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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125571
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】扉体および建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/88 20060101AFI20240911BHJP
   E06B 3/82 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
E06B3/88
E06B3/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033475
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 ユカリ
(72)【発明者】
【氏名】松村 心互
【テーマコード(参考)】
2E016
【Fターム(参考)】
2E016HA06
2E016JA11
2E016KA05
2E016KA06
2E016KA09
2E016LA01
2E016LB03
2E016LC02
2E016MA06
2E016MA08
2E016MA13
2E016NA07
2E016RA02
(57)【要約】
【課題】錠ケースなどの付属部品が取り外された状態であってもエッジ材のずれを防止することのできる扉体を提供する。
【解決手段】扉体10は、四周枠組みした骨材18の見付け面を表面材20によって覆い、上下方向に沿って延在する骨材18の見込み面にエッジ材22を配設するとともに、エッジ材22に設けた挿通開口22A5を介して骨材に錠ケース24A,24Bを取り付ける。錠ケース24A,24Bの見込み面を形成するフロント壁24A2,24B2と骨材18の見込み面との間には錠ケース24A,24Bの見付け位置を規定するスペーサ28が設けられる。エッジ材22は、骨材18の見込み面に形成された係合受部18A7,18A8に対してX1方向にスライドさせて見付け方向にずれないように係合する係合フック部22A2,22A3を備える。スペーサ28は少なくとも挿通開口22A5に対してX1方向の側で接している。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四周枠組みした骨材の見付け面を表面材によって覆い、上下方向に沿って延在する骨材の見込み面にエッジ材を配設するとともに、前記エッジ材に設けた挿通開口を介して前記骨材に付属部品を取り付けるようにした扉体であって、
前記付属部品の見込み面を形成するフロント壁と前記骨材の見込み面との間には前記付属部品の見付け位置を規定するスペーサが設けられ、
前記エッジ材は、前記骨材の見込み面に形成された係合片に対して見込み方向に沿った第1方向にスライドさせて見付け方向にずれないように係合する係合部を備え、
前記スペーサは前記挿通開口に対して前記第1方向の側で接している
ことを特徴とする扉体。
【請求項2】
前記スペーサは前記挿通開口に対して前記第1方向と逆の第2方向の側で接している
ことを特徴とする請求項1に記載の扉体。
【請求項3】
前記スペーサは板状であって前記付属部品の前記フロント壁をネジで取り付けるためのネジ挿通孔を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の扉体。
【請求項4】
前記係合部は、前記エッジ材の見込み面壁から内周側に突出しさらに前記第1方向に屈曲した形状であって、前記骨材の前記係合片は前記骨材の見込み面から外周側に突出しさらに前記第1方向と逆の第2方向に屈曲した形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の扉体。
【請求項5】
前記スペーサは前記骨材の見込み面に対して見付け方向に押し込むことによりスナップフィット構造によって固定される
ことを特徴とする請求項1に記載の扉体。
【請求項6】
前記付属部品は上側の第1付属部品と下側の第2付属部品とからなり、それぞれ前記フロント壁から突出するケース本体を有し、
前記骨材には第1付属部品および第2付属部品の前記ケース本体が収容される第1収容開口と第2収容開口とが形成され、
前記スペーサは前記第1収容開口と前記第2収容開口とを仕切る橋架部に当接して設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の扉体。
