(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125666
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】電気機器
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20240911BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20240911BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H05K7/20 H
H05K7/20 B
H02G3/16
H02J7/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033638
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 貴大
(72)【発明者】
【氏名】津田 康志
(72)【発明者】
【氏名】辻 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】大橋 辰介
(72)【発明者】
【氏名】田端 雄樹
【テーマコード(参考)】
5E322
5G361
5G503
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA03
5E322AB01
5E322BA01
5E322BA03
5E322BA05
5E322BB03
5G361BA01
5G361BA07
5G361BB01
5G361BB03
5G361BC01
5G361BC02
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA03
(57)【要約】
【課題】本願は、基板が複数層に配置された階層構造の筐体内部における階層間の温度差を抑制し、装置全体の放熱性能を向上させることが可能な電気機器を開示する。
【解決手段】電子部品が実装された複数の基板と、複数の基板を複数層に配置した階層構造で内蔵する筐体と、筐体に内蔵される複数の冷却ファンと、を備え、複数の冷却ファンのうちの第1冷却ファンは、複数の基板のうちの第1基板の縁付近に配置されており、複数の基板同士の間に形成される層間空間へ向かって基板の面方向に沿うように送風し、複数の冷却ファンのうちの第2冷却ファンは、複数の基板のうちの第2基板に貫通形成される通気口に配置されており、第2基板の面方向に対し交差する方向に送風する、電気機器である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装された複数の基板と、
前記複数の基板を複数層に配置した階層構造で内蔵する筐体と、
前記筐体に内蔵される複数の冷却ファンと、を備え、
前記複数の冷却ファンのうちの第1冷却ファンは、前記複数の基板のうちの第1基板の縁付近に配置されており、前記複数の基板同士の間に形成される層間空間へ向かって基板の面方向に沿うように送風し、
前記複数の冷却ファンのうちの第2冷却ファンは、前記複数の基板のうちの第2基板に貫通形成される通気口に配置されており、前記第2基板の面方向に対し交差する方向に送風する、
電気機器。
【請求項2】
前記第1冷却ファンは、前記第1基板と前記第2基板との間に形成される層間空間へ向かって送風し、
前記第2冷却ファンは、前記第1基板と前記第2基板との間に形成される層間空間の空気を吸い込み、前記通気口を通じて前記第2基板の反対側の空間へ送風する、
請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記第1基板は、前記第2基板よりも高発熱の部品が実装されている、
請求項1に記載の電気機器。
【請求項4】
前記筐体は、表面に筐体カバーを、裏面に放熱用のヒートシンクを有し、前記複数の基板を前記筐体の裏面から表面へ向かう方向に積層した階層構造で内蔵しており、
前記第2基板は、前記複数の基板の中で最も前記筐体カバー寄りに配置され、
前記第2冷却ファンは、前記通気口を通じて前記第2基板と前記筐体カバーとの間の空間へ送風する、
請求項1から3の何れか一項に記載の電気機器。
【請求項5】
前記電気機器は、前記筐体の裏面を垂直面に向けた状態で設置される機器であり、
前記第1冷却ファンは、前記電気機器が前記筐体の裏面を垂直面に向けた状態で設置された状態において、前記筐体内の上部となる箇所に配置されており、前記複数の基板同士の間に形成される層間空間へ向かって基板の面方向に沿うように下方向へ送風する、
請求項4に記載の電気機器。
【請求項6】
