(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125586
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】高炉用コークスの品質評価方法
(51)【国際特許分類】
C21B 5/00 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
C21B5/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033499
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(72)【発明者】
【氏名】夏井 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】長塚 俊一
(72)【発明者】
【氏名】横田 秋歳
(57)【要約】
【課題】 コークスの品質を評価することができる高炉用コークスの品質評価方法を提供する。
【解決手段】 コークス炉から高炉にコークスを搬送する搬送経路の途中でコークスを採取する。そして、コークスの採取位置から高炉内のストックレベルまでのコークスの搬送経路の一部または全部において、落下を含む搬送に伴ってコークスが受ける衝撃エネルギーを、採取したコークスに加えた後におけるコークスのドラム強度指数を、コークスの品質を管理するための指標として用いる。衝撃エネルギーは、採取位置からストックレベルまでのコークスの搬送経路の一部または全部で搬送される加速度ロガーの検出結果から算出される3軸合成加速度の経時変化に基づいて特定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉に装入されるコークスの品質を評価する品質評価方法であって、
コークス炉から前記高炉にコークスを搬送する搬送経路の途中でコークスを採取し、
コークスの採取位置から前記高炉内のストックレベルまでのコークスの搬送経路の一部または全部において、落下を含む搬送に伴ってコークスが受ける衝撃エネルギーを、採取したコークスに加えた後におけるコークスのドラム強度指数を、コークスの品質を管理するための指標として用い、
前記衝撃エネルギーは、前記採取位置から前記ストックレベルまでのコークスの搬送経路の一部または全部で搬送される加速度ロガーの検出結果から算出される3軸合成加速度の経時変化に基づいて特定されることを特徴とする品質評価方法。
【請求項2】
機械的外力によって、採取したコークスに前記衝撃エネルギーを加え、
前記衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数を測定し、
このドラム強度指数を前記指標として用いることを特徴とする請求項1に記載の品質評価方法。
【請求項3】
採取したコークスの粒度分布に基づいて、前記衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布である衝撃後粒度分布を推定し、
採取したコークスの粒径毎の重量比率及び前記衝撃後粒度分布に基づいて、前記コークスのドラム強度指数を算出し、
このドラム強度指数を前記指標として用いることを特徴とする請求項1に記載の品質評価方法。
【請求項4】
機械的外力によって、採取したコークスに前記衝撃エネルギーを加え、
前記衝撃エネルギーが加えられたコークスを用いてソリューションロス反応を行った後にドラム強度指数を測定し、
ソリューションロス反応後のドラム強度指数を前記指標として用いることを特徴とする請求項1に記載の品質評価方法。
【請求項5】
機械的外力によって、採取したコークスに前記衝撃エネルギーを加え、
前記衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数を測定し、
前記衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数と、前記衝撃エネルギーが加えられたコークスを用いてソリューションロス反応を行った後のドラム強度指数との相関関係に基づいて、前記衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数から、ソリューションロス反応後のドラム強度指数を算出し、
このドラム強度指数を前記指標として用いることを特徴とする請求項1に記載の品質評価方法。
【請求項6】
採取したコークスの粒度分布に基づいて、前記衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布である衝撃後粒度分布を推定し、
採取したコークスの粒径毎の重量比率及び前記衝撃後粒度分布に基づいて、前記コークスのドラム強度指数を算出し、
前記衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数と、前記衝撃エネルギーが加えられたコークスを用いてソリューションロス反応を行った後のドラム強度指数との相関関係に基づいて、前記衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数から、ソリューションロス反応後のドラム強度指数を算出し、
このドラム強度指数を前記指標として用いることを特徴とする請求項1に記載の品質評価方法。
【請求項7】
前記ソリューションロス反応後のドラム強度指数は、高炉の操業条件から推定された重量減少率を示すコークスのドラム強度指数であることを特徴とする請求項4から6のいずれか1つに記載の品質評価方法。
【請求項8】
前記ソリューションロス反応後のドラム強度指数は、予め定められた重量減少率を示すコークスのドラム強度指数であることを特徴とする請求項4から6のいずれか1つに記載の品質評価方法。
【請求項9】
前記ドラム強度指数の測定に用いられるドラムを用いて、前記機械的外力を発生させることを特徴とする請求項2、4及び5のいずれか1つに記載の品質評価方法。
【請求項10】
前記3軸合成加速度の経時変化に基づいて、前記3軸合成加速度が閾値を超える回数を算出し、
前記回数に基づいて、機械的外力によって、採取したコークスに前記衝撃エネルギーを加えることを特徴とする請求項2、4及び5のいずれか1つに記載の品質評価方法。
【請求項11】
前記3軸合成加速度の経時変化に基づいて、前記加速度ロガーのサンプリング間隔の前後における前記3軸合成加速度の差の絶対値を累積し、
この累積値に基づいて、機械的外力によって、採取したコークスに前記衝撃エネルギーを加えることを特徴とする請求項2、4及び5のいずれか1つに記載の品質評価方法。
【請求項12】
前記3軸合成加速度の経時変化に基づいて、閾値以上の前記3軸合成加速度を累積し、
この累積値に基づいて、機械的外力によって、採取したコークスに前記衝撃エネルギーを加えることを特徴とする請求項2、4及び5のいずれか1つに記載の品質評価方法。
【請求項13】
前記3軸合成加速度の経時変化に基づいて、前記3軸合成加速度が閾値を超える回数を算出し、
前記回数に基づいて、前記衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布である衝撃後粒度分布を推定することを特徴とする請求項3または6に記載の品質評価方法。
【請求項14】
前記3軸合成加速度の経時変化に基づいて、前記加速度ロガーのサンプリング間隔の前後における前記3軸合成加速度の差の絶対値を累積し、
この累積値に基づいて、前記衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布である衝撃後粒度分布を推定することを特徴とする請求項3または6に記載の品質評価方法。
【請求項15】
前記3軸合成加速度の経時変化に基づいて、閾値以上の前記3軸合成加速度を累積し、
この累積値に基づいて、前記衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布である衝撃後粒度分布を推定することを特徴とする請求項3または6に記載の品質評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉に装入されるコークスの品質を評価する方法に関し、特に、コークスのドラム強度指数DIを品質評価の管理指標として用いる品質評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉では、通常、高炉の内部に層状に装入される鉄原料(焼結鉱や鉄鉱石)とコークスに対して高炉の下方から熱風を供給し、熱風とコークスの反応により還元ガスを生成させる。そして、生成した還元ガスにより、鉄原料を金属鉄に還元し、溶融状態の銑鉄を製造している。
【0003】
高炉下部の高温帯において、コークスは、唯一の固体である。このため、高炉における通気性や通液性は、高温帯におけるコークスの性状に依存する。例えば、高温帯のコークスが粉化すると、通気性や通液性が悪化し、高炉の操業不調が生じる。従って、高炉の操業では、コークスの品質を適切に評価し、コークスの品質を管理することが重要である。
【0004】
品質評価を行うコークスは、コークスがコークス炉から押し出されて高炉に装入される前までの搬送経路の途中で採取することが一般的である。
【0005】
しかしながら、コークスは、搬送経路で受ける衝撃により、その性状が変化するため、搬送経路の途中で採取したコークスは、高炉に装入した直後のコークスとは性状が異なる。従って、搬送経路の途中で採取したコークスの品質評価を行う場合には、コークスを採取した位置から高炉の内部のストックレベルにコークスが到達するまでの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーについて考慮する必要がある。
