(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125599
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】切断装置、および切断方法
(51)【国際特許分類】
B26D 1/60 20060101AFI20240911BHJP
B26D 7/06 20060101ALI20240911BHJP
D06H 7/02 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B26D1/60 E
B26D1/60 H
B26D1/60 L
B26D7/06 Z
D06H7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033521
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真
【テーマコード(参考)】
3B154
【Fターム(参考)】
3B154AA01
3B154AB22
3B154AB27
3B154BA47
3B154BB54
3B154BC31
3B154BC48
(57)【要約】
【課題】ウェブの送りを中断させずにウェブを切断可能にしながら、切断中の搬送距離が大きくても配置スペースを低減する。
【解決手段】切断装置90は、少なくとも堆積された繊維を含むウェブを切断するカッター91aと、カッター91aを、ウェブの搬送方向に移動させるボールねじ機構92と、を備え、カッター91aは、ウェブの搬送中に、ボールねじ機構92によりウェブの搬送方向に移動しながら、ウェブを搬送方向と交差する方向に切断する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも堆積された繊維を含むウェブが搬送される搬送経路に設けられ、前記ウェブを切断する切断装置において、
前記ウェブを切断するカッターと、
前記カッターを、前記ウェブの搬送方向に移動させるボールねじ機構と、を備え、
前記ウェブの搬送中に、前記ボールねじ機構により前記カッターが前記ウェブの搬送方向に移動しながら、前記カッターにより前記ウェブを前記搬送方向と交差する方向に切断する、
切断装置。
【請求項2】
前記ウェブを搬送する搬送ローラーを備える、
請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記搬送ローラーは、前記ウェブから待避可能な可動ローラーを含み、
前記可動ローラーは、前記カッターが前記ウェブの搬送方向上流側に移動する間、前記ウェブから待避する、
請求項2に記載の切断装置。
【請求項4】
前記搬送ローラーは、前記カッターの下流側に設けられ、前記ウェブの切断後に、所定期間回転することで前記ウェブを搬送する、
請求項2に記載の切断装置。
【請求項5】
前記所定期間は、下流に位置する受け取り側が、切断された前記ウェブを保持するまでの期間に設定される、
請求項4に記載の切断装置。
【請求項6】
前記カッターは、前記ウェブの搬送方向と交差する方向に移動することによって前記ウェブを全幅に渡って切断する移動式のカッターである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の切断装置。
【請求項7】
少なくとも堆積された繊維を含むウェブが搬送される搬送経路に設けられ、前記ウェブを切断するカッターと、前記カッターを、前記ウェブの搬送方向に移動させるボールねじ機構と、を備える切断装置による切断方法であって、
前記ウェブの搬送中に、前記ボールねじ機構により前記カッターが前記ウェブの搬送方向に移動しながら、前記カッターにより前記ウェブを前記搬送方向と交差する方向に切断する、
切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断装置、および切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維体が搬送される搬送経路に設けられ、繊維体を切断する切断装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、繊維を堆積させたウェブからシートを再生する乾式のシート再生技術、および、搬送方向に移動しない切断装置が開示される。ウエットティッシュの原紙束を搬送方向と交差する方向に切断する切断装置には、クランク機構を用いて搬送方向に移動する構成が開示される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-085264号公報
