(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125656
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理プログラム、情報処理方法
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20240911BHJP
F16H 63/48 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H63/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033619
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519373914
【氏名又は名称】株式会社J-QuAD DYNAMICS
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大橋 祐太
(72)【発明者】
【氏名】神谷 雄介
(72)【発明者】
【氏名】嵩本 益三
(72)【発明者】
【氏名】口ノ町 敦史
(72)【発明者】
【氏名】廣村 達哉
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA02
3J552NA01
3J552NB01
3J552RA19
3J552SA01
3J552SB02
3J552VA63W
3J552VA66W
(57)【要約】
【課題】複数のシフト要求を受け付けている場合に、優先すべきシフト要求を実現する。
【解決手段】情報処理装置は、車両の運転支援機能を実現する複数のアプリケーションソフトウェアから車両のシフトレンジを制御するためのシフト要求を受け付けることを実行する。車両の駆動輪が回転可能なシフトレンジを走行レンジとし、駆動輪が回転不能なシフトレンジを駐車レンジとする。情報処理装置は、少なくとも受け付けたシフト要求が走行レンジの要求であるか駐車レンジの要求であるかを条件として用いて、シフト要求を調停することを実行する。情報処理装置は、調停結果に基づいて、アクチュエータを駆動するための動作要求の指示値を生成することを実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転支援機能を実現する複数のアプリケーションソフトウェアから前記車両のシフトレンジを制御するためのシフト要求を受け付けることと、
前記車両の駆動輪が回転可能な前記シフトレンジを走行レンジとし、前記駆動輪が回転不能な前記シフトレンジを駐車レンジとしたとき、少なくとも受け付けた前記シフト要求が前記走行レンジの要求であるか前記駐車レンジの要求であるかを条件として用いて、前記シフト要求を調停することと、
調停結果に基づいて、アクチュエータを駆動するための動作要求の指示値を生成することと、
を実行する
情報処理装置。
【請求項2】
前記シフト要求を受け付ける際に、要求元の前記アプリケーションソフトウェア毎に定められた優先レベルを前記シフト要求と対応付けて受け付けることと、
受け付けた前記シフト要求に対応する前記優先レベル、及び受け付けた前記シフト要求が前記走行レンジの要求であるか前記駐車レンジの要求であるかを条件として用いて、前記シフト要求を調停することと、
を実行する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
受け付けた前記走行レンジの要求に対応する前記優先レベル、及び受け付けた前記駐車レンジの要求に対応する前記優先レベルが同じレベルであるとき、前記シフト要求の調停結果として前記駐車レンジの要求を選択すること
を実行する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
継続して受け付けている前記走行レンジの要求のうち、最も先に受け付けた前記走行レンジの要求を、前記走行レンジの要求の代表として決定することと、
代表として決定した前記走行レンジの要求を候補として、前記シフト要求を調停することと、
を実行する
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
情報処理装置に、
車両の運転支援機能を実現する複数のアプリケーションソフトウェアから前記車両のシフトレンジを制御するためのシフト要求を受け付けることと、
前記車両の駆動輪が回転可能な前記シフトレンジを走行レンジとし、前記駆動輪が回転不能な前記シフトレンジを駐車レンジとしたとき、少なくとも受け付けた前記シフト要求が前記走行レンジの要求であるか前記駐車レンジの要求であるかを条件として用いて、前記シフト要求を調停することと、
調停結果に基づいて、アクチュエータを駆動するための動作要求の指示値を生成することと、
を実行させる
情報処理プログラム。
【請求項6】
情報処理装置が、
車両の運転支援機能を実現する複数のアプリケーションソフトウェアから前記車両のシフトレンジを制御するためのシフト要求を受け付けることと、
