(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125587
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】非接触給電システム、非接触送電装置、非接触受電装置およびそれらの方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/80 20160101AFI20240911BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240911BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20240911BHJP
B60L 53/126 20190101ALI20240911BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20240911BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/12
H02J50/40
B60L53/126
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033500
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 将也
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 侑生
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
【テーマコード(参考)】
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC02
5H105CC19
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC04
5H125AC12
5H125AC25
5H125BE02
5H125DD03
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】非接触給電における安全性を高める。
【解決手段】受電装置30が、送電を求める送電要求信号を出力し、この送電要求信号を受け取った送電装置50は、受電装置に対する磁界結合を用いた送電を、予め定めた送電期間内に行なう。この送電期間の終了後、送電装置は、送電期間の送電量よりを少ない送電量の送電状態に切り換える。こうした送電状態は、送電を遮断した状態でも良く、送電期間中より送電量を低減して送電が行なわれる状態でもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置(50,50B)から受電装置(30,30A,30B)に、磁界結合により給電を行なう非接触給電システム(100)であって、
前記受電装置は、送電を求める送電要求信号を出力し、
前記送電装置は、前記送電要求信号を受け取った場合、前記受電装置に対する前記磁界結合を用いた送電を、予め定めた送電期間(Tt)行なった後、送電量が前記送電期間の送電量よりを少ない待機状態に切り換える、
非接触給電システム。
【請求項2】
前記送電装置は、前記待機状態においては、前記磁界結合を用いた送電を行なわない、請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項3】
前記受電装置は、前記送電要求信号を、前記磁界結合を用いて前記送電装置に出力する、請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項4】
前記送電装置は、
送電コイル(51)とおよび第1コンデンサ(Cs,Cr)とから構成される1次側共振回路と、
前記1次側共振回路に所定の周波数の交流電圧を印加して電力を供給する交流電源装置(60)と、
を備え、
前記受電装置は、
受電コイル(31)および第2コンデンサ(CC1)とから構成させる2次側共振回路と、
前記2次側共振回路に誘起された交流を直流に整流する整流回路(35)と、
を備え、
前記送電コイルと前記受電コイルとが前記磁界結合を形成する、
請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項5】
前記受電装置は、前記送電要求信号を、前記磁界結合した前記受電コイルと前記送電コイルとを介して出力する信号出力部(70)を備え、
前記送電装置は、前記送電コイルにおける電気量の変化により前記送電要求信号を検出する送電要求検出部(85)を備える、
請求項4記載の非接触給電システム。
【請求項6】
前記送電装置は、前記送電コイルと前記交流電源装置との間に、前記送電量を切り換える切換部(80)を備える、請求項4に記載の非接触給電装置。
【請求項7】
前記切換部は、前記第1コンデンサの容量を、第1の値から第2の値に切り換える切換回路(53)を備え、前記第1コンデンサの容量が前記第2の値である場合の前記1次側共振回路の共振周波数は、前記第1コンデンサの容量が前記第1の値である場合よりも、前記交流電圧の前記所定の周波数から遠い、請求項6に記載の非接触給電システム。
【請求項8】
前記送電装置は、
前記送電期間における前記送電量を反映したパラメータを検出するパラメータ検出部(55)を備え、
前記パラメータに応じて、前記送電期間を設定する、
を備える、請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項9】
前記受電装置は、前記送電要求信号を、予め定めた条件が満たされている場合には、予め定めたインターバルで、繰り返し出力する、請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項10】
前記受電装置は、前記受電装置に異常がある場合には、前記予め定めた条件は満たされていないと判断する、請求項9に記載の非接触給電システム。
【請求項11】
前記受電装置および前記送電装置の少なくとも一方は、前記送電期間の終了後であって、前記受電装置から次の送電要求信号が出力されるまでの間に、装置の安全性に関わるチェックを実施する、請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項12】
前記受電装置は前記送電装置に対して相対的に移動する移動体(20)に搭載されており、
前記送電期間の長さは、前記移動体が移動しながら前記送電装置から送電を受ける平均的な時間に応じて、予め定められている、請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項13】
受電装置に対して、磁界結合により送電を行なう非接触送電装置であって、
前記受電装置からの送電要求信号を受け取った場合、予め定めた送電期間において、前記受電装置に対する前記磁界結合を用いた第1の送電を行ない、
前記送電期間の後、前記第1の送電よりも送電量の少ない送電状態に切り換える、
非接触送電装置。
【請求項14】
磁界結合により送電装置から送電される電力を受電する非接触受電装置であって、
前記送電装置に対して、送電を求める送電要求信号を出力し、
前記送電要求信号を受け取った前記送電装置が、予め定めた送電期間において、前記受電装置に対する前記磁界結合を用いた第1の送電を行ない、前記送電期間の後、前記第1の送電よりも送電量よりも少ない送電状態に切り換えた後で、所定の条件が満たされている場合には、再度、前記送電要求信号を出力する、
非接触受電装置。
【請求項15】
送電装置から受電装置に、磁界結合により給電を行なう非接触給電方法であって、
前記受電装置が、送電を求める送電要求信号を出力し、
前記送電装置が、前記送電要求信号を受け取った場合、前記受電装置に対する前記磁界結合を用いた送電を、予め定めた送電期間行ない、
前記送電期間の終了後、前記送電装置は、前記送電期間の送電量よりを少ない送電量の送電状態に切り換える、
