(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125585
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】高炉用コークスの品質評価方法
(51)【国際特許分類】
C21B 5/00 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
C21B5/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033498
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(72)【発明者】
【氏名】夏井 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】愛澤 禎典
(72)【発明者】
【氏名】宇治澤 優
(57)【要約】
【課題】 コークスの品質を評価することができる高炉用コークスの品質評価方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、高炉に装入されるコークスの品質を評価する品質評価方法である。まず、コークス炉から高炉にコークスを搬送する搬送経路の途中でコークスを採取する。また、コークスの採取位置から高炉内のストックレベルまでのコークスの搬送経路の一部または全部において、落下を含む搬送に伴ってコークスが受ける衝撃エネルギーを推定する。そして、採取したコークスに衝撃エネルギーを加えた後におけるコークスのドラム強度指数を、コークスの品質を管理するための指標として用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉に装入されるコークスの品質を評価する品質評価方法であって、
コークス炉から前記高炉にコークスを搬送する搬送経路の途中でコークスを採取し、
コークスの採取位置から前記高炉内のストックレベルまでのコークスの搬送経路の一部または全部において、落下を含む搬送に伴ってコークスが受ける衝撃エネルギーを推定し、
採取したコークスに前記衝撃エネルギーを加えた後におけるコークスのドラム強度指数を、コークスの品質を管理するための指標として用いることを特徴とする品質評価方法。
【請求項2】
機械的外力によって、採取したコークスに前記衝撃エネルギーを加え、
前記衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数を測定し、
このドラム強度指数を前記指標として用いることを特徴とする請求項1に記載の品質評価方法。
【請求項3】
採取したコークスの粒度分布に基づいて、前記衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布である衝撃後粒度分布を推定し、
採取したコークスの粒径毎の重量比率及び前記衝撃後粒度分布に基づいて、前記コークスのドラム強度指数を算出し、
このドラム強度指数を前記指標として用いることを特徴とする請求項1に記載の品質評価方法。
【請求項4】
機械的外力によって、採取したコークスに前記衝撃エネルギーを加え、
前記衝撃エネルギーが加えられたコークスを用いてソリューションロス反応を行った後にドラム強度指数を測定し、
ソリューションロス反応後のドラム強度指数を前記指標として用いることを特徴とする請求項1に記載の品質評価方法。
【請求項5】
機械的外力によって、採取したコークスに前記衝撃エネルギーを加え、
前記衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数を測定し、
前記衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数と、前記衝撃エネルギーが加えられたコークスを用いてソリューションロス反応を行った後のドラム強度指数との相関関係に基づいて、前記衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数から、ソリューションロス反応後のドラム強度指数を算出し、
このドラム強度指数を前記指標として用いることを特徴とする請求項1に記載の品質評価方法。
【請求項6】
採取したコークスの粒度分布に基づいて、前記衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布である衝撃後粒度分布を推定し、
採取したコークスの粒径毎の重量比率及び前記衝撃後粒度分布に基づいて、前記コークスのドラム強度指数を算出し、
前記衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数と、前記衝撃エネルギーが加えられたコークスを用いてソリューションロス反応を行った後のドラム強度指数との相関関係に基づいて、前記衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数から、ソリューションロス反応後のドラム強度指数を算出し、
このドラム強度指数を前記指標として用いることを特徴とする請求項1に記載の品質評価方法。
【請求項7】
前記ソリューションロス反応後のドラム強度指数は、高炉の操業条件から推定された重量減少率を示すコークスのドラム強度指数であることを特徴とする請求項4から6のいずれか1つに記載の品質評価方法。
【請求項8】
前記ソリューションロス反応後のドラム強度指数は、予め定められた重量減少率を示すコークスのドラム強度指数であることを特徴とする請求項4から6のいずれか1つに記載の品質評価方法。
【請求項9】
前記ドラム強度指数の測定に用いられるドラムを用いて、前記機械的外力を発生させることを特徴とする請求項2、4及び5のいずれか1つに記載の品質評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉に装入されるコークスの品質を評価する方法に関し、特に、コークスのドラム強度指数DIを品質評価の管理指標として用いる品質評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉では、通常、高炉の内部に層状に装入される鉄原料(焼結鉱や鉄鉱石)とコークスに対して高炉の下方から熱風を供給し、熱風とコークスの反応により還元ガスを生成させる。そして、生成した還元ガスにより、鉄原料を金属鉄に還元し、溶融状態の銑鉄を製造している。
【0003】
高炉下部の高温帯において、コークスは、唯一の固体である。このため、高炉における通気性や通液性は、高温帯におけるコークスの性状に依存する。例えば、高温帯のコークスが粉化すると、通気性や通液性が悪化し、高炉の操業不調が生じる。従って、高炉の操業では、コークスの品質を適切に評価し、コークスの品質を管理することが重要である。
【0004】
品質評価を行うコークスは、コークスがコークス炉から押し出されて高炉に装入される前までの搬送経路の途中で採取することが一般的である。
【0005】
しかしながら、コークスは、搬送経路で受ける衝撃により、その性状が変化するため、搬送経路の途中で採取したコークスは、高炉に装入した直後のコークスとは性状が異なる。従って、搬送経路の途中で採取したコークスの品質評価を行う場合には、コークスを採取した位置から高炉の内部のストックレベルにコークスが到達するまでの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーについて考慮する必要がある。
【0006】
搬送過程でコークスが受ける衝撃に言及したものとして、品質管理方法ではないが、特許文献1がある。特許文献1には、コークス炉前から高炉前までの輸送過程においてコークスが受ける衝撃がドラム40~60回転で受ける衝撃と等価となるように輸送過程を制御することで、コークス強度と塊歩留を向上させるコークスの粒度・強度の管理方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、貯鉱槽出側の鉱石粒径、貯骸槽出口側のコークス粒径から装置固有の粒径低下率、各粒子の強度に応じた補正係数を用いて、炉内の装入物粒径を推定し、鉱石/コークスの調和平均径の比率を所定値以上に管理する粒度管理方法が開示されている。特許文献3には、コークス炉から高炉までの輸送過程において生じるコークスの粒度分布の変化を推定し、高炉に装入する前のコークスの粒度分布を調整するコークスの粒度調整方法が開示されている。さらにまた、特許文献4には、コークス搬送過程の少なくとも2箇所以上の任意の位置において同一コークス群からサンプリングしてその粒度分布を測定し、各サンプリング位置におけるコークスの粉率と平均粒径の変化と、各サンプリング位置までの搬送過程で当該コークス群が受ける機械的衝撃量とから、各サンプリング位置におけるコークス強度を推定することを特徴とするコークスのドラム強度推定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58-96678号公報
