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特開2024-125655ブレーキ制御装置、及びブレーキ制御用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125655
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】ブレーキ制御装置、及びブレーキ制御用プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20240911BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B60T7/12 B
B60T7/12 C
B60T7/12 F
B60T8/17 D
B60T8/17 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033618
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519373914
【氏名又は名称】株式会社J-QuAD DYNAMICS
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一城
(72)【発明者】
【氏名】大橋 祐太
(72)【発明者】
【氏名】神谷 雄介
(72)【発明者】
【氏名】村松 宗太郎
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246DA01
3D246GA27
3D246GB30
3D246GB34
3D246GB35
3D246GB36
3D246GC14
3D246GC16
3D246HA03A
3D246HB12A
3D246HB16A
3D246JA12
3D246JB41
(57)【要約】
【課題】オーバライド制御中に、変化した第1制動力に応じてブレーキ装置を制御する。
【解決手段】第1制動要求が示す制動力を第1制動力F1とし、第2制動要求が示す制動力を第2制動力F2とし、オーバライド制御を開始したときの第1制動力F1を開始制動力FSとする。オーバライド制御では、実行装置は、開始制動力FSに第2制動力F2を加算した制動力、及び第1制動力F1のうちのいずれか大きい方を、要求制動力FDとしてブレーキ装置を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキ装置を制御するブレーキ制御装置であって、
前記車両の運転支援機能を実現するアプリケーションから要求される前記ブレーキ装置による制動力を示す第1制動要求を受け付けることと、
前記車両のブレーキペダルの操作量に応じて要求される前記ブレーキ装置による制動力を示す第2制動要求を受け付けることと、
前記第1制動要求にしたがって前記ブレーキ装置を制御中に、前記第2制動要求を受け付けたときに、オーバライド制御を開始することと、を実行可能であり、
前記オーバライド制御では、
前記第1制動要求が示す制動力を第1制動力とし、前記第2制動要求が示す制動力を第2制動力とし、前記オーバライド制御を開始したときの前記第1制動力を開始制動力としたとき、
前記開始制動力に前記第2制動力を加算した制動力、及び前記第1制動力のうちのいずれか大きい方を、要求制動力として前記ブレーキ装置を制御する
ブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記オーバライド制御では、
前記第1制動力を前記要求制動力として以降、前記第2制動力が増加している期間は、前記第2制動力が増加を開始した時点での前記要求制動力よりも強い制動力を、前記要求制動力として前記ブレーキ装置を制御する
請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記オーバライド制御中に、前記要求制動力から前記第2制動力を減算した加算用要求制動力を算出し、前記第1制動力を前記要求制動力として以降、前記第2制動力が増加している期間は、前記加算用要求制動力に前記第2制動力を加算した値を前記要求制動力とする
請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項4】
運動マネージャと、制御部と、を備えており、
前記運動マネージャは、複数の前記アプリケーションから要求される運動要求を調停した結果として前記第1制動要求を前記制御部に出力し、
前記制御部は、前記第1制動要求及び前記第2制動要求を受け付けることと、前記オーバライド制御を行うことと、を実行する
請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項5】