非接触給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触給電に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触給電システムでは、システム構成を簡略化するため、送電装置と受電装置とが、給電のための電磁気的な結合を介して信号のやり取りを行なう構成を採用することがある。例えば、下記特許文献1では、受電装置側が送電装置の給電動作を停止したい場合、受電装置の受電回路のインピーダンスを制御することで、送電装置側の直流電源から供給される電流量などを変化させ、この変化から送電停止信号を復調して、送電装置のインバータの動作を停止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2020/183819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした受電回路のインピーダンスを制御する手法は、送電装置の送電コイルに対する受電装置の受電コイルの位置や、給電のための共振回路を構成するコンデンサやコイル、またフィルタ回路などの特性の影響を受けやすいため、送電停止信号が復調されない場合があり得た。受電装置から送電装置側への給電停止要求が正常に伝えられない場合、送電装置は給電動作を継続するから、受電装置に何らか異常が生じているような場合、送電装置からの給電が、不具合を拡大する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の第1の形態は、送電装置(50,50B)から受電装置(30,30A,30B)に、磁界結合により給電を行なう非接触給電システム(100)としての形態である。この非接触給電システムでは、前記受電装置は、送電を求める送電要求信号を出力し、前記送電装置は、前記送電要求信号を受け取った場合、前記受電装置に対する前記磁界結合を用いた送電を、予め定めた送電期間(Tt)行なった後、送電量が前記送電期間の送電量よりを少ない待機状態に切り換える。この非接触給電システムでは、非所望の送電が継続されることを回避または抑制できる。
【0007】
(2)本開示の第2の形態は、受電装置に対して、磁界結合により送電を行なう送電装置としての形態である。この送電装置は、前記受電装置からの送電要求信号を受け取った場合、予め定めた送電期間において、前記受電装置に対する前記磁界結合を用いた第1の送電を行ない、前記送電期間の後、前記第1の送電よりも送電量の少ない送電状態に切り換える。この送電装置は、送電要求信号を受けたとき、所定期間、第1送電を行なった後、第1の送電より送電量の小さい待機状態に切り換えるから、非所望の送電が継続されることがない。
【0008】
(3)本開示の第3の形態は、磁界結合により送電装置から送電される電力を受電する受電装置としての形態である。この受電装置は、前記送電装置に対して、送電を求める送電要求信号を出力し、前記送電要求信号を受け取った前記送電装置が、予め定めた送電期間において、前記受電装置に対する前記磁界結合を用いた第1の送電を行ない、前記送電期間の後、前記第1の送電よりも送電量よりも少ない送電状態に切り換えた後で、所定の条件が満たされている場合には、再度、前記送電要求信号を出力する。従って、非所望の受電を継続することを回避または抑制でき、しかも所定の条件が満たされていれば、送電要求信号を再度出力するから、中断すべき要因がなければ、受電を継続できる。
【0009】
(4)本開示の第4の形態は、送電装置から受電装置に、磁界結合により給電を行なう非接触給電方法としての形態である。この非接触給電方法では、前記受電装置が、送電を求める送電要求信号を出力し、前記送電装置が、前記送電要求信号を受け取った場合、前記受電装置に対する前記磁界結合を用いた送電を、予め定めた送電期間行ない、前記送電期間の終了後、前記送電装置は、前記送電期間の送電量よりを少ない送電量の送電状態に切り換える。この非接触給電方法では、非所望の送電が継続されることを回避または抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の非接触給電システムを示す概略構成図。
【
図2】非接触給電システムを構成する送電装置と受電装置の概略構成図。
【
図3】送電装置の送電回路における待機電流と共振電流の一例を示す説明図。
【
図4】受電コイルと送電コイルとの位置関係と送電コイルに流れる電流との関係を示す説明図。
【
図5】受電側と送電側の処理の概要を対比して示すフローチャート。
【
図6】切換部を含む送電装置の送電回路の構成例を示す説明図。
【
図8】受電装置と送電装置との動作を示すタイミングチャート。
【
図9】第2実施形態における受電装置側の構成例を示す説明図。
【
図10】第2実施形態における受電装置側の処理の一例を示すフローチャート。
【
図11】第2実施形態における送電装置側の処理の一例を示すフローチャート。
【
図12】第3実施形態の非接触給電システムを構成する送電装置と受電装置の概略構成図。
【
図13】第1変形例としての送電側処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【
図14】第2変形例としての送電側処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【
図15】第3変形例としての送電側処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施形態:
(A1)非接触給電システムの全体構成:
第1実施形態の送電装置50と受電装置とを備えた非接触給電システム100の概略構成を、
図1に示す。図示するように、この非接触給電システム100は、路面SFの下、土中に埋設された複数の送電装置50と、路面SF上を自走する移動体20に搭載された受電装置30とから構成される。移動体20は、負荷装置45に含まれる図示しないモータにより駆動される駆動輪21、駆動輪21と共に移動体20を路面SF上に移動可能に支持する従動輪22、移動体20の床下に配置された受電コイル31等を備える。受電コイル31は、路面SF側に用意された送電装置50の送電コイル51と磁界結合して交流電力の供給を受け、負荷装置45に電力を供給する。なお、送電装置50やこれを含む非接触給電システム100は、移動体20の受電装置30に電力を供給するものに限られず、非接触で送電を行なう装置および給電を行なうシステムであれば、受電装置は、携帯端末など、移動体でないものに送電や給電を行なう装置やシステムであって差し支えない。移動体20は、屋外の道路を走行するものに限られず、工場や病院などの屋内で使用される搬送車などを含む。移動体20の車輪の数は幾つでもよく、車輪以外の手法、例えば磁気浮上などで移動するものでもよい。
【0012】
送電装置50は、路面SFの下に埋設する構成以外に、路面上に設置したり、壁面や天井への設置も可能である。こうした場合には、送電装置50の設置箇所に対応して、受電装置30を移動体20内の所定の位置に配置すればよい。例えば送電装置50が壁面に敷設されていれば、受電装置30は移動体20の側面に配置すればよい。また、送電装置50の敷設位置に合わせて、受電装置30を移動体20内部で移動したり、複数の受電装置30を予め用意し、これを切り換えて使用する様にしてもよい。
【0013】
移動体20の受電装置30に電力を供給する複数の送電装置50は、本実施形態では、それぞれ同一の構成を備え、移動体20の移動経路に沿って配列されている。もとより送電装置50は、移動体20の移動経路に限らず、2次元的に路面SFに配列されていても差し支えない。各送電装置50は、共通の主電力ラインRFPに接続されている。主電力ラインRFPには、主電源装置60から、周波数f1の高周波(例えば85KHz)の交流電力が供給される。本実施形態では、各送電装置50は同一の構成を有するものとしたが、例えば大きさが異なる送電コイル51を交互に配置するなど、送電が可能であれば、構成は同一でなくても差し支えない。もとより、送電装置50は一つであっても差し支えない。
【0014】
主電源装置60は、主電源65から低周波(例えば60Hz)の交流の供給を受けて、これを高周波の交流に変換する。主電源装置60は、主電源65から電力を受け取る側から、交流出力用のノイズフィルタ、PFC回路、インバータ、フィルタを備えた構成などが知られている。主電源65から供給された電力は、インバータにより上記の周波数の交流に変換され、主電力ラインRFPに出力される。
【0015】
送電装置50と受電装置30との概略構成を、
