IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京浜ラムテック株式会社の特許一覧

特開2024-12566金属構造体の製造方法、及び金属構造体
<>
  • 特開-金属構造体の製造方法、及び金属構造体 図1
  • 特開-金属構造体の製造方法、及び金属構造体 図2
  • 特開-金属構造体の製造方法、及び金属構造体 図3
  • 特開-金属構造体の製造方法、及び金属構造体 図4
  • 特開-金属構造体の製造方法、及び金属構造体 図5
  • 特開-金属構造体の製造方法、及び金属構造体 図6
  • 特開-金属構造体の製造方法、及び金属構造体 図7
  • 特開-金属構造体の製造方法、及び金属構造体 図8
  • 特開-金属構造体の製造方法、及び金属構造体 図9
  • 特開-金属構造体の製造方法、及び金属構造体 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012566
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】金属構造体の製造方法、及び金属構造体
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20240123BHJP
   F28F 9/18 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
B23K20/12 360
F28F9/18
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023192133
(22)【出願日】2023-11-10
(62)【分割の表示】P 2019225513の分割
【原出願日】2019-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】506263882
【氏名又は名称】京浜ラムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】柴田 尚憲
(57)【要約】      (修正有)
【課題】接合部位における欠陥の発生及び製造工程の煩雑化を抑制乃至防止しつつ、設計自由度を確保できる金属構造体の製造方法を提供すること。
【解決手段】金属構造体の製造方法であって、金属構造体は、互いに垂直方向に重ね合わされた状態で摩擦撹拌接合により接合される2つの金属部材を含み、2つの金属部材は、互いに垂直方向に重ね合わされることにより2つの金属部材の間に内部空間を有する組立体を形成するように構成され、組立体は、組立体内部の内部空間に露出する位置において、2つの金属部材が互いに接合されずに接触乃至近接することにより2つの金属部材が非連続であるように構成された非連続部と、組立体内部の内部空間に露出しない位置において、2つの金属部材が互いに接合されずに接触乃至近接することにより2つの金属部材が互いの境界を有するように構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属構造体であり、
前記金属構造体は、板状体であり、板状本体部と板状蓋部とを含み、
前記金属構造体の内部において、前記板状本体部が有する第一画成面と前記板状蓋部が有する第二画成面とにより画成された内部空間と、
前記板状本体部及び前記板状蓋部が前記内部空間に露出する位置において、互いに接合されずに接触乃至近接することにより、前記板状本体部及び前記板状蓋部が非連続であるように構成される非連続部と、
前記金属構造体の内部の前記内部空間に露出しない位置において、前記板状本体部及び前記板状蓋部が互いに接合されずに接触乃至近接することにより前記板状本体部及び前記板状蓋部が境界を有するように構成され、前記非連続部を介して前記内部空間と連通する内側位置に形成される内側非接合部と、
前記金属構造体の内部の前記内部空間に露出しない位置において、前記板状本体部及び前記板状蓋部の境界が識別不可乃至識別困難であるように前記内側非接合部の一端を閉じる接合部と
を有し、
前記接合部は、
前記非連続部の深さ又は前記内部空間の深さのいずれにも到達しない深さにおいて、一つ又は実質的に一つの平面内に位置し、
前記平面に対して垂直又は実質的に垂直である垂直方向に見た時に、前記板状本体部が有する肩部と前記肩部を受け入れるように前記板状蓋部に形成された有底溝とが前記垂直方向に重なり合う上側部分に、前記内部空間を囲うように形成され、
前記非連続部は、前記垂直方向に見た時に、前記内部空間を囲うように形成され、
前記内側非接合部は、前記非連続部と前記接合部とが前記垂直方向において異なる高さに位置するように前記垂直方向に延びる部分を有する
ことを特徴とする、金属構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の金属構造体であって、
前記金属構造体は、さらに、
前記金属構造体の内部の前記内部空間に露出しない位置において、前記板状本体部及び前記板状蓋部が互いに接合されずに接触乃至近接することにより前記板状本体部及び前記板状蓋部が境界を有するように構成され、前記内部空間と連通しない外側位置に位置し、前記接合部により一端が閉じられる外側非接合部を有する
ことを特徴とする、金属構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属構造体であって、
前記板状本体部は、前記板状体の外側表面と、前記外側表面から突出する前記肩部と、前記第一画成面とを有し、
前記板状蓋部は、前記外側表面と当接する接触面と、前記肩部を受け入れるように形成された前記有底溝と、前記第二画成面とを有する
ことを特徴とする、金属構造体。
【請求項4】
請求項3に記載の金属構造体であって、
前記第一画成面及び前記第二画成面は、
前記第一画成面が凹部を成し、前記第二画成面が平坦面であるか、
前記第一画成面が平坦面であり、前記第二画成面が凹部を成すか、又は、
前記第一画成面及び前記第二画成面の両方が凹部を有する
ことを特徴とする、金属構造体。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の金属構造体であって、