【請求項7】
請求項1~請求項5のいずれかひとつに記載した扉体と、前記扉体を開閉可能に支持する枠体とを備えた
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉体および建具に関する。
【背景技術】
【0002】
ドア等の建具に適用される扉体では、四周枠組みした骨材の見付け面を表面材によって覆うことにより扉本体を構成し、扉本体の戸先となる見込み面及び吊り元となる見込み面にそれぞれエッジ材を配設するようにしている。エッジ材は、取付ネジを骨材に螺合することによって扉本体の見込み面に取り付けられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-218858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の扉体は、見込み面の高さ方向のほぼ中間となる位置に錠ケースが取り付けられている。錠ケースは、薄型の直方体状を成すケース本体と、ケース本体の一側面に設けられたフランジ状のフロント壁とを備える。この錠ケースは、エッジ材に形成した挿通開口を介してケース本体が扉体の内部に収容され、フロント壁を介して骨材に取付ネジを螺合することによって扉体に保持されている。フロント壁と骨材との間にはスペーサとしての機能がある被挟持部材が設けられている。
【0005】
エッジ材は骨材の見込み面に形成された係合片に対して室外から室内に向かう第1方向にスライドさせて見付け方向および第1方向にずれないように係合している。エッジ材はさらにネジおよび錠ケースが嵌め合うことによって骨材に固定され第1方向とは逆の第2方向にもずれないようになっている。
【0006】
ところが扉体の輸送時には錠ケースが外されていることがある。また、意匠上の観点からネジはエッジ材の上下端の目立ちにくい箇所のみに設けられている。そうするとエッジ材の中央部分は第2方向への変位規制手段がなく、輸送の振動などによってはずれてしまう懸念がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、錠ケースなどの付属部品が取り外された状態であってもエッジ材のずれを防止することのできる扉体および建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる扉体は、四周枠組みした骨材の見付け面を表面材によって覆い、上下方向に沿って延在する骨材の見込み面にエッジ材を配設するとともに、前記エッジ材に設けた挿通開口を介して前記骨材に付属部品を取り付けるようにした扉体であって、前記付属部品の見込み面を形成するフロント壁と前記骨材の見込み面との間には前記付属部品の見付け位置を規定するスペーサが設けられ、前記エッジ材は、前記骨材の見込み面に形成された係合片に対して見込み方向に沿った第1方向にスライドさせて見付け方向にずれないように係合する係合部を備え、前記スペーサは前記挿通開口に対して前記第1方向の側で接していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる建具は、前記扉体と、前記扉体を開閉可能に支持する枠体とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、付属部品の見込み面を形成するフロント壁と骨材の見込み面との間には付属部品の見付け位置を規定するスペーサが設けられ、該スペーサは挿通開口に対して第1方向の側で接している。したがって、錠ケースなどの付属部品が取り外された状態であってもエッジ材は第2方向への変位が規制されてずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態にかかる扉体の斜視図である。
図2】本発明の実施形態にかかる建具の横断面図である。実施形態にかかる扉体10を示す側面模式断面図である。
図3】扉体の戸先部分を分解した状態の横断面図である。
図4】扉体の戸先部分の横断面図である。
図5】扉体の戸先部分の分解斜視図である。
図6】スペーサの斜視図である。
図7】扉体の戸先部分を組み立てる様子を示す横断面図である。
図8】輸送時における扉体の戸先部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる扉体の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態にかかる扉体10の斜視図である。図2は、本発明の実施形態にかかる建具12の横断面図である。建具12は、例えば家屋の玄関に用いられるもので、扉体10と、ヒンジ13を介して扉体10を開閉可能に支持する枠体16とを備えて構成してある。枠体16については左右の縦枠16aを図2で示すが、これらの縦枠16aの上端部同士を接続する上枠、および下端部同士を接続する下枠については図示を省略している。