図2に示した。図は、複数の送電装置50のうちの一つが、移動体20の受電装置30に電力を送電している状態を示す。このとき、送電装置50の送電コイル51が受電装置30の受電コイル31と磁界結合しており、受電コイル31には誘導電流(交流)が流れる。受電装置30は、受電コイル31を用いた受電を行なう受電回路35と、受電した電力を用いて動作する負荷装置45と、CPUやメモリからなる受電制御部40と、受電制御部40の指示を受けて送電要求を出力する送電要求出力部70とを備える。受電コイル31が磁界結合により送電コイル51から電力を受電し、負荷装置45に直流電圧を印加するために、受電回路35には、受電回路と整流回路とが設けられているが、これらの回路構成は、後で詳しく説明する。なお、受電回路は、受電コイル31に接続された回路を意味するが、受電回路に電流センサなど種々の回路素子が接続される場合があり、広義の「受電回路」は、受電コイル31を用いて受電する電流が流れる閉回路を意味する。負荷装置45は、本実施例では、移動体20の移動用モータなど、移動体で使用される主たる電力を使用するものが含まれるが、一時的に電力を蓄えるバッテリも、負荷装置45に含まれ場合がある。
【0016】
この受電装置30に送電する送電装置50は、送電コイル51の他、送電電流の制御を行なう送電制御部80を備える。送電制御部80は、CPUやメモリを備え、送電側の処理に必要なプログラムを実行し、送電の開始を求める送電要求の検出を含む送電装置50全体の制御を行なう。送電制御部80は、受電装置30からの送電要求を受け取った場合、受電装置30に対する磁界結合を用いた送電を、予め定めた送電期間行なった後、送電量がこの送電期間の送電量よりを少ない待機状態に切り換える。
【0017】
受電装置30から送電要求の出力および送電装置50による送電要求の検出は、種々の手法が採用可能である。例えば、受電装置30の送電要求出力部70をプルートゥース(登録商標)などの近距離無線通信を行なう送信機として構成し、送電制御部80に送電要求出力部70からの無線通信を検出する受信機の機能を持たせて送電要求の授受を行なうことは容易である。あるいはRFIDなどを用いた近距離通信を利用してもよいし、WiFiなどの無線通信を利用してもよい。通信は光通信などによってもよい。こうした通信は非接触な手法に限らず、送電装置50側が用意する接触端子に受電装置30側のコンタクタが接触して行なう有線通信によってもよい。また、送電要求は、受電コイル31と送電コイル51との磁界結合を利用して、送信するものとしてもよい。この場合、磁界結合の強さを、受電コイル31以外のコイルを用いて変更し、その結果、送電コイル51に流れる電流の大きさを変更して送電要求としてもよいし、送電に用いられる交流電圧の周波数f1とは異なる周波数f2の交流電圧を受電コイル31に印加し、この周波数f2を変調して、送電要求として扱うものとしてもよい。
【0018】
受電装置30からの送電要求を受け取った場合、送電制御部80は、受電装置30に対する磁界結合を用いた送電を、予め定めた送電期間行なった後、送電量がこの送電期間の送電量よりを少ない待機状態に切り換える。かかる動作が行なえるものであれば、送電制御部80は、どのような回路構成でも差し支えない。例えば、送電コイル51を通る閉回路のインピーダンスの切換を行なう切換部を設け、受電装置30からの送電要求を受け取ったら、閉回路のインピーダンスを小さくして、送電を行ない、予め定めた送電期間が経過したのち、インピーダンスを送電期間中より大きい待機状態に切り換えるようにすればよい。インピーダンスの切換は、閉回路に挿入された抵抗器を用いて行なってもよいし、閉回路に流れる電流が交流であることに鑑み、閉回路に挿入されたコンデンサの容量(キャパシタンス)を切り換えてもよい。もとより、送電コイル51のインダクタンスを切り換えてもよい。これらの切換は、容量の異なるコンデンサの接続を切り換えたり、送電コイル51に設けられた巻線数の異なるタップへの接続を切り換えたりすることで容易に実現できる。もとより、可変容量コンデンサなど、キャパシタンスやインダクタンスを変更できる部品を用いてもよい。
【0019】
本実施形態では、送電コイル51と送電制御部80とは1次側共振回路を構成している。送電を行なう際には、送電コイル51を備える閉回路のインピーダンスを切り換えて、回路の共振周波数を、主電力ラインRFPの周波数f1と一致または近接させた共振状態とし、送電を行なわない状態、つまり待機状態では、回路の共振周波数を周波数f1から逸脱させる。この結果、共振状態において送電コイル51に流れる共振電流の電流Irは、待機状態において送電コイル51を流れる待機電流Isを大きく上回る。この様子を、
図3に例示した。図では、送電回路のインピーダンスが、回路の共振周波数をf1(ここでは85kHz)とする値となっている場合の周波数と送電コイル51に流れる電流との関係をIrとして示し、回路の共振周波数がf1とは異なる値(ここでは周波数f1より高い周波数)となっている場合の周波数と送電コイル51に流れる電流との関係をIsとして示した。送電回路には、主電力ラインRFPの85kHzの電圧が印加されているので、待機状態では送電コイル51に流れる電流Isは、共振状態で送電コイル51に流れる電流Irより大幅に少ない。ここで、送電回路は、送電コイル51と送電制御部80とからなる回路を意味するが、送電回路に電流センサなど種々の回路素子が接続される場合があり、広義の「送電回路」とは、送電コイル51を用いて送電する電流が流れる閉回路を意味する。
【0020】
こうしたインピーダンスの切換を用いて、待機電流が小さく、送電時には大きな電力を送電する原理について、
図4を用いて説明する。図は、送電コイル51に対する受電コイル31の位置により、送電コイル51を流れる電流がどのように変換するかを例示する。なお、この例では、送電回路は、LC直列共振回路を構成するものとしている。並列共振回路を用いることもでき、その場合の特性は図示と逆になる。LC直列共振回路を用いる場合、送電回路のインピーダンスが高くて送電コイル51に待機電流Isが流れている場合であっても、送電回路のインピーダンスが低くて送電コイル51に待機電流Isより大きな共振電流Irが流れている場合であっても、受電コイル31の中心が送電コイル51の中心に重なっている場合が電流値は最も大きくなり、受電コイル31が送電コイル51の中心から外れている場合に小さくなる。この様子を、図示上段(A)に示した。
【0021】
この特性を利用し、従来、デフォルトでは送電回路のインピーダンスが高い待機状態とし、待機状態で流れる待機電流Isが予め定めたオン判断閾値Th1を超えた時に、送電回路のインピーダンスを低くし、送電回路を共振状態とする。この状態では、両コイル間には共振電流Irが流れ、大きな電力の送電が可能となる。また、受電コイル31が送電コイル51の中心から外れて行くと、共振電流Irを予め定めたオフ判断閾値Th2と比較し、これを下回ったときに、送電回路のインピーダンスを高くして、待機状態に切り換える。こうすることで、受電コイル31が存在しない待機状態での消費電力を低く抑えることが可能となる。この様子を、
図4の下段(B)に示した。
【0022】
(A2)非接触給電処理:
上述したインピーダンスの切換を前提として、送電装置50と受電装置30とは、
図5に示す給電処理を実行する。
図5では、
図2の構成に対応付けて、左側に送電装置50側の処理を、右側に受電装置30側の処理を示している。図示する処理は、送電装置50や受電装置30が起動すると、送電制御部80や受電制御部40により繰り返し実行される。
【0023】
送電装置50が起動すると、送電制御部80は、受電回路を待機状態に設定する(ステップS110)。具体的には、上述したように、回路のインピーダンスを高くし、回路に待機電流Isが流れる状態にする。送電制御部80は、この状態で、受電装置30から送電要求が出力されたかを判断し(ステップS130)、送電の要求があるまで、ステップS110、S130の処理を繰り返す。もとより、送電要求がなければ、一旦本ルーチンを終了し、所定のインターバルで再度この処理をステップS110から実行するようにしてもよい。
【0024】
