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特開2024-125562プレキャストコンクリート部材及びプレキャストコンクリート部材の製造方法
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  • 特開-プレキャストコンクリート部材及びプレキャストコンクリート部材の製造方法 図1
  • 特開-プレキャストコンクリート部材及びプレキャストコンクリート部材の製造方法 図2
  • 特開-プレキャストコンクリート部材及びプレキャストコンクリート部材の製造方法 図3
  • 特開-プレキャストコンクリート部材及びプレキャストコンクリート部材の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125562
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート部材及びプレキャストコンクリート部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/34 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
E04C3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033454
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓮尾 孝一
【テーマコード(参考)】
2E163
【Fターム(参考)】
2E163FA02
2E163FD03
2E163FD44
2E163FD46
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の排出量を削減しつつ、鉄筋の錆びを抑制できる比較的安価なプレキャストコンクリート部材を提供する。
【解決手段】プレキャストコンクリート部材1は、複数の主筋2と、主筋2の周りに配置された複数のせん断補強筋3と、モルタルによって形成され、主筋2を埋設する複数の主筋埋設部8と、モルタルよりも低いアルカリ性を有する低アルカリコンクリートによって形成され、主筋埋設部8及びせん断補強筋3を埋設するプレキャストコンクリート本体9とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート部材であって、
複数の主筋と、
前記主筋の周りに配置された複数のせん断補強筋と、
モルタルによって形成され、各主筋を埋設する複数の主筋埋設部と、
前記モルタルよりも低いアルカリ性を有する低アルカリコンクリートによって形成され、前記主筋埋設部及び前記せん断補強筋を埋設するプレキャストコンクリート本体と、を有するプレキャストコンクリート部材。
【請求項2】
前記せん断補強筋が、鉄筋部と、前記鉄筋部の外面に形成された樹脂からなる被覆部とを有する請求項1に記載のプレキャストコンクリート部材。
【請求項3】
前記主筋埋設部と前記プレキャストコンクリート本体との境界面が凹凸形状をしている請求項1又は2に記載のプレキャストコンクリート部材。
【請求項4】
プレキャストコンクリート部材の製造方法であって、
複数のせん断補強筋を含む鉄筋篭を用意し、前記鉄筋篭を型枠内の所定位置に配置するステップと、
前記型枠内の前記せん断補強筋の内側の複数の主筋が配置されるべき位置に複数のボイド型枠を配置するステップと、
前記鉄筋篭及び前記ボイド型枠が埋設されるように、前記型枠内にモルタルよりも低いアルカリ性を有する低アルカリコンクリートを打設し、前記ボイド型枠によって貫通孔が形成されたプレキャストコンクリート本体を構築するステップと、
前記プレキャストコンクリート本体の前記貫通孔の内部に前記主筋を配置するステップと、
各主筋が埋設されるように、前記貫通孔内に前記モルタルを充填するステップと、を含むプレキャストコンクリート部材の製造方法。
【請求項5】
前記ボイド型枠が、膨張可能なゴム管を備え、膨張した状態で前記型枠内に配置され、前記低アルカリコンクリートの打設後、萎んだ状態で前記プレキャストコンクリート本体から脱型される請求項4に記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法。
