(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125581
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240911BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240911BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240911BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20240911BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20240911BHJP
C23C 16/46 20060101ALI20240911BHJP
H05B 3/74 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/31 B
C23C14/50 A
C23C14/50 E
C23C16/458
C23C16/46
H05B3/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033494
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】池口 雅文
(72)【発明者】
【氏名】糸山 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】早川 達也
【テーマコード(参考)】
3K092
4K029
4K030
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
3K092PP09
3K092QA05
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5F004AA01
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5F131EA04
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5F131EB54
5F131EB81
(57)【要約】
【課題】複数のヒーターに対応して設けられた複数の給電部の配置を最適化することのできる静電チャック、を提供する。
【解決手段】静電チャック10は、誘電体基板100と、誘電体基板100に内蔵された複数のヒーター500と、ヒーター500に対応して設けられた給電部50と、誘電体基板100に接合され、冷媒流路400が内部に形成されたベースプレート200と、を備える。誘電体基板100の面110に対し垂直な方向から見た場合において、冷媒流路400は、周方向に沿って円環状に伸びる複数の環状流路413と、互いに隣り合う環状流路413の間を繋ぐように、径方向に沿って直線状に伸びる径方向流路414と、を含み、冷媒流路400によって囲まれたそれぞれの領域、のことを流路領域FDとしたときに、それぞれの給電部50は、流路領域FDの内側に配置されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板に内蔵された複数のヒーターと、
それぞれの前記ヒーターに対応して設けられた給電部と、
前記誘電体基板のうち前記載置面とは反対側の面に接合され、冷媒の通る冷媒流路が内部に形成されたベースプレートと、を備え、
前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、
前記冷媒流路は、
周方向に沿って円環状に伸びる複数の環状流路と、
互いに隣り合う前記環状流路の間を繋ぐように、径方向に沿って直線状に伸びる径方向流路と、を含み、
前記冷媒流路によって囲まれたそれぞれの領域、のことを流路領域としたときに、
それぞれの前記給電部は、前記流路領域の内側に配置されていることを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、
全ての前記流路領域の内側に前記給電部が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、
少なくとも一部の前記流路領域では、当該流路領域の中央部に前記給電部が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記載置面に対し垂直な方向から見た場合において、