前記金属構造体は、熱交換、加熱又は冷却すべき対象物に対して接触又は近接するように設置される伝熱用金属構造体である
ことを特徴とする、金属構造体。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の金属構造体であって、
前記金属構造体は、前記内部空間が空洞である状態で用いられる中空金属構造体である
ことを特徴とする、金属構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属構造体の製造方法、及び金属構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属構造体として、本体部と蓋部とを備える金属構造体がある。本体部には、蓋溝が形成される。本体部の蓋溝の底面には、更に凹溝が形成される。蓋溝には、蓋部が嵌め合わされる。蓋溝周辺における本体部と蓋部とが接合される。これにより、凹溝と蓋部とにより囲われる空間が、内部空間となり、流体の流路として使用可能となる。このような金属構造体は、伝熱用金属構造体として使用され得る。伝熱用金属構造体は、例えば、熱交換、加熱又は冷却すべき対象物に接触若しくは近接するように配置される。例えば、対象物から熱を逃がす場合には、当該流路に冷却媒体を流し、対象物から、金属本体部及び冷却媒体へ熱を伝達させることにより、対象物の熱を逃がすことができる。
【0003】
特許文献1は、金属構造体に関して、摩擦攪拌接合により、蓋溝周辺における本体部と蓋部とを接合する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-240706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、接合部位における欠陥の発生及び製造工程の煩雑化を抑制乃至防止しつつ、設計自由度を確保できる金属構造体の製造方法、及び金属構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上述した課題について検討を行い、以下の知見を得た。
【0007】
図1(a)、(b)は、摩擦攪拌接合による本体部101と蓋部102との接合の様子を模式的に示す横断面図である。なお、ここで横断面図は、流体の流路としての内部空間103が延びる方向と直交する平面により得られた断面図をいう。
【0008】
図1(a)に示すように、本体部101と蓋部102との接合部位(ツール105の先端部105aの通過位置)と内部空間103との水平方向における距離GDは、比較的大きく確保される。図1(b)に示すように、距離GDが短いと、摩擦攪拌接合時に、内部空間103内に金属母材103aが入ってしまい、接合部位に欠陥が生じるおそれがあるからである。そのため、下記(i)又は(ii)のいずれかが必要になる。
(i) 距離GDが充分に確保されるように金属構造体が設計される。
(ii) 距離GDが確保困難な部位に対して摩擦攪拌接合以外の接合方法が採用される。
【0009】
上記(i)のように、距離GDを充分に確保する設計が行われた場合、例えば内部空間103を密に配置することが困難であり、金属構造体の設計自由度が制限される問題が生じる。一方、上記(ii)のように、摩擦攪拌接合と、それ以外の接合方法とを組み合わせた場合、製造工程が煩雑化するという問題がある。
【0010】
図2(a)、(b)は、摩擦攪拌接合による本体部101と蓋部102との接合の様子を模式的に示す縦断面図である。なお、ここでいう縦断面図は、流体の流路としての内部空間103が延びる方向と平行な平面により得られた断面図をいう。但し、図2(a)、(b)は、ツール105の通過位置を基準とした縦断面図であるため、内部空間103を示していない。
【0011】
図2(a)では、本体部101に形成された蓋溝(図示せず)に、蓋部102が嵌め込まれている。摩擦攪拌用装置(図示せず)のツール105は、円柱形状を有すると共に、細い先端部105aを有する。ツール105は、先端部105aが、ツール105の進行方向において、より前に位置するように、鉛直方向VDに対して傾斜している。当該傾斜角D(前進角)は、例えば、0度超且つ5度以下であることが好ましく、1度以上4度以下であることがより好ましい。ところが、ツール105が傾斜角Dを有する状態で、ツール105を進行方向PDへ移動させると、進行方向PDの前方において、蓋部102に、図2(b)に示すように浮き上がるような変形が生じる場合がある。このような変形のし易さや変形量は、ツール105の大きさ(即ち荷重)に対して比例するように増大する。そのため、蓋部102の厚さが大きい場合には、摩擦攪拌接合時に、蓋部102が変形し易く、摩擦攪拌用装置のツール105が破損し易いという問題があった。そのため、厚さの大きい蓋部102を採用し難く、金属構造体の設計自由度が制限される場合があった。また、厚さの大きい蓋部102を採用する場合、ツール105の機械的強度を確保するためにツール105を大型化すると、接合部位をより大きく確保しなければならないため、更に金属構造体の設計自由度が制限される。また、蓋部102の変形を防止乃至抑制するための措置が必要となるため、製造工程が煩雑化するという問題が生じる。
【0012】
本発明者は、以上の知見に基づいて、本発明を完成させた。本発明の実施形態としては、以下のような構成が採用され得る。
【0013】
(1) 金属構造体の製造方法であって、
前記金属構造体は、互いに垂直方向に重ね合わされた状態で摩擦撹拌接合により接合される2つの金属部材を含み、
前記2つの金属部材は、互いに前記垂直方向に重ね合わされることにより前記2つの金属部材の間に内部空間を有する組立体を形成するように構成され、前記組立体は、前記組立体内部の前記内部空間に露出する位置において、前記2つの金属部材が互いに接合されずに接触乃至近接することにより前記2つの金属部材が非連続であるように構成された非連続部と、前記組立体内部の前記内部空間に露出しない位置において、前記2つの金属部材が互いに接合されずに接触乃至近接することにより前記2つの金属部材が互いの境界を有するように構成され、前記非連続部と物理的に連続する非接合部とを有し、前記非接合部は、前記組立体を前記垂直方向に見た時に、前記組立体の上面を基準として、前記非連続部よりも浅い位置において前記2つの金属部材が互いに接合されずに前記垂直方向に接触乃至近接する上側部分を含み、前記非連続部及び前記上側部分の各々は、前記組立体を前記垂直方向に見た時に、前記内部空間を囲うように形成され、