車両のブレーキ装置を制御するコンピュータに適用されるブレーキ制御用プログラムであって、
前記車両の運転支援機能を実現するアプリケーションから要求される前記ブレーキ装置による制動力を示す第1制動要求を受け付けることと、
前記車両のブレーキペダルの操作量に応じて要求される前記ブレーキ装置による制動力を示す第2制動要求を受け付けることと、
前記第1制動要求にしたがって前記ブレーキ装置を制御中に、前記第2制動要求を受け付けたときに、オーバライド制御を開始することと、を実行させ、
前記オーバライド制御では、
前記第1制動要求が示す制動力を第1制動力とし、前記第2制動要求が示す制動力を第2制動力とし、前記オーバライド制御を開始したときの前記第1制動力を開始制動力としたとき、
前記開始制動力に前記第2制動力を加算した制動力、及び前記第1制動力のうちのいずれか大きい方を、要求制動力として前記ブレーキ装置を制御させる
ブレーキ制御用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ制御装置、及びブレーキ制御用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のブレーキ装置を制御するブレーキ制御装置が記載されている。ブレーキ制御装置は、車両の運転支援機能を実現するアプリケーションから要求される制動力を示す第1制動要求を受け付ける。また、ブレーキ制御装置は、車両のブレーキペダルの操作量に応じた制動力を示す第2制動要求を受け付ける。そして、ブレーキ制御装置は、第1制動要求にしたがってブレーキを制御中に、第2制動要求を受け付けたときに、第1制動要求よりも大きな制動力を発生させるようにブレーキを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-66726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したとおり、特許文献1に記載のブレーキ制御装置は、第1制動要求にしたがってブレーキを制御中に第2制動要求を受け付けると、その時点での第1制動要求よりも大きな制動力を発生させる。しかし、特許文献1に記載されたブレーキ制御装置は、第2制動要求を受け付けた後、ブレーキペダルの操作が終了するまでの間に、第1制動要求の値が変化することを何ら考慮していない。したがって、第2制動要求を受け付けたことに伴って制動力を大きくしている状況下で、第1制動要求の値の変化をどのように制動力に反映させるかという点でさらなる検討の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、車両のブレーキ装置を制御するブレーキ制御装置であって、前記車両の運転支援機能を実現するアプリケーションから要求される前記ブレーキ装置による制動力を示す第1制動要求を受け付けることと、前記車両のブレーキペダルの操作量に応じて要求される前記ブレーキ装置による制動力を示す第2制動要求を受け付けることと、前記第1制動要求にしたがって前記ブレーキ装置を制御中に、前記第2制動要求を受け付けたときに、オーバライド制御を開始することと、を実行可能であり、前記オーバライド制御では、前記第1制動要求が示す制動力を第1制動力とし、前記第2制動要求が示す制動力を第2制動力とし、前記オーバライド制御を開始したときの前記第1制動力を開始制動力としたとき、前記開始制動力に前記第2制動力を加算した制動力、及び前記第1制動力のうちのいずれか大きい方を、要求制動力として前記ブレーキ装置を制御するブレーキ制御装置である。
【0006】
上記構成によれば、第1制動力が大きくなることで、開始制動力に第2制動力を加算した制動力より大きくなったとき、第1制動要求力を、要求制動力としてブレーキ装置を制御する。そのため、オーバライド制御中に、第1制動力が大きくなっても、ブレーキ制御装置は、変化した第1制動力に応じてブレーキ装置を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、車両の制御システムを示す概略図である。
図2図2は、ブレーキ制御装置を示す概略図である。
図3図3は、オーバライド制御による一連の処理を示すフローチャートである。
図4図4は、各制動力を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(一実施形態)
以下、ブレーキ制御装置、及びブレーキ制御用プログラムの一実施形態について説明する。以下では、ブレーキ制御装置について、図面を参照して説明する。
【0009】
<車両の概略>
図1に示すように、車両10は、内燃機関20と、操舵装置30と、ブレーキ装置40と、制御装置50と、を備えている。