少なくとも一部の前記流路領域では、当該流路領域の内側に、2つの前記ヒーターに対応する2つの前記給電部が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばCVD装置やエッチング装置のような半導体製造装置には、処理の対象となるシリコンウェハ等の基板を吸着し保持するための装置として、静電チャックが設けられる。静電チャックは、吸着電極が設けられた誘電体基板と、誘電体基板を支持するベースプレートと、を備え、これらが互いに接合された構成を有する。吸着電極は、誘電体基板に内蔵されるのが一般的であるが、金属であるベースプレートが吸着電極として用いられる場合もある。吸着電極に電圧が印加されると静電力が生じ、誘電体基板上に載置された基板が吸着され保持される。
【0003】
エッチング等の処理中においては、基板の温度を適切な温度に維持する必要がある。このため、下記特許文献1に記載されているように、静電チャックには、冷媒を通すための冷媒流路が形成されることが多い。
【0004】
近年の静電チャックには、処理中において、基板の各部における温度分布(つまり面内温度分布)のばらつきを可能な限り小さくすることも求められる。このため、誘電体基板に複数のヒーターを内蔵し、各部の温度を個別に調整することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
誘電体基板に内蔵された複数のヒーターのそれぞれには、電流を供給するための一対の電路、である給電部が接続される。ヒーターのうち給電部が接続されている部分では、他の部分に比べて発熱量が小さいため、温度が低下してしまいやすい。つまり、給電部は所謂「クールスポット」の発生源となりやすい。
【0007】
面内温度分布の要求が厳しくことに伴って、冷媒流路は従来に比べて複雑化している。また、誘電体基板に内蔵されるヒーターは更に細分化され、その数は増加傾向にある。しかしながら、それぞれのヒーターの給電部を、冷媒流路との関係においてどのような位置に配置すべきかについて、従来は具体的な検討がなされていなかった。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のヒーターに対応して設けられた複数の給電部の配置を最適化することのできる静電チャック、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る静電チャックは、被吸着物が載置される載置面を有する誘電体基板と、誘電体基板に内蔵された複数のヒーターと、それぞれのヒーターに対応して設けられた給電部と、誘電体基板のうち載置面とは反対側の面に接合され、冷媒の通る冷媒流路が内部に形成されたベースプレートと、を備える。載置面に対し垂直な方向から見た場合において、冷媒流路は、周方向に沿って円環状に伸びる複数の環状流路と、互いに隣り合う環状流路の間を繋ぐように、径方向に沿って直線状に伸びる径方向流路と、を含み、冷媒流路によって囲まれたそれぞれの領域、のことを流路領域としたときに、それぞれの給電部は、流路領域の内側に配置されている。
【0010】
このような構成の静電チャックでは、それぞれの給電部が、流路領域の内側となる位置に配置される。クールスポットの原因となりやすい給電部を、上面視で冷媒流路と重ならない位置に配置することで、給電部の直上部分における基板温度の低下を抑制することができる。つまり、基板における面内温度分布のばらつきが抑制されるように、給電部の配置を最適化することができる。
【0011】
また、本発明に係る静電チャックでは、載置面に対し垂直な方向から見た場合において、全ての流路領域の内側に給電部が配置されていることも好ましい。クールスポットの原因となりやすい給電部が、上面視において広範囲に分散配置されるので、基板における面内温度分布のばらつきを更に抑制することができる。
【0012】
また、本発明に係る静電チャックでは、載置面に対し垂直な方向から見た場合において、少なくとも一部の流路領域では、当該流路領域の中央部に給電部が配置されていることも好ましい。
【0013】
流路領域の中央部では、冷媒流路からの距離が遠いため、基板の表面温度が局所的に高くなりやすい。上記構成の静電チャックでは、このような部分と上面視で重なる位置に、クールスポットの原因となりやすい給電部を配置している。これにより、流路領域の中央部における温度上昇が抑制されるので、基板における面内温度分布のばらつきを更に抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る静電チャックでは、載置面に対し垂直な方向から見た場合において、少なくとも一部の流路領域では、当該流路領域の内側に、2つのヒーターに対応する2つの給電部が配置されていることも好ましい。これにより、誘電体基板に内蔵された構造物(例えば、吸着電極に繋がる電路)との干渉を避けながら、最適な位置に給電部を配置することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数のヒーターに対応して設けられた複数の給電部の配置を最適化することのできる静電チャック、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る静電チャックの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】本実施形態のベースプレート内に形成された冷媒流路の構成を模式的に示す図である。
