の紫外線吸収剤は、340~390nm付近に極大吸収を有し、従来の紫外線吸収剤よりも溶解性が良好であることが確認された。
【0269】
<成形体>
【0270】
表2中の紫外線吸収剤(C)を以下に示す。
(C-1):TINUVIN 326(BASFジャパン社製、ベンゾトリアゾール系)
(C-2):TINUVIN 400(BASFジャパン社製、トリアジン系)
(C-3):アデカスタブ1413(ADEKA社製、ベンゾフェノン系)
【0271】
実施例において使用した色材(D)を以下に示す。
(D-1)C.I.ピグメントブルー 15:6
(D-2)C.I.ソルベントレッド 52
(D-3)C.I.ピグメントイエロー 147
【0272】
ここから
実施例において使用した近赤外線吸収剤(E)を以下に示す。
【0273】
【0274】
使用した熱可塑性樹脂を以下に示す。
(F-1)ポリエチレン(サンテックLD M2270、MFR=7g/10min、旭化成ケミカルズ社製)
(F-2)ポリエチレン(ノバテックUJ790、MFR=50g/10min、日本ポリエチレン社製)
(F-3)ポリプロピレン(ノバテックPP FA3EB、MFR=10.5g/10min、日本ポリプロ社製)
(F-4)ポリプロピレン(プライムポリプロJ226T、MFR=20g/10min、プライムポリマー社製)
(G-1)ポリエステルMA-2101M(ポリエステル、ユニチカ社製、結晶性樹脂、融点264℃、MFR45g/10min(280℃/2.16kg))
(G-2)ユーピロンS-3000(ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度145℃、MFR15g/10min(300℃/1.2kg))
(G-3)トパス6013M-07(シクロオレフィン樹脂、ポリプラスチックス社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度142℃、MFR13g/10min(260℃/2.16kg))
(G-4)アペル(シクロオレフィン樹脂、三井化学社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度135℃、MFR11g/10min以上(260℃/2.16kg))
(G-5)アミランCM3001-N(ポリアミド、東レ社製、結晶性樹脂、融点265℃、MFR7g/10min以上(235℃/2.16kg))
【0275】
(実施例2-1)
<マスターバッチの製造>
紫外線吸収剤1を2部と、ポリオレフィン樹脂(F-1)を98部とを同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(日本製鋼所社製)に投入し、200℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-1)を作製した。
【0276】
<フィルム成形>
希釈樹脂のポリオレフィン樹脂(F-1)90部に対して、得られたマスターバッチ(K-1)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度200℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(X-1)を成形した。
【0277】
(実施例2-2~2-7、比較例2-1および2-2)
実施例2-1と同様に、表3に記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(X-2)~(X-7)、(XX-1)~(XX-2)を成形した。
【0278】
[紫外線吸収性-1]
得られたフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:波長300nm~390nmにおける光透過率が全領域にわたって5%未満:良好
B:波長300nm~390nmにおける光透過率が全領域にわたって5%以上10%未満:実用域
C:波長300nm~390nmにおける光透過率が全領域にわたって10%以上:実用不可
【0279】
[透明性]
得られたフィルムの透明性を目視評価した。評価基準は以下の通りである。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:濁りが全く認められない。:良好
B:濁りが若干認められる。:実用域
C:明らかに濁りが認められる。:実用不可
【0280】
[耐光性]
得られたフィルムをキセノンウェザーメーターで、60W/m2の照度(波長300~400nm)で1000時間暴露した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%未満:良好
B:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%以上、30%未満:実用域
C:極大吸収波長の吸光度の減少率が30%以上:実用不可
【0281】
【0282】
(実施例2-8)
<マスターバッチの製造>