【特許文献2】特開2003-085264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウェブを切断する切断装置を製作しようとした場合、特許文献2のクランク機構を採用すれば、ウェブの送りを中断させずにウェブを搬送方向と交差する方向に切断可能になる。
しかし、切断中の搬送距離が大きくなるほどクランク機構が大型化するため、広い配置スペースが必要になる。そのため、ウェブの送りを中断させずにウェブを切断可能にしながら、切断中の搬送距離が大きくても配置スペースを低減することは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、少なくとも堆積された繊維を含むウェブが搬送される搬送経路に設けられ、前記ウェブを切断する切断装置において、前記ウェブを切断するカッターと、前記カッターを、前記ウェブの搬送方向に移動させるボールねじ機構と、を備え、前記カッターは、前記ウェブの搬送中に、前記ボールねじ機構により前記ウェブの搬送方向に移動しながら、前記ウェブを前記搬送方向と交差する方向に切断する。
【0006】
本開示の一態様は、少なくとも堆積された繊維を含むウェブが搬送される搬送経路に設けられ、前記ウェブを切断するカッターと、前記カッターを、前記ウェブの搬送方向に移動させるボールねじ機構と、を備える切断装置による切断方法であって、前記ウェブの搬送中に、前記ボールねじ機構により前記カッターが前記ウェブの搬送方向に移動しながら、前記カッターにより前記ウェブを前記搬送方向と交差する方向に切断する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る切断装置を備えるシート製造装置の概要構成図。
【
図2】切断装置を第2ウェブの搬送経路と共に示す図。
【
図6】
図3および
図4のステップS2~S4の状態を異なる方向から示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0009】
[1.シート製造装置の構成]
図1は、本実施形態に係る切断装置を備えるシート製造装置10の概要構成図である。
シート製造装置10は、繊維を含む原料を解繊した解繊物を堆積させてウェブを形成し、ウェブからシートを再生又は製造する乾式のシート再生処理を行うための装置である。繊維を含む原料は、例えば、紙、パルプ、パルプシート、不織布を含む布、或いは織物等である。なお、ウェブは少なくとも、堆積された繊維からなる繊維体を有する。ウェブは繊維体に加えて、繊維体の上下に設けられる薄膜の保持レイヤーを含んでもよい。また、繊維体の内部に吸湿性能などを持つ機能性粉体を含有させてもよい。
図1に示すように、シート製造装置10は、解繊部20と、選別部40と、第1ウェブ形成部45と、回転体49と、混合部50と、堆積部60と、第2ウェブ形成部70と、切断装置90と、を備えている。
【0010】
切断装置90の下流には、切断装置90によって切断されたウェブを受け取る受け取り部100が設けられる。受け取り部100は、例えば、切断されたウェブからシートを形成するシート形成装置であり、より具体的には、ウェブを加圧および加熱等してシートに成形する装置である。なお、受け取り部100はシート形成装置に限定されない。例えば、シート形成装置を切断装置90から離間した場所に配置する場合、受け取り部100は、ウェブを一時的に保管する保管装置でもよい。
【0011】
解繊部20は、裁断された原料を解繊する。原料は、例えば、大気中等の気中で裁断して細片とされた後に、解繊部20に供給される。原料は、廃棄紙等の使用済みのものであってもよいし、未使用のものであってもよい。廃棄紙とは、いわゆる古紙をいう。
ここで、「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる原料を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。原料とは粗砕片を指し、被解繊物ともいう。解繊部20は、原料に付着した樹脂粒やインク、トナー、にじみ防止剤等の物質を繊維から分離させる機能も有する。
【0012】
解繊部20で解繊されたものは「解繊物」に相当する。「解繊物」は、解きほぐされた繊維の他に、繊維を解きほぐす際に繊維から分離した樹脂粒や、インク、トナー等の色剤や、にじみ防止剤、紙力増強剤等の添加剤を含む場合がある。解繊物は、ひも状である。解繊物は、解きほぐされた他の繊維と絡み合っていない状態、すなわち独立した状態で存在してもよいし、解きほぐされた他の繊維と絡み合って塊状となった状態、すなわちダマを形成している状態で存在してもよい。
【0013】
