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特開2024-125618フラフープ及びフラフープの製造方法
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  • 特開-フラフープ及びフラフープの製造方法 図1
  • 特開-フラフープ及びフラフープの製造方法 図2A
  • 特開-フラフープ及びフラフープの製造方法 図2B
  • 特開-フラフープ及びフラフープの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125618
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】フラフープ及びフラフープの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 19/00 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
A63B19/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033549
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000109288
【氏名又は名称】チャコット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003498
【氏名又は名称】弁理士法人アイピールーム
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】芦川 三枝子
(57)【要約】      (修正有)
【課題】所定の競技や演技に耐えられる強度及び剛性を有すると共に、これらにより身体の部位に与える衝撃を緩和する。
【解決手段】本フラフープFは、環状の外形を形成する筒状の本体部1と、本体部1の内面から内側に突出するように形成された突起部2とを備え、本体部1の厚みW3と突起部2の突出量W4との比率は、1:2~8:1である。突起部2は、それぞれ対向する位置に少なくとも一組形成されており、本体部1の環状方向に連続して形成されている。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の外形を形成する筒状の本体部と、
本体部の内面から内側に突出するように形成された突起部とを備え、
本体部の厚みと突起部の突出量との比率は、1:2~8:1である
ことを特徴とするフラフープ。
【請求項2】
突起部は、それぞれ対向する位置に少なくとも一組形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のフラフープ。
【請求項3】
突起部は、本体部の環状方向に連続して形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のフラフープ。
【請求項4】
直線状の型に熱可塑性樹脂を流し込み、筒状の本体部と、本体部の内面から内側に突出するように形成された突起部とを備えた棒状体を得る工程と、
棒状体を環状の型に嵌め込んで環状体を得る工程と、
環状体の端面同士を接着する工程と
を含むフラフープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玩具又は競技や演技の手具としてのフラフープ及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フラフープは、老若男女問わず玩具として親しまれ、また、新体操やダンスのような競技や演技の手具としても普及している。フラフープは、首・腰・腕・脚といった身体の一部を軸に回転させたり、上空に投げたり、地面に落として弾ませたりして使用されていた。総じて、回転させるのがフラフープの基本動作であることから、回転効率を良くしたり、身体の一部に掛かる負担を軽減したりする工夫がなされてきた。
【0003】
例えば特許文献1には、回転中に身体と接触する側に、回転の加速を付けるべく回転方向に摩擦抵抗を増やすための縦リブと、落下を阻止するべく落下方向の摩擦抵抗を増やすための横リブとを備えたフラフープが開示されている。この構成によれば、身体との間の回転方向の滑りを軽減させ、また身体との間の落下方向の滑りを軽減させる効果が期待されていた(「要約」参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-24987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、耐久性や安定性や操作性について言及されていない。換言すると、特許文献1に記載のフラフープは、上述した基本動作の習得を目指す初心者向けであり、上記基本動作より難易度の高い動作の習得を目指す熟練者や、上空に投げたり地面に落として弾ませたり転がしたりする競技者や演技者向けとは言い難い。すなわち、初心者以上のユーザーにとって耐久性や安定性や操作性はフラフープを選択する上で重要視される要素である。