前記電気機器は、前記筐体の裏面を垂直面に向けた状態で設置される機器であり、
前記第2冷却ファンは、前記電気機器が前記筐体の裏面を垂直面に向けた状態で設置された状態において、前記通気口を通じて斜め下向きに送風する、
請求項4に記載の電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器には、各種の冷却機構が設けられる。例えば、電動式移動体へ給電してバッテリの充電を行う充電設備、或いは、バッテリの充電とバッテリから外部への放電(給電)の両方を司る充放電設備(例えば、「V2H(Vehicle to Home)」或いは「V2G(Vehicle to Grid)」とも呼ばれる)といった充放電システムには、スイッチングコンバータ等の電力変換装置やその他電子機器類が内蔵される。このため、充放電システムには、内蔵する機器を冷却するための各種冷却機構が設けられる。
【0003】
電気機器の冷却機構としては、冷媒を用いた水冷方式も存在する。しかし、スイッチング素子といった各種発熱部品が多数実装されている基板の冷却は、水冷方式のように冷媒配管の形成等が不要な空冷方式が好適である(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気機器の中には、屋外に設置されるものが存在する。例えば、電動式移動体に用いる充放電システムは、通常、屋外に設置される。よって、屋外に設置されることを想定した電気機器では、内蔵する機器を風雨から保護するために、例えば、密閉構造の筐体が採用される。このような密閉構造の筐体に内蔵された機器を筐体表面から効率的に放熱するには、機器の熱を筐体表面全体から放熱させることが好ましい。
【0006】
しかし、電気機器が内蔵する部品には、発熱量が比較的多いスイッチング素子等の高発熱部品と、発熱量が比較的少ない制御用の集積回路等の低発熱部品とが混在する場合がある。そして、高発熱部品と低発熱部品は、回路設計等の都合により、互いに異なる基板に実装される場合がある。また、高発熱部品が実装された基板と、低発熱部品が実装された基板とを別々の階層に積み重ねるようにして筐体に内蔵する場合もある。このような電気機器の場合、階層間における温度差により、特定の階層の基板に実装されている部品が効率的に放熱されない可能性がある。階層間における温度差による放熱性の低下は、密閉構造の筐体において特に著しい影響を生じ得るが、密閉構造ではない筐体においても同様の影響が生じ得る。
【0007】
そこで、本願は、基板が複数層に配置された階層構造の筐体内部における階層間の温度差を抑制し、装置全体の放熱性能を向上させることが可能な電気機器を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、複数の基板同士の間に形成される層間空間へ向かって基板の面方向に沿うように送風するファンの他に、基板に貫通形成される通気口に配置されており、当該基板の面方向に対し交差する方向に送風するファンを設けることにした。
【0009】
詳細には、本発明は、電子部品が実装された複数の基板と、複数の基板を複数層に配置
した階層構造で内蔵する筐体と、筐体に内蔵される複数の冷却ファンと、を備え、複数の冷却ファンのうちの第1冷却ファンは、複数の基板のうちの第1基板の縁付近に配置されており、複数の基板同士の間に形成される層間空間へ向かって基板の面方向に沿うように送風し、複数の冷却ファンのうちの第2冷却ファンは、複数の基板のうちの第2基板に貫通形成される通気口に配置されており、第2基板の面方向に対し交差する方向に送風する、電気機器である。
【0010】
このような電気機器であれば、複数の基板によって階層構造が形成されている筐体内において、第2基板に貫通形成される通気口に配置された第2冷却ファンが当該通気口を通じて第2基板の一方の面の空間から他方の面の空間へ空気を送る。このため、階層間における温度差が抑制され、装置全体の放熱性能が向上する。
【0011】
なお、第1冷却ファンは、第1基板と第2基板との間に形成される層間空間へ向かって送風し、第2冷却ファンは、第1基板と第2基板との間に形成される層間空間の空気を吸い込み、通気口を通じて第2基板の反対側の空間へ送風してもよい。これによれば、第1冷却ファンによって第1基板と第2基板との間に形成される層間空間へ送り込まれた空気が、第2冷却ファンによって第2基板の反対側の空間へスムーズに送風される。よって、階層間における温度差が効率的に抑制され、装置全体の放熱性能が向上する。
【0012】
また、第1基板は、第2基板よりも高発熱の部品が実装されていてもよい。これによれば、第1基板で発生した熱によって高温になった空気が第2冷却ファンによって送風されるため、階層間における温度差が効率的に抑制され、装置全体の放熱性能が向上する。
