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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125584
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】受電回路および電池パック
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20240911BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033497
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 幹雄
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CB02
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】発熱を効果的に抑制することができる受電回路を得る。
【解決手段】本開示の一実施の形態に係る受電回路は、給電アンテナから磁界共鳴方式により供給された交流電力を受電可能な受電アンテナと、受電アンテナに接続され、温度により容量値が変化可能な第1のキャパシタを有し、受電アンテナと共振回路を構成するキャパシタ部と、交流電力を直流電力に変換可能な変換回路と、変換回路から前記第1のキャパシタに熱を伝えることが可能な熱伝導部材とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電アンテナから磁界共鳴方式により供給された交流電力を受電可能な受電アンテナと、
前記受電アンテナに接続され、温度により容量値が変化可能な第1のキャパシタを有し、前記受電アンテナと共振回路を構成するキャパシタ部と、
前記交流電力を直流電力に変換可能な変換回路と、
前記変換回路から前記第1のキャパシタに熱を伝えることが可能な熱伝導部材と
を備えた受電回路。
【請求項2】
前記変換回路は、発熱体を有し、
前記熱伝導部材は、前記発熱体および前記第1のキャパシタを熱的に接続可能であり、
前記発熱体は、前記変換回路を構成する部品のうちの最も発熱し得る部品である
請求項1に記載の受電回路。
【請求項3】
前記変換回路は、
前記受電アンテナから供給された前記交流電力を整流可能な整流回路と、
前記整流回路の出力信号に基づいて前記直流電力を生成可能なレギュレータと
を有し、
前記発熱体は、前記整流回路または前記レギュレータを含む
請求項2に記載の受電回路。
【請求項4】
前記熱伝導部材は、前記発熱体および前記第1のキャパシタを覆う、熱伝導性を有する樹脂部材である
請求項2に記載の受電回路。
【請求項5】
前記発熱体および前記第1のキャパシタは、互いに隣り合う位置に設けられた
請求項2に記載の受電回路。
【請求項6】
前記熱伝導部材は、前記変換回路および前記第1のキャパシタを覆う、熱伝導性を有する樹脂部材である
請求項1に記載の受電回路。
【請求項7】
前記変換回路および前記第1のキャパシタは、互いに隣り合う位置に設けられた
請求項1に記載の受電回路。
【請求項8】
前記第1のキャパシタの容量値は、温度が所定の温度以上になると低下する
請求項1に記載の受電回路。
【請求項9】
前記キャパシタ部は、前記第1のキャパシタの容量値の温度特性とは異なる容量値の温度特性を有する第2のキャパシタをさらに有し、
前記第1のキャパシタおよび前記第2のキャパシタは、互いに直列または並列に接続された
請求項1に記載の受電回路。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の受電回路と、
蓄電池と、
前記受電回路の前記変換回路から供給された前記直流電力に基づいて、前記蓄電池を充電可能な充電回路と
を備えた電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤレスにより供給された電力を受け取る受電回路、およびそのような受電回路を備えた電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
給電システムには、ワイヤレスで電力を供給できるものがある。例えば、特許文献1には、給電装置および受電装置を備えたワイヤレス給電システムが開示されている。このシステムでは、受電装置は、給電装置に対して、送信すべき電力を指示する情報を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-82864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子機器では、一般に発熱を抑制することが望まれており、受電回路においても、発熱を効果的に抑制することが期待されている。