送電装置50に対する送電要求の指示は、受電装置30側が出力する。受電装置30が起動すると、受電制御部40は、図示する受電側処理を繰り返し実行する。受電側処理が開始されると、受電制御部40は、まず受電の必要があるか否かの判断を行なう(ステップS210)。受電の必要の有無は、負荷からの要求の有無に従って判断される。負荷からの要求の有無は、バッテリが設けられており、駆動モータなどの負荷装置45への給電がバッテリを電源として行なわれる場合は、バッテリのSOCが所定の閾値を下回っているか否かにより判断できる。閾値を下回っている場合には、受電要と判断する。もとより、バッテリの有無を問わず、負荷装置45が電力を要求しているか否かにより判断してもよい。受電要でない場合(ステップS210:「NO」)には、この処理を繰り返してもよいし、そのまま本ルーチンを一旦終了し、所定のインターバルで再度この処理をステップS210から実行するようにしてもよい。
【0025】
受電する必要があると判断した場合(ステップS210:「YES」)には、次に送電要求の指示を出力する(ステップS230)が、このとき、予め送電装置50の有無を検出する処理(ステップS220)を行なってもよいし、送電装置50の有無を検出せずに送電要求を出力してもよい。送電装置50を検出するとは、送電装置50の送電コイル51が受電コイル31の近傍に存在するかを検出することである。
図4を用いて示したように、受電コイル31と送電コイル51とが近接すると、待機状態であっても電流は増加するので、こうした電流の増加から送電装置50の存在を検出してもよいし、ブルートゥース(登録商標)やRFIDなどを用いた近距離通信により送電装置50の存在を検出してもよい。なお、送電装置50の検出は必ずしも行なう必要はない。受電装置30からの送電要求に対して、受電装置30が受電できる範囲に送電装置50が存在すれば、送電装置50が以下に説明する処理を行なうのであり、近傍にいなければ送電要求に対する応答はないだけだからである。送電装置50の存在を検出すれば、送電要求に対する送電装置50の動作を判断することで、非接触給電システム100の動作の信頼性を検証できる。
【0026】
受電装置30側から送電要求が、例えば通信により出力される。このとき、送電要求を出力した受電装置30の近傍に送電装置50が存在すれば、その送電装置50は、送電要求があると判断する(ステップS130:「YES」)。具体的には、送電回路のインピーダンスを下げて、送電処理を行なう(ステップS140)。続いて、時間Ttが経過するまで(ステップS160)、この送電処理(ステップS140)を繰り返す。時間Ttが経過すれば、送電を終了し、受電回路のインピーダンスを高くして、待機状態に切り換える(ステップS170)。ここで、時間Ttは、リアルタイムクロックなどを用いて、容易にその経過を検出できる。なお、送電コイル51を用いた送電の総量である総電力量をカウントし、時間Ttの経過または総電力量が予め定めた値に達した時、のいずれか早いほうで、送電を終了するものとしてもよい。
【0027】
送電装置50側がこうした送電処理を行なっている間、受電装置30側では、受電処理(ステップS240)を行なう。受電処理は、送電装置50における受電処理の時間Ttに合わせて、時間Ttだけ行なってもよいし、受電する電流が所定値を下回るまで行なってもよい。仮に、この間、受電コイル31が送電コイル51と相対しているとしても、送電装置50側の送電処理は、時間Ttが経過すれば終了するので、いつまでも受電処理が継続することはない。なお、送電コイル51から受電コイル31への送電は、両コイル間の磁界結合を用いて送電すればよく、単なる電磁誘導による送電としてもよいし、送電回路や受電回路の共振周波数を主電力ラインRFPに供給される電力の周波数に合わせ、共振を利用した送電を用いてもよい。
【0028】
送電装置50側では送電処理を終了した後、送電側回路の信頼性チェックの処理(ステップS190)を行なってもよいが、行なわなくてもよい。もとより、送電回数や累積送電時間などを予め決めておき、その送電回数や累積送電時間になったときに、これをトリガとして、信頼性チェックを行なってもよい。もとより、送電回路に設けた温度センサなどで予め定めた温度範囲を超える昇温等が検出された場合など、センサ等による何らかの現象が検出されたときに、これをトリガとして、信頼性チェックを行なうことも有効である。あるいはこれらのトリガを組み合わせて信頼性チェックを行なうようにしてもよい。同様に、受電装置30側でも、受電処理(ステップS240)の終了後に受電回路の信頼性チェックを行なうものとしてもよい。信頼性チェックは行なっても行なわなくてもよく、行なう場合のタイミング等は、上述した送電装置側の判断と同様に、いずれかのトリガにより、あるいは幾つかのトリガを組み合わせて行なえばよい。
【0029】
かかる処理を行なう送電装置50と受電装置30の具体的な回路構成例を説明する。送電装置50は、既に説明したように、送電コイル51と送電制御部80とを備え、1次側共振回路を形成している。送電制御部80は、
図6に示すように、インピーダンスの切換を行なう切換部53、送電コイル51に流れる電流の大きさを検出する検出部55、送電要求を検出する送電要求検出部85を備える。切換部53は、直列に接続された2つのコンデンサCs,Crと、コンデンサCsに並列に接続されたスイッチSWとを備える。スイッチSWは、直列に接続された2つのスイッチング素子SW1およびSW2と、各スイッチング素子SW1,SW2に並列に接続されたダイオードD1,D2とを備える。スイッチング素子SW1,SW2のゲートには、送電要求検出部85からの信号線が接続されている。
【0030】
掛かる回路構成を有する切換部53は、送電要求検出部85からの開始信号SSがオフ(ノンアクティブ)状態であれば、スイッチSWはオフ(非導通状態)となるので、2つのコンデンサCs,Crは、直列に接続された状態となり、切換部53としてCtsは、
Cts=1/(1/Cs+1/Cr)
となる。他方、送電要求検出部85からの開始信号SSがオン(アクティブ)となると、2つのスイッチング素子SW1,SW2がそれぞれ一方向に導通可能な状態となり、並列に接続されたダイオードD1,D2と協働して、交流電圧が印加された場合、双方向に電流が流れ得る状態、つまり導通状態となる。このため、開始信号SSがオン状態となれば、コンデンサCsの影響はなく、切換部53全体の容量Ctは、
Ctr=Cr
となる。すなわち、切換部53は、送電コイル51と接続される共振コンデンサの容量を切り換えることで、主電力ラインRFPから印加されている交流電圧の周波数に対して、送電コイル51に電流が流れる回路のインピーダンスを切り換える切換部として機能する。スイッチSWにより直列接続されるのがコンデンサであることから、容量CtrとCtsとの大小関係は、
Ctr>Cts
となる。
【0031】
本実施形態では、開始信号SSがオンの場合の容量Ctrは、送電コイル51のリアクタンスLrと共に、共振回路の共振周波数frが、主電力ラインRFPの周波数85kHzとなるように設定されている。他方、開始信号SSがオフの場合の容量Ctsは、共振回路の共振周波数frを、85kHzから大きく逸脱させる。この場合、共振は生じないが、回路のインピーダンスは無限大ではないので、一定の交流電流が流れる。これが待機電流Isである。開始信号SSがオンとなり共振が生じる場合の電流が共振電流Irである。待機電流Isと共振電流Irの一例は
図3に示した。いずれの場合も、その電流の大きさは、検出部55により検出される。
【0032】
送電制御部80における送電要求検出部85の働きを、受電装置30の構成と共に以下説明する。受電装置30の構成の一例を、
図7に示した。受電装置30は、既に説明した受電コイル31、受電回路35、受電制御部40、負荷装置45の他、送電要求出力部70を備える。受電コイル31は、図示するように、コンデンサCC1と共に直列共振回路を形成している。共振回路に生起される交流は受電回路35に設けられた4つのダイオードRD1-RD4からなるダイオードブリッジにより整流され、負荷装置45に出力される。負荷装置45の負荷、例えば充電状態を示すSOCは、受電制御部40により監視されている。
【0033】