【0013】
また、筐体は、表面に筐体カバーを、裏面に放熱用のヒートシンクを有し、複数の基板を筐体の裏面から表面へ向かう方向に積層した階層構造で内蔵しており、第2基板は、複数の基板の中で最も筐体カバー寄りに配置され、第2冷却ファンは、通気口を通じて第2基板と筐体カバーとの間の空間へ送風してもよい。これによれば、第2冷却ファンによって送風された空気が、第2基板と筐体カバーとの間の空間へ流れるので、筐体カバーの表面から外部への放熱効果が高まる。
【0014】
また、電気機器は、筐体の裏面を垂直面に向けた状態で設置される機器であり、第1冷却ファンは、電気機器が筐体の裏面を垂直面に向けた状態で設置された状態において、筐体内の上部となる箇所に配置されており、複数の基板同士の間に形成される層間空間へ向かって基板の面方向に沿うように下方向へ送風してもよい。これによれば、第1基板の熱が筐体下部へ送られるので、第1基板の熱が筐体内の全体へ広がり、装置全体の放熱性能が向上する。
【0015】
また、電気機器は、筐体の裏面を垂直面に向けた状態で設置される機器であり、第2冷却ファンは、電気機器が筐体の裏面を垂直面に向けた状態で設置された状態において、通気口を通じて斜め下向きに送風してもよい。これによれば、対流効果により比較的低温となりやすい下部付近へ高温の空気が送り込まれるので、筐体内の温度差が抑制され、装置全体の放熱性能が向上する。
【発明の効果】
【0016】
上記の電気機器であれば、基板が複数層に配置された階層構造の筐体内部における階層間の温度差を抑制し、装置全体の放熱性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、充放電システムの外観斜視図である。
【
図2】
図2は、充放電装置本体の内部構造を示した図である。
【
図3】
図3は、基板に設けられている冷却ファンの取り付け状態を示した第1の図である。
【
図4】
図4は、基板に設けられている冷却ファンの取り付け状態を示した第2の図である。
【
図6】
図6は、冷却ファンが発生する気流の様子をイメージした図である。
【
図7】
図7は、充放電装置本体内の気流の様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<適用例>
本発明の適用例として、電気機器の一種である充放電システムを
図1に示す。本願では、説明の便宜上、「充放電」という文言を用いているが、「充放電」とは、充電と放電の両方が可能であることに限定するものではなく、充電または放電のみが可能であることを含む。よって、充放電システム1とは、充電と放電の両方が可能なものに限定されない。充放電システム1は、充電のみが可能なものであってもよいし、放電のみが可能なものであってもよい。
【0019】
充放電システム1の充放電装置本体2には、
図2に示されるように、複数の基板24~29が内蔵される。そして、基板24と基板25と基板26が正面カバー22に最も近い第1階層を形成し、基板27と基板28が第2階層を形成し、基板29が第3階層を形成する。よって、充放電装置本体2の本体筐体21は、基板24~29を複数層に配置した階層構造を、充放電装置本体2の裏面から表面へ向かう方向に積層した状態で内蔵している。
【0020】
そして、充放電装置本体2には、2つの冷却ファン2F1,2F2が内蔵されている。冷却ファン2F1は、基板27の縁付近に配置されており、第1階層の基板24,25,26と第2階層の基板27,28との間に形成される層間空間、及び、第2階層の基板27,28と第3階層の基板29との間に形成される層間空間へ向かって送風する。また、冷却ファン2F2は、基板26に貫通形成される通気口に配置されており、基板26の面方向に対し交差する方向に送風する。
【0021】
よって、
図7を見ると判るように、充放電装置本体2の内部では、第1階層の基板24,25,26と第2階層の基板27,28との間に形成される層間空間の空気が、冷却ファン2F2により、基板26の下端を経由せずに第1階層の基板24,25,26と正面カバー22との間の空間へ送られることになる。このため、第1階層の基板24,25,26における冷却ファン2F2を通じた空気の流通が行われない形態と比べて、第1階層の基板24,25,26と第2階層の基板27,28との間に形成される層間空間の温度上昇を抑制することができる。この結果、階層間における温度差が抑制され、充放電装置本体2全体の放熱性能が向上する。
【0022】
<実施形態>
以下、実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の内容に限定するものではない。
【0023】