【0005】
発熱を効果的に抑制することができる受電回路および電池パックを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施の形態における受電回路は、受電アンテナと、キャパシタ部と、変換回路と、熱伝導部材とを備える。受電アンテナは、給電アンテナから磁界共鳴方式により供給された交流電力を受電可能なものである。キャパシタ部は、受電アンテナに接続され、温度により容量値が変化可能な第1のキャパシタを有し、受電アンテナと共振回路を構成するものである。変換回路は、交流電力を直流電力に変換可能なものである。熱伝導部材は、変換回路から前記第1のキャパシタに熱を伝えることが可能なものである。
【0007】
本開示の一実施の形態における電池パックは、上記受電回路と、蓄電池と、充電回路とを備える。充電回路は、受電回路の変換回路から供給された直流電力に基づいて、蓄電池を充電可能なものである。
【0008】
本開示の一実施の形態における受電回路および電池パックによれば、発熱を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施の形態に係る給電システムの一構成例を表すブロック図である。
図2図2は、共振回路の一特性例を表す説明図である。
図3図3は、磁界共鳴方式のワイヤレス給電の一動作例を表す説明図である。
図4図4は、図1に示した電池パックの共振回路におけるキャパシタの一特性例を表す説明図である。
図5図5は、キャパシタの一構成例を表す回路図である。
図6図6は、キャパシタの一特性例を表す説明図である。
図7図7は、図1に示した変換回路の一構成例を表す回路図である。
図8図8は、図1に示した充電回路の一動作例を表すタイミング図である。
図9A図9Aは、図1に示した電池パックの外観構成の一例を表す斜視図である。
図9B図9Bは、図1に示した電池パックの外観構成の一例を表す斜視図である。
図10図10は、図1に示した給電システムの一動作例を表す説明図である。
図11図11は、変形例に係る整流回路の一構成例を表す回路図である。
図12図12は、他の変形例に係る整流回路の一構成例を表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
<実施の形態>
[構成例]
図1は、一実施の形態に係る受電回路を備えた給電システム1の一構成例を表すものである。給電システム1は、磁界共鳴方式の給電システムであり、蓄電池に対してワイヤレスで電力を供給し、その蓄電池を充電するように構成される。給電システム1は、給電装置10と、電池パック20とを備えている。
【0012】
給電装置10は、直流電源PDCから供給された電力に基づいて交流電力を生成し、生成した交流電力を電池パック20に供給するように構成される。給電装置10は、給電回路11と、キャパシタ12と、給電アンテナ13とを有している。
【0013】
給電回路11は、直流電源PDCから供給された電力に基づいて交流電力を生成するように構成される。この交流電力の周波数は、所定の周波数fsigに設定される。この周波数fsigの値は、給電装置10における共振回路14(後述)の共振周波数f0T、および後述する電池パック20における共振回路23(後述)の共振周波数f0Rと同じ値に設定される。給電回路11は、生成した交流電力を、出力端子OUT1,OUT2の端子間の電力として出力するようになっている。
【0014】
キャパシタ12の一端は給電回路11の出力端子OUT1に接続され、他端は給電アンテナ13の一端に接続される。キャパシタ12は、給電アンテナ13とともに、共振回路14を構成する。この共振回路14の共振周波数f0Tの値は、給電回路11が生成する交流電力の周波数fsig、および電池パック20における共振回路23(後述)の共振周波数f0Rと同じ値に設定される。
【0015】
給電アンテナ13は、供給された電力に基づいて電磁界を生成するように構成される。給電アンテナ13の一端はキャパシタ12の他端に接続され、他端は給電回路11の出力端子OUT2に接続される。給電アンテナ13は、キャパシタ12とともに、共振回路14を構成する。
【0016】
電池パック20は、給電装置10からワイヤレスで供給された交流電力に基づいて直流電力を生成し、この直流電力に基づいて充電動作を行うように構成される。電池パック20は、受電アンテナ21と、キャパシタ22と、変換回路24と、充電回路25と、保護回路26と、蓄電池27と、端子VOUT,GNDとを有している。