【0006】
搬送経路でコークスが受ける衝撃に言及したものとして、品質管理方法ではないが、特許文献1がある。特許文献1には、コークス炉前から高炉前までの輸送過程においてコークスが受ける衝撃がドラム40~60回転で受ける衝撃と等価となるように輸送過程を制御することで、コークス強度と塊歩留を向上させるコークスの粒度・強度の管理方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、貯鉱槽出側の鉱石粒径、貯骸槽出口側のコークス粒径から装置固有の粒径低下率、各粒子の強度に応じた補正係数を用いて、炉内の装入物粒径を推定し、鉱石/コークスの調和平均径の比率を所定値以上に管理する粒度管理方法が開示されている。さらに、特許文献3には、コークス炉から高炉までの輸送過程において生じるコークスの粒度分布の変化を推定し、高炉に装入する前のコークスの粒度分布を調整するコークスの粒度調整方法が開示されている。
【0008】
さらにまた、特許文献4には、コークス搬送過程の少なくとも2箇所以上の任意の位置において同一コークス群からサンプリングしてその粒度分布を測定し、各サンプリング位置におけるコークスの粉率と平均粒径の変化と、各サンプリング位置までの搬送過程で当該コークス群が受ける機械的衝撃量とから、各サンプリング位置におけるコークス強度を推定することを特徴とするコークスのドラム強度推定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58-96678号公報
【特許文献2】特開昭61-119608号公報
【特許文献3】特開昭62-74008号公報
【特許文献4】特公平4-23736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の発明は、輸送過程における衝撃力を制御するもの、すなわち、ベルトコンベアやシェードの設計の指針となるものであり、通常の高炉操業における品質管理に応用することはできない。また、特許文献2に記載の発明においては、炉内の装入物粒径を推定する際に装置固有の粒径低下率が必要であるが、この値は高炉火入前の填充時の炉内の装入物をサンプリングして得なければならず、稼働中の高炉には適用できない。
【0011】
特許文献3に記載の発明においても、輸送過程において生じるコークスの粒度分布の変化を推定する際に破砕エネルギーが必要であるが、この値は標準の操業状況においてコークス炉から高炉炉頂までの粒径変化を実測して得るものであり、高炉炉頂でのサンプリングが困難であるのに加え、コークス品質など日々変動する操業に対応することは困難である。
【0012】
特許文献4に記載の発明は、ドラム強度試験法によらずコークス強度の測定個数を増やすことを目的とするが、複数箇所でのサンプリングが必要であることに加え、事前に同一性状のコークスサンプルを用いてドラム試験機における粉化テストを行っておく必要があり、やはり日常的なコークス品質の評価には適用困難である。さらに、ドラム強度を推定する際に、予測したい任意の地点の粒度分布を測定して塊率低下指数を算出する必要があるが、この値は日々変動するため、予め算出した値を用いての日々の品質管理は難しい。
【0013】
そこで、本発明は、コークスを採取した位置から高炉の内部のストックレベルまでの搬送経路においてコークスが受ける衝撃エネルギーを考慮して、コークスの品質を評価することができる高炉用コークスの品質評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、高炉に装入されるコークスの品質を評価する品質評価方法である。まず、コークス炉から高炉にコークスを搬送する搬送経路の途中でコークスを採取する。そして、採取したコークスに衝撃エネルギーを加えた後におけるコークスのドラム強度指数を、コークスの品質を管理するための指標として用いる。
【0015】
ここで、衝撃エネルギーは、コークスの採取位置から高炉内のストックレベルまでのコークスの搬送経路の一部または全部において、落下を含む搬送に伴ってコークスが受ける衝撃エネルギーである。衝撃エネルギーは、採取位置からストックレベルまでのコークスの搬送経路の一部または全部で搬送される加速度ロガーの検出結果から算出される3軸合成加速度の経時変化に基づいて特定される。
【0016】
機械的外力によって、採取したコークスに衝撃エネルギーを加えることができる。ここで、衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数を測定し、このドラム強度指数を上記指標として用いることができる。
【0017】
採取したコークスの粒度分布に基づいて、衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布である衝撃後粒度分布を推定することができる。そして、採取したコークスの粒径毎の重量比率及び衝撃後粒度分布に基づいて、コークスのドラム強度指数を算出し、このドラム強度指数を上記指標として用いることができる。
【0018】
機械的外力によって、採取したコークスに衝撃エネルギーを加えることができる。ここで、衝撃エネルギーが加えられたコークスを用いてソリューションロス反応を行った後にドラム強度指数を測定し、ソリューションロス反応後のドラム強度指数を上記指標として用いることができる。
【0019】
機械的外力によって、採取したコークスに衝撃エネルギーを加えて、衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数を測定することができる。そして、衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数と、衝撃エネルギーが加えられたコークスを用いてソリューションロス反応を行った後のドラム強度指数との相関関係に基づいて、衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数から、ソリューションロス反応後のドラム強度指数を算出することができる。このドラム強度指数を上記指標として用いることができる。
【0020】
採取したコークスの粒度分布に基づいて、衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布である衝撃後粒度分布を推定し、採取したコークスの粒径毎の重量比率及び衝撃後粒度分布に基づいて、コークスのドラム強度指数を算出することができる。そして、衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数と、衝撃エネルギーが加えられたコークスを用いてソリューションロス反応を行った後のドラム強度指数との相関関係に基づいて、衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数から、ソリューションロス反応後のドラム強度指数を算出することができる。このドラム強度指数を上記指標として用いることができる。
【0021】
上述したソリューションロス反応後のドラム強度指数としては、高炉の操業条件から推定された重量減少率を示すコークスのドラム強度指数としたり、予め定められた重量減少率を示すコークスのドラム強度指数としたりすることができる。ドラム強度指数の測定に用いられるドラムを用いて、機械的外力を発生させることができる。
【0022】
3軸合成加速度の経時変化に基づいて、3軸合成加速度が閾値を超える回数を算出することができる。この回数に基づいて、機械的外力によって、採取したコークスに衝撃エネルギーを加えることができる。
【0023】
3軸合成加速度の経時変化に基づいて、加速度ロガーのサンプリング間隔の前後における3軸合成加速度の差の絶対値を累積することができる。この累積値に基づいて、機械的外力によって、採取したコークスに衝撃エネルギーを加えることができる。
【0024】
3軸合成加速度の経時変化に基づいて、閾値以上の3軸合成加速度を累積することができる。この累積値に基づいて、機械的外力によって、採取したコークスに衝撃エネルギーを加えることができる。
【0025】
3軸合成加速度の経時変化に基づいて、3軸合成加速度が閾値を超える回数を算出することができる。この回数に基づいて、衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布である衝撃後粒度分布を推定することができる。
【0026】
3軸合成加速度の経時変化に基づいて、加速度ロガーのサンプリング間隔の前後における3軸合成加速度の差の絶対値を累積することができる。この累積値に基づいて、衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布である衝撃後粒度分布を推定することができる。
【0027】
3軸合成加速度の経時変化に基づいて、閾値以上の3軸合成加速度を累積することができる。この累積値に基づいて、衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布である衝撃後粒度分布を推定することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、採取したコークスに衝撃エネルギーを加えた後におけるコークスのドラム強度指数を品質管理の指標として用いることにより、衝撃エネルギーを考慮に入れたコークスの品質評価を行うことができる高炉用コークスの品質評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。
【
図3】コークスの搬送経路における3軸合成加速度の経時変化を示す概略図である。
【
図4】第2実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。