【
図3】本実施形態のベースプレート内に形成された冷媒流路の構成を模式的に示す図である。
【
図4】本実施形態のベースプレート内に形成された冷媒流路の構成を模式的に示す図である。
【
図5】本実施形態のベースプレートを、被接合面とは反対側から見て描いた図である。
【
図7】本実施形態におけるヒーターの具体的な構成を示す図である。
【
図8】本実施形態におけるヒーターの具体的な構成を示す図である。
【
図9】給電部が設けられる位置について説明するための図である。
【
図10】変形例におけるヒーターの具体的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0018】
本実施形態に係る静電チャック10は、例えばCVD成膜装置のような不図示の半導体製造装置の内部において、処理対象となる基板Wを静電力によって吸着し保持するものである。基板Wは、例えばシリコンウェハである。静電チャック10は、半導体製造装置以外の装置に用いられてもよい。
【0019】
図1には、基板Wを吸着保持した状態の静電チャック10の構成が、模式的な断面図として示されている。静電チャック10は、誘電体基板100と、ベースプレート200と、接合層300と、を備える。
【0020】
誘電体基板100は、セラミック焼結体からなる略円盤状の部材である。誘電体基板100は、例えば高純度の酸化アルミニウム(Al2O3)を含むが、他の材料を含んでもよい。誘電体基板100におけるセラミックスの純度や種類、添加物等は、半導体製造装置において誘電体基板100に求められる耐プラズマ性等を考慮して、適宜設定することができる。
【0021】
誘電体基板100のうち
図1における上方側の面110は、被吸着物である基板Wが載置される「載置面」となっている。また、誘電体基板100のうち
図1における下方側の面120(つまり、面110とは反対側の面120)は、後述の接合層300を介してベースプレート200に接合される「被接合面」となっている。面110に対し垂直な方向に沿って、面110側から静電チャック10を見た場合の視点のことを、以下では「上面視」のようにも表記する。
【0022】
誘電体基板100の内部には吸着電極130が埋め込まれている。吸着電極130は、例えばタングステン等の金属材料により形成された薄い平板状の層であり、面110に対し平行となるように配置されている。給電路13を介して外部から吸着電極130に電圧が印加されると、面110と基板Wとの間に静電力が生じ、これにより基板Wが吸着保持される。吸着電極130は、所謂「双極」の電極として本実施形態のように2つ設けられていてもよいが、所謂「単極」の電極として1つだけ設けられていてもよい。
【0023】
図1においては、給電路13の全体が簡略化して描かれている。給電路13のうち誘電体基板100の内部の部分は、例えば、導電体の充填された細長いビア(穴)として構成されており、その下端には不図示の電極端子が設けられている。給電路13のうちベースプレート200を貫いている部分は、上記の電極端子に一端が接続された棒状の金属(バスバー)である。ベースプレート200には、当該金属を挿通するための不図示の貫通穴が形成されている。
【0024】
誘電体基板100と基板Wとの間には空間SPが形成されている。半導体製造装置において成膜等の処理が行われる際には、空間SPには、後述のガス穴150を介して外部から温度調整用のヘリウムガスが供給される。誘電体基板100と基板Wとの間にヘリウムガスを介在させることで、両者間の熱抵抗が調整され、これにより基板Wの温度が適温に保たれる。尚、空間SPに供給される温度調整用のガスは、ヘリウムとは異なる種類のガスであってもよい。
【0025】
吸着面である面110上にはシールリング111やドット112が設けられており、空間SPはこれらの周囲に形成されている。
【0026】
シールリング111は、最外周となる位置において空間SPを区画する壁である。それぞれのシールリング111の上端は面110の一部となっており、基板Wに当接する。尚、空間SPを分割するように複数のシールリング111が設けられていてもよい。このような構成とすることで、それぞれの空間SPにおけるヘリウムガスの圧力を個別に調整し、処理中における基板Wの表面温度分布を均一に近づけることが可能となる。
【0027】
図1等において符号「116」が付されている部分は、空間SPの底面である。以下では、当該部分のことを「底面116」とも称する。シールリング111は、次に述べるドット112と共に、面110の一部を底面116の位置まで掘り下げた結果として形成されている。
