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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125588
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】自動走行体
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240911BHJP
【FI】
G05D1/02 S
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033501
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】北村 瑞紀
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301GG08
5H301LL01
5H301LL08
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】システムコントローラの有無に関係なくシャッタとの干渉を防止することができる自動走行体の提供にある。
【解決手段】車体と、車体に搭載された走行駆動源と、走行駆動源を制御する車載コントローラ26と、車載コントローラ26と接続され、車体の上部の高さの障害物を検知する上方障害物検知センサと、を有する自動走行体10において、車載コントローラ26は、上方障害物検知センサの検知状態を認識した後、上方障害物検知センサが有効化される有効化範囲の設定の有無を判別し、有効化範囲の設定がされていないと判別され、かつ、上方障害物検知センサが検知状態を所定の時間以上継続するとき、走行駆動源を制御して走行を停止する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に搭載された走行駆動源と、
前記走行駆動源を制御する車載コントローラと、
前記車載コントローラと接続され、前記車体の上部の高さの障害物を検知する上方障害物検知センサと、を有する自動走行体において、
前記車載コントローラは、前記上方障害物検知センサの作動状態を認識した後、前記上方障害物検知センサが有効化される有効化範囲の設定の有無を判別し、前記有効化範囲の設定がされていないと判別され、かつ、前記上方障害物検知センサの作動状態が検知状態で所定の時間以上継続するとき、前記走行駆動源を制御して走行を停止することを特徴とする自動走行体。
【請求項2】
前記車載コントローラは、前記有効化範囲の設定がされていないと判別され、かつ、前記上方障害物検知センサの作動状態が検知状態で所定の時間以上継続されたとき、前記上方障害物検知センサの作動状態を未検知状態から検知状態へ変更し、前記上方障害物検知センサの作動状態を検知状態と判別することにより、前記走行駆動源を制御して走行を停止することを特徴とする請求項1記載の自動走行体。
【請求項3】
警告を発する警告器が前記車体に搭載され、
前記車載コントローラは、前記上方障害物検知センサの作動状態を未検知状態から検知状態へ変更した後に前記警告器を作動させることを特徴とする請求項2記載の自動走行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動走行体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動走行体の関係する従来技術として、例えば、特許文献1に開示された無人搬送車システムが知られている。特許文献1に開示された無人搬送車システムでは、無人搬送車の走行路をポイントで分割するとともに、交差点、オートシャッター、単線区間等の排他制御領域を設ける。無人搬送車は次のポイントへの走行に当たって、システムコントローラにブロッキングを要求し、システムコントローラはそのポイントがブロッキング済みでなければ走行許可を与えて、ポイントをブロッキングする。排他制御領域では、走行可能状態にあることを確認して、走行許可を与える。
【0003】