【請求項6】
前記ボイド型枠の外面が凹凸形状をなし、前記低アルカリコンクリートの打設によって前記ボイド型枠の前記凹凸形状が前記貫通孔の内壁面に転写される請求項5に記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート部材及びプレキャストコンクリート部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンクリートは、セメント焼成時に比較的多くの二酸化炭素を排出する。近年では、気候変動の緩和を目的として二酸化炭素の排出量を削減する取り組みが継続的に行われている。その取り組みの1つとして、製造時に二酸化炭素を多く排出するセメントの使用量を抑制した低アルカリコンクリートが着目されている。
【0003】
従来の鉄筋コンクリートでは、コンクリートがアルカリ性を有するため、コンクリート中に埋設される鉄筋は不動態皮膜(酸化化合物の被膜)によって被覆され、これにより、鉄筋の錆びが抑制される。よって、コンクリートが中性化するまで、或いはコンクリートにクラックが生じて鉄筋が外部環境に晒されるまで、コンクリート中の鉄筋の錆びは抑制される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、低アルカリコンクリートを用いた鉄筋コンクリートでは、鉄筋が不動態皮膜によって被覆されないために鉄筋が錆びやすい。これを解決し得る手段として、例えば、エポキシ樹脂などの錆びない樹脂材料で鉄筋を被覆する方法や、鉄筋の代わりにステンレスやアラミド繊維等の錆びない或いは錆びにくい材料を用いて補強筋を製造すること方法等が採られることがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-170038号公報
【特許文献1】特開2011-169019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、樹脂材料で鉄筋を被覆する場合には、鉄筋に対するコンクリートの付着力が低下する。また、鉄以外の材料を用いて製造した補強筋を用いる場合、材料自体のコストが嵩む。また、それらが鉄筋とは異なる材料特性を有するために、従来の設計手法をそのまま適用することができない上、様々な点に留意する必要があることから、設計・施工コストも嵩む。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑み、二酸化炭素の排出量を削減しつつ、鉄筋の錆びを抑制できる比較的安価なプレキャストコンクリート部材及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、プレキャストコンクリート部材(1)であって、複数の主筋(2)と、前記主筋の周りに配置された複数のせん断補強筋(3)と、モルタルによって形成され、前記主筋を埋設する複数の主筋埋設部(8)と、前記モルタルよりも低いアルカリ性を有する低アルカリコンクリートによって形成され、前記主筋埋設部及び前記せん断補強筋を埋設するプレキャストコンクリート本体(9)と、を有する。
【0009】
この態様によれば、プレキャストコンクリート本体が低アルカリコンクリートによって形成されるため、プレキャストコンクリート部材の製造における二酸化炭素の排出量を削減することができる。一方、主筋は、モルタルからなる主筋埋設部に埋設される。これにより、主筋は不動態皮膜によって被覆され、主筋の錆びが抑制される。そのため、鉄以外の材料を用いて製造した補強筋を主筋に用いる必要がなく、材料コスト、設計・施工コストの上昇を抑制することができる。
【0010】
上記の態様において、前記せん断補強筋が、鉄筋部(6)と、前記鉄筋部の外面に形成された樹脂からなる被覆部(7)とを有すると良い。
【0011】
この態様によれば、せん断補強筋が被覆部を有するため、せん断補強筋の鉄筋部の錆びが抑制される。なお、被覆部を有することにより、せん断補強筋のプレキャストコンクリート本体に対する付着力は低下するが、せん断補強筋の主筋拘束力及びせん断耐力への影響は小さいため、設計・施工コストが嵩むことはない。
【0012】
上記の態様において、前記主筋埋設部と前記プレキャストコンクリート本体との境界面が凹凸形状をしていると良い。
【0013】
