(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125607
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】施工図生成支援システム、施工図生成支援方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20240911BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20240911BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033529
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】宮岡 香苗
(72)【発明者】
【氏名】松下 文哉
(72)【発明者】
【氏名】連 勝
(72)【発明者】
【氏名】土田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】荒木 尚幸
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DE03
5B146DE12
5B146DE13
5B146DJ02
5B146DJ07
5B146EA15
(57)【要約】
【課題】3次元配筋モデルの作成にかかる負担を軽減し、施工図の作成を効率的に行う。
【解決手段】鉄筋コンクリート構造物に配筋される鉄筋に関する施工図データの生成を支援する施工図生成支援システムであって、構築対象の鉄筋コンクリート構造物について構造解析が行われることで必要な鉄筋の径とピッチとが求められた構造解析データに応じて作成され、用いられる鉄筋と、当該鉄筋を配筋する条件とが定められた施工図作成指示書データに基づいて、前記構築対象の鉄筋コンクリート構造物に対応する3次元の配筋モデルである3次元配筋施工図データを生成する施工図データ生成部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造物に配筋される鉄筋に関する施工図データの生成を支援する施工図生成支援システムであって、
構築対象の鉄筋コンクリート構造物について構造解析が行われることで必要な鉄筋の径とピッチとが求められた構造解析データに応じて作成され、用いられる鉄筋と、当該鉄筋を配筋する条件とが定められた施工図作成指示書データに基づいて、前記構築対象の鉄筋コンクリート構造物に対応する3次元の配筋モデルである3次元配筋施工図データを生成する施工図データ生成部
を有する施工図生成支援システム。
【請求項2】
前記配筋モデルは、鉄筋の径と長さを表すデータが含まれる
を有する請求項1に記載の施工図生成支援システム。
【請求項3】
前記3次元配筋施工図データに基づいて、前記鉄筋を径毎に長さと本数について集計する集計部と、
前記集計された結果に含まれる鉄筋の長さと本数とに基づいて、資材として必要な鉄筋の本数と、当該資材である鉄筋から、施工時に必要な長さの鉄筋を切り出すための割り当て計画を生成するカッティングプラン生成部
を有する請求項2に記載の施工図生成支援システム。
【請求項4】
鉄筋コンクリート構造物に配筋される鉄筋に関する施工図データの生成を支援する施工図生成支援方法であって、
施工図データ生成部が、構築対象の鉄筋コンクリート構造物について構造解析が行われることで必要な鉄筋の径とピッチとが求められた構造解析データに応じて作成され、用いられる鉄筋と、当該鉄筋を配筋する条件とが定められた施工図作成指示書データに基づいて、前記構築対象の鉄筋コンクリート構造物に対応する3次元の配筋モデルである3次元配筋施工図データを生成する