特許文献1に開示された無人搬送車システムによれば、ブロッキングによりポイントの通行権を無人搬送車に割り当て、ブロッキングの解除で他の無人搬送車に通行権を渡すことを可能にする。従って、ブロッキングとその解除との簡単な制御で、走行路をポイント単位に分割し、無人搬送車間の衝突を防止しながら走行制御できるとしている。例えば、オートシャッターが開状態では、無人搬送車が走行し、オートシャッターが閉状態では、無人搬送車は待機する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-100842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された無人搬送車システムは、走行路での無人搬送車の走行を制御するシステムコントローラを必要とする。ところで、自動走行体にシャッタを検知するシャッタ検知センサを設け、シャッタ検知センサがシャッタの開閉状態を検出することで、システムコントローラの有無に関わらず、シャッタとの干渉を防止することが考えられる。この場合、シャッタ検知センサがシャッタ以外の障害物を検出しても、自動走行体が停車するので、シャッタ検知センサが有効な範囲を予め設定することで有効な範囲以外での自動走行体の停車を防止できるが、この有効な範囲を正しく設定する必要がある。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、システムコントローラの有無に関係なく上方障害物との干渉を防止することができる自動走行体の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、車体と、前記車体に搭載された走行駆動源と、前記走行駆動源を制御する車載コントローラと、前記車載コントローラと接続され、前記車体の上部の高さの障害物を検知する上方障害物検知センサと、を有する自動走行体において、前記車載コントローラは、前記上方障害物検知センサの作動状態を認識した後、前記上方障害物検知センサが有効化される有効化範囲の設定の有無を判別し、前記有効化範囲の設定がされていないと判別され、かつ、前記上方障害物検知センサの作動状態が検知状態で所定の時間以上継続するとき、前記走行駆動源を制御して走行を停止することを特徴とする。
【0008】
本発明では、車載コントローラは、上方障害物検知センサの検知状態を認識した後、上方障害物検知センサが有効化される有効化範囲の設定の有無を判別する。有効化範囲の設定がされていないと判別され、かつ、上方障害物検知センサが検知状態を所定の時間以上継続するとき、車載コントローラは、走行駆動源を制御して走行を停止する。このため、システムコントローラの有無に関係なく上方障害物との干渉を防止することができる。また、上方障害物検知センサが有効化される有効化範囲の設定の有無を判別するので、予め設定された有効化範囲に誤りがある場合や有効化範囲が未設定の場合であっても、上方障害物との干渉を防止できる。また、上方障害物検知センサが検知状態を所定の時間以上継続しない場合には、走行が停止されないので、無駄な走行停止を生じることがない。
【0009】
また、上記の自動走行体において、前記車載コントローラは、前記有効化範囲の設定がされていないと判別され、かつ、前記上方障害物検知センサの作動状態が検知状態で所定の時間以上継続されたとき、前記上方障害物検知センサの作動状態を未検知状態から検知状態へ変更し、前記上方障害物検知センサの作動状態を検知状態と判別することにより、前記走行駆動源を制御して走行を停止する構成としてもよい。
この場合、有効化範囲の設定がされていないと判別され、かつ、上方障害物検知センサの作動状態が検知状態で所定の時間以上継続するとき、上方障害物検知センサの作動状態を未検知状態から検知状態へ変更する。このため、予め設定された有効化範囲に誤りがある場合や有効化範囲が未設定の場合であっても、車載コントローラは、上方障害物検知センサの作動状態を検知状態と判別でき、上方障害物との干渉を確実に防止できる。
【0010】
また、上記の自動走行体において、警告を発する警告器が前記車体に搭載され、前記車載コントローラは、前記上方障害物検知センサの作動状態を未検知状態から検知状態へ変更した後に前記警告器を作動させる構成としてもよい。
この場合、車載コントローラは、上方障害物検知センサの作動状態を未検知状態から検知状態へ変更したことで、有効化範囲の設定に異常があることを認識でき、警告器を作動させることで、有効化範囲の設定に異常があることを周囲に報知することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、システムコントローラの有無に関係なくシャッタとの干渉を防止することができる自動走行体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る小型牽引車の側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る小型牽引車の斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る小型牽引車の概略構成図である。
図4】小型牽引車の走行する走行経路を示す説明図である。