この態様によれば、主筋埋設部とプレキャストコンクリート本体との一体性が強化される。
【0014】
また、上記課題を解決するために本発明のある態様は、プレキャストコンクリート部材(1)の製造方法であって、複数のせん断補強筋(3)を含む鉄筋篭(12)を用意し、前記鉄筋篭を型枠(11)内の所定位置に配置するステップと、前記型枠内の前記せん断補強筋の内側の複数の主筋(2)が配置されるべき位置に複数のボイド型枠(13)を配置するステップと、前記鉄筋篭及び前記ボイド型枠が埋設されるように、前記型枠内にモルタルよりも低いアルカリ性を有する低アルカリコンクリートを打設し、前記ボイド型枠によって貫通孔(14)が形成されたプレキャストコンクリート本体(9)を構築するステップと、前記プレキャストコンクリート本体の前記貫通孔の内部に前記主筋を配置するステップと、前記主筋が埋設されるように、前記貫通孔内に前記モルタルを充填するステップと、を含む。
【0015】
この態様によれば、主筋が貫通孔内にてモルタルによって埋設されたプレキャストコンクリート部材を容易に製造することができる。また、低アルカリコンクリートを用いてプレキャストコンクリート本体を構築するため、二酸化炭素の排出量を削減することができる。
【0016】
上記の態様において、前記ボイド型枠が、膨張可能なゴム管を備え、膨張した状態で前記型枠内に配置され、前記低アルカリコンクリートの打設後、萎んだ状態で前記プレキャストコンクリート本体から脱型されると良い。
【0017】
この態様によれば、ボイド型枠を再利用することができるため、プレキャストコンクリート部材の製造コストを低減することができる。また、ボイド型枠がプレキャストコンクリート部材内に残らないため、ボイド型枠による様々な影響を考慮する必要がない。
【0018】
上記の態様において、前記ボイド型枠の外面が凹凸形状をなし、前記低アルカリコンクリートの打設によって前記ボイド型枠の前記凹凸形状が前記貫通孔の内壁面に転写されると良い。
【0019】
この態様によれば、貫通孔の内壁面に凹凸形状が転写されることにより、貫通孔に充填されるモルタルがプレキャストコンクリート本体に強固に一体化される。
【発明の効果】
【0020】
以上の態様によれば、二酸化炭素の排出量を削減しつつ、鉄筋の錆びを抑制できる比較的安価なプレキャストコンクリート部材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】プレキャストコンクリート部材の断面図
図2図1中のII―II断面図
図3】プレキャストコンクリート部材の製造手順の説明図
図4】プレキャストコンクリート部材の製造手順の説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
図1はプレキャストコンクリート部材1の断面図であり、図2図1中のII―II断面図である。図1及び図2に示すように、プレキャストコンクリート部材1は、ラーメン構造を有する鉄筋コンクリート造(RC)の建物の躯体の一部を構成する。プレキャストコンクリート部材1は、複数の主筋2と、複数のせん断補強筋3と、コンクリート部4とを備える。
【0024】
本実施形態では、プレキャストコンクリート部材1は柱の一部を構成するものであり、主筋2は鉛直方向に延在する柱主筋であり、せん断補強筋3は水平方向に環状に延在する帯筋である。他の実施形態では、プレキャストコンクリート部材1が梁の一部として構成されても良い。この場合、主筋2は水平方向に延在する梁主筋であり、せん断補強筋3は鉛直方向に環状に延在する肋筋である。
【0025】
主筋2は、異形鉄筋からなり、コンクリート部4の軸方向の一端面4aから一端部2aを延出させるようにコンクリート部4に埋設されている。主筋2の他端部2bには機械式継手5が取り付けられている。機械式継手5はコンクリート部4の軸方向の他端面4bに鉄筋挿入孔を開放させるようにコンクリート部4に埋設される。他のプレキャストコンクリート部材1の主筋2が機械式継手5の鉄筋挿入孔に挿入され、鉄筋挿入孔にグラウトが注入されることにより、両プレキャストコンクリート部材1の主筋2は互いに継ぎ合わされる。
【0026】
図1の拡大図に示すように、せん断補強筋3は、異形鉄筋からなる鉄筋部6と、鉄筋部6の外面に形成された樹脂からなる被覆部7とを有する被覆鉄筋である。被覆部7は本実施形態ではエポキシ樹脂により形成されている。被覆部7は、曲げ加工された鉄筋部6の外面に塗装されたエポキシ樹脂が硬化することによって形成される。