解繊部20は、乾式で解繊を行う。液体中ではなく、大気中等の気中において、解繊や堆積等の処理を行うことを乾式と称する。解繊部20は、例えば、インペラーミルを用いて解繊を行う構成であるが、この構成に限定されるものではない。解繊部20は、細断された原料を吸引し、解繊物を排出するような気流を発生させる機能を有する。これにより、解繊部20は、自ら発生する気流によって、解繊物を排出口24へと搬送する。解繊物は、管3を介して選別部40に移送される。なお、解繊部20から選別部40に解繊物を搬送させるための気流は、解繊部20が発生させる気流に限定されず、ブロアー等の気流発生装置を設け、その気流を利用してもよい。
【0014】
選別部40は、解繊物を導入口42から導入し、繊維の長さによって選別する。選別部40の構成は特に限定されるものではないが、本実施形態の選別部40は、ドラム部41と、ドラム部41を収容するハウジング部43と、を有する構成である。ドラム部41には、例えば、モーターによって回転駆動される円筒の篩を用いる。ドラム部41は、網を有し、網の目開きの大きさより小さい繊維または粒子、すなわち網を通過する第1選別物と、網の目開きの大きさより大きい繊維や未解繊片やダマ、すなわち網を通過しない第2選別物とを分けることができる。第1選別物は、管7を介して堆積部60に移送される。第2選別物は、排出口44から管8を介して解繊部20に戻される。
【0015】
切断ウェブ押出制御選別部40を通過した第1選別物を、管7に搬送する。図示の例では、第1ウェブ形成部45は、メッシュベルト46と、張架ローラー47と、サクション機構48と、を有した構成であるが、この構成に限定されるものではない。
【0016】
サクション機構48は、選別部40の開口を通過して空気中に分散された第1選別物をメッシュベルト46上に吸引する。第1選別物は、移動するメッシュベルト46上に堆積し、ウェブVを形成する。メッシュベルト46、張架ローラー47、およびサクション機構48の基本的な構成は、後述する第2ウェブ形成部70のメッシュベルト72、張架ローラー74、およびサクション機構76と同様である。
【0017】
ウェブVは、選別部40および第1ウェブ形成部45を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態に形成される。メッシュベルト46に堆積されたウェブVは、管7へ投入され、堆積部60へと搬送される。
【0018】
回転体49は、回転によってウェブVを切断する。回転体49の構成は特に限定されるものではないが、本実施形態では、基部49aと、基部49aから放射方向に突出する複数の突部49bと、を有する構成である。突部49bは、例えば、板状の羽形状に形成されている。基部49aが
図1中の方向Rに回転することにより、突部49bが基部49aを中心に回転し、ウェブVを切断可能である。
【0019】
回転体49は、ウェブVの経路の下流側に位置する張架ローラー47aの近傍に設けられることにより、第1ウェブ形成部45の下流に位置する。回転体49は、突部49bがウェブVと接触可能な位置であって、ウェブVが堆積されるメッシュベルト46と接触しない位置に設けられる。
【0020】
混合部50は、選別部40を通過した第1選別物と、添加物とを混合する。混合部50は、添加物を供給する添加物供給部52と、第1選別物と添加物とを搬送する管54と、ブロアー56と、を有する。添加物は、添加物供給部52からホッパー9を介して管54に供給される。管54は、管7と連続している。
【0021】
混合部50では、ブロアー56によって気流を発生させ、管54中において、第1選別物と添加物とを混合させながら、搬送することができる。なお、第1選別物と添加物とを混合させる構成は特に限定されるものではないが、例えば、高速回転する羽根により攪拌する構成、又は、V型ミキサーのように容器の回転を利用する構成である。
【0022】
添加物供給部52は、例えば、スクリューフィーダーやディスクフィーダーによって添加物を供給する構成であるが、この構成に限定されるものではない。添加物供給部52から供給される添加物は、例えば、複数の繊維を結着させる結着剤である。添加物供給部52から供給される添加物は、製造されるシートの種類に応じて、繊維を着色するための着色剤や、繊維の凝集や添加物の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃え難くするための難燃剤等を含んでもよい。混合部50を通過した混合物は、管54を介して堆積部60に移送される。
【0023】
堆積部60は、混合部50を通過した混合物を導入口62から導入し、絡み合った解繊物をほぐして、空気中で分散させながら降らせる。堆積部60は、解繊物を乾式で堆積させ、柔らかい状態のウェブからなる第2ウェブWを形成する。このように、堆積部60で形成される第2ウェブWは未圧縮の繊維体からなる。