図1は、充放電システムの外観斜視図である。充放電システム1は、電動式移動体用のシステムである。電動式移動体とは、電動式の移動体であり、地上を走行する電動式自動車、水上を進む電動式船舶、空中を飛行する電動式飛行体、その他各種の移動体が挙げられる。移動体は、人が乗降可能な乗り物であってもよいし、或いは、無人で移動するものであってもよい。また、充放電システム1が設置される箇所としては、戸建て住宅や集合住宅、宿泊施設、商業施設、行政関連施設、道路沿いの休憩施設、空港施設、港湾施設等
が挙げられる。電動式自動車としては、バッテリの電力のみで走行するBEV(Battery Electric Vehicle)、バッテリと内燃機関を併用するPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)、燃料電池の電力で走行するFCV(Fuel Cell Vehicle)、その他各種の電動式自動車
(以下、「EV」という)が挙げられる。充放電システム1は、このような、駆動用の電気モータへ給電するバッテリを内蔵した電動式移動体の充電を行う充電設備、或いは、バッテリの充電とバッテリから外部への充放電の両方を司る充放電設備として利用される。本実施形態では、充放電システム1を充放電する設備という前提で説明するが、充放電システム1は充電専用の設備であってもよい。
【0024】
充放電システム1は、屋外を移動する電動式移動体用の充放電設備であるため、風雨に晒されることを想定した屋外仕様の設計となっている。すなわち、充放電システム1には、充放電装置本体2、充放電装置本体2を壁面に取り付けるための背面筐体3、電動式移動体に接続するコネクタを固定するためのコネクタホルダ4、充放電ケーブルを保管するためのケーブルホルダ5が備わっている。
【0025】
充放電装置本体2は、スイッチングコンバータ等の電力変換装置を内蔵した装置である。電動式移動体への給電は直流電力で行うことを前提とした規格になっているが、電力系統には交流電力が流れている。このため、電力系統と電動式移動体とを繋ぐ充放電システム1の充放電装置本体2は、電力の交直変換を行う。また、充放電装置本体2は、電動式移動体や電力系統が許容する電圧及び電流となるように、電圧の昇降圧や電流制御を行う。
【0026】
充放電装置本体2は、このような電力変換を司るスイッチング素子や制御装置等の電子部品を有するものであるため、電子部品を内蔵する本体筐体21、本体筐体21の開口を塞ぐ正面カバー22、充放電装置本体2を操作するための操作パネル23を有する。本体筐体21と正面カバー22は、
図1に示されるように、略直方体の外観を形成する。そして、操作パネル23は、ユーザが操作しやすいように、充放電装置本体2の正面部分を形成する正面カバー22に配置されている。
【0027】
背面筐体3は、充放電装置本体2を建物の壁面或いは充電ポールに取り付けるための部材である。充放電装置本体2の背面(裏面)には放熱用のフィン等を備えたヒートシンクが配置されている。このため、充放電装置本体2の背面と充放電装置本体2の取り付け面との間を離間させるために、充放電装置本体2の背面と充放電装置本体2の取り付け面との間に背面筐体3を挟む形態となっている。
【0028】
背面筐体3は、略直方体の外観の充放電装置本体2の背面側に取り付けるものであるため、充放電装置本体2の背面の外観形状に対応した略矩形の部材となっている。そして、背面筐体3は、充放電装置本体2が背面筐体3を介して取り付け面に設置された状態において、背面筐体3の上面や側面、底面が露出する形態となっている。このため、背面筐体3の側面31には、
図1に示されるように、コネクタホルダ4が取り付け可能となっている。また、背面筐体3の上面には、放熱用の通気口32が設けられている。
図1には図示されていないが、背面筐体3の下面にも、通気口32と同様の通気口が設けられている。
【0029】
コネクタホルダ4は、背面筐体3の側面31に取り付け可能なホルダである。コネクタホルダ4は、内部の金具を覆う背面カバー41と正面カバー42、正面カバー42に形成されたコネクタ装着用のコネクタ差込孔43を有する。
【0030】
ケーブルホルダ5は、
図1に示すように、充放電装置本体2の下部に装着されるフック状の部材であり、アーム部51、受け部52、爪部53を有する。ケーブルホルダ5は、アーム部51と受け部52と爪部53によってフック状に形成される部材であるため、巻
かれた状態のケーブルを受け部52に吊り下げ状態で架けることができる。よって、受け部52に架かった状態のケーブルは、充放電装置本体2の後方側へはアーム部51により移動が阻まれ、充放電装置本体2の前方側へは爪部53により移動が阻まれる。このため、ケーブルホルダ5は、巻かれた状態のケーブルを落とさないように吊り下げ状態で保持することができる。
