(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125679
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 48/16 20090101AFI20240911BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20240911BHJP
H04W 72/02 20090101ALI20240911BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20240911BHJP
【FI】
H04W48/16 134
H04W4/44
H04W72/02
H04W84/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033656
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長尾 和信
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067EE16
5K067HH22
5K067JJ11
(57)【要約】
【課題】多重無線接続システムの構築に際して、基地局のソフトウェア更新等の大幅な変更が必要となる。
【解決手段】無線通信システム10は、無線通信装置47を備える自走移動体40と、当該無線通信装置47と通信可能な複数の無線アクセスポイントAPと、を備える。各無線アクセスポイントAPのうちの少なくとも2つの無線アクセスポイントAPは、予め定められた複数の通信チャンネルのうち、無線アクセスポイントAP毎に異なる1つの通信チャンネルで、無線通信装置47と通信可能である。無線通信装置47は、無線アクセスポイントAPとの通信に利用する通信チャンネルを、複数の通信チャンネルの中から順番に切り替えるチャンネル切替処理を実行可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信装置を備える自走移動体と、
前記無線通信装置と通信可能な複数の無線アクセスポイントと、を備え、
前記各無線アクセスポイントのうちの少なくとも2つの前記無線アクセスポイントは、予め定められた複数の通信チャンネルのうち、前記無線アクセスポイント毎に異なる1つの前記通信チャンネルで、前記無線通信装置と通信可能であり、
前記無線通信装置は、前記無線アクセスポイントとの通信に利用する前記通信チャンネルを、複数の前記通信チャンネルの中から順番に切り替えるチャンネル切替処理を実行可能である
無線通信システム。
【請求項2】
前記自走移動体は、自身の位置を取得可能な位置取得部をさらに備え、
複数の前記無線アクセスポイントのうち、前記無線通信装置と通信可能である前記通信チャンネルが異なる少なくとも2つの前記無線アクセスポイントは、無線通信範囲の一部が重複しており、
前記無線通信装置は、位置取得部が取得した位置が、無線通信範囲が重複するエリア内であることを条件に、前記チャンネル切替処理を実行する
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記無線アクセスポイントを介して前記無線通信装置と通信するサーバをさらに備え、
前記無線通信装置は、前記サーバと通信する際に、データを複数のパケットに分割して送信し、且つ、前記パケットは、送信順に応じた連続したシーケンス番号を含んでおり、
前記サーバは、前記無線通信装置から新たに受信した前記パケットに含まれる前記シーケンス番号が、前記新たに受信したパケットより前に受信したパケットに含まれる前記シーケンス番号と重複する場合には、前記新たに受信したパケットを破棄する
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記無線アクセスポイントを介して前記無線通信装置と通信するサーバをさらに備え、
前記自走移動体は、バッテリを備え、
前記無線通信装置は、前記バッテリの充電残量に関する情報を前記サーバに送信する
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記無線アクセスポイントを介して前記無線通信装置と通信するサーバをさらに備え、
前記自走移動体は、自身の位置を取得可能な位置取得部をさらに備え、
前記無線通信装置は、前記自走移動体の位置に関する情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記自走移動体の走行経路に関する情報を前記無線通信装置に送信する