【0010】
内燃機関20は、車両10の駆動源である。内燃機関20は、図示は省略するが、スロットルバルブ、燃料噴射弁、及び点火装置などの複数のアクチュエータを有している。内燃機関20は、制御装置50によって上記の各アクチュエータが制御されることで、燃料を燃焼して、車両10の駆動力を発生する。
【0011】
操舵装置30は、車両10の操舵輪の舵角を変化させる。操舵装置30は、電動パワーステアリングを有している。制御装置50によって電動パワーステアリングのアクチュエータが制御されることで、電動パワーステアリングは、運転者によるステアリング操作をアシストする。また、制御装置50によって電動パワーステアリングのアクチュエータが制御されることで、電動パワーステアリングは、運転者によるステアリングの操作量を微調整したり、運転者の操作に依らずに舵角を調整したりする。
【0012】
ブレーキ装置40は、車両10の各車輪に設けられている。ブレーキ装置40は、油圧を用いて制動力を発生させるディスクブレーキである。図2に示すように、ブレーキ装置40は、ディスク41と、ブレーキパッド42と、ブレーキパッド42に油圧を加えるアクチュエータ44と、を有している。すなわち、アクチュエータ44は、油圧を出力するものである。ディスク41は、車両10の車輪と一体回転する回転体である。ブレーキパッド42は、車両10の車体に支持されている摩擦材である。アクチュエータ44からの油圧は、制御装置50によって制御される。ブレーキ装置40は、ディスク41とブレーキパッド42とを接触させることで、車両10に制動力を発生させる。
【0013】
図1に示すように、制御装置50は、先進安全ECU60と、エンジンECU70と、ステアリングECU80と、ブレーキECU90と、を備えている。各ECUは、図示しない内部バスを介して互いに信号をやり取り可能である。
【0014】
先進安全ECU60は、車両10の運転支援に関する機能を実現する。具体的には、先進安全ECU60は、CPU61と、ROM62と、を備えている。ROM62は、複数のアプリケーション63を記憶している。
【0015】
各アプリケーション63は、先進運転支援システムの機能を実現するプログラムである。アプリケーション63の例は、前走車両との車間距離を一定に保ちながら追従走行するためのACC(Adaptive Cruise Control)アプリケーションである。ACCアプリケーションは、車両10が前走車両との距離を一定に保ちながら走行できるように、車両10に搭載された各アクチュエータに加速と減速を要求する。
【0016】
また、アプリケーション63の他の例は、制限車速を認識して、車両10の速度を当該制限車速以下に維持するASL(Auto Speed Limiter)アプリケーションである。さらに、アプリケーション63の他の例は、車両10への衝突の被害を軽減させるために自動的に制動をかける衝突被害軽減ブレーキアプリケーション、いわゆるAEB(Autonomous Emergency Braking)アプリケーションである。また、アプリケーション63の他の例は、車両10が走行している車線の維持を行う車線維持支援アプリケーション、いわゆるLKA(Lane Keeping Assist)アプリケーションである。
【0017】
CPU61は、車両10に搭載された図示しない複数のセンサから検出値を取得する。CPU61は、センサからの検出値を用いて、ROM62が記憶している各アプリケーション63を実行する。CPU61が、各アプリケーション63を実行すると、当該CPU61は、各アプリケーション63での機能を実現できるように、当該アプリケーション63に対応する運動要求を出力する。なお、CPU61は、複数のアプリケーション63を同時に実行することもある。この場合、CPU61は、実行したアプリケーション63毎に、個別の運動要求を出力する。
【0018】
CPU61は、各運動要求を、各アプリケーション63の機能を実現する上で制御が必要なアクチュエータの制御部を有するECUに出力する。具体的には、CPU61は、エンジンECU70、ステアリングECU80、及びブレーキECU90から選ばれる1つ以上に、運動要求を出力する。
【0019】
エンジンECU70は、図示を省略するCPUとROMとを備えているコンピュータである。エンジンECU70のCPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行することによって、内燃機関20を制御する。つまり、エンジンECU70は、内燃機関20を制御する制御装置である。特に、エンジンECU70は、先進安全ECU60からの運動要求に基づいて、内燃機関20を制御する。
【0020】