【特許文献2】特開昭61-119608号公報
【特許文献3】特開昭62-74008号公報
【特許文献4】特公平4-23736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の発明は、輸送過程における衝撃力を制御するもの、すなわち、ベルトコンベアやシェードの設計の指針となるものであり、通常の高炉操業における品質管理に応用することはできない。また、特許文献2に記載の発明においては、炉内の装入物粒径を推定する際に装置固有の粒径低下率が必要であるが、この値は高炉火入前の填充時の炉内の装入物をサンプリングして得なければならず、稼働中の高炉には適用できない。
【0010】
特許文献3に記載の発明においても、輸送過程において生じるコークスの粒度分布の変化を推定する際に破砕エネルギーが必要であるが、この値は標準の操業状況においてコークス炉から高炉炉頂までの粒径変化を実測して得るものであり、高炉炉頂でのサンプリングが困難であるのに加え、コークス品質など日々変動する操業に対応することは困難である。特許文献4に記載の発明は、ドラム強度試験法によらずコークス強度の測定個数を増やすことを目的とするが、複数箇所でのサンプリングが必要であることに加え、事前に同一性状のコークスサンプルを用いてドラム試験機における粉化テストを行っておく必要があり、やはり日常的なコークス品質の評価には適用困難である。さらに、ドラム強度を推定する際に、予測したい任意の地点の粒度分布を測定して塊率低下指数を算出する必要があるが、この値は日々変動するため、予め算出した値を用いての日々の品質管理は難しい。
【0011】
そこで、本発明は、コークスを採取した位置から高炉の内部のストックレベルまでの搬送経路においてコークスが受ける衝撃エネルギーを考慮して、コークスの品質を評価することができる高炉用コークスの品質評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、高炉に装入されるコークスの品質を評価する品質評価方法である。まず、コークス炉から高炉にコークスを搬送する搬送経路の途中でコークスを採取する。また、コークスの採取位置から高炉内のストックレベルまでのコークスの搬送経路(一部又は全部)において、落下を含む搬送に伴ってコークスが受ける衝撃エネルギーを推定する。そして、採取したコークスに衝撃エネルギーを加えた後におけるコークスのドラム強度指数を、コークスの品質を管理するための指標として用いる。
【0013】
機械的外力によって、採取したコークスに衝撃エネルギーを加えることができる。そして、衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数を測定し、このドラム強度指数を上記指標として用いることができる。
【0014】
採取したコークスの粒度分布に基づいて、衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布である衝撃後粒度分布を推定することができる。そして、採取したコークスの粒径毎の重量比率及び衝撃後粒度分布に基づいて、コークスのドラム強度指数を算出し、このドラム強度指数を上記指標として用いることができる。
【0015】
機械的外力によって、採取したコークスに衝撃エネルギーを加えることができる。そして、衝撃エネルギーが加えられたコークスを用いてソリューションロス反応を行った後にドラム強度指数を測定し、ソリューションロス反応後のドラム強度指数を上記指標として用いることができる。
【0016】
機械的外力によって、採取したコークスに衝撃エネルギーを加え、衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数を測定することができる。そして、衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数と、衝撃エネルギーが加えられたコークスを用いてソリューションロス反応を行った後のドラム強度指数との相関関係に基づいて、衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数から、ソリューションロス反応後のドラム強度指数を算出し、このドラム強度指数を上記指標として用いることができる。
【0017】
採取したコークスの粒度分布に基づいて、衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布である衝撃後粒度分布を推定することができる。そして、採取したコークスの粒径毎の重量比率及び衝撃後粒度分布に基づいて、コークスのドラム強度指数を算出することができる。ここで、衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数と、衝撃エネルギーが加えられたコークスを用いてソリューションロス反応を行った後のドラム強度指数との相関関係に基づいて、衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数から、ソリューションロス反応後のドラム強度指数を算出し、このドラム強度指数を上記指標として用いることができる。
【0018】
上述したソリューションロス反応後のドラム強度指数としては、高炉の操業条件から推定された重量減少率を示すコークスのドラム強度指数としたり、予め定められた重量減少率を示すコークスのドラム強度指数としたりすることができる。上述したように機械的外力を発生させるときには、ドラム強度指数の測定に用いられるドラムを用いることができ、これによって従来一般的に用いられているドラム強度指数との比較が容易になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、採取したコークスに衝撃エネルギーを加えた後におけるコークスのドラム強度指数を品質管理の指標として用いて、衝撃エネルギーを考慮に入れたコークスの品質評価を行うことができる高炉用コークスの品質評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。
【
図3】第2実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。
【
図5】第3実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。
【
図6】第4実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。
【
図7】コークスの重量減少率とドラム強度指数DI
3との関係を示す図である。
【
図8】コークスの重量減少率に基づいて、高炉用コークスの品質を評価する方法(一例)を説明する図である。
【
図9】ドラム強度指数DI
2とドラム強度指数DI
3との関係を示す図である。
【
図10】ドラム強度指数DI
1とドラム強度指数DI
3との関係を示す図である。
【
図11】コークス反応性指数CRIとドラム強度指数DI
3との関係を示す図である。
【
図12】コークス反応性指数CRIと熱間反応後強度CSRとの関係を示す図である。
【
図13】コークスの重量減少率とドラム強度指数DI
3との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
第1実施形態の高炉用コークスの品質評価方法について説明する。なお。高炉用コークスとは、高炉で用いられるコークスであり、以下、コークスともいう。
【0022】
本実施形態の品質評価方法は、コークス炉から高炉にコークスを搬送する経路(搬送経路)の途中で採取したコークスに対し、コークスの採取位置から高炉の内部のストックレベルにコークスが搬送されるまでの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーを加え、衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数DI(以下、「ドラム強度指数DI2」という)を測定して、測定したドラム強度指数DI2を管理指標として、コークスの品質を評価する方法である。
【0023】
図1は、本実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。
【0024】
ステップS101では、コークスを採取する。コークスの採取は、コークス炉から炉頂ホッパに装入されるまでのコークスの搬送経路のいずれかの位置で行われる。コークスを採取しやすい点を考慮して、コークスの採取位置を適宜決めることができる。
【0025】
