(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125617
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】梁接合構造及び梁接合方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/24 20060101AFI20240911BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
E04B1/24 Q
E04B1/58 506F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033545
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】廣嶋 哲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】青柳 智
(72)【発明者】
【氏名】吉田 文久
(72)【発明者】
【氏名】西 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】永峰 頌子
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA13
2E125AA14
2E125AA17
2E125AB01
2E125AC15
2E125AG03
2E125AG12
2E125AG45
2E125BB02
2E125BB22
2E125BB27
2E125BE02
2E125BE08
2E125BF01
2E125BF06
2E125CA05
2E125CA14
(57)【要約】
【課題】加工性及び施工性を維持しつつ第2梁の横座屈耐力を向上させた梁接合構造を提供する。
【解決手段】梁接合構造1は、自身の材軸方向Xに直交する断面形状がH形状である第1梁10と、自身の材軸方向Yに直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが第1梁のせいよりも小さく、自身の上フランジ16が第1梁の上フランジ11と同じ高さに配置され、第1梁に交差するように配置された第2梁15と、自身の厚さ方向が第2梁のウェブ18の厚さ方向に沿うように配置され、第1梁のウェブ13及び第2梁のウェブにそれぞれ接合された第1接続板20と、自身の厚さ方向が上下方向に沿うように配置され、第1梁のウェブ、第1接続板、及び第2梁の下フランジ17にそれぞれ接合された第2接続板25と、第1梁の下フランジ及び第2接続板にそれぞれ接合された補強部材30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状である第1梁と、
自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが前記第1梁のせいよりも小さく、自身の上フランジが前記第1梁の上フランジと同じ高さに配置され、前記第1梁に交差するように配置された第2梁と、
自身の厚さ方向が前記第2梁のウェブの厚さ方向に沿うように配置され、前記第1梁のウェブ及び前記第2梁の前記ウェブにそれぞれ接合された第1接続板と、
自身の厚さ方向が上下方向に沿うように配置され、前記第1梁の前記ウェブ、前記第1接続板、及び前記第2梁の下フランジにそれぞれ接合された第2接続板と、
前記第1梁の下フランジ及び前記第2接続板にそれぞれ接合された補強部材と、
を備える、梁接合構造。
【請求項2】
前記補強部材は、前記第1梁の前記ウェブに沿って延び、前記第1梁の前記下フランジ及び前記第2接続板にそれぞれ接合された第1補強板を有する、請求項1に記載の梁接合構造。
【請求項3】
前記補強部材は、前記第2梁の前記ウェブに沿って延び、前記第1梁の前記下フランジ及び前記第2接続板にそれぞれ接合された第2補強板を有する、請求項1に記載の梁接合構造。
【請求項4】
前記補強部材は、前記第2梁の前記ウェブに沿って延び、前記第1梁の前記下フランジ、前記第2接続板、及び前記第1補強板にそれぞれ接合された第2補強板を有する、請求項2に記載の梁接合構造。
【請求項5】
前記第2梁の前記下フランジと前記第2接続板とが溶接接合部により接合されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の梁接合構造。
【請求項6】
前記第2梁の前記下フランジと前記第2接続板とがボルト接合部により接合されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の梁接合構造。
【請求項7】
前記補強部材は、前記第1梁の下フランジ及び前記第2接続板に、断続隅肉溶接部によりそれぞれ接合されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の梁接合構造。
【請求項8】
自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状である第1梁と、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが前記第1梁のせいよりも小さい第2梁と、を接合する梁接合方法であって、
自身の厚さ方向が前記第2梁のウェブの厚さ方向に沿うように配置された第1接続板を、前記第1梁のウェブに接合し、
自身の厚さ方向が上下方向に沿うように配置された第2接続板を、前記第1梁の前記ウェブ及び前記第1接続板にそれぞれ接合し、
補強部材を、前記第1梁の下フランジ及び前記第2接続板にそれぞれ接合し、
前記第2梁が前記第1梁に交差するとともに、前記第2梁の上フランジを前記第1梁の上フランジと同じ高さに配置し、
前記第1接続板を、前記第2梁の前記ウェブに接合し、
前記第2接続板を、前記第2梁の下フランジに接合する、梁接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁接合構造及び梁接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大梁(第1梁)と小梁(第2梁)の接合部には、部材の加工量の少なさや施工の容易さから、大梁に設けたウェブガセットプレート(第1接続板)に対して小梁のウェブのみをボルト接合する、いわゆるピン接合が用いられることが多い(例えば、特許文献1参照)。しかし、小梁の端部の固定度が低いピン接合の場合には、小梁の中央のたわみが大きくなりやすい。小梁のたわみ抑制のために小梁の材軸方向に直交する断面積を大きくすると、小梁の鋼材量が多くなってしまう。
そこで、小梁のたわみを抑制し、かつ鋼材量を低減するために、小梁の端部を大梁に剛接合する場合がある(例えば、特許文献2から5参照)。
【0003】
小梁を大梁にピン接合する場合には、小梁に作用する曲げモーメントにより、小梁の全長にわたって上フランジが圧縮される。この場合、小梁の上フランジは床スラブによって拘束を受けるために、小梁の横座屈が問題となることがない。一方で、小梁を大梁に剛接合する場合には、小梁に作用する曲げモーメントにより、小梁の端部(大梁と小梁との接合部近傍)では、下フランジが圧縮される。この場合、小梁の下フランジは床スラブ等により拘束されていないため、小梁に横座屈が生じる可能性がある。
【0004】
一般的に小梁は大梁よりもせい(梁せい)が小さい場合が多く、通常は床スラブを支持する上フランジの外面を揃えた状態で(両梁の上フランジが同じ高さに配置された状態で)、大梁と小梁は接合される。そのため、小梁の下フランジは、フランジガセットプレートを介して大梁のウェブに接合される。小梁の下フランジが大梁の下フランジに接合される場合には、小梁の面外方向(小梁のウェブの主面(面積が広い外面)に交差する方向)の曲げに対して高い固定度を発揮する。
【0005】
また、梁接合構造において、ウェブガセットプレートに代えて、小梁を上下方向に挟む上側接合プレート、一対の下側接合プレート(第2接続板)、及び一対のリブ部材を備える構造が知られている(例えば、特許文献6参照)。特許文献6に開示された梁接合構造では、大梁を挟んで左右対称に一対の小梁が大梁に接合されている。