受電装置30の送電要求出力部70は、送電コイル51が近接した場合、磁界結合を形成するサブコイル71、共振コンデンサCC2、受電制御部40により操作されるソリッドステートリレー74等を備える。なお、図においては、ソリッドステートリレー74は、接点のみを示した。ソリッドステートリレー74の接点は、デフォルトでオープン状態であり、この状態では、送電要求出力部70の回路には電流は流れない。負荷装置45の状況を検出した受電制御部40が受電を行なうべきと判断して、送電要求出力部70に送電要求信号RSを出力し、ソリッドステートリレー74を駆動して、その接点をクローズすると、送電要求出力部70の回路は閉回路となる。サブコイル71と共振コンデンサCC2とが構成する直列共振回路の共振周波数は、85kHzとされている。この状態で、送電コイル51がサブコイル71の近傍に存在すると、送電コイル51とサブコイル71との磁界結合により、送電要求出力部70の閉回路には電流が流れ、結果的に、送電コイル51に流れる電流も増加する。送電装置50において、送電コイル51に流れる電流の大きさは、検出部55により検出されているから、待機電流Isの電流の増加を送電要求検出部85が判断し、開始信号SSを切換部53に出力することで、切換部53のインピーダンスは低い値に切り換えられ、共振電流Irが流れて、送電コイル51と受電コイル31とを介した送電が、所定時間Ttに亘って行なわれ、その後送電は終了される。
【0034】
この様子を、
図8に示した。図示するよう、送電コイル51と受電コイル31とが磁界結合している状態で、受電装置30側が、送電要求信号RSをオンにすると、送電コイル51に流れる電流Isは増加し、送電要求検出部85がこれを検出した結果、切換部53はインピーダンスの高い待機状態からインピーダンスの低い共振状態に切り換えられ、送電コイル51を流れる電流Irは急速に増加する。この結果、送電装置50側は送電処理を行なう状態(
図5、ステップS140)となり、受電装置30側は受電処理を行なう状態(
図5、ステップS240)となる。
【0035】
送電装置50側の送電処理は、時間Ttの経過後、電流Irの大小を問わず、送電処理を終了する。この結果、送電装置50の切換部53は、高インピーダンスに切り換えられ、送電回路は待機状態となり、送電コイル51に流れる電流も待機電流Isとなる。この状態は、次に受電装置30側から、送電要求信号が出力されるまで継続される。この間に、受電装置30や送電装置50は、信頼性チェックの処理を実施してもよい。その後、受電装置30側が、負荷装置45等の状況に鑑みて、送電要求を出力すれば、再度、上述した動作および送電・受電処理が実施される。
【0036】
上述した送電装置50および受電装置30では、送電要求信号RSは、一旦オンにされた後、所定の時間後にオフにされている。これは、受電制御部40が送電要求信号RSのパルス幅を決めて、送電要求信号RSをオンにしている。これに対して、受電制御部40が一旦送電要求信号RSをオンにした後、受電処理か開始され、所定の閾値以上の電力の送電が開始されたことを確認した後、送電要求信号RSをオフにするよう制御してもよい。こうした処理は、移動体20が移動しており、受電コイル31が送電コイル51に近接しているか否かを検出せずに、送電要求信号RSを出力するといった制御を行なっている場合、送電開始のために何度も送電要求信号RSを出力する必要がないという利点がある。
【0037】
以上説明した第1実施形態の非接触給電システム100では、送電装置50は、送電コイル51を流れる電流の大きさから受電コイル31の存在を検出して送電を開始するのではなく、受電装置30側からの送電要求を受けて送電を開始し、しかも予め定めた時間Ttが経過すると、送電を終了する。このため、送電回路や受電回路のバラツキなどで、送電コイル51を流れる電流が設計時の値より大きくなり、受電コイル31が送電コイル51との磁界結合を解除した状態であることを検出できなくなっている場合でも、送電装置50が送電を継続しようとして無駄な電流を流すことがない。また、受電装置30側に何らかの障害が発生して、受電を継続することが望ましくない状態になっていながら送電が継続されるということがない。所定の時間Ttが経過すれば、送電装置50が送電を終了するからである。このため、受電装置30との間で送電要求の授受以外のやり取りをしなくても、送電すべきでなく電力の送電を回避できる。この結果、小電力に資することができ、また受電装置30側の不具合に対応できる。受電装置30側の不具合としては、例えばバッテリを搭載している場合でバッテリが過充電となっているケースや、受電装置30側の定格を超える温度上昇など、種々の場合を想定可能である。
【0038】
本実施形態では、
図5に示した処理のうち、ステップS220の送電装置検出処理を行なえば、受電装置30が送電装置50と近接した位置にいない場合に、無駄に送電要求を出力することがない。また、受電処理(ステップS240)の終了後に信頼性チェックの処理(ステップS290)を行なうようにすれば、受電処理をしていない期間に、装置の信頼性を確認できる。このため、受電する機器の信頼性を確保しやすい。同様に、送電処理(ステップS170)の終了後に信頼性チェックの処理(ステップS190)を行なうようにすれば、送電処理をしていない期間に、装置の信頼性を確認でき、送電する機器の信頼性を確保しやすい。
【0039】
上記の実施形態では、送電コイル51との磁界結合を利用して送電要求を出力するので、通信装置等の設備が必要なく、送電装置50および受電装置30の構成を簡略化できる。また、送電要求出力部70のために特に電源を用意する必要がなく、構成を更に簡略化できる。
【0040】
B.第2実施形態:
次に第2実施形態の非接触給電システム100について説明する。第2実施形態の非接触給電システム100の全体構成は、
図1に示した第1実施形態と同様である。第2実施形態の非接触給電システム100では、送電装置50は、第1実施形態と同様の構成を備える。第2実施形態の受電装置30Aの構成を
図9に示した。図示するように、この受電装置30Aは、受電回路が第1実施形態と同様であり、受電回路に流れる電流値Iiを検出する電流センサ37を備えること、送電コイル検出部90を備えること、送電要求出力部70Aの構成が異なること、の3点で相違する。本実施形態でも、受電制御部40Aは、負荷装置45の状態を読み込み、送電要求信号RSを出力する。
【0041】
受電装置30Aに設けられた送電コイル検出部90は、送電コイル51の存在を検出するために設けられている。送電コイル検出部90は、検出コイル91と、検出回路92と、判定回路93と、駆動回路95を備える。検出回路92は、検出コイル91に流れる電流を検出する。また、判定回路93は、検出回路92が検出した電流の大きさに基づき検出コイル91に近接した送電コイル51の存在を判定する。駆動回路95は、判定回路93が送電コイル51が近接して存在していると判定している状態で、受電制御部40Aから送電要求信号RSを受け取ったとき、インバータ75への駆動信号を、予め定めた期間、出力する。
【0042】
受電装置30Aにおける送電要求出力部70Aは、サブコイル71と共振コンデンサCC2とからなる共振回路を備え、この共振回路と直流電源77との間にインバータ75を備える。インバータ75を構成する4つのスイッチングトランジスタTr1-Tr4はブリッジを形成しており、そのゲート端子には、後述する送電コイル検出部90の駆動回路95からの出力信号が接続されている。4つのスイッチングトランジスタTr-Tr4は、対角に配置された2つのスイッチングトランジスタTr1およびTR4とTr2およびTr3とが、排他的にオン・オフし、共振回路に85kHzの交流電圧を印加する。このとき、サブコイル71は、送電装置50の送電コイル51が近接位置に存在すれば、これと磁界結合して、送電コイル51に流れる電流を増大する。これが、送電装置50に対する送電要求として機能する。
【0043】
第2実施形態における受電装置30の受電制御部40Aが実行する受電側処理を
図10を用いて、送電装置50の送電制御部80が実行する送電側処理を
図11を用いて、説明する。受電制御部40Aは、受電装置30が起動されると、
図10に示した処理ルーチンを所定のインターバルで繰り返し実行する。まず、受電制御部40Aは、負荷装置45における負荷要求を取得し(ステップS310)、負荷の状況からみて、送電装置50からの受電を行なうべきか否かを判断する(ステップS315)。受電する必要があると判断すると(ステップS315:「YES」)、次に受電回路に流れる電流値Iiを電流センサ37から取得し(ステップS320)、この電流値Iiに基づいて、既に送電装置50からの受電が行なわれているか否かを判断する(ステップS325)。電流値Iiが小さく受電中であると判断できなければ、受電制御部40Aは、送電要求信号RSをオンにする(ステップS340)。その後、電流センサ37の出力を読み込んで、受電回路を流れる電流値Iiを取得し(ステップS350)、この電流値Iiが、予め設定した判断閾値Thrより大きいか否かの判断を行ない(ステップS355)、Ii>Thrとなるまで、これらの処理(ステップS350,S355)を繰り返す。