施工図生成支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工図生成支援システム、施工図生成支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート構造物の設計では、まず、概略的な設計を行い、次に構造解析、詳細設計、力学的照査等の作業を行った後、関連基準に規定される構造細目の各項目に関する設計照査を行っている。この照査においては、鉄筋を配筋した立面図、断面図、側面図の整合性を確認するために、配筋の3次元形状をコンピュータ上で再現した3次元モデルを3次元CADで作成している。CAD画面上に表示した3次元モデルは、視点を切り替えることで任意の角度から配置を確認することができる。このため、鉄筋形状に対する視認性が向上し、施工性に関する検討が容易になり、また、鉄筋どうしの干渉などのチェックも容易になる。照査を行うにあたり、3次元CADを利用して構造物の設計図、数量計算書の作成および照査を行う方法がある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コンピュータを用いて照査を行う場合、配筋の3次元形状を表す3次元配筋施工図モデルが必要となる。躯体の外形を示す設計図や、構造解析が行われた結果に基づく基本設計図を基に、設計者が現場の施工計画に応じて配筋施工図を検討する。そしてモデル作成者は、設計者が作成した配筋施工図の検討結果を元に、3次元モデリングツールを利用して3次元の配筋施工図モデルを作成している。このような3次元配筋施工図モデルは、配筋の詳細情報を含むためモデルが煩雑となり、モデル作成における設計者およびモデル作成者にかかる負担が大きい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、3次元配筋施工図モデルの作成にかかる負担を軽減し、施工図の作成を効率的に行うことが可能な施工図生成支援システム、施工図生成支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、鉄筋コンクリート構造物に配筋される鉄筋に関する施工図データの生成を支援する施工図生成支援システムであって、構築対象の鉄筋コンクリート構造物について構造解析が行われることで必要な鉄筋の径とピッチとが求められた構造解析データに応じて作成され、用いられる鉄筋と、当該鉄筋を配筋する条件とが定められた施工図作成指示書データに基づいて、前記構築対象の鉄筋コンクリート構造物に対応する3次元の配筋モデルである3次元配筋施工図データを生成する施工図データ生成部を有する施工図生成支援システムである。
【0007】
また、本発明の一態様は、鉄筋コンクリート構造物に配筋される鉄筋に関する施工図データの生成を支援する施工図生成支援方法であって、施工図データ生成部が、構築対象の鉄筋コンクリート構造物について構造解析が行われることで必要な鉄筋の径とピッチとが求められた構造解析データに応じて作成され、用いられる鉄筋と、当該鉄筋を配筋する条件とが定められた施工図作成指示書データに基づいて、前記構築対象の鉄筋コンクリート構造物に対応する3次元の配筋モデルである3次元配筋施工図データを生成する施工図生成支援方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、3次元配筋施工図モデルの作成にかかる負担を軽減し、施工図の作成を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の一実施形態による施工図生成支援システムSの構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】鉄筋形状リスト記憶部111bに記憶されるリストの一例を示す図である。
【
図3】施工図生成支援システムSの処理の流れを表す概念図である。
【
図4】施工図生成支援システムSの処理の流れを表すフローチャートである。
【
図5】3次元配筋施工図データ生成部122が3次元配筋施工図データを生成する処理をより詳しく説明するフローチャートである。
【
図7】対象躯体と施工図作成指示書データとの関係を説明する概念図である。
【
図8】カッティングプランデータを生成する処理を説明するフローチャートである。
【
図9】カッティングプランデータを生成する処理の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による施工図生成支援システムについて図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態による施工図生成支援システムSの構成を示す概略ブロック図である。