前記車両の駆動輪が回転可能な前記シフトレンジを走行レンジとし、前記駆動輪が回転不能な前記シフトレンジを駐車レンジとしたとき、少なくとも受け付けた前記シフト要求が前記走行レンジの要求であるか前記駐車レンジの要求であるかを条件として用いて、前記シフト要求を調停することと、
調停結果に基づいて、アクチュエータを駆動するための動作要求の指示値を生成することと、
を実行する
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理プログラム、情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の情報処理装置は、車両の運転支援機能を実現する複数のアプリケーションソフトウェアから運動要求を受け付ける。また、情報処理装置は、受け付けた運動要求を調停する。そして、情報処理装置は、調停結果に基づいて、アクチュエータを駆動するための動作要求の指示値を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような情報処理装置は、各アプリケーションソフトウェアから当該アプリケーションソフトウェアに対応する運動要求の一つとして、車両のシフトレンジを制御するためのシフト要求を受け付ける。ここで、特許文献1の情報処理装置は、複数のシフト要求を調停するにあたって、受け付けが継続しているものの中から最も先に受け付けたシフト要求を、調停結果として選択する。したがって、特許文献1の情報処理装置では、複数のシフト要求を受け付けている場合に、例えば後に受け付けたシフト要求を実現すべき状況であっても、後に受け付けたシフト要求が実現されないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための情報処理装置は、車両の運転支援機能を実現する複数のアプリケーションソフトウェアから前記車両のシフトレンジを制御するためのシフト要求を受け付けることと、前記車両の駆動輪が回転可能な前記シフトレンジを走行レンジとし、前記駆動輪が回転不能な前記シフトレンジを駐車レンジとしたとき、少なくとも受け付けた前記シフト要求が前記走行レンジの要求であるか前記駐車レンジの要求であるかを条件として用いて、前記シフト要求を調停することと、調停結果に基づいて、アクチュエータを駆動するための動作要求の指示値を生成することと、を実行する。
【0006】
上記課題を解決するための情報処理プログラムは、情報処理装置に、車両の運転支援機能を実現する複数のアプリケーションソフトウェアから前記車両のシフトレンジを制御するためのシフト要求を受け付けることと、前記車両の駆動輪が回転可能な前記シフトレンジを走行レンジとし、前記駆動輪が回転不能な前記シフトレンジを駐車レンジとしたとき、少なくとも受け付けた前記シフト要求が前記走行レンジの要求であるか前記駐車レンジの要求であるかを条件として用いて、前記シフト要求を調停することと、調停結果に基づいて、アクチュエータを駆動するための動作要求の指示値を生成することと、を実行させる。
【0007】
上記課題を解決するための情報処理方法は、情報処理装置が、車両の運転支援機能を実現する複数のアプリケーションソフトウェアから前記車両のシフトレンジを制御するためのシフト要求を受け付けることと、前記車両の駆動輪が回転可能な前記シフトレンジを走行レンジとし、前記駆動輪が回転不能な前記シフトレンジを駐車レンジとしたとき、少なくとも受け付けた前記シフト要求が前記走行レンジの要求であるか前記駐車レンジの要求であるかを条件として用いて、前記シフト要求を調停することと、調停結果に基づいて、アクチュエータを駆動するための動作要求の指示値を生成することと、を実行する。
【0008】
上記の各構成によれば、受け付けたシフト要求が走行レンジの要求であるか駐車レンジの要求であるかを加味してシフト要求が調停される。そのため、例えば、先にシフト要求として走行レンジの要求が受け付けられている状況であっても、後にシフト要求として駐車レンジの要求が受け付けられた場合に、駐車レンジが調停によって選択される可能性もある。したがって、上記構成によれば、複数のシフト要求を受け付けている場合に、優先すべきシフト要求を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】運動マネージャの基本構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】シフト調停制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<車両の概略構成>
以下、本発明の一実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。先ず、車両100の概略構成について説明する。
【0011】
図1に示すように、車両100は、エンジン70、トランスミッション80、及びブレーキ装置90を備えている。