紫外線吸収剤1を2部と、ポリエステル(G-1)を98部と、を同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(日本製鋼所社製)に投入し、300℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-8)を製造した。
【0283】
<フィルム成形>
希釈樹脂のポリエステル(G-1)95部に対して、得られたマスターバッチ(K-8)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度300℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(X-8)を成形した。
【0284】
(実施例2-9~2-15、比較例2-3および2-4)
実施例2-8と同様に、表3に記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(X-9)~(X-15)、(XX-3)および(XX-4)を成形した。
【0285】
[紫外線吸収性-1]
得られたフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:波長300nm~390nmの光透過率が全領域で5%未満:良好
B:波長300nm~390nmの光透過率が全領域で5%以上10%未満:実用域
C:波長300nm~390nmの光透過率が全領域で10%以上:実用不可
【0286】
[透明性]
得られたフィルムの透明性を目視評価した。評価基準は以下の通りである。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:濁りが全く認められない。:良好
B:濁りが若干認められる。:実用域
C:明らかに濁りが認められる。:実用不可
【0287】
<ヘーズ値>
得られたフィルムに対し、ヘーズメーターでヘーズ値を測定し、下記基準で評価した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:2未満:良好
B:2以上5未満:実用域
C:5以上:実用不可
【0288】
【0289】
表3に示す通り、本発明の実施形態の成形体は、紫外領域の吸収性が高く、透明性が高い。また、少量添加で実用域に至るためフィルムの透明性が高く、ヘーズが低いことがわかった。
【0290】
(実施例3-1)
<紫外線領域吸収マスターバッチの製造>
紫外線吸収剤1を1部、紫外線吸収剤C-1を1部、ポリエステル(G-1)を98部と、を同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(日本製鋼所社製)に投入し、300℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-16)を製造した。
【0291】
<フィルム成形>
希釈樹脂のポリエステル(G-1)90部に対して、得られたマスターバッチ(K-16)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、300℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(Z-1)を成形した。
【0292】
(実施例3-2~3-4)
実施例3-1と同様に、表4に記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(Z-2)~(Z-4)を成形した。
【0293】
[紫外線吸収性-1]
得られたフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:波長300nm~390nmにおける光透過率が全領域にわたって5%未満:良好
B:波長300nm~390nmにおける光透過率が全領域にわたって5%以上10%未満:実用域
C:波長300nm~390nmにおける光透過率が全領域にわたって10%以上:実用不可
【0294】
[透明性]
得られたフィルムの透明性を目視評価した。評価基準は以下の通りである。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:濁りが全く認められない。:良好
B:濁りが若干認められる。:実用域
C:明らかに濁りが認められる。:実用不可
【0295】
(実施例3-5)
<紫外・可視光領域吸収マスターバッチの製造>
紫外線吸収剤1を1部、色材D-1を1部、色材D-2を1部、色材D-3を1部、ポリエステル(G-5)を96部、を同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(日本製鋼所社製)に投入し、300℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-20)を製造した。
【0296】
<フィルム成形>
希釈樹脂のポリエステル(G-5)90部に対して、得られたマスターバッチ(K-20)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、300℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(Z-5)を成形した。
【0297】