図5】小型牽引車によるシャッタとの干渉を防止する手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る自動走行車としての小型牽引車について図面を参照して説明する。本実施形態の小型牽引車は、自己位置を推定しつつ環境地図を作成して自律走行する自律走行型の小型牽引車である。ただし、本実施形態の小型牽引車は、有人運転も可能とするため、運転席を備えた無人小型牽引車である。なお、方向を特定する「前後」、「左右」および「上下」については、小型牽引車の運転席を基準にしている。
【0014】
図1に示すように、小型牽引車10の車体11の前部には、前輪としての操舵輪12が設けられ、車体11の後部には後輪としての駆動輪13が設けられている。車体11の中央付近には運転席14が設けられている。図1図2に示すように、運転席14には有人走行を可能とするための立席型の運転シート15およびステアリングレバー16が備えられている。
【0015】
車体11における運転席14の後方にはバッテリルーム(図示せず)が位置する。バッテリルームは、バッテリ17の収容を可能とする空間である。バッテリルームの上方は、車体11が備える開閉可能な開閉カバー18によって覆われている。図1に示すように、車体11の後部には、台車等の被牽引車(図示せず)を連結するドローバ装置19が設けられている。ドローバ装置19の操作により、小型牽引車10に対する被牽引車である搬送台車の連結又は連結解除が行われる。
【0016】
図3に示すように、小型牽引車10は、駆動輪13を駆動させる駆動力を発生させる走行駆動源としての走行駆動装置20と、操舵輪12を操舵するための操舵装置21と、を備える。走行駆動装置20は、駆動輪13を回転させるための走行用の駆動モータ22と、駆動モータ22を駆動するモータドライバ23と、を備えている。操舵装置21は、操舵輪12を駆動させるための操舵用の駆動モータ24と、駆動モータ24を駆動するモータドライバ25と、を備えている。
【0017】
車体11には、モータドライバ23、25を制御する車載コントローラ26が搭載されている。モータドライバ23は、車載コントローラ26からの指令に応じて駆動モータ22の回転数を制御する。したがって、車載コントローラ26は、走行駆動装置20に対して制御することで小型牽引車10の加速および減速(制動)を制御する。また、モータドライバ25は、車載コントローラ26からの指令に応じて駆動モータ24の回転量を制御する。
【0018】
図3に示すように、車載コントローラ26は、CPU27と、RAMおよびROM等からなる記憶部28と、を備えている。車載コントローラ26は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)を備えていてもよい。車載コントローラ26は、コンピュータプログラムにしたがって動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。
【0019】
記憶部28は、処理をCPU27に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部28には、小型牽引車10を制御するための種々のプログラムが記憶されているほか、小型牽引車10の移動を行なう移動空間に関する環境地図が記憶されている。環境地図は、小型牽引車10が移動空間を移動しながら作成する地図である。小型牽引車10の自己位置推定と環境地図の構築を同時に行なう技術は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と称される。記憶部28、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆるものを含む。
【0020】
ところで、車体11の前部における路面F付近には、障害物検知センサ29が備えられている。障害物検知センサ29は、路面Fに近い高さで車体11の前方における障害物を検知するセンサである。障害物検知センサ29は、路面Fから所定の高さ(200mm)以下となるように、車体11に設けられている。障害物検知センサ29は、レーザー光を照射するレーザー式測距センサであり、投光部(図示せず)および受光部(図示せず)を有している。小型牽引車10の走行経路上に障害物(人、物品等)が存在すると、障害物検知センサ29は障害物を検知し、障害物を検知した信号を車載コントローラ26へ伝達する。
【0021】
障害物検知センサ29は、予め設定された障害物検出エリアにレーザー光を走査する。障害物検知センサ29から発光されるレーザー光の光軸は、車体11が水平の状態ではほぼ水平方向に延び、車体11の前後の傾きに応じて傾斜する。障害物検知センサ29により設定される障害物検出エリア(図示せず)は、長方形のエリアである。障害物検出エリアの左右の幅は、小型牽引車10又は小型牽引車10により牽引される牽引台車(図示せず)のうち、幅が大きい方の幅とほぼ同じである。障害物検知センサ29は、車載コントローラ26と接続されている。
【0022】