エンジン70は、車両100の駆動源である。したがって、エンジン70は、トランスミッション80を介して車両100の駆動輪へと駆動力を付与可能である。エンジン70は、図示しないスロットバルブ、燃料噴射弁、及び点火装置等を備えている。
【0012】
トランスミッション80の一例は、複数のクラッチ、複数の摩擦係合要素、及び複数の遊星歯車機構を備える有段式の自動変速機である。トランスミッション80は、図示しないクラッチ及び摩擦係合要素を動作させることにより、当該トランスミッション80のシフトレンジを変更可能である。ここで、トランスミッション80のシフトレンジは、パーキング、ニュートラル、ドライブ、及びリバースを含んでいる。
【0013】
ブレーキ装置90は、車両100の制動力を発生させる。ブレーキ装置90は、車両100の駆動輪を機械的に制動する、いわゆる機械式のブレーキ装置である。ブレーキ装置90の一例は、ディスクブレーキである。
【0014】
図1に示すように、車両100は、セントラルECU10、エンジンECU20、トランスミッションECU30、ブレーキECU40、及び先進運転支援ECU50を備えている。また、車両100は、第1外部バス61、第2外部バス62、第3外部バス63、及び第4外部バス64を備えている。
【0015】
セントラルECU10は、車両100の全体を統括して制御する。セントラルECU10は、CPU11、及び記憶装置12を備えている。記憶装置12は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。なお、記憶装置12は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。CPU11は、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより、各種の処理を実現する。
【0016】
エンジンECU20は、第1外部バス61を介してセントラルECU10と接続している。したがって、エンジンECU20は、セントラルECU10と互いに通信可能である。エンジンECU20は、エンジン70に制御信号を出力することにより、エンジン70を制御する。エンジンECU20は、CPU21、及び記憶装置22を備えている。記憶装置22は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。また、記憶装置22は、各種のプログラムの一つとして、エンジンアプリ23Aを予め記憶している。エンジンアプリ23Aは、エンジン70を制御するためのアプリケーションソフトウェアである。なお、記憶装置22は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。CPU21は、記憶装置22に記憶されたエンジンアプリ23Aを実行することにより、後述するエンジン制御部23としての機能を実現する。
【0017】
トランスミッションECU30は、第2外部バス62を介してセントラルECU10と接続している。したがって、トランスミッションECU30は、セントラルECU10と互いに通信可能である。トランスミッションECU30は、トランスミッション80に制御信号を出力することにより、トランスミッション80を制御する。トランスミッションECU30は、CPU31、及び記憶装置32を備えている。記憶装置32は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。また、記憶装置32は、各種のプログラムの一つとして、トランスミッションアプリ33Aを予め記憶している。トランスミッションアプリ33Aは、トランスミッション80を制御するためのアプリケーションソフトウェアである。なお、記憶装置32は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。CPU31は、記憶装置32に記憶されたトランスミッションアプリ33Aを実行することにより、後述するトランスミッション制御部33としての機能を実現する。
【0018】
ブレーキECU40は、第3外部バス63を介してセントラルECU10と接続している。したがって、ブレーキECU40は、セントラルECU10と互いに通信可能である。ブレーキECU40は、ブレーキ装置90に制御信号を出力することにより、ブレーキ装置90を制御する。ブレーキECU40は、CPU41、及び記憶装置42を備えている。記憶装置42は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。また、記憶装置42は、各種のプログラムの一つとして、ブレーキアプリ43Aを予め記憶している。ブレーキアプリ43Aは、ブレーキ装置90を制御するためのアプリケーションソフトウェアである。さらに、記憶装置42は、各種のプログラムの一つとして、運動マネージャアプリ45Aを予め記憶している。運動マネージャアプリ45Aは、複数の運動要求を調停するためのアプリケーションソフトウェアである。なお、記憶装置42は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。CPU41は、記憶装置42に記憶されたブレーキアプリ43Aを実行することにより、後述するブレーキ制御部43としての機能を実現する。また、CPU41は、記憶装置42に記憶された運動マネージャアプリ45Aを実行することにより、後述する運動マネージャ45としての機能を実現する。本実施形態において、ブレーキECU40は、情報処理装置の一例である。また、運動マネージャアプリ45Aは、情報処理プログラムの一例である。さらに、ブレーキECU40が運動マネージャアプリ45Aを実行することにより実現される一連の方法は、情報処理方法の一例である。
