(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125657
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】制御装置、制御システム、制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240911BHJP
G16Y 10/30 20200101ALI20240911BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20240911BHJP
G16Y 20/40 20200101ALI20240911BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20240911BHJP
G16Y 40/30 20200101ALI20240911BHJP
【FI】
G06Q50/08
G16Y10/30
G16Y20/20
G16Y20/40
G16Y40/10
G16Y40/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033620
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】諸角 有紗
(72)【発明者】
【氏名】小林 航生
(72)【発明者】
【氏名】伊能 大雅
(72)【発明者】
【氏名】大西 洋二
(72)【発明者】
【氏名】浜口 沙月
(72)【発明者】
【氏名】櫟原 英士
(72)【発明者】
【氏名】白井 良介
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】 作業者の状態に応じて、柔軟にリスクへの対処方法を決定する。
【解決手段】 作業者の少なくとも周囲の状況を示す環境情報及び作業者の状態を示す作業者情報を取得する取得部と、環境情報及びリスク情報を用いて、発生し得るリスクを予測する予測部と、少なくとも作業者情報に基づいて、作業者がリスクを認識しているか否か、または作業者がリスクへの対応が可能であるか否かの少なくともいずれか一方を作業者状態として判定する判定部と、予測されたリスクと作業者状態とに応じて作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、所定の動作を指示する指示部とを有する制御装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の少なくとも周囲の状況を示す環境情報及び作業者の状態を示す作業者情報を取得する取得部と、
前記環境情報及びリスク情報を用いて、発生し得るリスクを予測する予測部と、
少なくとも前記作業者情報に基づいて、作業者が前記リスクを認識しているか否か、または作業者が前記リスクへの対応が可能であるか否かの少なくともいずれか一方を作業者状態として判定する判定部と、
前記予測されたリスクと前記作業者状態とに応じて、作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、所定の動作を指示する指示部と
を有する制御装置。
【請求項2】
前記指示部による指示は、作業者に前記リスクを認識させるための動作の指示、または前記リスクを回避するための指示の少なくともいずれか一方を含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記指示部は、作業者が前記リスクを認識していない、かつ、作業者が前記リスクに対して対応可能でない場合に、作業者に前記リスクを認識させるための動作を指示し、さらに前記リスクを回避するための動作を指示する
ことを特徴とする、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記指示部は、作業者が前記リスクを認識しておらず、かつ、作業者が前記リスクに対して対応可能である場合に、作業者に前記リスクを認識させるための動作を指示する
ことを特徴とする、請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記指示部は、作業者が前記リスクを認識しており、かつ、作業者が前記リスクに対して対応可能でない場合に、前記リスクを回避するための動作を指示する
ことを特徴とする、請求項2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記作業者情報は、作業者の視線情報、作業者の位置情報、作業者の移動方向、作業者の覚醒度、作業者の作業内容、作業者の技能、リスク対象物を回避するのに要する時間または装備の少なくともいずれか1つを含み、
前記判定部は、
作業者が前記リスクを認識しているか否かを、作業者の視線が前記リスク対象物に向いているか否か、作業者と前記リスク対象物との間に遮蔽物があるか否か、作業者の覚醒度がリスクを認識できる程度であるか否か、の少なくともいずれか1つに基づいて判定し、
作業者が前記リスクへの対応が可能であるか否かを、作業者の作業内容、作業者の装備、作業者の技能、前記リスク対象物を回避するのに要する時間、の少なくともいずれか1つに基づいて判定する
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記判定部の判定結果に基づいて、出力情報を生成する出力情報生成部と、
前記出力情報を作業補助機器または作業機械に出力し、作業補助機器または作業機械からの入力を要求する入力要求部と
をさらに備える、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
少なくとも1つ以上の作業補助端末と、
少なくとも1つ以上の作業機械と、
作業者の少なくとも周囲の状況を示す環境情報及び作業者の状態を示す作業者情報を取得する取得部、前記環境情報及びリスク情報を用いて、発生し得るリスクを予測する予測部、少なくとも前記作業者情報に基づいて、作業者が前記リスクを認識しているか否か、または作業者が前記リスクへの対応が可能であるか否かの少なくともいずれか一方を作業者状態として判定する判定部、及び前記予測されたリスクと前記作業者状態とに応じて作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、所定の動作を指示する指示部とを有する制御装置と
を有する制御システム。
【請求項9】
制御装置が、
作業者の少なくとも周囲の状況を示す環境情報及び作業者の状態を示す作業者情報を取得し、
前記環境情報及びリスク情報を用いて、発生し得るリスクを予測し、
少なくとも前記作業者情報に基づいて、作業者が前記リスクを認識しているか否か、または作業者が前記リスクへの対応が可能であるか否かの少なくともいずれか一方を作業者状態として判定し、
前記予測されたリスクと前記作業者状態とに応じて作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、所定の動作を指示する
ことを特徴とする、制御方法。
【請求項10】
コンピュータに、
作業者の少なくとも周囲の状況を示す環境情報及び作業者の状態を示す作業者情報を取得する処理と、
前記環境情報及びリスク情報を用いて、発生し得るリスクを予測する処理と、
少なくとも前記作業者情報に基づいて、作業者が前記リスクを認識しているか否か、または作業者が前記リスクへの対応が可能であるか否かの少なくともいずれか一方を作業者状態として判定する処理と、
前記予測されたリスクと前記作業者状態とに応じて作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、所定の動作を指示する処理と
を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リスクを回避するための制御装置、制御システム、制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