障害物検出エリアは、防護エリア、停止エリア、減速エリアの3つのエリアに区画されている。防護エリアは、障害物検出エリアにおいて最も車体11に近いエリアであり、障害物を検出したとき、小型牽引車10が異常停止されるエリアである。つまり、車載コントローラ26は、防護エリアで障害物が検出されると、異常であると判別して小型牽引車10を異常停止させる。異常停止後に小型牽引車10の異常状態が解除されないと、小型牽引車10は自律走行を再開することはできない。
【0023】
停止エリアは、防護エリアの前方に設定されているエリアであり、障害物を検出したとき、小型牽引車10が通常停止されるエリアである。つまり、車載コントローラ26は、停止エリアで障害物が検出されると、異常ではないと判別して小型牽引車10を停止させる。停止後に障害物が取り除かれると、小型牽引車10は自律走行を再開することが可能である。
【0024】
減速エリアは、停止エリアの前方に設定されているエリアであり、障害物検出エリアにおいて最も車体11から離れたエリアであり、最前エリアに相当する。減速エリアは、障害物を検出したとき、小型牽引車10が制動を受けて減速されるエリアである。つまり、車載コントローラ26は、減速エリアで障害物が検出されると、減速が必要であると判別して小型牽引車10を制動して減速させる。減速中に減速エリアから障害物が取り除かれると、小型牽引車10は増速することが可能である。
【0025】
図2に示すように、車体11の前部付近には、左右一対の支柱31と、支柱31の頂部に横架される横架材32とを、有する門形フレーム30が備えられている。門形フレーム30には、環境センサ33が前方へ設けられている。環境センサ33は、車体11の前方含む周囲を検出するセンサであり、例えば、3D-LiDARである。環境センサ33は車載コントローラ26と接続されている。車載コントローラ26は、環境センサ33により検出された点群に基づき、小型牽引車10の自己位置を推定しつつ、環境地図を生成する。
【0026】
環境センサ33の下方に位置するように、上方障害物検知センサとしてのシャッタ検知センサ34が横架材32に設けられている。シャッタ検知センサ34は、車載コントローラ26がシャッタの開閉状態を判別できるようにするためのシャッタを検知するセンサである。シャッタは、例えば、図4に示すように、工場等の出入口G1、G2を開閉するために設けられる公知のシャッタSであり、自動開閉式シャッタあるいは手動開閉式シャッタであってもよい。
【0027】
本実施形態のシャッタ検知センサ34は、前方に向けてレーザー光を照射する二次元のレーザー式測距センサであり、投光部(図示せず)および受光部(図示せず)を有している。シャッタ検知センサ34の検知可能域は、例えば、車体11の前部から前方約2mまでの領域であり、検知可能域の幅は車体11の幅程度である。本実施形態では、シャッタ検知センサ34のレーザー光は、環境センサ33の走査範囲を妨げないように、予め設定された仰角で上方へ向けて照射される。なお、シャッタ検知センサ34の前後方向の検知可能域は、車体11の速度やシャッタ検知センサ34の取付け角度等に応じて変更可能としてもよい。また、シャッタ検知センサ34の幅方向は左右開きのシャッタを考慮して車体の幅か、牽引台車の幅の大きい方と同じ程度とすればよい。図4に示すように、出入口G2のシャッタSが閉じている状態では、シャッタ検知センサ34はシャッタSを検知し、シャッタSを検知した信号を車載コントローラ26へ伝達する。図4に示すように、出入口G1のシャッタSが開いている状態では、シャッタ検知センサ34はシャッタSを検知しない。
【0028】
車載コントローラ26は、警告器36と接続されている。警告器36は、車体11に搭載されており、警告音およびランプ点灯による警告を発する。警告器36は、シャッタ検知センサ34がシャッタSを検知すると車載コントローラ26により制御されて警告を発する。また、障害物検知センサ29が障害物を検知するとき、警告器36は同様に警告を発する。
【0029】
ところで、図4では、シャッタSがそれぞれ設けられた出入口G1、G2を通過する小型牽引車10の走行経路Rが設定されている。この場合、車載コントローラ26には、出入口G1、G2に対応するシャッタ検知センサ34の有効化範囲が予め設定される。シャッタ検知センサ34の有効化範囲は、シャッタ検知センサ34がシャッタ等の障害物を検知したとき、車載コントローラ26が障害物を認識することができるように設定された範囲である。有効化範囲を設定することで有効化範囲以外でのシャッタ検知センサ34の誤検知による小型牽引車10の走行停止を防止することできる。
【0030】