施工図生成支援システムSは、記憶部11、演算部12、入力部13、出力部14を含む。施工図生成支援システムSは、鉄筋コンクリート構造物に配筋される鉄筋に関する施工図データの生成を支援することができる。
記憶部11は、各種データを記憶する。記憶部11は、躯体モデル記憶部111a、基本設計図データ記憶部112、3次元配筋施工図モデル記憶部113、カッティングプラン記憶部114を含む。
【0011】
躯体モデル記憶部111aは、施工対象の鉄筋コンクリート構造物を表すデータである躯体モデルを記憶する。この躯体モデルは、例えば、BIM(Building Information Modeling)データである。躯体モデルは、例えば、鉄筋コンクリート構造物の外形等を表す。躯体モデルには、配筋に関する具体的なデータは含まれていなくてもよい。
【0012】
鉄筋形状リスト記憶部111bは、鉄筋の形状を種類毎に表すリストを記憶する。
図2は、鉄筋形状リスト記憶部111bに記憶されるリストの一例を示す図である。
リストは、形状を識別する形状識別情報と、鉄筋の形状と、鉄筋の寸法を表す変数とが対応付けられたデータである。例えば、形状識別番号が「No.1」である鉄筋は、その形状がL字状であり、短手部の寸法を表す変数が「A」であり、長手部の寸法を表す変数が「B」であることを示している。形状識別番号が「No.2」である鉄筋は、その形状が略Z字状であり、第1端側の部位の寸法を表す変数が「A」であり、中間の部位の寸法を表す変数が「B」であり、第2端の部位の寸法を表す変数が「C」であることを示している。この図では、2種類の形状について図示されているが、3種類以上が記憶されてもよい。
鉄筋形状リスト記憶部111bに記憶されたリストのうち、形状識別番号を指定し、各変数に対する数値を指定することで、鉄筋の形状と各部の寸法を指定することができる。
【0013】
基本設計図データ記憶部112は、躯体モデル記憶部111aに記憶された躯体モデルを用いて、構造解析部121によって構造解析が行われることで生成される基本設計図データを記憶する。基本設計図データは、躯体モデルに対して、必要となる鉄筋に関するデータが含まれる。例えば、基本設計図データは、躯体モデルの定められた位置と向きに応じた異なる複数の断面のそれぞれについて、鉄筋の径、鉄筋が配置されるピッチ等を示す図面である。
【0014】
3次元配筋施工図モデル記憶部113は、構築対象の鉄筋コンクリート構造物に対応する3次元の配筋モデルである3次元配筋施工図データを記憶する。3次元配筋施工図データには、鉄筋を組み立てるために必要な各種情報(鉄筋の形状、継手の仕様・位置、補強筋等)が含まれる。
カッティングプラン記憶部114は、資材である鉄筋から、施工時に必要な長さの鉄筋を切り出すための割り当て計画を表すカッティングプランデータを記憶する。
【0015】
演算部12は、各種演算をする。演算部12は、構造解析部121、3次元配筋施工図データ生成部122、照査部123、カッティングプラン生成部124を含む。
構造解析部121は、躯体モデル記憶部111aに記憶された躯体モデルを用いて、構造解析を行うことで、基本設計図データを生成し、生成した基本設計図データを基本設計図データ記憶部112に書き込むことで記憶させる。
構造解析部121は、例えば、躯体モデルに対してFEM(finite element method)解析を行うことによって、躯体に対して設定される複数の断面毎に、当該断面においてかかる力を解析し、その解析結果に応じて当該断面における必要な鉄筋の径、ピッチ、配置位置等を求めることで、基本設計図データを生成する。基本設計図データは、躯体モデルに対して設定された断面毎に、必要な鉄筋の径、ピッチ、配置位置等が示されたデータである。
【0016】
3次元配筋施工図データ生成部122は、構築対象の鉄筋コンクリート構造物について構造解析が行われることで必要な鉄筋の径とピッチとが求められた構造解析データに応じて作成された基本設計図データを基に、施工計画を反映した配筋施工図に必要な鉄筋の情報を整理したパラメータデータを利用し、構築対象の鉄筋コンクリート構造物に対応する3次元の配筋施工図モデルである3次元配筋施工図データを生成する施工図データ生成部としての機能を有する。