【0031】
図2は、充放電装置本体2の内部構造を示した図である。
図2(A)では充放電装置本体2に内蔵される電子部品の基板を本体筐体21内に収めた様子が図示され、
図2(B)では充放電装置本体2に内蔵される電子部品の基板を本体筐体21から出した様子を図示している。
【0032】
図2に示されるように、充放電装置本体2には複数の基板24~29が内蔵される。基板24~29は、何れも電子部品が実装された基板である。基板24~29に実装される電子部品としては、電力変換を司るスイッチングコンバータのスイッチング素子、コンデンサ、コイル、電流センサ、電圧センサ、制御用の集積回路、その他各種の部品が挙げられる。
【0033】
本実施形態では、
図2(B)において各基板24~29の位置関係が示すように、基板24と基板25と基板26が充放電装置本体2の正面を形成する正面カバー22に最も近い位置に配置され、次いで、基板27と基板28が配置され、基板29が充放電装置本体2の裏面に最も近い位置に配置される。よって、基板24と基板25と基板26が正面カバー22に最も近い第1階層を形成し、基板27と基板28が第2階層を形成し、基板29が第3階層を形成する。すなわち、充放電装置本体2の本体筐体21は、基板24~29を複数層に配置した階層構造を、充放電装置本体2の裏面から表面へ向かう方向に積層した状態で内蔵していると言える。そして、充放電装置本体2を壁面に設置した状態においては、本体筐体21に内蔵される階層構造の積層方向は水平方向、すなわち、階層構造を横倒しにした状態となる。
【0034】
基板24~29には、各々が果たす機能に応じた部品が実装されている。本実施形態では、制御用の集積回路といった比較的低発熱の部品を第1階層の基板24,25,26に実装している。また、電力変換用のコンデンサといったやや高発熱の部品を第2階層の基板27,28に実装している。また、電力変換用のスイッチング素子といった最も高発熱の部品を第3階層の基板29に実装している。すなわち、本実施形態では、比較的高発熱の部品を実装した基板が本体筐体21内において充放電装置本体2の背面側に配置され、比較的低発熱の部品を実装した基板が本体筐体21内において充放電装置本体2の正面側に配置されていると言える。
【0035】
なお、基板29の熱は、伝熱用の部品を通じて充放電装置本体2の背面のヒートシンクへも伝わるようになっている。また、各基板24~29には、電気的なノイズを遮断するために基板の表面或いは裏面を覆うように配置される板金が適宜の箇所に配置されている。
【0036】
充放電装置本体2には、上述した基板24~29の他に、2つの冷却ファン2F1,2F2も内蔵されている。冷却ファン2F1は、基板27の縁付近に配置されており、第1階層の基板24,25,26と第2階層の基板27,28との間に形成される層間空間、及び、第2階層の基板27,28と第3階層の基板29との間に形成される層間空間へ向かって送風する。
【0037】
冷却ファン2F1は、充放電装置本体2が壁面に設置されると、本体筐体21内の上部に位置する箇所に配置されている。よって、充放電装置本体2が壁面に設置された状態に
おいて、冷却ファン2F1は、第1階層の基板24,25,26と第2階層の基板27,28との間に形成される層間空間、及び、第2階層の基板27,28と第3階層の基板29との間に形成される層間空間へ向かって各基板の面方向に沿うように下方向へ送風することになる。
【0038】
冷却ファン2F2は、基板26に貫通形成される通気口に配置されており、基板26の面方向に対し交差する方向に送風する。
図3は、基板26に設けられている冷却ファン2F2の取り付け状態を示した第1の図である。また、
図4は、基板26に設けられている冷却ファン2F2の取り付け状態を示した第2の図である。
図3(A)では基板26を充放電装置本体2の正面側から見た様子が図示され、
図3(B)では基板26を充放電装置本体2の右側面側から見た様子が図示されている。また、
図4(A)では基板26を充放電装置本体2の右側面側から見た様子が図示され、
図4(B)では基板26を充放電装置本体2の背面側から見た様子が図示されている。
【0039】
図3(A)及び