【
図6】第3実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。
【
図7】第4実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。
【
図8】コークスの重量減少率とドラム強度指数DI
3との関係を示す図である。
【
図9】コークスの重量減少率に基づいて、高炉用コークスの品質を評価する方法(一例)を説明する図である。
【
図10】閾値と、3軸合成加速度が閾値を超えた回数との関係を示す図である。
【
図11】3軸合成加速度の差の累積値及び計測時間の関係を示す図である。
【
図12】搬送経路でサンプリングされたコークスの粒度分布と、ドラムを用いた衝撃処理を行った後のコークスの粒度分布を示す図である。
【
図13】搬送経路でサンプリングされたコークスのドラム強度指数と、ドラムを用いた衝撃処理を行った後のコークスのドラム強度指数を示す図である。
【
図14】ドラム強度指数DI2とドラム強度指数DI3との関係を示す図である。
【
図15】コークスの重量減少率とドラム強度指数DI
3との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態である高炉用コークスの品質評価方法について説明する。なお。高炉用コークスとは、高炉で用いられるコークスであり、以下、単に「コークス」という。
【0031】
本実施形態の品質評価方法は、コークス炉から高炉にコークスを搬送する経路(搬送経路)の途中で採取したコークスに対し、コークスの採取位置から高炉の内部のストックレベルにコークスが搬送されるまでの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーを加え、衝撃エネルギーが加えられたコークスのドラム強度指数DI(以下、「ドラム強度指数DI2」という)を測定して、測定したドラム強度指数DI2を管理指標として、コークスの品質を評価する方法である。
【0032】
図1は、本実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。
【0033】
ステップS101では、コークスを採取する。コークスの採取は、コークス炉から炉頂ホッパに装入されるまでのコークスの搬送経路のいずれかの位置で行われる。コークスを採取しやすい点を考慮して、コークスの採取位置を適宜決めることができる。
【0034】
図2は、コークスの搬送経路の一例を示す図である。搬送経路10は、コークスがコークス炉11から押し出されて、高炉16の内部における原料のストックレベル(予め決められた位置)16aに搬送されるまでの経路である。搬送経路10において、コークスは、まず、コークスを製造するコークス炉11から押し出される。コークス炉11から押し出されたコークス(赤熱コークス)は、コークス乾式消火設備(CDQ,Coke Dry Quenching)12に搬送されて冷却される。CDQ12で冷却されたコークスは、CDQ12から搬出され、原料槽13に搬入される。原料槽13は、所定量のコークスがその内部に維持されるように、コークスを所定の速度で搬出している。原料槽13から搬出されたコークスは、中継ホッパ14に搬入される。
【0035】
中継ホッパ14は、所定量のコークスが搬入されたときに、搬入されたコークス全てを搬出する。中継ホッパ14から搬出されたコークスは、炉頂ホッパ15に搬入される。炉頂ホッパ15は、中継ホッパ14と同様に、所定量のコークスが搬入されたときに、搬入されたコークス全てを搬出する。そして、炉頂ホッパ15から搬出されたコークスは、落下して高炉16の内部に装入され、高炉16の内部のストックレベル16aに到達する。搬送経路10において、コークスは、コークス炉11とCDQ12との間、CDQ12と原料槽13との間、原料槽13と中継ホッパ14との間、及び中継ホッパ14と炉頂ホッパ15との間をベルトコンベアで搬送される。なお、高炉16の内部には、コークスに加えて、鉄原料が装入される。
【0036】
コークスの採取は、コークスの搬送経路のいずれかの位置で行われればよく、特に限定されるものではない。
図2に示す搬送経路10でコークスを採取する場合、例えば、CDQ12と原料槽13の間の採取位置P1や、原料槽13と中継ホッパ14の間の採取位置P2でコークスを採取することができる。
【0037】
ステップS102では、コークスの採取位置からストックレベル16aまでのコークスの搬送経路においてコークスが受ける衝撃エネルギーの総和(以下、「搬送衝撃エネルギー」という)を、ステップS101の処理で採取したコークスに加える。搬送衝撃エネルギーには、以下に説明するように、落下衝撃エネルギー及び移動衝撃エネルギーが含まれる。
【0038】
落下衝撃エネルギーとは、コークスが落下して落下面(例えば、ベルトコンベアやストックレベル16a)に衝突したときに受ける衝撃エネルギーである。コークスの落下は、例えば、高低差があるベルトコンベア間をコークスが乗り継ぐときと、炉頂ホッパ15から高炉16にコークスが装入されるときに生じる。移動衝撃エネルギーとは、原料槽13、中継ホッパ14及び炉頂ホッパ15のそれぞれの内部でコークスが下方に移動するときに受ける衝撃エネルギーである。
【0039】
コークスに搬送衝撃エネルギーを加える方法は、機械的外力をコークスに加える方法であればよく、特に限定されるものではない。例えば、ドラムの内部にコークスを投入してドラムを回転させたり、コークスを所定の高さから落下させたりする方法を挙げることができる。
【0040】
搬送衝撃エネルギーをコークスに加える場合には、搬送衝撃エネルギーを、機械的外力をコークスに加える処理(以下、「衝撃処理」という)の回数Niに換算して、この回数Niだけ衝撃処理を行う。ここで、ドラムを回転させてコークスに機械的外力を加える場合には、ドラムの1回転が1回の衝撃処理に相当する。また、コークスを所定の高さから落下させてコークスに機械的外力を加える場合には、落下の回数が衝撃処理の回数Niに相当する。
【0041】
以下、搬送衝撃エネルギーを衝撃処理の回数Niに換算する方法について説明する。
【0042】
まず、コークスの採取位置に加速度ロガーを置き、コークスの採取位置からストックレベル16aまでのコークスの搬送経路に沿って加速度ロガーを搬送することにより、加速度ロガーの検出結果に基づいて、搬送衝撃エネルギーを把握する。加速度ロガーは、所定のサンプリング周期(例えば、0.1[sec]、サンプリング周波数:10Hz)において、3軸方向の加速度をそれぞれ検出する。3軸方向の加速度を検出すれば、下記(1)式に基づいて、3軸合成加速度aaveを算出することができる。
【0043】
【0044】
上記(1)式において、axはX方向の加速度、ayはY方向の加速度、azはZ方向の加速度である。X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交する方向である。
【0045】
3軸合成加速度aaveは、加速度ロガーが算出してもよいし、加速度ロガーが3軸方向の加速度を演算装置に送信して演算装置が3軸合成加速度aaveを算出してもよい。加速度ロガーから演算装置に情報を送信するときには、無線通信を用いることができる。また、加速度ロガーに内蔵されたメモリに3軸方向の加速度を記憶しておき、加速度ロガーを演算装置に有線を介して接続し、メモリに記憶された3軸方向の加速度を演算装置に送信することができる。
【0046】
図3には、コークスの採取位置からストックレベル16aまでのコークスの搬送経路の一部において、加速度ロガーの検出結果から算出された3軸合成加速度a
aveの経時変化(概略)を示す。
図3において、縦軸は3軸合成加速度a
aveであり、横軸は時間である。
図3に示すように、加速度ロガーが衝撃を受けるたびに、3軸合成加速度a
aveのピークが発生する。加速度ロガーが受ける衝撃は、コークスが受ける衝撃とみなすことができるため、加速度ロガーの検出結果から算出された3軸合成加速度a
aveに関する情報(以下、「3軸合成加速度情報」という)に基づいて、搬送衝撃エネルギーを把握することができる。
【0047】
3軸合成加速度情報としては、具体的には、3軸合成加速度aaveが閾値athを超えた回数Nや、今回サンプリング時の3軸合成加速度aaveと前回サンプリング時の3軸合成加速度aaveとの差(絶対値)Δaaveを累積した値(累積値)ΣΔaaveや、閾値ath以上の3軸合成加速度aaveを累積した値(累積値)Σaaveがある。これらの情報のそれぞれについて、以下、具体的に説明する。また、以下の説明では、3軸合成加速度情報が搬送衝撃エネルギーを特定するものである場合は添え字aを、1回の衝撃処理におけるものである場合は添え字bを、それぞれ付して説明することがある。
【0048】
まず、3軸合成加速度aaveが閾値athを超えた回数Nについて説明する。
【0049】
加速度ロガーが衝撃を受けていないときにも、3軸合成加速度aaveが0[G]よりも大きくなることがある。そこで、搬送衝撃エネルギーを特定するためには、3軸合成加速度aave_aの閾値ath_aを設定し、閾値ath_aよりも小さい3軸合成加速度aave_aを除外することが好ましい。閾値ath_aは、加速度ロガーの検出特性などを考慮して適宜決めることができる。ここで、地球上ではいかなる物体も地球の中心方向への重力を受けており、加速度ロガーでは常時1[G]程度の3軸合成加速度aave_aが計測されるため、重力による影響を除外するために、閾値ath_aとしては、1[G]よりも大きな値を設定することができる。また、加速度ロガーが受ける衝撃を特定しやすいように、例えば、閾値ath_aを1.5[G]とすることができる。
【0050】
例えば、