【0024】
さらに、堆積部60は、添加物供給部52から供給される添加物の樹脂が繊維状である場合、絡み合った樹脂をほぐす。これにより、堆積部60は、第2ウェブ形成部70に、混合物を均一性よく堆積させることができる。
堆積部60の構成は特に限定されるものではないが、本実施形態では、堆積部60は、ドラム部61と、ドラム部61を収容するハウジング部63と、を有する構成である。ドラム部61には、例えば、モーターによって回転駆動される円筒の篩を用いる。ドラム部61は、網を有し、混合部50を通過した混合物に含まれる、網の目開きの大きさより小さい繊維または粒子を降らせる。
【0025】
なお、ドラム部61の「篩」は、特定の対象物を選別する機能を有していなくてもよい。すなわち、ドラム部61として用いられる「篩」とは、網を備えたもの、という意味であり、ドラム部61は、ドラム部61に導入された混合物の全てを降らしてもよい。
【0026】
第2ウェブ形成部70は、堆積部60を通過した通過物が堆積されて第2ウェブWを形成すると共に、第2ウェブWを搬送する搬送経路の少なくとも一部を構成する。第2ウェブ形成部70の構成は特に限定されるものではないが、本実施形態では、メッシュベルト72と、張架ローラー74と、サクション機構76と、を有する構成である。
【0027】
メッシュベルト72には、堆積部60の開口を通過した通過物が堆積される。メッシュベルト72は、張架ローラー74によって張架され、通過物を通し難く空気を通す構成となっている。メッシュベルト72は、張架ローラー74が自転することによって移動する。メッシュベルト72が連続的に移動しながら、堆積部60を通過した通過物が連続的に降り積もることにより、メッシュベルト72上に、柔らかく未圧縮の状態の第2ウェブWが形成される。
【0028】
サクション機構76は、メッシュベルト72の下方に設けられ、堆積部60により空気中に分散された通過物をメッシュベルト72上に吸引し、第2ウェブWの形成を促進する。これにより、堆積部60からの排出速度を大きくすると共に、混合物の落下経路にダウンフローを形成し、落下中に解繊物や添加物が絡み合うことを防ぐことができる。
【0029】
以上のように、堆積部60および第2ウェブ形成部70を経ることにより、空気を多く含み柔らかく未圧縮の状態の第2ウェブWが形成される。
切断装置90は、第2ウェブWの搬送経路に設けられ、搬送中のウェブWを切断する。なお、シート製造装置10には、解繊物に水分を付与する水分付与部が設けられる場合がある。水分付与部によって第2ウェブWの含水率を所定範囲に調整することで、解繊物に含まれる複数の繊維を水素結合によって結着させることができる。
【0030】
[2.切断装置の構成]
図2は、切断装置90を第2ウェブWの搬送経路と共に示す図である。
図2中の符号Dは第2ウェブWの搬送方向を示す。
切断装置90は、カッターユニット91と、ボールねじ機構92と、上流側搬送機構93と、下流側搬送機構94と、切断装置90の動作を制御する制御部95と、を備える。
カッターユニット91は、第2ウェブ切断用のカッター91aと、カッター91aを移動するカッター移動機構91bと、を備え、これらは移動フレーム91cを介して第2ウェブWの上方に支持される。
【0031】
カッター91aは、第2ウェブWを、第2ウェブWの幅方向に沿って切断するために用いられる刃であり、本実施形態では、第2ウェブWの全幅よりも短い直径を有する回転刃である。カッター91aは、移動フレーム91cに支持されたカッター用のモーター91dによって回転駆動される。
カッター移動機構91bは、カッター91aを上下方向および左右方向に移動させる機構である。なお、上下方向および左右方向は、切断装置90を基準にした方向である。上下方向は、カッター91aを第2ウェブW側に進退させる方向に相当し、左右方向は、第2ウェブWの幅方向に相当し、換言すると、第2ウェブWの切断方向に相当する。
【0032】
カッター移動機構91bの構成は特に限定されるものではないが、例えば、ラック&ピニオンを用いた直線往復運動機構、および、直動アクチュエータを用いた機構等の公知の機構を組み合わせて構成される。
移動フレーム91cは、上下方向に延びる柱材、および水平方向に延びる横架材等を組み合わせて構成され、カッターユニット91に加えて、上流側搬送機構93を支持する。この移動フレーム91cは、切断装置90の基台として機能するベースフレーム91fに支持されると共に、ベースフレーム91fに対し、ボールねじ機構92によって第2ウェブWの搬送方向に移動する移動台として機能する。
【0033】