前記製造方法は、
前記2つの金属部材を準備する準備工程と、
前記2つの金属部材を前記垂直方向に重ね合わせることにより前記組立体を形成する組立工程と、
前記摩擦撹拌接合のためのツールを回転させながら前記組立体の上面から接合深度まで挿入し、前記垂直方向に見て前記上側部分に沿って移動させることにより、前記2つの金属部材が接合された接合部を形成し、前記接合部は、前記非接合部を、前記非連続部を介して前記内部空間と連通する内側位置に残存させるように形成される、接合工程と
を有し、
前記接合深度は、前記摩擦撹拌接合が前記上側部分まで到達するが前記非連続部の深さに到達しない深さである。
【0014】
(1)の製造方法によれば、接合工程において、摩擦撹拌接合が上側部分まで到達するが非連続部に到達しないようにツールが組立体に挿入される。上側部分は、非連続部よりも浅い位置に位置する。接合部の形成が浅い位置で行われるので、ツールが深い位置まで挿入されない。接合時に金属構造体に加わる荷重を低減できると共に、摩擦撹拌接合のためのツールの大型化を抑制乃至防止できる。金属部材の変形が抑制乃至防止され得る。厚みの大きな金属部材の採用が可能になる。ツールの挿入位置と内部空間との距離を確保できるので、摩擦撹拌接合によって金属母材が内部空間に流入するという事態の発生を抑制乃至防止できる。加えて、摩擦撹拌接合が、2つの金属部材が垂直方向に重なる上側部分に対して行われることにより、接合部が形成される。そのため、当該接合部における欠陥の発生が防止され得る。
【0015】
以上により、(1)の製造方法によれば、欠陥の発生を防止しつつ、金属構造体の設計自由度を高めることができる。また、(1)の製造方法によれば、浅い位置での接合が可能になるため、摩擦撹拌接合を採用し易い。摩擦撹拌接合とそれ以外の接合方法を組み合わせる必要がなく、摩擦撹拌接合のみによって接合可能な構成が採用可能となる。但し、(1)の金属構造体における2つの金属部材の接合は、必ずしも、摩擦撹拌接合のみに限定されない。摩擦撹拌接合と共に、摩擦撹拌接合以外の接合方法も用いられてもよい。(1)の製造方法の採用により、設計自由度が向上し、2つの金属部材の接合が容易な構造を採用可能であり、接合方法の組合せによるデメリットは低減され得る。
【0016】
(2) (1)の製造方法であって、
前記接合工程において、前記接合部は、前記非接合部が前記内側位置において前記垂直方向に延びる部分を有するように形成される。
【0017】
(2)の製造方法によれば、非接合部が内側位置において垂直方向に延びる部分を有するので、非連続部と接合部との距離が垂直方向に確保され得る。従って、例えば、非連続部と接合部との水平方向の距離を十分に確保しなくても、非連続部と接合部との距離を確保できる。その結果、例えば、内部空間をより密に配置することが可能である。欠陥の発生を抑えると共に、製造工程の複雑化を抑制乃至防止しつつ、設計自由度を向上させ得る。
【0018】
(3) (1)又は(2)の製造方法であって、
前記接合工程において、前記接合部は、前記非接合部を、前記内側位置に加え、前記内部空間と連通しない外側位置にも残存させるように形成される。
【0019】
(3)の製造方法によれば、非接合部が接合部の両側(即ち内側位置及び外側位置の両方)に残存するように接合部が形成される。接合部におけるボイドの発生が抑制乃至防止され得る。その結果、金属構造体の欠陥、特に内部空間の欠陥の発生を防止しつつ、製造工程の煩雑化を避けると共に、金属構造体の設計自由度を向上させることが可能になる。
【0020】
なお、外側非接合部(外側位置に残存する非接合部)と当該内部空間との間には接合部が存在するため、外側非接合部は、当該内部空間と連通しない。しかし、当該金属構造体が他の内部空間を有する場合、前記外側非接合部は、当該他の内部空間と連通していてもよい。当該外側非接合部は、当該他の内部空間を基準として見た場合には、内側非接合部に相当する。また、当該外側非接合部は、金属構造体の外部と連通していてもよい。
【0021】
(4) (1)~(3)のいずれか1の製造方法であって、
前記上側部分は、前記組立体を前記垂直方向に見た時に、前記内部空間と重ならない位置において前記内部空間を囲うように形成され、
前記非連続部は、前記組立体を前記垂直方向に見た時に、前記内部空間の外周縁に沿って前記内部空間を囲うように形成される。
【0022】
(4)の製造方法によれば、金属構造体の欠陥、特に内部空間の欠陥の発生を防止しつつ、製造工程の煩雑化を避けると共に、金属構造体の設計自由度を向上させることが可能になる。
【0023】
(5) (1)~(4)のいずれか1の製造方法であって、
前記2つの金属部材は、本体部及び蓋部であり、
前記本体部は、前記垂直方向に見た時に前記上側部分と対応する位置において、前記組立体の前記上面へ向けて突出するように形成された肩部を有し、
前記蓋部は、前記蓋部が前記本体部に重ね合わされた時に前記肩部を受け入れるように形成された有底溝を有し、
前記接合深度は、前記摩擦撹拌接合が前記肩部まで到達するが前記非連続部の深さまで到達しない深さである。
【0024】
(5)の製造方法によれば、金属構造体の欠陥、特に内部空間の欠陥の発生を防止しつつ、製造工程の煩雑化を避けると共に、金属構造体の設計自由度を向上させることが可能になる。
【0025】
(6) (5)の製造方法であって、
前記本体部は、表面に、前記蓋部が嵌め合わされるための蓋溝を有し、前記肩部は、前記蓋溝の底面から前記組立体の前記上面へ向けて突出するように形成され、
前記蓋部は、前記蓋溝に嵌め合わされることが可能な形状を有し、前記蓋部が前記蓋溝に嵌め合わされた時に前記肩部が前記有底溝に受け入れられるように構成される。
【0026】
(6)の製造方法によれば、金属構造体の欠陥、特に内部空間の欠陥の発生を防止しつつ、製造工程の煩雑化を避けると共に、金属構造体の設計自由度を向上させることが可能になる。
【0027】
(7) (1)~(6)のいずれか1の製造方法であって、