【0014】
以下の説明では、建具12の奥行きに沿った方向を見込み方向と呼ぶ。見込み方向に沿った平面については、見込み面と呼ぶ。また、建具12の上縁や下縁に沿って配置される水平に沿った部材について見込み方向に直交した上下に沿う方向、および縦枠16aのように上下に沿った部材について見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向と呼ぶ。見付け方向に沿った平面については、見付け面と呼ぶ。さらに、見込み方向についてはX方向とし、見込み方向に沿って室外から室内へ向かう方向をX1方向(第1方向)、その逆で室内から室外へ向かう方向をX2方向(第2方向)として、適宜図面上で示す。
【0015】
扉体10は、四周枠組みした骨材18の室内外側の各見付け面を表面材20によって覆って構成されている。表面材20は、鋼材等の金属によって成形した薄板状部材によって成形したものである。表面材20の左右端の屈曲部20aは戸先側の骨材18の見込み方向両端部をやや覆っている。屈曲部20aの延在寸法は、後述する樹脂基部18A1の見込み方向に沿った寸法の約1/6程度に設定してある。
【0016】
以下の説明で特に断りのない限り「骨材18」とは戸先側の縦材を示すものとする。骨材18にはエッジ材22、第1錠ケース(第1付属部品)24Aおよび第2錠ケース(第2付属部品)24Bを取り付けるようにしている。第1錠ケース24Aと第2錠ケース24Bとは上下に隣接しており、第1錠ケース24Aが上側、第2錠ケース24Bが下側である。エッジ材22は、扉体10の見込み面(戸先側の骨材18の見込み面及び表面材20の屈曲部20a)を覆うもので、アルミニウム合金等の金属によって押し出し成形した金属エッジ材22Aと、硬質PVC等の硬質樹脂によって押し出し成形した樹脂エッジ材22Bとを備えている。扉体10の戸先となる見込み面に取り付けるエッジ材22と、吊り元となる見込み面に取り付けるエッジ材23とは、詳細構成は異なるものの、基本的な構成は共通している。
【0017】
図3は、扉体10の戸先部分を分解した状態の横断面図である。図3は、橋架部18A9の部分の断面としている。図4は、扉体10の戸先部分の横断面図である。図5は、扉体10の戸先部分の分解斜視図である。
【0018】
骨材18は、硬質PVC(poly vinyl chloride)等の硬質樹脂によって押し出し成形した樹脂骨部分18Aと、スチール等の金属によって押し出し成形した金属骨部分18Bとを備えている。
【0019】
樹脂骨部分18Aは、樹脂基部18A1、2つの当接部18A2,18A3及び隔壁部18A4を一体に成形したものである。樹脂基部18A1は、扉体10の見込み方向に沿った寸法にほぼ等しい長さを有した板状部分である。
【0020】
樹脂骨部分18Aの当接部18A2,18A3は、樹脂基部18A1の両側縁部からそれぞれ同一方向に向けてほぼ直角に屈曲して延在した板状部分を成している。隔壁部18A4は、2つの当接部18A2,18A3の間となる部分から当接部18A2,18A3に対向するように突出した板状部分である。隔壁部18A4を設ける位置は、2つの当接部18A2,18A3の間の中心から室内側にずれた位置である。本実施形態では、それぞれの当接部18A2,18A3までの距離がほぼ3:2となる位置に隔壁部18A4が設けてある。
【0021】
当接部18A2,18A3及び隔壁部18A4には、それぞれの延在端部の全長に突条部18A5が設けてある。当接部18A2,18A3の突条部18A5は、隔壁部18A4に対向する一方の面から突出するように設けてあり、隔壁部18A4の突条部18A5は、当接部18A2,18A3に対向する両方の面から突出するように設けてある。また、第1当接部18A2には、隔壁部18A4に対向する面に支持突部18A6が設けてある。支持突部18A6は、樹脂骨部分18Aの長手に沿って延在する複数条の突出部である。本実施形態では、2つの支持突部18A6が第1当接部18A2に設けてある。支持突部18A6の突出高さは、互いに等しく、突条部18A5の突出高さよりも小さくなるように設定してある。
【0022】