【0028】
ドット112は、底面116から突出する円形の突起である。ドット112は複数設けられており、誘電体基板100の吸着面において略均等に分散配置されている。それぞれのドット112の上端は、面110の一部となっており、基板Wに当接する。このようなドット112を複数設けておくことで、基板Wの撓みが抑制される。
【0029】
それぞれの空間SPの底面116には、溝113が形成されている。溝113は、底面116から更に面120側へと後退させるように形成された溝である。溝113は、ガス穴150から供給されるヘリウムガスを、空間SP内に素早く拡散させ、空間SP内の圧力分布を短時間のうちに略均一とすることを目的として形成されている。
【0030】
誘電体基板100には、面110から面120に向かって垂直に貫くようガス穴150が形成されている。ガス穴150は複数個(例えば20個以上)形成されているが、
図1においてはそのうちの1つのみが図示されている。ガス穴150のうち空間SP側の端部は、溝113の底面において開口している。吸着電極130のうちそれぞれのガス穴150と交差する部分には、ガス穴150との干渉を避けるための開口131が形成されている。このような開口131を形成しておくことにより、ガス穴150の内面において吸着電極130が露出しないため、基板Wと吸着電極130との間における放電が防止される。
【0031】
誘電体基板100には更に、面110から面120側に向かって垂直に貫くようリフトピン穴160が形成されている。リフトピン穴160は、半導体製造装置に設けられた不図示のリフトピンが挿通される穴である。リフトピン穴160は、計3つ形成されており、これらが120度等配となるように配置されているのであるが、
図1においてはそのうちの1つのみが図示されている。リフトピン穴160を通じて上下に移動するリフトピンにより、誘電体基板100の面110に対する基板Wの着脱が行われる。吸着電極130のうちそれぞれのリフトピン穴160と交差する部分には、リフトピン穴160との干渉を避けるための開口132が形成されている。このような開口132を形成しておくことにより、リフトピン穴160の内面において吸着電極130が露出しないため、基板Wと吸着電極130との間における放電が防止される。
【0032】
誘電体基板100にはヒーター500が内蔵されている。ヒーター500は、外部から電力の供給を受けて発熱する電気ヒーターである。ヒーター500は、例えばタングステン等の金属材料により形成された薄い平板状の層であって、吸着電極130と面120との間となる位置に埋め込まれている。ヒーター500は、面110に対し平行な所定形状のパターンとして引き回されている。ヒーター500の具体的な形状については後に説明する。
【0033】
ヒーター500は複数設けられており、上面視において互いに異なる位置に配置されている。これにより、それぞれのヒーター500における発熱量を個別に調整し、基板Wの面内温度分布のばらつきを抑制することが可能となっている。それぞれのヒーター500は、面110からの距離(つまり埋め込み深さ)において互いに同じである。
【0034】
それぞれのヒーター500には、一対の給電路51、52が接続されている。給電路51、52は、ヒーター500に電力を供給するための電路を構成するものであって、ヒーター500の両端のそれぞれに接続されている。
図1においては、複数ある給電路51、52のうちの一部のみが図示されている。
【0035】
先に述べた給電路13と同様に、
図1においては、給電路51、52の全体が簡略化して描かれている。給電路51、52のうち誘電体基板100の内部の部分は、例えば、導電体の充填された細長いビア(穴)として構成されており、その下端には不図示の電極端子が設けられている。給電路51、52のうちベースプレート200を貫いている部分は、上記の電極端子に一端が接続された棒状の金属(バスバー)である。ベースプレート200には、当該金属を挿通するための不図示の貫通穴が形成されている。一対の給電路51、52のことを総じて、以下では「給電部50」とも表記する。
【0036】
給電部50は、それぞれのヒーター500に対応して個別に設けられている。つまり、給電部50の数は、ヒーター500の数と等しい。ただし、給電路51、52のうち、例えば接地電位とされる方の電路が、複数のヒーター500の間で共用されていてもよい。この場合、ヒーター500への給電用に設けられる電極端子の数は、給電路51、52の総数よりも少なくなる。
【0037】
ベースプレート200は、誘電体基板100を支持するために、誘電体基板100の面120に接合される略円盤状の部材である。ベースプレート200は、例えばアルミニウムのような金属により形成されている。ベースプレート200のうち、