ステアリングECU80は、図示を省略するCPUとROMとを備えているコンピュータである。ステアリングECU80のCPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行することによって、操舵装置30を制御する。つまり、ステアリングECU80は、操舵装置30を制御する制御装置である。特に、ステアリングECU80は、先進安全ECU60からの運動要求に基づいて、操舵装置30を制御する。
【0021】
ブレーキECU90は、図示を省略するCPUとROMとを備えているコンピュータである。ブレーキECU90のCPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行することによって、ブレーキ装置40を制御する。つまり、ブレーキECU90は、ブレーキ装置40を制御するブレーキ制御装置である。特に、ブレーキECU90は、先進安全ECU60からの運動要求に基づいて、ブレーキ装置40を制御する。以下では、ブレーキECU90での動作について詳述する。
【0022】
また、車両10は、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルセンサ101を備えている。ブレーキペダルセンサ101は、ブレーキペダルの操作量に応じてブレーキ装置40に要求する制動力を示す信号を、ブレーキECU90へ出力する。
【0023】
<ブレーキECU>
図2に示すように、ブレーキECU90は、運動マネージャ91、及びブレーキ制御部96として機能する。具体的には、図1に示すように、ブレーキECU90は、実行装置90Aと、記憶装置90Bと、を備えている。実行装置90Aは、CPUである。実行装置90Aは、記憶装置90Bに記憶されている各種プログラムを実行可能である。記憶装置90Bは、ROM及びRAMである。記憶装置90Bは、運動マネージャ91用の運動マネージャプログラムP1を記憶している。実行装置90Aは、運動マネージャプログラムP1を実行することによって、運動マネージャ91としての機能を実現している。
【0024】
また、記憶装置90Bは、ブレーキ制御用のブレーキ制御用プログラムP2を記憶している。実行装置90Aは、ブレーキ制御用プログラムP2を実行することによって、ブレーキ制御部96としての機能を実現している。ブレーキ制御用プログラムP2は、ブレーキ装置40を制御するコンピュータに適用されるプログラムである。
【0025】
なお、以下では、運動マネージャ91として機能しているときのブレーキECU90を、単に運動マネージャ91と呼称する。同様に、ブレーキ制御部96として機能しているときのブレーキECU90を単にブレーキ制御部96と呼称する。
【0026】
図2に示すように、運動マネージャ91は、受付部92、及び調停部93として機能する。運動マネージャ91は、先進運転支援システムの機能を実現するために、先進安全ECU60から運動要求が入力されると、運動要求の管理を開始する。運動要求の管理を開始すると、先ず、運動マネージャ91は、受付工程を行う。受付工程では、受付部92が処理を行う。
【0027】
受付部92は、先進安全ECU60から、個々のアプリケーション63に対応する運動要求として、要求加速度を受け付け可能となっている。その運動要求が示す要求加速度が負の値であるとき、その運動要求は、ブレーキ装置40に対して要求する制動力を示す。そして、要求加速度が負の小さな値であるときに、制動力が大きい状態である。また、上述したとおり、先進安全ECU60は、同時に複数のアプリケーション63を実行することもある。この場合、受付部92は、複数の運動要求を受け付けて、調停部93へ複数の運動要求を出力する。
【0028】
その後、運動マネージャ91は、処理を調停工程へ進める。調停工程では、調停部93が処理を行う。
調停部93は、受付部92が受け付けた運動要求を調停する。調停部93は、受付部92が受け付けた運動要求が1つのみの場合には、その運動要求を選択する。一方、調停部93は、受付部92が受け付けた運動要求が複数ある場合には、予め定められた所定の選択基準に基づいて、運動要求を調停する。例えば、調停部93は、受け付けた複数の運動要求の中から1つの運動要求を選択したり、受け付けた複数の運動要求に基づいて制御の許容範囲を選択したりする。その後、ブレーキECU90は、調停部93の調停結果を、第1制動要求として、ブレーキ制御部96へ出力する。つまり、第1制動要求は、車両10の運転支援機能を実現するアプリケーション63から要求されるブレーキによる制動力を示す。
【0029】