上側接合プレートは、大梁の上面に接合されるとともに、一対の小梁の上フランジに接合されている。一対の下側接合プレートは、大梁のウェブに溶接されるとともに、一対の小梁の下フランジに接合されている。
一対のリブ部材は、大梁に接合され、一対の下側接合プレートを補強している。一対のリブ部材は、一対の下側接合プレートの幅方向の中間に位置し、大梁のウェブ、下フランジ、及び一対の下側接合プレートにそれぞれ接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6038082号公報
【特許文献2】特開2009-052302号公報
【特許文献3】特許第6347930号公報
【特許文献4】特許第6283839号公報
【特許文献5】特許第6753043号公報
【特許文献6】特許第6266269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、小梁の下フランジが大梁のウェブに接合される場合には、大梁のウェブの面外方向の曲げ抵抗が小さいために、小梁の面外方向の曲げに対する固定度が低くなる。このため、剛接合された小梁の端部は下フランジの固定度が低く、横座屈が生じやすいという課題がある。
【0008】
梁床構造に使用される鋼材量を減らすには、小梁には断面効率が高い、幅が細く(狭く)せいの高いH形鋼を用いるのが好ましい。しかしながら、幅が細くせいの高いH形鋼では、横座屈が生じやすい。小梁の端部における下フランジの固定度が低いため、小梁の横座屈耐力が不足することがある。この場合、横座屈耐力を向上させるために、小梁のフランジ幅や板厚を増大させるか、横補剛材を配置する必要が生じる。その結果、小梁の鋼材量や加工・施工手間が増え、コスト増を招いてしまう。
つまり、大梁と小梁の接合部における下フランジの、大梁のウェブにおける面外方向の曲げに対する固定度を向上した、横座屈が生じ難い接合構造を考案する必要がある。ただし、固定度の高い接合構造は、加工性及び施工性に優れたものとする必要がある。
【0009】
また、特許文献6に開示された梁接合構造の課題は、小梁の中央部にかかる曲げモーメントを抑えてたわみ値を小さくすることである。特許文献6では、小梁の横座屈は考慮されていない。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、加工性及び施工性を維持しつつ第2梁の横座屈耐力を向上させた梁接合構造及び梁接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1は、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状である第1梁と、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが前記第1梁のせいよりも小さく、自身の上フランジが前記第1梁の上フランジと同じ高さに配置され、前記第1梁に交差するように配置された第2梁と、自身の厚さ方向が前記第2梁のウェブの厚さ方向に沿うように配置され、前記第1梁のウェブ及び前記第2梁の前記ウェブにそれぞれ接合された第1接続板と、自身の厚さ方向が上下方向に沿うように配置され、前記第1梁の前記ウェブ、前記第1接続板、及び前記第2梁の下フランジにそれぞれ接合された第2接続板と、前記第1梁の下フランジ及び前記第2接続板にそれぞれ接合された補強部材と、を備える、梁接合構造である。
【0012】
この発明では、第1梁と第2梁とは、互いに交差するように配置されるとともに、第1梁の上フランジと第2梁の上フランジとが同じ高さに配置されている。第2梁のせいは第1梁のせいよりも小さいため、第2梁の下フランジは第1梁のウェブと同じ高さに配置されている。第1梁のウェブに第1接続板を介して、第2梁のウェブが接合されている。第2接続板は、第1梁のウェブ、第1接続板、及び第2梁の下フランジにそれぞれ接合されている。さらに、補強部材は、第1梁の下フランジ及び第2接続板にそれぞれ接合されている。
このため、第2梁が横座屈する過程で、第2梁の下フランジから第2接続板と第1梁のウェブの接合部に作用する、第2梁の面外方向に曲げる曲げモーメントを、第1梁のウェブにより支持するだけでなく、第2接続板及び補強部材を介して第1梁の下フランジにより支持することができ、第2接続板と第1梁の接合部が第2梁の面外方向に曲げる曲げモーメントに対して高い固定度を発揮することになる。その結果として、第2梁の横座屈耐力を向上させることができる。
【0013】
また、第1接続板及び第2接続板は、従来の梁接合構造でも用いられている部材である。例えば、平面視において、補強部材は、第1梁の材軸方向において第2梁の範囲内に配置される、比較的小型の部材である。このため、梁接合構造が補強部材を備えても、梁接合構造が備える比較的小型の部材の数が増え、この補強部材に対する比較的短い接合箇所が増えるだけである。このため、梁接合構造の加工性及び施工性を、従来の梁接合構造と同程度に維持することができる。
【0014】
(2)本発明の態様2は、前記補強部材は、前記第1梁の前記ウェブに沿って延び、前記第1梁の前記下フランジ及び前記第2接続板にそれぞれ接合された第1補強板を有する、(1)に記載の梁接合構造であってもよい。
この発明では、第2梁から第2接続板を介して伝達された曲げモーメントを、第1梁のウェブに沿って延びる第1補強板により第1梁の下フランジに伝達し、第1梁の下フランジにより支持することができる。
【0015】
(3)本発明の態様3は、前記補強部材は、前記第2梁の前記ウェブに沿って延び、前記第1梁の前記下フランジ及び前記第2接続板にそれぞれ接合された第2補強板を有する、(1)に記載の梁接合構造であってもよい。
この発明では、第2梁から第2接続板を介して伝達された曲げモーメントを、第2梁のウェブに沿って延びる第2補強板により第1梁の下フランジに伝達し、第1梁の下フランジにより支持することができる。
【0016】
(4)本発明の態様4は、前記補強部材は、前記第2梁の前記ウェブに沿って延び、前記第1梁の前記下フランジ、前記第2接続板、及び前記第1補強板にそれぞれ接合された第2補強板を有する、(2)に記載の梁接合構造であってもよい。
この発明では、第2梁から第2接続板を介して伝達された曲げモーメントを、第1補強板及び第2補強板の両方により第1梁の下フランジに伝達し、第1梁の下フランジにより支持することができる。また、第1補強板が沿う方向と第2補強板が沿う方向とが互いに交差するとともに、第1補強板及び第2補強板が互いに接合されている。このため、第2接続板、第1補強板、及び第2補強板全体としての剛性が向上する。従って、第2梁の横座屈耐力をより向上させることができる。
【0017】
(5)本発明の態様5は、前記第2梁の前記下フランジと前記第2接続板とが溶接接合部により接合されている、(1)から(4)のいずれか一に記載の梁接合構造であってもよい。
この発明では、溶接接合部により、第2梁の下フランジと第2接続板とを確実に接合することができる。
【0018】
(6)本発明の態様6は、前記第2梁の前記下フランジと前記第2接続板とがボルト接合部により接合されている、(1)から(4)のいずれか一に記載の梁接合構造であってもよい。
この発明では、ボルト接合部により、第2梁の下フランジと第2接続板とを確実に接合することができる。
【0019】
(7)本発明の態様7は、前記補強部材は、前記第1梁の下フランジ及び前記第2接続板に、断続隅肉溶接部によりそれぞれ接合されている、(1)から(6)のいずれか一に記載の梁接合構造であってもよい。
この発明では、断続隅肉溶接部により、第1梁の下フランジ及び第2接続板と補強部材とをそれぞれ確実に接合することができる。そして、例えばこれらを隅肉溶接により連続的に溶接した場合に比べて、隅肉溶接する範囲を低減させ、接合を容易に行うことができる。
【0020】