(実施例3-6~3-8)
実施例3-5と同様に、表4記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(Z-6)~(Z-8)を成形した。
【0298】
[紫外・可視光線吸収性]
得られたフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:波長300~650nmの光透過率が全領域にわたって1%未満:良好
B:波長300~650nmの光透過率が1%以上5%未満:実用域
C:波長300~650nmの光透過率が5%以上:実用不可
【0299】
実施例3-1~3-4と同様の方法で、透明性を評価した。
【0300】
(実施例3-9)
<紫外・近赤外領域吸収マスターバッチの製造>
紫外線吸収剤1を1部、近赤外収集色素E-1を1部、ポリエステル(G-4)を98部と、を同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(日本製鋼所社製)に投入し、300℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-24)を製造した。
【0301】
<フィルム成形>
希釈樹脂のポリエステル(G-1)90部に対して、得られたマスターバッチ(K-24)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、300℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(Z-9)を成形した。
【0302】
(実施例3-10~3-13)
実施例3-9と同様に、表5に記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(Z-10)~(Z-13)を成形した。
【0303】
[紫外・近赤外線吸収性]
得られたフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:300~390nmかつ波長700~800nmの光透過率が全領域で1%未満:良好
B:300~390nmかつ波長700~800nmの光透過率が全領域で1%以上5%未満:実用域
C:300~390nmかつ波長700~800nmの光透過率が全領域で5%以上:実用不可
【0304】
実施例3-1~3-4と同様の方法で、透明性を評価した。
【0305】
【0306】
<塗料>
(実施例4-1)
以下の組成で撹拌混合を行い、塗料を調整した。
紫外線吸収剤1 0.5部
ポリエステル(バイロンGK250、東洋紡社製) 9.5部
メチルエチルケトン 90.0部
【0307】
(実施例4-2~4-4)
表5に示すように、実施例4-1と同様に調整し、それぞれ実施例4-2~4-4の塗料を得た。
【0308】
<塗膜の形成>
得られた塗料を厚さ1000μmのガラス基板にバーコーターを用いて乾燥膜厚で10μmとなるよう塗布し、100℃2分で乾燥させて塗膜を形成した。
【0309】
(塗膜の評価)
得られた塗膜を、以下の方法で評価した。
【0310】
[紫外線吸収性-1]
得られた塗工物の透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:波長300nm~390nmの光透過率が全領域で5%未満:良好
B:波長300nm~390nmの光透過率が全領域で5%以上10%未満:実用域
C:波長300nm~390nmの光透過率が全領域で10%以上:実用不可
【0311】
[透明性]
得られた塗工物の透明性を目視評価した。なお評価基準は以下の通りである。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:濁りが全く認められない。良好
B:濁りが若干認められる。実用域
C:明らかに濁りが認められる。実用不可
[耐光性]
得られた塗工物をキセノンウェザーメーターで、60W/m2の照度(波長300~400nm)で24時間暴露した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:λmax1における吸光度の減少率が10%未満:良好
B:λmax1における吸光度の減少率が10%以上、30%未満:実用域
C:λmax1における吸光度の減少率が30%以上:実用不可
【0312】
【0313】
表5に示す通り、本発明の紫外線吸収剤を用いた塗膜は、紫外領域の吸収性が高く、透明性を損なわないことがわかった。
【0314】
<光硬化性組成物>
(実施例5-1)
以下の組成で、各原料を撹拌混合し、光硬化性組成物を調整した。
紫外線吸収剤1 1.0部
光重合性化合物(多官能アクリレート「KAYARAD DPHA」日本化薬社製)
18.0部
光重合開始剤(IGM ResinBV製「Omnirad 184」)1.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 80.0部
【0315】
(実施例5-2~5-4)
表6に示すように、実施例5-1と同様に調整し、それぞれ実施例5-2~5-4の光硬化性組成物を得た。
【0316】
(塗膜の形成)