【0017】
受電アンテナ21は、給電アンテナ13が生成した電磁界に基づいて交流電力を生成するように構成される。受電アンテナ21の一端はキャパシタ22の一端および変換回路24の入力端子IN1に接続され、他端はキャパシタ22の他端および変換回路24の入力端子IN2に接続される。受電アンテナ21は、キャパシタ22とともに、共振回路23を構成する。この共振回路23の共振周波数f0Rの値は、給電回路11が生成する交流電力の周波数fsig、および共振回路14の共振周波数f0Tと同じ値に設定される。
【0018】
キャパシタ22の一端は受電アンテナ21の一端および変換回路24の入力端子IN1に接続され、他端は受電アンテナ21の他端および変換回路24の入力端子IN2に接続される。キャパシタ22は、受電アンテナ21とともに、共振回路23を構成する。
【0019】
この構成により、給電システム1では、磁界共鳴方式により、給電装置10から電池パック20に対して、ワイヤレスで電力を供給することができるようになっている。
【0020】
図2は、共振回路における共振周波数特性の一例を表すものである。共振周波数fは、図2に示したように、インダクタンスLおよびキャパシタンスCにより定まる。具体的には、共振回路14の共振周波数f0Tは、例えば、給電アンテナ13のインダクタンスLおよびキャパシタ12のキャパシタンスCにより定まる。なお、この共振周波数f0Tは、実際には、給電アンテナ13と受電アンテナ21との相互インダクタンスMなどにより変化し得る。同様に、共振回路23の共振周波数f0Rは、例えば、受電アンテナ21のインダクタンスLおよびキャパシタ22のキャパシタンスCにより定まる。なお、この共振周波数f0Rは、実際には、給電アンテナ13と受電アンテナ21との相互インダクタンスMなどにより変化し得る。共振回路では、共振周波数foにおいて共振し、交流電力の振幅が大きくなる。
【0021】
図3は、磁界共鳴方式のワイヤレス給電の一例を表すものである。給電装置10は、交流電力である給電電力PTを電池パック20に対して供給する。給電電力PTの周波数fおよび共振回路14の共振周波数f0Tは、互いに一致するように設定される。電池パック20は、給電装置10から供給された交流電力を受電電力PRとして受け取る。この受電電力PRの周波数fは、給電電力PTの周波数fと同じであり、共振回路23の共振周波数f0Rと一致するように設定される。
【0022】
このように、磁界共鳴方式のワイヤレス給電では、給電回路11が生成する交流電力の周波数fsig、共振回路14の共振周波数f0T、および共振回路23の共振周波数f0Rを互いに一致させることにより、効率的にワイヤレス給電を行うことができるようになっている。
【0023】
この給電システム1では、電池パック20におけるキャパシタ22は、温度に応じてキャパシタンスCが変化するように構成される。
【0024】
図4は、キャパシタ22におけるキャパシタンスCの温度特性の一例を表すものである。キャパシタ22におけるキャパシタンスCは、温度に応じて変化する。この例では、室温付近で傾斜がほぼゼロであり、温度が室温から高くなると、キャパシタンスCは温度に応じて低下する。このような温度特性には、B特性とも呼ばれる特性がある。後述するように、このキャパシタ22は、変換回路24と熱的に接続される。よって、例えば、変換回路24が発熱すると、変換回路24において生じた熱がキャパシタ22に伝わり、キャパシタ22におけるキャパシタンスCは、この例では低下するようになっている。
【0025】
キャパシタ22は、1つのキャパシタを用いて構成してもよいし、複数のキャパシタを用いて構成してもよい。
【0026】
図5は、2つのキャパシタ22A,22Bを用いてキャパシタ22を構成する場合の例を表すものであり、(A)は2つのキャパシタ22A,22Bを並列接続する場合を示し、(B)は2つのキャパシタ22A,22Bを直列接続する場合示す。
【0027】
2つのキャパシタ22A,22Bを並列接続した場合(図5(A))には、キャパシタ22のキャパシタンスCは、2つのキャパシタ22A,22BのキャパシタンスCA,CBを用いて、以下の式を用いて表される。
C = CA+CB
また、2つのキャパシタ22A,22Bを直列接続した場合(図5(B))には、キャパシタ22のキャパシタンスCは、2つのキャパシタ22A,22BのキャパシタンスCA,CBを用いて、以下の式を用いて表される。
C = CA・CB/(CA+CB)
【0028】
キャパシタには、様々な温度特性を有するものがある。よって、互いに異なる温度特性を有する2つのキャパシタ22A,22Bを用いて、キャパシタ22を構成することができる。