有効化範囲は、例えば、図4に示すように設定され、走行経路Rにおける出入口G1の手前側に有効化範囲E1が設定され、走行経路Rにおける出入口G2の有効化範囲E2が設定されている。つまり、有効化範囲E1、E2は、小型牽引車10がシャッタSを通過する手前に設定されたシャッタ検知センサ34の作動により車載コントローラ26がシャッタを認識可能な範囲である。なお、小型牽引車10が、走行経路Rにおいて出入口G2を通って出入口G1を通って戻る場合には、復路に対応して有効化範囲がさらに設定される。このように、有効化範囲は小型牽引車10が通過する出入口の数に対応して設定される。
【0031】
シャッタ検知センサ34の有効化範囲E1、E2を設定しておくことで、走行経路Rにおける有効化範囲以外でシャッタ検知センサ34が障害物を検知しても、車載コントローラ26に障害物と認識させないようにする。因みに、走行経路Rの有効化範囲E1、E2以外では、シャッタ検知センサ34はシャッタ以外の障害物を検知できるが、車載コントローラ26は一定の条件を満たさない場合にはシャッタ検知センサ34により検知された障害物を障害物として認識しない。つまり、シャッタ検知センサ34は、走行経路Rにおいて有効化範囲E1、E2以外でも作動するが、車載コントローラ26は、条件によってはシャッタ検知センサ34により検知された障害物を認識しない。なお、走行経路Rにおけるシャッタ検知センサ34の有効化範囲以外では、障害物検知センサ29が障害物を検知する。
【0032】
シャッタ検知センサ34が有効に作動する有効化範囲E1、E2の設定は、作業者等、人手によって設定される。このため、有効化範囲E1、E2の設定に誤りがある場合や、有効化範囲の設定自体が失念等によって行われないおそれがある。この場合、有効化範囲E1、E2においてシャッタ検知センサ34が作動せず、その結果、小型牽引車10がシャッタSと干渉するおそれがある。
【0033】
本実施形態では、シャッタ検知センサ34の有効化範囲の設定に誤りがある場合や、有効化範囲の設定自体が行われない場合でも、小型牽引車10とシャッタSとの干渉を回避する制御を車載コントローラ26が行う。小型牽引車10が運行データに基づいて走行するとき、車載コントローラ26は、図5に示す一連のステップからなるフローの制御を行う。運行データは、小型牽引車10の自動走行のためのプログラムを設定するために必要なデータであって、車載コントローラ26に人手によって予め設定される。具体的には、走行経路や走行経路における有効化範囲等が運行データに基づいて設定される。
【0034】
図5に示すように、車載コントローラ26は、まず、シャッタ検知センサ34の作動状態(検知状態又は未検知状態)を取得する(ステップS01)。シャッタ検知センサ34の作動状態が検知状態であれば、車載コントローラ26は検知状態と認識する。また、シャッタ検知センサ34の作動状態が未検知状態であれば、車載コントローラ26は未検知状態と認識する。検知状態とは、シャッタ検知センサ34がシャッタSを含む障害物を検知している状態である。未検知状態とは、シャッタ検知センサ34がシャッタSを含む障害物を検知していない状態である。
【0035】
次に、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34が有効であるか否かを判別する(ステップS02)。小型牽引車10が、例えば、有効化範囲E1に到達すると、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34が有効であると判別する。運行データ上の有効化範囲E1が正しく設定されていないか、運行データ上で有効化範囲E1が設定されていない場合、車載コントローラ26は有効でないと判別する。
【0036】
シャッタ検知センサ34が有効でないと判別されると、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34の作動状態を未検知状態に書き換える(ステップS03)。因みに、車載コントローラ26がステップS01でシャッタ検知センサ34の作動状態を検知状態又は未検知状態として認識しているが、ステップS03では、ステップS01で未検知状態であったとしても、改めて未検知状態に変更する。
【0037】
次に、車載コントローラ26は、自動運転中にシャッタ検知センサ34の作動状態が検知状態で一定時間を経過したか否かを判別する(ステップS04)。一定時間は、車載コントローラ26に設定されており、例えば、1秒未満で設定されている。因みに、車載コントローラ26は一定時間を計測可能とするタイマ機能を備えている。シャッタ検知センサ34が有効化されていないのにも関わらず、シャッタ検知センサ34の作動状態が検知状態で一定時間を経過することは、シャッタ検知センサ34がシャッタを含む障害物を検知したこと意味する。そこで、自動運転中にシャッタ検知センサ34が検知状態で一定時間を経過したと判別されると、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34の作動状態を未検知状態から検知状態に変更する(ステップS05)。