ブレーキ制御部96は、アプリケーション63から要求されるブレーキ装置40による制動力を示す第1制動要求を、運動マネージャ91を介して受け付けることが可能である。また、ブレーキ制御部96は、ブレーキペダルセンサ101からブレーキペダルの操作量に応じてブレーキ装置40に要求する制動力を示す第2制動要求を受け付けることが可能である。
【0030】
ブレーキ制御部96は、受け付けた第1制動要求及び第2制動要求に基づいて、ブレーキ装置40に出力する制御値を生成する。そして、ブレーキ制御部96は、生成した制御値をブレーキ装置40のアクチュエータ44に出力する。これにより、ブレーキ制御部96は、アクチュエータ44の駆動を通じて、ブレーキ装置40を制御する。
【0031】
具体的には、ブレーキ制御部96は、第1制動要求のみを受け付けているとき、第1制動要求が示す制動力である第1制動力F1を実現する制御値を、アクチュエータ44に出力する。一方で、ブレーキ制御部96は、第2制動要求のみを受け付けているとき、第2制動要求が示す制動力である第2制動力F2を実現する制御値を、アクチュエータ44に出力する。
【0032】
<オーバライド制御>
ブレーキ制御部96は、第1制動要求にしたがってブレーキ装置40を制御中に、第2制動要求を受け付けたときに、オーバライド制御を開始する。本実施形態では、ブレーキ制御部96は、オーバライド制御中に、加算用要求制動力FAを繰り返し算出する。そして、ブレーキ制御部96は、ブレーキ装置40に要求する要求制動力FDを、加算用要求制動力FAに第2制動力F2を加算することにより算出する。また、ブレーキ制御部96は、状況によっては、ブレーキ装置40に要求する要求制動力FDを、第1制動力F1とする。そして、ブレーキ制御部96は、算出した要求制動力FDを実現する制御値を、アクチュエータ44に出力する。
【0033】
以下、ブレーキ制御部96によるオーバライド制御の具体的な処理手順について説明する。
図3に示すように、ブレーキ制御部96は、オーバライド制御を開始すると、先ず、ステップS11の処理を行う。ステップS11では、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAを開始制動力FSとする。開始制動力FSは、オーバライド制御を開始したときの第1制動力F1である。その後、ブレーキ制御部96は、処理をステップS12へ進める。
【0034】
ステップS12では、ブレーキ制御部96は、ブレーキペダルの操作があるか否かを判定する。具体的には、ブレーキ制御部96は、第2制動要求を継続して受け付け続けているか否かを判定する。ブレーキ制御部96は、第2制動要求を受け付け続けているとき、ブレーキペダルの操作があると判定する。一方で、ブレーキ制御部96は、第2制動要求を受け付けなくなったとき、ブレーキペダルの操作が無い、すなわちブレーキペダルが踏み込まれていないと判定する。ブレーキペダルの操作があるとき(S12:YES)、ブレーキ制御部96は、処理をステップS13へ進める。
【0035】
ステップS13では、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAに第2制動力F2を加算した制動力が、第1制動力F1以上であるか否かを判定する。加算用要求制動力FAに第2制動力F2を加算した制動力が、第1制動力F1以上であるとき(S13:YES)、ブレーキ制御部96は、処理をステップS14へ進める。
【0036】
ステップS14では、ブレーキ制御部96は、第2制動力F2が維持又は増加しているか否かを判定する。具体的には、ブレーキ制御部96は、前回受け付けた第2制動要求が示す第2制動力F2と、今回受け付けた第2制動要求が示す第2制動力F2と、を比較する。今回の第2制動力F2が前回の第2制動力F2以上の値であるとき、ブレーキ制御部96は、第2制動力F2が維持又は増加していると判定する。一方で、今回の第2制動力F2が前回の第2制動力F2より小さい値であるとき、ブレーキ制御部96は、第2制動力F2より減少していると判定する。第2制動力F2が維持又は増加しているとき(S14:YES)、ブレーキ制御部96は、処理をステップS15へ進める。
【0037】
ステップS15では、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAを、前回値と同じ値にする。その後、ブレーキ制御部96は、処理をステップS16へ進める。
ステップS16では、ブレーキ制御部96は、要求制動力FDを、加算用要求制動力FAに第2制動力F2を加算した制動力として、ブレーキ装置40を制御する。このようにステップS15を経てステップS16の処理が行われたとき、加算用要求制動力FAが前回の値に維持される。そのため、ブレーキ制御部96は、第2制動力F2が維持又は増加しているとき、第2制動力F2が増加し始めたときの制動力である加算用要求制動力FAよりも大きな制動力であって第2制動力F2の増加を反映した制動力として、要求制動力FDを算出する。