扉体10において上下に沿って延在する骨材18には、上下方向のほぼ中央となる位置において第1当接部18A2と隔壁部18A4との間となる位置に第1収容開口14Aおよび第2収容開口14Bが設けてあるとともに、樹脂骨部分18Aに2つの係合受部(係合片)18A7,18A8が設けてある。収容開口14A,14Bは、後述するケース本体24A1、24B1を挿通させるためのもので、骨材18の長手方向に並んで縦長矩形に形成されている。第1収容開口14Aと第2収容開口14Bとの間は橋架部18A9で仕切られている。
【0023】
係合受部18A7,18A8は、樹脂基部18A1から外周側にほぼ直角に突出した後、さらに室外側に向けて突出した鉤状の横断面形状を有するものである。図3からも明らかなように、係合受部18A7,18A8の屈曲した部分において樹脂基部18A1に対向する面18A7a,18A8aは、先端に向けて樹脂基部18A1から漸次離隔するように傾斜し、樹脂基部18A1との隙間が増大している。一方の係合受部18A7は、第1当接部18A2と隔壁部18A4との間となる位置に設けてあり、もう一方の係合受部18A8は、隔壁部18A4と第2当接部18A3との間において隔壁部18A4に近接した位置に設けてある。
【0024】
金属骨部分18Bは、金属基部18B1及び2つの側壁部18B2,18B3を一体に成形したものである。金属基部18B1及び側壁部18B2,18B3は、それぞれ平板状を成すもので、金属基部18B1の両側縁部から側壁部18B2,18B3が同一方向に向けてほぼ直角に屈曲している。金属基部18B1には、後述するスペーサ係合孔18A9aと対向する位置にスペーサ係合孔18B1aが形成されている。
【0025】
図からも明らかなように、金属骨部分18Bは、樹脂骨部分18Aにおいて第1当接部18A2と隔壁部18A4との間の空間に配置し、金属基部18B1を樹脂基部18A1に当接させた場合に一方の側壁部18B2が支持突部18A6を介して第1当接部18A2に当接するとともに、もう一方の側壁部18B3が隔壁部18A4に当接し、かつ側壁部18B2,18B3の延在端面にそれぞれ第1当接部18A2の突条部18A5及び隔壁部18A4の突条部18A5が対向する寸法に形成してある。
【0026】
金属骨部分18Bを第1当接部18A2と隔壁部18A4との間の空間に配置する場合には、第1当接部18A2及び隔壁部18A4の間に金属基部18B1を押し込めば、第1当接部18A2及び隔壁部18A4が互いに拡開するように弾性変形するため、容易に行うことができる。金属基部18B1が樹脂基部18A1に当接した際には、上述したように側壁部18B2,18B3の延在端面が突条部18A5に対向するため、第1当接部18A2及び隔壁部18A4の間の空間から金属骨部分18Bが容易に脱落するおそれはない。表面材20の相互間には、ウレタンフォーム等の断熱材26を設けている。
【0027】
上述の構成を有する表面材20は、四周枠組みした骨材18の見付け面を覆うとともに、それぞれの屈曲部20aによって樹脂基部18A1の見込み面18A1aを一部覆うように配置し、屈曲部20aと骨材18との間を接合することによって扉本体を構成する。
【0028】
金属エッジ材22Aは、室外側に配置される部分であり、カバー基部22A1と2つの係合フック部(係合部)22A2,22A3とを一体に成形したものである。カバー基部22A1は、見込み方向に沿った寸法が樹脂骨部分18Aの樹脂基部18A1とほぼ等しくなるように構成した平板状部分である。カバー基部22A1には、タイト材収容溝22A4、および挿通開口22A5が設けてある。
【0029】
タイト材収容溝22A4は、タイト材30の基端部を収容するため凹溝であり、矩形状の横断面形状を有するように構成してある。タイト材収容溝22A4の開口両縁部には、互いに近接する方向に向けて係止片22A4aが突設してある。挿通開口22A5は、骨材18に設けた第1収容開口14A、橋架部18A9、および第2収容開口14Bに対応して形成した矩形状の開口である。挿通開口22A5の見込み方向に沿った寸法は第1収容開口14Aおよび第2収容開口14Bとほぼ同等である。挿通開口22A5の長手に沿った寸法は第1収容開口14Aの上端から第2収容開口14B2の下端までの長さよりもやや長く設定してある。
【0030】
係合フック部22A2,22A3は、樹脂基部18A1に設けた2つの係合受部18A7,18A8によって係合手段を構成するものである。本実施形態では、カバー基部22A1の一方の表面から内周側にほぼ直角に突出した後、さらに室内側に向けてほぼ直角に突出した係合フック部22A2,22A3を例示している。2つの係合フック部22A2,22A3の相互間隔は、2つの係合受部18A7,18A8の相互間隔とほぼ等しくなるように設定してある。係合受部18A7は、後述するスペーサ28が取り付けられる箇所については干渉しないように切り欠かれている。