請求項1に記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている無線通信システムは、複数の無線通信用の基地局を備えている。各基地局は、他の基地局との相対的な位置関係を取得する。また、各基地局は、他の基地局との位置関係に基づいて、自身が他の基地局の無線通信エリアの境界近傍に位置しているか否かを判断する。そして、各基地局は、自身が他の基地局の無線通信エリアの境界近傍に位置しているときには、電波送信電力を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような無線通信システムを実現しようとする場合、各基地局が、他の基地局との位置関係を取得するための機能、及びそれに応じて電波送信電力を調整できる機能を有している必要がある。そのため、特許文献1に記載されているような無線通信システムを既設の無線通信システムに対して適用する場合、各基地局のソフトウェアを大幅に変更したり、場合によっては基地局そのものを入れ替えたりする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、無線通信装置を備える自走移動体と、前記無線通信装置と通信可能な複数の無線アクセスポイントと、を備え、前記各無線アクセスポイントのうちの少なくとも2つの前記無線アクセスポイントは、予め定められた複数の通信チャンネルのうち、前記無線アクセスポイント毎に異なる1つの前記通信チャンネルで、前記無線通信装置と通信可能であり、前記無線通信装置は、前記無線アクセスポイントとの通信に利用する前記通信チャンネルを、複数の前記通信チャンネルの中から順番に切り替えるチャンネル切替処理を実行可能である無線通信システムである。
【0006】
上記構成によれば、各無線アクセスポイントの通信チャンネルを予め定めておくという簡便な作業で、上記無線通信システムを実現できる。したがって、無線アクセスポイントに対する大幅なソフトウェアの変更、及び無線アクセスポイントの入れ替えといったことは要しない。
【発明の効果】
【0007】
多重無線接続システムを簡便な作業で構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】アクセスポイントのパケット受信に係る処理の手順を示す図である。
【
図4】無線通信装置のチャンネル切替処理の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<無線通信システムの一実施形態>
以下、無線通信システムの一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、図面は、理解を容易にするために構成要素を概略化して示している場合がある。
【0010】
(全体構成について)
図1に示すように、無線通信システム10は、第1アクセスポイントAP1と、第2アクセスポイントAP2と、中継機20と、サーバ30と、自走移動体40と、を備える。なお、以下では、第1アクセスポイントAP1及び第2アクセスポイントAP2を区別する必要がない場合には、無線アクセスポイントAPと呼称することがある。
【0011】
各無線アクセスポイントAPは、図示は省略するが、電波を送受信するためのアンテナと、アンテナによる電波の送受信を制御する通信モジュールと、を有する。また、各無線アクセスポイントAPは、例えば、無線LAN規格(IEEE802.11規格)における2.4GHz帯の周波数帯域を利用して無線通信を行う。上記無線LAN規格における2.4GHz帯の周波数帯域には、1CH~14CHの通信チャンネルが予め定められている。
【0012】
2つの無線アクセスポイントAPは、無線アクセスポイントAP毎に異なる1つの通信チャンネルを利用する。各無線アクセスポイントAPは、各々に設定されている通信チャンネルを利用して、自走移動体40との間で無線通信可能である。また、各無線アクセスポイントAPは、各々に設定されている通信チャンネルを利用して、中継機20との間で有線通信可能である。なお、第1アクセスポイントAP1の無線通信範囲の一部が、第2アクセスポイントAP2の無線通信範囲の一部と重複している。
【0013】
中継機20は、図示は省略するが、信号を送受信するための通信装置を有する。中継機20は、各無線アクセスポイントAP及びサーバ30と有線通信可能である。そして、中継機20は、各無線アクセスポイントAPと、サーバ30との間の通信を中継する。すなわち、中継機20は、各無線アクセスポイントAPから信号を受信して、その信号をサーバ30に送信する。また、中継機20は、サーバ30から信号を受信して、その信号を各無線アクセスポイントAPに送信する。
【0014】
図2に示すように、サーバ30は、記憶部31と、RAM32と、CPU33と、を有する。
サーバ30の記憶部31は、不揮発性の記憶装置である。記憶部31には、例えば、以下の(a)~(c)等のデータが格納される。
(a)中継機20から受信した信号の処理に必要なソフトウェア。
(b)自走移動体40の走行経路に関するマップデータ。
(c)自走移動体40の動作を指示する動作指示データを作成するためのソフトウェア。
【0015】