(8)本発明の態様8は、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状である第1梁と、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが前記第1梁のせいよりも小さい第2梁と、を接合する梁接合方法であって、自身の厚さ方向が前記第2梁のウェブの厚さ方向に沿うように配置された第1接続板を、前記第1梁のウェブに接合し、自身の厚さ方向が上下方向に沿うように配置された第2接続板を、前記第1梁の前記ウェブ及び前記第1接続板にそれぞれ接合し、補強部材を、前記第1梁の下フランジ及び前記第2接続板にそれぞれ接合し、前記第2梁が前記第1梁に交差するとともに、前記第2梁の上フランジを前記第1梁の上フランジと同じ高さに配置し、前記第1接続板を、前記第2梁の前記ウェブに接合し、前記第2接続板を、前記第2梁の下フランジに接合する、梁接合方法である。
【0021】
この発明では、例えばまず、第1梁のウェブに、第1接続板及び第2補強板をそれぞれ接合する。第2補強板を、第1接続板に接合する。補強部材を、第1梁の下フランジ及び第2接続板にそれぞれ接合する。
次に、第1梁と第2梁とを、互いに交差するように配置するとともに、第1梁の上フランジと第2梁の上フランジとを同じ高さに配置する。第2梁のせいは第1梁のせいよりも小さいため、第2梁の下フランジは第1梁のウェブと同じ高さに配置される。さらに、第1接続板を第2梁のウェブに接合し、第2接続板を第2梁の下フランジに接合することで、第1梁と第2梁とを接合する。
このため、第2梁が横座屈する過程で、第2梁の下フランジから第2補強板と第1梁のウェブの接合部に作用する、第2梁の面外方向に曲げる曲げモーメントを、第1梁のウェブにより支持するだけでなく、第2接続板及び補強部材を介して第1梁の下フランジにより支持することができ、第2接続板と第1梁の接合部が第2梁の面外方向に曲げる曲げモーメントに対して高い固定度を発揮することになる。その結果として、第2梁の横座屈耐力を向上させることができる。
【0022】
また、第1接続板及び第2接続板は、従来の梁接合方法でも用いられている部材である。例えば、平面視において、補強部材は、第1梁の材軸方向において第2梁の範囲内に配置される、比較的小型の部材である。このため、梁接合方法で補強部材を用いても、梁接合方法で用いる比較的小型の部材の数が増え、この補強部材に対する比較的短い接合箇所が増えるだけである。このため、梁接合方法の加工性及び施工性を、従来の梁接合方法と同程度に維持することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の梁接合構造及び梁接合方法では、加工性及び施工性を維持しつつ第2梁の横座屈耐力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態の梁接合構造の斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の梁接合方法を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第1実施形態の第1変形例の梁接合構造の斜視図である。
【
図7】本発明の第2実施形態の梁接合構造の斜視図である。
【
図9】本発明の第2実施形態の第1変形例の梁接合構造の斜視図である。
【
図11】本発明の第3実施形態の梁接合構造の斜視図である。
【
図13】本発明の第3実施形態の第1変形例の梁接合構造の斜視図である。
【
図15】同梁接合構造の解析モデルを示す斜視図である。
【
図18】同第1小梁に作用させる曲げモーメントを説明する図である。
【
図19】ケース1で第1補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
【
図20】ケース1で第1補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
【
図21】ケース1で第2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
【
図22】ケース1で第2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
【
図23】ケース1で第1,2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
【
図24】ケース1で第1,2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
【
図25】ケース2で第1補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
【
図26】ケース2で第1補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
【
図27】ケース2で第2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
【
図28】ケース2で第2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
【
図29】ケース2で第1,2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
【
図30】ケース2で第1,2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
【
図31】ケース3で第1補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
【
図32】ケース3で第1補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
【
図33】ケース3で第2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
【
図34】ケース3で第2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
【
図35】ケース3で第1,2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
【
図36】ケース3で第1,2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
【
図37】ケース4で第1補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
【
図38】ケース4で第1補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
【
図39】ケース4で第2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
【
図40】ケース4で第2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
【
図41】ケース4で第1,2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
【
図42】ケース4で第1,2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
【
図43】ケース5で第1補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
【
図44】ケース5で第1補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
【
図45】ケース5で第2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
【
図46】ケース5で第2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
【