【0031】
第2係合フック部22A3には、樹脂係合部22A7が設けてある。樹脂係合部22A7は、樹脂エッジ材22Bを係止させるためのものである。本実施形態では、第2係合フック部22A3においてカバー基部22A1とほぼ平行に延在する部分からほぼ直角に突出した後、第1係合フック部22A2に向けてほぼ直角に屈曲した樹脂係合部22A7を例示している。
【0032】
橋架部18A9にはスペーサ係合孔18A9aと、2つのネジ孔18A9bとが形成されている。スペーサ係合孔18A9aは橋架部18A9の中央にあり、2つのネジ孔18A9bはその上下の対称位置に設けられている。上側のネジ孔18A9bは第1錠ケース24Aの下端が固定される個所であり、下側のねじ穴18A9bは第2錠ケース24Bの上端が固定される箇所である。橋架部18A9は第1錠ケース24Aおよび第2錠ケース24Bを支持するのに適度な面積が確保されている。2つのネジ孔18A9bは、第1錠ケース24Aと第2錠ケース24Bとがほぼ隙間なく配置される間隔に設定されている。
【0033】
樹脂エッジ材22Bは、平板状を成すサブカバー基部22B1の一端部に金属係合部22B2を一体に設けたものである。金属係合部22B2は、金属エッジ材22Aの樹脂係合部22A7に係合されるもので、サブカバー基部22B1から内周側に突出した後、ほぼ直角に屈曲している。サブカバー基部22B1に対して金属係合部22B2は、他端部側にわずかに傾いて突出しており、金属エッジ材22Aの樹脂係合部22A7に係合した場合、カバー基部22A1に対してサブカバー基部22B1が傾斜して延在されることになる。
【0034】
金属エッジ材22Aの挿通開口22A5には、長手の両端となる部位にそれぞれ端部スペーサ21が配設してある。端部スペーサ21は、樹脂によって成形したもので、ベース部21aと2つの被挟持片部21bとが一体に成形してある。ベース部21aは、ほぼ矩形の外形形状を成すもので、エッジ材22に設けた2つの係合フック部22A2,22A3の相互間隔に等しい幅寸法を有している。ベース部21aの先端部21a1は、第1係合フック部22A2の爪部とカバー基部22A1との間に挿入可能となる板厚を有した薄板部分である。ベース部21aの基端部は、両隅部が切り欠かれた形状を成しており、中央部に位置決め部21a2を有しているとともに、位置決め部21a2の両側となる部位にそれぞれ弾性係合片21a3を有している。被挟持片部21bは、ベース部21aの両側から延在した薄板状部分であり、それぞれネジ挿通孔21b1が形成してある。
【0035】
図6はスペーサ28の斜視図である。スペーサ28は、骨材18における橋架部18A9の見込み面と後述するフロント壁24A2,24B2との間に介在して第1錠ケース24A、第2錠ケース24Bの見付け位置を規定するものである。スペーサ28は端部スペーサ21に対応して中央スペーサとも呼ぶことができる。スペーサ28は樹脂材でやや縦長の板状部品であって、基部28aと、基部28aに形成された上下2つのネジ挿通孔28bと、内周側に突出する2つの係合突起28cと、内周側面で上下方向に延在する2つの肉厚部28dと、基部28aに形成された2つの円弧孔28eとを備える。
【0036】
2つの係合突起28cは、スペーサ28の中央部で見込み方向に近接して並んでおり、それぞれの非対向面28caが上記のスペーサ係合孔18A9aの周面に対応した円弧面となっている。2つの係合突起28cの先端には互いに離間する方向にやや突出する爪28cbが設けられている。係合突起28cにおける爪28cbを除いた部分の突出長さはスペーサ係合孔18A9aおよびスペーサ係合孔18B1aの合計の孔深さにほぼ等しい。2つの円弧孔28eにおける近接する側は、それぞれ係合突起28cの非対向面28caと連続する円弧面を形成しており、略C字形状をなしている。基部28aは見込み方向両端に傾斜面28aaが形成されており、平面視で内周側が広い略台形をなしている。2つの肉厚部28dは2つの係合突起28cを挟んで見込み方向に並んでいる。スペーサ28の高さは橋架部18A9とほぼ等しい。スペーサ28および挿通開口22A5は見込み幅がほぼ等しく、スペーサ28が挿通開口22A5に嵌るようになっている。スペーサ28は対称形状であり上下反転して用いることができ、誤組立がない。
【0037】