図2は、コークスの搬送経路の一例を示す図である。搬送経路10は、コークスがコークス炉11から押し出されて、高炉16の内部における原料のストックレベル(予め決められた位置)16aに搬送されるまでの経路である。搬送経路10において、コークスは、まず、コークスを製造するコークス炉11から押し出される。コークス炉11から押し出されたコークス(赤熱コークス)は、コークス乾式消火設備(CDQ,Coke Dry Quenching)12に搬送されて冷却される。CDQ12で冷却されたコークスは、CDQ12から搬出され、原料槽13に搬入される。原料槽13は、所定量のコークスがその内部に維持されるように、コークスを所定の速度で搬出している。原料槽13から搬出されたコークスは、中継ホッパ14に搬入される。
【0026】
中継ホッパ14は、所定量のコークスが搬入されたときに、搬入されたコークス全てを搬出する。中継ホッパ14から搬出されたコークスは、炉頂ホッパ15に搬入される。炉頂ホッパ15は、中継ホッパ14と同様に、所定量のコークスが搬入されたときに、搬入されたコークス全てを搬出する。そして、炉頂ホッパ15から搬出されたコークスは、落下して高炉16の内部に装入され、高炉16の内部のストックレベル16aに到達する。搬送経路10において、コークスは、コークス炉11とCDQ12との間、CDQ12と原料槽13との間、原料槽13と中継ホッパ14との間、及び中継ホッパ14と炉頂ホッパ15との間をベルトコンベアで搬送される。なお、高炉16の内部には、コークスに加えて、鉄原料が装入される。
【0027】
コークスの採取は、コークスの搬送経路のいずれかの位置で行われればよく、特に限定されるものではない。
図2に示す搬送経路10でコークスを採取する場合、例えば、CDQ12と原料槽13の間の採取位置P1や、原料槽13と中継ホッパ14の間の採取位置P2でコークスを採取することができる。
【0028】
図1に示すステップS102では、コークスの採取位置から高炉16の内部のストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーを推定する。なお、ステップS102の処理で推定する衝撃エネルギーは、コークス1個が受ける衝撃エネルギーであってもよい。
【0029】
一例として、
図2に示す搬送経路10において、採取位置P1からストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーを推定する方法について説明する。
【0030】
採取位置P1からストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーには、落下衝撃エネルギー及び移動衝撃エネルギーが含まれる。落下衝撃エネルギーとは、コークスが落下して落下面(例えば、ベルトコンベアやストックレベル16a)に衝突したときに受ける衝撃エネルギーである。移動衝撃エネルギーとは、原料槽13、中継ホッパ14及び炉頂ホッパ15のそれぞれの内部でコークスが下方に移動するときに受ける衝撃エネルギーである。このため、落下衝撃エネルギー及び移動衝撃エネルギーのそれぞれを推定し、これらの衝撃エネルギーを合算することにより、採取位置P1からストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーを推定することができる。
【0031】
まず、落下衝撃エネルギーの推定方法について説明する。
【0032】
採取位置P1からストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路において、コークスの落下は、高低差があるベルトコンベア間をコークスが乗り継ぐときと、炉頂ホッパ15から高炉16にコークスが装入されるときに生じる。このため、落下衝撃エネルギーは、高低差があるベルトコンベア間をコークスが乗り継ぐときの落下距離に基づく位置エネルギーや、炉頂ホッパ15の搬出口から高炉16の内部のストックレベル16aまでの落下距離に基づく位置エネルギーとして算出することができる。
【0033】
採取位置P1からストックレベル16aまでの搬送経路において、コークス1個が受ける落下衝撃エネルギーは、下記(1)式に基づき推定(算出)することができる。
【0034】
【0035】
上記(1)式において、Ehは、落下衝撃エネルギー(J/個)を示し,mは、採取位置P1で採取したコークス1個の質量(kg)を示し,gは、重力加速度(9.8m/s2)を示し,hは、コークスの落下距離(m)を示し,Dpは、採取位置P1で採取したコークスの粒径(m)を示し,ρは、採取位置P1で採取したコークスの見掛密度(kg/m3)を示す。なお、落下距離hとしては、採取位置P1からストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路における落下距離の累積距離とする。コークスの見掛密度ρは、コークスの内部に存在している空隙の体積も密度算定の際の体積に含めて算定した密度である。コークスの質量m及び落下距離hを予め測定しておいたり、コークスの粒径Dp、コークスの見掛密度ρ及び落下距離hを予め測定しておいたりすることにより、上記(1)式に基づいて、落下衝撃エネルギーEhを算出することができる。
【0036】
次に、原料槽13の内部でコークスが受ける移動衝撃エネルギーの推定方法について説明する。
【0037】
原料槽13の内部でコークスが受ける移動衝撃エネルギーは、原料槽13の内部に充填されたコークスの充填層を剛塑性体と近似して力学的状態を解析する剛塑性有限要素法モデルにより推定することができる。なお、原料槽13の内部でコークスが受ける移動衝撃エネルギーは、コークス1個が受ける移動衝撃エネルギーであってもよい。
【0038】
ここで、原料槽13は、所定量のコークスがその内部に維持されるように、コークスを所定の速度で搬出している。このため、剛塑性有限要素法モデルによる推定は、原料槽13に貯留されるコークス占有領域を計算対象として、固定層とみなしたコークス充填層の応力解析により行うことができる。また、コークスの占有領域は、原料槽13の内部のコークスの貯留量と嵩密度から算出することができる。なお、嵩密度とは、原料槽13の内部に貯留するコークス間の空隙を含む見掛け密度のことを指す。そして、原料槽13に貯留されるコークス充填層の上部の応力は、非常に小さいため、原料槽13の内部におけるコークスの堆積角の影響は、無視することができる。例えば、原料槽13の壁面及びコークスの内部摩擦角を、それぞれ32,20°として、平均排出速度0.002m/sを与えることができる。
【0039】
原料槽13の内部におけるコークス充填層の応力解析によって、コークス充填層の応力分布を把握することができ、原料槽13の高さ方向における位置毎に、衝撃エネルギーを算出することができる。そして、原料槽13の高さ方向における位置毎の衝撃エネルギーを、原料槽13の高さ方向で積分することにより、原料槽13の内部でコークスが受ける移動衝撃エネルギーを算出することができる。なお、原料槽13の内部でコークスが受ける移動衝撃エネルギーを算出するためには、コークス充填層の応力分布を把握することができればよく、応力分布を推定する方法としては、公知の方法を適宜採用することができる。
【0040】
次に、中継ホッパ14及び炉頂ホッパ15のそれぞれの内部でコークスが受ける移動衝撃エネルギーの推定方法について説明する。
【0041】
中継ホッパ14と炉頂ホッパ15それぞれの内部でコークスが受ける移動衝撃エネルギーは、これらの内部に貯留されるコークスを剛塑性体と近似して力学的状態を解析する剛塑性有限要素法モデルにより推定することができる。なお、中継ホッパ14と炉頂ホッパ15それぞれの内部でコークスが受ける移動衝撃エネルギーは、コークス1個が受ける移動衝撃エネルギーであってもよい。
【0042】
中継ホッパ14や炉頂ホッパ15は、所定量のコークスが搬入されたときに、搬入されたコークス全てを搬出する。このため、剛塑性有限要素法モデルによる推定は、中継ホッパ14や炉頂ホッパ15に貯留されるコークス占有領域を計算対象として、移動層とみなしたコークス充填層の応力解析により行うことができる。例えば、中継ホッパ14や炉頂ホッパ15のコークスの排出速度に、それぞれ0.49m/s,0.90m/sを与えて時間を進め、コークスの排出による体積減少後におけるコークスの応力計算を、コークスの排出完了まで逐次行って平均衝撃エネルギーを算出することができる。この平均衝撃エネルギーは、中継ホッパ14と炉頂ホッパ15それぞれの内部でコークスが受ける移動衝撃エネルギーとなる。なお、コークスが受ける移動衝撃エネルギーを算出するためには、コークス充填層の応力分布を把握することができればよく、応力分布を推定する方法としては、公知の方法を適宜採用することができる。
【0043】