前記金属構造体は、熱交換、加熱又は冷却すべき対象物に対して接触又は近接するように設置される伝熱用金属構造体である。
【0028】
上記(7)の製造方法によれば、欠陥の発生を防止しつつ、金属構造体の設計自由度、特に内部空間の設計自由度を向上させることができる。内部空間を流体の流路とすることにより、例えば、流体の密閉性に優れた流路が密に配置された金属構造体を実現できる。即ち、高い密閉性と設計自由度とにより、優れた伝熱性を有する金属構造体を実現できる。即ち、(7)の製造方法によれば、伝熱用として好適な金属構造体を製造できる。
【0029】
(8) (1)~(6)のいずれか1の金属構造体であって、
前記金属構造体は、前記内部空間が空洞である状態で用いられる中空金属構造体である。
【0030】
上記(8)の製造方法によれば、欠陥の発生を防止しつつ、金属構造体の設計自由度、特に内部空間の設計自由度を向上させることができる。内部空間を空洞とすることにより、例えば、空洞が密に配置された金属構造体を実現できる。即ち、構造体の機械的強度、重量及びサイズの組合せに関する設計自由度が高い中空金属構造体を実現できる。
【0031】
(9) 金属構造体であって、
前記金属構造体は、
前記金属構造体内部に設けられた内部空間と、
前記内部空間を画成する金属壁部を構成する2つの金属部分が前記内部空間に露出する位置において、互いに接合されずに接触乃至近接することにより、前記2つの金属部分が非連続であるように構成される非連続部と、
前記金属構造体内部の前記内部空間に露出しない位置において、前記2つの金属部分が互いに接合されずに接触乃至近接することにより前記2つの金属部分が境界を有するように構成され、前記非連続部を介して前記内部空間と連通する内側位置に形成される内側非接合部と、
前記金属構造体内部の前記内部空間に露出しない位置において、前記2つの金属部分の境界が識別不可乃至識別困難であるように前記内側非接合部の一端を閉じる接合部と
を有し、
前記接合部は、一つ又は実質的に一つの平面内に位置し、前記平面に対して垂直又は実質的に垂直である垂直方向に見た時に、前記内部空間を囲うように形成され、
前記非連続部は、前記垂直方向に見た時に、前記内部空間を囲うように形成され、
前記内側非接合部は、前記非連続部と前記接合部とが前記垂直方向において異なる高さに位置するように前記垂直方向に延びる部分を有する。
【0032】
(9)の金属構造体によれば、金属構造体の欠陥、特に内部空間の欠陥の発生を防止しつつ、製造工程の煩雑化を避けると共に、金属構造体の設計自由度を向上させることができる。
【0033】
(10) (9)の金属構造体であって、
前記金属構造体は、さらに、
前記金属構造体内部の前記内部空間に露出しない位置において、前記2つの金属部分が互いに接合されずに接触乃至近接することにより前記2つの金属部分が境界を有するように構成され、前記内部空間と連通しない外側位置に位置し、前記接合部により一端が閉じられる外側非接合部を有する。
【0034】
上記(10)の金属構造体は、内側非接合部と外側非接合部とが接合部の両側に位置するように製造されている。製造時に接合部におけるボイドの発生が抑制乃至防止され得る。
【0035】
(11) (9)又は(10)の金属構造体であって、
前記金属構造体は、熱交換、加熱又は冷却すべき対象物に対して接触又は近接するように設置される伝熱用金属構造体である。
【0036】
上記(11)の金属構造体によれば、欠陥の発生を防止しつつ、金属構造体の設計自由度、特に内部空間の設計自由度を向上させることができる。内部空間を流体の流路とすることにより、例えば、流体の密閉性に優れた流路が密に配置された金属構造体を実現できる。即ち、高い密閉性と設計自由度とにより、優れた伝熱性を有する金属構造体を実現できる。即ち、(11)の金属構造体は、伝熱用として好適である。
【0037】
(12) (9)又は(10)の金属構造体であって、
前記金属構造体は、前記内部空間が空洞である状態で用いられる中空金属構造体である。
【0038】
上記(12)の製造方法によれば、欠陥の発生を防止しつつ、金属構造体の設計自由度、特に内部空間の設計自由度を向上させることができる。内部空間を空洞とすることにより、例えば、空洞が密に配置された金属構造体を実現できる。即ち、構造体の機械的強度、重量及びサイズの組合せに関する設計自由度が高い中空金属構造体を実現できる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、接合部位における欠陥の発生及び製造工程の煩雑化を抑制乃至防止しつつ、設計自由度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1(a)、(b)は、摩擦攪拌接合による本体部と蓋部との接合の様子を模式的に示す断面図である。
図2図2(a)、(b)は、摩擦攪拌接合による本体部と蓋部との接合の様子を模式的に示す断面図である。
図3図3(a)は、金属構造体を模式的に示す平面図であり、図3(b)は、図3(a)のA-A線断面図である。
図4】(a)~(c)は、実施形態に係る金属構造体の製造工程を示す断面図である。
図5】接合中の本体部及び蓋部を模式的に示す断面図である。
図6図6(a)は、他の実施形態に係る金属構造体を模式的に示す平面図であり、図6(b)~(e)は、その製造工程を示す断面図であり、図6(a)のB-B線断面図に相当する。
図7図7(a)は、従来の金属構造体に係る接合中の本体部及び蓋部を模式的に示す断面図であり、図7(b)は、実施形態に係る接合中の本体部及び蓋部を模式的に示す断面図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、従来の金属構造体を模式的に示す断面図であり、図8(c)及び図8(d)は、実施形態に係る金属構造体を模式的に示す断面図である。
図9】他の実施形態に係る金属構造体を模式的に示す断面図である。
図10】他の実施形態に係る金属構造体の製造方法を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
<<一実施形態に係る金属構造体>>
先ず、一実施形態に係る金属構造体10について説明する。図3(a)は、金属構造体10を模式的に示す平面図である。図3(b)は、図3(a)のA-A線断面図である。