第1錠ケース24Aは、薄型の直方体状を成すケース本体24A1と、ケース本体24A1の一側面に設けられたフロント壁24A2と、デッドボルト24A3とを備えるものである。フロント壁24A2の上下はヒレ片24A2aを形成し、該ヒレ片24A2aにはネジ挿通孔24A2bが形成されている。ケース本体24A1は、骨材18に形成した第1収容開口14Aを介して扉体10の内部に収容されるものである。
【0038】
第2錠ケース24Bはケース本体24B1、フロント壁24B2およびラッチボルト24B3を備える。ケース本体24B1、フロント壁24B2の形状は上記のケース本体24A1、フロント壁24A2に準ずるが、それぞれ高さ寸法がやや小さくなっている。フロント壁24B2の上下はヒレ片24B2aを形成し、該ヒレ片24B2aにはネジ挿通孔24B2bが形成されている。ケース本体24B1は、骨材18に形成した第2収容開口14Bを介して扉体10の内部に収容されるものである。
【0039】
フロント壁24A2はエッジ材22に形成した挿通開口22A5の上部に嵌合し、フロント壁24B2は、同じくその下部に嵌合する。つまり、フロント壁24A2,24B2は挿通開口22A5に嵌合することのできる見込み寸法を有した矩形の板状を成す。また、フロント壁24A2とフロント壁24B2との合計の高さ寸法は、挿通開口22A5の高さ寸法に等しく、フロント壁24A2とフロント壁24B2とにより挿通開口22A5を塞ぐようになっている。フロント壁24A2,24B2はケース本体24A1,24B1の端部から矩形フランジ状に四方へ突出しており、安定して固定されるが、少なくとも上下のヒレ片24A2a,24B2aを有していればよい。
【0040】
図示を省略するが、第1錠ケース24Aの室内側にはサムターンが取り付けられ、室外側にはキーシリンダが取り付けられる。デッドボルト24A3はサムターンまたはキーシリンダのキー操作によってフロント壁24A2から出没する。図示を省略するが、第2錠ケース24Bの室内側には室内ハンドルが取り付けられ、室外側には室外ハンドルが取り付けられる。ラッチボルト24B3はフロント壁24B2から弾性的に突出しており、室内ハンドルまたは室外ハンドルの操作によって没入する。
【0041】
次に、扉体10における戸先部分の組み立て手順について説明する。扉体10の戸先部分については製造工場における第1段階の組み立てと、輸送後の施工現場における第2段階の組み立てとがある。
【0042】
図7は、扉体10の戸先部分を組み立てる様子を示す横断面図である。製造工場では、まず樹脂骨部分18Aと金属骨部分18Bとを組み合わせて骨材18を形成し、さらに断熱材26を組みわせた状態で表裏を表面材20覆う。表面材20は戸先部分で屈曲させて屈曲部20aを形成する。また、金属エッジ材22Aと樹脂エッジ材22Bとを組み合わせてエッジ材22を形成する。タイト材収容溝22A4にはタイト材30を組み入れる。さらに挿通開口22A5の両側部分にそれぞれ端部スペーサ21を取り付けてエッジ材22を構成する。
【0043】
こののち図7の矢印A1で示すように、係合フック部22A2,22A3を骨材18の見込み面に押し当て、さらにエッジ材22自体を室内側に向かってスライドさせ、骨材18の係合受部18A7,18A8に係合させる。係合受部18A7,18A8の屈曲した部分は先端に向けて樹脂基部18A1から漸次離隔するように傾斜していることから、エッジ材22は多少斜めの方向からスライドさせてもよい。
【0044】
係合フック部22A2,22A3と係合受部18A7,18A8とが係合することにより、エッジ材22は室内側および外周側への変位が規制されて仮の位置決めがなされる。エッジ材22が内周側へ変位しないことは勿論である。次いで、エッジ材22の上端近傍および下端近傍部の2か所をネジ32によって骨材18に固定する(図1図5参照)。ネジ32による固定を上端近傍および下端近傍部の2か所に限定しているのは、意匠上の配慮のためである。
【0045】
2か所がネジ留めされたエッジ材22は室外側への変位についても規制されて一応の位置決めがなされる。ただしこの段階でネジ留め箇所は上端近傍および下端近傍だけであるため中央部については室外側への変位規制が十分とは言えず、輸送時の振動状態等によっては係合フック部22A2,22A3と係合受部18A7,18A8との係合がはずれてしまう懸念がある。これに対して本実施形態にかかる扉体10では、次に述べるようにスペーサ28を設けることでエッジ材22の抜けを防止している。
【0046】