事故のリスクが存在する場面において、リスクの回避を図る技術の一例が、特許文献1及び特許文献2に開示されている。特許文献1に記載の施工システムは、作業機械と作業者とが衝突するリスクを演算し、衝突のリスクが許容値よりも高い場合に、作業機械の自動制御または警告をすることによりリスクの回避を図る。特許文献2に記載の警告制御装置は、事故発生時の状況と現在の状況とが類似している場合に、作業者に対して警告を行うことで、リスクの回避を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/166374号
【特許文献2】特開2020-8888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1または特許文献2に開示された技術は、作業者の状態に応じて、柔軟にリスクへの対処方法を決定することができない。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、作業者の状態に応じて、柔軟にリスクへの対処方法を決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の制御装置は、作業者の少なくとも周囲の状況を示す環境情報及び作業者の状態を示す作業者情報を取得する取得部と、環境情報及びリスク情報を用いて、発生し得るリスクを予測する予測部と、少なくとも作業者情報に基づいて、作業者がリスクを認識しているか否か、または作業者がリスクへの対応が可能であるか否かの少なくともいずれか一方を作業者状態として判定する判定部と、予測されたリスクと作業者状態とに応じて作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、所定の動作を指示する指示部とを有する。
【0007】
本発明の制御システムは、少なくとも1つ以上の作業補助端末と、少なくとも1つ以上の作業機械と、作業者の少なくとも周囲の状況を示す環境情報及び作業者の状態を示す作業者情報を取得する取得部、環境情報及びリスク情報を用いて、発生し得るリスクを予測する予測部、少なくとも作業者情報に基づいて、作業者がリスクを認識しているか否か、または作業者がリスクへの対応が可能であるか否かの少なくともいずれか一方を作業者状態として判定する判定部、及び予測されたリスクと作業者状態とに応じて作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、所定の動作を指示する指示部とを有する制御装置とを有する。
【0008】
本発明の制御方法は、制御装置が、作業者の少なくとも周囲の状況を示す環境情報及び作業者の状態を示す作業者情報を取得し、環境情報及びリスク情報を用いて、発生し得るリスクを予測し、少なくとも作業者情報に基づいて、作業者がリスクを認識しているか否か、又は作業者がリスクへの対応が可能であるか否かの少なくともいずれか一方を作業者状態として判定し、予測されたリスクと作業者状態とに応じて作業機械又は作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、所定の動作を指示することを特徴とする。
【0009】
本発明のコンピュータプログラムは、コンピュータに、作業者の少なくとも周囲の状況を示す環境情報及び作業者の状態を示す作業者情報を取得する処理と、環境情報及びリスク情報を用いて、発生し得るリスクを予測する処理と、少なくとも作業者情報に基づいて、作業者がリスクを認識しているか否か、または作業者がリスクへの対応が可能であるか否かの少なくともいずれか一方を作業者状態として判定する処理と、予測されたリスクと作業者状態とに応じて作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、所定の動作を指示する処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業者の状態に応じて、柔軟にリスクへの対処方法を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態における制御システム1000の全体図である。
【
図2】第1実施形態における制御システム1000の構成例を示す図である。
【
図3】第1実施形態における制御装置100の構成例を示す図である。
【
図4】第1実施形態における制御装置100の動作例を示す図である。
【
図5】第2実施形態における制御装置100の動作例の一部を示す図である。
【
図6】第2実施形態における制御装置100の動作例の一部を示す図である。
【
図7】第3実施形態における制御システム1000の構成例を示す図である。
【
図8】第3実施形態において生成される出力情報の一例を示す図である。
【
図9】第3実施形態における制御装置100の動作例を示す図である。
【
図10】本開示における制御装置100を、プロセッサを含むコンピュータ装置10で実現したハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
[第1実施形態]
第1実施形態では、一例として、本発明を施工現場に適用する場合について説明する。尚、詳細は変形例において後述するが、本発明は施工現場以外にも適用可能である。
【0014】
尚、以降の説明において、「作業者」という用語を用いる。作業者とは、具体的には、現場作業者または監督者の少なくともいずれか一方を指す。現場作業者とは、作業現場に存在し、作業に従事する人物すべてを指し、作業を行う現場作業者または現場作業者の監督作業を行う現場監督者の少なくともいずれか一方を指す。監督者は、作業現場で現場作業員の監督作業を行う現場監督者、またはリモートで現場作業者の監督作業を行うリモート監督者の少なくともいずれか一方を指す。本実施形態では、説明の都合上、監督者は現場監督者であるとする。作業者が監督者を指す場合の具体例については、変形例にて後述する。
【0015】
また、以降の説明において、「作業補助機器」という用語を用いる。作業補助機器は、作業者の作業を補助する機器の総称である。具体的には、第1の実施形態において、作業補助機器は、移動体200、作業者端末400または視線情報取得装置500のうち少なくともいずれか1つを含む。作業補助機器は、上述の機器以外を含んでもよい。例えば、作業補助機器は、作業現場の全体が俯瞰できる場所に設置された撮影装置を含んでもよい。
【0016】
(制御システム1000の概要)
図1は、第1実施形態における制御システム1000の全体図である。
図2は、第1実施形態における制御システム1000の構成例を示す図である。
図2に示すように、第1実施形態における制御システム1000は、制御装置100と、移動体200と、作業機械300と、作業者端末400(400-1、400-2)と、視線情報取得装置500(500-1、500-2)とを備える。
図1において、一例として作業者端末400は2つ(400-1、400-2)あるものとして示したが、作業者端末400は単数であっても複数であってもよい。また、以降の説明において、作業者端末400-1と作業者端末400-2とを特に区別する必要がないときには、作業者端末400と記す。また、
図1において、視線情報取得装置500についても2つ(500-1、500-2)あるものとして示したが、視線情報取得装置500は単数であっても複数であってもよい。以降の説明において、視線情報取得装置500-1と視線情報取得装置500-2とを特に区別する必要がないときには、視線情報取得装置500と記す。
【0017】
制御装置100は、作業機械300または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して所定の指示を行う装置である。制御装置100の具体的な構成及び詳細については、後述する。