3次元配筋施工図データ生成部122は、パラメトリックモデリング部1221と、3次元モデリング部1222とを有する。
【0017】
配筋施工図モデルは、現場で実際に組み立てる鉄筋の詳細を表す3次元モデルであり、鉄筋の径や鉄筋の形状に応じた寸法を表すデータが、鉄筋毎に属性データとして含まれている。
【0018】
パラメトリックモデリング部1221は、基本設計図データを基に作成した、施工計画を反映した配筋施工図に必要な鉄筋の情報を整理したパラメータデータを入力データとして入力し、パラメトリックモデリング処理を行うための鉄筋生成プログラムを実行する。
3次元モデリング部1222は、鉄筋生成プログラムの実行結果に基づいて、構築対象の鉄筋コンクリート構造物に対応する3次元の配筋施工図モデルである3次元配筋施工図データを生成する。3次元モデリング部1222は、生成した3次元配筋施工図データを3次元配筋施工図モデル記憶部113に書き込むことで記憶させる。
【0019】
照査部123は、各種照査を行う。ここでは、照査を行うにあたり、配筋モデルに含まれる鉄筋のそれぞれを識別するための識別情報を鉄筋毎に付与されている。各鉄筋に対する識別情報の付与は、演算部12が行うようにしてもよい。
【0020】
照査部123は、3次元配筋施工図データ(配筋モデル)における鉄筋オブジェクトの位置、形状およびその他の属性データに基づいて、鉄筋コンクリート構造物に配筋される鉄筋の構造細目のうちラップ長を照査する。より具体的には、3次元配筋施工図モデル記憶部113に記憶された3次元配筋施工図データ(配筋モデル)オブジェクトの位置、形状、属性データなどを参照して、配筋モデルにおいて互いに近接する鉄筋オブジェクトのラップ長を算出する。そして、この算出結果に基づいて、関連基準に規定される鉄筋のラップ長を照査する。また、照査部123は、鉄筋が他の鉄筋と干渉しているか否かの照査を行うようにしてもよい。これにより、配筋モデルがラップ長を満たすか否か、また、鉄筋同士の干渉の有無等について照査することができ、鉄筋コンクリート構造物の鉄筋に関する設計照査を効率よく行うことができる。
【0021】
カッティングプラン生成部124は、集計部1241と、プラン生成部1242とを有する。
集計部1241は、3次元配筋施工図データに基づいて、鉄筋を径毎に長さと本数について集計する。
プラン生成部1242は、集計結果に含まれる鉄筋の長さを本数に基づいて、資材として必要な鉄筋の本数と、当該資材である鉄筋から、施工するために必要な長さの鉄筋を切り出すための割り当て計画を表すカッティングプランデータを生成し、生成されたカッティングプランデータをカッティングプラン記憶部114に書き込むことで記憶させる。
【0022】
入力部13は、キーボードやマウス等の各種入力デバイスである。
出力部14は、演算部12の演算結果を出力する。例えば、出力部14は、演算結果を外部のコンピュータに対する出力と、演算結果を表示装置に対する出力との少なくともいずれか1つを行う。この出力部14は、表示装置であってもよい。
【0023】
上述した施工図生成支援システムSは、1台のコンピュータによって構成されてもよい。
記憶部11は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
この記憶部11は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
演算部12は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。
【0024】
また、施工図生成支援システムSは、複数のコンピュータによって構成されるようにしてもよい。例えば、入力部13と出力部14とが接続された1台または複数台のコンピュータから、記憶部11と演算部12とが設けられたクラウドサーバにアクセスするようにしてもよい。記憶部11と演算部12とが同じサーバに設けられてもよいし、別のサーバに設けられてもよい。記憶部11、演算部12に設けられた各機能が異なるサーバに分散するように設けられてもよい。
【0025】