図3に示す3軸合成加速度a
ave_aの経時変化に基づいて、3軸合成加速度a
ave_aが閾値a
th_aを超えた回数N
aをカウントすることができる。回数N
aのカウントの方法としては、単純には3軸合成加速度a
ave_aが閾値a
th_aを超えたサンプリングの回数をそのまま回数N
aとすることができるが、3軸合成加速度a
ave_aが閾値a
th_aを超えてから閾値a
th_aよりも小さくなったときに、1回とカウントするようにしてもよい。コークスの搬送経路において加速度ロガーが衝撃を受けるたびに、搬送衝撃エネルギーが増加するため、3軸合成加速度a
ave_aが閾値a
th_aを超えた回数N
aをカウントすることにより、この回数N
aによって搬送衝撃エネルギーを特定することができる。
【0051】
次に、今回サンプリング時の3軸合成加速度aaveと前回サンプリング時の3軸合成加速度aaveとの差(絶対値)Δaaveを累積した値(累積値)ΣΔaaveについて説明する。
【0052】
上述したように、搬送される加速度ロガーは所定のサンプリング間隔において3軸方向の加速度を検出するため、このサンプリング間隔において3軸合成加速度aave_aが算出される。今回サンプリング時の3軸合成加速度aave_aとは、任意のサンプリング時における3軸合成加速度aave_aである。前回サンプリング時の3軸合成加速度aave_aとは、今回サンプリングよりも1つ前のサンプリング時における3軸合成加速度aave_aである。加速度ロガーのサンプリング間隔毎に、今回サンプリング時の3軸合成加速度aave_aと、前回サンプリング時の3軸合成加速度aave_aとの差(絶対値)Δaave_aを算出し、加速度ロガーがコークスの採取位置からストックレベル16aに到達するまでの間の時間帯において、差(絶対値)Δaave_aを累積する。
【0053】
コークスの搬送経路において加速度ロガーが衝撃を受けるたびに、3軸合成加速度aave_aが上昇する。すなわち、衝撃を受けたサンプリング時の3軸合成加速度aave_aは、衝撃を受ける直前のサンプリング時の3軸合成加速度aave_aや、衝撃が収まった直後のサンプリング時の3軸合成加速度aave_aよりも大きくなる。したがって、衝撃を受けたサンプリング時の3軸合成加速度aave_aと、衝撃を受ける前後のサンプリング時の3軸合成加速度aave_aとの差(絶対値)Δaave_aは、加速度ロガーが受ける衝撃エネルギーに依存する。
【0054】
一方、加速度ロガーが衝撃を受けていないときには、1回のサンプリング間隔の前後における3軸合成加速度aave_aはほとんど変化しない。この場合には、今回サンプリング時の3軸合成加速度aave_aと前回サンプリング時の3軸合成加速度aave_aとの差(絶対値)Δaave_aはほぼ0[G]となり、加速度ロガーが衝撃を受けていないことを特定できる。
【0055】
このように、加速度ロガーがコークスの採取位置からストックレベル16aに到達するまでの間の時間帯において、差(絶対値)Δaave_aを累積して累積値ΣΔaave_aを算出することにより、搬送衝撃エネルギーを特定することができる。
【0056】
次に、閾値ath以上の3軸合成加速度aaveを累積した値(累積値)Σaaveについて説明する。
【0057】
上述したように、搬送衝撃エネルギーを特定するためには、3軸合成加速度a
ave_aの閾値a
th_aを設定し、閾値a
th_aよりも小さい3軸合成加速度a
ave_aを除外することが好ましい。そこで、例えば、
図3に示す3軸合成加速度の経時変化に基づいて、閾値a
th_a以上である3軸合成加速度a
ave_aを特定する。そして、加速度ロガーがコークスの採取位置からストックレベル16aに到達するまでの間の時間帯において、閾値a
th_a以上である3軸合成加速度a
ave_aを累積する。3軸合成加速度a
ave_aを累積する方法としては、閾値a
th_a以上の3軸合成加速度a
ave_aの超過分を累積するだけでなく、閾値a
th_a以上である3軸合成加速度a
ave_aから閾値a
th_aを減算した値を累積してもよい。
【0058】
閾値ath_aを設定することにより、加速度ロガーが衝撃を受けたときの3軸合成加速度aave_aと、加速度ロガーが衝撃を受けていないときの3軸合成加速度aave_aとを区別することができる。加速度ロガーが衝撃を受けたときの3軸合成加速度aave_aは、閾値ath_a以上となるため、閾値ath_a以上である3軸合成加速度aave_aを累積して累積値Σaave_aを算出することにより、搬送衝撃エネルギーを特定することができる。
【0059】
搬送衝撃エネルギーを衝撃処理の回数N
iに換算するためには、まず、1回の衝撃処理を行ったときの3軸合成加速度情報を予め取得しておく。加速度ロガーを用いて1回の衝撃処理を行えば、この衝撃処理を行っている間における3軸合成加速度情報を取得できる。
図3に示す場合と同様に、1回の衝撃処理を行う間に加速度ロガーが受ける衝撃に応じて3軸合成加速度a
ave_bのピークが発生する。
【0060】
例えば、ドラムを回転させて衝撃処理を行う場合には、ドラムの内部に加速度ロガーを投入し、ドラムを回転させて加速度ロガーに衝撃を加えることにより、3軸合成加速度情報を取得できる。また、所定の高さから落下させる衝撃処理を行う場合には、加速度ロガーを所定の高さから落下させて衝撃を加えることにより、搬送衝撃エネルギーについて上述したのと同様の方法で3軸合成加速度情報を取得できる。
【0061】
1回の衝撃処理における3軸合成加速度情報を取得しておけば、搬送衝撃エネルギーを特定する3軸合成加速度情報を、1回の衝撃処理における3軸合成加速度情報で除算した値が、衝撃処理の回数Niとなる。
【0062】
例えば、3軸合成加速度情報が上述した回数Nであるとき、搬送衝撃エネルギーを特定する回数Naを、1回の衝撃処理における回数Nbで除算すれば、衝撃処理の回数Niを算出することができる。ここで、搬送衝撃エネルギーを特定する回数Naをカウントするときと、1回の衝撃処理における回数Nbをカウントするときとでは、閾値ath_a,ath_bを同一とする。
【0063】
また、3軸合成加速度情報が上述した累積値ΣΔaaveであるとき、搬送衝撃エネルギーを特定する累積値ΣΔaave_aを、1回の衝撃処理における累積値ΣΔaave_bで除算すれば、衝撃処理の回数Niを算出することができる。
【0064】
さらに、3軸合成加速度情報が上述した累積値Σaaveであるとき、搬送衝撃エネルギーを特定する累積値Σaave_aを、1回の衝撃処理における累積値Σaave_bで除算すれば、衝撃処理の回数Niを算出することができる。ここで、搬送衝撃エネルギーを特定する累積値Σaave_aを算出するときと、1回の衝撃処理における累積値Σaave_bを算出するときとでは、閾値ath_a,ath_bを同一とする。
【0065】
衝撃処理の回数Niを算出するとき、この回数Niは整数とする。搬送衝撃エネルギーを特定する3軸合成加速度情報を、1回の衝撃処理における3軸合成加速度情報で除算した値が小数点を含むとき、例えば、小数点第1位を四捨五入することができる。
【0066】
上述したように衝撃処理の回数Niを算出すれば、この回数Niだけ衝撃処理を行うことにより、搬送衝撃エネルギーをコークスに与えることができる。
【0067】
ステップS103では、ステップS102の処理で搬送衝撃エネルギーが加えられたコークスについて、ドラム強度指数DI2を測定する。ドラム強度指数DI2は、JIS K2151の規定に基づき測定することができる。
【0068】
本明細書において、特記しない限り、ドラム強度指数DIは、JIS K2151に規定されるドラム強度指数DI150
15であり、ドラムの150回転後のコークスにおける粒径15mm以上のコークスの質量百分率を示すが、ドラムの回転数はこれに限定されない。これは、複数のコークスについて、ドラムの回転数を変化させながら、回転数毎にドラム強度指数を測定して比較しても、回転数が同一であるときのドラム強度指数の大小関係は不変であることによる。
【0069】
ただし、JIS K2151に合わせてドラムの回転数を150回転とするのが、これまで一般的に用いられているドラム強度指数DI150
15との比較が容易である点で好ましい。なお、篩目も特に限定されるものではないが、実炉で用いられる篩目と同じ15mmとするのが実態に即しており好ましい。また、ドラム強度指数DI1は、搬送経路から採取したコークスのドラム強度指数を示し、ドラム強度指数DI2は、コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路でコークスが受ける搬送衝撃エネルギーを加えたコークスのドラム強度指数を示す。なお、コークスの粒径は、篩を用いて測定することができ、例えば、JIS Z8801に準じた篩を用いることができる。
【0070】
本実施形態では、ステップS103の処理で測定したドラム強度指数DI2を、コークスの品質を管理するための指標として用い、コークスの品質を評価する。
【0071】
本実施形態の評価方法では、採取位置で採取したコークスに搬送衝撃エネルギーを加えた後、このコークスのドラム強度指数DI2を管理指標として用いている。このため、コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aにコークスが到達するまでの搬送経路で生じるコークスの性状変化を考慮して、コークスの品質評価を行うことができる。
【0072】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態である高炉用コークスの品質評価方法について説明する。
【0073】