【0044】
受電装置30の上記動作に対して、送電装置50は以下の処理と判断を行なう。送電装置50は、起動後、
図11に示すように、切換部53を切り換えて、送電回路のインピーダンスが高い状態である待機状態とし(ステップS410)、送電コイル51を流れる電流値Itを検出部55から取得する(ステップS420)。その上で、この電流値Itが予め定めた判断閾値Thsより大きいか否かを判断し(ステップS430)、判断閾値Thsより大きくなければステップS410に戻って上記処理を繰り返す。この間に、受電装置30Aの受電制御部40Aが送電要求信号RSをオンにして、送電要求出力部70Aにより、送電コイル51に流れる待機電流が増加すると、電流値Itは判断閾値Thsを上回る(ステップS430:「YES」)。
【0045】
この判断を受けて、送電制御部80は、切換部53のインピーダンスを小さくし、共振電流Irが流れ得る送電状態に切り換える(ステップS440)。この結果、送電コイル51と受電コイル31との磁界結合を用い、共振による送電が開始され、送電コイル51および受電コイル31を流れる電流は共に増加する。送電装置50の送電制御部80は、この状態を時間Ttが経過するまで繰り返す(ステップS450)。時間Ttが経過すると、送電制御部80は、ステップS410に戻って、切換部53のインピーダンスを高くし、待機状態に切り換える。
【0046】
送電要求信号RSを出力した時点で、送電装置50の送電コイル51が受電コイル31に近接していれば、上述したように、送電コイル検出部90の駆動回路95が送電要求出力部70Aのインバータ75を駆動するから、送電装置50の送電制御部80は、送電コイル51を流れる電流値Itが判断閾値Thsを超えることにより送電要求を検出し、切換部53のインピーダンスを小さくして共振周波数を85kHzに切り換える。この結果、送電回路のインピーダンスは小さくなり、共振電流Irが流れて、結果的に、再度電流センサ37が検出する電流値Iiも増大する。
【0047】
このため、受電装置30Aの受電制御部40AがステップS350,S355を繰り返していると、いずれ、電流値Iiは判断閾値Thrより大きくなり(ステップS355:「YES」)、受電制御部40Aは、送電要求信号RSをオフにする(ステップS360)。なお、何らかの理由で、移動体20が移動しても、送電装置50に近接できず、電流値Iiが判断閾値Thrを上回れない状況が続く場合も考えられるが、そうした場合には、ステップS350-S355のループを継続している時間を計り、タイムアウトにより、送電要求信号RSをオフにして、本処理ルーチンを終了すればよい。
【0048】
送電要求信号RSをオフにした後、受電処理(ステップS370)を行ない、一旦本処理ルーチンを終了する。本処理ルーチンは、所定のインターバルで繰り返し実行されるので、負荷要求からみて受電の必要があれば、ステップS310,S315,S320,S325,S370の順に処理と判断が行なわれ、受電処理が継続される。他方、負荷要求から見て受電の必要がなくなれば(ステップS315:「NO」)、何も行なわず、「NEXT」に抜けて、本処理ルーチンを終了する。本実施形態では、受電処理を行なっている途中で、受電要求がなくなった場合には、特に何も行なわないが、その場合でも、送電要求を受け付けた送電装置50による送電が開始されてから所定時間Ttが経過すれば、送電装置50による送電は停止する。もとより、受電回路35の一方のアームを構成するダイオード、例えばダイオードRD1,RD3をスイッチング素子に置き換え、負荷要求から見て受電の必要がなくなれば、スイッチンク素子をオフにして、受電処理を終了するようにしてもよい。
【0049】
以上説明した第2実施形態の非接触給電システム100では、第1実施形態と同様の作用効果を奏する上、更に、受電装置30に送電コイル検出部90を設けているので、送電装置50が近接していることを確認してから、送電装置50側に送電を要求できる。また、受電制御部40は、送電要求信号RSをオンにした後、送電装置50から受電装置30Aへの送電が開始されたことを、受電コイル31
流れる電流値Iiによって確認してから、送電要求信号RSをオフにするので、送電装置50側に送電要求を確実に報せることができる。
【0050】
C.第3実施形態:
次に第3実施形態の非接触給電システム100について説明する。第3実施形態の非接触給電システム100は、
図12に示すように、送電装置50Bと受電装置30Bとを備える。送電装置50Bと受電装置30Bとは、第1実施形態と同様の構成を備えるが、受電装置30Bからの送電要求を送電装置50Bに報知するのに、送電コイル51と受電コイル31との磁界結合を利用せず、通信による報知を利用する。こうした通信のために、受電装置30Bは送電要求送信部79を、送電装置50Bは受信部89を、それぞれ備える。送電要求送信部79と受信部89とは、ブルートゥース(登録商標)による通信を行なう。通信方法は、これに限定されず、光通信やWiFiなど他の方式によっても差し支えない。
【0051】
送電要求送信部79は、受電制御部40が出力する送電要求信号RSを受けると、送電を要求する信号を出力する。この信号の出力範囲に送電装置50Bがあれば、送電装置50Bの受信部89はこの送電要求の信号を受信し、これを送電制御部80に伝える。送電制御部80は、所定時間Ttの間、送電課回路のインピーダンスを下げて、送電コイル51および受電コイル31の間で共振を利用した送電を行なう。所定時間Ttが経過すれば、共振電流の有無を問わず、送電制御部80は送電回路のインピーダンスを高くして、共振を利用した送電を終了する。受電装置30Bに、送電要求があれば、再度、送電要求送信部79を介して送電を要求する信号を送電装置50B側に送信し、これを受信部89が受信すれば、同様に送電が行なわれる。
【0052】
かかる構成を備えた第3実施形態の非接触給電システム100でも、第1,第2実施形態と同様に、非接触の送電を行なうことができるなど同様の作用効果を奏する。しかも第3実施形態では、送電要求の授受に送電コイル51,受電コイル31を用いないので、共振を利用した送電要求信号の授受のタイミングを考慮する必要がなく、両コイル51,31の設計の自由度を高くできる。また、両コイル間のノイズを送電要求と誤判断する可能性も払拭できる。
【0053】
上述した各実施形態では、受電装置30側に送電を要求する状況、例えばバッテリのSOCの低下などの状況があれば、繰り返し送電要求を出力するが、既に送電要求を出力しうるインターバルに制限を持たせてもよい。例えば、送電要求を出力できるインターバルを、送電装置50が送電状態を継続する所定時間Ttよりも長くし、共振を利用した送電が行なわれない時間を一定の時間以上確保するものとしてもよい。こうすれば、両コイル51や受電コイル31の送電に伴う温度上昇を緩和できる。また、各装置における信頼性確認の処理などを行なうために必要な時間を容易に確保できる。なお、温度上昇などの観点から、送電要求を繰り返す回数に条件を設けてもよい。例えば、受電装置30側が、所定のインターバル以下で10回の送電要求を出力したら、次の送電要求の出力を、このインターバルより長い時間許可しないとか、送電要求が受電装置30から出力されても、送電装置50がこれを一定時間受け付けないといった構成としてもよい。
【0054】
D.変形例:
上述した幾つかの実施形態においては、受電装置30側からの送電要求を受け付けた後で、送電装置50側が送電を打ち切りまでの時間Ttを、予め定めた時間としたが、この時間Ttは、送電の条件に応じて可変してもよい。こうした変形例1~3を以下説明する。各変形例は、第2実施形態における送電装置50側の処理ルーチン(
図11)において、時間Ttを以下のように定めている。
【0055】
変形例1では、
