(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125636
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】冷蔵倉庫の構築方法および構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20240911BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20240911BHJP
E04H 5/02 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
E04B1/76 500Z
E04B1/94 F
E04H5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033579
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】藤井 豊巳
(72)【発明者】
【氏名】小平 一浩
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DE01
2E001FA11
2E001GA12
2E001HA32
2E001HA34
2E001HD03
2E001HD04
(57)【要約】
【課題】断熱性および耐火性を確保しつつ、施工性向上および省資源化を図ることができる冷蔵倉庫の構築方法およびその構造を提供する。
【解決手段】二階以上の階層での床スラブSnを構築する際に、梁3と梁3との間に間隔をあけて複数本の支持材5を架け渡し、上下一対の薄肉金属板6aの間に不燃断熱層6bが介在して構成されている不燃断熱パネル6を、各支持材5の上に敷設して平面を形成し、この平面上にコンクリート床9を形成し、各梁3の不燃断熱パネル6よりも下方に突出している部分およびこの部分に隣接する不燃断熱パネル6の下面領域を断熱材10a、耐火コート材10bを吹き付けることにより耐火断熱層10を形成し、コンクリート9aの固化後に、複数本の支持材5のうち一部の本数を、架け渡した梁3と梁3との間から取外して冷蔵倉庫1の外壁12の胴縁材13として使用する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二階以上の階層を有する冷蔵倉庫の構築方法において、二階以上の階層での床スラブを構築する際に、梁と梁との間に間隔をあけて複数本の支持材を架け渡し、それぞれの前記支持材の上に不燃断熱パネルを敷設して平面を形成し、この平面上にコンクリートを打設してコンクリート床を形成し、前記梁の前記不燃断熱パネルよりも下方に突出している部分およびこの部分に隣接する前記不燃断熱パネルの下面領域を吹き付け材により覆うことにより耐火断熱層を形成し、打設した前記コンクリートが固化した後に、複数本の前記支持材のうち一部の本数を、架け渡した前記梁と梁との間から取外して前記冷蔵倉庫の外壁の胴縁材として使用する冷蔵倉庫の構築方法。
【請求項2】
前記不燃断熱パネルと同じ仕様の不燃断熱パネルを、前記冷蔵倉庫の壁体として使用する請求項1に記載の冷蔵倉庫の構築方法。
【請求項3】
前記梁の上面と前記不燃断熱パネルとの上面とを同じレベルに設定する請求項1または2に記載の冷蔵倉庫の構築方法。
【請求項4】
二階以上の階層を有する冷蔵倉庫の構造において、二階以上の階層での床スラブが、梁と梁との間に間隔をあけて架け渡された支持材と、前記支持材の上に敷設されて平面を形成している不燃断熱パネルと、前記平面上に形成されているコンクリート床と、前記梁の前記不燃断熱パネルよりも下方に突出している部分およびこの部分に隣接する前記不燃断熱パネルの下面領域を覆う耐火断熱層とを有し、前記支持材と前記冷蔵倉庫の外壁の胴縁材とが同じ仕様である冷蔵倉庫の構造。
【請求項5】
前記不燃断熱パネルが、上下一対の薄肉金属板の間に不燃断熱層が介在して構成されている請求項4に記載の冷蔵倉庫の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵倉庫の構築方法およびその構造に関し、さらに詳しくは、断熱性および耐火性を確保しつつ、施工性向上および省資源化を図ることができる冷蔵倉庫の構築方法およびその構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵倉庫(冷凍倉庫を含む)は、内部を低温に維持するために高い断熱性が要求され、構造物としての耐火性も必要になる。従来、冷蔵倉庫の二階以上の階層での床スラブを構築するには例えば、梁にトラス付きデッキを架設し、このデッキの表面側(上面側)に鉄筋コンクリート床を形成する。そして、このデッキプレートの裏面側(下面側)は梁も含めて、断熱材(発泡ウレタン)や防火コート材などによって被覆される。