【0038】
ステップS03でシャッタ検知センサ34の作動状態が未検知状態に変更され、さらに、ステップS05にてシャッタ検知センサ34の作動状態が未検知状態から検知状態に変更されたことで、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34の有効化範囲の設定に異常があると認識できる。このため、車載コントローラ26は警告器36を作動させる(ステップS06)。警告器36の作動によりランプ点灯および警告音が生じ、小型牽引車10の異常が警告によって周囲に報知される。
【0039】
次に、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34の作動状態が検知状態であるか否かを判別する(ステップS07)。シャッタ検知センサ34の作動状態が検知状態であると判別されると、車載コントローラ26は、走行駆動装置20を制御して、小型牽引車10の走行を停止させる(ステップS08)。シャッタ検知センサ34の作動状態が未検知状態であると判別されると、車載コントローラ26はステップS01へ戻る。この場合、小型牽引車10の走行が継続される。
【0040】
なお、ステップS02において、シャッタ検知センサ34が運行データ上で有効であると判別されると、車載コントローラ26は、ステップS07でシャッタ検知センサ34の作動状態が検知状態であるか否かを判別する。有効化範囲が正しく設定されている場合、フローは、ステップS02からステップS07へ移ることになる。また、ステップS04で、自動運転中にシャッタ検知センサ34が「検知」で一定時間を経過していないと判別されると、車載コントローラ26は、ステップS07でシャッタ検知センサ34の作動状態が検知状態であるか否かを判別する。そして、ステップS07では車載コントローラ26は、未検知状態であると判別する。このように、車載コントローラ26が、一連のステップS01~S08を制御することで、シャッタ検知センサ34の有効化範囲の設定に誤りがある場合や、有効化範囲の設定自体が行われない場合でも、小型牽引車10とシャッタとの干渉が防止される。
【0041】
次に、本実施形態の小型牽引車10の走行について説明する。小型牽引車10は、予め設定された走行経路Rを走行する。車載コントローラ26が走行駆動装置20および操舵装置21を制御することによって、小型牽引車10は走行する。本実施形態では、環境センサ33は、走行する小型牽引車10の自己位置を推定しつつ環境地図を構築する。小型牽引車10が走行するとき、車体11に前部路面側に搭載されている障害物検知センサ29が車体11の前方へレーザー光を走査して走行する。走行経路Rに障害物が存在するとき、障害物検知センサ29は障害物を検知し、車載コントローラ26は、停止あるいは回避するように走行駆動装置20および操舵装置21を制御する。
【0042】
小型牽引車10の走行中において、シャッタ検知センサ34は、前方へ向けてレーザー光を走査する。車載コントローラ26は、例えば、図4に示すように、小型牽引車10が出入口G1へ向けて走行しているとき、シャッタ検知センサ34の作動状態を取得する。シャッタ検知センサ34が障害物を検知していない場合であれば、シャッタ検知センサ34の作動状態が未検知状態である。そして、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34が有効であるか否かを判別する。
【0043】
例えば、小型牽引車10が有効化範囲E1に到達していないとき、車載コントローラ26は、有効でないと判別する。この場合、シャッタ検知センサ34の作動状態が未検知状態であれば、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34の作動状態を未検知状態に変更するが、未検知状態から未検知状態への上書きによる変更である。次に、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34が検知状態で一定時間経過しているか否かを判断するが、図4に示す場合では、障害物が存在しないので、シャッタ検知センサ34が検知状態で一定時間経過していないと判別される。
【0044】
一方、小型牽引車10が有効化範囲E1に到達し、かつ、運行データ上の有効化範囲E1が正しく設定されている場合、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34が有効であると判別する。この場合、車載コントローラ26は、次に、シャッタ検知センサ34の作動状態が検知状態であるか否かを判別する。
【0045】