本実施形態の品質評価方法は、ドラム強度指数DI2に基づき、ドラム強度指数DI3を推定し、このドラム強度指数DI3を管理指標としてコークスの品質を評価する方法である。
【0074】
図4は、第2実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。なお、ステップS201~S203は、第1実施形態(
図1)で説明したステップS101~103とそれぞれ同じ処理であるため、詳細な説明を省略する。
【0075】
ステップS204では、ステップS203で測定したドラム強度指数DI2に基づき、ドラム強度指数DI3を推定する。ドラム強度指数DI3は、搬送衝撃エネルギーを加えたコークスにソリューションロス反応を生じさせて、重量減少率を20%としたコークスのドラム強度指数である。一般的な高炉操業においては、コークスの重量減少率が20%程度であるため、本実施形態では、重量減少率が20%であるコークスのドラム強度指数DI3に着目している。
【0076】
後述する実施例(
図14)で示すように、ドラム強度指数DI
2とドラム強度指数DI
3との間には、正の相関関係がある。具体的には、ドラム強度指数DI
2が高いほど、ドラム強度指数DI
3が高くなり、ドラム強度指数DI
2が低いほど、ドラム強度指数DI
3が低くなる。このため、例えば、ドラム強度指数DI
2とドラム強度指数DI
3との相関関係を表す式を予め規定しておけば、ドラム強度指数DI
2に基づき、ドラム強度指数DI
3を算出(推定)することができる。
【0077】
ドラム強度指数DI2とドラム強度指数DI3の相関関係を表す式としては、まず、ドラム強度指数DI2及びドラム強度指数DI3を測定しておき、ドラム強度指数DI2,DI3の関係から求められる回帰式を使用することができる。以下、ドラム強度指数DI3を測定(実測)する方法の一例を説明する。
【0078】
まず、
図5に示す反応炉20を用意する。反応炉20は、ロードセル26を介して吊り下げられる反応容器21と、反応容器21の側面を囲う発熱体22aを有する炉本体22と、反応容器21の下部に接続する反応管23と、反応容器21の上部に接続する反応管24と、反応容器21の内部に挿入され、コークス1の温度を測定するための熱電対25と、により構成される。
【0079】
CO2ガスは、反応管23を介して反応容器21の内部に流通し、反応容器21の内部で発生したガスは、反応管24を介して反応容器21の外部に排出される。発熱体22aは、通電されることで発熱し、反応容器21の内部に装入されるコークス1を加熱する。炉本体22は、炉本体22の温度を測定するための複数の熱電対22bを有しており、熱電対22bによって測定された温度に基づいて発熱体22aの通電を制御することにより、炉本体22の上部、中部、下部の温度を異なる温度に調整することができる。すなわち、炉本体22の内部の温度を、実際の高炉16の内部の温度とすることができる。
【0080】
次に、ステップS202の処理により搬送衝撃エネルギーを加えたコークス1を、反応容器21に装入する。反応容器21の下部には、
図5に示すように、CO
2ガスの流れを整えるアルミナ球27が装入されていてもよい。アルミナ球27が装入される場合、コークス1は、アルミナ球27の層の上方に装入される。
【0081】
次に、発熱体22aに通電し、反応容器21に装入されたコークス1を加熱する。ソリューションロス反応(C+CO2→2CO)は、コークス1の温度が1000℃~1300℃であるときに生じやすくなるため、コークス1は、1000℃~1300℃に加熱しておくことが好ましい。また、コークス1の温度が1300℃以下であれば、ドラム強度指数DI3に対する温度依存性を無視することができる。なお、ソリューションロス反応は、吸熱反応であるため、反応容器21にCO2ガスを流通させたときの温度低下を考慮して、1000℃を超える温度にコークス1を加熱しておくことが好ましい。
【0082】
次に、反応容器21の内部において、CO2ガスの濃度が100%となるように、所定の速度でCO2ガスを、反応管23を介して反応容器21の内部に流通させる。反応容器21にCO2ガスを流通することで、コークス1とCO2ガスとが反応し、COガスが生成される。反応容器21で生成したCOガスなどのガスは、反応管24を介して反応容器21の外部に排出される。なお、反応管24に冷却装置(不図示)を接続してガスを冷却したり、反応管24に除塵器(不図示)を接続して塵を取り除いたりしてもよい。
【0083】
ソリューションロス反応を生じさせている間は、ロードセル26を用いてコークス1の重量変化を随時測定する。なお、ロードセル26を用いて測定するコークス1の重量変化の正確性は、反応管24から排出されるガスの組成とガスの排出量に基づいて算出できるカーボン反応量(CO2ガスと反応したコークス1の炭素量)を使用して随時確認してもよい。
【0084】
次に、コークス1の重量減少率(すなわち、反応容器21の内部に装入したコークス1の重量に対する、ソリューションロス反応によるコークス1の重量減少量の割合)が20%となったときに、CO2ガスの流通及び発熱体22aによる加熱を中止させる。高炉16に装入されたコークスについて、ソリューションロス反応によるコークス反応量は略20%であることを考慮し、上述したように、重量減少率が20%となったときに、CO2ガスの流通及び発熱体22aによる加熱を中止させている。
【0085】
次に、ソリューションロス反応を生じさせたコークスのドラム強度指数DI3を測定する。ドラム強度指数DI3の測定方法においては、ドラム強度指数DI2の測定方法と同じくJIS K2151の規定に基づき、ドラムの回転数を150回転として測定してもよいし、コークスがストックレベル16aから高炉炉下部まで移動するときにコークスが受ける衝撃エネルギーを、離散要素法(DEM)モデル等を利用して見積り、この衝撃エネルギーに相当する回転数(n回転)をドラムの回転数として単独で付与してDIn
15を測定したり、ドラムの回転数として150回転に回転数(n回転)を追加で付与してDIn+150
15を測定したりしてもよい。これらの処理により測定したドラム強度指数DI3と、ステップS203で測定したドラム強度指数DI2とに基づき、ドラム強度指数DI2とドラム強度指数DI3の相関関係を表す式(回帰式)を得ることができる。
【0086】
本実施形態では、ステップS204の処理で推定したドラム強度指数DI3を管理指標として、コークスの品質を評価する。
【0087】
本実施形態の評価方法では、ドラム強度指数DI2に基づき、ドラム強度指数DI3を推定し、このドラム強度指数DI3を管理指標として用いている。このため、コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aまでの搬送過程で生じるコークスの性状変化だけなく、高炉16の内部で生じるソリューションロス反応を考慮した品質評価を行うことができる。従って、本実施形態のコークスの品質評価方法は、第1実施形態のコークスの品質評価方法と比較して、より適切にコークスの品質を評価することができる。
【0088】
(変形例)
本実施形態では、ドラム強度指数DI2に基づいてドラム強度指数DI3を推定しているが、これに限るものではない。具体的には、ドラム強度指数DI2を測定せずに、反応炉20を用いて、搬送衝撃エネルギーを加えたコークスにソリューションロス反応を発生させた後、ドラム強度指数DI3を実測することができる。そして、このドラム強度指数DI3を管理指標として、コークスの品質を評価することができる。
【0089】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態である高炉用コークスの品質評価方法について説明する。
【0090】
本実施形態の品質評価方法は、採取位置で採取したコークスの粒度分布に基づいて、搬送衝撃エネルギーを加えたコークスの粒度分布を推定し、さらに、この粒度分布に基づいて、ドラム強度指数DI2を推定し、このドラム強度指数DI2を管理指標として用いる方法である。
【0091】
図6は、第3実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。なお、ステップS301は、第1実施形態(
図1)のステップS101と同じ処理であるため、詳細な説明を省略する。
【0092】
ステップS302では、ステップS301で採取したコークスの粒度分布(以下、「初期粒度分布」ともいう)を測定する。粒度分布は、上述した篩を用いて測定することができる。
【0093】
ステップS303では、ステップS302で測定した初期粒度分布に基づき、ステップS301で採取したコークスに対して搬送衝撃エネルギーを加えて得られるコークスの粒度分布を推定する。搬送衝撃エネルギーを加えたコークスの粒度分布の推定方法は、特に限定されない。
【0094】
以下、搬送衝撃エネルギーを加えたコークスの粒度分布の推定方法の一例について説明する。なお、以下に説明する推定方法は、第1実施形態で例示したように、JIS K2151に規定されるドラムの内部にコークスを装入し、そのドラムを回転させることでコークスに搬送衝撃エネルギーを加えることを想定した推定方法である。
【0095】
まず、ステップS302で測定したコークスの初期粒度分布に、下記(2)式で表されるRosin-Rammler式を適用して、初期粒度分布を統計的に再現する。初期粒度分布は、篩を用いた測定結果であり、篩いサイズに応じてコークスの粒径区分が規定されてしまう。そこで、粒径区分の粗さを解消して連続的な粒度分布を得るために、Rosin-Rammler式を適用して、初期粒度分布を統計的に再現する。
【0096】
【0097】
上記(2)式において、R(Dp)は、篩上(残留)分布(%)を示し、Dpは、コークスの粒径を示し、aは、定数を示し、nは、均等数(1を超える整数)を示す。