以上の通り、ステップS102の処理で推定する衝撃エネルギーは、コークスが落下することで受ける落下衝撃エネルギーと、原料槽13、中継ホッパ14及び炉頂ホッパ15の内部でコークスが移動するときに受ける移動衝撃エネルギーをそれぞれ推定し、これらの衝撃エネルギーを合算することにより求めることができる。
【0044】
ステップS103では、ステップS102の処理で推定した衝撃エネルギーを、ステップS101の処理で採取したコークスに加える。コークスに衝撃エネルギーを加える方法は、機械的外力をコークスに加える方法であればよく、特に限定されるものではない。例えば、コークスを内部に収容した中空のドラムを回転させたり、コークスを所定の高さから落下させたり、コークスにせん断応力を加えたりする方法を挙げることができる。
【0045】
ドラムを回転させたり、コークスを落下させたり、コークスにせん断応力を加えたりするときには、これらの衝撃処理を1回だけ行ったときにコークスに加わる衝撃エネルギーを予め求めておく。そして、ステップS102の処理で推定した衝撃エネルギーを、1回の衝撃処理での衝撃エネルギーで除算すれば、衝撃処理の回数を算出することができる。この算出した回数だけ、衝撃処理を行えば、ステップS102の処理で推定した衝撃エネルギーをコークスに加えることができる。ここで、衝撃処理の回数は、整数とする。ステップS102の処理で推定した衝撃エネルギーを、1回の衝撃処理での衝撃エネルギーで除算したときの値に小数点が含まれるときには、小数点第1位を四捨五入することができる。
【0046】
一例として、JIS K2151に規定される中空のドラムの内部にコークスを収容し、このドラムを回転させることでコークスに衝撃エネルギーを加える方法について説明する。
【0047】
まず、ドラムを1回転させることでコークスに加わる衝撃エネルギーを推定する。なお、ドラムを1回転させることでコークスに加わる衝撃エネルギーは、コークス1個に加わる衝撃エネルギーであってもよい。
【0048】
ドラムを1回転させることでコークス1個に加わる衝撃エネルギーは、例えば、下記(2)式に基づいて推定することができる。
【0049】
【0050】
上記(2)式において、EDIは、ドラムを1回転させることでコークス1個に加わる衝撃エネルギー(J/個/rev.)を示し、mは、コークス1個の質量(kg)を示し,gは、重力加速度(9.8m/s2)を示し、Hは、ドラム内有効落下高さ(m)を示し、xは、ドラムの1回転あたりでコークスがドラムに衝突する回数(-)を示し、Dpは、コークスの粒径(m)を示し、ρは、コークスの見掛密度(kg/m3)を示す。
【0051】
ここで、JIS K2151に規定される中空のドラムは、半径が1.5mである。また、ドラムの1回転あたりのコークスの衝突回数xと、ドラム内有効落下高さHは、離散要素法(DEM)によるドラム内のコークスの運動解析により求めることができ、例えば、衝突回数xは、1.5とすることができ、ドラム内有効落下高さHは、1.275とすることができる。コークスの質量mを測定したり、コークスの粒径Dp及びコークスの見掛密度ρを測定したりすることにより、上記(2)式に基づいて、衝撃エネルギーEDIを算出することができる。なお、質量m、粒径Dp及び見掛密度ρのそれぞれについては、採取位置P1で採取されたコークスの代表値(例えば、平均値や中央値)を用いることができる。
【0052】
次に、ステップS102の処理で推定した衝撃エネルギー(コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路でコークス1個が受ける衝撃エネルギー)を、ドラムを1回転させることでコークスに加わる衝撃エネルギー(ドラムを1回転させることでコークス1個に加わる衝撃エネルギー)で除算し、ステップS102の処理で推定した衝撃エネルギーをコークスに加えるために必要なドラムの回転数を算出する。
【0053】
次に、ステップS101の処理で採取したコークスを、JIS K2151に規定される中空のドラムに収容し、上述したように算出した回転数だけ、ドラムを回転させることにより、ステップS102の処理で推定した衝撃エネルギーをコークスに加えることができる。
【0054】
ステップS104では、ステップS103の処理で衝撃エネルギーが加えられたコークスについて、ドラム強度指数DI2を測定する。ドラム強度指数DI2は、JIS K2151の規定に基づき測定することができる。
【0055】
本明細書において、特記しない限り、ドラム強度指数DIは、JIS K2151に規定されるドラム強度指数DI150
15であり、ドラムの150回転後のコークスにおける粒径15mm以上のコークスの質量百分率を示すが、ドラムの回転数はこれに限定されない。これは、複数のコークスについて、ドラムの回転数を変化させながら、回転数毎にドラム強度指数を測定して比較しても、回転数が同一であるときのドラム強度指数の大小関係は不変であることによる。ただし、JIS K2151に合わせてドラムの回転数を150回転とするのが、これまで一般的に用いられているドラム強度指数DI150
15との比較が容易である点で好ましい。なお、篩目も特に限定されるものではないが、実炉で用いられる篩目と同じ15mmとするのが実態に即しており好ましい。
【0056】
また、ドラム強度指数DI1は、搬送経路から採取したコークスのドラム強度指数を示し、ドラム強度指数DI2は、コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーを加えたコークスのドラム強度指数を示す。なお、コークスの粒径は、篩を用いて測定することができ、例えば、JIS Z8801に準じた篩を用いることができる。
【0057】
本実施形態では、ステップS104の処理で測定したドラム強度指数DI2を、コークスの品質を管理するための指標として用い、コークスの品質を評価する。
【0058】
本実施形態の評価方法では、コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーを、搬送経路で採取したコークスに加え、このコークスのドラム強度指数DI2を管理指標として用いている。このため、コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路で生じるコークスの性状変化を考慮して、コークスの品質評価を行うことができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の高炉用コークスの品質評価方法について説明する。
【0060】
本実施形態の品質評価方法は、ドラム強度指数DI2に基づき、ドラム強度指数DI3を推定し、このドラム強度指数DI3を管理指標としてコークスの品質を評価する方法である。
【0061】
図3は、第2実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。なお、ステップS201~S204は、第1実施形態(
図1)で説明したステップS101~104とそれぞれ同じ処理であるため、詳細な説明を省略する。
【0062】
ステップS205では、ステップS204で測定したドラム強度指数DI2に基づき、ドラム強度指数DI3を推定する。ドラム強度指数DI3は、コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーを加えたコークスに、ソリューションロス反応を生じさせて、重量減少率を20%としたコークスのドラム強度指数である。一般的な高炉操業においては、コークスの重量減少率が20%程度であるため、本実施形態では、重量減少率が20%であるコークスのドラム強度指数DI3に着目している。
【0063】
後述する実施例で示すように、ドラム強度指数DI2とドラム強度指数DI3との間には相関関係があることが分かった。具体的には、ドラム強度指数DI2が高いほど、ドラム強度指数DI3が高くなり、ドラム強度指数DI2が低いほど、ドラム強度指数DI3が低くなる。このため、例えば、ドラム強度指数DI2とドラム強度指数DI3との相関関係を表す式を予め規定しておけば、ドラム強度指数DI2に基づき、ドラム強度指数DI3を推定することができる。
【0064】
ドラム強度指数DI2とドラム強度指数DI3の相関関係を表す式としては、まず、ドラム強度指数DI2及びドラム強度指数DI3を測定しておき、ドラム強度指数DI2,DI3の関係から求められる回帰式を使用することができる。以下、ドラム強度指数DI3を測定(実測)する方法の一例を説明する。
【0065】
まず、
図4に示す反応炉20を用意する。反応炉20は、ロードセル26を介して吊り下げられる反応容器21と、反応容器21の側面を囲う発熱体22aを有する炉本体22と、反応容器21の下部に接続する反応管23と、反応容器21の上部に接続する反応管24と、反応容器21の内部に挿入され、コークス1の温度を測定するための熱電対25と、により構成される。CO