【0029】
図6は、キャパシタの温度特性の例を表すものであり、(A)はいわゆるB特性を示し、(B)はいわゆるCH特性を示し、(C)はいわゆるSL特性を示す。例えばB特性(図6(A))では、室温付近で傾斜がほぼゼロであり、温度が室温から高くなると、キャパシタンスは温度に応じて低下する。例えばCH特性(図6(B))では、幅広い温度範囲において、キャパシタンスはほぼ一定に保たれる。例えばSL特性(図6(C))では、温度が高くなるにつれて、キャパシタンスはほぼ1次関数的に低下する。
【0030】
互いに異なる温度特性を有する2つのキャパシタ22A,22Bを用いることにより、これらの2つのキャパシタ22A,22Bのそれぞれの温度特性が混ざり合った温度特性を有するキャパシタ22を実現することができる。その結果、キャパシタ22の温度特性の設定自由度を高めることができる。なお、この例では、2つのキャパシタ22A,22Bを接続したが、これに限定されるものではなく、3つ以上のキャパシタを接続してもよい。また、直列接続や並列接続に限定されるものではなく、例えばより多くのキャパシタを用いて、直列接続および並列接続を組み合わせたより複雑な接続を行ってもよい。これにより、例えば、キャパシタ22の温度特性の設定自由度をさらに高めることができる。
【0031】
変換回路24(図1)は、受電アンテナ21が生成した交流電力を直流電力に変換するように構成される。
【0032】
図7は、変換回路24の一構成例を表すものである。変換回路24は、整流回路31と、レギュレータ32とを有している。
【0033】
整流回路31は、受電アンテナ21が生成した交流電力に基づいて整流動作を行うように構成される。整流回路31は、ダイオードD1~D4を有している。ダイオードD1のアノードは変換回路24の入力端子IN1に接続され、カソードはノードN1に接続される。ダイオードD2のアノードは変換回路24の入力端子IN2に接続され、カソードはノードN1に接続される。ダイオードD3のアノードは基準電圧線LGに導かれたノードN2に接続され、カソードは入力端子IN1に接続される。ダイオードD4のアノードはノードN2に接続され、カソードは入力端子IN1に接続される。ダイオードD1~D4は、全波整流を行うブリッジダイオードを構成する。この構成により、整流回路31は、整流された電圧をノードN1およびノードN2のノード間の電圧として出力するようになっている。
【0034】
レギュレータ32は、整流回路31により整流された電力に基づいて直流電力を生成するように構成される。レギュレータ32は、ノードN1およびノードN2のノード間の電圧に基づいて動作する。レギュレータ32は、例えば、LDO(Low Dropout)リニアレギュレータを用いることができる。
【0035】
この構成により、変換回路24は、受電アンテナ21が生成した交流電力を直流電力に変換するようになっている。
【0036】
充電回路25(図1)は、変換回路24から供給された直流電力に基づいて、蓄電池27を充電する充電動作を行うように構成される。
【0037】
図8は、充電回路25による充電動作の一動作例を表すものであり、(A)は蓄電池27における陽極および陰極の間の電圧(充電電圧V)の波形を示し、(B)は蓄電池27における陽極から陰極に流れる電流(充電電流I)の波形を示す。
【0038】
蓄電池27を充電する際、充電回路25は、まず、タイミングt0~t1の期間においてCC(Constant Current)充電動作OP1を行う。CC充電動作OP1では、充電回路25は、充電電流Iが一定になるように制御しつつ、蓄電池27を充電する。蓄電池27への充電が進むにつれて、充電電圧Vが徐々に増加していく。そして、例えば充電電圧Vが所定の電圧レベルに到達したタイミングt1において、充電回路25はCV(Constant Voltage)充電動作OP2を行う。このCV充電動作OP2では、充電回路25は、充電電圧Vが一定になるように制御しつつ、蓄電池27を充電する。蓄電池27への充電が進むにつれて、充電電流Iは低下していく。そして、この例では、タイミングt2において、充電回路25は、蓄電池27への充電を終了する。
【0039】
このようにして、充電回路25は、CC充電動作OP1およびCV充電動作OP2をこの順に行うことにより、蓄電池27を充電するようになっている。
【0040】
保護回路26は、蓄電池27における陽極および陰極の間の電圧や、蓄電池27に流れる電流を監視することにより、蓄電池27を保護する保護動作を行うように構成される。具体的には、保護回路26は、蓄電池27を監視することにより、例えば、蓄電池27の動作状態が過充電状態や過放電状態にならないように、蓄電池27を保護する。また、保護回路26は、保護回路26内に流れる電流を監視することにより、例えば、蓄電池27に過電流が流れないように、蓄電池27を保護するようになっている。