【0098】
次に、搬送衝撃エネルギーをコークスに加えるために必要なドラムの回転数t(下記(5)式~(8)式に示す回転数t)を算出する。回転数tは、第1実施形態で説明した衝撃処理の回数Niに相当する。
【0099】
次に、上記(2)式で求められる初期粒度分布のうち、1mmから最大粒径までの各粒径に対し、下記(3)式~(8)式を適用し、単一粒径の粒子に搬送衝撃エネルギーを加えた後の粒度分布を粒径毎に求める。
【0100】
【0101】
上記(3)式~(8)式において、R(Dp,t)は、搬送衝撃エネルギーが加えられたコークス破砕粉の篩上比率(%)を示し、Dpは、搬送衝撃エネルギーが加えられる前のコークスの粒径(mm)を示し、Dpmaxは、搬送衝撃エネルギーが加えられたコークス破砕粉の最大粒径(mm)を示し、φは、粉化指数を示し、βは、破砕されない粒子の粒度分布指数を示し、γは、破砕された粒子の粒度分布指数を示し、eは、衝撃エネルギー(J/kg)を示し、tは、ドラムの回転数(rev.)を示し、Dpsは、搬送衝撃エネルギーが加えられる前のコークスの粒径(mm)を示し、Vは、コークスがドラムに衝突する速度(以下、「衝突速度」という)(m/s)を示し、[E/M]は、粉化抵抗エネルギー(J/kg)を示し、xは、ドラムを1回転させることでコークスがドラムに衝突する回数(以下、「衝突回数」という)を示し、δは補正係数(-)を示す。
【0102】
上記(4)式に基づいて衝撃エネルギーeを算出するとともに、上記(8)式に基づいて粉化抵抗エネルギー[E/M]を算出することにより、上記(5)式に基づいて粉化指数φを算出できる。そして、粉化指数φと、上記(6)式から算出される粒度分布指数βと、上記(7)式から算出される粒度分布指数γとを上記(3)式に代入することにより、単一粒径Dpの粒子に搬送衝撃エネルギーを加えた後の篩上比率R(Dp,t)を算出できる。
【0103】
粒度分布指数βは、コークスの塊の粒度分布を決定するパラメータであり、粒度分布指数βが大きいほど、コークスが塊として残留しやすいことを意味する。粒度分布指数γは、破砕された粒子の粒度分布を決定するパラメータであり、粒度分布指数γが大きいほど、微粉が発生しやすくなる。各粒度分布指数β,γは、搬送衝撃エネルギーを加える前のコークスの粒径Dps及び回転数tに依存するため、上記(6)式,(7)式によって表される。粉化抵抗エネルギー[E/M]は、単位質量の粉を生成するために必要なエネルギーであり、粉化抵抗エネルギー[E/M]が大きいほど、粉化が抑制される。粉化抵抗エネルギー[E/M]は、搬送衝撃エネルギーを加える前のコークスの粒径Dps及び回転数tに依存するため、上記(8)式によって表される。
【0104】
なお、上記(4)式における衝突回数x及び衝突速度Vは、離散要素法(DEM)によるドラム内のコークス粒子の運動解析により算出することができ、例えば、衝突回数xは、1.5回とすることができ、衝突速度Vは、5.0(m/s)とすることができる。また、コークス破砕粉の最大粒径Dpmaxは、粒径Dpの1/2以上になることはないので、コークス破砕粉の最大粒径Dpmaxは、1/2Dpとすることができる。また、上記(8)式における補正係数δは、ドラム強度指数DIの計算値を実測値に一致させるために用いられる。
【0105】
次に、単一粒径の粒子に搬送衝撃エネルギーを加えた後の粒度分布(上記(3)式から算出された篩上比率R(Dp,t))を、下記(9)式に基づき、上記(2)式によって特定された初期粒度分布で重量按分することで、搬送衝撃エネルギーを加えた後のコークスの粒度分布を求めることができる。
【0106】
【0107】
上記(9)式において、R(Dp,t)は、コークスに搬送衝撃エネルギーを加えた後の篩上比率(%)を示し、R(Dp,t)ijは、単一粒径の粒子に搬送衝撃エネルギーを加えた後の篩上比率(%)を示し、Xは、搬送衝撃エネルギーを加える前のコークスの重量比率(初期重量比率)を示し、添字iは、搬送衝撃エネルギーが加えられる前のコークスの粒径(mm)を示し、添字jは、搬送衝撃エネルギーを加えた後のコークスの粒径(mm)を示し、kは、初期粒度分布の最大粒径を示す。篩上比率R(Dp,t)ijとしては、上記(3)式で算出された値が用いられる。粒径iは、上述したように、初期粒度分布のうち、1mmから最大粒径kまでの値である。また、上述したように、コークス破砕粉の最大粒径Dpmaxを1/2Dpとしたため、粒径jは、初期粒度分布のうち、0.5mmから最大粒径kまでの値である。
【0108】
以上の推定方法により、ステップS303では、搬送衝撃エネルギーを加えて得られるコークスの粒度分布が推定される。ステップS304では、ステップS303で算出したコークスの粒度分布に基づき、さらにJIS K2151に規定する回転強度試験方法において、搬送衝撃エネルギーを加えたコークスのドラム強度指数DI2を推定する。
【0109】
具体的には、上記(9)式で得られたコークスの粒度分布を初期粒度分布と読み替え、ドラム回転数tを150回転として再度上記(3)式~(9)式の計算を繰り返して回転強度試験後の粒度分布を求め、当該回転強度試験後の粒度分布において粒径が15mm以上のコークスの質量百分率を計算することで、ドラム強度指数DI2を推定することができる。
【0110】
より簡便には、上記(3)式~(9)式において、ドラム回転数tを、搬送衝撃エネルギーをコークスに加えるために必要なドラムの回転数tに150(回転強度試験での回転数)を足した回転数にしておくことにより、採取したコークスの初期粒度分布から直接ドラム強度指数DI2を推定することができる。ここで、コークスの粒度分布から推定されるドラム強度指数DI2が実測値と一致するように、上記(8)式に示す補正係数δを予め決めておくことができる。
【0111】
本実施形態では、ステップS304の処理で推定したドラム強度指数DI2を管理指標として、コークスの品質を評価する。
【0112】
本実施形態の評価方法は、採取したコークスの初期粒度分布に基づき、搬送衝撃エネルギーが加えられたコークスの粒度分布を推定し、さらに、推定した粒度分布に基づいてドラム強度指数DI2を推定し、推定したドラム強度指数DI2を管理指標として用いている。このため、コークスを採取した位置から高炉16のストックレベル16aまでの搬送経路で生じるコークスの性状変化を考慮したコークスの品質評価を行うことができる。
【0113】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態である高炉用コークスの品質評価方法について説明する。
【0114】
本実施形態の品質評価方法は、採取したコークスの初期粒度分布を用いて推定したドラム強度指数DI2から、さらに、ドラム強度指数DI3を推定し、このドラム強度指数DI3を管理指標として用いる方法である。
【0115】
図7は、第4実施形態の高炉用コークスの品質評価方法を説明するフローチャートである。なお、ステップS401~S404は、第3実施形態(
図6)で説明したステップS301~304とそれぞれ同じ処理であるため、説明を省略する。
【0116】
ステップS405では、ステップS404で推定したドラム強度指数DI
2に基づき、ドラム強度指数DI
3を推定する。ドラム強度指数DI
3の推定方法は、第2実施形態(
図4)のステップS204と同じ推定方法を用いることができるため、詳細な説明を省略する。
【0117】
本実施形態では、ステップS405の処理で推定したドラム強度指数DI3を管理指標として、ステップS401の処理で採取したコークスの品質を評価する。
【0118】
本実施形態の評価方法では、ドラム強度指数DI2に基づき、ドラム強度指数DI3を推定し、推定したドラム強度指数DI3を管理指標として用いている。このため、コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aまでの搬送経路で生じるコークスの性状変化だけなく、高炉16の内部で生じるソリューションロス反応を考慮した品質評価を行うことができる。従って、本実施形態のコークスの品質評価方法は、第3実施形態のコークスの品質評価方法と比較して、より適切にコークスの品質を評価することができる。
【0119】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態の高炉用コークスの品質評価方法について説明する。
【0120】
上述した第2実施形態及び第4実施形態では、重量減少率が20%であるコークスのドラム強度指数DI3をコークスの品質を評価するための管理指標としているが、高炉の操業条件によっては、コークスの重量減少率が20%からずれることがある。例えば、高炉操業において、水素系ガスの吹込み量を変更するときには、コークスの重量減少率が変化しやすくなる。このため、本実施形態の品質評価方法は、高炉の操業条件に応じたコークスの重量減少率を考慮してドラム強度指数DI3を推定し、このドラム強度指数DI3を管理指標として用いる方法である。
【0121】
図8に示すように、ドラム強度指数DI
3及びコークスの重量減少率の間には負の相関関係(一次関数)L1が成り立ち、コークスの重量減少率が上昇するほど、ドラム強度指数DI
3が低下する。言い換えれば、コークスの重量減少率が低下するほど、ドラム強度指数DI
3が上昇する。この相関関係L1を用いれば、高炉の操業条件に応じてコークスの重量減少率が変化した場合において、変化後の重量減少率に応じたドラム強度指数DI
3を推定することができる。そして、この推定したドラム強度指数DI
3に基づいて、コークスの品質を評価することができる。
【0122】
コークスの種類毎に
図8に示す相関関係L1を予め求めておけば、コークスの重量減少率を推定することにより、この重量減少率に対応するドラム強度指数DI