【0018】
移動体200は、作業現場内を移動して作業者の作業を補助する装置である。具体的には、移動体200は、ドローンやロボット等によって実現される。尚、
図1において、移動体200は1つとして示したが、複数であってもよい。移動体200は、
図2に示すように、少なくとも撮影部201を備える。撮影部201は、所謂カメラである。撮影部201は、移動体200に固定される。移動体200は、撮影部201の他にも、スピーカーやマイクロフォンを備える構成としてもよい。移動体200は、作業現場内を移動しながら、撮影部201によって作業者の周囲の状況を所定のフレームレートで撮影する。移動体200は、制御装置100と通信可能に接続されている。移動体200は、撮影した画像を、環境情報として制御装置100に送信する。
【0019】
作業機械300は、作業者とともに作業を行う機械である。具体的には、作業機械300は、ショベルカーやクレーン車等の建設機械、重機、土木工事機械等によって実現される。尚、
図1において、作業機械300は1つとして示したが、複数であってもよい。また、作業機械300は、作業者によって操縦されるものであっても、操縦が自動制御されているものであってもよい。作業機械は、スピーカーやマイクロフォン、位置情報取得部、表示部、加速度センサ、ジャイロセンサ等を備える構成としてもよい。作業機械300は、制御装置100と通信可能に接続されている。作業機械300は、位置情報取得部によって取得した作業機械300の位置情報と、加速度センサにより算出された作業機械300の移動速度の情報と、加速度センサ及びジャイロセンサにより算出された作業機械300の移動方向の情報と、制御命令とを、制御装置100に送信する。制御命令とは、作業者または作業機械300の動作を制御する装置が命令した、作業機械300への動作命令を指す。作業機械300の駆動部は、制御命令に従って動作する。作業機械300から送信される情報は、環境情報に含まれる。
【0020】
作業者端末400は、作業者が所持する端末である。具体的には、作業者端末400は、作業者の所持するスマートフォンやタブレット端末、ウェアラブル端末等により実現される。作業者端末400は、スピーカーやマイクロフォン、位置情報取得部、表示部、加速度センサ、ジャイロセンサ、脳波センサ、呼気センサ、心拍センサ等を備える構成としてもよい。作業者端末400は、制御装置100と通信可能に接続されている。例えば、作業者端末400は、位置情報取得部により取得された作業者端末400の位置情報と、加速度センサにより算出された作業者端末の移動速度の情報と、加速度センサ及びジャイロセンサにより算出された作業者端末400の移動方向の情報とを、制御装置100に送信する。これらの情報は、環境情報に含まれる。
【0021】
制御システム1000に含まれる作業者端末400の数は、制御システム1000を利用する作業者の人数と等しい。制御システム1000を利用する作業者の人数は、単数であっても複数であってもよい。
図1では、一例として作業者を2人として示したため、作業者端末400の数も2つとして示した(400-1、400-2)。
【0022】
視線情報取得装置500は、作業者の視線映像及び作業者の視線位置情報を取得する。作業者の視線映像とは、作業者の視線方向を撮影した映像を指す。作業者の視線位置情報とは、視線映像に対する作業者の視線位置を示す情報を指す。具体的には、視線情報取得装置500は、作業者が装着したカメラを含むウェアラブル装置でもよい。例えば、視線情報取得装置500は、アイトラッカーを備えるウェアラブルカメラや、スマートグラス、ヘッドマウント型のウェアラブル装置等によって実現される。視線情報取得装置500は、制御装置100と通信可能に接続されている。視線情報取得装置500は、取得した視線映像及び視線位置情報を、制御装置100に送信する。視線映像及び視線位置情報は、作業者情報に含まれる。
【0023】
制御システム1000に含まれる視線情報取得装置500の数は、制御システム1000を利用する作業者の人数と等しい。制御システム1000を利用する作業者の人数は、単数であっても複数であってもよい。
図1では、一例として作業者を2人として示したため、視線情報取得装置500の数も2つとして示した(500-1、500-2)。尚、移動体200の備える撮影部201によって撮影された映像から作業者の視線映像及び視線位置情報が取得できる場合、制御システム1000は、視線情報取得装置500を備えない構成であってもよい。
【0024】
尚、制御システム1000を利用する作業者が複数いる場合には、何らかの手法によって作業者を識別する必要がある。制御システム1000は、例えば以下のようにして作業者を識別する。記憶装置600は、作業者端末400の識別情報と、作業者の識別情報とを紐づけて記憶する。記憶装置600は、さらに、視線情報取得装置500の識別情報と、作業者の識別情報とを紐づけて記憶する。作業者端末400の識別情報とは、例えば、IMEI(International Mobile Equipment Identifier)等の端末識別情報、端末のモデル番号、電話番号、メールアドレスのうちの少なくともいずれか1つからなる情報であり、端末を識別するための情報を指す。視線情報取得装置500の識別情報とは、例えば、ウェアラブル装置のシリアル番号またはモデル番号であり、視線情報取得装置を識別するための情報を指す。作業者の識別情報とは、例えば、作業者の氏名、社員番号、年齢、性別のうちの少なくともいずれか1つからなる情報であり、個人を識別するための情報を指す。作業者端末400は、制御装置100に情報を送信する際には、作業者端末400の識別情報とともに送信する。制御装置100は、記憶装置600を参照することにより、情報を送信した作業者端末400及び当該作業者端末400を所有する作業者を特定する。視線情報取得装置500もまた、制御装置100に情報を送信する際には、作業者端末400の識別情報とともに送信する。制御装置100は、記憶装置600を参照することにより、情報を送信した視線情報取得装置500及び当該視線情報取得装置500を所有する作業者を特定する。尚、上述の手法は一例であり、公知の別の手法によって作業者を識別してもよい。
【0025】
記憶装置600は、制御装置100によって参照される情報を記憶する。記憶装置600は、例えば、以下に示す情報のうち少なくともいずれか1つを記憶する。尚、下記の情報は一例であり、記憶装置600はその他の情報を記憶するものであってもよい。
【0026】
(1)作業者端末400の識別情報と、当該作業者端末400を所有する作業者の識別情報とを紐づけた情報
(2)視線情報取得装置500の識別情報と、当該視線情報取得装置500を所有する作業者の識別情報とを紐づけた情報
(3)発生し得るリスクと、当該リスクを引き起こす環境情報とを対応付けた情報
(4)発生し得るリスクと、当該リスクが発生した際の環境情報とを教師データとして機械学習された学習済みモデル
(5)作業優先度
【0027】
(1)の情報及び(2)の情報は、作業者を識別する際に制御装置100によって参照される。これらの情報は、前述したとおり、制御システム1000を複数の作業者が利用する場合に必要となる情報である。そのため、記憶装置600は、制御システム1000によって管理される作業者が1人である場合、(1)の情報及び(2)の情報を記憶しなくても良い。
【0028】
以降の説明において、(3)の情報及び(4)の学習済みモデルを、リスク情報とも称する。リスク情報は、制御装置100の予測部102によって、発生し得るリスクを予測する際に参照される情報である。予測部102が、どのようにして(3)の情報及び(4)の学習済みモデルを利用するかについては後述する。
【0029】