図1における上方側の面210は、接合層300を介して誘電体基板100に接合される「被接合面」となっている。面210を含むベースプレート200の表面は、例えばアルミナ溶射膜のような絶縁膜で覆われていてもよい。
【0038】
接合層300は、誘電体基板100とベースプレート200との間に設けられた層であって、両者を接合している。接合層300は、絶縁性の材料からなる接着材を硬化させたものである。このような接着剤としては、例えばポリイミド系の接着剤を用いることができる。
【0039】
ベースプレート200には、面210から、
図1における下方側の面220側に向かって垂直に伸びるガス穴250が形成されている。ガス穴250は、上面視において誘電体基板100のガス穴150と重なる位置、のそれぞれに形成されており、接合層300に設けられた貫通穴を介してガス穴150に連通されている。ガス穴250は、誘電体基板100のガス穴150と共に、空間SPに向けてヘリウムガスを供給するための経路の一部となっている。
【0040】
尚、ガス穴250は、本実施形態のように全体が直線状に伸びるように形成されていてもよいが、面220に向かう途中で屈曲するように形成されていてもよい。また、面210側の複数のガス穴250を、ベースプレート200の内部において少数の流路に集約した上で、当該流路を面220側まで伸ばすような構成としてもよい。
【0041】
ベースプレート200には更に、面210から面220側に向かって垂直に貫くようリフトピン穴260が形成されている。リフトピン穴260は、誘電体基板100のリフトピン穴160と同様に、半導体製造装置に設けられた不図示のリフトピンが挿通される穴である。リフトピン穴260は、上面視において誘電体基板100のリフトピン穴160と重なる位置、のそれぞれに形成されており、接合層300に設けられた貫通穴を介してリフトピン穴160に連通されている。
【0042】
ベースプレート200の内部には、冷媒を流すための冷媒流路400が形成されている。半導体製造装置において成膜等の処理が行われる際には、外部から冷媒が冷媒流路400に供給され、これによりベースプレート200が冷却される。処理中において基板Wで生じた熱は、空間SPのヘリウムガス、誘電体基板100、及びベースプレート200を介して冷媒へと伝えられ、冷媒と共に外部へと排出される。
【0043】
冷媒流路400は、第1流路410と第2流路420とを含む。第1流路410は、冷媒流路400のうち誘電体基板100側(
図1では上方側)となる位置に配置された部分であって、第2流路420は、冷媒流路400のうち誘電体基板100側とは反対側(
図1では下方側)となる位置に配置された部分である。第1流路410と第2流路420との間は、
図1においては不図示の接続流路430によって接続されている。その結果、冷媒流路400はその全体が単一の空間として形成されている。本実施形態の冷媒流路400は、冷媒が、第2流路420を流れた後で第1流路410を流れるように構成されている。つまり、第2流路420は「往路」として構成されており、第1流路410は「復路」として構成されている。
【0044】
図2乃至5を参照しながら、冷媒流路400の具体的な構成について説明する。
図2には、冷媒流路400の全体構成が模式的な斜視図として示されている。
図2においては、冷媒流路400の構成が見やすくなるように、接続流路430を実際よりも上下方向に長く引き伸ばした上で、第1流路410、第2流路420、及び接続流路430を分離して描いてある。
図3には、本実施形態における第2流路420の構成が上面視で示されている。
図4には、本実施形態における第1流路410の構成が上面視で示されている。
図5には、面220側から見た場合における本実施形態のベースプレート200の構成が示されている。
【0045】
図2等において符号「401」が付されているのは、冷媒流路400のうち、外部から供給された冷媒が最初に流れる入口部分である。当該部分のことを、以下では「流路401」とも表記する。流路401は、面210に対して垂直な方向に伸びるように形成された円柱形状の流路である。流路401の中心軸は、上面視において面210や面220の中心と一致している。流路401は、その一端が第2流路420に繋がっており、他端が面220まで伸びている。
図5に示されるように、面220には、流路401の端部である開口281が形成されている。
【0046】
図2等において符号「402」が付されているのは、冷媒流路400のうち、外部に排出される冷媒が最後に通る出口部分である。当該部分のことを、以下では「流路402」とも表記する。流路402は、流路401と同様に、面210に対して垂直な方向に伸びるように形成された円柱形状の流路である。流路402は計3つ設けられている。それぞれの流路402は、その一端が第1流路410に繋がっており、他端が面220まで伸びている。