サーバ30のCPU33は、記憶部31に保存されている各種プログラムを実行する中央演算処理装置である。本実施形態においてサーバ30のCPU33は、(b)のマップデータ及び(c)のソフトウェア等を用いて、動作指示データを作成する。具体的には、まず、CPU33は、マップデータ等の情報に基づいて、自走移動体40の目的地を決定する。次に、後述する自走移動体40の位置データ及び上記マップデータをもとに、CPU33は、自走移動体40の現在位置から上記目的地までの走行経路を導き出す。そして、この走行経路に沿って自走移動体40が走行するように、自走移動体40の車輪42の回転数、舵角等の動作を指示する動作指示データを作成する。
【0016】
サーバ30のRAM32は、揮発性の記憶装置である。RAM32には、CPU33の各種プログラムの実行に際して、データが一時的に格納される。
また、サーバ30は、図示は省略するが、信号を送受信するための通信装置を有する。サーバ30は、当該通信装置を用いて、中継機20との間で有線通信可能である。サーバ30が送信するデータには、自走移動体40の動作を指示する動作指示データが含まれる。
【0017】
自走移動体40は、器具、商品、人間等を運搬するための輸送機器である。例えば、無人牽引車であり、工場内、即ち構内の限られた所定領域を走行する。自走移動体40は、ボディ41と、複数の車輪42と、駆動装置43と、バッテリ44と、位置取得部45と、制御装置46と、無線通信装置47と、を備える。なお、
図2では、複数の車輪42のうちの1つのみを模式的に図示している。
【0018】
自走移動体40は、無線通信装置47を介して、各無線アクセスポイントAPとの間で無線通信可能である。すなわち、自走移動体40は、無線通信装置47により、無線アクセスポイントAP及び中継機20を介して、サーバ30との間で通信可能である。
【0019】
ボディ41の外形は、例えば略直方体状である。ボディ41の内部には、駆動装置43、バッテリ44、制御装置46、無線通信装置47、及びこれらの関連機器が格納されている。ボディ41は、荷物等を載せるための荷台、荷物を載せたり降ろしたりするためのアームを有していることもある。
【0020】
駆動装置43は、本実施形態においては電動モータである。駆動装置43は、複数の車輪42が連結している車軸を介して、当該車輪42にトルクを付与する。なお、
図2では、車軸等の図示を省略して、駆動装置43と車輪42との関係を模式的に図示している。
【0021】
バッテリ44は、充電及び交換が可能な電池である。バッテリ44は、例えばリチウムイオン電池である。バッテリ44は、駆動装置43、位置取得部45、制御装置46、無線通信装置47及び関連する電子機器に電力を供給する。
【0022】
位置取得部45は、自走移動体40自身の位置に関するデータである位置データを取得可能である。具体的には、駆動装置43による車輪42の回転数、舵角等の情報を取得する。そして、位置取得部45は、これらの情報の取得を開始した地点からの移動距離、方向等を算出する。そして、位置取得部45は、当該算出した移動距離、方向等のデータに基づいて現在位置を算出し、これを位置データとして取得する。
【0023】
制御装置46は、図示は省略するが、揮発性の記憶装置、不揮発性の記憶装置、中央演算処理装置(CPU)などを有するコンピュータとして構成されている。制御装置46のこれら記憶装置には、以下の(d)~(f)等のデータが格納される。
(d)駆動装置43等を制御するためのプログラム。
(e)サーバ30から受信した動作指示データ。
(f)第1アクセスポイントAP1及び第2アクセスポイントAP2の無線通信範囲が重複しているエリアの位置及び範囲に関するデータ。
【0024】
制御装置46のCPUは、記憶装置に保存されている各種プログラムを実行する。また、制御装置46のCPUは、(e)の動作指示データ等に基づいて、(d)のプログラムにより、駆動装置43による車輪42の回転数、舵角等を制御する。また、制御装置46のCPUは、バッテリ44から、当該バッテリ44の電流値及び電圧値を取得する。制御装置46は、これら電流値及び電圧値に基づいて、バッテリ44の充電残量を算出し、この充電残量に関するデータを取得する。なお、上記(f)のデータは、第1アクセスポイントAP1及び第2アクセスポイントAP2の位置及び電波強度などを勘案して、制御装置46の記憶装置に予め記憶されている。
【0025】
無線通信装置47は、電波を送受信するためのアンテナと、アンテナによる電波の送受信を制御する通信モジュール48と、周波数制御部49と、を備える。なお、
図2では、無線通信装置47のアンテナの図示を省略している。
【0026】
無線通信装置47は、各無線アクセスポイントAPとの間でデータの送受信を行う。無線通信装置47が送信するデータには、以下の(g)~(k)等のデータが含まれる。
(g)自走移動体40がオンラインであるか否かのデータ。
(h)自走移動体40の位置データ。
(i)バッテリ44の充電残量に関するデータ。
(j)動作指示データに基づいて、自走移動体40が動作の実行に成功したか否かを示すデータ。
(k)サーバ30から送信されたデータを、自走移動体40が受信に成功したか否かを示すデータ。