(3)の情報は、予め制御システム1000の管理者によって設定されてもよいし、過去に発生したリスクの統計データに基づいて生成されてもよい。発生し得るリスクは、複数であっても単数であってもよい。発生し得るリスクが複数ある場合には、それぞれのリスクについて、リスクを引き起こす環境情報が対応付けられて記憶される。(4)の学習済みモデルは、例えば、作業現場において発生したリスクの蓄積データに基づいて、予め生成されたモデルである。発生し得るリスクは、複数であっても単数であってもよい。(4)の学習済みモデルは、入力を環境情報とし、出力を、入力された環境情報の環境において発生し得るリスクとするモデルである。例えば、モデルは、リスクを推定するためのニューラルネットワークまたは他の機械学習モデルである。
【0030】
(5)の作業優先度とは、作業現場において行われる作業と、当該作業の優先度とを関連付けた情報である。作業優先度は、制御装置100の判定部103によって、リスクへの対応が可能であるか否かを判定する際に参照される。作業優先度の高い作業とは、例えば、リスクへの対応作業や、中断すると作業効率が著しく低下する作業等を指す。判定部103がどのようにして作業優先度を利用するかについては後述する。
【0031】
(制御装置100の構成)
次に、
図3を用いて、制御装置100の構成について説明する。
図3は、第1実施形態における制御装置100の構成例を示す図である。制御装置100は、取得部101と、予測部102と、判定部103と、指示部104とを備える。
【0032】
取得部101は、少なくとも作業者の周囲の状況を示す環境情報及び作業者の状態を示す作業者情報を取得する。
【0033】
環境情報は、前述のとおり、少なくとも作業者の周囲の状況を示す情報である。環境情報は、作業者の周囲の状況を示す情報の他に、作業者についての情報を含んでもよい。環境情報は、具体的には、作業者の位置情報、作業機械300の位置情報、作業者と作業機械300との間の距離の情報、作業者の移動方向、及び作業機械300の移動方向の情報を含む。これらの環境情報は、移動体200、作業機械300、または作業者端末400が備える、前述の各種センサから取得される。取得部101は、制御システム1000を利用する作業者が複数いる場合には、記憶装置600に記憶された(1)の情報を参照し、作業者を識別する。例えば、作業者と作業機械300との間の距離の情報は、作業機械300に備えられる赤外線またはレーザを用いた対人距離検出センサの情報から取得される。作業者と作業機械300との間の距離の情報は、作業者の位置情報及び作業機械300の位置情報から取得部101によって算出されてもよい。あるいは、これらの環境情報は、移動体200の撮影部201によって撮影された画像に基づいて取得部101で生成されてもよい。具体的に、移動体200から受信した画像を、取得部101が公知の画像解析技術によって解析することで取得してもよい。
【0034】
作業者情報は、前述のとおり、作業者の状態を示す情報である。作業者情報は、具体的には、作業者の視線情報、作業者の位置情報、作業者の移動方向、作業者の覚醒度、作業者の作業内容、作業者の技能、リスク対象物を回避するのに要する時間、または装備の少なくともいずれか1つを含む。
【0035】
作業者の覚醒度とは、作業者の意識が朦朧としているか、あるいは覚醒状態であるのかを表す指標である。例えば、覚醒度が低い状態とは、作業者に眠気があるとき、作業者の集中力が低下しているとき、作業者がアルコールを摂取している状態であるとき等を指す。覚醒度は、視線情報、呼気センサ、脳波センサ、心拍センサ等によって取得された情報を用いて、公知の技術により推定される。
【0036】
作業者の技能とは、作業者が所有しているスキルまたは資格情報を指す。例えば、作業者の技能は、クレーン・デリック運転士免許の有無、作業に係る必須講習の受講有無等を含む。作業者の技能は、例えば作業者の識別情報と紐づけて記憶装置600に記憶される。
【0037】
リスク対象物とは、予測部102によって予測されたリスクに関連する物体または地点を指す。例えば、予測部102によって予測されたリスクが作業機械300と作業者との接触事故であった場合、リスク対象物は作業機械300である。例えば、予測部102によって予測されたリスクが進入禁止エリアへの侵入であった場合、リスク対象物とは、進入禁止エリアを指す。リスク対象物を回避するのに要する時間とは、例えば、作業者の移動速度及び作業者とリスク対象物との間の距離を用いて予測された情報である。
【0038】
作業者の装備とは、作業者が装着している物体を指す。具体的には、装備とは、作業服、ヘルメット、装着工具、送気マスク等を指す。
【0039】
これらの作業者情報は、作業者端末400または視線情報取得装置500から取得される。作業者情報は、作業者端末400または視線情報取得装置500から取得された情報を用いて演算された値を含んでも良い。取得部101は、制御システム1000を利用する作業者が複数いる場合には、記憶装置600に記憶された(1)または(2)の情報を参照し、作業者を識別する。あるいは、これらの作業者情報は、移動体200から受信した画像を、取得部101が公知の画像解析技術によって解析することで取得してもよい。
【0040】
予測部102は、取得部101が取得した環境情報と、記憶装置600に記憶されたリスク情報とを用いて、発生し得るリスクを予測する。
【0041】
まず、(3)の情報を用いてリスクを予測する手法について説明する。予測部102は、取得部101が取得した環境情報を用いて、リスク情報を検索する。予測部102は、リスク情報に含まれる、リスクを引き起こす環境情報と、取得部101が取得した環境情報を比較する。予測部102は、取得部101が取得した環境情報と一致または類似するリスクがあれば、当該リスクが発生し得ると予測する。尚、類似と判断する範囲は、例えば予め制御システム1000の管理者によって設定されるものとする。
【0042】
次に、(4)の学習済みモデルを用いてリスクを予測する手法について説明する。予測部102は、(4)の学習済みモデルを用いて、取得部101が取得した環境情報を入力として、出力として、入力された環境情報の環境において発生し得るリスクを得る。尚、予測部102は、発生し得るリスクの情報とともに、当該リスクの発生確率を得てもよい。予測部102は、リスクの発生確率が所定の発生確率よりも高い場合に、当該リスクが発生し得ると予測してもよい。尚、所定の発生確率は、例えば予め制御システム1000の管理者によって設定されるものとする。
【0043】
判定部103は、少なくとも作業者情報に基づいて、作業者がリスクを認識しているか否か、または作業者がリスクへの対応が可能であるか否かの少なくともいずれか一方を作業者状態として判定する。具体的に、判定部103は、取得部101が取得した作業者情報に基づいて、または、取得部101が取得した作業者情報及び環境情報に基づいて、作業者がリスクを認識しているか否か、または作業者がリスクへの対応が可能であるか否かの少なくともいずれか一方を作業者状態として判定する。尚、リスクを認識しているか否かを判定する作業者と、リスクへの対応が可能であるか否かを判定する作業者とは、必ずしも同一である必要は無い。
【0044】
判定部103は、例えば以下(1)~(3)に示すいずれかの判定結果あるいは以下の判定結果のうちのいずれか複数の組合わせによって、作業者がリスクを認識しているか否かを判定する。
【0045】
(1)作業者の視線がリスク対象物に向いているか否かの判定結果
(2)作業者とリスク対象物との間に遮蔽物があるか否かの判定結果
(3)作業者の覚醒度が基準値を満たすか否かの判定結果
【0046】
以下、作業者が現場作業者である場合についての(1)~(3)の具体例を説明する。作業者が監督者である場合の具体例については、変形例で説明する。
【0047】