図5に示されるように、面220には、流路402の端部である開口282が形成されている。
【0047】
図3に示されるように、第2流路420は、複数の環状流路423と、複数の径方向流路424と、を含む。
【0048】
環状流路423は、周方向に沿って円環状に伸びるように形成された流路である。複数の環状流路423は同心円状に配置されており、それぞれの中心は面210の中心と一致している。
【0049】
径方向流路424は、互いに隣り合う環状流路423の間を繋ぐように、径方向に沿って直線状に伸びるように形成された流路である。径方向流路424は、一対の環状流路423の間において、周方向に並ぶよう複数形成されている。
【0050】
尚、複数の環状流路423の中には、完全に閉じた円環状とはなっていないものが含まれていてもよい。例えば、
図3において符号「423A」が付された環状流路423のように、途中に小さな環状の流路425が形成されているものが含まれていてもよい。流路425は、
図3において不図示のリフトピン穴260を囲むように形成された流路である。流路425は、60度等配となる位置に計6個形成されているので、流路425のうちの半数は、リフトピン穴260とは異なる位置に形成されている。
【0051】
最外周の環状流路423には、接続流路430が接続されている。
図2に示されるように、接続流路430は、最外周の環状流路423を第1流路410側へと伸ばした形状、すなわち円筒形状となるように形成されている。最外周の環状流路423には、全周に亘って接続流路430の下端が接続されている。
【0052】
以上のような構成により、外部から供給された冷媒は、流路401から第1流路410へと供給され、全体が網の目状となるよう配置された環状流路423や径方向流路424を通りながら、最外周にある接続流路430へと向かって流れる。接続流路430に到達した冷媒は、接続流路430を通って第1流路410へと向かう。
【0053】
図4に示されるように、本実施形態の第1流路410の形状は、第2流路420(
図3)の形状と概ね同じである。第1流路410は、第2流路420と同様に、複数の環状流路413と、複数の径方向流路414と、を含む。複数の環状流路413の中には、
図4において符号「413A」が付された環状流路413のように、途中に小さな環状の流路415が形成されているものが含まれる。環状流路413、径方向流路414、及び流路415は、上面視において、それぞれ環状流路423、径方向流路424、及び流路425と完全に重なる位置に形成されている。最外周の環状流路413には、全周に亘って接続流路430の上端が接続されている。
【0054】
第1流路410のうち最も中央側の部分は、流路402の端部に繋がっている。流路402は、第1流路410から下方の面220側へと伸びており、
図3のうち符号「D」が付された領域を通って面220まで伸びている。
【0055】
上面視における第1流路410の形状は、流路402の近傍部分を除き、第2流路420の形状と一致しており、且つ重なっている。
【0056】
以上のような構成により、接続流路430を通った冷媒は、全体が網の目状となるよう配置された環状流路413や径方向流路414を通りながら、中央側にある流路402へと向かって流れる。その後、冷媒は流路402を通って外部へと排出される。
【0057】
本実施形態では、第1流路410及び第2流路420のそれぞれが、複数の環状流路(413,423)と径方向流路(414,424)とを含む。複数の環状流路と径方向流路を組み合わせることにより、第1流路410及び第2流路420のそれぞれを網の目状の流路として形成している。基板Wの下方側の全体を網の目状にカバーするように流路を引き回すことで、基板Wの面内温度分布のばらつきを抑制することが可能となっている。
【0058】
尚、冷媒が、第2流路420を先に通り、その後に第1流路410を通るように、冷媒流路400が構成されていてもよい。この場合、流路401が第2流路420に繋がり、流路402が第1流路410に繋がるように、冷媒流路400を構成すればよい。
【0059】
面220側にある第1流路410は、本実施形態のように、第2流路420と同様の形状の流路として形成されていてもよいが、第2流路420とは異なる形状の流路として形成されていてもよい。この場合であっても、第1流路410は、第2流路420の直下となる部分(の一部)を通るような流路として構成されることが好ましい。
【0060】
また、ベースプレート200には第1流路410のみが形成されており、第2流路420が形成されていない構成であってもよい。この場合、流路401及び流路402のそれぞれが第1流路410に繋がるように、冷媒流路400を構成すればよい。
【0061】
図6には、ベースプレート200内に配置された冷媒流路400の全体構成が、上面視で模式的に示されている。