図47】ケース5で第1,2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
【
図48】ケース5で第1,2補強板を用いた場合における、(L/H
2)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
【
図49】従来の梁接合構造に横座屈が発生したときの挙動を示す斜視図である。
【
図50】第1実施形態の梁接合構造に横座屈が発生したときの挙動を示す斜視図である。
【
図51】第2実施形態の梁接合構造に横座屈が発生したときの挙動を示す斜視図である。
【
図52】第3実施形態の梁接合構造に横座屈が発生したときの挙動を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る梁接合構造及び梁接合方法の実施形態を、
図1から
図52を参照しながら説明する。
【0026】
〔1.梁接合構造の第1実施形態における構成〕
図1から
図3に示すように、第1実施形態の梁接合構造1は、大梁(第1梁)10と、第1小梁(第2梁)15と、第1ウェブガセットプレート(第1接続板)20と、一対の第1フランジガセットプレート(第2接続板)25と、第1補強板(補強部材)30と、第2小梁35と、第2ウェブガセットプレート40と、一対の第2フランジガセットプレート45と、第1補強板50と、を備える。
【0027】
大梁10、第1小梁15、及び第2小梁35は、それぞれ水平面に沿って延びている。ここで言う水平面に沿うとは、水平面に対して、45°以下の角度(0°も含む)をなして延びることを意味する。この角度は、30°以下であることが好ましい。材軸方向に沿う、上下方向に沿う等についても、同様である。
大梁10の第1材軸方向(材軸方向)Xに直交する断面形状は、H形状である。例えば、大梁10は、H形鋼で形成されている。大梁10は、上フランジ11、下フランジ12、及びウェブ13を有する。上フランジ11、下フランジ12、及びウェブ13は、それぞれ鋼板により平板状に形成されている。
【0028】
上フランジ11及び下フランジ12は、それぞれの厚さ方向が上下方向に沿うように配置されている。上フランジ11は、下フランジ12よりも上方に、下フランジ12に対向するように配置されている。
ウェブ13は、自身の厚さ方向が水平面に沿うように配置されている。ウェブ13は、上フランジ11と下フランジ12との間に配置されている。ウェブ13は、上フランジ11の幅方向の中心と下フランジ12の幅方向の中心とにそれぞれ接合されている。
なお、大梁10は、圧延H形鋼でもよいし、溶接組立H形断面でもよい。大梁10の幅方向は、第1材軸方向X及び上下方向にそれぞれ直交する方向を意味する。大梁10の幅は、大梁10における幅方向の長さを意味する。
【0029】
第1小梁15の第2材軸方向(材軸方向)Yに直交する断面形状は、H形状である。第1小梁15及び第2小梁35は、せい、幅、フランジ及びウェブの厚さ以外は、大梁10と同様に構成されている。
第1小梁15は、上フランジ16、下フランジ17、及びウェブ18を有する。第1小梁15のせいは、大梁10のせいよりも小さい。第1小梁15の上フランジ16は、大梁10の上フランジ11と同じ高さに配置されている。より詳しくは、第1小梁15の上フランジ16の上面は、大梁10の上フランジ11の上面と同じ高さに配置されている。
第1小梁15の下フランジ17は、大梁10の下フランジ12よりも上方に、大梁10のウェブ13における上下方向の一部と同じ高さに配置されている。
第1小梁15は、大梁10に直交するように配置されている。なお、第1小梁15は、大梁10に交差するように配置されていてもよい。
【0030】
第1ウェブガセットプレート20、一対の第1フランジガセットプレート25、及び一対の第1補強板30は、それぞれ鋼板により平板状に形成されている。
第1ウェブガセットプレート20は、自身の厚さ方向が第1小梁15のウェブ18の厚さ方向(第1材軸方向X)に沿うように配置されている。第1ウェブガセットプレート20は、第1片20aと、第2片20bとを有する。第1材軸方向Xに見たときに、第1片20a及び第2片20bは、第2材軸方向Yに平行な辺及び上下方向に平行な辺をそれぞれ有する矩形状を呈する。
第1片20aは、大梁10の下フランジ12から上フランジ11まで延びている。第2片20bは、第1片20aにおける上下方向の中間部から、第2材軸方向Yに向かって突出している。
【0031】
第1ウェブガセットプレート20の第1片20aは、大梁10の上フランジ11、下フランジ12及びウェブ13に溶接によりそれぞれ接合されている。
第1ウェブガセットプレート20の第2片20bは、大梁10から第2材軸方向Yに向かって突出している。第1小梁15のウェブ18と第1ウェブガセットプレート20の第2片20bとは、高力ボルト等を有するボルト接合部21によりそれぞれ接合されている。ウェブ18と第2片20bとは複数のボルト接合部21により接合され、複数のボルト接合部21は、互いに上下方向に間隔を空けて配置されている。
【0032】
各第1フランジガセットプレート25は、自身の厚さ方向(上下方向)に見たときに、第1材軸方向Xに平行な辺、及び第2材軸方向Yに平行な辺をそれぞれ有する矩形状を呈する。平面視において、一対の第1フランジガセットプレート25は、第1材軸方向Xにおいて第1小梁15の範囲内に配置されている。
この例では、一対の第1フランジガセットプレート25及び第1ウェブガセットプレート20全体としての第1材軸方向Xの長さは、第1小梁15の幅と同等である。
【0033】
各第1フランジガセットプレート25は、自身の厚さ方向が上下方向に沿うように配置されている。一対の第1フランジガセットプレート25は、第1ウェブガセットプレート20を第1材軸方向Xに挟むように配置されている。この例では、一対の第1フランジガセットプレート25は、第1小梁15の下フランジ17と同じ高さに配置されている。
大梁10のウェブ13と一対の第1フランジガセットプレート25とは、隅肉溶接による隅肉溶接接合部(不図示)によりそれぞれ接合されている。第1ウェブガセットプレート20と一対の第1フランジガセットプレート25とは、隅肉溶接による隅肉溶接接合部(不図示)によりそれぞれ接合されている。一対の第1フランジガセットプレート25と大梁10のウェブ13及び第1ウェブガセットプレート20は、断続隅肉溶接による断続隅肉溶接部によりそれぞれ接合されてもよい。第1小梁15の下フランジ17と一対の第1フランジガセットプレート25とは、突合せ溶接による突合せ溶接接合部26によりそれぞれ接合されている。
【0034】
第1補強板30は、大梁10のウェブ13に沿って延びている。言い換えれば、第1補強板30は、自身の厚さ方向が第2材軸方向Yに沿うように配置されている。
第1補強板30は、自身の厚さ方向(第2材軸方向Y)に見たときに、第1材軸方向Xに平行な辺、及び上下方向に平行な辺をそれぞれ有する矩形状を呈する。平面視において、第1補強板30は、第1材軸方向Xにおいて第1小梁15の範囲内に配置されている。
この例では、第1補強板30の第1材軸方向Xの長さは、第1小梁15の幅と同等である。なお、第1補強板30の第1材軸方向Xの長さは、第1小梁15の幅よりも長くてもよいし、短くてもよい。第1補強板30の第1材軸方向Xの長さが長い方が、第1小梁15の横座屈を抑制する意味では効果的である。
ただし、大梁10と第1小梁15との接合部における納まりを考えると、第1補強板30の第1材軸方向Xの長さは、第1小梁15の幅と同等であることが好ましい。
【0035】
第1補強板30は、大梁10の下フランジ12及び第1フランジガセットプレート25に、隅肉溶接による隅肉溶接接合部(不図示)によりそれぞれ接合されている。第1補強板30と大梁10の下フランジ12及び第1フランジガセットプレート25は、断続隅肉溶接による断続隅肉溶接部によりそれぞれ接合されていてもよい。第1補強板30は、第1小梁15の下フランジ17及び第1ウェブガセットプレート20には接合されていない。