【0038】
一方で、第2制動力F2が減少しているとき(S14:NO)、ブレーキ制御部96は、処理をステップS17へ進める。ステップS17では、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAを、前回値から減算用変数ADを減算した値にする。減算用変数ADは、第2制動力F2の単位時間当たりの減少量と等しい。なお、ここでいう単位時間は、オーバライド制御の制御周期である。そのため、ステップS17では、ブレーキ制御部96は、第2制動力F2の減少スピードが大きいほど、加算用要求制動力FAを前回値に比べて小さい値にする。その後、ブレーキ制御部96は、処理をステップS16へ進める。このようにステップS15を経てステップS16の処理が行われたとき、ブレーキ制御部96は、第2制動力F2が減少した分に応じて前回より小さい要求制動力FDを算出する。
【0039】
ところで、加算用要求制動力FAに第2制動力F2を加算した制動力が、第1制動力F1より小さいとき(S13:NO)、ブレーキ制御部96は、処理をステップS18へ進める。
【0040】
ステップS18では、ブレーキ制御部96は、要求制動力FDとして第1制動力F1を算出する。したがって、アプリケーション63からの第1運動要求に応じた第1制動力F1が比較的に大きいときには、ブレーキペダルの操作量に拘わらず、ブレーキ制御部96は、第1制動力F1が実現されるように制御する。その後、ブレーキ制御部96は、処理をステップS19へ進める。
【0041】
ステップS19では、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAを、要求制動力FDである第1制動力F1から第2制動力F2を減算した値とする。
さて、ブレーキペダルの操作がされなくなったとき(S12:NO)、ブレーキ制御部96は、処理をステップS20へ進める。ステップS20では、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAを、前回値から予め定められた減算用規定値CDだけ減算した値とする。したがって、ブレーキペダルの操作がされなくなった以後は、加算用要求制動力FAは、一定の量ずつ減少していく。その後、ブレーキ制御部96は、処理をステップS21へ進める。
【0042】
ステップS21では、第1制動力F1及び加算用要求制動力FAのうちの大きい方を要求制動力FDとして算出する。上述したとおり、加算用要求制動力FAは徐々に減少する。したがって、ブレーキ制御部96は、ブレーキペダルの操作がされなくなった以後のいずれかのタイミングで、第1制動力F1に応じた制御を行うことになる。
【0043】
ブレーキ制御部96は、ステップS16、ステップS19、ステップS21のいずれかの処理の後、処理をステップS22へ進める。ステップS22では、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAが、ゼロより小さくなったか否かを判定する。加算用要求制動力FAがゼロ以上であるとき(S22:NO)、ブレーキ制御部96は、今回のオーバライド制御は継続していると判定する。これにより、ブレーキ制御部96は、処理をステップS12へ戻す。一方で、加算用要求制動力FAがゼロより小さくなったとき(S22:YES)、ブレーキ制御部96は、今回のオーバライド制御の一連の処理を終了する。
【0044】
(実施形態の作用)
図4に示すように、時刻t0において、ブレーキ制御部96が第1制動要求を受け付けたとする。このとき、ブレーキ制御部96は第2制動要求を受け付けていない。そのため、ブレーキ制御部96は、要求制動力FDとして、第1制動要求が示す第1制動力F1を算出する。なお、図4では、第1制動力F1を一点鎖線で、第2制動力F2を二点鎖線で、加算用要求制動力FAを鎖線で、要求制動力FDを太線で示す。また、時刻t0から時刻t1までの要求制動力FDは、第1制動力F1と同じであるため、第1制動力F1のみを代表して図示している。
【0045】
時刻t0より後の時刻t1において、ブレーキ制御部96が第2制動要求を受け付けたとする。このとき、ブレーキ制御部96は、すでに第1制動要求を受け付けている、そのため、ブレーキ制御部96は、オーバライド制御を開始する。ブレーキ制御部96がオーバライド制御を開始すると、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAを、時刻t1での第1制動力F1の制動力F11とする。そして、ブレーキ制御部96は、開始制動力時刻t1以降、加算用要求制動力FAである制動力F11に第2制動力F2を加算した制動力と、第1制動力F1と、を比較する。