3を推定することができる。一方、以下に説明する方法によってもドラム強度指数DI
3を推定することができる。
【0123】
図8に示す相関関係L1によれば、重量減少率Rrの所定変化量ΔRrに対するドラム強度指数DI
3の変化量ΔDI
3の比率(ΔDI
3/ΔRr)を予め求めておくことができる。また、基準とする重量減少率(例えば、20%)Rr_refと、この重量減少率Rr_refに対応するドラム強度指数DI
3(以下、「DI
3_ref」という)を予め決めておく。そして、高炉の操業条件に基づいてコークスの重量減少率Rr_estを推定し、重量減少率(推定)Rr_est及び重量減少率(基準)Rr_refの差ΔRr_mを求める。この差ΔRr_mと上述した比率(ΔDI
3/ΔRr)に基づいて、重量減少率(推定)Rr_estに対応するドラム強度指数DI
3を求めることができる。
【0124】
具体的には、比率(ΔDI3/ΔRr)に差ΔRr_mを乗算することにより、ドラム強度指数の変化量ΔDI3_mを特定することができ、この変化量ΔDI3_mをドラム強度指数DI3_refに対して加算又は減算することにより、重量減少率(推定)Rr_estに対応するドラム強度指数DI3を特定することができる。ここで、重量減少率(推定)Rr_estが重量減少率(基準)Rr_refよりも高い場合には、ドラム強度指数DI3_refに対して変化量ΔDI3_mを減算すればよい。一方、重量減少率(推定)Rr_estが重量減少率(基準)Rr_refよりも低い場合には、ドラム強度指数DI3_refに対して変化量ΔDI3_mを加算すればよい。
【0125】
コークスの重量減少率(言い換えれば、コークス反応率)は、公知の手法を用いて推定することができる。例えば、以下に説明する仮定条件を設定し、下記(10)式~(14)式に基づいて重量減少率を推定することができる。
【0126】
高炉の羽口から微粉炭を吹き込むときには、微粉炭の全量が羽口先で燃焼されず、燃焼率に応じて未燃焼の微粉炭が発生するものとする。ここで、羽口先における微粉炭の燃焼率は、実炉で採取した未燃チャーの気孔率から推定した結果を参考にして70%とすることができる。未燃焼の微粉炭については、還元材に対する微粉炭の重量比率に応じた量が浸炭で消費され、残りの未燃焼の微粉炭は、ソリューションロス反応によってコークスよりも優先的に消費されるものとする。高炉内のソリューションロスカーボン量から未燃焼の微粉炭による消費分を差し引いた残りのソリューションロス反応をコークスが担うものとする。微粉炭中の炭素濃度や、コークス中の炭素濃度は一定とする。
【0127】
【0128】
上記(10)式~(14)式において、UPCは、銑鉄の単位重量当たりの未燃焼の微粉炭の量[kg/t]、PCRは微粉炭比[kg/t]、ηPCは羽口先の微粉炭の燃焼率(70[%]とする)である。CBPCは、浸炭で消費される微粉炭量であって、銑鉄の単位重量当たりの微粉炭量[kg/t]、RARは還元材比[kg/t]である。SLCPCは、ソリューションロス反応で消費される微粉炭量[kg/t]、CPCは微粉炭中に占める炭素の質量割合(82[%]とする)である。SLCCKはソリューションロス反応で消費されるコークス量[kg/t]、SLCはソリューションロスカーボン量[kg/t]、CCKはコークス中に占める炭素の質量割合(85[%]とする)である。RDCKはコークスの重量減少率(コークス反応率)[%]、CRはコークス比[kg/t]である。
【0129】
次に、コークスの品質を評価する方法(一例)について、
図9を用いて説明する。
図9は、
図8と同様に、コークスの重量減少率及びドラム強度指数DI
3の関係を示す。例えば、
図9に示す相関関係(一次関数)L21に基づいて、コークスの重量減少率が20%である高炉操業においては、ドラム強度指数DI
3の基準値を70%に設定したとする。
【0130】
操業条件の変更によって、例えば、コークスの重量減少率が20%から15%に低下したときには、
図9に示す相関関係(一次関数)L21において、15%の重量減少率に対応するドラム強度指数DI
3が基準値(70%)よりも高くなってしまう。すなわち、重量減少率が15%である高炉操業において、重量減少率が20%である高炉操業で用いられているコークスを使用すると、コークスの品質としてはオーバースペックとなってしまう。そこで、
図9に示す相関関係(一次関数)L22を示すコークスに変更すれば、言い換えれば、重量減少率が20%である高炉操業で用いられているコークスよりも強度が低いコークスに変更すれば、重量減少率が15%である高炉操業において、ドラム強度指数DI
3を基準値(70%)とすることができる。相関関係L22では、15%の重量減少率に対応するドラム強度指数DI
3は70%となる。
【0131】
一方、操業条件の変更によって、例えば、コークスの重量減少率が20%から25%に上昇したときには、
図9に示す相関関係(一次関数)L21において、25%の重量減少率に対応するドラム強度指数DI
3が基準値(70%)よりも低くなってしまう。すなわち、重量減少率が25%である高炉操業において、重量減少率が20%である高炉操業で用いられているコークスを使用すると、コークスの品質としてはロースペックとなってしまう。そこで、
図9に示す相関関係(一次関数)L23を示すコークスに変更すれば、言い換えれば、重量減少率が20%である高炉操業で用いられているコークスよりも強度が高いコークスに変更すれば、重量減少率が25%である高炉操業において、ドラム強度指数DI
3を基準値(70%)とすることができる。相関関係L23では、25%の重量減少率に対応するドラム強度指数DI
3は70%となる。
【0132】
本実施形態のように、コークスの重量減少率に応じたドラム強度指数DI3を推定することにより、推定したドラム強度指数DI3が基準となるドラム強度指数DI3よりも高いか又は低いかを把握することができる。そして、推定したドラム強度指数DI3と、基準となるドラム強度指数DI3との間の高低関係を考慮して、高炉操業で用いられるコークスの種類を決めることができる。これにより、高炉の操業条件に適した品質のコークスを用いることができる。
【0133】
以上の第1~第5実施形態においては、コークスの採取位置から高炉16のストックレベル16aまでの一連の搬送経路でコークスが受けると考えられる全ての衝撃エネルギーを考慮に入れたが、上述した搬送経路の一部でコークスが受ける衝撃エネルギーのみを考慮するようにしてもよい。この場合であっても、採取したコークスのドラム強度指数DI1を管理指標として用いることと比べれば、コークスの品質を評価する上で好ましい。例えば、コークスの採取位置から炉頂ホッパ15までの搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーを推定し、当該衝撃エネルギーを、採取したコークスに加えて各ドラム強度指数DI2,DI3を測定又は推定してもよい。
【実施例0134】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0135】
(実施例1)
実施例1では、上述した第1実施形態において、3軸合成加速度情報として、3軸合成加速度aaveが閾値athを超えた回数Nを用いた。閾値athは、1.5[G]に設定した。
【0136】
コークスの採取位置に無線式の加速度ロガー(Acc-WL-RF,有限会社シスコム)を置いて、採取位置から搬送経路の所定位置まで加速度ロガーを搬送したときの3軸方向の加速度を検出した。加速度ロガーのサンプリング周期は、0.1[sec]である。そして、3軸方向の加速度の検出結果に基づいて、3軸合成加速度aave_aを算出した。この算出結果に基づいて、3軸合成加速度aave_aが閾値ath_a(1.5[G])を超えた回数Naをカウントしたところ、70回であった。
【0137】
一方、上記加速度ロガー及び10[kg]のコークスをドラムに投入し、ドラムを30回転させたときの3軸方向の加速度を検出した。ドラムとしては、JIS K2151に規定されているドラムを用いた。また、ドラムを30回転させる処理(以下、「ドラム回転処理」という)を3回行った。そして、3軸方向の加速度の検出結果に基づいて、3軸合成加速度aave_bを算出した。この算出結果に基づいて、3軸合成加速度aave_bが閾値ath_b(1.5[G])を超えた回数Nbをカウントした。
【0138】
図10には、3回のドラム回転処理において、閾値a
th_bと、3軸合成加速度a
ave_bが閾値a
th_bを超えた回数N
bとの関係を示す。
図10に示すように、閾値a
th_bが大きいほど、3軸合成加速度a
ave_bが閾値a
th_bを超えた回数N
bは少なくなる。本実施例では、閾値a
th_bが1.5[G]であるとき、各回のドラム回転処理において、3軸合成加速度a
ave_bが閾値a
th_bを超えた回数N
bをカウントし、これらの回数N
bの平均値を算出した。この平均値は150回であった。
【0139】
搬送衝撃エネルギーを、ドラムを用いた衝撃処理の回数Niに換算したところ、回数Niは14回(=30×70/150)であった。
【0140】
(実施例2)
実施例2では、上述した第1実施形態において、3軸合成加速度情報として、今回サンプリング時の3軸合成加速度aaveと前回サンプリング時の3軸合成加速度aaveとの差(絶対値)Δaaveを累積した値(累積値)ΣΔaaveを用いた。
【0141】
実施例1で使用した加速度ロガーをコークスの採取位置に置いて、採取位置からストックレベル16aまで加速度ロガーを搬送したときの3軸方向の加速度を検出した。そして、3軸方向の加速度の検出結果に基づいて、3軸合成加速度aave_aを算出した。この算出結果に基づいて、所定のサンプリング間隔の前後における3軸合成加速度aave_aの差(絶対値)Δaave_aを算出して累積したところ、累積値ΣΔaave_aは600[G]であった。