【0042】
金属構造体10は、内部空間3と、非連続部3cと、内側非接合部3dと、接合部3fと、外側非接合部3hとを有する。
【0043】
金属構造体10は、板状体である。金属構造体10は、図3(a)に示すように、平面視において、長手方向(図3(a)における上下方向)に延びる矩形状を有する。金属構造体10は、図3(b)に示すように、断面視矩形状を有する。金属構造体10は、金属部分1a及び金属部分2aを含むように構成されている。金属部分1aと金属部分2aとは、接合部3fにおいて互いに接合されている。金属構造体10は、銅製である。即ち、金属部分1a及び金属部分2aは、銅からなる。金属構造体10を構成する金属は、特に限定されない。当該金属としては、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの少なくとも1種を含む合金が挙げられる。また、金属部分1a及び金属部分2aは、互いに同じ金属によって構成されてもよく、異なる金属によって構成されていてもよい。
【0044】
内部空間3は、金属構造体10の内部に設けられる。内部空間3は、平面視において、長手方向(図3(a)における上下方向)に延びる形状を有する。内部空間の形状は、特に限定されない。内部空間は、U字状であってもよく、ジグザグ形状であってもよい。1つの金属構造体における内部空間の数は、特に限定されず、1つ又は複数である。内部空間3は、金属壁部3bにより画成される。金属壁部3bは、金属構造体10のうち、内部空間3に露出する部分により構成される。金属壁部3bは、金属部分1aにより構成される部分と、金属部分2aにより構成される部分とからなる。金属部分1aは、後述する本体部1に相当する。金属部分2aは、後述する蓋部2に相当する。金属部分1aと金属部分2aとは、接合部3fにおいて接合されることより、一体化されている。
【0045】
非連続部3cは、金属部分1a及び金属部分2aが内部空間3に露出する位置において、互いに接合されずに接触乃至近接することにより、金属部分1a及び金属部分2aが非連続であるように構成された部分である。非連続部3cは、垂直方向Xに見た時に、内部空間3を囲うように形成されている。
【0046】
内側非接合部3dは、金属構造体10の内部空間3に露出しない位置において、金属部分1a及び金属部分2aが互いに接合されずに接触乃至近接することにより金属部分1a及び金属部分2aが境界を有するように構成された部分であり、非連続部3cを介して内部空間3と連通する内側位置に形成される。即ち、内側非接合部3dの一端3eは、接合部3fによって閉じられており、非連続部3cが、内側非接合部3dの他端に相当する。内側非接合部3dは、非連続部3cと接合部3fとが垂直方向Xにおいて異なる高さに位置するように垂直方向Xに延びる部分を有する。内側非接合部3dは、接合部3fの内側位置に位置する。なお、接合部3fの内側位置は、内部空間3に相対的に近い位置にあり、非連続部3cを介して内側空間3と連通する位置を指す。一方、接合部3fの外側位置は、内部空間3から相対的に遠い位置にあり、内側空間3と連通しない位置を指す。
【0047】
接合部3fは、金属構造体10の内部空間3に露出しない位置において、金属部分1a及び金属部分2aの境界が識別不可乃至識別困難であるように内側非接合部3dの一端3eを閉じる部分である。なお、境界が識別不可であるか又は識別困難であるかは厳密に区別される必要はない。接合部3fの内側位置と外側位置との間では流体の出入りが遮断され得る。接合部3fは、一つの平面Sの中に位置する。平面Sは、仮想的な平面である。垂直方向Xは、平面Sと垂直又は実質的に垂直に交差する方向を指す。即ち、接合部3fは、垂直方向Xにおいて、同一又は実質的に同一の高さ(深さ)に位置する。平面Sは、垂直方向Xに幅を有していてもよい。接合部3fを含む平面Sは、金属部分2aに含まれている。言い換えると、接合部3fは、金属部分2aに形成されている。また、接合部3fは、垂直方向Xに見た時に、図3(a)に示すように、内部空間3を囲うように形成されている。
【0048】
外側非接合部3hは、金属構造体10の内部空間3に露出しない位置において、金属部分1a及び金属部分2aが互いに接合されずに接触乃至近接することにより金属部分1a及び金属部分2aが境界を有するように構成される部分であり、外側位置に位置し、接合部3fにより一端3gが閉じられる。外側非接合部3hの他端は、金属構造体10の外部と連通していてもよい。金属構造体10が他の内部空間3を有する場合には、外側非接合部3hの他端は、他の内部空間3と連通してもよい。なお、金属構造体の構造によっては、外側位置に外側非接合部が存在しない場合もある。
【0049】
内部空間3は、金属部分2aに形成された貫通孔3aを介して金属構造体10の外部と連通している。金属部分2aには、図3(a)に示すように、2つの貫通孔3aが形成されている。貫通孔3aは、例えば、冷媒等の流体の注入口又は排出口として用いられる。なお、貫通孔3aの数は、特に限定されない。貫通孔3aは、1つであってもよく、複数であってもよい。貫通孔3aは、金属部分2aにのみ形成されているが、金属部分1aにのみ形成されてもよく、金属部分1a及び金属部分2aの両方に形成されていてもよい。
【0050】
貫通孔3aは、金属部分2aに形成されている。上述したように、接合部3fも、金属部分2aに形成されている。このように、貫通孔3a及び接合部3fは、一つの金属部分2aに形成され、もう一つの金属部分1aに形成されていないことが好ましい。これにより、金属部分1aを介して、内部空間3と金属構造体10の外部との流体の流通が防止される。例えば、内部空間3に冷媒などの流体を流した場合に金属部分1aからの流体の漏洩が防止される。従って、金属部分1aは、熱交換、加熱又は冷却すべき対象物に対して接触又は近接する伝熱面として好適に利用され得る。本実施形態では、金属部分1aが伝熱面を有しているが、金属部分2aが伝熱面を有していてもよい。また、内部空間3は、図3(a)に示すように、接合部3fが内部空間3の外周の全周にわたって形成されることにより、貫通孔3aを除いて、密閉されていることが好ましい。なお、貫通孔3aは、必須の構成ではない。