ボールねじ機構92は、第2ウェブWの搬送経路の下方に配置され、ベースフレーム91fに支持される。ボールねじ機構92は、第2ウェブWの搬送方向に延びるボールねじ92aを有し、このボールねじ92aは、ボールねじ92aの一端側に設けられたボールねじ用のモーター92bによって回転駆動される。
なお、移動フレーム91cは、例えば、直動ガイドによって第2ウェブWの搬送方向、および、その逆方向に移動自在に支持されると共に、ボールねじ92aに螺合するナットユニットに連結される。ナットユニットが、ボールねじ92aの回転に応じてボールねじ92aの軸方向、つまり、第2ウェブWの搬送方向又はその逆方向に移動することにより、移動フレーム91cが第2ウェブWの搬送方向又はその逆方向に移動する。ボールねじ92aの回転量、回転方向および回転速度の制御によって、移動フレーム91cの位置、移動方向および移動速度が制御される。
図2中の符号STは、移動フレーム91cの移動範囲、換言すると、移動ストロークを示している。
【0034】
上流側搬送機構93は、カッター91aの上流に位置し、第2ウェブWを挟んで対向配置される上下の搬送ローラー93a,93bを備える。上下の搬送ローラー93a,93bの少なくとも一方が回転駆動されることによって、搬送ローラー93a,93b間の第2ウェブWを搬送方向に搬送可能である。各搬送ローラー93a,93bは、第2ウェブWの全幅に渡って延在する回転ローラーに形成される。上側の搬送ローラー93aについては、上下方向に移動する可動ローラーに構成されており、これによって第2ウェブW側に進退自在である。
移動フレーム91cには、カッターユニット91と、上流側搬送機構93と、これらを駆動するための駆動源等が支持されるので、これらは一体的に第2ウェブWの搬送方向、および、その逆方向に移動する。
【0035】
下流側搬送機構94は、カッター91aの下流に位置し、切断装置90のベースフレーム91fに支持される。下流側搬送機構94は、第2ウェブWを狭持する場合の一方側に相当する下方に配置されるベルト機構94aと、第2ウェブWを狭持する場合の他方側に相当する上方に配置される搬送ローラー94bと、を備える。ベルト機構94aは、第2ウェブWの全幅に渡って延在するベルト94cと、ベルト94cを搬送する駆動ローラーおよび従動ローラーからなるローラー群94dを備え、駆動ローラーが回転駆動することによってベルト94cが第2ウェブWの搬送方向に移動する。
【0036】
搬送ローラー94bは、第2ウェブWの全幅に渡って延在する回転ローラーであり、上下方向に移動する可動ローラーに構成され、これによって第2ウェブW側に進退自在である。搬送ローラー94bが下降することによって、搬送ローラー94bとベルト機構94aによって第2ウェブWを挟む。第2ウェブWを挟んだ状態でベルト機構94aおよび搬送ローラー94bが駆動されることによって、ベルト機構94aおよび搬送ローラー94b間の第2ウェブWを搬送方向に搬送できる。
【0037】
制御部95は、切断装置90の各部を制御する機能を有し、少なくともカッターユニット91、ボールねじ機構92、上流側搬送機構93、および、下流側搬送機構94のそれぞれの駆動源となるモーター等を制御する。制御部95は、プロセッサー95aとメモリー95bと、を備える。
プロセッサー95aは、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)等を備える演算処理装置である。メモリー95bは、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリー、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の記憶デバイスであり、制御プログラム等のデータを記憶する。
【0038】
制御部95では、プロセッサー95aがメモリー95bに記憶された制御プログラムを実行する。これにより、制御部95は、第2ウェブWの搬送および切断に関する指示や情報を入力し、公知のモーションコントロール技術を利用して、第2ウェブWの搬送に同期して切断装置90の各部の動きを制御する。
【0039】
プロセッサー95aは、単一のプロセッサーにより構成してもよいし、複数のプロセッサーにより構成してもよい。また、プロセッサー95aは、メモリー95bの一部又は全部や、その他の回路と統合されたSoCにより構成してもよい。また、プロセッサー95aは、プログラムを実行するCPUと、所定の演算処理を実行するDSP(Digital Signal Processor)との組合せにより構成してもよい。また、プロセッサー95aの機能の全てをハードウェアに実装した構成としてもよく、プログラマブルデバイスを用いて構成してもよい。
【0040】