なお、第1補強板30は、第1ウェブガセットプレート20に接合されていてもよい。
【0036】
第1補強板30は、大梁10の下フランジ12の幅方向(第2材軸方向Y)の縁(縁近傍)に配置されている。第1補強板30と下フランジ12とを隅肉溶接する等のために、第1補強板30は、下フランジ12の幅方向の縁よりもウェブ13寄りの位置に配置されてもよい。ただし、第1補強板30は、下フランジ12の幅方向の縁近傍に配置することが好ましい。
この例では、大梁10の上フランジ11と第1小梁15の上フランジ16とは、突合せ溶接による突合せ溶接接合部27により接合されている。
なお、第1小梁15の上フランジ16は、高力ボルト等を有するボルト接合部(不図示)により大梁10の上フランジ11及び第2小梁35の上フランジ36に接合されてもよいし、大梁10の上フランジ11及び第1小梁15の上フランジ16の上方に設置される床スラブ(不図示)を介した荷重伝達に期待して、第1小梁15の上フランジ16を大梁10の上フランジ11と直接接合しなくてもよい。
なお、第1補強板30は、1枚の鋼板により形成される必要はなく、複数枚の鋼板により構成されてもよい。また、第1補強板30には、山形鋼等を用いてもよい。
【0037】
この例では、第2小梁35の材軸方向は、第2材軸方向Yに沿っている。なお、第2小梁35の材軸方向は、第2材軸方向Yに交差していてもよい。
第2小梁35の第2材軸方向Yに直交する断面形状は、H形状である。第2小梁35は、上フランジ36、下フランジ37、及びウェブ38を有する。第2小梁35のせいは、大梁10のせいよりも小さい。第2小梁35の上フランジ36は、大梁10の上フランジ11と同じ高さに配置されている。
第2小梁35は、大梁10に対して第1小梁15とは反対側に、大梁10に直交するように配置されている。なお、第2小梁35は、大梁10に交差するように配置されてもよい。第2小梁35の下フランジ37は、大梁10の下フランジ12よりも上方に、大梁10のウェブ13における上下方向の一部と同じ高さに配置されている。
【0038】
第2ウェブガセットプレート40、一対の第2フランジガセットプレート45、第1補強板50は、第1ウェブガセットプレート20、一対の第1フランジガセットプレート25、第1補強板30と同様にそれぞれ形成されている。
第2ウェブガセットプレート40は、自身の厚さ方向が第2小梁35のウェブ38の厚さ方向(第1材軸方向X)に沿うように配置されている。第2ウェブガセットプレート40は、大梁10の上フランジ11、下フランジ12及びウェブ13に溶接によりそれぞれ接合されている。
第2小梁35のウェブ38と第2ウェブガセットプレート40とは、高力ボルト等を有するボルト接合部41によりそれぞれ接合されている。
【0039】
一対の第2フランジガセットプレート45は、自身の厚さ方向が上下方向に沿った状態で第2ウェブガセットプレート40を第1材軸方向Xに挟むように配置されている。この例では、一対の第2フランジガセットプレート45は、第2小梁35の下フランジ37と同じ高さに配置されている。
【0040】
大梁10、第1小梁15、及び第2小梁35は、図示しない床スラブを、床スラブの下方から支持する。
なお、従来の梁接合構造は、第1補強板30,50を備えない。
【0041】
〔2.梁接合方法〕
次に、以上のように構成された梁接合構造1を施工する梁接合方法を、大梁10と第1小梁15を接合する方法に重点をおいて説明する。
図4は、梁接合方法S1を示すフローチャートである。梁接合方法S1は、大梁10と第1小梁15とを接合して梁接合構造1を構成する方法である。以下では、梁接合方法S1の要部に重点をおいて説明する。
まず、大梁-第1ウェブガセットプレート接合工程(
図4におけるステップS5)において、自身の厚さ方向が第1小梁15のウェブ18の厚さ方向に沿うように配置された第1ウェブガセットプレート20を、大梁10の上フランジ11、下フランジ12及びウェブ13に接合する。大梁-第1ウェブガセットプレート接合工程S5が終了すると、ステップS7に移行する。
【0042】
次に、大梁-第1フランジガセットプレート接合工程S7において、自身の厚さ方向が上下方向に沿った一対の第1フランジガセットプレート25を、第1材軸方向Xに第1ウェブガセットプレート20を挟むように配置する。そして、一対の第1フランジガセットプレート25を、大梁10のウェブ13及び第1ウェブガセットプレート20にそれぞれ接合する。
大梁-第1フランジガセットプレート接合工程S7が終了すると、ステップS9に移行する。
次に、大梁-第1補強板接合工程S9において、第1補強板30を、大梁10の下フランジ12及び第1フランジガセットプレート25にそれぞれ接合する。
大梁-第1ウェブガセットプレート接合工程S5から大梁-第1補強板接合工程S9は、大梁10を加工する工場で行うことができる。
大梁-第1補強板接合工程S9が終了すると、ステップS11に移行する。
【0043】
大梁-第1補強板接合工程S9に続けて行われる第1小梁配置工程S11以降は、梁接合構造1の施工現場で行われる。
第1小梁配置工程S11において、第1小梁15が、大梁10に交差するように配置する。そして、第1小梁15の上フランジ16を、大梁10の上フランジ11と同じ高さに配置する。第1小梁配置工程S11が終了すると、ステップS13に移行する。
次に、第1接合工程S13において、第1ウェブガセットプレート20を、第1小梁15のウェブ18に接合する。そして、第1小梁15の上フランジ16を大梁10の上フランジ11に接合する。更に、一対の第1フランジガセットプレート25を第1小梁15の下フランジ17にそれぞれ接合する。
第1接合工程S13が終了すると、梁接合方法S1の全工程が終了し、大梁10と第1小梁15とが接合される。
なお、大梁10と第2小梁35とは、大梁10と第1小梁15と同様に接合される。
【0044】
〔3.梁接合構造の変形例及び他の実施形態における構成〕
本実施形態の梁接合構造1は、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
図5及び
図6に示す第1変形例の梁接合構造1Aのように、梁接合構造1の各構成において、一対の第1フランジガセットプレート25及び溶接接合部26,27に代えて、一対の第1フランジガセットプレート25A、ボルト接合部55、接合プレート56を備えてもよい。
【0045】
各第1フランジガセットプレート25Aは、第1フランジガセットプレート25に対して第2材軸方向Yの長さのみが異なる。各第1フランジガセットプレート25Aは、第1フランジガセットプレート25よりも第2材軸方向Yに長い。各第1フランジガセットプレート25Aにおける第1小梁15側の部分は、第1小梁15の下フランジ17に、下フランジ17の下方から接触している。第1小梁15の下フランジ17と第1フランジガセットプレート25Aとは、高力ボルト等を有する前記ボルト接合部55により接合されている。
接合プレート56は、第2材軸方向Yに沿って延びる板状に形成されている。接合プレート56は、大梁10の上フランジ11、第1小梁15の上フランジ16、及び第2小梁35の上フランジ36に、高力ボルト等を有するボルト接合部57により接合されている。
【0046】
図7及び
図8に示す第2実施形態の梁接合構造2は、第1実施形態の梁接合構造1の各構成において、第1補強板30に代えて、一対の第2補強板(補強部材)60を備えている。
各第2補強板60は、第1小梁15のウェブ18に沿って延びている。言い換えれば、各第2補強板60は、自身の厚さ方向が第1材軸方向Xに沿うように配置されている。
各第2補強板60は、自身の厚さ方向(第1材軸方向X)に見たときに、第2材軸方向Yに平行な辺、及び上下方向に平行な辺をそれぞれ有する矩形状を呈する。
各第2補強板60は、各第1フランジガセットプレート25における第1ウェブガセットプレート20から離間した側の第1材軸方向Xの縁に配置されている。
【0047】