図4の場合では、出入口G1のシャッタSは開いているので、シャッタ検知センサ34の作動状態が未検知状態と判別される。このため、小型牽引車10は、停止することなく走行を継続して、出入口G2へ向かう。小型牽引車10は、出入口G1を通過したことで、有効化範囲E1から離脱する。有効化範囲E1から離脱したとき、走行経路Rに障害物が存在しなければ、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34の作動状態を未検知状態のままで維持する。
【0046】
小型牽引車10は、引き続き走行経路Rを走行して有効化範囲E2に到達する。運行データ上の有効化範囲E2が正しく設定されている場合、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34が有効であると判別する。この場合、車載コントローラ26は、次に、シャッタ検知センサ34の作動状態が検知状態であるか否かを判別する。図4の場合では、出入口G2のシャッタSは閉じているので、シャッタ検知センサ34の作動状態は検知状態と判別される。小型牽引車10は有効化範囲E2にて走行を停止して待機する。
【0047】
シャッタSが小型牽引車10を検知して自動的に開く自動開閉式のシャッタの場合、小型牽引車10を検知してシャッタSが開かれると、車載コントローラ26はシャッタ検知センサ34の作動状態が未検知状態となる。このため、小型牽引車10の走行を再開するように制御し、小型牽引車10は出入口G2を通過する。手動開閉式のシャッタ装置の場合、シャッタSが開かれない限り、小型牽引車10は有効化範囲E2にて走行を停止して待機する。
【0048】
ところで、例えば、運行データ上の有効化範囲E2が正しく設定されていない場合について考える。有効化範囲E2が正しく設定にされていない原因としては、例えば、シャッタ検知センサ34の錯誤による有効化範囲の設定、あるいは、有効化範囲E2の設定自体が行われないていないことが考えられる。
【0049】
図4では、出入口G1を通過した小型牽引車10は、シャッタ検知センサ34の作動状態が未検知状態で有効化範囲E2に到達する。一方、運行データ上の有効化範囲E2が正しく設定されていないので、小型牽引車10が有効化範囲E2に到達しても、シャッタ検知センサ34が運行データ上で有効でないと車載コントローラ26は判別する。他方、有効化範囲E2に到達した小型牽引車10では、シャッタ検知センサ34はシャッタSを障害物として検知している。そして、シャッタ検知センサ34が検知状態で一定時間経過すると、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34の作動状態を未検知状態から検知状態に切り換える。このとき、車載コントローラ26は、有効化範囲E2の設定に異常があると認識し、警告器36を作動させる。さらに、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34の作動状態が検知状態であると判別し、小型牽引車10の走行を停止するように制御する。
【0050】
なお、図4の例で、運行データ上の有効化範囲E2が正しく設定されていない場合であって、出入口G1のシャッタSが開いている場合では、シャッタ検知センサ34が運行データ上で有効でないと車載コントローラ26は判別する。また、有効化範囲E2に到達した小型牽引車10では、シャッタ検知センサ34はシャッタSを検知していないので、車載コントローラ26はシャッタ検知センサ34が検知状態で一定時間経過していないと判別する。さらに、車載コントローラ26はシャッタ検知センサ34の作動状態が未検知状態と判別するので、小型牽引車10は停止することなく走行し、出入口G2を通過する。
【0051】
このように、運行データ上の有効化範囲E2が正しく設定されていない場合であっても、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34が閉じたシャッタSを検知していると、小型牽引車10の走行を停止させ、小型牽引車10と出入口G2のシャッタとの干渉を防止する。車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34はシャッタSが開いていることを検知していると、小型牽引車10の走行を継続する。
【0052】
本実施形態に係る小型牽引車10は以下の効果を奏する。