[3.切断装置の動作]
図3~
図5は切断装置90の動作を時系列順で示す図である。
図6は、
図3および
図4のステップS2~S4の状態を異なる方向から示す図である。
本実施形態では、第2ウェブWは連続送りされる。そのため、切断装置90に向けた第2ウェブWの送りは中断されず、第2ウェブWは予め定めた搬送速度で継続して搬送される。
【0041】
図3に示すステップS1は、切断装置90が切断動作を開始する前の状態である。ステップS1において、制御部95は、カッターユニット91を第2ウェブWから待避した上昇位置に保持すると共に、ボールねじ機構92によりカッターユニット91を移動ストロークSTのうちの上流位置に保持する。
また、制御部95は、上流側搬送機構93については、可動ローラーである上側の搬送ローラー93aを第2ウェブWに接触する下位置に移動し、ボールねじ機構92が動作するまで搬送ローラー93aが回転駆動する。さらに、制御部95は、下流側搬送機構94については、可動ローラーである上側の搬送ローラー94bを第2ウェブWに接触する下位置に移動し、ベルト機構94aおよび搬送ローラー94bを駆動することにより、第2ウェブWを下流側に搬送する。
【0042】
第2ウェブWが、カッターユニット91でカットを開始するカット開始位置へ搬送されると、
図3のステップS2およびS3に示すように、制御部95は、ボールねじ機構92によりカッターユニット91を第2ウェブWと同速度で搬送方向に移動させるのに同期して、カッターユニット91を下降させて第2ウェブWの切断を開始する。なお、この間、搬送ローラー93aおよび93aは停止している。この場合、制御部95は、カッター91aを回転駆動すると共に、
図6に示すように、カッター91aを第2ウェブWの幅方向一方側から幅方向他方側へと移動させる。
【0043】
カッター91aを第2ウェブWの全幅に渡って移動する間、カッター91aは搬送速度と同速度で移動するので、第2ウェブWの送りを中断することなく、第2ウェブWを幅方向に沿って一直線に切断する。この場合、制御部95は、少なくとも第2ウェブWの切断が完了し、カッター91aが上方に退避するまで、少なくとも下流側搬送機構94のベルト機構94aおよび搬送ローラー94bの双方で第2ウェブWの搬送を継続する。
【0044】
第2ウェブWの切断が完了すると、制御部95は、ボールねじ機構92の駆動を停止し、
図4のステップS4に示すように、カッターユニット91を上昇させて第2ウェブWから待避した位置にする。また、
図4のステップS4およびS5に示すように、制御部95は、下流側搬送機構94の上側の搬送ローラー94bを上昇させ、第2ウェブWの切断箇所Cが搬送ローラー94bに接触しないようにする。
このステップS4およびS5の間、上流側搬送機構93、および、下流側搬送機構94のベルト機構94aにより、第2ウェブWの搬送は継続される。
【0045】
第2ウェブWの切断箇所Cが搬送ローラー94bの位置を通過すると、制御部95は、下流側搬送機構94により、切断箇所Cよりも上流の第2ウェブWによって、切断された第2ウェブWを搬送方向下流側に押し出す制御を開始する。この押し出す制御を、「切断ウェブ押出制御」と表記し、
図4および
図5のステップS6~S8に示している。
この切断ウェブ押出制御では、上側の搬送ローラー94bを下降させて、切断箇所Cよりも上流の第2ウェブWをベルト機構94aおよび搬送ローラー94bで狭持し、ベルト機構94aおよび搬送ローラー94bの双方を所定期間回転させる。
【0046】
これにより、切断された第2ウェブWを、切断位置よりも上流の第2ウェブWで下流側に押し出すことができる。押し出された第2ウェブWは、搬送ローラー94bよりも下流まで延在するベルト機構94aによって下流に向けて搬送される。
ここで、所定期間は、下流に位置する受け取り部100が、切断された第2ウェブWを保持するまでの予め設定された期間に設定される。これにより、受け取り部100が、切断された第2ウェブWを確実に受け取ることができる。そのため、例えば、受け取り部100がシート形成装置の場合、切断された第2ウェブWを加圧および加熱等してシートに成形する処理をスムーズに開始できる。
【0047】
なお、切断ウェブ押出制御の間、制御部95は、ボールねじ機構92によりカッターユニット91を第2ウェブWの搬送方向と逆方向に移動させることにより、
図5のステップS8に示すように、カッターユニット91を移動ストロークSTのうちの上流位置まで移動させる。
カッターユニット91を移動ストロークSTの上流位置に移動する間、制御部95は、上流側搬送機構93の上側の搬送ローラー93aを上昇させる。これによって、カッターユニット91と一体に移動する搬送ローラー93aが、第2ウェブWに接触しないようにできる。以上が切断動作である。