この例では、第2補強板60の第2材軸方向Yの長さは、大梁10の幅の半分と同等である。なお、第2補強板60の第2材軸方向Yの長さは、大梁10の幅の半分よりも長くてもよいし、短くてもよい。第2補強板60の第2材軸方向Yの長さが長い方が、第1小梁15の横座屈を抑制する意味では効果的である。
ただし、大梁10と第1小梁15との接合部における納まりを考えると、第2補強板60の第2材軸方向Yの長さは、大梁10の幅の半分と同等であることが好ましい。
各第2補強板60は、大梁10の下フランジ12及び第1フランジガセットプレート25にそれぞれ接合されている。各第2補強板60は、大梁10のウェブ13に接合されてもよい。
【0048】
図9及び
図10に示す第1変形例の梁接合構造2Aのように、梁接合構造1Aの各構成において、第1補強板30に代えて、一対の第2補強板60を備えてもよい。
【0049】
図11及び
図12に示す第3実施形態の梁接合構造3は、第1実施形態の梁接合構造1の各構成に加え、一対の第2補強板60を備えている。なお、第1補強板30及び一対の第2補強板60で、補強部材65を構成する。
各第2補強板60は、第1補強板30に接合されている。すなわち、一対の第1フランジガセットプレート25、第1補強板30、及び一対の第2補強板60は、互いに接合されて一体になっている。
なお、第1補強板30及び一対の第2補強板60は、溝形鋼や山形鋼を用いて構成してもよい。
【0050】
図13及び
図14に示す第1変形例の梁接合構造3Aのように、梁接合構造1Aの各構成に加え、一対の第2補強板60を備えてもよい。各第2補強板60は、第1補強板30に接合されている。
【0051】
〔4.梁接合構造の効果の解析による検証〕
次に、補強板30,60による第1小梁15の横座屈耐力の向上効果を、梁接合構造3で代表して解析した。
なお、梁接合構造3が一対の第2補強板60を備えない場合には梁接合構造1となり、梁接合構造3が第1補強板30を備えない場合には梁接合構造2となる。梁接合構造3と梁接合構造3Aとでは、第1小梁15の下フランジ17と一対の第1フランジガセットプレート25等との接合方法が、溶接接合かボルト接合かで異なるだけで、以下の解析モデルでは、構成や境界条件に差はない。梁接合構造1と梁接合構造1A、梁接合構造2と梁接合構造2Aについても、梁接合構造3と梁接合構造3Aと同様である。
解析は、FEM(Finite Element Method:有限要素法)による弾性座屈解析を行った。
図15に、梁接合構造3の解析モデルの斜視図を示す。
【0052】
梁接合構造3では、第1小梁15の第2材軸方向Yの両端部が一対の大梁10に接合されている状態をモデル化した。以下では、一対の大梁10のうち、一方を大梁10Aとも言い、他方を大梁10Bとも言う。
大梁10と一対の第1小梁15の端部とは、ウェブガセットプレート20,40、一対のフランジガセットプレート25,45、第1補強板30,50、及び4枚の第2補強板60により接合されている。梁接合構造3の各構成を、4節点シェル要素によりモデル化した。
【0053】
ここで、
図16及び
図17に示すように、大梁10及び第1小梁15の断面寸法を規定した。
図16に示すように、大梁10について、フランジ11,12の厚さをそれぞれ、t
F1(mm)と規定する。フランジ11,12の幅を、B
1(mm)と規定する。ウェブ13の厚さをそれぞれ、t
W1(mm)と規定する。大梁10のせい(高さ)を、H
1(mm)と規定する。
図17に示すように、第1小梁15について、フランジ16,17の厚さをそれぞれ、t
F2(mm)と規定する。フランジ16,17の幅を、B
2(mm)と規定する。ウェブ18の厚さをそれぞれ、t
W2(mm)と規定する。第1小梁15のせいを、H
2(mm)と規定する。
図15に示すように、第1小梁15の長さを、L(mm)と規定する。なお、大梁10の長さは、一般的な第1小梁15の配置間隔を考慮して、3mとした。
【0054】
第2材軸方向Yに沿ってx軸を規定し、第1材軸方向Xに沿ってz軸を規定した。x軸及びz軸にそれぞれ直交する方向に、y軸を規定した。x軸、y軸、及びz軸は、右手系の直交座標系を構成する。第1小梁15のx軸方向の第1端をx軸の原点とし、第1小梁15の第1端から、x軸方向において第1端とは反対側の第2端に向かう向きを、x軸の正の向きとする。
一対の大梁10及び第1小梁15に対して、
図15に示す境界条件を与えた。
大梁10Aのウェブ13における第1小梁15が接合された部分のy軸方向の中心である節点P1において、dy=0,dz=0,rotx=0とした。ここで言う「dy=0」とは、節点P1のy軸方向の移動による変位がない(節点P1がy軸方向に固定されている)ことを意味する。「dz=0」及び「dx=0」も、「dy=0」と同様の意味である。
「rotx=0」とは、節点P1のx軸回りの回転による回転角がない(節点P1がx軸回りに固定されている)ことを意味する。「roty=0」及び「rotz=0」も、「rotx=0」と同様の意味である。
【0055】
大梁10Bのウェブ13における第1小梁15が接合された部分のy軸方向の中心である節点P2において、dx=0,dy=0,dz=0,rotx=0とした。
一対の大梁10のウェブ13におけるz軸方向の両端のy軸方向の中心である節点P3において、それぞれdy=0,rotx=0,roty=0とした。
第1小梁15に作用する曲げモーメントが
図18に示す分布となるように、第1小梁15の上フランジ16に所定の分布の荷重を作用させるとともに、第1小梁15のx軸方向の端にモーメント反力を作用させた。
【0056】
図18において、横軸は第1小梁15のx軸方向の無次元化座標を表し、縦軸は無次元化曲げモーメントを表す。ここで言う第1小梁15のx軸方向の無次元化座標とは、第1小梁15の長さLに対する、x軸方向における第1小梁15の所定の部分のx軸の座標の比を意味する。無次元化曲げモーメントとは、第1小梁15のx軸方向の各端に作用する曲げモーメントの最大値に対する、x軸方向における第1小梁15の所定の部分に作用する曲げモーメントの比を意味する。
なお、第1小梁15に作用させた荷重は、長期荷重を想定している。
【0057】
前記解析モデルにおいて、大梁10及び第1小梁15の断面寸法、第1小梁15の長さL、第1補強板30、及び第2補強板60を変数とした。大梁10及び第1小梁15の断面寸法の組み合わせは、表1に示すケース1からケース5の5通りとした。
【0058】
【0059】
例えば、ケース1では、大梁10において、せいH1が700mmである。フランジ11,12の幅B1が300mm、ウェブ13の厚さtW1が13mm、フランジ11,12の厚さtF1が24mmである。第1小梁15において、せいH2が500mmである。フランジ16,17の幅B2が200mm、ウェブ18の厚さtW2が10mm、フランジ16,17の厚さtF2が16mmである。
第1小梁15のせいH2に対する第1小梁15の長さLの比(L/H2)が、6以上30以下の範囲で2刻みとなるように第1小梁15の長さLを設定した。
【0060】
梁接合構造3が第1補強板30のみを備える場合(梁接合構造1)を、後述する
図19から
図48中に「補強板:1」と表す。梁接合構造3が第2補強板60のみを備える場合(梁接合構造2)を、「補強板:2」と表す。そして、梁接合構造3が第1補強板30及び第2補強板60を備える場合(梁接合構造3)を、「補強板:1、2」と表す。
補強板30,60の厚さ(後述する
図19から
図48中には、単に「厚さ」と表す)は、6mm,9mm,12mm,16mm,19mmの5通りとした。
フランジガセットプレート25,45の厚さは、第1小梁15のフランジ16,17の厚さと同等とし、ウェブガセットプレート20,40の厚さは、第1小梁15のウェブ18の厚さと同等とした。
【0061】
図19から
図48に、ケース1からケース5の解析結果を示す。なお、
図19から
図48では、第1小梁を小梁と略して言う。
図19から
図48において、横軸は、第1小梁15のせいH
2に対する第1小梁15の長さLの比(L/H
2)の値(-)を表す。
図19、
図21、‥、及び