【0003】
断熱材(発泡ウレタンなど)や防火コート材は、現場で吹き付け施工される(例えば、特許文献1参照)。上階の梁およびこの梁に架設されたデッキに対する吹き付け施工は、高所での作業になるので施工面積が広くなると作業者の負担が過剰になり、また、養生作業も煩雑になるため施工性が低下する要因になる。また、近年の資材不足などの観点から、使用する資源を削減できれば有益である。それ故、冷蔵倉庫の断熱性および耐火性を確保しつつ、施工性向上および省資源化を図るには種々検討の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、断熱性および耐火性を確保しつつ、施工性向上および省資源化を図ることができる冷蔵倉庫の構築方法およびその構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の冷蔵倉庫の構築方法は、二階以上の階層を有する冷蔵倉庫の構築方法において、二階以上の階層での床スラブを構築する際に、梁と梁との間に間隔をあけて複数本の支持材を架け渡し、それぞれの前記支持材の上に不燃断熱パネルを敷設して平面を形成し、この平面上にコンクリートを打設してコンクリート床を形成し、前記梁の前記不燃断熱パネルよりも下方に突出している部分およびこの部分に隣接する前記不燃断熱パネルの下面領域を吹き付け材により覆うことにより耐火断熱層を形成し、打設した前記コンクリートが固化した後に、複数本の前記支持材のうち一部の本数を、架け渡した前記梁と梁との間から取外して前記冷蔵倉庫の外壁の胴縁材として使用することを特徴とする。
【0007】
本発明の冷蔵倉庫の構造は、二階以上の階層を有する冷蔵倉庫の構造において、二階以上の階層での床スラブが、梁と梁との間に間隔をあけて架け渡された支持材と、前記支持材の上に敷設されて平面を形成している不燃断熱パネルと、前記平面上に形成されているコンクリート床と、前記梁の前記不燃断熱パネルよりも下方に突出している部分およびこの部分に隣接する前記不燃断熱パネルの下面領域を覆う耐火断熱層とを有し、前記支持材と同じ仕様の支持材が前記冷蔵倉庫の外壁の胴縁材として使用されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、床スラブを、前記不燃断熱パネルと、その上に形成された前記コンクリート床と、前記梁の前記不燃断熱パネルよりも下方に突出している部分およびこの部分に隣接する前記不燃断熱パネルの下面領域を覆う耐火断熱層とを有する構成にすることで、必要な断熱性および耐火性を確保することができる。また、前記不燃断熱パネルを前記梁と前記梁との間に間隔をあけて架け渡された支持材の上に敷設されて平面を形成することで、広範囲を効率的に不燃断熱構造にすることができる。前記耐火断熱層は、前記梁の下方突出部分および前記下面領域に設ければよいので、吹き付け作業により前記耐火断熱層を形成する面積が抑制され、これに伴い、高所での作業負担が大幅に削減されるので施工性向上に大きく寄与する。さらには、前記支持材を前記胴縁材として利用することができ、前記耐火断熱層の施工時に吹き付け作業によって周囲に飛散して無駄になる材料も削減できるので、省資源化の観点で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の冷蔵倉庫の構造を縦断面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の二階での床スラブを平面視で例示する説明図である。
【
図6】
図2の柱と梁とを平面視で例示する説明図である。
【
図7】
図6の梁と梁との間に支持材を架け渡した状態を平面視で例示する説明図である。
【
図8】
図7の状態を断面視で例示する説明図である。
【
図9】
図7の支持材の上に不燃断熱パネルを敷設して平面を形成する工程を平面視で例示する説明図である。
【
図10】
図9の敷設された不燃断熱パネルにより平面を形成した状態を平面視で例示する説明図である。