【0051】
金属構造体10の用途は、特に限定されない。金属構造体10は、例えば、内部空間3が空洞である状態で用いられる中空金属構造体であってもよい。また、金属構造体10は、熱交換、加熱又は冷却すべき対象物に対して接触又は近接するように設置される伝熱用金属構造体であってもよい。金属構造体10は、密閉性に優れた内部空間3を有する。即ち、接合部3fにおいて互いに接合された本体部1及び蓋部2は、内部空間3と、金属構造体10の外部との間における流体の出入りを遮断できる。金属構造体10は、内部空間3が流体の流路又は貯留部として機能するように好適に用いられ得る。当該流体は、例えば、気体又は液体である。金属構造体10が伝熱用金属構造体として用いられる場合、流体は、例えば、冷媒等の伝熱用流体である。
【0052】
<<一実施形態に係る金属構造体の製造方法>>
次に、一実施形態に係る金属構造体10の製造方法について、図4(a)~(c)及び図5を参照して説明する。
【0053】
<準備工程>
先ず、準備工程では、図4(a)に示すように、本体部1が準備されると共に、図4(b)に示すように、蓋部2が準備される。本体部1及び蓋部2は、それぞれ「金属部材」に相当する。
【0054】
本体部1は、金属材料からなる。当該金属材料は、摩擦攪拌の摩擦熱によって軟化することにより塑性流動可能な金属材料であれば、特に限定されない。当該金属材料としては、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの少なくとも1種を含む合金が挙げられる。本体部1は、板状体である。本体部1は、長尺状の板状体である。本体部1の形状は、板状体に限定されない。
【0055】
本体部1は、図4(a)に示すように、内部空間3を画成するための第一画成面1dを有する。本実施形態において、内部空間3は、本体部1に形成された溝内の空間に相当する。第一画成面1dは、本体部1に形成された溝の表面に相当する。本体部1の第一画成面1dと、図4(b)に示す蓋部2の第二画成面2dとによって、内部空間3が画成される。第一画成面1dの外側には、図4(a)に示すように、肩部4が形成されている。
【0056】
蓋部2は、金属材料からなる。当該金属材料は、摩擦攪拌の摩擦熱によって軟化することにより塑性流動可能な材料であれば、特に限定されない。当該金属材料としては、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの少なくとも1種を含む合金が挙げられる。蓋部2の材料は、本体部1の材料と同じ又は実質的に同じであってもよく、本体部1の材料と異なっていてもよい。
【0057】
蓋部2は、図4(b)に示すように、第一画成面1dと共に内部空間3を画成する第二画成面2dを有する。蓋部2は、図4(d)に示すように、蓋部2が本体部1に載置される時に本体部1の外側表面1bと当接する接触面2bを有する。接触面2bには、肩部4を受け入れるための有底溝6が形成されている。有底溝6は、有底の溝である。有底溝6の断面形状は、矩形状である。なお、本実施形態では、第一画成面1dが、凹部を成し、第二画成面2dが、平坦面である。しかし、第一画成面1dが平坦面であり、第二画成面2dが凹部を成してもよい。また、第一画成面1d及び第二画成面2dの両方が凹部を有していてもよい。
【0058】
<組立工程>
組立工程では、図4(c)に示すように、本体部1の肩部4が、蓋部2の有底溝6に受け入れられるように、蓋部2が、本体部1上に載置される。これにより、内部空間3を有する組立体10aが形成される。組立体10aでは、垂直方向において、本体部1が下に位置し、蓋部2が上に位置する。組立体10aは、非連続部3cと、非接合部3nとを有する。非連続部3cは、組立体10aの内部空間3に露出する位置において、本体部1と蓋部2とが互いに接合されずに接触乃至近接することにより、本体部1と蓋部2とが互いの境界を有するように構成された部分である。非接合部3nは、組立体10の内部空間に露出しない位置において、本体部1及び蓋部2が互いに接合されずに接触乃至近接することにより本体部1及び蓋部2が互いの境界を有するように構成される。非接合部3nは、本体部1と蓋部2との境界である。非接合部3nは、同様に本体部1と蓋部2との境界である非連続部3cと物理的に連通する。組立体10aにおいて、非接合部3nは、上側部分8を含む。上側部分8は、組立体10aを垂直方向Xに見た時に、組立体10aの上面2cを基準として、非連続部3cよりも浅い位置において、本体部1と蓋部2とが互いに接合されずに垂直方向Xに接触乃至近接する部分である。上側部分8は、肩部4と有底溝6とが垂直方向Xに重なり合う部分である。非連続部3c及び上側部分8は、組立体10aを垂直方向Xに見た時に、内部空間3を囲うように形成される(図3(a)参照)。
【0059】
<接合工程>
接合工程は、図5に示すように、組立体10aに対して行われる。接合工程では、本体部1と蓋部2とが摩擦攪拌接合により接合される。摩擦攪拌用装置(図示せず)のツール5が、当該接合工程で用いられる。ツール5は、耐熱性及び耐摩耗性が高い材料により形成されている。ツール5は、先端に先細りの先端部5aを有する円柱状体である。ツール5は、回転しながら移動するように、摩擦攪拌用装置が備える駆動装置により制御される。具体的に、ツール5は、回転しながら、本体部1及び蓋部2に対する相対的な昇降移動と、本体部1及び蓋部2に対する相対的な平行移動とを行うことが可能である。昇降移動は、垂直方向Xへの移動である。平行移動は、垂直方向Xと垂直な方向への移動である。ツール5の先端部5aには、外周面に螺旋状のネジ溝(図示せず)が設けられている。
【0060】