次に、施工図生成支援システムSの処理の流れについて説明する。
図3は、施工図生成支援システムSの処理の流れを表す概念図であり、
図4は、施工図生成支援システムSの処理の流れを表すフローチャートである。ここでは、設計者、モデリング担当者等の担当者毎に異なるコンピュータが利用され、記憶部11、演算部12にアクセスされる。
設計者は、コンピュータに接続された入力装置から、施工対象の鉄筋コンクリート構造物を表す躯体モデルを指定し、構造解析を行う指示を入力する。演算部12は、躯体モデル記憶部111aから対象の躯体モデルを読み出し、構造解析部121によって構造解析を行い(
図3ステップS11)、解析結果に応じた基本設計図データを生成し、基本設計図データ記憶部112に書き込む。
このように、構造解析部121によれば、構造解析の計算結果に基づいて、施工対象の鉄筋コンクリート構造物として必要な強度を満たすように、鉄筋の径、ピッチ、配置位置等を求めることができ、この演算結果に基づいて基本設計図データを得ることができる。基本設計図データは、鉄筋コンクリート構造物として必要な強度を満たすための鉄筋の径、ピッチ、配置位置等が示されるが、実際に鉄筋を用いて施工するためには、鉄筋量(径、本数)、補強筋が必要か、鉄筋の形状、フックの向き、フックの形状等を表す施工図が必要となるが、このステップでは、基本設計図データが生成される。
【0026】
照査部123は、基本設計図データ記憶部112に記憶された基本設計図データに基づいて照査処理を行い(
図3ステップS12)、照査結果を出力部14に出力する。出力部14は、設計者のコンピュータに照査結果と基本設計図データとを送信することで画面上に出力させる。これにより、設計者は、基本設計図データが所定の設計条件を満たしているか否かを確認することができる。
【0027】
次に、設計者は、コンピュータに接続された入力装置から操作入力をすることにより、照査の結果、問題ないとされた基本設計図データ(
図3符号A2)に基づいて、配筋施工図の作成に必要なパラメータデータ(
図3符号A1)を生成し、3次元配筋施工図データの生成指示を入力する。
3次元配筋施工図データ生成部122は、3次元配筋施工図データの生成指示と、配筋施工図の作成に必要なパラメータデータ(
図3符号A1、
図4符号B2)を取得すると、パラメトリックモデルに基づく処理を行い(
図3ステップS13、
図4ステップS21)、3次元モデリング処理を行う(
図4ステップS22)ことで、3次元配筋施工図データ(
図3符号A3、
図4符号B3)を生成する。照査部123は、生成された3次元配筋施工図データを対象として照査を行う(
図3ステップS14)。
カッティングプラン生成部124は、生成された3次元配筋施工図データ(
図4符号B3)に基づいて鉄筋の集計データを生成する。カッティングプラン生成部124の集計部1231は、3次元配筋施工図データに基づいて、鉄筋の径毎であって、長さ別の本数をカウントすることで鉄筋集計表データ(
図4符号B4)を生成する(
図3ステップS15)。
そしてカッティングプラン生成部124は、鉄筋集計表データから、径が同じである鉄筋を抽出し、抽出された径が同じ鉄筋について長さ毎に本数をカウントすることで、カッティングプラン計算用データ(
図4符号B5)を生成する。そしてカッティングプラン生成部124は、最適カッティングプランの計算を行い(
図4ステップS23)、カッティングプランデータ(
図4符号B6)を生成する。
【0028】
これにより、発注管理者は、集計表に基づいて、メーカに対して鉄筋の発注を行うことができる。施工担当者は、入荷した鉄筋を、集計表データに基づいて、鉄筋の径毎に、割り当てられた長さとなるように切断し、3次元配筋施工図データに基づいて施工することができる。
【0029】
図5は、3次元配筋施工図データ生成部122が3次元配筋施工図データを生成する処理をより詳しく説明するフローチャートである。
3次元配筋施工図データ生成部122のパラメトリックモデリング部1221は、鉄筋を生成する対象躯体の選択入力を受け付ける(
図5ステップS31)。この選択は、モデリング担当者によって入力装置から選択入力を受け付けることで入力を受け付ける。
【0030】