【
図12】
図11の不燃断熱パネルの表面上にコンクリート床を形成した状態を断面視で例示する説明図である。
【
図13】
図12の一部の支持材を取り外した状態を断面視で例示する説明図である。
【
図14】構築している外壁を拡大して断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の冷蔵倉庫の構築方法およびその構造を、図に示した実施形態に基づいて説明する。冷蔵倉庫とは内部を10℃以下に保持する倉庫であり冷凍倉庫も含まれる。
【0011】
図1~
図4に例示する冷蔵倉庫1の構造の実施形態は、二階以上の階層を有している。この冷蔵倉庫1では、一階の床スラブS1は基礎梁に支持された断熱建材と鉄筋コンクリート床との積層などの公知の構造が採用され、二階以上の階層での床スラブS2、S3、S4(以下、総称して床スラブSnという)および外壁12は特徴を有している。それぞれの床スラブSnの構造は実質的に同じなので代表して二階の床スラブS2の構造を説明する。
【0012】
この床スラブS2は、一階の天井に位置に延在する梁3の上に形成されている。したがって、三階の床スラブS3は二階の天井に延在する梁3の上に形成され、四階の床スラブS4は三階の天井に延在する梁3の上に形成されている。
図2に例示するように、この実施形態では、梁3として、柱2どうしの間に延在する大梁3aと、大梁3aどうしの間に間隔をあけて配置された小梁3bとを有している。これらの梁3(3a、3b)は鉄骨梁である。梁3(3a、3b)の上面の適宜の位置にはスタッド4が突設されている。
【0013】
床スラブS2は、梁3(3a、3b)と梁3(3a、3b)との間に間隔をあけて架け渡された複数本の支持材5と、これら支持材5の上に敷設されている複数枚の不燃断熱パネル6と、これら不燃断熱パネル6の上に形成されているコンクリート床9と、それぞれの梁3の下方突出部分およびこの部分に隣接する不燃断熱パネル6の下面領域を覆う耐火断熱層10とを有している。
【0014】
それぞれの支持材5は、例えば公知のガセットプレート8を介して梁3(3a、3b)に着脱可能に取付けされている。それぞれの支持材5は、固定ボルトを外すことでガセットプレート8から取外すことができる。この実施形態では、金属製の断面C字状のチャンネル材を2本背面どうしで接合した支持材5が用いられている。支持材5は、この仕様に限定されず、断面T字状の鋼材など公知の種々の金属部材を用いることができる。
【0015】
不燃断熱パネル6は、上下一対の薄肉金属板6aの間に不燃断熱層6bが介在して構成されている。不燃断熱層6bには公知の不燃断熱材料を用いることができ、例えばイソシアヌレートフォーム、ポリウレタンフォームなどが使用される。不燃断熱層6bの厚さは要求される不燃性および断熱性、強度などに基づいて決定されるが、例えば50mm以上300mm以下にすることが好ましい。この厚さが50mm未満では十分な不燃性および断熱性を確保し難くなり、300mm超では重量増加によって施工性低下の要因になる。不燃断熱層6bそれ自体は不燃断熱パネル6の強度を担う材料ではないが、不燃断熱層6bが厚くなることで一対の薄肉金属板6aの間隔が増大して不燃断熱パネル6の曲げ強さが向上する。したがって、不燃断熱層6bの厚さは、不燃断熱パネル6に要求される強度(曲げ強さ)も考慮して設定される。
【0016】
不燃断熱層6bの両表面それぞれの全範囲を覆う薄肉金属板6aは、一般構造用炭素鋼板など各種の鋼板、アルミニウム合金板等で形成される。薄肉金属板6aの厚さは例えば0.35mm以上1.0mm以下であり、0.5mm以上0.8mm以下にすることがより好ましい。この厚さが過小になると不燃断熱パネル6の十分な強度を確保し難くなり、過大になると重量が増大して施工性低下の要因になる。薄肉金属板6aによって湿気が遮断される。
【0017】
図5に例示するように不燃断熱パネル6は、基本的に四角形状の板状体であり、不燃断熱層6bの両表面に薄肉金属板6aが接合されている。不燃断熱層6bと2枚の薄肉金属板6aとを一体構造にした不燃断熱パネル6が工場で製造されて現場に運搬される。不燃断熱パネル6は、必要に応じて現場にて所定形状に加工される。必要枚数の不燃断熱パネル6が、隣り合うどうしの端面を対向させて支持材5の上に敷設されることで平面を形成している。
【0018】