【0019】
先進運転支援ECU50は、第4外部バス64を介してセントラルECU10と接続している。したがって、先進運転支援ECU50は、セントラルECU10と互いに通信可能である。先進運転支援ECU50は、各種の運転支援を実行する。先進運転支援ECU50は、CPU51、及び記憶装置52を備えている。記憶装置52は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。各種のプログラムは、第1支援アプリ56A、第2支援アプリ57A、及び第3支援アプリ58Aを含んでいる。第1支援アプリ56Aの一例は、車両100への衝突の被害を軽減させるために自動的に制動をかける衝突被害軽減ブレーキ、いわゆるAEB(Autonomous Emergency Braking)用のアプリケーションソフトウェアである。第2支援アプリ57Aの一例は、車両100が走行している車線の維持を行う車線維持支援、いわゆるLKA(Lane Keeping Assist)用のアプリケーションソフトウェアである。第3支援アプリ58Aの一例は、車両100の前方を走行する前走車両との車間距離を一定に保ちながら追従走行、いわゆるACC(Adaptive Cruise Control)用のアプリケーションソフトウェアである。本実施形態において、第1支援アプリ56A、第2支援アプリ57A、及び第3支援アプリ58Aのそれぞれは、車両100の運転支援機能を実現するアプリケーションソフトウェアである。なお、記憶装置52は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。CPU51は、記憶装置52に記憶された第1支援アプリ56Aを実行することにより、後述する第1支援部56としての機能を実現する。また、CPU51は、記憶装置52に記憶された第2支援アプリ57Aを実行することにより、後述する第2支援部57としての機能を実現する。CPU51は、記憶装置52に記憶された第3支援アプリ58Aを実行することにより、後述する第3支援部58としての機能を実現する。
【0020】
<運動マネージャに関する基本構成>
次に、
図2を参照して、運動マネージャ45に関する基本的な構成を説明する。
図2に示すように、運動マネージャ45は、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58と互いに通信可能である。また、運動マネージャ45は、エンジン制御部23、トランスミッション制御部33、及びブレーキ制御部43と互いに通信可能である。
【0021】
第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58は、各種の制御を実行するにあたって、運動マネージャ45に対して運動要求を出力する。このとき、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58は、例えば各種の制御が必要になってからその制御が必要でなくなるまで運動要求の出力を継続する。ここで、運動要求は、車両100の前後方向の加速度を制御するための加速度要求値、及び車両100におけるトランスミッション80のシフトレンジを制御するための要求値であるシフト要求SR等を含んでいる。
【0022】
図2に示すように、運動マネージャ45は、受付部46、調停部47、及び生成部48を備えている。運動マネージャ45の受付部46は、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58からの運動要求を受け付ける。したがって、運動マネージャ45の受付部46は、複数の運動要求を同時に受け付けることもあり得る。本実施形態において、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58からの運動要求を受け付けることは、車両100の運転支援機能を実現するアプリケーションソフトウェアから運動要求を受け付けることに相当する。また、運動マネージャ45の調停部47は、受け付けた運動要求を調停する。そして、運動マネージャ45の生成部48は、調停結果に基づいて、各種のアクチュエータを制御するための動作要求の指示値を生成する。ここで、各種のアクチュエータは、エンジン70、トランスミッション80、及びブレーキ装置90等である。例えばエンジン70を制御させる場合、運動マネージャ45は、エンジン制御部23に対して動作要求の指示値を出力する。そして、エンジン制御部23は、動作要求の指示値に基づいて、エンジン70に制御信号を出力する。また、例えばトランスミッション80を制御させる場合、運動マネージャ45は、トランスミッション制御部33に対して動作要求の指示値を出力する。そして、トランスミッション制御部33は、動作要求の指示値に基づいて、トランスミッション80に制御信号を出力する。さらに、例えばブレーキ装置90を制御させる場合、運動マネージャ45は、ブレーキ制御部43に対して動作要求の指示値を出力する。そして、ブレーキ制御部43は、動作要求の指示値に基づいて、ブレーキ装置90に制御信号を出力する。