図7の矢印A2で示すように、スペーサ28はスペーサ係合孔18A9a,18B1aに2つの係合突起28cを合わせて押し込むという簡易操作により橋架部18A9に固定される。つまり、2つの係合突起28cは爪28cb同士が一時的に弾性変位して接近し、スペーサ係合孔18A9a,18B1aを通過した後に元の状態に復帰して骨材18の内面に係合するというスナップフィット構造によって固定される。このときスペーサ28の2つのネジ挿通孔28bは橋架部18A9の2つのネジ孔18A9bと同じ位置になっている。係合突起28cは脇に円弧孔28eが形成されていることから弾性的に傾斜しやすい。
【0047】
図8は、輸送時における扉体10の戸先部分の斜視図である。図8に示すように、スペーサ28はちょうど挿通開口22A5に対して見込み方向に沿った一方であるX1方向、およびその逆のX2方向の側で接している。そのため、エッジ材22の略中央部はスペーサ28によってX1方向およびX2方向の両方向についてずれを防止することができる。
【0048】
エッジ材22は係合フック部22A2,22A3と係合受部18A7,18A8との係合によりX1方向へのずれが防止されていて、X2方向へのずれを防止できれば足りるため、設計条件によってはX2方向側では挿通開口22A5との間に隙間があってもよい。ただし、スペーサ28は挿通開口22A5に対して両方向で接することによりエッジ材22を一層安定的に支持することができ、また見込み寸法が長くなってヒレ片24A2a,24B2aとの当接面積を大きく確保することができ、さらに見込み方向について対称形状となって上下反転しても適用が可能となる。
【0049】
この時点で扉体10の製造工場における第1段階の組み立てが終了し、工務店等を経由し又は直接に施工現場へ輸送される。輸送時に扉体10に振動などが加わっても、上記のスペーサ28の作用によりエッジ材22が骨材18から外れることはない。なお、輸送時には扉体10に錠ケース24A,24Bは取り付けられていない。錠ケース24A,24Bにはサムターン、キーシリンダ、ハンドルなどが表面材20から突出するように付随し、これらが積載上で支障となるためである。また、錠ケース24A,24B、サムターン、キーシリンダ、ハンドルなどは施工主の要望等により種類が指定・変更される場合があるためである。
【0050】
施工現場における第2段階の組み立てでは、第1錠ケース24Aおよび第2錠ケース24Bを取り付ける。第1錠ケース24Aについては、ケース本体24A1を挿通開口22A5から第1収容開口14Aに挿通させ、フロント壁24A2を挿通開口22A5の略上半分に嵌め合わせる。フロント壁24A2の上部のヒレ片24A2aは、挿通開口22A5から一部が露呈している上側の端部スペーサ21に当接し、下部のヒレ片24A2aは、挿通開口22A5から露呈しているスペーサ28の上部に当接する。そして、ネジ34を上部のネジ挿通孔24A2b、およびネジ挿通孔21b1を通して骨材18のネジ孔18A1bに螺設し、さらに下部のネジ挿通孔24A2b、およびネジ挿通孔28bを通して橋架部18A9のネジ孔18A9bに螺設することによって第1錠ケース24Aが固定される。
【0051】
第2錠ケース24Bについては、ケース本体24A1を挿通開口22A5から第2収容開口14Bに挿通させ、フロント壁24B2を挿通開口22A5の略下半分に嵌め合わせる。フロント壁24B2の下部のヒレ片24B2aは、挿通開口22A5から一部が露呈している下側の端部スペーサ21に当接し、上部のヒレ片24B2aは、挿通開口22A5から露呈しているスペーサ28の下部に当接する。そして、ネジ34を下部のネジ挿通孔24B2b、およびネジ挿通孔21b1を通して骨材18のネジ孔18A1bに螺設し、さらに上部のネジ挿通孔24B2b、およびネジ挿通孔28bを通して橋架部18A9のネジ孔18A9bに螺設することによって第2錠ケース24Bが固定される。
【0052】
錠ケース24A,24Bが固定された扉体10では、ヒレ片24A2a,24B2aと骨材18の見込み面との間にスペーサ28が介在して設けられており、該スペーサ28は錠ケース24A,24Bの見付け位置を規定する作用がある。すなわち、スペーサ28は錠ケース24A,24Bの見付け方向の位置を規定する作用と輸送時のエッジ材22のずれを防止する作用とを兼ねており、輸送時のずれを防止するための専用部品を別途設ける必要がない。もちろんスペーサ28は扉体10の輸送後にも取り外す必要が無い。
【0053】
スペーサ28によって見付け位置が規定された錠ケース24A,24Bはフロント壁24A2,24B2が金属エッジ材22Aと同一面上の見込み面を形成する。2つのフロント壁24A2,24B2は挿通開口22A5に対して隙間なく嵌り込む。つまり、フロント壁24A2,24B2は挿通開口22A5に対してX1方向およびX2方向の側で接しており、エッジ材22が骨材18に対して見込み方向にずれることを一層確実に防止する。これにより、扉体10の開閉時などに相当大きい外力が作用してもエッジ材22がずれることはない。