まず、(1)の具体例を説明する。例えば、予測部102が予測したリスクが、現場作業者と作業機械300との衝突であったとする。その場合、リスク対象物は作業機械300となる。判定部103は、作業者の視線情報を用いて、現場作業者の視線が作業機械に向いているか否かを判定する。現場作業者の視線が作業機械に向いているか否かは、公知の技術によって求め得る。例えば判定部103は、現場作業者の視線位置がリスク対象物の位置と重なった時間が所定の時間以上である場合に、現場作業者の視線がリスク対象物に向いていると判定してもよい。判定部103は、現場作業者の視線がリスク対象物に向いていれば、作業者がリスクを認識していると判定し、現場作業者の視線がリスク対象物に向いていなければ、作業者がリスクを認識していないと判定する。
【0048】
次に、(2)の具体例を説明する。例えば、予測部102が予測したリスクが、現場作業者と作業機械300との衝突であったとする。その場合、リスク対象物は作業機械300になる。判定部103は、作業機械300と現場作業者との間に障害物があるか否かを判定する。判定部103は、リスク対象物と現場作業者との間に遮蔽物が無ければ、作業者がリスクを認識していると判定し、リスク対象物と現場作業者との間に遮蔽物があれば、作業者がリスクを認識していないと判定する。これは、遮蔽物があれば、リスク対象物は作業者の死角となっている可能性が高いためである。
【0049】
次に、(3)の具体例を説明する。覚醒度とは、前述したように、作業者の意識が朦朧としているか、あるいは覚醒状態であるのかを表す指標である。判定部103は、取得部101によって取得された作業者の覚醒度が、基準値を満たすか否かを判定する。判定部103は、覚醒度が基準値を満たす場合、作業者がリスクを認識していると判定し、基準値以下である場合、作業者がリスクを認識していないと判定する。
【0050】
判定部103は、例えば以下(1)~(3)に示すいずれかの情報あるいは以下の情報のうちのいずれか複数の組合せによって、作業者がリスクへの対応が可能であるか否かを判定する。
【0051】
(1)作業者の作業内容
(2)作業者の装備
(3)作業者の技能
(4)リスク対象物の回避をするのに要する時間が基準値未満であるか否か
【0052】
以下、作業者が現場作業者である場合についての(1)~(3)の具体例を説明する。作業者が監督者である場合の具体例については、変形例で説明する。
【0053】
まず、(1)の具体例を説明する。判定部103は、現場作業者の作業内容が運搬業務である場合に、リスクへの対応が可能でないと判定する。あるいは、判定部103は、現場作業者の作業内容の優先度が高い場合に、リスクへの対応が可能でないと判定する。あるいは、判定部103は、作業者が作業中である場合に、リスクへの対応が可能でないと判定する。
【0054】
次に、(2)の具体例を説明する。判定部103は、例えば、現場作業者の装備が安全性に問題のあるものである場合に、リスクへの対応が可能ではないと判定する。安全性に問題のある装備とは、例えば以下のような装備を指す。例えば、現場作業者がリスクを回避するために酸素濃度の低いエリアを通過する必要がある状況であれば、作業者が送気マスクを装着していなければ、安全性に問題があるものとなる。判定部103は、現場作業者の装備が安全性に問題のあるものである場合に、リスクへの対応が可能であると判定し、安全性に問題がない場合に、リスクへの対応が可能ではないと判定する。
【0055】
次に、(3)の具体例を説明する。例えば、判定部103は、現場作業者がリスクを回避するためには重機の操縦が必要であるところ、現場作業者が重機の操縦資格を所持していない場合には、リスクへの対応が可能ではないと判定する。
【0056】
次に、(4)の具体例を説明する。例えば、判定部103は、リスク対象物の回避をするのに要する時間が基準値未満である場合には、リスクへの対応が可能ではないと判定し、リスク対象物の回避をするのに要する時間が基準値以上である場合には、リスクへの対応が可能であると判定する。
【0057】
指示部104は、予測部102が予測したリスクと、判定部103が判定した作業者状態とに応じて、作業機械300または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、所定の動作を指示する。
【0058】
具体的に、指示部104による指示は、作業者にリスクを認識させるための動作の指示、またはリスクを回避するための指示の少なくともいずれか一方を含む。
【0059】
例えば、指示部104は、作業者がリスクを認識していない、かつ、作業者がリスクに対して対応可能でない場合に、作業者にリスクを認識させるための動作を指示し、さらにリスクを回避するための動作を指示する。指示部104は、作業者がリスクを認識しておらず、かつ、作業者がリスクに対して対応可能である場合に、作業者に前記リスクを認識させるための動作を指示する。指示部104は、作業者がリスクを認識しており、かつ、作業者がリスクに対して対応可能でない場合に、リスクを回避するための動作を指示する。指示部104は、作業者がリスクを認識しており、かつ、作業者がリスクに対して対応可能である場合、指示を出さなくてもよいし、リスクを回避するための動作を指示してもよい。
【0060】
所定の動作について詳述する。判定部103によって作業者がリスクを認識していないと判定された場合、指示部104は、作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、作業者にリスクを認識させるための動作を指示する。作業者にリスクを認識させるための動作としては、例えば、作業補助機器による作業者への警告等がある。以下に、判定部103が行う作業者への警告の一例を示す。例えば、指示部104は、作業者端末400に対して、作業者に警告のメッセージや音、振動を送信することを指示する。あるいは、指示部104は、移動体200に対して、スピーカーを介して警告メッセージを通知することを指示する。判定部103は、予測部102が予測したリスクの内容に応じて、指示内容を変更してもよい。
【0061】
判定部103によって作業者がリスクへの対応が可能でないと判定された場合、指示部104は、作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、リスクを回避するための動作を指示する。尚、リスクを回避するための動作は、予測部102が予測したリスクの内容に応じて予め定められているものとする。例えば、予測部102が予測したリスクが「作業者と作業機械300との接触事故」であるとする。この場合には、例えば所定の動作の指示について以下の2つの対応がある。
【0062】
第1の対応として、作業機械300を制御するための指示を行うという対応がある。指示部104は、作業機械300に対して、作業者方向への作業を行わせない指示や、作業を停止するための指示を行うことで、リスクの回避を図る。
【0063】
第2の対応として、作業者がリスクを回避できるような指示を行うという対応がある。尚、リスクを回避するための指示は、予測部102が予測したリスクの内容に応じて予め定められているものとする。例えば、予測したリスクが「作業者と作業機械300との接触事故」であるとする。この場合には、指示部104は、取得部101が取得した作業者状態または環境情報に基づき、作業補助機器に対して作業機械300との接触事故の危険性がないエリアに誘導する。例えば、作業者端末400のスピーカーで「右方向へ移動してください」というアナウンスを流すことによって、作業者にリスクを回避させる。移動体200に、作業者の移動経路を送信し、道案内をさせるような構成としてもよい。
【0064】
(制御装置100の動作)
次に、第1実施形態における制御装置100の動作の一例について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0065】