この実施形態では、それぞれの梁3(3a、3b)の上面とそれぞれの不燃断熱パネル6との上面とが同じレベル(±10mmの範囲)に設定されている。このように、両者の上面が実質的に同じレベルに設定されていると、梁3(3a、3b)および不燃断熱パネル6の上でのコンクリート床9の厚さが同じになる。これに伴い、コンクリート床9の品質が広範囲で均一化され、局部的な劣化などが回避するには有利になる。
【0019】
隣り合って配置される不燃断熱パネル6の対向する端面どうしのすき間には発泡ウレタンなどの充填材7が詰められている。不燃断熱パネル6の対向する端面どうしを跨ぐように、例えばアルミニウム基材の防湿テープが延在して、すき間に詰められた充填材7が被覆される。
【0020】
梁3(3a、3b)には、ガセットプレート8の上方位置に金属製の受け板8aが溶接によって水平方向に突設されている。この受け板8aは、不燃断熱パネル6の下面でこの不燃断熱パネル6の端面と梁3(3a、3b)とのすき間を覆うように配置されている。
【0021】
コンクリート床9は、敷設された不燃断熱パネル6によって形成された平面の上に、この平面の全範囲を覆うように形成されている。このコンクリート床9は、コンクリート9aの内部に鉄筋9bが配置されている鉄筋コンクリート製である。梁3(3a、3b)と不燃断熱パネル6の端面とのすき間にコンクリート9aが入り込んで、受け板8aの上側領域はコンクリート9aが充填された状態になっている。尚、
図2では、コンクリート床9を省略して図示していない。
【0022】
耐火断熱層10は、梁3(3a、3b)の不燃断熱パネル6よりも下方に突出している部分およびこの部分に隣接する不燃断熱パネル6の下面領域を被覆する断熱材10aおよび耐火コート材10bとで形成されている。耐火断熱層10は、梁3(3a、3b)および不燃断熱パネル6どうしの間が露出しないように形成すればよく、梁3(3a、3b)の周辺部だけに設ければよい。したがって、不燃断熱パネル6の大部分の下面領域は、耐火断熱層10に被覆されずに露出した状態になっている。
【0023】
断熱材10aおよび耐火コート材10bはそれぞれ、吹き付け作業によって吹き付けられる吹き付け材である。断熱材10aには、例えば発泡ウレタンなどの公知の断熱材が使用される。耐火コート材10bには、例えばロックウール、セラミックファイバー、セラミック系耐火被覆材等の公知の各種不燃材が使用される。梁3(3a、3b)の下方突出部の周辺部は、断熱材10aおよび耐火コート材10bの他に必要に応じてその他の吹き付け材によって被覆される。
【0024】
それぞれの階層では、床スラブS1、S2、S3、S4の外側端部に壁体11が立設されている。即ち、上下に隣り合う床スラブの間に壁体11が並列して壁を構成している。この実施形態では、不燃断熱パネル6が壁体11として使用されている。この壁体11と床スラブSnに使用されている不燃断熱パネル6とは同じ仕様であるが、異なる仕様にすることもできる。このように同じ仕様の不燃断熱パネル6を用いて資材の共通化を図ることで、無駄な資材を削除するには有利になる。また、使用する資材の種類が減ることで資材調達の煩雑さが軽減する。
【0025】
外壁12は、間柱12aと胴縁材13と表面板14とを有している。床スラブS1、S2、S3、S4の外側端面にはガセットプレート8を介して間柱12aが取付けられている。所定数の間柱12aが間隔あけて並列配置されていて、それぞれの間柱12aは地盤の近傍から屋根の近傍まで上下方向に延在している。
【0026】
それぞれの間柱12aには上下方向に間隔をあけて胴縁材13が固定されている。それぞれの胴縁材13は水平方向に延在している。これら胴縁材13を介して表面板14が間柱12aに固定されている。表面板14によってそれぞれの壁体11の外側が覆われている。この胴縁材13と支持材5とは同じ仕様になっている。
【0027】
屋根は公知の種々の構造を採用できる。この実施形態では、屋根材から四階の天井面になる不燃断熱パネル6が吊り下げられている。この冷蔵倉庫1では、各階層が実質的に不燃断熱パネル6によって囲まれた閉区画になっている。
【0028】
本発明により冷蔵倉庫1を構築する手順の一例を説明する。
【0029】
冷蔵倉庫1の屋内側部分(外壁12を除く部分)の一階から順次、上層階を構築し、その階層の構築が完了する前後に、その階層の屋外側部分(外壁12)を構築する。したがって、冷蔵倉庫1の一階の屋内側部分の構築が完了する前後に一階の屋外側部分(外壁12)の構築を始め、冷蔵倉庫1の二階の屋内側部分の構築が完了する前後に二階の屋外側部分(外壁12)の構築を始めるようにして、順次、屋内側部分を屋外側部分に先行して施工を行う。