2ガスは、反応管23を介して反応容器21の内部に流通し、反応容器21の内部で発生したガスは、反応管24を介して反応容器21の外部に排出される。発熱体22aは、通電されることで発熱し、反応容器21の内部に装入されるコークス1を加熱する。炉本体22は、炉本体22の温度を測定するための複数の熱電対22bを有しており、熱電対22bによって測定された温度に基づいて発熱体22aの通電を制御することにより、炉本体22の上部、中部、下部の温度を異なる温度に調整することができる。
【0066】
次に、ステップS203の処理により衝撃エネルギーを加えたコークス1を、反応容器21に装入する。反応容器21には、
図4に示すように、CO
2ガスの流れを整えるアルミナ球27が装入されていてもよい。アルミナ球27が装入される場合、コークス1は、アルミナ球27の層の上方に装入される。
【0067】
次に、発熱体22aに通電し、反応容器21に装入されたコークス1を加熱する。ソリューションロス反応(C+CO2→2CO)は、コークス1の温度が1000℃~1300℃であるときに生じやすくなるため、コークス1は、1000℃~1300℃に加熱しておくことが好ましい。また、コークス1の温度が1300℃以下であれば、ドラム強度指数DI3に対する温度依存性を無視することができる。なお、ソリューションロス反応は、吸熱反応であるため、反応容器21にCO2ガスを流通させたときの温度低下を考慮して、1000℃を超える温度にコークス1を加熱しておくことが好ましい。
【0068】
次に、反応容器21の内部において、CO2ガスの濃度が100%となるように、所定の速度でCO2ガスを、反応管23を介して反応容器21の内部に流通させる。反応容器21にCO2ガスを流通することで、コークス1とCO2ガスとが反応し、COガスが生成される。反応容器21で生成したCOガスなどのガスは、反応管24を介して反応容器21の外部に排出される。なお、反応容器21で生成したガスは、反応管24に接続される冷却装置(不図示)や除塵器(不図示)により、冷却されたり塵が取り除かれたりした後に、反応容器21の外部に排出されてもよい。
【0069】
ソリューションロス反応を生じさせている間は、ロードセル26を用いてコークス1の重量変化を随時測定する。なお、ロードセル26を用いて測定するコークス1の重量変化の正確性は、反応管24から排出されるガスの組成とガスの排出量に基づいて算出できるカーボン反応量(CO2ガスと反応したコークス1の炭素量)を使用して随時確認してもよい。
【0070】
次に、コークス1の重量減少率(すなわち、反応容器21の内部に装入したコークス1の重量に対する、ソリューションロス反応によるコークス1の重量減少量の割合)が20%となったときに、CO2ガスの流通及び発熱体22aによる加熱を中止させる。高炉16に装入されたコークスについて、ソリューションロス反応によるコークス反応量は略20%であることを考慮し、上述したように、重量減少率が20%となったときに、CO2ガスの流通及び発熱体22aによる加熱を中止させている。
【0071】
次に、ソリューションロス反応を生じさせたコークスのドラム強度指数DI3を測定する。ドラム強度指数DI3の測定方法においては、ドラム強度指数DI2の測定方法と同じくJIS K2151の規定に基づき、ドラムの回転数を150回転として測定してもよいし、コークスがストックレベル16aから高炉炉下部まで移動するときにコークスが受ける衝撃エネルギーを、離散要素法(DEM)モデル等を利用して見積り、この衝撃エネルギーに相当する回転数(n回転)をドラムの回転数として単独で付与してDIn
15を測定したり、ドラムの回転数として150回転に回転数(n回転)を追加で付与してDIn+150
15を測定したりしてもよい。これらの処理により測定したドラム強度指数DI3と、ステップS204で測定したドラム強度指数DI2とに基づき、ドラム強度指数DI2とドラム強度指数DI3の相関関係を表す式(回帰式)を得ることが出来る。
【0072】
本実施形態では、ステップS205の処理で推定したドラム強度指数DI3を管理指標として、コークスの品質を評価する。
【0073】
本実施形態の評価方法では、ドラム強度指数DI2に基づき、ドラム強度指数DI3を推定し、このドラム強度指数DI3を管理指標として用いている。このため、コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aまでの搬送過程で生じるコークスの性状変化だけなく、高炉16の内部で生じるソリューションロス反応を考慮した品質評価を行うことができる。従って、本実施形態のコークスの品質評価方法は、第1実施形態のコークスの品質評価方法と比較して、より適切にコークスの品質を評価することができる。
【0074】
(変形例)
本実施形態では、ドラム強度指数DI2に基づいてドラム強度指数DI3を推定していたが、これに限るものではない。具体的には、ドラム強度指数DI2を測定せずに、反応炉20を用いて、衝撃エネルギーを加えたコークスにソリューションロス反応を発生させた後、ドラム強度指数DI3を実測することができる。そして、このドラム強度指数DI3を管理指標として、コークスの品質を評価することができる。
【0075】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の高炉用コークスの品質評価方法について説明する。
【0076】
本実施形態の品質評価方法は、搬送経路で採取したコークスの粒度分布に基づいて、コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーを加えたコークスの粒度分布を推定し、さらに、この粒度分布に基づいて、ドラム強度指数DI2を推定し、このドラム強度指数DI2を管理指標として用いる方法である。
【0077】
図5は、第3実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。なお、ステップS301は、第1実施形態(
図1)のステップS101と同じ処理であるため、詳細な説明を省略する。
【0078】
ステップS302では、ステップS301で採取したコークスの粒度分布(以下、「初期粒度分布」ともいう)を測定する。粒度分布は、上述した篩を用いて測定することができる。
【0079】
ステップS303では、コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーを推定する。ステップS303の処理は、第1実施形態(
図1)のステップS102と同じ処理であるため、説明を省略する。
【0080】
ステップS304では、ステップS302で測定した初期粒度分布に基づき、ステップS301で採取したコークスに対してステップS303で算出した衝撃エネルギーを加えて得られるコークスの粒度分布を推定する。衝撃エネルギーを加えたコークスの粒度分布の推定方法は、特に限定されない。
【0081】
以下、衝撃エネルギーを加えたコークスの粒度分布の推定方法の一例について説明する。なお、以下に説明する推定方法は、第1実施形態のステップS103で例示したように、JIS K2151に規定されるドラムの内部にコークスを装入し、そのドラムを回転させることでコークスに衝撃エネルギーを加えることを想定した推定方法である。
【0082】
まず、ステップS302で測定したコークスの初期粒度分布に、下記(3)式で表されるRosin-Rammler式を適用して、初期粒度分布を統計的に再現する。初期粒度分布は、篩を用いた測定結果であり、篩いサイズに応じてコークスの粒径区分が規定されてしまう。そこで、粒径区分の粗さを解消して連続的な粒度分布を得るために、Rosin-Rammler式を適用して、初期粒度分布を統計的に再現する。
【0083】
【0084】
上記(3)式において、R(Dp)は、篩上(残留)分布(%)を示し、Dpは、コークスの粒径を示し、aは、定数を示し、nは、均等数(1を超える整数)を示す。
【0085】
次に、ステップS303で推定したコークスが受ける衝撃エネルギーを、ドラムを1回転させることでコークスに加わる衝撃エネルギーで除算し、ステップS303で推定した衝撃エネルギーをコークスに加えるために必要なドラムの回転数t(下記(6)式~(9)式に示す回転数t)を算出する。ここで、ドラムを1回転させることでコークスに加わる衝撃エネルギーは、第1実施形態のステップS103で説明した方法により推定できるため、詳細な説明は省略する。
【0086】
次に、上記(3)式で求められる初期粒度分布のうち、1mmから最大粒径までの各粒径に対し、下記(4)式~(9)式を適用し、単一粒径の粒子に衝撃エネルギーを加えた後の粒度分布を粒径毎に求める。
【0087】
【0088】