まず、取得部101は、環境情報、作業者情報及びリスク情報を取得する(ステップS101)。環境情報及び作業者情報は、移動体200、作業機械300、作業者端末400及び視線情報取得装置500のいずれかから取得される。
【0066】
次に、予測部102は、環境情報及びリスク情報を用いて、発生し得るリスクを予測する(ステップS102)。発生し得るリスクがないと予測された場合(ステップS103 No)、ステップS101の処理へ戻る。発生し得るリスクがあると予測された場合(ステップS103 Yes)、ステップS104の処理へ進む。
【0067】
次に、判定部103は、作業者情報または環境情報の少なくともいずれか一方に基づいて、作業者が前記リスクを認識しているか否か、または作業者が前記リスクへの対応が可能であるか否かの少なくともいずれか一方を、作業者状態として判定する(ステップS104)。
【0068】
指示部104は、ステップS102で予測されたリスクとステップS104で判定された作業者状態とに応じて、作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、前述の所定の動作を指示する(ステップS105)。制御装置100は、ステップS105の処理を終えると、上述した一連の処理を終了する。
【0069】
(効果)
第1実施形態における制御装置100は上記のように構成されている。次に、第1実施形態における効果を説明する。
【0070】
上述したように、制御装置100は、環境情報及び作業者情報を取得し、環境情報及びリスク情報を用いて、発生し得るリスクを予測し、作業者情報または環境情報の少なくともいずれか一方に基づいて、作業者がリスクを認識しているか否か、または作業者がリスクへの対応が可能であるか否かの少なくともいずれか一方を作業者状態として判定し、予測されたリスクと作業者状態とに応じて作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、所定の動作を指示する構成を備える。制御装置100は、上記構成により、作業者の状態に応じて、リスクへの対処方法を変更することが可能になる。換言すれば、制御装置100は上記構成により、作業者の状態に応じて、柔軟にリスクへの対処方法を決定することが可能になる。
【0071】
(変形例)
第1実施形態における制御装置100は、以下のように変形してもよい。
【0072】
第1実施形態の説明において、本発明を施工現場に適用する場合について説明したが、本発明は施工現場以外にも適用可能である。例えば、病院、農業、害獣駆除等、作業機械と作業者とが共存する現場であれば適用可能である。
【0073】
第1実施形態の説明において、制御システム1000は、作業補助機器として移動体200、作業者端末400、視線情報取得装置500を含むものとして説明したが、これらのうちいずれかを含まない構成としてもよい。あるいは、制御システム1000は、作業補助機器として上述の装置以外の装置を含んでもよい。予測部102、判定部103及び指示部104が処理を行うに際して必要最小限の情報が取得できればよい。例えば、移動体200に備えられた撮影部201が撮影した画像の解像度が高く、作業者の眼球の動きまで取得できる場合には、視線情報取得装置500を含まない構成としてもよい。
【0074】
第1実施形態の説明において、制御システム1000は記憶装置600を含むものとして説明したが、この構成に限らない。例えば、制御装置100が記憶部を備える構成としてもよい。その場合、記憶部に記憶される情報は記憶装置600に記憶される情報と同一である。
【0075】
(作業者が監督者を指す場合の具体例)
第1実施形態の説明において、作業者は現場作業者であるとして説明したが、監督者であってもよい。監督者とは、作業現場で現場作業員の監督作業を行う現場監督者、またはリモートで現場作業者の監督作業を行うリモート監督者の少なくともいずれか一方を指す。以下、作業者が監督者である場合の制御装置100の動作について説明する。尚、第1実施形態での説明と同一である部分については、説明を省略する。
【0076】
判定部103は、監督者の作業者情報を用いて、監督者が作業者に発生し得るリスクを認識しているか否か、または監督者が作業者に発生し得るリスクへの対応が可能であるか否かの少なくともいずれか一方を作業者状態として判定する。ここでの「作業者」は、現場作業者または監督者本人を指す。監督者本人を指す場合の処理は、第1実施形態で示した処理と同一である。以下、ここでの「作業者」が現場作業者を指す場合の処理について説明する。
【0077】
監督者が現場作業者に発生し得るリスクを認識しているか否かは、例えば以下(1)~(3)のいずれかの判定結果あるいは以下の判定結果のうちのいずれか複数の組合せによって判定される。
(1)監督者の視線が、リスク対象物すなわちリスクが発生し得る現場作業者に向いているか否かの判定結果
(2)監督者とリスク対象物すなわちリスクが発生し得る現場作業者との間に、遮蔽物があるか否かの判定結果
(3)監督の覚醒度が基準値を満たすか否かの判定結果
【0078】
監督者が現場作業者に発生し得るリスクへの対応が可能であるか否かは、例えば以下(1)~(3)に示すいずれかの情報あるいは以下の情報のうちのいずれか複数の組合せによって判定すされる。
(1)監督者の作業内容
(2)監督者の装備
(3)監督者の技能
【0079】
次に、本発明を監督者に適用する場合の効果について説明する。監督者の作業には、現場作業者の状態を監視する作業が含まれる。現場作業者にリスクが生じた場合、監督者は当該リスクを認識し、当該リスクを解消するための対応が求められる。リスクを解消するための対応とは、例えば、現場作業者への警告や、作業支援、応援指示等が含まれる。
【0080】
本変形例の制御装置100は、環境情報及び作業者情報を取得し、環境情報及びリスク情報を用いて、現場作業者に発生し得るリスクを予測し、作業者情報または環境情報の少なくともいずれか一方に基づいて、監督者がリスクを認識しているか否か、または監督者がリスクへの対応が可能であるか否かの少なくともいずれか一方を作業者状態として判定し、予測されたリスクと作業者状態とに応じて作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、所定の動作を指示する構成を備える。制御装置100は、上記構成により、監督者の状態に応じて、リスクへの対処方法を変更することが可能になる。換言すれば、本変形例の制御装置100は上記構成により、監督者の状態に応じて、柔軟にリスクへの対処方法を決定することが可能になる。
【0081】
[第2実施形態]
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。尚、この第2実施形態の説明において、第1実施形態と同一名称部分には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。第2実施形態においても、一例として、本発明を施工現場に適用する場合について説明する。尚、第1実施形態と同様、本発明は施工現場以外にも適用可能である。
【0082】
第2実施形態における制御システム1000の構成及び制御装置100の構成は、第1実施形態と同一である。すなわち、第2実施形態における制御システム1000の構成例を示す図は
図2であり、第2実施形態における制御装置100の構成例を示す図は
図3である。
【0083】
(制御装置100の概要)
図3に示すように、第2実施形態における制御装置100は、取得部101と、予測部102と、判定部103と、指示部104とを備える。取得部101及び予測部102については、第1実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0084】