【0006】
従来のフラフープの中には、細長い筒状の棒状体の両方の長手端同士を筒内に挿入したジョイント材を介して接続してリングのような環状体に形成されたものがあり、換言すると、こういったフラフープでは、上記長手端の端面の面積が少な過ぎて接着できないため上記ジョイント材を介して接続せざるを得なかった。ジョイント材の仕様は、例えば長さ40~120mm、重量9~26gである。そのため、例えば上空から落下して地面に衝突したフラフープが、その衝撃で上記ジョイント材から環状体が抜けてしまい破損することがあった。このことから、特に競技者や演技者向けのフラフープは、使用中に所定の衝撃が加わっても破損しにくくすべきである。
【0007】
また、従来のフラフープは、上空に投げられたり地面に向かって落ちたり転がったりするときに、縦方向及び/又は横方向にブレやすかったため、競技者や演技者はこのようなフラフープのブレの度合いを考慮せざるを得なかった。すなわち、競技者や演技者にとって、フラフープの仕様が少なくとも競技や演技の精度を低下させるべきではなく、好ましくは上記精度の向上に寄与すべきである。
【0008】
そこで、本発明の目的は、競技や演技のような使用により加わる衝撃に適した耐久性、上記使用に対して求められる精度に適した安定性、及び競技や演技の精度の向上に寄与する操作性を有するフラフープ及びフラフープの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明におけるフラフープは、環状の外形を形成する筒状の本体部と、本体部の内面から内側に突出するように形成された突起部とを備え、本体部の厚みと突起部の突出量との比率は、1:2~8:1であることを特徴とする。
【0010】
突起部は、それぞれ対向する位置に少なくとも一組形成されていることが望ましい。
【0011】
突起部は、本体部の環状方向に連続して形成されていることが望ましい。
【0012】
また、本発明におけるフラフープの製造方法は、直線状の型に熱可塑性樹脂を流し込み、筒状の本体部と、本体部の内面から内側に突出するように形成された突起部とを備えた棒状体を得る工程と、棒状体を環状の型に嵌め込んで環状体を得る工程と、環状体の端面同士を接着する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、競技や演技のような使用により加わる衝撃に適した耐久性、上記使用に対して求められる精度に適した安定性、及び競技や演技の精度の向上に寄与する操作性を得られる効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態におけるフラフープの平面図(A)及び側面図(B)である。
図2A】上記フラフープの環状方向に対する直交方向{図1(A)のX-X部分}の端面図である。
図2B】上記フラフープの環状方向{図1(B)のY-Y部分}の端面図の部分拡大図である。
図3】上記フラフープの製造工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図3を参照しつつ、本発明の一実施形態におけるフラフープ(以下「本フラフープF」ともいう。)及びこのフラフープの製造方法(以下「本製造方法」ともいう。)について説明する。これらの図において、複数個存在する同一の部位については、一つの部位のみに符番した部分もある。説明の便宜上、所定の部位やこの引き出し線を想像線(二点鎖線)で示し、断面部分をハッチングで示した部分もある
【0016】
図1及び図2Aに示すように、本フラフープFは、平面視で環状の外形を形成する筒状の本体部1と、本体部1の内面から内側に突出するように形成された突起部2とを備えており、用途を限定されず、玩具として用いられてもよいが、相応しくは新体操やダンスといった競技や演技の手具として用いられるものである。本フラフープFは、本体部1と突起部2とに相当する部位を備えた棒状体が環状体に成型された後に棒状体の両方の長手端に相当する環状体の端面同士が接着されて形成されたものである。
【0017】
本フラフープFの素材は、特に限定されないが、アルミ・ステンレス・チタン・これらの合金といった金属でもよいが、好ましくは重量が軽く、密度が低めであり、例えば軽量かつ軟性なポリエチレン・高密度ポリエチレン・ポリ塩化ビニルといった熱可塑性樹脂であり、これら熱可塑性樹脂やパルプやタルク又はバイオプラスチックを含む混合素材でもよい。
【0018】