【0023】
<シフト調停制御>
次に、
図3及び
図4を参照して、運動マネージャ45が実行するシフト調停制御を説明する。運動マネージャ45は、予め定められた制御周期毎に、シフト調停制御を繰り返し実行する。
【0024】
図3に示すように、運動マネージャ45は、シフト調停制御を開始すると、ステップS11の処理を実行する。ステップS11において、運動マネージャ45の受付部46は、受付処理を実行する。具体的には、
図4に示すように、受付部46は、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58から、シフト要求SRを受け付ける。このとき、受付部46は、複数のシフト要求SRを同時に受け付けることもあり得る。また、シフト要求SRを受け付ける際に、受付部46は、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58から、シフト要求SRと対応付けて優先レベルSLを受け付ける。ここで、優先レベルSLは、シフト要求SRの要求元である第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58毎に予め定められている。換言すると、優先レベルSLは、シフト要求SRの要求元である車両100の運転支援機能を実現するアプリケーションソフトウェア毎に予め定められている。本実施形態において、優先レベルSLは、例えば以下のように定められている。先ず、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58が運動要求を出力するにあたって用いるセンサやデータの信頼性等を加味して、設計上、より信頼性が高いものを特定する。一例として、信頼性が高い順に、第3支援部58、第2支援部57、第1支援部56、と特定されたとする。この場合、第1支援アプリ56A、第2支援アプリ57A、第3支援アプリ58Aに対応する優先レベルSLとしては、第1支援アプリ56A、第2支援アプリ57A、第3支援アプリ58Aの順に、「1」、「2」、「3」といったように定めることができる。すなわち、本実施形態では、優先レベルSLを示す数値が高いほど、信頼性が高い。なお、ステップS11の処理時点で受付部46が受け付けているシフト要求SRがない場合、受付部46は、ステップS11の処理を繰り返し実行する。一方、ステップS11の処理時点で受付部46が受け付けているシフト要求SRが1以上である場合、
図3に示すように、受付部46は、処理をステップS12に進める。
【0025】
図3に示すように、ステップS12において、運動マネージャ45の受付部46は、要求分類処理を実行する。具体的には、受付部46は、ステップS11で受け付けたシフト要求SR毎に、そのシフト要求SRを、走行レンジの要求である走行レンジ要求SA、及び駐車レンジの要求である駐車レンジ要求SBの何れか一方に分類する。ここで、走行レンジは、トランスミッション80が実現可能なシフトレンジのうち、ニュートラル、ドライブ、及びリバースである。換言すると、走行レンジは、車両100の駆動輪が回転可能なシフトレンジである。また、駐車レンジは、トランスミッション80が実現可能なシフトレンジのうち、パーキングである。換言すると、駐車レンジは、車両100の駆動輪が回転不能なシフトレンジである。そして、例えばシフト要求SRが走行レンジ要求SAであると受付部46が分類した場合、
図4において破線矢印で示すように、受付部46は、分類結果と共にシフト要求SRを調停部47へと出力する。また、受付部46は、シフト要求SRと対応付けて優先レベルSLを調停部47に出力する。一方、例えばシフト要求SRが駐車レンジ要求SBであると受付部46が分類した場合、
図4において一点鎖線矢印で示すように、受付部46は、分類結果と共にシフト要求SRを調停部47へと出力する。また、受付部46は、シフト要求SRと対応付けて優先レベルSLを調停部47に出力する。
図3に示すように、ステップS12の後、受付部46は、処理をステップS13に進める。
【0026】
図3に示すように、ステップS13において、運動マネージャ45の調停部47は、第1調停処理を実行する。具体的には、
図4において破線矢印で示すように、調停部47は、受付部46が継続して受け付けているシフト要求SRのうち、走行レンジ要求SAに分類されたもののみを抽出する。そして、調停部47は、抽出した走行レンジ要求SAのうち、最も先に受け付けた走行レンジ要求SAを、走行レンジ要求SAの代表として決定する。また、同様に、