図6では、第1流路410、第2流路420、接続流路430、及び流路401、402を含む冷媒流路400の全体が黒塗りで描かれている。
【0062】
静電チャック10のうち、
図6において冷媒流路400を示す黒塗りによって区分されているそれぞれの領域、すなわち、上面視において冷媒流路400で囲まれている各部分のことを、以下では「流路領域FD」とも称する。
【0063】
殆どの流路領域FDは、
図6において「符号FD1」が付された流路領域FDのように、一対の環状流路と一対の径方向流路で囲まれた略矩形の領域となっているが、
図6において「符号FD2」が付された流路領域FDのように、略矩形とは異なる形状の領域も含まれる。
【0064】
本実施形態では、上面視において、冷媒流路400のいずれかの部分で囲まれている領域として、上記の「流路領域FD」を定義する。このような定義に替えて、冷媒流路400のうち、誘電体基板100側にある第1流路410の各部で囲まれている領域として、「流路領域FD」を定義してもよい。つまり、誘電体基板100とは反対側にある第2流路420の形状を考慮することなく、「流路領域FD」を定義してもよい。
【0065】
本実施形態では、静電チャック10に設けられた複数のヒーター500のそれぞれが、
図6のように区分された流路領域FDのそれぞれと対応する位置に設けられている。例えば
図7には、
図6に示される流路領域FD1と、その直上に配置されたヒーター500との位置関係が、上面視で描かれている。また、
図8には、
図6に示される流路領域FD2と、その直上に配置されたヒーター500との位置関係が、上面視で描かれている。
図7及び
図8に示されるように、本実施形態では、1つの流路領域FDと上面視において概ね重なる範囲の略全体に亘り、1つのヒーター500が引き回されている。流路領域FD1や流路領域FD2以外の他の流路領域FDについても同様である。
【0066】
尚、それぞれのヒーター500は、
図7や
図8の例のように、全体が流路領域FD内に収まるように配置されてもよいが、ヒーター500の一部が流路領域FDからはみ出てていてもよい。
【0067】
また、ヒーター500は、全ての流路領域FDの直上となる位置に1つずつ配置されてもよいが、直上にはヒーター500が配置されていない流路領域FDが存在してもよい。流路領域FDの総数とヒーター500の総数は、互いに一致してもよく、一致しなくてもよい。
【0068】
図7及び
図8には、ヒーター500に加えて、ヒーター500に繋がる給電路51、52(つまり給電部50)も図示されている。
図7等に示されるように、給電部50は、上面視において流路領域FDの内側となる位置に配置されている。
【0069】
ヒーター500のうち給電部50が接続されている部分では、他の部分に比べて発熱量が小さくなる。このため、給電部50が接続されている部分の直上においては、基板Wの温度が周囲に比べて低下する「クールスポット」が生じやすい傾向がある。
【0070】
そこで本実施形態では上記のように、給電部50を、上面視において流路領域FDの内側となる位置に配置することとしている。クールスポットの原因となりやすい給電部50を、上面視において冷媒流路400と重ならない位置に配置することでで、給電部50の直上部分における基板Wの温度低下を抑制することができる。つまり本実施形態では、基板Wにおける面内温度分布のばらつきが抑制されるように、給電部50の配置を最適化している。
【0071】
本実施形態では更に、上面視において流路領域FDの中央部となる位置に給電部50が配置されている。
【0072】
流路領域FDの中央部では、冷媒流路400からの距離が遠いため、基板Wの表面温度が局所的に高くなりやすい。本実施形態では、このような中央部と上面視で重なる位置に、クールスポットの原因となりやすい給電部50を配置している。これにより、流路領域FDの中央部における温度上昇が抑制されるので、基板Wにおける面内温度分布のばらつきを更に抑制することができる。
【0073】
図9には、
図7に示される流路領域FD1の外形が示されている。点P1、P2、P3、P4のそれぞれは、上面視における流路領域FD1のコーナー部分を表す。また、点P5は、点P1と点P2を結ぶ円弧状の辺L1の中点を表す。点P7は、点P3と点P4を結ぶ円弧状の辺L2の中点を表す。点P6は、点P2と点P3を結ぶ直線状の辺L3の中点を表す。点P8は、点P4と点P1を結ぶ直線状の辺L4の中点を表す。
【0074】
一点鎖線DL1は、点P5と点P7を通る直線を表す。一点鎖線DL2は、点P6と点P8を通る円弧状の曲線を表す。一点鎖線DL2の曲率中心は、辺L1や辺L2の曲率中心(すなわち、上面視における面210の中心)に一致する。
【0075】