図47における縦軸の第1小梁15の弾性横座屈耐力(kNm)は、解析により直接求められる。
図19、
図21、‥、及び
図47における「補強なし」とは、第1補強板30及び第2補強板60を備えない梁接合構造であり、従来の梁接合構造に相当する。
図20、
図22、‥、及び
図48における縦軸の弾性横座屈耐力比(-)は、少なくとも一方の補強板30,60を備える場合の弾性横座屈耐力の、第1小梁15の長さLが同じで補強板30,60を備えない場合の弾性横座屈耐力に対する比である。
【0062】
図19、
図21、‥、及び
図47に示されるいずれのケースの弾性横座屈耐力においても、第1小梁15の長さLに関わらず、補強板30,60が厚くなるのに従い、弾性横座屈耐力が大きくなることが分かる。
【0063】
図19、
図20、
図25、
図26、
図31、
図32、
図37、
図38、
図43、及び
図44には、梁接合構造が第1補強板30のみを備える場合の効果が現れている。検討を行った第1補強板30の厚さが6mm~19mmの範囲においては、第1小梁15の断面寸法に関わらず、第1補強板30が厚くなるのに従い、弾性横座屈耐力が大きくなることが分かる。
また、第1補強板30の厚さが厚くなっても弾性横座屈耐力が大きくなる効果が飽和しないため、厚さが19mmを超える第1補強板30を用いてもよいことが分かる。
【0064】
実用的な第1小梁15では、(L/H2)の値は10以上20以下程度である。検討を行った中でも最も薄い、厚さが6mmの第1補強板30を備えても、補強板30,60を備えない場合に比べて、弾性横座屈耐力が5%~10%向上する(弾性横座屈耐力比が1.05~1.1となる)。
【0065】
図21、
図22、
図27、
図28、
図33、
図34、
図39、
図40、
図45、及び
図46には、梁接合構造が第2補強板60のみを備える場合の効果が現れている。この場合の効果は、梁接合構造が第1補強板30のみを備える場合の効果と概ね同様である。ただし、(L/H
2)の値が10以上20以下程度における第2補強板60の厚さが6mmの場合では、補強板30,60を備えない場合に比べて、弾性横座屈耐力が3%~11%向上する。
梁接合構造が第2補強板60のみを備える場合には、梁接合構造が第1補強板30のみを備える場合に比べて、条件によっては、弾性横座屈耐力が向上する程度のバラつきが大きいことが分かる。また、この場合には、第2補強板60の厚さを変えた場合の影響(弾性横座屈耐力の変化)が、第1補強板30の厚さを変えた場合よりも大きいことが分かる。
【0066】
図23、
図24、
図29、
図30、
図35、
図36、
図41、
図42、
図47、及び
図48には、梁接合構造が第1補強板30及び第2補強板60を備える場合の効果が現れている。
ケース1、及びケース3からケース5では、梁接合構造が第1補強板30のみを備える場合の弾性横座屈耐力比と、梁接合構造が第2補強板60のみを備える場合の弾性横座屈耐力比との和以上に、弾性横座屈耐力比が大きくなる。特に、補強板30,60の厚さが薄い場合には、その効果が顕著である。
【0067】
なお、ケース2が、ケース1、及びケース3からケース5とは異なる傾向を示したのは、大梁10のせいと第1小梁15のせいとの差が比較的小さく、第1補強板30又は第2補強板60だけで第1小梁15の端部の固定度を充分に改善できたためだと考えられる。
梁接合構造が第1補強板30及び第2補強板60を備え、第1補強板30及び第2補強板60を互いに接合することにより、第1小梁15の下フランジ17の端部の固定度を向上することができ、その結果として、第1小梁15の横座屈耐力を、効果的に向上させることができる。
また、梁接合構造が第1補強板30及び第2補強板60を備えた場合には、補強板30,60の厚さを厚くしても、第1小梁15の横座屈耐力が向上し難くなる。補強板30,60の厚さを6mmとするのが、補強板30,60として使用する鋼材料に対する、横座屈耐力の向上効果が大きいため、好ましいと言える。
【0068】
〔5.横座屈が発生したときの梁接合構造の挙動〕
図49から
図52に、従来の梁接合構造4、及び本実施形態の梁接合構造1,2,3における横座屈が発生したときの挙動を示す。
ここで、第1小梁15の下フランジ17における厚さ方向の中心の面と、第1小梁15のウェブ18における厚さ方向の中心の面との交線を、線L1と規定する。一対の第1フランジガセットプレート25の間と大梁10のウェブ13との接合点を、点Aと規定する。
図49に示すように、従来の梁接合構造4は、第1実施形態の梁接合構造1に対して、第1補強板30を備えていない。
【0069】
第1小梁15に横座屈が発生する場合、下フランジ17がウェブ18の面外方向であるz軸方向(第1材軸方向X)に変形する。このため、線L1は、z軸方向に撓んで、線L2のように変形する。このとき、第1小梁15の下フランジ17は、点Aを通るy軸回りに回転することとなり、大梁10のウェブ13には、下フランジ17の回転に対するモーメント反力として、一対の偶力F1が作用する。一対の偶力F1のうち、手前側の偶力F1Aは、大梁10のウェブ13を押し込む方向に作用し、奥側の偶力F1Bは、大梁10のウェブ13を引き込む方向に作用する。
従来の梁接合構造4では、第1小梁15の下フランジ17からのモーメントが第1フランジガセットプレート25を介して大梁10のウェブ13のみに伝達されるため、各偶力F1が大きくなり、一対の偶力F1が伝達される大梁10のウェブ13のz軸方向の範囲も狭いため、第1小梁15の下フランジ17及び第1フランジガセットプレート25の点Aにおけるy軸回りにおける回転角が大きくなる。その結果、第1小梁15に横座屈が発生しやすくなる。
【0070】
一方で、
図50に示すように、第1実施形態の梁接合構造1は、第1補強板30を備える。このため、第1小梁15の下フランジ17からのモーメントが一対の偶力F
1だけでなく、第1補強板30を介して偶力F
2として、大梁10の下フランジ12に伝達される。このため、大梁10のウェブ13に作用する一対の偶力F
1が小さくなり、第1小梁15の下フランジ17及び第1フランジガセットプレート25の点Aにおけるy軸回りにおける回転角が小さくなる。その結果、第1小梁15に横座屈が発生し難くなる。
同様に、
図51に示すように、第2実施形態の梁接合構造2は、一対の第2補強板60を備える。このため、第1小梁15の下フランジ17からのモーメントが一対の偶力F
1だけでなく、一対の第2補強板60を介して偶力F
3として、大梁10の下フランジ12に伝達される。このため、大梁10のウェブ13に作用する一対の偶力F
1が小さくなり、第1小梁15の下フランジ17及び第1フランジガセットプレート25の点Aにおけるy軸回りにおける回転角が小さくなる。その結果、第1小梁15に横座屈が発生し難くなる。
【0071】
図53に示すように、第3実施形態の梁接合構造3は、第1補強板30及び一対の第2補強板60を備える。このため、第1小梁15の下フランジ17からのモーメントが一対の偶力F
1だけでなく、第1補強板30を介した偶力F
2と、一対の第2補強板60を介した偶力F
3として、大梁10の下フランジ12にそれぞれ伝達される。このため、大梁10のウェブ13に作用する一対の偶力F
1がさらに小さくなり、第1小梁15に横座屈がさらに発生し難くなる。
【0072】
〔6.本実施形態の効果〕
以上説明したように、本実施形態の梁接合構造1では、大梁10と第1小梁15とは、互いに交差するように配置されるとともに、大梁10の上フランジ11と第1小梁15の上フランジ16とが同じ高さに配置されている。第1小梁15のせいは大梁10のせいよりも小さいため、第1小梁15の下フランジ17は大梁10のウェブ13と同じ高さに配置されている。大梁10のウェブ13に第1ウェブガセットプレート20を介して、第1小梁15のウェブ18が接合されている。第1フランジガセットプレート25は、大梁10のウェブ13、第1ウェブガセットプレート20、及び第1小梁15の下フランジ17にそれぞれ接合されている。さらに、第1補強板30は、大梁10の下フランジ12及び第1フランジガセットプレート25にそれぞれ接合されている。