(1)車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34の検知状態を認識した後、シャッタ検知センサ34が有効化される有効化範囲の設定の有無を判別する。有効化範囲の設定がされていないと判別され、かつ、シャッタ検知センサ34が検知状態を所定の時間以上継続するとき、車載コントローラ26は、走行駆動装置20を制御して走行を停止する。このため、システムコントローラの有無に関係なく上方障害物としてのシャッタSとの干渉を防止することができる。また、シャッタ検知センサ34が有効化される有効化範囲の設定の有無を判別するので、予め設定された有効化範囲に誤りがある場合や有効化範囲が未設定の場合であっても、シャッタSとの干渉を防止できる。つまり、システムコントローラの有無に関係なく小型牽引車10とシャッタSとの干渉を防止することができる。また、シャッタ検知センサ34の検知状態が所定の時間以上継続しない場合には、走行が停止されないので、無駄な走行停止を生じることがない。
【0053】
(2)車載コントローラ26は、有効化範囲の設定がされていないと判別され、かつ、シャッタ検知センサ34の作動状態が検知状態で所定の時間以上継続されたとき、シャッタ検知センサ34の作動状態を未検知状態から検知状態へ変更する。シャッタ検知センサ34の作動状態を検知状態と判別することにより、走行駆動装置20を制御して走行を停止する。このため、予め設定された有効化範囲に誤りがある場合や有効化範囲が未設定の場合であっても、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34の作動状態を検知状態と判別でき、シャッタSとの干渉を確実に防止できる。
【0054】
(3)警告を発する警告器36が車体11に搭載され、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34の作動状態を未検知状態から検知状態へ変更した後に警告器36を作動させる。このため、車載コントローラ26は、シャッタ検知センサ34の作動状態を未検知状態から検知状態へ変更したことで、有効化範囲の設定に異常があることを認識できる。また、警告器36を作動させることで、有効化範囲の設定に異常があることを周囲に報知することができる。
【0055】
(4)門形フレーム30の上部にシャッタ検知センサ34が設けられているので、シャッタ検知センサ34は、シャッタSが完全に開かれていない半開きの状態であってもシャッタSを検知することができる。したがって、シャッタSが車体11の下部に設けた障害物検知センサ29によって検出不可能な状態であっても、小型牽引車10とシャッタSとの干渉を防止できる。
【0056】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0057】
○ 上記の実施形態では、駆動輪は、バッテリの電力の供給を受けた走行駆動装置により駆動されたがこれに限らない。自動走行車の走行駆動源は、例えば、エンジンであってもよい。また、バッテリに代えて燃料電池による発電装置を車体に搭載してもよい。
○ 上記の実施形態では、自動走行車として小型牽引車を例示したが、これに限定されない。自動走行車としては、例えば、自動走行可能なフォークリフト、無人搬送車、無人トーイングトラクタ等のように自動走行可能な産業車両であればよい。また、本発明は、SLAMによる自律走行可能な車両のほか、磁気テープや電子タグを用いた誘導方式の自動走行可能な車両に適用可能である。なお、環境センサと磁気テープや電子タグとの組み合わせた自動走行体であってもよい。
○ 上記の実施形態では、車載コントローラが、予め記憶した環境地図により路面が上方障害物検知センサの有効化範囲の位置を把握しているとしたが、これに限らない。例えば、QRコード(登録商標)等の二次元コード又はRFIDタグを有効化範囲に対応して路面に設けておき、自動走行車に搭載されたリーダーが二次元コード又はRFIDタグを読み取ればよい。これにより、車載コントローラが有効化範囲の位置を把握できる。
○ 上記の実施形態では、門形フレームに上方障害物検知センサを設けたが、これに限らない。例えば、門形フレームを設けることなく、車体の上部に上方障害物検知センサを設けるようにしてもよい。
○ 上記の実施形態では、自動走行体が通過する出入口にシャッタを設けた例を説明したが、これに限定されない。出入口は、昇降するシャッタに限らず左右にスライドするスライドドアやスライドゲートでもよく、あるいは、ヒンジを支点として開閉される開閉ドアであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 小型牽引車(自動走行車)
11 車体
14 運転席
19 ドローバ装置
20 走行駆動装置(走行駆動源)
21 操舵装置
22 駆動モータ
23 モータドライバ(駆動用)
24 操舵モータ
25 モータドライバ(操舵用)
26 車載コントローラ
29 障害物検知センサ
30 門形フレーム
33 環境センサ
34 シャッタ検知センサ(上方障害物検知センサ)
36 警告器
F 路面
G1、G2 出入口
R 走行経路
S シャッタ
図1
図2
図3
図4
図5