【0041】
蓄電池27は、電力を蓄えるように構成される。この例では、蓄電池27は、コイン型のリチウムイオン二次電池である。蓄電池27は、この例では、1つの蓄電池セルにより構成される。蓄電池27の陽極は、充電回路25に接続されるとともに端子VOUTに接続され、陰極は保護回路26を介して基準電圧線LGに接続される。
【0042】
端子VOUT,GNDは、電池パック20に蓄えられた電力を図示しない負荷回路に供給する出力端子である。端子VOUTは蓄電池27の陽極に接続される。端子GNDは基準電圧線LGに接続される。
【0043】
図9A,9Bは、電池パック20の外観構成の一例を表すものである。この例では、電池パック20は、電池パック20における様々な素子が実装されたフレキシブル基板100(FPC:Flexible printed circuits)を用いて、コイン型の蓄電池27を包むことにより構成される。この例では、変換回路24は、1つの半導体チップで構成され、パッケージングされている。また、この例では、キャパシタ22は、6つのチップキャパシタにより構成される。この変換回路24および6つのチップキャパシタは、隣り合う位置に設けられている。そして、この変換回路24および6つのチップキャパシタは、接着剤29により覆われている。この接着剤29は、熱伝導性を有する樹脂により構成される。これにより、変換回路24は、キャパシタ22における6つのチップキャパシタと熱的に接続される。その結果、電池パック20では、変換回路24により生じた熱が、6つのチップキャパシタに対して、より効率的に伝わるようになっている。
【0044】
この構成により、電池パック20では、給電装置10から供給された電力に基づいて、蓄電池27が充電される。蓄電池27は、まずCC充電動作OP1により充電され、その後にCV充電動作OP2により充電される。CV充電動作OP2では、充電電流Iが少なくなるので、充電電圧Vおよび充電電流Iの積である充電電力は低下する。このように、電池パック20では、充電電力が低下するので、給電装置10から供給された電力と、充電電力とのバランスがとれなくなり、変換回路24における消費電力が増加し、変換回路24が発熱する。変換回路24により生じた熱は、キャパシタ22に効率的に伝わり、キャパシタ22におけるキャパシタンスCは、温度の上昇により低下し、共振回路23の共振周波数f0Rが上昇する。これにより、この共振周波数f0Rの値は、給電回路11が生成する交流電力の周波数fsigや共振回路14の共振周波数f0Tの値からずれる。その結果、給電システム1では、給電装置10から電池パック20への給電効率が低下し、電池パック20が給電装置10から受け取る電力を低減することができるので、電池パック20における発熱を効果的に抑制することができるようになっている。
【0045】
ここで、受電アンテナ21は、本開示の一実施の形態における「受電アンテナ」の一具体例に対応する。キャパシタ22は、本開示の一実施の形態における「キャパシタ部」の一具体例に対応する。変換回路24は、本開示の一実施の形態における「変換回路」の一具体例に対応する。接着剤29は、本開示の一実施の形態における「熱伝導部材」の一具体例に対応する。
【0046】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の給電システム1の動作および作用について説明する。
【0047】
(全体動作概要)
まず、図1を参照して、給電システム1の全体動作概要を説明する。給電装置10の給電回路11は、直流電源PDCから供給された電力に基づいて交流電力を生成する。共振回路14は、交流電力を共振周波数f0Tで共振させる。給電アンテナ13は、供給された電力に基づいて電磁界を生成する。電池パック20の受電アンテナ21は、給電アンテナ13が生成した電磁界に基づいて交流電力を生成する。共振回路23は、この交流電力を共振周波数f0Rで共振させる。変換回路24は、受電アンテナ21が生成した交流電力を直流電力に変換する。充電回路25は、変換回路24から供給された直流電力に基づいて、蓄電池27を充電する充電動作を行う。保護回路26は、蓄電池27における陽極および陰極の間の電圧や、蓄電池27に流れる電流を監視することにより、蓄電池27を保護する保護動作を行う。蓄電池27は、電力を蓄える。
【0048】
(詳細動作)