次に、パラメトリックモデリング部1221は、対象躯体の向きを決定する(
図5ステップS32)。
パラメトリックモデリング部1221は、施工図作成指示書データ(
図5符号C1)をインプットデータとして読み込む(
図5ステップS33)。
図6は、施工図作成指示書データ(インプットデータ)の一例を示す図である。この
図6では、地中連続壁を施工する場合における配筋を想定したインプットデータの一例である。
施工図作成指示書データは、配筋するための配筋データであり、3次元空間において鉄筋を配置するための位置、高さ、鉄筋の形状、径等が規定されたデータである。
インプットデータは、例えば、鉄筋識別情報、フェイス、開始高さ、長辺オフセット、短辺オフセット、鉄筋の形状、鉄筋径、鉄筋本数、鉄筋ピッチ、鉄筋長さ、寸法等が含まれる。
鉄筋識別情報は、鉄筋を個別に識別する識別情報である。
フェイスは、鉄筋が配置される躯体の面(内側の壁か、外側の壁か)を表す。
開始高さは、鉄筋が配置される躯体(例えば、地中連続壁)の上面を基準とした、鉄筋の一方の先端が位置する高さを表すものであり、言い換えると、躯体の上面からどれだけ下がった位置に鉄筋を配置するかを示した寸法である。
長辺オフセットは、躯体の長手方向の表面から躯体の内部側に鉄筋が配置される最小距離を示す。短辺オフセットは、躯体の短手方向の表面から躯体の内部側に鉄筋が配置される最小距離を示す。長辺オフセット及び短辺オフセットは、鉄筋かぶりとも呼ばれる。
鉄筋の形状は、鉄筋識別情報を用いることで鉄筋の形状を指定することができる。
鉄筋径は、鉄筋の径を表す。
鉄筋本数は、鉄筋を並べる本数を表す。
配筋ピッチは、配筋が割り付けられる間隔である。
鉄筋長さは、鉄筋の全体の長さを表す。
寸法は、鉄筋の形状における各部位の寸法を表す。例えば、鉄筋の形状がL字状である場合、短手部の寸法を表す変数「A」に対して入力される数値、長手部の寸法を表す変数「B」に対して入力される数値(寸法)を表す。
また、施工図作成指示書データには、フック向き、フックの種別、継手の仕様、補強筋を含むようにしてもよい。フック向きは、鉄筋の端部に形成されるフックの向きを表す。フックの種別は、180°フック、直角フック等であり、いずれの種別のフックを利用するかを指定することができる。
【0031】
例えば、鉄筋識別情報「Basket1_1」の鉄筋は、フェイスが「SF」、開始高さが「0」mm、長辺オフセットが「135」mm、短辺オフセットが「260」mm、鉄筋の形状が「CP20201rev」、鉄筋径が「32」mm、鉄筋本数が「20」本、鉄筋ピッチ「130」mm、鉄筋長さが「20350」mm、寸法Aが「19418」mm、寸法Bが「132」mm、寸法Cが「800」mm、寸法Dが「22」mmであることが示されている。
これにより、鉄筋径が「32」mmであり、鉄筋長さが「20350」mmの鉄筋が、形状識別情報「CP20201rev」として指定された形状であり、第1端を基準として寸法Aが「19418」mm、寸法Bが「132」mm、寸法Cが「800」mm、寸法Dが「22」mmとなるように設定されることが規定される。そして、このような鉄筋が、躯体の「SF」の面を基準として、開始高さが「0」mm、長辺オフセットが「135」mm、短辺オフセットが「260」mmの位置に配置されるものであり、鉄筋本数が「20」本、鉄筋ピッチ「130」mm、であることが指定される。
【0032】
次に、パラメトリックモデリング部1221は、施工図作成指示書データを入力データとして鉄筋生成プログラムを実行する(
図5ステップS34)。
ここで、
図7は、対象躯体と施工図作成指示書データとの関係を説明する概念図である。例えば、ステップS31においてモデリング担当者から選択入力された対象躯体(符号W1)と、ステップS33において入力された施工図作成指示書データ(符号PD1)とが対応づけされる。これにより、地中連続壁のいずれの躯体に対して、どの施工図作成指示書データに基づいて配筋すればよいかについて特定される。地中連続壁は複数の躯体によって構成されるため、各躯体についてそれぞれ対応した施工図作成指示書データを生成し、対応付けされる。
そして、3次元モデリング部1222は、鉄筋生成プログラムの実行結果に基づいて、3次元配筋施工図データの生成処理を実行し(