この切断動作が、第2ウェブWの搬送と同期して所定のタイミングで繰り返し実行されることにより、第2ウェブWが所定の長さ単位で切断される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る切断装置90は、少なくとも堆積された繊維を含む第2ウェブWを切断するカッター91aと、カッター91aを、第2ウェブWの搬送方向に移動させるボールねじ機構92と、カッター91aとボールねじ機構92の動作を制御する制御部95とを備える。そして、制御部95は、第2ウェブWの搬送中に、ボールねじ機構92によりカッター91aを第2ウェブWの搬送方向に移動させながら、カッター91aにより第2ウェブWを幅方向に沿って切断させる。これにより、第2ウェブWの搬送中に、ボールねじ機構92によりカッター91aが第2ウェブWの搬送方向に移動しながら、カッター91aにより第2ウェブWを搬送方向と交差する幅方向に切断する。
この構成によれば、第2ウェブWの送りを中断させずに、第2ウェブWを搬送方向と交差する方向に切断できる。また、ボールねじ機構92を利用するので、切断中の搬送距離が大きくなる場合でも、ストローク長の大きいボールねじ機構92を適用すればよく、ストローク方向以外に配置スペースを拡げずに済む。したがって、第2ウェブWの送りを中断させずに第2ウェブWを切断可能にしながら、切断中の搬送距離が大きくても配置スペースを低減することが可能になる。
【0049】
また、切断装置90は、第2ウェブWを搬送する搬送ローラー93a,93bを備えるので、切断装置90側でも第2ウェブWの保持と搬送を行うことができる。しかも、搬送ローラー93a,93bによって第2ウェブWを搬送面に適度に押さえることができ、搬送や切断を良好にする効果も期待できる。
【0050】
また、上流側搬送機構93の搬送ローラー93aは、第2ウェブWから待避可能な可動ローラーに構成され、この可動ローラーは、カッター91aが第2ウェブWの搬送方向上流側に移動する間、第2ウェブWから待避する。この構成によれば、カッター91aが第2ウェブWの搬送方向上流側に移動する間、搬送ローラー93aが第2ウェブWの搬送を妨げない。そのため、搬送ローラー93aとカッター91aとを一体に移動可能に構成でき、搬送ローラー93aとカッター91aとを近接させた配置が可能である。
【0051】
また、下流側搬送機構94は、カッター91aの下流側に設けられ、第2ウェブWの切断後に第2ウェブWを搬送する。この構成によれば、第2ウェブWの切断後に、カッター91aの下流側の第2ウェブWを搬送できる。
なお、本実施形態では、
図5のステップS7に示したように、切断箇所Cよりも上流の第2ウェブWを搬送することによって切断された第2ウェブWを押し出す場合を例示したが、この搬送ローラー94bが、切断箇所Cよりも下流の第2ウェブWを直接搬送するように構成してもよい。
【0052】
また、第2ウェブWの切断後に第2ウェブWを搬送する所定期間は、下流に位置する受け取り側である受け取り部100が、切断された第2ウェブWを保持するまでの期間に設定される。この構成によれば、切断された第2ウェブWを、受け取り側が受け取りやすくなり、次の工程、例えば、切断された第2ウェブWを加圧および加熱等してシートに成形する処理をスムーズに開始できる。
【0053】
また、カッター91aは、第2ウェブWの搬送方向と交差する方向に移動することによって第2ウェブWを全幅に渡って切断する移動式のカッター91aである。この構成によれば、相対的に小型のカッター91aで幅広の第2ウェブWを切断でき、カッター91aを有する箇所の小型化、カッター91aの選定自由度の向上、および、第2ウェブWの幅の自由度向上等に有利である。また、より小型のカッター91aを用いたり、切断時のカッター91aの移動速度を遅くしたりすることで、切断中の第2ウェブWの搬送距離がより大きくなっても、カッター91aの移動ストロークの変更等で容易に対応できる。
【0054】
本実施形態は、一態様を示すものであり。本発明の趣旨に逸脱しない範囲内で任意に変形および応用が可能である。例えば、
図1に示すシート製造装置10に使用される切断装置90、および、この切断装置90による切断方法に本発明を適用する場合を説明したが、これに限定されず、繊維を堆積させたウェブを切断する任意の切断装置、および、この切断装置による切断方法に本発明を適用してもよい。
また、切断装置90の各部のレイアウト、および形状等を適宜に変更してもよく、一部の構成を備えていなくてもよい。例えば、第2ウェブWを適切に切断できる範囲で、切断装置90を、上流側搬送機構93、および下流側搬送機構94のいずれかを備えない構成にしてもよい。