電池パック20では、充電回路25は、図8に示したように、まずCC充電動作OP1を行い、その後にCV充電動作OP2を行う。CV充電動作OP2では、充電電流Iが少なくなるので、充電電圧Vおよび充電電流Iの積である充電電力は低下する。このように、電池パック20では、充電電力が低下するので、給電装置10から供給された電力と、充電電力とのバランスがとれなくなり、変換回路24における消費電力が増加し、変換回路24が発熱する。
【0049】
電池パック20では、変換回路24およびキャパシタ22は、熱伝導性を有する接着剤29により、熱的に接続される。よって、変換回路24により生じた熱は、キャパシタ22に対して、より効率的に伝わる。これにより、キャパシタ22の温度は上昇する。
【0050】
キャパシタ22のキャパシタンスCは、図4に示したように、温度が室温から高くなると、温度に応じて低下する。キャパシタ22におけるキャパシタンスCが低下すると、共振回路23の共振周波数f0Rは上昇する。
【0051】
図10は、受電電力PRを模式的に表すものであり、(A)は共振回路23における共振周波数特性を示し、(B)は受電電力PRの波形を示す。上述したように、キャパシタ22のキャパシタンスCが低下すると、共振回路23の共振周波数f0Rは上昇する。受電電力PRの周波数fは、給電装置10の給電電力PTの周波数fと同じであり変化しない。よって、図10(A)に示したように、共振回路23の共振周波数f0Rがずれた分だけ、受電電力PRが小さくなる。具体的には、図10(B)に示したように、受電電力PRの振幅が小さくなる。
【0052】
このように受電電力PRが小さくなると、電池パック20において、給電装置10から供給された電力と、充電電力とのバランスが改善し、変換回路24における消費電力が減少し、変換回路24における発熱量が低下する。このようにして、電池パック20では、発熱を効果的に抑制することができる。
【0053】
このように、電池パック20では、給電アンテナ13から磁界共鳴方式により供給された交流電力を受電可能な受電アンテナ21と、受電アンテナ21に接続され、温度により容量値が変化可能であり、受電アンテナ21と共振回路を構成するキャパシタ22と、交流電力を直流電力に変換可能な変換回路24と、変換回路24からキャパシタ22に熱を伝えることが可能な接着剤29とを備えるようにした。これにより、電池パック20では、変換回路24が発熱した場合に、変換回路24により生じた熱が、キャパシタ22に効率的に伝わり、キャパシタ22を含む共振回路23の共振周波数f0Rが変化し、給電装置10から電池パック20への給電効率が低下する。その結果、電池パック20では、発熱を効果的に抑制することができる。
【0054】
すなわち、例えば、特許文献1に記載の技術のように、給電装置から供給された電力が過剰である場合には、受電装置は、給電装置に対して電力を低減するように指示する。この場合には、回路構成が複雑になり、また、動作も複雑になる。一方、本実施の形態に係る電池パック20では、温度特性を有するキャパシタ22と変換回路24とを熱的に接続するだけで済むので、回路構成や動作をシンプルにすることができる。その結果、電池パック20では、シンプルな回路構成および動作で、発熱を効果的に抑制することができる。
【0055】
電池パック20では、熱伝導性を有する樹脂部材である接着剤29が、変換回路24およびキャパシタ22を覆うようにしたので、変換回路24により生じた熱を、キャパシタ22に効率的に伝えることができる。特に、接着剤29を用いることにより、例えばヒートパイプなどを用いる場合に比べて部材を少なくすることができ、より容易に、変換回路24およびキャパシタ22を熱的に結合することができる。これにより、変換回路24における温度に対する感度を高めることができ、温度に基づいて、キャパシタ22のキャパシタンスCを高い感度で変化させることができる。その結果、電池パック20では、発熱を効果的に抑制することができる。
【0056】
電池パック20では、図9A,9Bに示したように、変換回路24およびキャパシタ22を、互いに隣り合う位置に設けるようにした。これにより、これにより、変換回路24における温度に対する感度を高めることができ、温度に基づいて、キャパシタ22のキャパシタンスCを高い感度で変化させることができる。その結果、電池パック20では、発熱を効果的に抑制することができる。
【0057】
[効果]
以上のように本実施の形態では、給電アンテナから磁界共鳴方式により供給された交流電力を受電可能な受電アンテナと、受電アンテナに接続され、温度により容量値が変化可能であり、受電アンテナと共振回路を構成するキャパシタと、交流電力を直流電力に変換可能な変換回路と、変換回路からキャパシタに熱を伝えることが可能な接着剤とを備えるようにしたので、発熱を効果的に抑制することができる。