本フラフープFの重量は、特に限定されないが、例えば玩具又は競技や演技の手具として100g以上1500g未満でよく、15才以下のジュニア向けの新体操の手具として相応しくは260g以上300g未満であり、16才以上のシニア向けの新体操の手具として相応しくは300g以上350g未満である。
【0019】
図1(B)に示すように、本フラフープFの直径W1は、特に限定されないが、例えば玩具又は競技や演技の手具として500mm以上1500mm未満でよく、15才以下のジュニア向けを含む新体操の手具として相応しくは700mm以上900mm未満であり、16才以上のシニア向けの新体操の手具として相応しくは800mm以上900mm未満である。
【0020】
図2A示すように、本体部1の直径W2は、特に限定されないが、例えば玩具又は競技や演技の手具として10mm以上30mm未満でよく、15才以下のジュニア向けを含む新体操の手具として相応しくは15mm以上20mm未満である。
【0021】
図2A及び図2Bに示すように、本体部1の厚みW3は、特に限定されないが、例えば玩具又は競技や演技の手具として1.5mm以上4mm未満でよく、15才以下のジュニア向けを含む新体操の手具として相応しくは1.5mm以上3mm未満である。本体部1の厚みW3は、上述した本フラフープFの素材により異なり、例えば相対的に低密度の素材で厚めになってもよい。
【0022】
図2Aに示すように、突起部2の二等分線は、本体部1の中心線L上に位置し、換言すると、突起部2は、この中心線Lで二等分される形状かつ向きであることにより安定性をより向上させやすいが、この中心線Lで二等分されない形状であってもよく、この中心線Lに対して所定の角度斜めに傾くような向きであってもよい。
【0023】
突起部2の突出量W4は、特に限定されないが、例えば玩具又は競技や演技の手具として0.5mm以上3mm未満でよく、15才以下のジュニア向けを含む新体操の手具として相応しくは1mm以上2mm未満であり、0.5mm未満だと突出量W4が少な過ぎて上述した環状体の端面同士が接着しにくく、3mm以上だと突出量W4が多過ぎて本フラフープFの重量や強度及び/又は剛性が増え過ぎるおそれがある。
【0024】
突起部2の幅W5は、突出量4と略同等であるが、突出量4より細くても太くてもよく、細過ぎると上述した環状体の端面同士が接着しにくく、太過ぎると本フラフープFの重量や強度及び/又は剛性が増え過ぎるおそれがある。
【0025】
本体部1の厚みW3と突起部2の突出量W4との比率は、特に限定されないが、1:2~8:1であり、15才以下のジュニア向けを含む新体操の手具として相応しくは3:4~3:1である。この構成によれば、突出部2により、接着面積を増やして上述した環状体の端面同士の接着強度を高められるため、本フラフープFを破損させにくく、本体部1の強度及び剛性を高められるため、投げたり落としたり回転させたりしても本フラフープFをブレ(ゆがみ)にくくする効果を期待できる。
【0026】
本体部1の厚みW3より突起部2の突出量W4が相対的に多くても少なくてもよいが、所望の重量に対し、1:2より多い比率で突起部2が突出すると本体部1が薄過ぎるため本フラフープFが破損しやすいおそれがあり、8:1より小さい比率で突起部2が突出すると本体部1の強度及び剛性が低過ぎるため本フラフープFがブレやすいおそれがある。
【0027】
図2Aに示すように、突起部2の端面形状の最内側は、円弧であるが、これに限定されず、直線でも、鈍角を成す角でもよい。突起部2の端面形状のうち先端部分の円弧の半径(以下「R半径」ともいう。)は、0.5mm以上1mm未満であり、0.5mm未満だと突起部2の端面形状が細くなり過ぎてしまい、1mm以上だと円弧に成形しにくいおそれがある。
【0028】
突起部2は、本体部1の筒内円周方向に対して放射状に形成されており、それぞれ対向する位置に四組形成されているが、一組でも二~三組でも五組以上形成されていてもよく、それぞれ対向する位置に少なくとも一組形成されることで、本体部1の強度及び剛性を所望の状態にしやすい効果を期待できる。すなわち、本体部1の筒内円周方向における突起部2の数又は組数かつ位置が本体部1の強度及び剛性に影響し、突起部2が本体部1の筒内円周方向に対して均等に形成されているほど、本体部1の強度及び剛性を所望の状態にしやすくなる。突起部2は、上記効果と同等の効果を期待できる限り、それぞれ対向しないずれた位置に1つ又は2つ以上形成されてもよい。
【0029】
図2Bに示すように、突起部2は、本体部1の環状方向に連続して形成されていることで、本体部1の強度及び剛性を所望な状態にしやすいが、不連続に形成されていてもよく、換言すると、所定の間隔毎に2つ以上形成されてもよい。すなわち、本体部1の環状方向における突起部2の数が本体部1の強度及び剛性に影響し、突起部2が本体部1の環状方向に対して連続して1つ又は2つ以上狭い間隔かつ等間隔で密に形成されているほど、本体部1の強度及び剛性を所望の状態にしやすくなる。