【0027】
コンクリート部4は、主筋2を埋設する複数の主筋埋設部8と、主筋埋設部8及びせん断補強筋3を埋設するプレキャストコンクリート本体9とを有している。主筋埋設部8は、主筋2ごとに対応する主筋2を取り囲むように管状に設けられ、プレキャストコンクリート本体9の軸方向長さの全長に亘って形成される。
【0028】
主筋埋設部8とプレキャストコンクリート本体9との境界面、即ち主筋埋設部8の外面及びプレキャストコンクリート本体9が画定する貫通孔14の内面は凹凸形状に形成されている。これにより、主筋埋設部8とプレキャストコンクリート本体9との一体性が強化されている。
【0029】
主筋埋設部8はモルタルによって形成されている。他の実施形態では、主筋埋設部8がセメントミルク又はセメントミルクに混和材を混ぜたものによって形成されても良い。主筋埋設部8はセメントを含むことにより、強アルカリ性を示し、主筋2の表面には不働態被膜が形成される。これにより、主筋2は防錆された状態になり、主筋2の錆びが抑制される。主筋埋設部8のモルタルは、pH値が12以上のアルカリ性を示すことが望ましい。
【0030】
プレキャストコンクリート本体9は、主筋埋設部8よりも低いアルカリ性を有する低アルカリコンクリートによって形成されている。そのようなコンクリートとして、シリカフューム、フライアッシュなどのポゾラン作用のある材料や、高炉スラグ微粉末などの潜在水硬性のある材料をセメントに混合した低アルカリ型セメントに、水及び骨材に加えたものがある。低アルカリコンクリートのpH値は11以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましい。
【0031】
このように、プレキャストコンクリート本体9が低アルカリコンクリートによって形成されるため、プレキャストコンクリート部材1の製造における二酸化炭素の排出量が削減される。一方、主筋2は、モルタルからなる主筋埋設部8に埋設される。これにより、主筋2は不動態皮膜によって被覆され、主筋2の錆びが抑制される。そのため、鉄以外の材料を用いて製造した補強筋を主筋2に用いる必要がなく、材料コスト、設計・施工コストの上昇が抑制される。
【0032】
上記のようにせん断補強筋3は鉄筋部6と鉄筋部6の外面に形成された樹脂からなる被覆部7とを有するため、鉄筋部6の錆びが抑制される。なお、被覆部7を有することにより、せん断補強筋3のプレキャストコンクリート本体9に対する付着力は低下するが、せん断補強筋3の主筋拘束力及びせん断耐力への影響は小さいため、設計・施工コストが嵩むことはない。
【0033】
次に、このように構成されるプレキャストコンクリート部材1の製造方法について、図3及び図4を参照して説明する。プレキャストコンクリート部材1は、軸線を鉛直にして使用されるが、軸線を水平にした姿勢で製造される。以下で説明する手順は主に作業員によって行われるが、自動化された機械によって行われても良い。
【0034】
図3(A)に示すように、プレキャストコンクリート部材1を製造するための柱用型枠11の底板11a上の所定位置に、複数のせん断補強筋3を所定位置に並ぶように組み付けた鉄筋篭12を配置する。鉄筋篭12は、複数のせん断補強筋3を含んでいれば良く、複数のせん断補強筋3を互いに所定位置に配置するための図示しない組立用鉄筋を含んで良い。鉄筋篭12は、図示しないスペーサによって底板11aから上方へ所定の被り厚だけ離間した位置に配置される。
【0035】
次に、図3(B)に示すように、鉄筋篭12の内側具体的には複数の環状のせん断補強筋3の内側を通過するように複数のボイド型枠13を配置する。なお、図3(B)及び(C)においては、上端及び下端に配置されるボイド型枠13のみを示し、図を簡略化している。また、並行して、ボイド型枠13が貫通するように柱用型枠11の側板11bを組み立て、上方に開放された柱用型枠11を完成させる。
【0036】
図3(B)の拡大図に示すように、ボイド型枠13は、外面が凹凸形状をなし、膨張可能なゴム管を備えている。ボイド型枠13は、空気の注入によってゴム管が膨張した状態で長手方向の両端部が側板11bを貫通するように柱用型枠11内に配置される。ボイド型枠13の外面の凹凸形状は、例えば、外面に螺旋状に形成された突条13aによって形成されて良い。他の実施形態では、凹凸形状が、複数の円環突条や、複数の突起によって形成されても良い。