上記の光硬化性組成物をバーコーターを用いて厚さ1mmのガラス基板に乾燥膜厚で6μmとなるよう塗布した。得られた塗布層を、100℃1分で乾燥したのち、高圧水銀ランプで400mJ/cm2の紫外線を照射して硬化し塗工物を形成した。
【0317】
(塗膜の評価)
得られた塗膜を、以下の方法で評価した。
【0318】
[紫外線吸収性-1]
得られた塗工物の透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:波長300nm~390nmの光透過率が全領域で5%未満:良好
B:波長300nm~390nmの光透過率が全領域で5%以上10%未満:実用域
C:波長300nm~390nmの光透過率が全領域で10%以上:実用不可
【0319】
[透明性]
得られた塗工物の透明性を目視評価した。なお評価基準は以下の通りである。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:濁りが全く認められない。良好
B:濁りが若干認められる。実用域
C:明らかに濁りが認められる。実用不可
【0320】
[耐光性]
得られた塗工物をキセノンウェザーメーターで、60W/m2の照度(波長300~400nm)で24時間暴露した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:λmax1における吸光度の減少率が10%未満:良好
B:λmax1における吸光度の減少率が10%以上、30%未満:実用域
C:λmax1における吸光度の減少率が30%以上:実用不可
【0321】
[耐擦傷性]
塗工物を学振試験機にセットし、スチールウールを用いて、荷重250gで10回学振させた。取り出した塗工物について、キズのつき具合を以下の5段階の目視評価に従って判断した。数値が大きいほど、硬化膜の耐擦傷性が良好であることを示す。
[評価基準]
5:キズが全くない。
4:僅かにキズが付いている。
3:キズは付いているが、基材は見えていない。
2:キズが付き、一部硬化膜が剥がれている。
1:硬化膜が剥がれてしまい、基材が剥き出しの状態。
【0322】
【0323】
表6に示す通り、本発明の紫外線吸収剤を用いた塗膜は、300~390nmの紫外領域における吸収性が高く、透明性を損なわないことがわかった。
【0324】
<金属成分(B)含有量の評価>
【0325】
<紫外線吸収剤29~33の製造方法>
【0326】
<紫外線吸収剤29の製造方法>
2L四つ口フラスコに、クロロベンゼンを40部、2-クロロピリミジン4.0部、塩化アルミニウムを6.0部仕込み、撹拌して懸濁させた。次に、氷水で冷却しながら、2-ナフトールを5.1部少しずつ添加した。次いで、80℃で5時間撹拌した。反応終了後、徐々に室温に戻しながら終夜攪拌し反応液(A'-1)を得た。一方、500mLビーカーに水を50.0部、35%塩酸を10.0部、メタノールを5.0部仕込み、反応液(A'-1)を少しずつ滴下した。紫外線吸収剤4を含むウェットケーキ(A-1)を得た。前記ウェットケーキ(A-1)を80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収剤29を得た。
【0327】
<紫外線吸収剤30の製造方法>
前記ウェットケーキ(A-1)に、メタノール4.5部をふりかけ洗浄し、濾別してウェットケーキ(A-2)を得た。得られたウェットケーキを80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収剤4を含む紫外線吸収剤30を得た。
【0328】
<紫外線吸収剤31の製造方法>
前記ウェットケーキ(A-2)をメタノール10部中に入れ室温で30分リスラリーを行い、濾別してウェットケーキ(A-3)を得た。得られたウェットケーキを80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収剤4を含む紫外線吸収剤31を得た。
【0329】
<紫外線吸収剤32の製造方法>
前記ウェットケーキ(A-3)を水150部中に入れ室温で30分リスラリーを行い、濾別してウェットケーキ(A-4)を得た。得られたウェットケーキを80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収剤4を含む紫外線吸収剤32を得た。
【0330】
<紫外線吸収剤33の製造方法>
前記反応液(A'-1)に水を加えて抽出・分液操作を行い、得られた有機層に5%重曹水と飽和食塩水を加えて分液した。得られた有機層を減圧濃縮し紫外線吸収剤33を得た。
【0331】
<金属成分(B)の測定>
紫外線吸収剤29に含まれる金属成分(B)の測定には、ICP発光分析を用いた。
【0332】
<測定条件>
紫外線吸収剤29を約0.2g精秤し、マイクロウェーブ試料前処理装置(Milestone General社製のMLS-1200MEGA)で分解処理(分解試薬として精密分析用硝酸2mLを添加)を行った。次いで、得られた分解液に超純水を加え、濾過した後の濾液25mLをメスフラスコで定容する。この溶液をICP発光分析(株式会社バリアン製、720-ES ICP オプティカル・エミッション・スペクトロメーター)で測定し、金属イオンを定量した。尚、本実施例で示す金属成分(B)の含有量とは、Na、Mg、Al、K、Ca、およびFeの各イオンの含有量の合計値を意味する。