【0030】
図3に示すように、本製造方法は、まず直線状の型C1に熱可塑性樹脂を流し込み、筒状の本体部と、本体部の内面から内側に突出するように形成された突起部とを備えた棒状体S1を得る(以下「棒状体成型工程」ともいう。)。直線状の型C1は、断面視で円形状に成形された外側の筒体と、凹凸状に成形された内側の筒体とを備えており、熱可塑性樹脂は、外側の筒体と内側の筒体との間に流し込まれ、所定の時間経過後、外側の筒体と内側の筒体とを外すと棒状体S1が成型されている。次に、棒状体Sを環状の型C2に嵌め込んで環状体S2を得る(以下「環状体成型工程」ともいう。)。そして、棒状体S1の長手方向の端面に相当する環状体S2の端面同士を所定の接着剤で接着し、接着部分の外側から上記端面同士の境目の目隠し用として薄めのテープを巻く(以下「接着工程」ともいう。)。これらの工程を経て本フラフープFの製造が完了する。
【0031】
接着工程において、環状体S2の端面は本体部と突起部とが合わさった面積を有する分、上記端面同士の接着面積が本体部のみの面積よりも広くなるため接着しやすいのみならず、上記端面同士の接着強度を向上させる効果を期待できる。換言すると、突起部により上記端面同士の接着面積を増やせて所望の接着強度を得られるため、従来のようなジョイント材を介して上記端面同士を接続し、上記端面同士の境界周辺にテープを巻くような余計な補強が不要になる効果を期待できる。すなわち、上記補強がなくなると、上記ジョイント材及びテープに伴う上記端面同士周辺の加重及び膨らといった部分的な偏りがなくなり、全周に渡って均一な重さ及び太さに形成できることから、フラフープ全体の重心バランスの歪みを回避して使用中の形状変形を最低限に抑えられるため、フラフープの耐久性、安定性、及び操作性の向上が実現する。
【0032】
本製造方法は、本フラフープFを得られればいずれの工程を経てもよいが、例えば上記棒状体成型工程は、所定の間隔で直線状に形成された突起部を有する熱可塑性樹脂シートを得る工程と、この熱可塑性樹脂シートを丸めて細長い筒状の棒状体を得る工程とでもよい。
【実施例0033】
<実施例と比較例>
実施例に相当する本フラフープFは、素材が高密度ポリエチレン(配合率100%)、全体の直径W1が810mm、重量が320g、本体部1の直径W2が17.5mm、本体部1の厚みW3が2.35mm、突起部2の突出量W4及び幅W5が1.5mm、本体部1の厚みと突起部2の突出量W4との比率が8:5、突起部2の先端部分のR半径が0.75mm、突起部2の数は8つ(四組)、突起部2の配置はそれぞれ対向する位置かつ等間隔、環状体の端面同士が接着剤で接着されてこの接着部分の外周にテープが巻かれたものである。
【0034】
比較例に相当するフラフープは、素材が所定の樹脂等、全体の直径Wが810mm程度、重量が320g程度、本体部の直径が17.5mm程度、本体部の厚みが所定の寸法、長さが40mm程度のジョイント材を介して環状体の端部分同士が接続されてこの接着部分の外周にテープが巻かれたものである。
【0035】
<評価試験方法>
耐久性の評価として、実施例及び比較例を5mの高さから地面に落下させて破損の有無を確認する。また、安定性の評価として、実施例及び比較例を新体操の手具として所定の演技に用いてブレの度合いを確認する。
【0036】
<試験結果>
【表1】
【0037】
この結果から、実施例では、突起部2により接着面積を増やして環状体の端面同士の接着強度が高まったため、本フラフープFは破損しなかった。さらに、本体部1の強度及び剛性が高まったため、投げたり落としたり回転させたりしても本フラフープFはブレ(ゆがみ)にくかった。
【0038】
また、比較例より実施例の素材のほうが低密度であり、双方の重量が同じ場合、比較例より実施例の図2Aに示すX-X方向の端面積のほうが広くなるため、比較例より実施例のほうが相対的に柔らかく身体に対するクッション性が高まったことから、被験者が感じる身体の痛みが軽減された。
【0039】
すなわち、実施例としての本フラフープFは、全体的に耐久性が向上したため、形状の変形や接合部分等の欠け・亀裂・断裂が生じにくくなり、さらに安定性が向上したため、真っ直ぐに上がり、落ち、転がって進み、戻りやすくなり、こういった使用を含め操作性の向上に寄与することを確認できた。
【0040】
なお、本実施形態に示したフラフープ及びこの製造方法は、上述した内容に限定されず、同等の効果を得られる限り、あらゆる部位の位置・形状・寸法及び部位同士の関係や、工程の順序及び工程同士の関係を含む。
【符号の説明】
【0041】
F フラフープ
1 本体部
2 突起部
S1 棒状体
S2 環状体
図1
図2A
図2B
図3