一点鎖線DL11は、辺L1のうち点P1と点P5との間の部分の中点と、辺L2のうち点P4と点P7との間の部分の中点と、を通る直線を表す。つまり、一点鎖線DL11は、一点鎖線DL1と辺L4との間の中心線を表す。
【0076】
一点鎖線DL12は、辺L1のうち点P2と点P5との間の部分の中点と、辺L2のうち点P3と点P7との間の部分の中点と、を通る直線を表す。つまり、一点鎖線DL12は、一点鎖線DL1と辺L3との間の中心線を表す。
【0077】
一点鎖線DL21は、辺L3のうち点P2と点P6との間の部分の中点と、辺L4のうち点P1と点P8との間の部分の中点と、を通る円弧状の曲線を表す。一点鎖線DL21の曲率中心は、辺L1や辺L2の曲率中心に一致する。つまり、一点鎖線DL21は、一点鎖線DL2と辺L1との間の中心線を表す。
【0078】
一点鎖線DL22は、辺L3のうち点P3と点P6との間の部分の中点と、辺L4のうち点P4と点P8との間の部分の中点と、を通る円弧状の曲線を表す。一点鎖線DL22の曲率中心は、辺L1や辺L2の曲率中心に一致する。つまり、一点鎖線DL22は、一点鎖線DL2と辺L2との間の中心線を表す。
【0079】
上記における「流路領域FDの中央部」とは、例えば、
図9において一点鎖線DL11、DL12、DL21、DL22で囲まれた領域CTの内側のことである。このような「中央部」は、流路領域FD1以外の全ての流路領域FDについても同様に定義することができる。それぞれの流路領域FDにおいて、領域CT内に給電部50の全体を収めた構成とすることで、基板Wにおける面内温度分布のばらつきを十分に抑制することが可能となる。
【0080】
本実施形態では、複数のヒーター500に対応して設けられたそれぞれの給電部50が、上面視において、いずれかの流路領域FDの内側であり、且つ、当該流路領域FDの中央部となる位置に配置されている。つまり、全ての給電部50が、いずれかの流路領域FDの中央部となる位置に配置されている。このような態様に換えて、一部の給電部50が、流路領域FDの中央部とは異なる位置に配置されている構成としてもよい。
【0081】
本実施形態では、流路領域FDの内側且つ中央部となる位置に、1つの給電部50が配置されている。ただし、複数ある流路領域FDの中には、内側に給電部50が配置されていないものも存在する。例えば、
図3に示される流路425の内側の流路領域FDには、給電部50が配置されていない。流路425の内側には、これに隣接する他の流路領域FDに配置されたヒーター500の一部が入り込んでいる。
【0082】
このような態様に換えて、上面視において、全ての流路領域FDの内側に、1つ以上の給電部50が配置されている構成としてもよい。クールスポットの原因となりやすい給電部50が、上面視において広範囲に分散配置されるので、基板Wにおける面内温度分布のばらつきを更に抑制することができる。
【0083】
ヒーター500の総数や配置については、本実施形態の構成に限定する必要は無く、さまざまな変更を加えることができる。
図10には、変形例におけるヒーター500の配置の例が示されている。この変形例では、
図6に示される流路領域FD1と上面視において重なる範囲に、ヒーター500A、500Bからなる2つのヒーター500が配置されている。流路領域FD1の中央部であって、ヒーター500Aとヒーター500Bとの間となる位置には、いずれのヒーターも配置されていない円形の領域HLが存在している。換言すれば、流路領域FD1においては、領域HLを避けるように、ヒーター500が2つに分けられた状態となっている。例えば、吸着電極130に繋がる電路を、領域HLを通るように配置することで、当該電路とヒーター500との干渉を避けることができる。
【0084】
ヒーター500Aには、一対の給電路51A、52Aからなる給電部50Aが接続されている。ヒーター500Bには、一対の給電路51B、52Bからなる給電部50Bが接続されている。給電部50A、給電部50Bはいずれも、上面視において流路領域FD1の内側となる位置に配置されている。流路領域FD1の内側に配置される給電部50の数は、この変形例のように2つであってもよく、2つ以上であってもよい。このような構成を採用することで、誘電体基板100に内蔵された構造物(例えば、吸着電極130に繋がる電路)との干渉を避けながら、最適な位置に給電部50を配置することができる。
【0085】
この変形例のように、内側に2つ又はそれ以上の給電部50が配置された流路領域FDは、
図6に示される複数の流路領域FDの一部のみであってもよく、複数の流路領域FDの全部であってもよい。
【0086】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0087】
W:基板
10:静電チャック
50:給電部
100:誘電体基板
110,120:面
200:ベースプレート
400:冷媒流路
413:環状流路
414:径方向流路
500:ヒーター
FD:流路領域