図5ステップS35)、生成された3次元配筋施工図データ(
図5符号C2、
図7符号Re1)を出力する。
【0033】
ここで、施工対象の鉄筋コンクリート構造物が連壁(地中連続壁)である場合、連壁は、地中に構築された溝に安定液を満たした状態において鉄筋かごを挿入し、コンクリートを打設することで構築される。このような鉄筋かごを組み立てるためには、配筋施工図が必要である。このような配筋施工図は、従来であれば、設計者が現場の施工計画に応じて2次元の配筋施工図を検討し、施工図作成のための指示を手書きで作成し、モデル作成者は、その指示を見ながら、2次元の配筋施工図を作成していた。この場合、施工図の作成に時間がかかるとともに、負担が大きい。
これに対し、上述した3次元配筋施工図データを生成する処理によれば、パラメトリックモデリング処理をするプログラムに対して、配筋施工図のモデリングに必要な条件を表す施工図作成指示書データを読み込ませて実行させることで、3次元配筋施工図データを生成することができる。ここでは、設計者が現場の施工計画に応じて配筋施工図を作成するための検討をするが、検討結果に基づいて施工図作成指示書データを作成し、鉄筋生成プログラムを実行することで、3次元配筋施工図データを得ることができるため、配筋施工図を作成するための検討結果に基づいた施工図作成のための指示書を作成しなくてもよく、また、2次元の配筋施工図を作成しなくてもよい。そのため、従来に比べて、配筋施工図を作成するための検討を行ってから3次元配筋施工図データを得るまでの間の手間を大幅に削減し、効率よく3次元配筋施工図データを得ることができる。
なお、上述の施工図生成支援システムは、連壁の鉄筋かごの3次元配筋施工図データの生成に限られるものではなく、鉄筋コンクリート構造物であれば、他の構造物についても、3次元配筋施工図データを生成することができる。
また、生成された3次元配筋施工図データのいずれかの位置における断面を切り出すことで、2次元の配筋施工図データを生成することもできる。
【0034】
図8は、カッティングプラン生成部124がカッティングプランデータを生成する処理をより詳しく説明するフローチャートである。
図9は、カッティングプランデータを生成する処理の流れを説明する概念図である。
カッティングプラン生成部124の集計部1241は、3次元配筋施工図データ(
図8符号D1、
図9符号E1)が生成されると、3次元配筋施工図データに基づいて、鉄筋の集計表データ(
図8符号D2)を生成する。ここで、3次元配筋施工図データに含まれる鉄筋のそれぞれに対して、属性データが付与されている。属性データは、鉄筋の径と長さを含むデータである。集計部1241は、3次元配筋施工図データに含まれる属性データを参照することで、各鉄筋の径と長さを抽出する。そして集計部1241は、鉄筋の径毎にソートし、さらに同じ径の鉄筋について長さ毎にソートし、そのソートされた結果に基づいて、同じ径であってかつ同じ長さの鉄筋の数をカウントすることで、集計表データ(
図9符号E2)を生成する。例えば、径がD1(mm)の鉄筋であって、長さL1(mm)の鉄筋が何本あるかを集計する。
【0035】
集計表データが生成されると、集計部1241は、集計表データから、鉄筋の径毎に、長さと本数を抽出することで(
図8ステップS41)、カッティングプラン計算用データ(
図8符号D3、
図9符号E3)を生成する。カッティングプランデータは、鉄筋の径毎にそれぞれ生成される。例えば、ある径の鉄筋については、7100mmがN1本、5900mmがN2本、5800mmがN3本、・・・・のように、求められ、このような結果が異なる径毎に得られる。
集計部1241は、カッティングプラン計算用データを出力するにあたり、カッティングプラン生成部124において読み取り可能なファイル形式(例えばtxt形式等)にして出力(
図9符号E4)することができる。
【0036】
カッティングプラン生成部124のプラン生成部1242は、在庫長を取得する(