図4(B)を見ると判るように、基板26は、基板本体26aに通気口26bを貫通形成したような形態となっている。そして、冷却ファン2F2は、通気口26bの部分に配置されている。冷却ファン2F2は、ファン本体F2、及び、ファン本体F2を支持する取付金具S2を有する。取付金具S2は、基板本体26aにネジで固定される。取付金具S2は、ファン本体F2の送風方向が、充放電装置本体2が壁面に設置された状態において斜め下向きとなるようにファン本体F2を支持する。よって、ファン本体F2は、取付金具S2により、通気口26bの部分に傾いた姿勢で固定される。これにより、冷却ファン2F2は、通気口26bを通じて、基板本体26aの面方向に対し交差する方向に送風することになる。したがって、第1階層の基板24,25,26と第2階層の基板27,28との間に形成される層間空間の空気は、冷却ファン2F2により、通気口26bを通じて第1階層の基板24,25,26と正面カバー22との間の空間へ送風されることになる。
【0040】
図5は、冷却ファン2F2を示した図である。上述したように、冷却ファン2F2は、ファン本体F2と取付金具S2とを有する。
【0041】
ファン本体F2は、電気モータでファンを回転させて送風する電動ファンであり、モータが内蔵されるモータ部F21と、空気が通過する通気路F22と、モータ部F21や通気路F22、モータの軸に直結されているファンを収めるハウジングF23と、ファン本体F2を取付金具S2に固定するためのネジF24とを有する。
【0042】
取付金具S2は、板金をプレス加工して製作された部品であり、ファン本体F2が固定されるフランジS21と、フランジS21の縁沿いに立設されたウェブS22と、ウェブS22から延設されたベースS23と、ベースS23に貫通形成されたネジ孔S24とを有する。フランジS21には、ネジF24が挿通されるネジ孔が設けられている。また、フランジS21の中央部には、ファン本体F2の通気路F22に対応する大きさの開口が設けられている。取付金具S2は、板金のプレス加工品の代わりに樹脂成型品であってもよい。
【0043】
ベースS23は、基板本体26aに面接触する部位であり、ネジ孔S24に挿通されたネジによって基板本体26aに固定される。そして、ウェブS22は、ベースS23の面方向がフランジS21の面方向と交差するような形でベースS23とフランジS21とを繋いでいる。このため、ベースS23が基板本体26aに面接触する状態で基板本体26aに固定されると、フランジS21の面方向は、基板本体26aの面方向に対して交差する状態となる。この結果、フランジS21に固定されるファン本体F2の送風方向が、基板本体26aの面方向に対し交差することになる。
【0044】
なお、基板本体26aの面方向に対するファン本体F2の送風方向の傾斜角は、充放電装置本体2内を循環する気流の設計にもよるが、例えば、30~60度程度の範囲内が好ましく、約45度がより好ましい。
図6は、冷却ファン2F2が発生する気流の様子をイメージした図である。
図6(A)では基板26を充放電装置本体2の斜め後ろ側から見た様子を図示し、
図6(B)では基板26を充放電装置本体2の斜め前側から見た様子を図示している。基板本体26aの面方向に対するファン本体F2の送風方向の傾斜角を約45度程度にした場合、例えば、
図6の太線の矢印が示すように、基板26の後面上側の空気がファン本体F2に斜め方向で吸い込まれ、基板26の前面下側の方へ斜めに吹き出される。この結果、充放電装置本体2の内部では、次のような気流が発生することになる。
【0045】
図7は、充放電装置本体2内の気流の様子を示した図である。
【0046】
図7を見ると判るように、充放電装置本体2内では、正面カバー22に最も近い位置に配置された基板24と基板25と基板26が第1階層を形成し、次に正面カバー22に近い基板27と基板28が第2階層を形成し、基板29が第3階層を形成する。そして、冷却ファン2F1は、基板27の縁付近に配置されており、第1階層の基板24,25,26と第2階層の基板27,28との間に形成される層間空間、及び、第2階層の基板27,28と第3階層の基板29との間に形成される層間空間へ向かって下向きに送風する。一方、冷却ファン2F2は、第1階層の基板24,25,26と第2階層の基板27,28との間に形成される層間空間の空気を、基板26に設けられた通気口26bを通じて、第1階層の基板24,25,26と正面カバー22との間の空間へ送風する。
【0047】
この結果、充放電装置本体2の内部では、第1階層の基板24,25,26と第2階層の基板27,28との間に形成される層間空間の空気が、冷却ファン2F2により、基板26の下端を経由せずに第1階層の基板24,25,26と正面カバー22との間の空間へ送られることになる。このため、例えば、冷却ファン2F2が設けられていないことにより、第1階層の基板24,25,26と第2階層の基板27,28との間に形成される層間空間の空気の殆どが、基板26の下端を経由して第1階層の基板24,25,26と正面カバー22との間の空間へ流れるような比較例の形態と比べると、第1階層の基板24,25,26と第2階層の基板27,28との間に形成される層間空間の温度上昇を抑制することができる。この結果、階層間における温度差が抑制される。