【0142】
図11には、加速度ロガーがコークスの採取位置から搬送経路の所定位置に到達するまでの間における累積値ΣΔa
ave_aの経時変化(実線)を示す。
図11において、縦軸は累積値であり、横軸は時間である。
図11に示す時間t1は、加速度ロガーがコークスの採取位置から搬送経路の所定位置に到達するまでの時間を示す。
【0143】
一方、上記加速度ロガーをドラムに投入し、ドラムを30回転させたときの3軸方向の加速度を検出した。そして、3軸方向の加速度の検出結果に基づいて、3軸合成加速度aave_bを算出した。この算出結果に基づいて、所定のサンプリング間隔の前後における3軸合成加速度aave_bの差(絶対値)Δaave_bを算出した。
【0144】
図11には、ドラムを30回転させたときの累積値ΣΔa
ave_bの経時変化を示す。
図11に示す時間t2は、ドラムを30回転させる間の時間である。
図11に示すように累積値ΣΔa
ave_bを算出するとき、ドラム回転処理を3回行い、各回のドラム回転処理において累積値(点線、一点鎖線及び二点差線)ΣΔa
ave_bを算出した。これらの累積値の平均値は1300[G]であった。
【0145】
搬送衝撃エネルギーを、ドラムを用いた衝撃処理の回数Niに換算したところ、回数Niは約14回(=30×600/1300)であった。
【0146】
(実施例1,2の有効性の試験)
上述した実施例1,2の有効性を確認する試験を行った。この試験方法について以下に説明する。
【0147】
まず、CDQ12から高炉16にコークスを搬送する経路において、CDQの出側と、ベルトコンベアから炉頂ホッパ15にコークスを装入する位置(以下、「装入BC」という)と、高炉16の内部とにおいて、コークスをサンプリングし、これらのコークスの粒度分布を測定した。
図12には、サンプリング位置毎のコークスの粒度分布(○,△,□のプロット)を示す。
【0148】
一方、CDQ12の出側からサンプリングされたコークスの粒度分布と同一となるように粒度が調整されたコークスを用意した。このコークスの粒度分布を
図12の実線で示す。このコークスをドラムに投入して、所定数だけドラムを回転させた後、コークスの粒度分布を測定した。このコークスの粒度分布を
図12の点線で示す。ここで、所定数としては、CDQ12の出側から装入BCまでの間でコークスが受ける衝撃エネルギーに相当する衝撃処理の回数N
iと、CDQ12の出側から高炉16の内部までの間でコークスが受ける衝撃エネルギーに相当する衝撃処理の回数N
iとした。これらの回数は、実施例1,2に基づいて設定したものであり、CDQ12の出側から装入BCまでの間でコークスが受ける衝撃エネルギーに相当する衝撃処理の回数N
iは45回、CDQ12の出側から高炉16の内部までの間でコークスが受ける衝撃エネルギーに相当する衝撃処理の回数N
iは80回転であった。
【0149】
図12から分かるように、ドラムを用いた衝撃処理を行ったときのコークスの粒度分布は、コークスの搬送経路で採取されたコークスの粒度分布と一致していた。したがって、本実施例で説明した回数N
iだけドラムを回転させれば、搬送経路でコークスが受ける衝撃エネルギーと同等の衝撃エネルギーをコークスに加えることができる。
【0150】
次に、CDQの出側と、装入BCと、高炉16の内部とでサンプリングした3種類のコークスと、
図12で説明したようにドラムを用いた衝撃処理を行ったときのコークスとについて、ドラム強度指数DIを測定した。この測定結果を
図13に示す。
図13において、棒グラフは、サンプリングしたコークスのドラム強度指数DIを示す。また、装入BC及び高炉内部の○は、衝撃処理を行った後のコークスのドラム強度指数DIを示す。
【0151】
図13から分かるように、装入BCからサンプリングされたコークスのドラム強度指数DIは、粒度が調整されたコークスに対して、ドラムを用いた衝撃処理(所定の回転数)を加えた後のコークスのドラム強度指数DIとほぼ一致した。さらに、高炉16の内部からサンプリングされたコークスのドラム強度指数DI(すなわち、ドラム強度指数DI
2)は、粒度が調整されたコークスに対して、ドラムを用いた衝撃処理(所定の回転数)を加えた後のコークスのドラム強度指数DI(すなわち、ドラム強度指数DI
2)とほぼ一致した。
【0152】
このように、ドラムを用いた衝撃処理を所定回数だけ行えば、コークスのサンプリング位置に応じたコークスのドラム強度指数DIを把握することができる。
【0153】
次に、3種類のコークスA~Cについて、ドラム強度指数DI2とドラム強度指数DI3との関係を調べた。ここで、上述した実施例1,2で得られた搬送衝撃エネルギーを加えたコークスA~Cについて、JIS K2151の規定に準じてドラム強度指数DI2を測定した。
【0154】
一方、ドラム強度指数DI
3を測定するために、
図5に示す反応炉20を用意した。φ300mm×高さ1600mmの反応容器21の内部に、アルミナ球20.0kgを装入した。また、アルミナ球の層の上方に、衝撃エネルギーを加えたコークス15.0kgを反応容器21の内部にそれぞれ装入した。発熱体22aに通電し、反応容器21に装入されたコークスを1050℃に加熱した。次に、反応容器21の内部がCO
2ガス濃度100%となるように、200NL/min(ガス線速度:0.05m/s)の速度でCO
2ガスを、反応管23を介して反応容器21の内部に流通した。CO
2ガス流通後、30分でコークスの温度が1000℃まで降下し、その後1000℃で安定した。CO
2ガスの流通後は、ロードセル26を用いてコークスの重量変化を随時測定し、コークスの重量減少率が20%となったときに、CO
2ガスの流通及び発熱体22aによる加熱を中止した。コークスを冷却した後、ドラム強度指数DI
3を測定した。
【0155】
ドラム強度指数DI
2及びドラム強度指数DI
3の測定結果を
図14に示す。
図14に示すように、ドラム強度指数DI
2が高いほど、ドラム強度指数DI
3は高くなり、ドラム強度指数DI
2とドラム強度指数DI
3とが正の相関関係(一次関数)L3を有していることが分かる。従って、
図14に示す相関関係L3を用いれば、ドラム強度指数DI
2からドラム強度指数DI
3を推定できることが分かった。
【0156】
次に、上述した反応炉20を用いたドラム強度指数DI
3の測定において、コークスBの重量減少率を変更しながら、コークスBのドラム強度指数DI
3を測定した。ここで、反応容器21に装入したコークスBにCO
2ガスを供給し、コークスB及びCO
2ガスの反応時間を調整することにより、コークスBの重量減少率を変更した。なお、反応容器21に装入したコークスBに供給するガスとして、CO
2ガスに加えてH
2Oガスを用い、これらのガスの混合比率を変更することにより、コークスBの重量減少率を変更することもできる。ここで、水素系ガスを高炉に吹き込む操業を行うことを想定してH
2Oガスを用いることができる。この測定結果を
図15に示す。
図15において、丸印は実測値であり、直線L4は近似直線である。
【0157】
図15から分かるように、ドラム強度指数DI
3及びコークスの重量減少率の間には、負の相関関係(直線L4で規定される一次関数)が成り立つ。すなわち、コークスの重量減少率が上昇するほど、ドラム強度指数DI
3が低下し、コークスの重量減少率が低下するほど、ドラム強度指数DI
3が上昇した。このように、コークスの重量減少率に応じてドラム強度指数DI
3が変化するため、上述した第5実施形態で説明したように、コークスの重量減少率を考慮してドラム強度指数DI
3を推定することが好ましいことが分かった。
【0158】
次に、高炉に水素系ガスを吹き込むときにおいて、コークスの重量減少率への影響を確認した。下記表1に示す高炉操業諸元において、公知の高炉数学モデル(例えば、Kouji Takatani, Takanobu Inada, Yutaka Ujisawa、「Three-dimensional Dynamic Simulator for Blast Furnace」、ISIJ International、一般社団法人日本鉄鋼協会、1999年、Vol.39、No.1、p15-22)を用いてソリューションロスカーボン量(SLC)とコークスの重量減少率を推定したところ、下記表2に示す結果が得られた。なお、下記表1,2において、ベースは、水素系ガスを吹き込まないときの条件を示す。
【0159】
【0160】
【0161】
上記表2から分かるように、水素系ガスの吹込み量を変更することにより、ソリューションロスカーボン量(SLC)やコークスの重量減少率が変化した。具体的には、水素系ガスの吹込み量が増加するほど、ソリューションロスカーボン量が減少するとともに、コークスの重量減少率が低下した。言い換えれば、水素系ガスの吹込み量が減少するほど、ソリューションロスカーボン量が増加するとともに、コークスの重量減少率が上昇した。
【0162】
このため、高炉操業において、水素系ガスの吹込み量を変更するときには、コークスの重量減少率が変化しやすくなるため、上述した第5実施形態で説明したように、コークスの重量減少率を考慮してドラム強度指数DI3を推定することが好ましいことが分かった。
1:コークス,10:搬送経路,11:コークス炉,12:コークス乾式消火設備(CDQ),13:原料槽,14:中継ホッパ,15:炉頂ホッパ,16:高炉,16a:ストックレベル,P1・P2:採取位置,20:反応炉,21:反応容器,22:炉本体,22a:発熱体,22b:熱電対,23・24:反応管,25:熱電対,26:ロードセル,27:アルミナ球