【0058】
本実施の形態では、熱伝導性を有する樹脂部材である接着剤が、変換回路およびキャパシタを覆うようにしたので、発熱を効果的に抑制することができる。
【0059】
本実施の形態では、変換回路およびキャパシタを、互いに隣り合う位置に設けるようにしたので、発熱を効果的に抑制することができる。
【0060】
[変形例1]
上記実施の形態では、図4に示したように、温度が室温から高くなると、キャパシタ22のキャパシタンスCは温度に応じて低下するようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、温度が室温から高くなると、キャパシタ22のキャパシタンスCは温度に応じて上昇してもよい。この場合でも、温度が高くなると共振回路23の共振周波数f0Rが共振回路14の共振周波数f0Tからずれて、給電効率が低下するので、電池パック20における発熱を効果的に抑制することができる。
【0061】
[変形例2]
上記実施の形態では、本技術をコイン型の二次電池に適用したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、本技術を、より大きな二次電池に適用してもよい。この場合、上記実施の形態の場合(図9A,9B)とは異なり、電池パック20の各素子の配置の自由度が高くなるが、この場合でも、変換回路24およびキャパシタ22を、互いに隣り合う位置に配置することにより、変換回路24により生じた熱をキャパシタ22に効率的に伝えることができる。これにより、変換回路24における温度に対する感度を高めることができ、温度に基づいて、キャパシタ22のキャパシタンスCを高い感度で変化させることができる。
【0062】
[変形例3]
上記実施の形態では、本技術をリチウムイオン二次電池に適用したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、本技術を、ニッケル水素二次電池などに適用してもよい。この場合には、保護回路26は設けなくてもよい。
【0063】
[変形例4]
上記実施の形態では、図9A,9Bに示したように、変換回路24を1つの半導体チップで構成したが、これに限定されるものではない。これに代えて、変換回路24を個別部品で構成してもよい。この場合には、変換回路24を構成する部品のうちの最も発熱しやすい部品およびキャパシタ22を熱的に接続することができる。以下に、本変形例について、いくつか例を挙げて詳細に説明する。
【0064】
図11は、本変形例に係る変換回路24Aの一構成例を表すものである。この変換回路24Aは、整流回路31と、レギュレータ32とを有している。この例では、整流回路31およびレギュレータ32のそれぞれは、個別部品である。この例では、レギュレータ32は、変換回路24を構成する部品のうちの最も発熱し得る。具体的には、充電回路25がCV充電動作OP2を行うことにより変換回路24が発熱する際、レギュレータ32が最も発熱し得る。よって、この例では、レギュレータ32およびキャパシタ22が、互いに隣り合う位置に設けられ、接着剤29により覆われる。これにより、レギュレータ32は、キャパシタ22と熱的に接続される。その結果、本変形例に係る電池パック20では、レギュレータ32により生じた熱がキャパシタ22に対して効率的に伝わる。
【0065】
図12は、本変形例に係る他の変換回路24Bの一構成例を表すものである。この変換回路24Bは、整流回路31と、レギュレータ32とを有している。整流回路31およびレギュレータ32のそれぞれは、個別部品である。この例では、整流回路31は、変換回路24を構成する部品のうちの最も発熱し得る。具体的には、充電回路25がCV充電動作OP2を行うことにより変換回路24が発熱する際、整流回路31の温度が最も発熱し得る。よって、この例では、整流回路31およびキャパシタ22が、互いに隣り合う位置に設けられ、接着剤29により覆われる。これにより、整流回路31は、キャパシタ22と熱的に接続される。その結果、本変形例に係る電池パック20では、整流回路31により生じた熱がキャパシタ22に対して効率的に伝わる。
【0066】
最も発熱し得る部品は、実際に、各部品の温度を測定することにより確認することができる。具体的には、例えば、給電装置10が電池パック20に対して電力を供給している期間には、電池パック20のうちの、例えば整流回路31の温度およびレギュレータ32の温度は変化する。充電回路25は、図8に示したように、CC充電動作OP1およびCV充電動作OP2を行うので、蓄電池27への充電が進むにつれて、整流回路31の温度およびレギュレータ32の温度は変化する。例えば、充電回路25がCV充電動作OP2を行う期間において、部品の温度が最も高くなり得る。このような一連の給電動作において、例えば、温度が最も高くなる部品が、最も発熱し得る部品である。