【0048】
また、冷却ファン2F2の送風により、第2階層の基板27,28で発生した熱が正面カバー22へ速やかに伝達されることになる。特に、冷却ファン2F2は斜め下へ送風する形態を採っているため、対流効果により比較的低温となりやすい充放電装置本体2内下部付近へ高温の空気を送り込み、充放電装置本体2内の温度差を抑制する。充放電装置本体2内における局部的な温度分布が抑制されると、部品が高温の空気に晒される箇所が生じるのを抑制できる。また、充放電装置本体2内における局部的な温度分布が抑制されると、充放電装置本体2の外装面を形成する本体筐体21及び正面カバー22の表面から外部への放熱効果が高まり、充放電装置本体2全体の放熱性能が向上する。
【0049】
なお、充放電システム1は、上記実施形態に限定されるものではない。充放電システム1は、例えば、基板を2層の階層構造で内蔵した充放電装置本体2を備えたものであってもよいし、或いは、基板を4層以上の階層構造で内蔵した充放電装置本体2を備えたものであってもよい。
【0050】
また、充放電システム1は、充放電装置本体2内に冷却ファン2F1を2台以上内蔵したものであってもよいし、充放電装置本体2内に冷却ファン2F2を2台以上内蔵したものであってもよい。
【0051】
また、充放電システム1は、冷却ファン2F1や冷却ファン2F2の配置を変更したものであってもよい。充放電システム1は、例えば、冷却ファン2F2を基板26以外の基板に設けたものであってもよいし、吹き出し方向を他の方向にしたものであってもよい。
【0052】
また、充放電システム1は、電動式移動体の充放電システムではなく、その他の電気機器であってもよい。このような電気機器としては、例えば、太陽光発電システムのパワーコンディショナ、風力発電機の制御盤、その他各種の屋外用設備が挙げられる。
【0053】
また、充放電システム1は、内蔵された基板を風雨から守るのに好適な密閉構造の筐体を用いたものが好適であるが、例えば、通気口を設けた筐体であってもよい。
【0054】
なお、本願は、以下の付記的事項を含む。
<付記1>
電子部品が実装された複数の基板(24~29)と、
前記複数の基板を複数層に配置した階層構造で内蔵する筐体(21)と、
前記筐体に内蔵される複数の冷却ファン(2F1,2F2)と、を備え、
前記複数の冷却ファンのうちの第1冷却ファン(2F1)は、前記複数の基板のうちの第1基板(29)の縁付近に配置されており、前記複数の基板同士の間に形成される層間空間へ向かって基板の面方向に沿うように送風し、
前記複数の冷却ファンのうちの第2冷却ファン(2F2)は、前記複数の基板のうちの第2基板(26)に貫通形成される通気口(26b)に配置されており、前記第2基板の面方向に対し交差する方向に送風する、
電気機器(2)。
<付記2>
前記第1冷却ファンは、前記第1基板と前記第2基板との間に形成される層間空間へ向かって送風し、
前記第2冷却ファンは、前記第1基板と前記第2基板との間に形成される層間空間の空気を吸い込み、前記通気口を通じて前記第2基板の反対側の空間へ送風する、
付記1に記載の電気機器。
<付記3>
前記第1基板は、前記第2基板よりも高発熱の部品が実装されている、
付記1又は2に記載の電気機器。
<付記4>
前記筐体は、表面に筐体カバー(22)を、裏面に放熱用のヒートシンクを有し、前記複数の基板を前記筐体の裏面から表面へ向かう方向に積層した階層構造で内蔵しており、
前記第2基板は、前記複数の基板の中で最も前記筐体カバー寄りに配置され、
前記第2冷却ファンは、前記通気口を通じて前記第2基板と前記筐体カバーとの間の空間へ送風する、
付記1から3の何れか一項に記載の電気機器。
<付記5>
前記電気機器は、前記筐体の裏面を垂直面に向けた状態で設置される機器であり、
前記第1冷却ファンは、前記電気機器が前記筐体の裏面を垂直面に向けた状態で設置された状態において、前記筐体内の上部となる箇所に配置されており、前記複数の基板同士の間に形成される層間空間へ向かって基板の面方向に沿うように下方向へ送風する、
付記4に記載の電気機器。
<付記6>
前記電気機器は、前記筐体の裏面を垂直面に向けた状態で設置される機器であり、
前記第2冷却ファンは、前記電気機器が前記筐体の裏面を垂直面に向けた状態で設置された状態において、前記通気口を通じて斜め下向きに送風する、
付記4又は5に記載の電気機器。
【符号の説明】
【0055】
1・・充放電システム
2・・充放電装置本体
3・・背面筐体
4・・コネクタホルダ
5・・ケーブルホルダ
21・・本体筐体
22・・正面カバー
23・・操作パネル
24~29・・基板
F2・・ファン本体
S2・・取付金具