図4において一点鎖線矢印で示すように、調停部47は、受付部46が継続して受け付けているシフト要求SRのうち、駐車レンジ要求SBに分類されたもののみを抽出する。そして、調停部47は、抽出した駐車レンジ要求SBのうち、最も先に受け付けた駐車レンジ要求SBを、駐車レンジ要求SBの代表として決定する。したがって、ステップS13の第1調停処理において、調停部47は、走行レンジ要求SAの代表、及び駐車レンジ要求SBの代表を、共に決定することがある。
図3に示すように、ステップS13の後、調停部47は、処理をステップS14に進める。
【0027】
図3に示すように、ステップS14において、運動マネージャ45の調停部47は、第2調停処理を実行する。この第2調停処理において、調停部47は、ステップS13の処理で代表として決定した走行レンジ要求SA、及びステップS13の処理で代表として決定した駐車レンジ要求SBを候補として、調停を行う。このとき、調停部47は、代表として決定した走行レンジ要求SA及び駐車レンジ要求SBに対応する優先レベルSL、及びシフト要求SRが走行レンジ要求SAであるか駐車レンジ要求SBであるかを条件として用いる。
【0028】
具体的には、ステップS13の第1調停処理において、代表として決定した走行レンジ要求SAがある一方で、代表として決定した駐車レンジ要求SBがない場合、調停部47は、シフト要求SRの調停結果として走行レンジ要求SAを選択する。一方、ステップS13の第1調停処理において、代表として決定した走行レンジ要求SAの候補がない一方で、代表として決定した駐車レンジ要求SBがある場合、調停部47は、シフト要求SRの調停結果として駐車レンジ要求SBを選択する。このように、調停部47は、走行レンジ要求SAの代表及び駐車レンジ要求SBの代表のいずれかしか存在していない場合には、優先レベルSLに拘わらず存在するシフト要求SRを選択する。
【0029】
ステップS13の第1調停処理において、代表として決定した走行レンジ要求SA、及び代表として決定した駐車レンジ要求SBの双方が存在したとする。そして、代表として決定した走行レンジ要求SA及び駐車レンジ要求SBに対応する優先レベルSLが異なるレベルであるとき、調停部47は、シフト要求SRの調停結果として優先レベルSLが高いものを選択する。また、代表として決定した走行レンジ要求SA、及び代表として決定した駐車レンジ要求SBの双方が存在したとする。そして、代表として決定した走行レンジ要求SA及び駐車レンジ要求SBに対応する優先レベルSLが同じレベルであるとき、調停部47は、シフト要求SRの調停結果として駐車レンジ要求SBを選択する。その後、
図4において実線矢印で示すように、調停部47は、調停結果を生成部48へと出力する。
図3に示すように、ステップS14の後、調停部47は、処理をステップS15に進める。
【0030】
図3に示すように、ステップS15において、運動マネージャ45の生成部48は、生成処理を実行する。具体的には、生成部48は、ステップS14の処理での調停結果に基づいて、トランスミッション80を制御するための動作要求の指示値を生成する。そして、
図4において実線矢印で示すように、運動マネージャ45は、トランスミッション制御部33に対して動作要求の指示値を出力する。
図3に示すように、ステップS15の後、生成部48は、今回のシフト調停制御を終了する。そして、生成部48は、再び処理をステップS11に進める。
【0031】
<本実施形態の作用>
あるタイミングとしての第1時点以降において、運動マネージャ45の受付部46が、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58のうち、第2支援部57からシフト要求SRとして走行レンジ要求SAを受け付けているとする。この場合、第1時点では、運動マネージャ45の調停部47により、シフト要求SRの調停結果として走行レンジ要求SAが選択される。すると、運動マネージャ45の生成部48により、調停結果である走行レンジ要求SAに基づいて、トランスミッション80を制御するための動作要求の指示値が生成される。
【0032】
一方、上記の第1時点よりも後の第2時点において、運動マネージャ45の受付部46が、第2支援部57からシフト要求SRとして走行レンジ要求SAを継続して受け付けつつ、第3支援部58からシフト要求SRとして駐車レンジ要求SBを受け付けたとする。この場合、第2時点では、運動マネージャ45の調停部47により、第2支援部57から受け付けた走行レンジ要求SAが、走行レンジ要求SAの代表として決定される。また、運動マネージャ45の調停部47により、第3支援部58から受け付けた駐車レンジ要求SBが、駐車レンジ要求SBの代表として決定される。さらに、運動マネージャ45の調停部47により、代表として決定した走行レンジ要求SA、及び代表として決定した駐車レンジ要求SBの一方が、シフト要求SRの調停結果として選択される。