このため、第1小梁15が横座屈する過程で、第1小梁15の下フランジ17から第1フランジガセットプレート25と大梁10のウェブ13の接合部に作用する、第1小梁15の下フランジ17を第1小梁15の面外方向に曲げる曲げモーメントを、大梁10のウェブ13により支持するだけでなく、第1フランジガセットプレート25及び第1補強板30を介して大梁10の下フランジ12により支持することができる。従って、第1小梁15の横座屈変形に対する抵抗を大きくすることができ、その結果として横座屈耐力を向上させることができる。
【0073】
また、第1ウェブガセットプレート及び第1フランジガセットプレートは、従来の梁接合構造でも用いられている部材である。平面視において、第1補強板30は、第1材軸方向Xにおいて第1小梁15の範囲内に配置される、比較的小型の部材である。このため、梁接合構造1が第1補強板30を備えても、梁接合構造1が備える比較的小型の部材の数が増え、この第1補強板30に対する比較的短い接合箇所が増えるだけである。このため、梁接合構造1の加工性及び施工性を、従来の梁接合構造と同程度に維持することができる。
一対の第1フランジガセットプレート25と大梁10の下フランジ12の間に比較的小型の部材を取り付けるだけの、わずかな使用鋼材量の増加で第1小梁15の横座屈耐力を向上させることができ、第1小梁15の横座屈を抑制するために第1小梁15の断面寸法を変える必要が無いため、梁接合構造1を合理的に設計することができる。梁接合構造1に用いられる横補剛材を、削減することができる。
【0074】
梁接合構造1は、第1補強板30を備える。これにより、第1小梁15の下フランジ17から第1フランジガセットプレート25を介して伝達された曲げモーメントを、大梁10のウェブ13に沿って延びる第1補強板30により大梁10の下フランジ12に伝達し、大梁10の下フランジ12により支持することができる。
梁接合構造2は、一対の第2補強板60を備える。このため、第1小梁15の下フランジ17から第1フランジガセットプレート25を介して伝達された曲げモーメントを、第1小梁15のウェブ18に沿って延びる一対の第2補強板60により大梁10の下フランジ12に伝達し、大梁10の下フランジ12により支持することができる。
【0075】
梁接合構造3は、互いに接合された第1補強板30及び一対の第2補強板60を備える。従って、第1小梁15の下フランジ17から第1フランジガセットプレート25を介して伝達された曲げモーメントを、第1補強板30及び一対の第2補強板60の両方により大梁10の下フランジ12に伝達し、大梁10の下フランジ12により支持することができる。
また、第1補強板30が沿う方向と第2補強板60が沿う方向とが互いに交差するとともに、第1補強板30及び第2補強板60が互いに接合されている。このため、第1フランジガセットプレート25、第1補強板30、及び一対の第2補強板60全体としての剛性が向上する。従って、第1小梁15の横座屈耐力をより向上させることができる。
【0076】
第1小梁15の下フランジ17と一対の第1フランジガセットプレート25とは、溶接接合部26により接合されている場合がある。この場合には、溶接接合部26により、第1小梁15の下フランジ17と一対の第1フランジガセットプレート25とを確実に接合することができる。
第1小梁15の下フランジ17と一対の第1フランジガセットプレート25Aとは、ボルト接合部55によりそれぞれ接合されている場合がある。この場合には、ボルト接合部55により、第1小梁15の下フランジ17と一対の第1フランジガセットプレート25Aとを確実に接合することができる。
【0077】
第1補強板30は、大梁10の下フランジ12及び第1フランジガセットプレート25に、隅肉溶接部によりそれぞれ接合されている。従って、隅肉溶接部により、大梁10の下フランジ12及び第1フランジガセットプレート25と第1補強板30とをそれぞれ確実に接合することができる。また、第1補強板30と大梁10の下フランジ12及び第1フランジガセットプレート25が断続隅肉溶接部によりそれぞれ接合されている場合がある。この場合には、これらを隅肉溶接により連続的に溶接した場合に比べて、隅肉溶接する範囲を低減させ、接合を容易に行うことができる。
【0078】
また、本実施形態の梁接合方法S1では、まず、大梁10のウェブ13に、第1ウェブガセットプレート20及び第1フランジガセットプレート25をそれぞれ接合する。第1フランジガセットプレート25を、第1ウェブガセットプレート20に接合する。第1補強板30を、大梁10の下フランジ12及び第1フランジガセットプレート25にそれぞれ接合する。
次に、大梁10と第1小梁15とを、互いに交差するように配置するとともに、大梁10の上フランジ11と第1小梁15の上フランジ16とを同じ高さに配置する。第1小梁15のせいは大梁10のせいよりも小さいため、第1小梁15の下フランジ17は大梁10のウェブ13と同じ高さに配置される。さらに、第1ウェブガセットプレート20を第1小梁15のウェブ18に接合し、第1フランジガセットプレート25を第1小梁15の下フランジ17に接合することで、大梁10と第1小梁15とを接合する。
このため、第1小梁15が横座屈する過程で、第1小梁15の下フランジ17から第1フランジガセットプレート25と大梁10のウェブ13の接合部に作用する、第1小梁15の下フランジ17を第1小梁15の面外方向に曲げる曲げモーメントを、大梁10のウェブ13により支持するだけでなく、第1フランジガセットプレート25及び第1補強板30を介して大梁10の下フランジ12により支持することができる。従って、第1小梁15の横座屈変形に対する抵抗を大きくすることができ、その結果として横座屈耐力を向上させることができる。
【0079】
また、第1ウェブガセットプレート及び第1フランジガセットプレートは、従来の梁接合方法でも用いられている部材である。例えば、平面視において、第1補強板30は、第1材軸方向Xにおいて第1小梁15の範囲内に配置される、比較的小型の部材である。このため、梁接合方法S1で第1補強板30を用いても、梁接合方法S1で用いる比較的小型の部材の数が増え、この第1補強板30に対する比較的短い接合箇所が増えるだけである。このため、梁接合方法S1の加工性及び施工性を、従来の梁接合方法と同程度に維持することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
例えば、第1実施形態の梁接合構造1では、第1補強板30は、自身の厚さ方向が、水平面に沿うとともに、この自身の厚さ方向が第1材軸方向X及び第2材軸方向Yにそれぞれ交差するように配置されてもよい。
【0081】
梁接合構造2が備える第2補強板60の数は制限されず、1つだけでもよい。
第1補強板30は、大梁10の下フランジ12及び第1フランジガセットプレート25に、突合せ溶接部等によりそれぞれ接合されていてもよい。
梁接合構造1,1A,2,2A,3,3Aは、第2小梁35、第2ウェブガセットプレート40、一対の第2フランジガセットプレート45、及び第1補強板50を備えなくてもよい。
【0082】
大梁10はH形鋼に限定されず、大梁は、上フランジ、下フランジ、及びウェブを有し、大梁の材軸方向に直交する断面形状がH形状である部材であれば、限定されない。第1小梁15及び第2小梁35についても、大梁10と同様である。
【符号の説明】
【0083】
1,1A,2,2A,3,3A 梁接合構造
10 大梁(第1梁)
11,16,36 上フランジ
13,18,38 ウェブ
15 第1小梁(第2梁)
12,17,37 下フランジ
20 第1ウェブガセットプレート(第1接続板)
25,25A 第1フランジガセットプレート(第2接続板)
30 第1補強板(補強部材)
35 第2小梁
55 ボルト接合部
60 第2補強板(補強部材)
65 補強部材
S1 梁接合方法
X 第1材軸方向(材軸方向)
Y 第2材軸方向(材軸方向)