上記(4)式~(9)式において、R(Dp,t)は、衝撃エネルギーが加えられたコークス破砕粉の篩上比率(%)を示し、Dpは、衝撃エネルギーが加えられる前のコークスの粒径(mm)を示し、Dpmaxは、衝撃エネルギーが加えられたコークス破砕粉の最大粒径(mm)を示し、φは、粉化指数を示し、βは、破砕されない粒子の粒度分布指数を示し、γは、破砕された粒子の粒度分布指数を示し、eは、衝撃エネルギー(J/kg)を示し、tは、ドラムの回転数(rev.)を示し、Dpsは、衝撃エネルギーが加えられる前のコークスの粒径(mm)を示し、Vは、コークスがドラムに衝突する速度(以下、「衝突速度」という)(m/s)を示し、[E/M]は、粉化抵抗エネルギー(J/kg)を示し、xは、ドラムを1回転させることでコークスがドラムに衝突する回数(以下、「衝突回数」という)を示し、δは補正係数(-)を示す。
【0089】
上記(5)式に基づいて衝撃エネルギーeを算出するとともに、上記(9)式に基づいて粉化抵抗エネルギー[E/M]を算出することにより、上記(6)式に基づいて粉化指数φを算出できる。そして、粉化指数φと、上記(7)式から算出される粒度分布指数βと、上記(8)式から算出される粒度分布指数γとを上記(4)式に代入することにより、単一粒径Dpの粒子に衝撃エネルギーを加えた後の篩上比率R(Dp,t)を算出できる。
【0090】
粒度分布指数βは、コークスの塊の粒度分布を決定するパラメータであり、粒度分布指数βが大きいほど、コークスが塊として残留しやすいことを意味する。粒度分布指数γは、破砕された粒子の粒度分布を決定するパラメータであり、粒度分布指数γが大きいほど、微粉が発生しやすくなる。各粒度分布指数β,γは、衝撃エネルギーを加える前のコークスの粒径Dps及び回転数tに依存するため、上記(7)式,(8)式によって表される。粉化抵抗エネルギー[E/M]は、単位質量の粉を生成するために必要なエネルギーであり、粉化抵抗エネルギー[E/M]が大きいほど、粉化が抑制される。粉化抵抗エネルギー[E/M]は、衝撃エネルギーを加える前のコークスの粒径Dps及び回転数tに依存するため、上記(9)式によって表される。
【0091】
なお、上記(5)式における衝突回数x及び衝突速度Vは、離散要素法(DEM)によるドラム内のコークス粒子の運動解析により算出することができ、例えば、衝突回数xは、1.5回とすることができ、衝突速度Vは、5.0(m/s)とすることができる。また、コークス破砕粉の最大粒径Dpmaxは、粒径Dpの1/2以上になることはないので、コークス破砕粉の最大粒径Dpmaxは、1/2Dpとすることができる。また、上記(9)式における補正係数δは、後述するようにドラム強度指数DIの計算値を実測値に一致させるために用いられる。
【0092】
次に、単一粒径の粒子に衝撃エネルギーを加えた後の粒度分布(上記(4)式から算出された篩上比率R(Dp,t))を、下記(10)式に基づき、上記(3)式によって特定された初期粒度分布で重量按分することで、衝撃エネルギーを加えた後のコークスの粒度分布を求めることができる。
【0093】
【0094】
上記(10)式において、R(Dp,t)は、コークスに衝撃エネルギーを加えた後の篩上比率(%)を示し、R(Dp,t)ijは、単一粒径の粒子に衝撃エネルギーを加えた後の篩上比率(%)を示し、Xは、衝撃エネルギーを加える前のコークスの重量比率(初期重量比率)を示し、添字iは、衝撃エネルギーが加えられる前のコークスの粒径(mm)を示し、添字jは、衝撃エネルギーを加えた後のコークスの粒径(mm)を示し、kは、初期粒度分布の最大粒径を示す。篩上比率R(Dp,t)ijとしては、上記(4)式で算出された値が用いられる。粒径iは、上述したように、初期粒度分布のうち、1mmから最大粒径kまでの値である。また、上述したように、コークス破砕粉の最大粒径Dpmaxを1/2Dpとしたため、粒径jは、初期粒度分布のうち、0.5mmから最大粒径kまでの値である。
【0095】
以上の推定方法により、ステップS304では、ステップS303で算出した衝撃エネルギーを加えて得られるコークスの粒度分布が推定される。ステップS305では、ステップS304で算出したコークスの粒度分布に基づき、さらにJIS K2151に規定する回転強度試験方法において、コークスが受ける衝撃エネルギーを加えてコークスのドラム強度指数DI2を推定する。
【0096】
具体的には、上記(10)式で得られたコークスの粒度分布を初期粒度分布と読み替え、ドラム回転数tを150回転として再度上記(4)式~(10)式の計算を繰り返して回転強度試験後の粒度分布を求め、当該回転強度試験後の粒度分布において粒径が15mm以上のコークスの質量百分率を計算することで、ドラム強度指数DI2を推定することができる。より簡便には、上記(4)式~(10)式において、ドラム回転数tを、ステップS303で推定した衝撃エネルギーをコークスに加えるために必要なドラムの回転数tに150(回転強度試験での回転数)を足した回転数にしておくことにより、採取したコークスの初期粒度分布から直接ドラム強度指数DI2を推定することができる。ここで、コークスの粒度分布から推定されるドラム強度指数DI2が実測値と一致するように、上記(9)式に示す補正係数δを予め決めておくことができる。
【0097】
本実施形態では、ステップS305の処理で推定したドラム強度指数DI2を管理指標として、コークスの品質を評価する。
【0098】
本実施形態の評価方法は、採取したコークスの初期粒度分布に基づき、コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布を推定し、さらに、推定した粒度分布に基づいてドラム強度指数DI2を推定し、推定したドラム強度指数DI2を管理指標として用いている。このため、コークスを採取した位置から高炉16のストックレベル16aまでの搬送経路で生じるコークスの性状変化を考慮したコークスの品質評価を行うことができる。
【0099】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の高炉用コークスの品質評価方法について説明する。
【0100】
本実施形態の品質評価方法は、採取したコークスの初期粒度分布を用いて推定したドラム強度指数DI2から、さらに、ドラム強度指数DI3を推定し、このドラム強度指数DI3を管理指標として用いる方法である。
【0101】
図6は、第4実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。なお、ステップS401~S405は、第3実施形態(
図5)で説明したステップS301~305とそれぞれ同じ処理であるため、説明を省略する。
【0102】
ステップS406では、ステップS405で推定したドラム強度指数DI
2に基づき、ドラム強度指数DI
3を推定する。ドラム強度指数DI
3の推定方法は、第2実施形態(
図3)のステップS205と同じ推定方法を用いることができるため、詳細な説明を省略する。
【0103】
本実施形態では、ステップS406の処理で推定したドラム強度指数DI3を管理指標として、ステップS401の処理で採取したコークスの品質を評価する。
【0104】
本実施形態の評価方法では、ドラム強度指数DI2に基づき、ドラム強度指数DI3を推定し、推定したドラム強度指数DI3を管理指標として用いている。このため、コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aまでの搬送経路で生じるコークスの性状変化だけなく、高炉の内部で生じるソリューションロス反応を考慮した品質評価を行うことができる。従って、本実施形態のコークスの品質評価方法は、第3実施形態のコークスの品質評価方法と比較して、より適切にコークスの品質を評価することができる。
【0105】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態の高炉用コークスの品質評価方法について説明する。
【0106】
上述した第2実施形態及び第4実施形態では、重量減少率が20%であるコークスのドラム強度指数DI3をコークスの品質を評価するための管理指標としているが、高炉の操業条件によっては、コークスの重量減少率が20%からずれることがある。例えば、高炉操業において、水素系ガスの吹込み量を変更するときには、コークスの重量減少率が変化しやすくなる。このため、本実施形態の品質評価方法は、高炉の操業条件に応じたコークスの重量減少率を考慮してドラム強度指数DI3を推定し、このドラム強度指数DI3を管理指標として用いる方法である。
【0107】
図7に示すように、ドラム強度指数DI
3及びコークスの重量減少率の間には負の相関関係(一次関数)L10が成り立ち、コークスの重量減少率が上昇するほど、ドラム強度指数DI
3が低下する。言い換えれば、コークスの重量減少率が低下するほど、ドラム強度指数DI