図8ステップS42)。在庫長は、鉄筋の1本あたりの長さであり、例えば、12mである。在庫長は、例えば、発注可能な鉄筋の仕様データを参照し、鉄筋の寸法のデータから長さを抽出することで、在庫長として取得するようにしてもよい。また、施工図作成者または施工担当者から入力装置を介して在庫長の入力を受け付けるようにしてもよい。
【0037】
プラン生成部1242は、カッティングプラン計算用データと在庫長(
図9符号E5)に基づいて、最適カッティングプランを求める処理を実行することで(
図8ステップS42)、カッティングプランデータ(
図8符号D4、
図9符号E6)を生成する。ここでは、プラン生成部1242は、カッティングプランを生成する対象の鉄筋の径に基づいて、その径に対応する鉄筋の寸法毎の本数をカッティングプラン計算用データから抽出する。
【0038】
カッティングプランデータは、例えば、鉄筋の径毎のデータであって、必要な鉄筋のそれぞれについて、施工に必要な長さが少なくとも1つ割り当てられたデータである。例えば、ある径の鉄筋の必要な数が15本である場合に、15本のそれぞれについて、切り出す長さが割り当てられる。例えば、1本目及び2本目は、5900mm、5900mmを切り出し、200mmが余剰分であることが割り当てられる。3本目から10本目は5800mm、5800mmを切り出し、400mmが余剰分であることが割り当てられる。11本目は、3800mm、7100mmを切り出し、1100mmが余剰分であることが割り当てられる。12本目は、4700mm、5900mmを切り出し、1400mmが余剰分であることが割り当てられる。13本目は、4300mm、4800mmを切り出し、2400mmが余剰分であることが割り当てられる。14本目は、2900mm、5900mmを切り出し、3200mmが余剰分であることが割り当てられる。15本目は、2300mm、5900mmを切り出し、3800mmが余剰分であることが割り当てられる。
【0039】
また、カッティングプランデータには、利用率、余剰率を鉄筋毎に求めた結果を含むようにしてもよい(
図9符号E7)。利用率は、1本の鉄筋について、在庫長に対する切り出された鉄筋の長さの総和の長さである。例えば、1本目については、在庫長が12mであり、5900mmを2本切り出しているため、利用率は98.33%として求めることができる。余剰率は、1本の鉄筋について、在庫長に対する余剰分の長さである。例えば、1本目については、在庫長が12mであり、余剰分が200mmであるため、1.67%として求めることができる。
【0040】
このようなカッティングプランデータを基に、鉄筋の径毎の発注量を決めることができ、また、納入された鉄筋から、施工するために必要な長さを切り出すプランを得ることができる。
また、カッティングプランデータを、鉄筋を切断する切断装置に読み込ませるによって、カッティングプランデータに従って、鉄筋から施工に必要な長さの鉄筋を切り出すようにしてもよい。
【0041】
このようにしてカッティングプランデータを生成することによって、3次元配筋施工図データを基にして、施工に必要な鉄筋の数を鉄筋の径毎に求めることができるとともに、1本の鉄筋から切り出すための割り当てをする手間を省くことができる。これにより、人手によって鉄筋を発注する本数を集計する手間を省くことができる。また、資材として準備される鉄筋について、1本から無駄なく切り出すことができるため、資材として購入する鉄筋の本数を低減させることができ、鉄筋を購入するコストを低減することができる。
【0042】
上述した実施形態における演算部12をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0043】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0044】
11…記憶部、12…演算部、13…入力部、14…出力部、111a…躯体モデル記憶部、111b…112…基本設計図データ記憶部、113…3次元配筋施工図モデル記憶部、114…カッティングプラン記憶部、121…構造解析部、122…3次元配筋施工図データ生成部、123…照査部、124…カッティングプラン生成部、1221…パラメトリックモデリング部、1222…3次元モデリング部、1231…集計部、1241…集計部、1242…プラン生成部、S…施工図生成支援システム