図13に示したように、送電を打ち切るまでの時間Ttを送電コイル51を流れる電流値Itに基づいて設定する処理を、ステップS430とステップS440との間に行なうものとしている。具体的には、ステップS430での判断が「YES」となった場合、まず切換部53のインピータンスを小さくして送電状態にし(ステップS510)、その後、送電状態で送電コイル51に流れる電流値Itを取得する(ステップS511)。その上で、この電流値Itに基づいて、送電状態を終了するまでの所定時間Ttを設定する(ステップS512)。かかる処理を行なうことで、所定時間Ttは、送電状態とされた際の電流値Itに応じて決定される。ここでは、送電状態にされた際に送電コイル51を流れた電流値Itが大きいほど、時間Ttを大きくする。但し、所定時間Ttは必ず有限の値に設定される。電流値Itと所定時間Ttとの関係は、数式により求めるものとしてもよいし、予めテーブルの形式で用意し、このテーブルをルックアップすることで求めるようにしてもよい。
【0056】
かかる変形例1によれば、送電状態とされた際に送電コイル51を流れる電流値Itが大きい場合には、送電が終了するまでの時間Ttを長く、小さい場合には短く設定するので、所定時間Ttを適正な長さにできる。つまり、送電コイル51と受電コイル31とが正対している状態で送電が開始された場合では、送電が継続される時間Ttが長くされ、平均給電電力の低下を抑制できる。他方、送電コイル51と受電コイル31とが給電は可能だが比較的離れている状態で送電が開始された場合には、送電が継続される時間Ttが短くされるので、受電コイル31が離れた状態で送電コイル51から磁束が放射され続けるといった時間を短くできる。
【0057】
変形例2では、
図14に示したように、送電を打ち切るまでの時間Ttを主電源装置60から送電装置50に供給される出力電流値Imに基づいて設定する処理を、ステップS430とステップS440との間に行なうものとしている。具体的には、ステップS430での判断が「YES」となった場合、まず切換部53のインピータンスを小さくして送電状態にし(ステップS510)、その後、送電状態で主電源装置60から送電装置50に出力される出力電流値Imを取得する(ステップS515)。出力電流値Imは、主電源装置60のインバータに設けられている過電流検出用の電流センサの検出値を流用できる。この出力電流値Imに基づいて、送電状態を終了するまでの所定時間Ttを設定する(ステップS516)。かかる処理を行なうことで、所定時間Ttは、送電状態とされた際の出力電流値Imに応じて決定される。ここでは、送電状態にされた際に送電装置50に出力された出力電流値Imが大きいほど、時間Ttを大きくする。時間Ttを有限の値にすることや、出力電流値Imと所定時間Ttとの関係を数式やテーブルで求めるようにすることなどは、変形例1と同様である。
【0058】
かかる変形例2によれば、送電状態とされた際に送電装置50に出力される出力電流値Imが大きい場合には、送電が終了するまでの時間Ttを長く、小さい場合には短く設定するので、所定時間Ttを適正な長さにできる。出力電流値Imと送電コイル51を流れる電流値とには、強い相関があるので、この変形例2でも、平均給電電力の低下の抑制や受電コイル31が離れた状態で送電コイル51からの磁束の無駄な放射の抑制など、変形例1と同様の作用効果を奏する。
【0059】
変形例3では、
図15に示したように、送電を打ち切るまでの時間Ttを移動体20の移動速度vに基づいて設定する処理を、ステップS430とステップS440との間に行なうものとしている。具体的には、ステップS430での判断が「YES」となった場合、まず移動体20の移動速度vを検出し(ステップS520)、その後、移動体20の移動速度vに基づいて、送電状態を終了するまでの所定時間Ttを設定する(ステップS521)。かかる処理を行なうことで、所定時間Ttは、移動体20の受電コイル31が送電コイル51に相対していると想定される時間に応じて決定される。ここでは、移動体20の移動速度vが小さく、両コイルが磁界結合していると考えられる時間が長いほど、時間Ttを大きくする。時間Ttを有限の値にすることや、移動速度vと所定時間Ttとの関係を数式やテーブルで求めるようにすることなどは、変形例1、2と同様である。
【0060】
かかる変形例3によれば、移動速度が小さい場合には、送電が終了するまでの時間Ttを長く、大きい場合には短く設定するので、所定時間Ttを適正な長さにできる。この変形例3では、移動速度vが小さいときには送電コイル51と受電コイル31とが正対もしくは給電可能な配置にある時間が長い場合が多いと想定されることから、平均給電電力の低下を抑制できる。他方、移動速度vが大きい時には、送電装置50と受電コイル31とが短時間のうちに離間する場合が多いと想定されることから、受電コイル31が離れた状態での送電コイル51からの磁束の無駄な放射を抑制できる。
【0061】
E.その他の実施態様:
(1)本開示は以下の態様でも実施可能である。第1の態様は、送電装置から受電装置に、磁界結合により給電を行なう非接触給電システムとしての構成である。この非接触給電システムは、前記受電装置は、送電を求める送電要求信号を出力し、前記送電装置は、前記送電要求信号を受け取った場合、前記受電装置に対する前記磁界結合を用いた送電を、予め定めた送電期間行なった後、送電量が前記送電期間の送電量よりを少ない待機状態に切り換える。こうすれば、送電装置からの送電は、受電装置からの送電要求信号を得て行なわれ、かつ予め定めた送電期間の経過後、送電量が送電期間の送電量より少ない待機状態に切り替わる。従って、送電装置から受電装置への磁界結合を用いた送電が、送電期間を超えて行なわれることがなく、何らかの理由で送電が継続することが望ましくない状態になっていながら大きな送電量で送電が継続されるといった事態が継続されることを回避または抑制できる。
【0062】
ここで、送電装置から受電装置への送電は、磁界結合を用いたものであれば何でもよく、共振を利用したものであっても、利用しないものであってもよい。また、待機状態での送電量は、送電期間の送電量より少なければよく、待機状態では送電しないものとしてもよい。送電が継続することが望ましくない状態は、磁界結合が十分でない状態や、受電装置側に受電を継続することが望ましくない状態などが考えられる。後者は、受電装置に受電した電力で充電される二次電池やキャパシタなどの蓄電装置が備えられており、蓄電装置がそれ以上蓄電できない状態である場合や、受電のための回路に何らかの異常が生じている場合などを含み得る。こうした異常としては、所定温度以上への過熱や、所定値以上の過電流などを検出した場合、受電装置側のダイアグノーシスからの受電停止指示が出された場合、などがある。
【0063】
(2)上記の(1)の構成において、前記送電装置は、前記待機状態においては、前記磁界結合を用いた送電を行なわないものとしてよい。こうすれば、送電が停止されるので、送電に伴う不具合の発生は一層抑制できる。送電に伴う不具合には、受電装置側の非所望の温度上昇、非所望の過充電、送電装置側の無駄な電力消費などが含まれる。
【0064】
(3)上記の(1)または(2)の構成において、前記受電装置は、前記送電要求信号を、前記磁界結合を用いて前記送電装置に出力するものとしてよい。こうすれば、磁界結合を用いて送電要求信号を出力できるので、送電要求信号を出力するための構成の少なくとも一部を簡略化できる。磁界結合を利用した送電要求信号は、磁界結合により流れる電流の大きさを変化させることで出力できる。電流の大きさの変化は、電流値を検出して判断できるが、電流値に限らず、その電流が流れる部分、例えば送電コイルなどに生じる電圧、共振回路が形成されている場合には共振回路を形成するコンデンサの両端電圧、共振回路を構成するコンデンサに流れる電流などの変化を検出して判断してもよい。あるいは、流れる電流により生じる磁束の変化を検出して判断してもよい。
【0065】
(4)上記の(1)から(3)の構成において、前記送電装置は、送電コイルとおよび第1コンデンサとから構成される1次側共振回路と、前記1次側共振回路に所定の周波数の交流電圧を印加して電力を供給する交流電源装置と、を備え、前記受電装置は、受電コイルおよび第2コンデンサとから構成させる2次側共振回路と、前記2次側共振回路に誘起された交流を直流に整流する整流回路と、を備え、前記送電コイルと前記受電コイルとが前記磁界結合を形成するものとしてよい。こうすれば、効率の良い無線給電を簡易な構成で実現できる。1次側共振回路や2次側共振回路は、コイルとコンデンサからなる直列共振回路として知られている種々の構成のいずれか一つを採用してもよく、並列共振回路として知られている種々の構成のいずれか一つを採用してもよい。
【0066】