【0055】
また、カッター91aが、第2ウェブWを幅方向に沿って切断する場合を説明したが、これに限定されず、カッター91aが、第2ウェブWの搬送方向と交差する方向に切断する構成であればよく、例えば、カッター91aが、第2ウェブWを搬送方向に対して傾斜する角度で切断する構成にしてもよい。
【0056】
また、
図3から
図5等に示す切断装置90の動作は一例であり、切断装置90の各部の動作内容および動作順等を適宜に変更してもよい。また、制御部95は、切断装置90専用の制御部に限定されず、他の装置の制御部が兼ねてもよいし、カッター91aやボールねじ機構92等の動作を制御する制御主体は、適宜に変更可能である。
【0057】
[4.本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
(付記1)少なくとも堆積された繊維を含むウェブが搬送される搬送経路に設けられ、前記ウェブを切断する切断装置であって、前記ウェブを切断するカッターと、前記カッターを、前記ウェブの搬送方向に移動させるボールねじ機構と、を備え、前記ウェブの搬送中に、前記ボールねじ機構により前記カッターが前記ウェブの搬送方向に移動しながら、前記カッターにより前記ウェブを前記搬送方向と交差する方向に切断する、切断装置。
【0058】
この構成によれば、ウェブの送りを中断させずに、ウェブを搬送方向と交差する方向に切断できる。また、切断中の搬送距離が大きい場合、ストローク長の大きいボールねじ機構を適用すればよく、ストローク方向以外に配置スペースを拡げずに済む。したがって、ウェブの送りを中断させずにウェブを切断可能にしながら、切断中の搬送距離が大きくても配置スペースを低減することができる。
【0059】
(付記2)前記ウェブを搬送する搬送ローラーを備える、付記1に記載の切断装置。
【0060】
この構成によれば、切断装置側でのウェブの搬送を円滑化できる。
【0061】
(付記3)前記搬送ローラーは、前記ウェブから待避可能な可動ローラーを含み、前記可動ローラーは、前記カッターが前記ウェブの搬送方向上流側に移動する間、前記ウェブから待避する、付記2に記載の切断装置。
【0062】
この構成によれば、カッターがウェブの搬送方向上流側に移動する間、搬送ローラーがウェブの搬送を妨げないので、搬送ローラーとカッターとを一体に移動可能に構成でき、搬送ローラーとカッターとを近接させた配置が可能である。
【0063】
(付記4)前記搬送ローラーは、前記カッターの下流側に設けられ、前記ウェブの切断後に、所定期間回転することで前記ウェブを搬送する、付記2に記載の切断装置。
【0064】
この構成によれば、ウェブの切断後に、カッターの下流側のウェブを搬送できる。
【0065】
(付記5)前記所定期間は、下流に位置する受け取り側が、切断された前記ウェブを保持するまでの期間に設定される、付記4に記載の切断装置。
【0066】
この構成によれば、切断されたウェブを、受け取り側が受け取りやすくなり、次の工程をスムーズに開始できる。
【0067】
(付記6)前記カッターは、前記ウェブの搬送方向と交差する方向に移動することによって前記ウェブを全幅に渡って切断する移動式のカッターである、付記1から5のいずれか一項に記載の切断装置。
【0068】
この構成によれば、相対的に小型のカッターで幅広のウェブを切断でき、カッターを有する箇所の小型化、カッターの選定自由度の向上、および、ウェブの幅の自由度向上等に有利である。
【0069】
(付記7)少なくとも堆積された繊維を含むウェブが搬送される搬送経路に設けられ、前記ウェブを切断するカッターと、前記カッターを、前記ウェブの搬送方向に移動させるボールねじ機構と、を備える切断装置による切断方法であって、前記ウェブの搬送中に、前記ボールねじ機構により前記カッターが前記ウェブの搬送方向に移動しながら、前記カッターにより前記ウェブを前記搬送方向と交差する方向に切断する、切断方法。
【0070】
この切断方法によれば、ウェブの送りを中断させずにウェブを切断可能にしながら、切断中の搬送距離が大きくても配置スペースを低減することができる。
【符号の説明】
【0071】
10…シート製造装置、90…切断装置、91…カッターユニット、91a…カッター、91b…カッター移動機構、91c…移動フレーム、91d…カッター用のモーター、91f…ベースフレーム、92…ボールねじ機構、92a…ボールねじ、92b…ボールねじ用のモーター、93…上流側搬送機構、93a,93b…上流側搬送機構の搬送ローラー、94…下流側搬送機構、94a…下流側搬送機構のベルト機構、94b…下流側搬送機構の搬送ローラー、95…制御部、100…受け取り部(受け取り側)、W…第2ウェブ。