判定部103は、2つの判定処理を行う。第1に、判定部103は、取得部101が取得した作業者情報または環境情報の少なくともいずれか一方に基づいて、作業者がリスクを認識しているか否かを判定する。第2に、判定部103は、作業者がリスクへの対応が可能であるか否かを判定する。判定部103は、第1の判定結果及び第2の判定結果を、作業者状態とする。
【0085】
指示部104は、予測部102が予測したリスクと、判定部103が判定した作業者状態とに応じて、作業機械300または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、所定の動作を指示する。
【0086】
指示部104の指示内容は、リスクの内容と作業者状態とに応じて指示を変更する。指示部104が行う指示内容は、大別して以下の4つの場合に変化する。
【0087】
1.作業者がリスクを認識しており、かつ、作業者がリスクへの対応が可能な場合
2.作業者がリスクを認識しておらず、かつ、作業者がリスクへの対応が可能な場合
3.作業者がリスクを認識しており、かつ、作業者がリスクへの対応が可能でない場合
4.作業者がリスクを認識しておらず、かつ、作業者がリスクへの対応が可能でない場合
【0088】
まず、1.の場合について説明する。指示部104は、作業者がリスクを認識しており、かつ、作業者がリスクへの対応が可能な場合は、作業者がリスクを回避できると判断し、所定の動作を指示しないものとしてもよい。あるいは、指示部104は、作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、2.の警告よりも緊急度の低い警告を行うよう指示するものとしてもよい。緊急度の低い警告とは、例えば、警告時間の短い警告である。緊急度の高さに応じて、警告内容を変更してもよい。
【0089】
次に、2.の場合について説明する。指示部104は、作業者がリスクを認識しておらず、かつ、作業者がリスクへの対応が可能である場合は、作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、作業者にリスクを認識させるような動作を指示する。作業者にリスクを認識させるための動作の指示は、第1実施形態で示したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0090】
次に、3.の場合について説明する。指示部104は、作業者がリスクを認識しており、かつ、作業者がリスクへの対応が可能でない場合は、作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、リスクを回避するための動作を指示する。リスクを回避するための動作の指示は、第1実施形態で示したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0091】
次に、4.の場合について説明する。指示部104は、作業者がリスクを認識しておらず、かつ、作業者がリスクへの対応が可能でない場合は、作業機械または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、作業者にリスクを認識させるための動作の指示を行い、さらに、リスクを回避するための動作の指示を行う。例えば、予測部102が予測したリスクが「作業機械300と作業者との接触」である場合の予測部102の指示について説明する。この場合、予測部102は、作業者にリスクを認識させるための動作として、作業補助機器に対して警告を行うよう指示する。さらに、予測部102は、リスクを回避するための指示として、作業機械300の動作を制御する指示を行う。
【0092】
(制御装置100の動作)
次に、第2実施形態における制御装置100の動作の一例について、
図5及び
図6のフローチャートを用いて説明する。尚、第2実施形態におけるステップS201~ステップS203の処理は、第1実施形態におけるステップS101~ステップS103の処理と同一であるため、説明を省略する。
【0093】
まず、
図5のフローチャートを用いて処理を説明する。予測部102によって発生し得るリスクがあると予測された場合(ステップS203 Yes)、判定部103は、作業者がリスクを認識しているか否かを判定する(ステップS204)。
【0094】
作業者がリスクを認識している場合(ステップS204 Yes)、作業者がリスクへの対応が可能であるか否かを判定する(ステップS205)。作業者がリスクへの対応が可能である場合には(ステップS205 Yes)、処理を終了する。尚、
図5では、ステップS205においてYesであった場合は処理を行わないものとして示したが、何らかの処理を行うものとしてもよい。例えば前述したように、指示部104が、作業補助機器に対して緊急度の低い警告を行うよう指示してもよい。作業者がリスクへの対応が可能でない場合(ステップS205 No)、指示部104は、作業機械300または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、リスクを回避するための動作を指示する。制御装置100は、ステップS206の動作を終えると、処理を終了する。
【0095】
作業者がリスクを認識していない場合(ステップS204 No)、ステップS2041以降の処理を行う。ステップS2041以降の処理を
図6に示す。まず、判定部103は、作業者がリスクへの対応が可能であるか否かを判定する(ステップS2041)。作業者がリスクへの対応が可能である場合には(ステップS2041 Yes)、指示部104は、作業機械300または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、作業者にリスクを認識させるための動作を指示し(ステップS2042)、処理を終了する。作業者がリスクへの対応が可能でない場合には(ステップS2041 No)、指示部104は、作業機械300または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、作業者にリスクを認識させるための動作を指示し(ステップS2043)、かつ、作業機械300または作業補助機器の少なくともいずれか一方に対して、リスクを回避するための動作を指示して(ステップS2044)、処理を終了する。
【0096】
(効果)
第2実施形態における制御装置100は上記のように構成されている。第2実施形態における制御装置100は、第1実施形態における制御装置100よりもさらに柔軟に、リスクへの対処方法を決定することが可能になる。その理由は、判定部103が上述した2つの判定処理を行い、指示部104が判定部103の結果に応じて指示内容を変更するためである。
【0097】
[第3実施形態]
以下に、本発明に係る第3実施形態を説明する。尚、この第3実施形態の説明において、第1実施形態または第2実施形態と同一名称部分には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。第3実施形態においても、一例として、本発明を施工現場に適用する場合について説明する。尚、第1実施形態及び第2実施形態と同様、本発明は施工現場以外にも適用可能である。
【0098】
図7は、第3実施形態における制御システム1000の構成例を示す図である。
図7に示すように、第3実施形態における制御システム1000は、制御装置100と、移動体200と、作業機械300と、作業者端末400と、視線情報取得装置500と、記憶装置600とを備える。上記構成のうち、制御装置100以外の構成については第1実施形態及び第2実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0099】
(制御装置100の構成)
図7に示すように、制御装置100は、取得部101と、予測部102と、判定部103と、指示部104とに加え、さらに出力情報生成部105と、入力要求部106とを備える。
【0100】