【0030】
柱2および梁3(3a、3b)を公知の手順によって組み上げる。一階の床スラブS1は公知の方法で構築し、この床スラブS1の上に必要な枚数の壁体11を公知の方法で並べて立設する。
【0031】
二階の床スラブS2は、
図6に例示する梁3(3a、3b)の上に構築される。そこで、
図7に例示するように、梁3(3a、3b)と梁3(3a、3b)との間に間隔をあけて複数本の支持材5を架け渡して設置する。それぞれの支持材5は、
図8に例示するように、ガセットプレート8を介して梁3(3a、3b)に取付けて架設する。
【0032】
それぞれの梁3(3a、3b)の上下方向中途の位置には、受け板8aを溶接して張り出しておく。また、それぞれの梁3(3a、3b)の上面にはスタッド4を突設する。スタッド4は、コンクリート9aを打設前の適宜の時期に突設すればよい。
【0033】
次いで、
図9に例示するように、梁3(3a、3b)と梁3(3a、3b)との間に架け渡したそれぞれの支持材5の上に不燃断熱パネル6を敷設して平面を形成する。梁3(3a、3b)で囲まれた領域が埋まるように必要枚数の不燃断熱パネル6を敷設する。これにより、
図10、
図11に例示するように、敷設されたそれぞれの不燃断熱パネル6によって、それぞれの梁3(3a、3b)の上面と実質的に同じレベルの平面が形成される。
【0034】
図11に例示するように、それぞれの梁3(3a、3b)の上面と、不燃断熱パネル6の端面との間には若干のすき間(例えば、20mm~50mm)がある。また、不燃断熱パネル6の端面は受け板8aの上に位置している。
【0035】
次いで、コンクリート床9を形成するために、敷設された不燃断熱パネル6により形成された平面の上に鉄筋9bを配筋する。その後、この平面上にコンクリート9aを打設して、配筋した鉄筋9bおよびスタッド4などをコンクリート9aに埋設した状態にする。それぞれの梁3(3a、3b)の上面と不燃断熱パネル6の端面とのすき間には、打設されたコンクリート9aが流入する。流入したコンクリート9aは受け板8aに支持されて、梁3(3a、3b)と不燃断熱パネル6の端面と受け板8aとによって囲まれた領域にはコンクリート9aが充填される。
【0036】
したがって、この実施形態では、それぞれの不燃断熱パネル6および受け板8aは、コンクリート打設用の型枠として機能する。それぞれの支持材5は、コンクリート打設用の型枠として機能するそれぞれの不燃断熱パネル6を支持する。したがって、支持材5の仕様および配置数は、コンクリート9aを打設した際に、このコンクリート9aおよび不燃断熱パネル6の重量を支えることができるように設定する。
【0037】
打設したコンクリート9aが所定の養生期間を経て固化することで、
図12に例示するように不燃断熱パネル6により形成された平面上にコンクリート床9が形成される。コンクリート床9は自重に対抗する充分な強度を有するので、コンクリート9aが固化した後は、すべての支持材5を残存させる必要がない。
【0038】
そこで、打設したコンクリート9aが固化した後に、
図13に例示するように、支持材5のうち一部の本数を、架け渡した梁3(3a、3b)と梁3(3a、3b)との間から取外す。梁3(3a、3b)から支持材5を取り外すには、両者を接合しているガセットプレート8のボルトを外せばよい。使用した支持材5の本数のうち、例えば50%~80%の本数を取り外す。取外した支持材5は、予め設定した基準を超える変形や損傷が生じていないことを確認した上で、後述するように外壁12の胴縁材13として使用する。
【0039】
コンクリート床9が形成されると、それぞれの梁3(3a、3b)の不燃断熱パネル6よりも下方に突出している部分およびこの部分に隣接する不燃断熱パネルの下面領域に耐火断熱層10を形成する。そこで、梁3(3a、3b)の下方突出部分およびこの部分に隣接する不燃断熱パネル6の下面領域に、断熱材10a、耐火コート材10bを順次吹き付けて、梁3(3a、3b)の下方突出部分およびこの部分に隣接する不燃断熱パネル6の下面領域を、断熱材10aおよび耐火コート材10bにより覆う。これにより、
図3、
図4に例示する構造の床スラブS2が構築される。構築した床スラブS2の上に必要な枚数の壁体11を公知の方法で並べて立設する。