【0037】
柱用型枠11の組立後、図(C)に示すように、柱用型枠11に低アルカリコンクリートを打設し、鉄筋篭12及びボイド型枠13を低アルカリコンクリートに埋設する。これにより、低アルカリコンクリートによって形成され、せん断補強筋3を埋設したプレキャストコンクリート本体9が構築される。
【0038】
低アルカリコンクリートの硬化後、柱用型枠11を解体する。また、複数のボイド型枠13を取り外す。具体的には、ゴム管内の空気を抜いてゴム管を萎ませた状態で引き抜くことにより、ボイド型枠13をプレキャストコンクリート本体9から脱型する。脱型により、プレキャストコンクリート本体9には、複数のボイド型枠13によって複数の貫通孔14が形成される。
【0039】
ボイド型枠13は萎ませた状態でプレキャストコンクリート本体9から脱型され、破壊する必要がないため、再利用することができる。そのため、プレキャストコンクリート部材1の製造コストが低減される。また、ボイド型枠13がプレキャストコンクリート部材1内に残らないため、ボイド型枠13による様々な影響を考慮する必要がない。なお、ボイド型枠13はこれに限られるものではなく、どのような形状、構成であっても良い。ボイド型枠13の一例の詳細については、本出願人による特許第5396026号を参照されたい。
【0040】
上記のようにボイド型枠13の外面は凹凸形状をなす。そのため、低アルカリコンクリートの打設によってボイド型枠13の凹凸形状が低アルカリコンクリート、即ちプレキャストコンクリート本体9の貫通孔14の内壁面に転写される。
【0041】
その後、図4(D)に示すように、主筋2をプレキャストコンクリート本体9の貫通孔14に挿入し、所定の位置、典型的には貫通孔14の中央に主筋2を配置する。機械式継手5がプレキャストコンクリート本体9の軸方向の端面に整合するように主筋2の軸方向位置は調整される。
【0042】
続いて、図4(D)に示すように、専用の型枠15によってプレキャストコンクリート本体9の貫通孔14の両端を塞ぎ、貫通孔14内にモルタルを充填する。モルタルは、主筋2を取り囲むように貫通孔14内を内壁面に沿って流動し、内壁面の凹部に進入した状態で硬化する。これにより、モルタルは主筋2を取り囲むようにその内部に埋設する。
【0043】
貫通孔14の内壁面に凹凸形状が転写され、主筋埋設部8とプレキャストコンクリート本体9との境界面が凹凸形状になることにより、貫通孔14に充填されるモルタルはプレキャストコンクリート本体9に強固に一体化される。
【0044】
図3(C)に示すように、本実施形態の製法方法は、柱用型枠11内にモルタルよりも低いアルカリ性を有する低アルカリコンクリートを打設し、ボイド型枠13によって貫通孔14が形成されたプレキャストコンクリート本体9を構築するステップを含む。また、図4(D)に示すように、製法方法は、プレキャストコンクリート本体9の貫通孔14の内部に主筋2を配置するステップと、主筋2が埋設されるように、貫通孔14内にモルタルを充填するステップとを含む。
【0045】
それらにより、主筋2が貫通孔14内にてモルタルによって埋設されたプレキャストコンクリート部材1が容易に製造可能である。また、低アルカリコンクリートを用いてプレキャストコンクリート本体9を構築するため、二酸化炭素の排出量が削減される。
【0046】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。例えば、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、素材、製造手順など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更することができる。また、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 :プレキャストコンクリート部材
2 :主筋
3 :せん断補強筋
4 :コンクリート部
6 :鉄筋部
7 :被覆部
8 :主筋埋設部
9 :プレキャストコンクリート本体
11 :柱用型枠
12 :鉄筋篭
13 :ボイド型枠
13a :突条
14 :貫通孔
図1
図2
図3
図4