紫外線吸収剤1の金属分析を行った結果、Na:1481ppm、Mg:899ppm、Al:45673ppm、K:155ppm、Ca:2448ppm、Fe:554ppmの結果が得られた。金属成分(B)の合計値は、51210ppmであった。
【0333】
上記の通り、本明細書では紫外線吸収剤29を例にしてICP発光分析による金属原子の測定を行った。下記に示す、他の紫外線吸収剤も上記と同様に測定し実施例6-1~6-5を行った。測定結果は表7に示した。
【0334】
(実施例6-1~6-5)
紫外線吸収剤29~33について、以下評価した。結果を表7に示す。
【0335】
<溶液分光>
【0336】
紫外線吸収剤29~33について、紫外~可視吸収スペクトルを測定した。また吸光度測定用の溶液調整方法、および測定条件は以下の通りである。
【0337】
<溶液調整方法>
(実施例6-1)
紫外線吸収剤29を1部、テトラヒドロフランを1000部混合し、完全に溶解させた。続いて、先の溶解液2部、テトラヒドロフラン98部を均一に混合し、濃度20ppmの溶液を調整した。
【0338】
紫外線吸収剤30~33においても、表7に記載の濃度になるように調整した。
【0339】
<測定条件>
装置:U-3500(株式会社日立製作所製)
測定波長:300~700nm
溶媒:テトラヒドロフラン
濃度:表7に記載
【0340】
[極大吸収波長]
得られた吸収スペクトルにおいて、340nm~400nmの極大吸収波長(以下、λmax1とする)を表7に示す。
【0341】
[吸光度]
上記で得られた吸収スペクトルにおいて、各紫外線吸収剤のλmax1における吸光度を計測した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
A:λmax1の吸光度が1.0以上
B:λmax1の吸光度が0.8以上
C:λmax1の吸光度が0.8未満
【0342】
[溶解性試験-2]
【0343】
紫外線吸収剤29~33について、溶解性試験を行った。
各材料を酢酸エチルに所定量加え、室温で攪拌し、溶解性を下記基準により評価した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
AA:10質量%以上の濃度で濁りが認められなかった。
A:5質量%以上の濃度で濁りが認められなかった。
B:3質量%以上の濃度で濁りが認められた。
C:1質量%以上の濃度で濁りが認められた。
【0344】
【0345】
表7に示す通り、金属成分が50000ppm以下の場合、紫外線吸収性と溶解性が良好であることがわかった。また、金属成分が1000ppm以下では、さらに溶解性が良好であった。
【0346】
<塗料>
(実施例7-1)
以下の組成で撹拌混合を行い、塗料を調整した。
紫外線吸収剤29 0.5部
ポリエステル(バイロンGK250、東洋紡社製) 9.5部
メチルエチルケトン 90.0部
【0347】
(実施例7-2~7-5)
表8に示すように、実施例7-1と同様に調整し、それぞれ実施例7-2~7-5の塗料を得た。
【0348】
<塗膜の形成>
得られた塗料を厚さ1000μmのガラス基板にバーコーターを用いて乾燥膜厚で10μmとなるよう塗布し、100℃2分で乾燥させて塗膜を形成した。
【0349】
(塗膜の評価)
得られた塗膜を、以下の方法で評価した。
【0350】
[紫外線吸収性-2]
得られた塗工物の透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。
[評価基準]
AA:波長300nm~390nmの極大吸収波長の吸光度が1.5以上:非常に良好
A:波長300nm~390nmの極大吸収波長の吸光度が1.0以上1.5未満:良好
B:波長300nm~390nmの極大吸収波長の吸光度が0.8以上1.0未満:実用域
C:波長300nm~390nmの極大吸収波長の吸光度が0.8未満:実用不可
【0351】
[透明性]
得られた塗工物の透明性を目視評価した。なお評価基準は以下の通りである。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:濁りが全く認められない。:良好
B:濁りが若干認められる。:実用域
C:明らかに濁りが認められる。:実用不可
【0352】
[耐光性-2]
得られた塗工物をキセノンウェザーメーターで、60W/m2の照度(波長300~400nm)で48時間暴露した。A、Bが、実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
A:λmax1における吸光度の減少率が10%未満:良好
B:λmax1における吸光度の減少率が10%以上、30%未満:実用域
C:λmax1における吸光度の減少率が30%以上:実用不可
【0353】
【0354】
表8に示す通り、金属成分が0.1ppm以上50000ppm以下の本発明の紫外線吸収剤を用いた塗膜は、紫外線吸収性、および耐光性が良好であることが確認された。