具体的には、代表として決定した走行レンジ要求SA及び駐車レンジ要求SBに対応する優先レベルSL、及びシフト要求SRが走行レンジ要求SAであるか駐車レンジ要求SBであるかを条件として用いて、シフト要求SRが調停される。ここで、例えば、代表として決定した第2支援部57からの走行レンジ要求SAに対応する優先レベルSLが「2」であり、代表として決定した第3支援部58からの駐車レンジ要求SBに対応する優先レベルSLが「3」であるとする。この場合、運動マネージャ45の調停部47により、シフト要求SRの調停結果として、優先レベルSLが高い第3支援部58から受け付けた駐車レンジ要求SBが選択される。すると、運動マネージャ45の生成部48により、調停結果である駐車レンジ要求SBに基づいて、トランスミッション80を制御するための動作要求の指示値が生成される。
【0033】
<本実施形態の効果>
(1)上述したように、本実施形態では、例えば、先にシフト要求SRとして走行レンジ要求SAが受け付けられている状況であっても、後にシフト要求SRとして駐車レンジ要求SBが受け付けられた場合に、調停結果として、駐車レンジ要求SBが選択され得る。したがって、本実施形態では、複数のシフト要求SRが受け付けられている場合に、優先すべきシフト要求SRを実現できる。
【0034】
(2)例えば、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58が運動要求を出力するにあたって用いるセンサやデータの信頼性等に応じて、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58の運動要求の信頼性が変化する。そして、信頼性の高い運動要求を実現した方が、車両100にとって好ましい運動となる可能性が高い。そのため、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58から受付部46が受け付けるシフト要求SRについて、運動要求の信頼性に対応した優先順位で、調停を行いたい場合がある。
【0035】
この点、シフト要求SRを受け付ける際に、受付部46は、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58から、シフト要求SRと対応付けて優先レベルSLを受け付ける。そして、調停部47は、代表として決定した走行レンジ要求SA及び駐車レンジ要求SBに対応する優先レベルSLを条件として用いて、シフト要求SRを調停する。これにより、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58毎の優先レベルSLを加味してシフト要求SRが調停される。その結果、例えば単純にシフト要求SRが走行レンジ要求SAであるか駐車レンジ要求SBであるかを条件として用いてシフト要求SRを調停する場合に比べて、調停結果として車両100の状況に応じた適切なシフト要求SRが選択される可能性を向上できる。
【0036】
(3)本実施形態において、代表として決定した走行レンジ要求SA及び駐車レンジ要求SBに対応する優先レベルSLが同じレベルであるとき、調停部47は、シフト要求SRの調停結果として駐車レンジ要求SBを選択する。ここで、一般的に、車両100が駐車している状況は、車両100が走行している状況に比べて車両100の安全性が高い。したがって、本実施形態によれば、代表として決定した走行レンジ要求SA及び駐車レンジ要求SBに対応する優先レベルSLが同じレベルであるときには、より車両100の安全性が高い駐車レンジ要求SBを調停結果として選択できる。
【0037】
(4)あるタイミングとしての第3時点以降において、運動マネージャ45の受付部46が、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58のうち、第2支援部57からシフト要求SRとして走行レンジ要求SAを受け付けているとする。また、上記の第3時点よりも後の第4時点において、運動マネージャ45の受付部46が、第2支援部57からシフト要求SRとして走行レンジ要求SAを継続して受け付けつつ、第3支援部58からシフト要求SRとして走行レンジ要求SAを受け付けたとする。ここで、走行レンジは、トランスミッション80が実現可能なシフトレンジのうち、ニュートラル、ドライブ、及びリバースを含んでいる。そのため、仮に、第4時点において、第3支援部58から受け付けた走行レンジ要求SAが、走行レンジ要求SAの代表として決定されると、実際のトランスミッション80のシフトレンジが変わり得る。
【0038】
この点、本実施形態において、調停部47は、受付部46が継続して受け付けている走行レンジ要求SAのうち、最も先に受け付けた走行レンジ要求SAを、走行レンジ要求SAの代表として決定する。そのため、第4時点において受付部46が複数の走行レンジ要求SAを受け付けている状況であっても、先に受け付けた第2支援部57からの走行レンジ要求SAが優先される。そのため、第4時点においては、第4時点よりも前の走行レンジ要求SAが継続される。これにより、実際のトランスミッション80のシフトレンジが無用に変更されることは抑制できる。