(5)上記(4)の構成において、前記受電装置は、前記送電要求信号を、前記磁界結合した前記受電コイルと前記送電コイルとを介して出力する信号出力部を備え、前記送電装置は、前記送電コイルにおける電気量の変化により前記送電要求信号を検出する送電要求検出部を備えるものとしてよい。こうすれば、簡易な構成により、送電要求信号を、受電装置から送電装置に出力できる。電気量の変化は、送電コイルを流れる電流の大きさの変化、送電コイルの電圧の変化、などにより検出できる。
【0067】
(6)上記の(4)または(5)の構成において、前記送電装置は、前記送電コイルと前記交流電源装置との間に、前記送電量を切り換える切換部を備えるものとしてよい。こうすれば、送電期間に送電可能な電力量と、待機状態で送電可能な電力量とを容易に切り換えられる。送電量の切換は、送電を行なう回路の接続をオン・オフする接点の切り換え、回路のインピーダンスの大小の切り換えなどにより実現できる。切り換えは、オンからオフ、オフからオンのように、状態の切り換えとして固定的に実現してもよいし、オンの時間とオフの時間の割合、つまりオン・オフのデューティを変化させることで実現してもよい。
【0068】
(7)上記の(4)から(6)の構成において、前記切換部は、前記第1コンデンサの容量を、第1の値から第2の値に切り換える切換回路を備え、前記第1コンデンサの容量が前記第2の値である場合の前記1次側共振回路の共振周波数は、前記第1コンデンサの容量が前記第1の値である場合よりも、前記交流電圧の前記所定の周波数から遠いものとしてよい。こうすれば、1次側共振回路の共振周波数を交流電圧の周波数に対して、近づけるか遠ざけるかを容易に切り換えでき、共振を利用した送電の程度を変更できる。コンデンサの容量の変更は、複数のコンデンサの切り換え、並列または直列接続の切り換えなどにより、容易に実現できる。送電期間における1次側共振回路の共振周波数は、交流電圧の周波数に一致させれば、送電効率を高める上で有利だが、完全に一致させなくてもよく、待機状態よりも、交流電圧の周波数に近ければよい。なお、1次側共振回路の共振周波数は、コンデンサの容量を変更するのではなく、送電コイルのインダクタンスを変更することで切り換えてもよい。こうしたインダクタンスの切換は、送電コイルの途中にタップを設け、タップを切り換えることで、巻線数を変えることで容易に実現できる。もとより、送電コイルをコア付きとして、コアと巻線との重なりを変えて、送電コイルの透磁率を変えることで実現してもよい。
【0069】
(8)上記の(1)から(7)の構成において、前記送電装置は、前記送電期間における前記送電量を反映したパラメータを検出するパラメータ検出部を備え、前記パラメータに応じて、前記送電期間を設定するものとしてよい。こうすれば、送電量を反映したパラメータにより送電期間を設定でき、平均給電電力の低下を抑制や、磁束の無駄な放射の抑制などをそれぞれ実現できる。パラメータとしては、送電期間開始時の送電量、例えば送電コイルを流れる電流値や、送電装置に電力を供給している電源回路の電力量などがある。
【0070】
(9)上記の(1)から(8)の構成において、前記受電装置は、前記送電要求信号を、予め定めた条件が満たされている場合には、予め定めたインターバルで、繰り返し出力するものとしてよい。こうすれば、給電が可能な状態では、中断期間が挟まれるとしても、非接触給電を継続できる。
中断を挟みながら継続できる。予め定めた条件とは、受電側が送電を求めており、かつ受電することに支障がない、といった条件である。
【0071】
(10)上記の(9)の構成において、前記受電装置は、前記受電装置に異常がある場合には、前記予め定めた条件は満たされていないと判断するものとしてよい。こうすれば、受電装置に異常があるにもかかわらず、送電が実施される可能性が抑制される。
【0072】
(11)上記の(1)から(10)の構成において、前記受電装置および前記送電装置の少なくとも一方は、前記送電期間の終了後であって、前記受電装置から次の送電要求信号が出力されるまでの間に、装置の安全性に関わるチェックを実施するものとしてよい。こうすれば、装置の安全性と給電の継続という要請を満たすことができる。
【0073】
(12)上記の(1)から(11)の構成において、前記受電装置は前記送電装置に対して相対的に移動する移動体に搭載されており、前記送電期間の長さは、前記移動体が移動しながら前記送電装置から送電を受ける平均的な時間に応じて、予め定められているものとしてよい。こうすれば、送電装置に対する移動体の通過に要する平均的な時間から送電可能な量を求めて送電を実施でき、平均給電電力の低下を抑制や、磁束の無駄な放射の抑制などをそれぞれ実現できる。
【0074】
(13)本開示の他の態様は、受電装置に対して、磁界結合により送電を行なう非接触送電装置としての態様である。この非接触送電装置は、前記受電装置からの送電要求信号を受け取った場合、予め定めた送電期間において、前記受電装置に対する前記磁界結合を用いた第1の送電を行ない、前記送電期間の後、前記第1の送電よりも送電量の少ない送電状態に切り換える。こうすれば、非接触送電装置は、送電期間の経過後に、第1の送電よりも送電量の少ない送電状態となり、送電量の多い非所望な送電を漫然と継続することがない。
【0075】
(14)本開示の他の態様は、磁界結合により送電装置から送電される電力を受電する非接触受電装置としての態様である。この非接触受電装置は、前記送電装置に対して、送電を求める送電要求信号を出力し、前記送電要求信号を受け取った前記送電装置が、予め定めた送電期間において、前記受電装置に対する前記磁界結合を用いた第1の送電を行ない、前記送電期間の後、前記第1の送電よりも送電量よりも少ない送電状態に切り換えた後で、所定の条件が満たされている場合には、再度、前記送電要求信号を出力する。こうすれば、非接触受電装置が送電要求信号を出力しない限り、送電期間は、予め定めた期間で終了するので、非接触受電装置が漫然と受電を継続することがなく、かつ受電する必要があれば、中断期間が挟まれるとしても、受電を継続できる。
【0076】
(15)本開示の他の態様は、送電装置から受電装置に、磁界結合により給電を行なう非接触給電方法としての態様である。この非接触給電方法は、前記受電装置が、送電を求める送電要求信号を出力し、前記送電装置が、前記送電要求信号を受け取った場合、前記受電装置に対する前記磁界結合を用いた送電を、予め定めた送電期間行ない、前記送電期間の終了後、前記送電装置は、前記送電期間の送電量よりを少ない送電量の送電状態に切り換える。こうすれば、送電装置からの送電は、受電装置からの送電要求信号を得て行なわれ、かつ予め定めた送電期間の経過後、送電量が送電期間の送電量より少ない待機状態に切り替わる。従って、送電装置から受電装置への磁界結合を用いた送電が、送電期間を超えて行なわれることがなく、何らかの理由で送電が継続することが望ましくない状態になっていながら大きな送電量で送電が継続されるといった事態が継続されることを回避または抑制できる。
【0077】
(16)上記各実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよい。ソフトウェアによって実現されていた構成の少なくとも一部は、ディスクリートな回路構成により実現することも可能である。また、本開示の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、データパケットを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
【0078】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
20…移動体、21…駆動輪、22…従動輪、30…受電装置、30A…受電装置、30B…受電装置、31…受電コイル、35…受電回路、37…電流センサ、40…受電制御部、40A…受電制御部、45…負荷装置、50…送電装置、50B…送電装置、51…送電コイル、53…切換部、55…検出部、60…主電源装置、65…主電源、70…送電要求出力部、70A…送電要求出力部、71…サブコイル、74…ソリッドステートリレー、75…インバータ、77…直流電源、79…送電要求送信部、80…送電制御部、85…送電要求検出部、89…受信部、90…送電コイル検出部、91…検出コイル、92…検出回路、93…判定回路、95…駆動回路、100…非接触給電システム