接合工程では、ツール5を回転させながら、組立体10aの上面2cから、蓋部2内の接合深度まで挿入する。組立体10aの上面2cは、蓋部2における接触面2bと反対側の面に相当する。図5は、ツール5が回転しながら接合深度まで挿入された状態を示している。接合深度は、摩擦撹拌接合の深さWDが、有底溝6に受け入れられた肩部4に到達するが、外側表面1b(非連続部3c)に到達しない深さである。言い換えると、接合深度は、摩擦撹拌接合の深さWDが深さSD≦WD<深さODを満たすように設定される。なお、図5に示すように、深さSDは、蓋部2の上面2cから肩部4までの深さである。深さODは、蓋部2の上面2cから外側表面1b(非連続部3c)までの深さである。このとき、接合部3fは、非接合部3nを、非連続部3cを介して内部空間3と連通する内側位置に残存させるように形成される。その結果、非接合部3nは、内側非接合部3d(図3(b)参照)として残存する。さらに、非接合部3nは、外側非接合部3h(図3(b)参照)としても残存する。なお、肩部4(上側部分8)の幅は、特に限定されず、ツール5の先端5aの幅以上であってもよく、当該幅以下であってもよい。肩部4は、外側表面1bから上方に突出するが、本体部1の表面1sに到達しない高さを有する。
【0061】
このようにツール5が回転しつつ接合深度WDまで挿入された状態で、ツール5を、平面視において肩部4(図3(a)参照)に沿うように移動させる。肩部4の頂部と有底溝6の底部との金属材料が、摩擦熱により固相状態で流動化しつつ攪拌されて一体化される。これにより、肩部4の頂部と有底溝6の底部とが接合される。その結果、本体部1と蓋部2とが接合される。これにより、本体部1と蓋部2とが摩擦攪拌接合されることにより構成された金属構造体10が製造される。本実施形態では、ツール5が内部空間3の深さまで到達しないので、上側部分8(ツール5の先端部5cの通過位置)と内部空間3との水平方向における距離GDを短くすることができる。本実施形態における距離GDは、図1(a)における距離GDよりも短い。
【0062】
なお、金属構造体10の製造方法は、準備工程、組立工程及び接合工程以外の工程を有していてもよい。例えば、金属構造体10の製造方法は、組立工程と接合工程との間に、本体部1と蓋部2との位置決めのための工程を有していてもよい。位置決めは、クランプ手段等の機械的手段により行われてもよい。位置決めは、摩擦攪拌接合による複数の接合部を互いに間隔を空けて形成することにより行われてもよい。接合部は、点状であってもよく、所定の長さを有する線状であってもよい。また、位置決め工程では、複数の点状接合部が設けられた後に、複数の線状接合部が設けられてもよい。また、接合工程の後に、接合工程により生じたバリを除去するための平坦処理が行われてもよい。さらに、図2を用いて説明したように、接合工程において、ツール5を傾斜させてもよい。
【0063】
<<他の実施形態>>
次に、他の実施形態についても説明する。図6(a)は、他の実施形態に係る金属構造体10を模式的に示す平面図であり、図6(b)~(e)は、その製造工程を示す断面図であり、図6(a)のB-B線断面図に相当する。図3図5の実施形態に含まれる構成と同じ構成については、同じ符号が付されている。
【0064】
図6(a)に示すように、本実施形態に係る金属構造体10では、1つの本体部1に対して、2つの蓋部2が設けられる。1つの本体部1及び2つの蓋部2は、「金属部材」に相当する。このように、金属構造体は、3つ以上の金属部材を含むように構成されていてもよい。また、本実施形態に係る金属構造体10は、一方の蓋部2と1つの本体部1とが、「互いに垂直方向に重ね合わされた状態で摩擦撹拌接合により接合される2つの金属部材」に相当し、他方の蓋部2と1つの本体部1とも、「互いに垂直方向に重ね合わされた状態で摩擦撹拌接合により接合される2つの金属部材」に相当する。このように、金属構造体は、「2つの金属部材」に相当する組合せを複数有していてもよい。
【0065】
図6(a)に示すように、金属構造体10は、長手方向(図中上下方向)に延びる矩形板状体である。金属構造体10は、複数(2つ)の内部空間3を有する。各内部空間3は、それぞれ独立している。各内部空間3は、長手方向に延びる形状を有している。各内部空間3は、互いに平行である。
【0066】
当該実施形態の製造方法について、図6(a)~(e)を用いて説明する。
【0067】
先ず、準備工程では、図6(a)及び(b)に示すように、1つの本体部1と、2つの蓋部2とを準備する。
【0068】
本体部1は、本体部1の表面1sに、2つの蓋溝7を有する。蓋溝7は、図6(a)に示すように、長手方向に延びる形状を有する。蓋溝7の底面が、図6(b)に示すように、外側表面1bに相当する。外側表面1bには、肩部4が形成されている。肩部4は、図6(a)及び(b)に示すように、凹溝(内部空間3)の側縁に沿い且つ蓋溝7の表面(外部表面1b)から突出するように形成されている。凹溝の底面が、第一画成面1dに相当する。
【0069】
2つの蓋部2は、それぞれ、図6(c)に示すように、全体として、蓋溝7に嵌め合わされることが可能な形状を有する。蓋部2は、接触面2bに、有底溝6を有する。接触面2bは、蓋部2が蓋溝7に嵌め合わされた時に本体部1と接触する蓋部2の面を指す。有底溝6は、肩部4を受け入れることが可能な形状を有する。有底溝6は、肩部4を受け入れた時に隙間が生じないように形成されていることが好ましい。
【0070】
次に、組立工程では、図6(d)に示すように、各蓋部2が、本体部1の蓋溝7にそれぞれ嵌合されるように本体部1に載置される。1つの本体部1及び2つの蓋部2によって、複数(2つ)の内部空間3が画成される。蓋部2ごとに、1つの内部空間3が画成される。本体部1、蓋部2及び内部空間3の数的関係は、これらの例に限定されず、適宜設定され得る。その結果、本体部1と蓋部2との間には、肩部4と有底溝6とが垂直方向Xに重なり合う上側部分8が生じる。上側部分8は、垂直方向Xにおいて、非連続部3cよりも浅い位置に存在している。
【0071】
次に、接合工程では、図6(e)に示すように、上側部分8に対して摩擦撹拌接合が行われることにより、接合部3fが形成される。摩擦撹拌接合は、上側部分8まで到達するが非連続部3cまで到達しない。
【0072】
以上の工程を経て、2つの内部空間3を有する金属構造体10が製造される。
【0073】
本実施形態によれば、互いに独立し且つ密に配置された複数の内部空間を金属構造体内に形成することができ、設計自由度を広く確保できる。さらに、本実施形態によれば、蓋部2として厚みの大きい板状体が採用される場合においても、設計自由度を広く確保できる。その点について、図7(a)及び図7(b)を参照して説明する。
【0074】