3が上昇する。この相関関係L10を用いれば、高炉の操業条件に応じてコークスの重量減少率が変化した場合において、変化後の重量減少率に応じたドラム強度指数DI
3を推定することができる。そして、この推定したドラム強度指数DI
3に基づいて、コークスの品質を評価することができる。
【0108】
コークスの種類毎に
図7に示す相関関係L10を予め求めておけば、コークスの重量減少率を推定することにより、この重量減少率に対応するドラム強度指数DI
3を推定することができる。一方、以下に説明する方法によってもドラム強度指数DI
3を推定することができる。
【0109】
図7に示す相関関係L10によれば、重量減少率Rrの所定変化量ΔRrに対するドラム強度指数DI
3の変化量ΔDI
3の比率(ΔDI
3/ΔRr)を予め求めておくことができる。また、基準とする重量減少率(例えば、20%)Rr_refと、この重量減少率Rr_refに対応するドラム強度指数DI
3(以下、「DI
3_ref」という)を予め決めておく。そして、高炉の操業条件に基づいてコークスの重量減少率Rr_estを推定し、重量減少率(推定)Rr_est及び重量減少率(基準)Rr_refの差ΔRr_mを求める。この差ΔRr_mと上述した比率(ΔDI
3/ΔRr)に基づいて、重量減少率(推定)Rr_estに対応するドラム強度指数DI
3を求めることができる。
【0110】
具体的には、比率(ΔDI3/ΔRr)に差ΔRr_mを乗算することにより、ドラム強度指数の変化量ΔDI3_mを求めることができ、この変化量ΔDI3_mをドラム強度指数DI3_refに対して加算又は減算することにより、重量減少率(推定)Rr_estに対応するドラム強度指数DI3を特定することができる。ここで、重量減少率(推定)Rr_estが重量減少率(基準)Rr_refよりも高い場合には、ドラム強度指数DI3_refに対して変化量ΔDI3_mを減算すればよい。一方、重量減少率(推定)Rr_estが重量減少率(基準)Rr_refよりも低い場合には、ドラム強度指数DI3_refに対して変化量ΔDI3_mを加算すればよい。
【0111】
コークスの重量減少率(言い換えれば、コークス反応率)は、公知の手法を用いて推定することができる。例えば、以下に説明する仮定条件を設定し、下記(11)式~(15)式に基づいて重量減少率を推定することができる。
【0112】
高炉の羽口から微粉炭を吹き込むときには、微粉炭の全量が羽口先で燃焼されず、燃焼率に応じて未燃焼の微粉炭が発生するものとする。ここで、羽口先における微粉炭の燃焼率は、実炉で採取した未燃チャーの気孔率から推定した結果を参考にして70%とすることができる。未燃焼の微粉炭については、還元材に対する微粉炭の重量比率に応じた量が浸炭で消費され、残りの未燃焼の微粉炭は、ソリューションロス反応によってコークスよりも優先的に消費されるものとする。高炉内のソリューションロスカーボン量から未燃焼の微粉炭による消費分を差し引いた残りのソリューションロス反応をコークスが担うものとする。微粉炭中の炭素濃度や、コークス中の炭素濃度は一定とする。
【0113】
【0114】
上記(11)式~(15)式において、UPCは、銑鉄の単位重量当たりの未燃焼の微粉炭の量[kg/t]、PCRは微粉炭比[kg/t]、ηPCは羽口先の微粉炭の燃焼率(70[%]とする)である。CBPCは、浸炭で消費される微粉炭量であって、銑鉄の単位重量当たりの微粉炭量[kg/t]、RARは還元材比[kg/t]である。SLCPCは、ソリューションロス反応で消費される微粉炭量[kg/t]、CPCは微粉炭中に占める炭素の質量割合(82[%]とする)である。SLCCKはソリューションロス反応で消費されるコークス量[kg/t]、SLCはソリューションロスカーボン量[kg/t]、CCKはコークス中に占める炭素の質量割合(85[%]とする)である。RDCKはコークスの重量減少率(コークス反応率)[%]、CRはコークス比[kg/t]である。
【0115】
次に、コークスの品質を評価する方法(一例)について、
図8を用いて説明する。
図8は、
図7と同様に、コークスの重量減少率及びドラム強度指数DI
3の関係を示す。例えば、
図8に示す相関関係(一次関数)L21に基づいて、コークスの重量減少率が20%である高炉操業においては、ドラム強度指数DI
3の基準値を70%に設定したとする。
【0116】
操業条件の変更によって、例えば、コークスの重量減少率が20%から15%に低下したときには、
図8に示す相関関係(一次関数)L21において、15%の重量減少率に対応するドラム強度指数DI
3が基準値(70%)よりも高くなってしまう。すなわち、重量減少率が15%である高炉操業において、重量減少率が20%である高炉操業で用いられているコークスを使用すると、コークスの品質としてはオーバースペックとなってしまう。そこで、
図8に示す相関関係(一次関数)L22を示すコークスに変更すれば、言い換えれば、重量減少率が20%である高炉操業で用いられているコークスよりも強度が低いコークスに変更すれば、重量減少率が15%である高炉操業において、ドラム強度指数DI
3を基準値(70%)とすることができる。相関関係L22では、15%の重量減少率に対応するドラム強度指数DI
3は70%となる。
【0117】
一方、操業条件の変更によって、例えば、コークスの重量減少率が20%から25%に上昇したときには、
図8に示す相関関係(一次関数)L21において、25%の重量減少率に対応するドラム強度指数DI
3が基準値(70%)よりも低くなってしまう。すなわち、重量減少率が25%である高炉操業において、重量減少率が20%である高炉操業で用いられているコークスを使用すると、コークスの品質としてはロースペックとなってしまう。そこで、
図8に示す相関関係(一次関数)L23を示すコークスに変更すれば、言い換えれば、重量減少率が20%である高炉操業で用いられているコークスよりも強度が高いコークスに変更すれば、重量減少率が25%である高炉操業において、ドラム強度指数DI
3を基準値(70%)とすることができる。相関関係L23では、25%の重量減少率に対応するドラム強度指数DI
3は70%となる。
【0118】
本実施形態のように、コークスの重量減少率に応じたドラム強度指数DI3を推定することにより、推定したドラム強度指数DI3が基準となるドラム強度指数DI3よりも高いか又は低いかを把握することができる。そして、推定したドラム強度指数DI3と、基準となるドラム強度指数DI3との間の高低関係を考慮して、高炉操業で用いられるコークスの種類を決めることができる。これにより、高炉の操業条件に適した品質のコークスを用いることができる。
【0119】
以上の第1~第5実施形態においては、コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aまでの一連の搬送経路でコークスが受けると考えられる全ての衝撃エネルギーを考慮に入れたが、上述した搬送経路の一部でコークスが受ける衝撃エネルギーのみを考慮するようにしてもよい。この場合であっても、採取したコークスのドラム強度指数DI1を管理指標として用いることと比べれば、コークスの品質を評価する上で好ましい。例えば、コークスの採取位置から炉頂ホッパ15までの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーを推定し、当該衝撃エネルギーを採取したコークスに加えて各ドラム強度指数DI2,DI3を測定又は推定してもよい。
【実施例0120】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0121】
図2に示す搬送経路10を搬送されるコークスA~Cを、CDQ12と原料槽13との間(採取位置P1)で採取した。採取したコークスA~Cそれぞれについて、ドラム強度指数DI
1,コークス反応性指数CRI,及び熱間反応後強度CSRを以下に示す条件で測定した。
【0122】
[ドラム強度指数DI1の測定条件]
JIS K2151に基づき、ドラム強度指数DI150
15(ドラムの150回転後のコークスにおける粒径15mm以上のコークスの質量百分率)を測定した。
【0123】
[コークス反応性指数CRIの測定条件]
粒径を20±1mmに調製したコ-クス200gを、反応温度1100℃、CO2ガス流量5NL/分の条件で2時間反応させ、2時間の反応後、反応前のコークスに対する反応後のコ-クスの重量減少率を算出し、コークス反応性指数CRIを測定した。
【0124】
[熱間反応後強度CSRの測定条件]
熱間反応後強度CSRの測定は、ASTM-D5341に基づき行った。すなわち、粒径を20±1mmに調製したコ-クス200gを、反応温度1100℃、CO2ガス流量5NL/分の条件で2時間反応させ、2時間の反応後、I型ドラムで600回転させて、反応後のコークスにおける9.56mm篩上のコークスの質量百分率を算出し、熱間反応後強度CSRを測定した。