出力情報生成部105は、判定部103の結果に基づいて、少なくとも、予測部102が予測したリスクの内容と、判定部103の判定結果と、予測部102が予測したリスクの内容リスクへの対処方法の一覧とを含む出力情報を生成する。出力情報生成部105によって生成された出力情報は、作業現場の現場監督者が所持する作業者端末400に出力される。出力情報は、作業現場をリモートで監視する端末に出力されてもよい。現場監督者が作業機械300を操作している場合、出力情報生成部105は、生成した出力情報を作業機械300に出力してもよい。
【0101】
図8は、出力情報生成部105によって生成される出力情報の一例を示す図である。出力情報は、これらの他に、撮影部201によって撮影された画像または動画を含んでもよい。撮影部201によって撮影された画像または動画を含めることにより、出力情報を受信した者は、リスクの内容を直感的に素早く理解することができる。出力情報生成部105は、画像または動画に重畳して、リスクを可視化するような表示を行ってもよい。
図8に示すように、発生し得るリスクの内容が「作業者と作業機械とが衝突するリスク」である場合には、画像または動画に重畳して、作業機械と衝突するリスクのあるエリアを強調表示してもよい。
図8では、強調表示の一例として、リスクのあるエリアを円で囲むような表示をしているが、これは一例であり上記の例に限らない。これにより、出力情報を受信した者は、リスクの内容をより直感的に素早く理解することができる。
【0102】
入力要求部106は、作業現場の現場監督者が所持する作業者端末400に対して、対処方法の選択に係る入力を要求する。入力の要求は、例えば
図8に示すように、出力情報に含めてもよい。入力される対処方法は、1つであっても複数であってもよい。また、入力要求部106は、作業現場の現場監督者が所持する作業者端末400からの入力を受信する。現場監督者が作業機械300を操作している場合、入力要求部106は、作業機械300からの入力を受信してもよい。
【0103】
指示部104は、作業現場の現場監督者が所持する作業者端末400または現場監督者が操作する作業機械300からの入力内容に応じた対応を、入力内容に応じた出力先に指示する。
【0104】
(制御装置100の動作)
次に、第3実施形態における制御装置100の動作の一例について、
図9のフローチャートを用いて説明する。尚、第3実施形態におけるステップS301~ステップS303の処理は、第1実施形態におけるステップS101~ステップS103の処理及び第2実施形態におけるステップS201~S203の処理と同一であるため、説明を省略する。また、ステップS304の処理は、第1実施形態におけるステップS104の処理と同一であるため、説明を省略する。
【0105】
ステップS304の処理が終わると、出力情報生成部105は、判定部103の結果に基づいて、少なくとも予測部102が予測したリスクの内容と、判定部103の判定結果と、予測部102が予測したリスクの内容リスクへの対処方法の一覧とを含む出力情報を生成する(ステップS305)。出力情報生成部105は、生成した出力情報を、作業現場の現場監督者が所持する作業者端末400に対して出力する(ステップS306)。
【0106】
次に、入力要求部106は、作業現場の現場監督者が所持する作業者端末400に対して、対処方法の選択に係る入力を要求する(ステップS307)。また、入力要求部106は、作業現場の現場監督者が所持する作業者端末400からの入力を受信する(ステップS308)。
【0107】
次に、指示部104は、作業現場の現場監督者が所持する作業者端末400からの入力内容に応じた対応を、入力内容に応じた出力先に指示する(ステップS309)。制御装置100は、ステップS309の動作を終えると、一連の処理を終了する。
【0108】
(効果)
第3実施形態における制御装置100は上記のように構成されている。第3実施形態における制御装置100は、以下のような効果を得ることができる。
【0109】
第3実施形態における制御装置100は、少なくとも、予測部102が予測したリスクの内容と、判定部103の判定結果と、予測部102が予測したリスクの内容リスクへの対処方法の一覧とを含む出力情報を生成し、作業現場の現場監督者が所持する作業者端末400に出力する。また、制御装置100は、作業現場の現場監督者が所持する作業者端末400に対して、対処方法の選択に係る入力を要求する。これにより、作業現場の現場監督者は、予測部102が予測したリスクの内容と、判定部103の判定結果とに基づいて、対処方法を柔軟に選択することができる。換言すれば、第3実施形態における制御装置100によれば、作業者の状態に応じて柔軟に、リスクへの対処方法を決定することができる。また、上述の効果に加え、現場監督者の死角でリスクが生じていた場合であっても現場監督者にリスクを通知することができるという効果も得られる。
【0110】
[コンピュータによるハードウェア構成]
以上説明した本開示の各実施形態における各構成要素は、その機能をハードウェア的に実現することは勿論、プログラム制御に基づくコンピュータ装置、ファームウェアによって実現することができる。
【0111】
図10は、本開示における制御装置100を、プロセッサを含むコンピュータ装置10で実現したハードウェア構成の一例を示す図である。各実施形態の制御装置100は、コンピュータ装置10によって実現される。コンピュータ装置10は、
図10に示すように、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12、プログラムを格納するハードディスク等の記憶装置13、入力装置及び出力装置接続用の入出力インタフェース14、及びネットワーク接続用の通信インタフェース15を含む。
【0112】
CPU11は、オペレーティングシステムを動作させて、本発明の制御装置100を制御する。例えば、CPU11は、ドライブ装置等に装着された記憶媒体からメモリ12にプログラムやデータを読み出す。また、CPU11は、例えば本発明の制御装置100における取得部101、予測部102、判定部103、指示部104、出力情報生成部105または入力要求部106の一部として機能し、プログラムに基づいて処理または命令を実行する。
【0113】
記憶装置13は、例えば光ディスク、フレキシブルディスク、磁気光ディスク、外付けハードディスク、または半導体メモリ等である。記憶装置の一部の記憶媒体は、不揮発性記憶装置であり、そこにプログラムを記録する。また、プログラムは、通信網に接続されている外部コンピュータ(図示せず)からダウンロードされてもよい。
【0114】
入出力インタフェース14に接続される入力装置は、例えばマウスやキーボード等により実現され、入力操作に用いられる。同様に、入出力インタフェース14に接続される出力装置は、例えばディスプレイ等によって実現され、出力結果の表示及び確認に用いられる。
【0115】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。例えば、複数の動作をフローチャートの形式で順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の動作を実行する順番を限定するものではない。このため、各実施形態を実施するときには、その複数の動作の順番は、内容に支障がない範囲で変更することができる。
【符号の説明】
【0116】
10 コンピュータ装置
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 入出力インタフェース
15 通信インタフェース
100 制御装置
101 取得部
102 予測部
103 判定部
104 指示部
105 出力情報生成部
106 入力要求部
200 移動体
201 撮影部
300 作業機械
400 作業者端末
500 視線情報取得装置
600 記憶装置
1000 制御システム