【0067】
[変形例5]
上記実施の形態では、整流回路31およびレギュレータ32を用いて変換回路24を構成したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、整流回路31およびDC/DCコンバータを用いて変換回路を構成してもよいし、AC/DCコンバータを用いて変換回路を構成してもよい。
【0068】
[変形例6]
上記実施の形態では、熱伝導性を有する樹脂により構成された接着剤29を用いて、変換回路24およびキャパシタ22を熱的に接続したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、ヒートパイプを用いて、変換回路24およびキャパシタ22を熱的に接続してもよい。
【0069】
[その他の変形例]
また、これらの変形例のうちの2以上を組み合わせてもよい。
【0070】
以上、実施の形態を挙げて本技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0071】
例えば、上記の実施の形態等では、図1に示した回路構成を有する共振回路14,23を用いたが、これに限定されるものではなく、共振回路であれば、どのような回路構成であってもよい。
【0072】
本明細書中に記載された効果はあくまで例示であり、本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本開示に関して、他の効果が得られてもよい。
【0073】
さらに、本開示は、以下の態様を取り得る。
<1>
給電アンテナから磁界共鳴方式により供給された交流電力を受電可能な受電アンテナと、
前記受電アンテナに接続され、温度により容量値が変化可能な第1のキャパシタを有し、前記受電アンテナと共振回路を構成するキャパシタ部と、
前記交流電力を直流電力に変換可能な変換回路と、
前記変換回路から前記第1のキャパシタに熱を伝えることが可能な熱伝導部材と
を備えた受電回路。
<2>
前記変換回路は、発熱体を有し、
前記熱伝導部材は、前記発熱体および前記第1のキャパシタを熱的に接続可能であり、
前記発熱体は、前記変換回路を構成する部品のうちの最も発熱し得る部品である
<1>記載の受電回路。
<3>
前記変換回路は、
前記受電アンテナから供給された前記交流電力を整流可能な整流回路と、
前記整流回路の出力信号に基づいて前記直流電力を生成可能なレギュレータと
を有し、
前記発熱体は、前記整流回路または前記レギュレータを含む
<2>記載の受電回路。
<4>
前記熱伝導部材は、前記発熱体および前記第1のキャパシタを覆う、熱伝導性を有する樹脂部材である
<2>または<3>記載の受電回路。
<5>
前記発熱体および前記第1のキャパシタは、互いに隣り合う位置に設けられた
<2>から<4>のいずれか1つに記載の受電回路。
<6>
前記熱伝導部材は、前記変換回路および前記第1のキャパシタを覆う、熱伝導性を有する樹脂部材である
<1>記載の受電回路。
<7>
前記変換回路および前記第1のキャパシタは、互いに隣り合う位置に設けられた
<1>または<2>記載の受電回路。
<8>
前記第1のキャパシタの容量値は、温度が所定の温度以上になると低下する
<1>から<7>のいずれか1つに記載の受電回路。
<9>
前記キャパシタ部は、前記第1のキャパシタの容量値の温度特性とは異なる容量値の温度特性を有する第2のキャパシタをさらに有し、
前記第1のキャパシタおよび前記第2のキャパシタは、互いに直列または並列に接続された
<1>から<8>のいずれか1つに記載の受電回路。
<10>
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の受電回路と、
蓄電池と、
前記受電回路の前記変換回路から供給された前記直流電力に基づいて、前記蓄電池を充電可能な充電回路と
を備えた電池パック。
【符号の説明】
【0074】
1…給電システム、10…給電装置、11…給電回路、12…キャパシタ、13…給電アンテナ、14…共振回路、20…電池パック、21…受電アンテナ、22…キャパシタ、23…共振回路、24,24A,24B…変換回路、25…充電回路、26…保護回路、27…蓄電池、29…接着剤、31…整流回路、32…レギュレータ、100…フレキシブル基板、I…充電電流、OP1…CC充電動作、OP2…CV充電動作、PT…給電電力、PR…受電電力、V…充電電圧。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12