【0125】
【0126】
コークスA~Cの粒径(ベース)を測定した。また、粒径による影響を調べるため、コークスA~Cそれぞれについて、粒径のみ異なるケース1~3のコークスを用意した。各コークスの粒径及び重量比率を下記表2に示す。なお、下記表2において、ケース1~3の平均粒径は、粒径区間の中間粒径を示し、ベースの平均粒径は、ケース1~3の中間粒径を重量比率で按分した加重平均を示す。下記表2に示すように、コークスA~Cとしては、粒径が25mm以上であるコークスを用いた。この理由は、JIS K2151に規定する回転強度試験方法において、25mm以上又は50mm以上の塊コークスを試料とすることが定められていることや、通常、コークスは原料槽13において30~60mmの篩目で篩われることにより、高炉16に装入されるコークスのうち、粒径が25mm以下であるコークスの重量比率が低いことを考慮したものである。
【0127】
【0128】
採取位置P1からストックレベル16aまでの搬送経路10でコークスA~Cが受ける衝撃エネルギー(コークス1個が受ける衝撃エネルギー)を、第1実施形態で説明した方法に基づき推定した。JIS K2151に規定されるドラムを1回転することでコークスに加わる衝撃エネルギー(ドラムを1回転することでコークス1個に加わる衝撃エネルギー)を上記(2)式に基づき推定した。コークスA~Cが受ける衝撃エネルギーそれぞれを、ドラムを1回転することでコークスに加わる衝撃エネルギーで除算し、衝撃エネルギーをコークスA~Cに加えるために必要なドラムの回転数をそれぞれ算出した。
【0129】
本実施例において、採取位置P1からストックレベル16aまでの落下衝撃エネルギーはドラム40回転数分、原料槽13内での移動衝撃エネルギーはドラム15回転数分、中継ホッパ14内での移動衝撃エネルギーはドラム20回転数分、炉頂ホッパ15内での移動衝撃エネルギーはドラム30回転数分と算出された。このため、ドラムの総回転数は、105回転数であった。上記表2に示すコークスを、JIS K2151に規定されるドラムの内部にそれぞれ装入し、算出した上記総回転数だけドラムを回転させて衝撃エネルギーをコークスに加えた。衝撃エネルギーを加えた各コークスのドラム強度指数DI2を、ドラム強度指数DI1と同じ測定条件で測定した。
【0130】
図4に示す反応炉20を用意した。φ300mm×高さ1600mmの反応容器21の内部に、アルミナ球20.0kgを装入した。また、アルミナ球の層の上方に、衝撃エネルギーを加えたコークス15.0kgを反応容器21の内部にそれぞれ装入した。発熱体22aに通電し、反応容器21に装入されたコークスを1050℃に加熱した。次に、反応容器21の内部がCO
2ガス濃度100%となるように、200NL/min(ガス線速度:0.05m/s)の速度でCO
2ガスを、反応管23を介して反応容器21の内部に流通した。CO
2ガス流通後、30分でコークスの温度が1000℃まで降下し、その後1000℃で安定した。CO
2ガスの流通後は、ロードセル26を用いてコークスの重量変化を随時測定し、コークスの重量減少率が20%となったときに、CO
2ガスの流通及び発熱体22aによる加熱を中止した。コークスを冷却した後、ドラム強度指数DI
3を測定した。
【0131】
コークスA~Cについて、ドラム強度指数DI
2とドラム強度指数DI
3との関係を
図9に示す。また、コークスA~Cについて、ドラム強度指数DI
1とドラム強度指数DI
3との関係を
図10に示す。
【0132】
図9に示すように、ドラム強度指数DI
2が高いほど、ドラム強度指数DI
3は高くなり、ドラム強度指数DI
2とドラム強度指数DI
3とが正の相関関係(一次関数)L30を有していることが分かる。一方、
図10に示すように、ドラム強度指数DI
1が高いほど、ドラム強度指数DI
3が高くなる傾向が確認できたが、ドラム強度指数DI
1とドラム強度指数DI
3との相関性は、ドラム強度指数DI
2とドラム強度指数DI
3との相関性よりも低かった。従って、ドラム強度指数DI
2を管理指標として用いた場合、ドラム強度指数DI
1を管理指標として用いた場合と比較して、コークスの品質をより適切に評価できることが理解できた。
【0133】
コークスA~Cについて、コークス反応性指数CRIとドラム強度指数DI
3との関係を
図11に示す。また、コークスA~Cについて、コークス反応性指数CRIと熱間反応後強度CSRとの関係を
図12に示す。なお、
図12には、実炉で測定されたデータも示している。
【0134】
図11に示すように、コークス反応性指数CRIとドラム強度指数DI
3との間には、相関性を確認できなかった。また、
図12に示すように、コークス反応性指数CRIと熱間反応後強度CSRとは、負の相関関係(一次関数)L40を有しているが、高炉内でのソリューションロス反応によるコークス反応量がほぼ一定(略20%)であることを考慮すると、反応時間が一定(ここでは2時間)であるときのコークス反応性指数CRI及び熱間反応後強度CSRの相関性を確認しただけでは、コークスの品質を適切に評価できていない可能性がある。これらの結果から理解できるように、ドラム強度指数DI
2を管理指標として用いた場合、熱間反応後強度CSRやコークス反応性指数CRIを管理指標として用いた場合と比較して、コークスの品質をより適切に評価できることが理解できた。
【0135】
次に、上述した反応炉20を用いたドラム強度指数DI
3の測定において、コークスBの重量減少率を変更しながら、コークスBのドラム強度指数DI
3を測定した。ここで、反応容器21に装入したコークスBにCO
2ガスを供給し、コークスB及びCO
2ガスの反応時間を調整することにより、コークスBの重量減少率を変更した。なお、反応容器21に装入したコークスBに供給するガスとして、CO
2ガスに加えてH
2Oガスを用い、これらのガスの混合比率を変更することにより、コークスBの重量減少率を変更することもできる。ここで、水素系ガスを高炉に吹き込む操業を行うことを想定してH
2Oガスを用いることができる。この測定結果を
図13に示す。
図13において、丸印は実測値であり、直線L50は近似直線である。
【0136】
図13から分かるように、ドラム強度指数DI
3及びコークスの重量減少率の間には、負の相関関係(直線L50で規定される一次関数)が成り立つ。すなわち、コークスの重量減少率が上昇するほど、ドラム強度指数DI
3が低下し、コークスの重量減少率が低下するほど、ドラム強度指数DI
3が上昇した。このように、コークスの重量減少率に応じてドラム強度指数DI
3が変化するため、上述した第5実施形態で説明したように、コークスの重量減少率を考慮してドラム強度指数DI
3を推定することが好ましいことが分かった。
【0137】
次に、高炉に水素系ガスを吹き込むときにおいて、コークスの重量減少率への影響を確認した。下記表3に示す高炉操業諸元において、公知の高炉数学モデル(例えば、Kouji Takatani, Takanobu Inada, Yutaka Ujisawa、「Three-dimensional Dynamic Simulator for Blast Furnace」、ISIJ International、一般社団法人日本鉄鋼協会、1999年、Vol.39、No.1、p15-22)を用いてソリューションロスカーボン量(SLC)とコークスの重量減少率を推定したところ、下記表4に示す結果が得られた。なお、下記表3,4において、ベースは、水素系ガスを吹き込まないときの条件を示す。
【0138】
【0139】
【0140】
上記表4から分かるように、水素系ガスの吹込み量を変更することにより、ソリューションロスカーボン量(SLC)やコークスの重量減少率が変化した。具体的には、水素系ガスの吹込み量が増加するほど、ソリューションロスカーボン量が減少するとともに、コークスの重量減少率が低下した。言い換えれば、水素系ガスの吹込み量が減少するほど、ソリューションロスカーボン量が増加するとともに、コークスの重量減少率が上昇した。
【0141】
このため、高炉操業において、水素系ガスの吹込み量を変更するときには、コークスの重量減少率が変化しやすくなるため、上述した第5実施形態で説明したように、コークスの重量減少率を考慮してドラム強度指数DI3を推定することが好ましいことが分かった。
1:コークス,10:搬送経路,11:コークス炉,12:コークス乾式消火設備(CDQ),13:原料槽,14:中継ホッパ,15:炉頂ホッパ,16:高炉,16a:ストックレベル,P1・P2:採取位置,20:反応炉,21:反応容器,22:炉本体,22a:発熱体,22b:熱電対,23・24:反応管,25:熱電対,26:ロードセル,27:アルミナ球