【0046】
時刻t1以降、時刻t1より後の時刻t2までの間、第2制動力F2は一定であるとする。このとき、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAを前回値とし続ける。
また、時刻t1より後に、第1制動力F1が徐々に増加したとする。そして、時刻t2において、第1制動力F1が、加算用要求制動力FAである制動力F11に第2制動力F2を加算した制動力よりも大きくなったとする。このとき、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAを、第1制動力F1から第2制動力F2を減算した値とする。そして、ブレーキ制御部96は、要求制動力FDを、第1制動力F1と算出する。
【0047】
時刻t2以後、時刻t2より後の時刻t3までの間、第1制動力F1は増加し続けるとする。このとき、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAを、増加した第1制動力F1から第2制動力F2を減算した値とする。なお、時刻t2から時刻t3までの間、第2制動力F2は減少し続けるとする。そのため、ブレーキ制御部96は、更新する加算用要求制動力FAに、第1制動力F1の増加と、第2制動力F2の減少と、を反映させる。
【0048】
時刻t3以後、時刻t3より後の時刻t4まで第1制動力F1が減少し続けるとする。また、時刻t4以後、時刻t4より後の時刻t5まで第1制動力F1が維持するとする。時刻t3以後、時刻t5まで第2制動力F2が増加し続けるとする。時刻t3において、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAを、時刻t3での第1制動力F1である制動力F12から第2制動力F2を減算した値とする。そして、時刻t3より後から時刻t5までは、ブレーキ制御部96は、時刻t3において算出した加算用要求制動力FAに第2制動力F2を加算した値を、要求制動力FDとして算出する。これにより、時刻t3から時刻t5までの間では、ブレーキ制御部96は、第1制動力F1の減少を加算用要求制動力FAに反映しない。一方で、時刻t3から時刻t5までの間では、ブレーキ制御部96は、第2制動力F2の増加を要求制動力FDに反映させる。その結果、ブレーキ制御部96は、第2制動力F2が増加し始めたときの要求制動力FDに加えて、第2制動力F2の増加分を加えた制動力を発生させることを実現する。
【0049】
時刻t5以後、時刻t5より後の時刻t6まで、第2制動力F2が減少し続けるとする。また、時刻t6以後、時刻t6より後の時刻t7まで、第2制動力F2が維持するとする。時刻t5以後、時刻t7まで、第1制動力F1が増加し続けるとする。時刻t5以後、時刻t6まで、ブレーキ制御部96は、第2制動力F2が減少するため、加算用要求制動力FAを、減算用変数ADに応じて減少し続ける。これにより、ブレーキ制御部96が算出する要求制動力FDは、第2制動力F2の減少率より大きく減少し続ける。そして、時刻t6において、第1制動力F1が、第2制動力F2に加算用要求制動力FAを加算した制動力を超えたとする。このとき、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAを、時刻t6における第1制動力F1から時刻t6における第2制動力F2を減算した値とする。
【0050】
このように、本実施形態では、ブレーキ制御部96は、第1制動力F1が加算用要求制動力FAに第2制動力F2を加算した制動力を超えたときに、加算用要求制動力FAを算出し始める。そして、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAを更新することで、第2制動力F2が増加し始めたときにも、増加した第2制動力F2を反映させて要求制動力FDを算出できる。
【0051】
(実施形態の効果)
(1)上記実施形態によれば、ブレーキ制御部96は、オーバライド制御では、開始制動力FSに第2制動力F2を加算した制動力と、第1制動力F1と、のうち大きい方を要求制動力FDとして算出する。そのため、オーバライド制御中に、第1制動力F1が増加することがあっても、増加した第1制動力F1を反映させた要求制動力FDを発生させることを実現できる。
【0052】