【0054】
なお、第1錠ケース24Aと第2錠ケース24Bとは一体型であってもよい。その場合、スペーサ28は挿通開口22A5における中央部ではなく、上下の端部スペーサ21に代えて2つ適用するとよい。第1錠ケース24Aおよび第2錠ケース24Bのいずれか一方は省略されてもよい。また、エッジ材22の挿通開口22A5に対してフロント壁24A2,24B2に相当する部分が嵌り込む付属部品は錠ケース24A,24Bに限らず、例えば電気錠の配線にかかる通電ケースであってもよい。扉体10は玄関用途に限らず室内用であってもよい。扉体10は、ヒンジ13を介して枠体16に開閉可能に支持されているが、必ずしもこれに限定されない。また、エッジ材22は、金属エッジ材22Aと樹脂エッジ材22Bとを同一材として一体化して構成してもよい。骨材18では、強度条件により金属骨部分18Bを省略してもよい。
【0055】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0056】
本発明にかかる扉体は、四周枠組みした骨材の見付け面を表面材によって覆い、上下方向に沿って延在する骨材の見込み面にエッジ材を配設するとともに、前記エッジ材に設けた挿通開口を介して前記骨材に付属部品を取り付けるようにした扉体であって、前記付属部品の見込み面を形成するフロント壁と前記骨材の見込み面との間には前記付属部品の見付け位置を規定するスペーサが設けられ、前記エッジ材は、前記骨材の見込み面に形成された係合片に対して見込み方向に沿った第1方向にスライドさせて見付け方向にずれないように係合する係合部を備え、前記スペーサは前記挿通開口に対して前記第1方向の側で接していることを特徴とする。
【0057】
また、本発明にかかる建具は、前記扉体と、前記扉体を開閉可能に支持する枠体とを備えたことを特徴とする。
【0058】
本発明では、付属部品の見込み面を形成するフロント壁と骨材の見込み面との間には付属部品の見付け位置を規定するスペーサが設けられ、該スペーサは挿通開口に対して第1方向の側で接している。したがって、錠ケースなどの付属部品が取り外された状態であってもエッジ材は第2方向への変位が規制されてずれを防止することができる。
【0059】
本発明では、前記スペーサは前記挿通開口に対して前記第1方向と逆の第2方向の側で接していてもよい。
【0060】
本発明では、前記スペーサは板状であって前記付属部品の前記フロント壁をネジで取り付けるためのネジ挿通孔を有してもよい。
【0061】
本発明では、前記係合部は、前記エッジ材の見込み面壁から内周側に突出しさらに前記第1方向に屈曲した形状であって、前記骨材の前記係合片は前記骨材の見込み面から外周側に突出しさらに前記第2方向に屈曲した形状であってもよい。
【0062】
本発明では、前記スペーサは前記骨材の見込み面に対して見付け方向に押し込むことによりスナップフィット構造によって固定されてもよい。
【0063】
本発明では、前記付属部品は上側の第1付属部品と下側の第2付属部品とからなり、それぞれ前記フロント壁から突出するケース本体を有し、前記骨材には第1付属部品および第2付属部品の前記ケース本体が収容される第1収容開口と第2収容開口とが形成され、前記スペーサは前記第1収容開口と前記第2収容開口とを仕切る橋架部に当接して設けられてもよい。このような橋架部は挿通開口の略中央となり、エッジ材をバランスよく支持することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 扉体、12 建具、14A 第1収容開口、14B 第2収容開口、16 枠体、18 骨材、18A 樹脂骨部分、18A7,18A8 係合受部(係合片)、18A9 橋架部、18A9a,18B1a スペーサ係合孔、18A9b ネジ孔、18B 金属骨部分、20 表面材、21 端部スペーサ、22 エッジ材、22A 金属エッジ材、22A2,22A3 係合フック部(係合部)、22A5 挿通開口、22B 樹脂エッジ材、24A 第1錠ケース、24A1 ケース本体、24A2 フロント壁、24A2a ヒレ片、24A2b ネジ挿通孔、24B 第2錠ケース、24B1 ケース本体、24B2 フロント壁、24B2a ヒレ片、24B2b ネジ挿通孔、28 スペーサ、28a 基部28b ネジ挿通孔、28c 係合突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8