図7(a)及び(b)では、蓋部2の厚さODが大きい。具体的には、厚さODは、本体部1の厚さTよりも大きい。
【0075】
図7(a)は、従来の金属構造体に係る接合中の本体部1及び蓋部2を模式的に示す断面図である。ツール5の先端5aが挿入される深さ、即ち接合深度は、摩擦撹拌接合の深さWDが、WD≧深さODを満たすように設定される。ツール5の先端5aが深くまで挿入されるため、蓋部2に大きな変形が生じるおそれがある。また、そのような変形による内部空間3の気密性の低下を抑制乃至防止するために、水平方向におけるツール5の先端5aと内部空間3との距離GDが広く確保される必要がある。
【0076】
図7(b)は、実施形態に係る接合中の本体部及び蓋部を模式的に示す断面図である。接合深度は、摩擦撹拌接合の深さWDが、深さSD≦WD<深さODを満たすように設定される。ツール5の先端5aが深くまで挿入されないので、蓋部2に大きな変形が生じるおそれが低減乃至防止され得る。その結果、距離GDが狭く設定され得る。内部空間の設計自由度と共に、金属部材の厚さについても、設計自由度が広く確保され得る。
【0077】
次に、非接合部の形状について、図8(a)~(d)を用いて説明する。
【0078】
図8(a)は、従来の金属構造体の製造方法についての説明図である。図8(b)は、従来の金属構造体についての説明図である。図8(a)に示すように、組立体110aでは、本体部101と蓋部102との接触面は平坦である。ツール105の先端105aは、蓋部102に挿入され、本体部101に到達している。接合後においては、図8(b)に示すように、非連続部103c、内側非接合部103d、接合部103f及び外側非接合部103hが、同じ高さに位置する。
【0079】
図8(c)は、実施形態に係る金属構造体の製造方法についての説明図である。図8(d)は、実施形態に係る金属構造体についての説明図である。図8(c)に示すように、組立体10aでは、本体部1は、肩部4を有する。蓋部2は、肩部4を受け入れるための有底溝6を有する。そのため、肩部4と有底溝6とが垂直方向に重なり合う上側部分8が、垂直方向Xにおいて、非連続部3cよりも高い位置に位置する。接合後においては、図8(d)に示すように、内側非接合部3d及び外側非接合部3hが、垂直方向に延びる部分を有している。これにより、接合部3fが、非連続部3cよりも高い位置に位置する。その結果、図8(d)における接合部3fと内部空間3との水平方向距離は、図8(b)における接合部103fと内部空間103との水平方向距離よりも短い。
【0080】
図9は、他の実施形態に係る金属構造体10を模式的に示す断面図である。図9に示す金属構造体10は、複数の内部空間3を有する。本体部1は、複数の肩部4を有する。肩部4は、隣り合う内部空間3を隔てるように構成されている。蓋部2は、複数の有底溝6を有する。各有底溝6は、肩部4を受け入れるように構成されている。
【0081】
図9に示す金属構造体10においては、中央の内部空間3を基準とすると、右上の非連続部3cから順に、内側非接合部3d、接合部3f及び外側非接合部3hが連なっており、外側非接合部3hは、右の内部空間3の左上に位置する非連続部3cと連通している。ここで、外側非接合部3hは、中央の内部空間3と連通していない。
【0082】
一方、右の内部空間3を基準とした場合には、左上の非連続部3cから順に、内側非接合部3d、接合部3f及び外側非接合部3hが連なっており、外側非接合部3hは、中央の内部空間3の右上に位置する非連続部3cと連通している。ここで、外側非接合部3hは、右の内部空間3と連通していない。
【0083】
このように、一方の内部空間3を基準として見た場合の外側非接合部3hが、隣り合う内部空間3を基準として見た場合の内側非接合部3dに相当してもよい。
【0084】
図9に示す金属構造体10は、肩部4のみによって、隣り合う内部空間3を隔てるように構成されている。これにより、金属構造体10は、より密に配置された複数の内部空間3を有することができる。より高い設計自由度が実現され得る。
【0085】
図10は、他の実施形態に係る金属構造体10の製造方法を模式的に示す断面図である。図10に示す組立体10aにおいては、上側部分8が、垂直方向Xにおいて、非連続部3cよりも高い位置に位置する。上側部分8は、本体部1と蓋部2とが垂直方向に重なり合う部分である。上側部分8の内側位置において、非接合部3nは、下方に延び、非連続部3cを介して、内部空間3と連通する。一方、上側部分8の外側位置において、非接合部3nは、上方に延び、組立体3cの外部と連通する。このように、上側部分8は、段を成している。
【0086】
図10に示す例では、上側部分8と共に、上方に延びる非接合部3nに対して、ツール5の先端5aが挿入されることにより、摩擦撹拌接合が実行される。そのため、図10に示す例では、外側非接合部が生成されない。このように、外側非接合部は、必ずしも、生成されなくてもよい。段を成す上側部分8に対して摩擦撹拌接合が実行されることにより、気密性を高めることができる。さらに、図10に示すように上方に延びる非接合部が存在する場合には、少なくとも当該非接合部を外側非接合部として残すように、摩擦撹拌接合を行うことにより、気密性をより高めることができる。
【0087】
また、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、材料、構造、形状などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、材料、構造、形状などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 本体部
1a 金属部分
1b 外側表面
1d 第一画成面
2 蓋部
2a 金属部分
2b 接触面
2c 上面
2d 第二画成面
3 内部空間(凹部)
3a 貫通孔
3b 金属壁部
3c 非連続部
3d 内側非接合部
3e (内側非接合部の)一端
3f 接合部
3g (外側非接合部の)一端
3h 外側非接合部
3n 非接合部
4 肩部
5 ツール
5a 先端部
6 有底溝
7 蓋溝
10 金属構造体
10a 組立体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10