(2)上記実施形態では、オーバライド制御中、第1制動力F1を要求制動力FDとして以降、第2制動力F2が増加している期間が発生し得る。上記実施形態によれば、この期間、ブレーキ制御部96は、第2制動力F2が増加を開始した時点での要求制動力FDよりも強い制動力を、要求制動力FDとしてブレーキ装置40を制御する。そのため、車両10のドライバは、ブレーキペダルを操作することで、制動力を強くするように操作したとき、オーバライド制御中であっても、ドライバの意思に沿うように、要求制動力FDはより強い制動力として算出される。これにより、車両10のドライバの違和感を軽減したブレーキ制御を実現できる。
【0053】
(3)上記実施形態によれば、オーバライド制御中に、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAを算出する。そして、要求制動力FDを第1制動力F1として以降、第2制動力F2が増加している期間は、加算用要求制動力FAを要求制動力FDである第1制動力F1から第2制動力F2を減算して算出する。そのうえで、ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAに第2制動力F2を加算した値を要求制動力FDとする。これにより、ブレーキ制御部96は、第2制動力F2が増加している期間、第2制動力F2が増加した分だけ要求制動力FDを大きく算出することを実現できる。
【0054】
(4)上記実施形態によれば、ブレーキECU90は、運動マネージャ91と、ブレーキ制御部96と、を備えている。運動マネージャ91は、複数のアプリケーション63から要求される運動要求を調停して第2制動要求をブレーキ制御部96へ出力する。そのため、第1制動要求が、異なるアプリケーション63からの運動要求に基づくものに変化することがある。この場合、第1制動要求が示す第1制動力F1は、オーバライド制御中であっても、増加するように変化する可能性が高まる。そのため、第1制動要求が示す第1制動力F1の変化を考慮する必要性が高い。よって、第1制動力F1の変化を考慮する課題が発生しやすいため、(1)の効果を得るうえで、より好適である。
【0055】
(その他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0056】
・ブレーキECU90は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサを含む回路(circuitry)として構成してもよい。なお、ブレーキECU90は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、又はそれらの組み合わせを含む回路として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。この点、他のECUについても同様である。
【0057】
・ブレーキECU90の運動マネージャ91がオーバライド制御を行っても負い。また、ブレーキECU90は、運動マネージャ91を有していなくてもよい。この場合、ブレーキ制御部96が、アプリケーション63から第1制動要求を受け付けてもよい。
【0058】
・ブレーキ制御部96は、常に加算用要求制動力FAに第2制動力F2を加算することで、要求制動力FDを算出しなくてもよい。例えば、ステップS13において否定判定されたときには、要求制動力FDを第1制動力F1と算出してもよい。また例えば、ブレーキ制御部96は、オーバライド制御中に、第2制動力F2が増加している期間にだけ、加算用要求制動力FAを算出してもよい。
【0059】
・ブレーキ制御部96は、加算用要求制動力FAを算出しなくてもよい。例えば、ブレーキ制御部96は、まだ要求制動力FDを第1制動力F1としておらず、ステップS13において肯定判定されたとき、要求制動力FDを、開始制動力FSに第2制動力F2を加算した値とすればよい。またブレーキ制御部96は、要求制動力FDを第1制動力F1として以降、ステップS13において肯定判定されたとき、要求制動力FDを、ステップS13において肯定判定したときの要求制動力FDに第2制動力F2を加算した値とすればよい。
【0060】
・ブレーキ制御部96は、要求制動力FDを第1制動力F1として以降、第2制動力F2が増加している期間は、第2制動力F2が増加を開始した時点での要求制動力FDよりも、第2制動力F2が増加した分を超えて強い制動力を算出してもよい。また、ブレーキ制御部96は、子の期間、第2制動力F2が増加を開始した時点での要求制動力FDよりも第2制動力F2が増加した分よりも小さい量だけ強い制動力を算出してもよい。また、ブレーキ制御部96は、要求制動力FDを第1制動力F1として以降、第1制動力F1及び第2制動力F2に基づいて、どのように要求制動力FDを制御してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…車両 40…ブレーキ装置 63…アプリケーション 90…ブレーキECU
図1
図2
図3
図4