【0039】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0040】
・上記実施形態において、シフト調停制御は変更してもよい。
例えば、ステップS13において、調停部47は、受付部46が継続して受け付けている走行レンジ要求SAのうち、最も先に受け付けた走行レンジ要求SAを、走行レンジ要求SAの代表として決定しなくてもよい。具体例として、ステップS13において、運動マネージャ45の調停部47は、受付部46が継続して受け付けている走行レンジ要求SAのうち、その走行レンジ要求SAに対応する優先レベルSLに基づいて、走行レンジ要求SAの代表を決定してもよい。一例として、運動マネージャ45の受付部46が、第2支援部57からシフト要求SRとして走行レンジ要求SAを継続して受け付けつつ、その後に第3支援部58からシフト要求SRとして走行レンジ要求SAを受け付けたとする。ここで、第2支援部57からの走行レンジ要求SAに対応する優先レベルSLが「2」であり、第3支援部58からの走行レンジ要求SAに対応する優先レベルSLが「3」であるとする。この場合、運動マネージャ45の調停部47は、受付部46が継続して受け付けている走行レンジ要求SAのうち、優先レベルSLが高い第3支援部58からの走行レンジ要求SAを、走行レンジ要求SAの代表として決定してもよい。
【0041】
・上と同様に、ステップS13の第1調停処理において、調停部47は、受付部46が継続して受け付けている駐車レンジ要求SBのうち、最も先に受け付けた駐車レンジ要求SBを、駐車レンジ要求SBの代表として決定しなくてもよい。具体例として、ステップS13において、運動マネージャ45の調停部47は、受付部46が継続して受け付けている駐車レンジ要求SBのうち、その駐車レンジ要求SBに対応する優先レベルSLに基づいて、駐車レンジ要求SBの代表を決定してもよい。
【0042】
・例えば、ステップS14において、代表として決定した走行レンジ要求SA及び駐車レンジ要求SBに対応する優先レベルSLが同じレベルであるとき、調停部47は、シフト要求SRの調停結果として走行レンジ要求SAを選択してもよい。
【0043】
・例えば、ステップS14において、調停部47は、優先レベルSLに拘わらず、シフト要求SRを調停してもよい。具体例として、ステップS14において、ステップS13の処理で代表として決定した走行レンジ要求SA及び駐車レンジ要求SBの双方があるとする。この場合、調停部47は、優先レベルSLに拘わらず、予め定められた一方を、シフト要求SRの調停結果として選択してもよい。なお、この構成において、調停部47は、シフト要求SRの調停結果として駐車レンジ要求SBを選択することが好ましい。また、この構成においては、ステップS11において、シフト要求SRを受け付ける際に、受付部46は、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58から、シフト要求SRと対応付けた優先レベルSLを受け付けなくてもよい。
【0044】
・上記実施形態において、車両100の構成は変更してもよい。
例えば、優先レベルSLに関する構成は変更してもよい。具体例として、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58が運動要求を出力するにあたって用いるセンサやデータの信頼性等に拘わらず、優先レベルSLの値を設定してもよい。
【0045】
・例えば、先進運転支援ECU50の記憶装置52は、2つ又は4つ以上の車両100の運転支援機能を実現するアプリケーションソフトウェアを記憶していてもよい。この構成において、受付部46は、2つ又は4つ以上のシフト要求SRを受け付けてもよい。
【0046】
・例えば、情報処理装置は、ブレーキECU40以外であってもよい。具体例として、ブレーキECU40に代えて、セントラルECU10のCPU11は、記憶装置12に記憶された運動マネージャアプリ45Aを実行することにより、運動マネージャ45の機能を実現してもよい。この場合、セントラルECU10は、情報処理装置である。すなわち、セントラルECU10、エンジンECU20、トランスミッションECU30、ブレーキECU40、及び先進運転支援ECU50は、情報処理装置として機能し得る。
【符号の説明】
【0047】
10…セントラルECU
20…エンジンECU
23…エンジン制御部
23A…エンジンアプリ
30…トランスミッションECU
33…トランスミッション制御部
33A…トランスミッションアプリ
40…ブレーキECU
41…CPU
42…記憶装置
43…ブレーキ制御部
43A…ブレーキアプリ
45…運動マネージャ
45A…運動マネージャアプリ
46…受付部
47…調停部
48…生成部
50…先進運転支援ECU
56…第1支援部
56A…第1支援アプリ
57…第2支援部
57A…第2支援アプリ
58…第3支援部
58A…第3支援アプリ
70…エンジン
80…トランスミッション
90…ブレーキ装置
100…車両