【0040】
図14に例示するように、二階の床スラブS2の構築が完了した時に、屋外側では一階部分の外壁12を構築している。屋外側作業では、床スラブS1、S2のコンクリート床9の外側端面に取付けたガセットプレート8に、上下に延在する間柱12aを接続する。間隔をあけて並列に立設させた間柱12aを横断するように、胴縁材13をそれぞれの間柱12aに固定する。複数本の胴縁材13が上下に所定間隔をあけて水平方向に延在させる。
【0041】
次いで、それぞれの胴縁材13に表面板14を取り付けることにより、胴縁材13を介して表面板14が間柱12aに固定された外壁12が構築される。それぞれの階層では、屋内側の作業と屋外側の作業を並行して行うこともできるが、この実施形態では、屋内側の作業を屋外側に先行して行い、屋内側の作業で取外した支持材5を、屋外側の作業で胴縁材13として使用する。
【0042】
即ち、二階の床スラブS2の構築に使用した支持材5の一部の本数を取り外して、一階部分の外壁12を構築する際に胴縁材13として使用する。或いは、この取外した支持材5を、その後、構築される二階部分、三階部分などの外壁12を構築する際に胴縁材13として使用してもよい。したがって、外壁12を構築する際に使用される胴縁材13は、新品と既に使用された支持材5とが混在する。
【0043】
このようにして、順次、四階までの屋内側作業と屋外側作業とを行なう。屋根部分は公知の手順で構築し、外壁12を屋根近傍まで延在させて形成することで、冷蔵倉庫1の構築が完了する。
【0044】
この冷蔵倉庫1の構築方法および冷蔵倉庫1の構造の実施形態によれば、上述したように床スラブSnを、不燃断熱パネル6と、コンクリート床9と、耐火断熱層10とを有する構成にすることで、冷蔵倉庫1に必要な断熱性および耐火性を確保できる。また、必要枚数の不燃断熱パネル6を支持材5の上に敷設して平面を形成することで、広範囲を効率的に不燃断熱構造にすることができる。
【0045】
耐火断熱層10は、それぞれの不燃断熱パネル6の下面全体領域ではなく、梁3(3a、3b)の下方突出部分およびこの下方突出部分に隣接する不燃断熱パネル6の下面領域に設ければよい。それ故、断熱材10a、耐火コート材10bなどの吹き付け作業によって耐火断熱層10を形成する面積が従来技術に比して大きく抑制される。これに伴い、高所での吹き付け作業の負担が大幅に削減されるので施工性向上に大きく寄与する。吹き付け作業に際して養生が必要になる周辺範囲が狭くなるので、この点においても施工性向上には有利になる。
【0046】
さらには、支持材5の一部の本数を胴縁材13としても利用するので、施工に使用する資材が削減されて省資源化に寄与する。資材不足の状況下では、このように1種類の部材を別の機能に順次利用できれば、資材待ちによる工期遅れのリスクを低減するには有利になる。また、吹き付け作業によって耐火断熱層10を形成する面積が削減されるので、吹き付け作業によって周囲に飛散して無駄になる断熱材10a、耐火コート材10bが従来技術に比して削減され、省資源化に寄与する。
【0047】
支持材5は、後に胴縁材13として使用されるので、支持材5として要求される強度および胴縁材13として要求される強度の両方を満足する仕様に設定される。また、この実施形態では、不燃断熱パネル6は、床スラブSnの部材および壁体11のいずれにも使用されるので、床スラブSnの部材として要求される強度および壁体11として要求される強度の両方を満足する仕様に設定される。
【0048】
既述した実施形態では、二階以上の階層でのすべての床スラブSn(床スラブS2、S3、S4)が上述した構造であるが、二階以上の少なくとも一階層での床スラブSnが上述した構造であればよく、二階以上の階層のうち50%以上の階層での床スラブSnが上述した構造であることが好ましい。
【符号の説明】
【0049】
1 冷蔵倉庫
2 柱
3 梁
3a 大梁
3b 小梁
4 スタッド
5 支持材
6 不燃断熱パネル
6a 薄肉金属板
6b 不燃断熱層
7 充填材
8 ガセットプレート
8a 受け板
9 コンクリート床
9a コンクリート
9b 鉄筋
10 耐火断熱層
10a 断熱材(吹き付け材)
10b 耐火コート材(吹き付け材)
11 壁体(不燃断熱パネル)
12 外壁
12a 間柱
13 胴縁材
14 表面板
S1 一階での床スラブ
Sn(S2、S3、S4) 二階以上の階層での床スラブ