【0027】
また、無線通信装置47は、上記データを複数のパケットに分割して、当該データの送受信を行う。無線通信装置47が送信する各パケットには、送信順に応じた連続した番号であるシーケンス番号が付加される。本実施形態において、シーケンス番号は送信順に応じて1つずつ増加する正の整数で表される。
【0028】
周波数制御部49は、通信モジュール48が利用する周波数帯を切り替えるチャンネル切替処理を実行可能である。具体的には、周波数制御部49は、各無線アクセスポイントAPとの通信に利用する通信チャンネルを、複数の通信チャンネルの中から順番に切り替える。なお、周波数制御部49による通信チャンネルの切替については、後述する。
【0029】
(サーバのパケット受信時の処理について)
次に、サーバ30がパケットを新たに受信した際の、サーバ30内での処理について、
図3に従って説明する。なお、以下では、サーバ30が新たに受信したパケットを新パケットと呼称し、新パケットを受信した時点よりも前に、既に受信して記憶部31に記憶してあるパケットを既パケットと呼称する。
【0030】
サーバ30が新パケットを受信すると、まず、サーバ30は、ステップS1の処理を行う。ステップS1では、サーバ30は、無線アクセスポイントAP及び中継機20を介して、自走移動体40から新パケットを受信する。そして、サーバ30は、その新パケットを、RAM32に一時的に記憶する。その後、サーバ30の処理は、ステップS2に移行する。
【0031】
ステップS2では、サーバ30のCPU33は、記憶部31から既パケットに関するデータを読み出す。具体的には、CPU33は、記憶部31に記憶されている各既パケットのシーケンス番号を抽出する。そして、既パケットのシーケンス番号のうちの最も大きい番号と、新パケットのシーケンス番号との大小関係を比較する。
【0032】
新パケットのシーケンス番号が、最も大きい既パケットのシーケンス番号以下である場合、サーバ30のCPU33は、新パケットを、既にサーバ30が受信したパケットであると判断する(S2:NO)。なお、この状況は、新パケットに含まれるシーケンス番号が、いずれかの既パケットに含まれるシーケンス番号と重複しているという状況である。この場合、サーバ30の処理は、ステップS3に移行する。
【0033】
ステップS3では、サーバ30のCPU33は、新パケットを記憶部31に記憶せず、且つ当該新パケットをRAM32から削除する。つまり、CPU33は、新パケットを破棄する。
【0034】
一方、新パケットのシーケンス番号が、既パケットのシーケンス番号よりも大きい場合、サーバ30のCPU33は、新パケットを、初めて受信するパケットであると判断する(S2:YES)。この場合、サーバ30の処理は、ステップS4に移行する。
【0035】
ステップS4では、サーバ30のCPU33は、RAM32に一時的に記憶していた新パケットを記憶部31に記憶する。このようにサーバ30のCPU33は、既に受信したパケットではない新パケットのみを、選択的に記憶部31に記憶する。そして、サーバ30のCPU33は、新たに受信したデータに基づいて各種プログラムを実行する。
【0036】
(周波数制御部のチャンネル切替処理について)
次に、周波数制御部49の、チャンネル切替処理について説明する。
自走移動体40は、位置取得部45により取得した自身の位置が、制御装置46の記憶装置に予め記憶されている無線通信範囲の重複するエリア内であることを条件に、以下のチャンネル切替処理を周期的に実行する。
【0037】
図4に示すように、チャンネル切替処理を実行すると、先ず、周波数制御部49は、ステップS11の処理を実行する。ステップS11では、周波数制御部49は、当該周波数制御部49で利用可能な通信チャンネルのうち、最小の通信チャンネルに切り替える。上述したとおり、本実施形態において、周波数制御部49は、2.4GHz帯の周波数帯域に用意されている1CH~14CHの通信チャンネルを利用する。したがって、このステップS11の処理を実行すると、周波数制御部49は、通信モジュール48の通信チャンネルを1CHに切り替える。その後、無線通信装置47がステップS12の処理を行う。
【0038】
ステップS12では、無線通信装置47は、無線アクセスポイントAPに接続を試みる。その後のステップS13では、無線通信装置47の無線アクセスポイントAPへの接続が成功したか否かを判断する。無線通信装置47の無線アクセスポイントAPへの接続が成功したと判断した場合、無線通信装置47の処理はステップS14に移行する。ステップS14では、無線通信装置47は、予め定められた一定期間、パケットをシーケンス番号順に中継機20に送信する。その後、一連のチャンネル切替処理が終了し、所定の制御期間を経て再びチャンネル切替処理を実行する。
【0039】
一方、ステップS13において無線通信装置47が無線アクセスポイントAPに接続できなかったと判断した場合(S13:NO)、周波数制御部49はステップS15の処理を行う。
【0040】
ステップS15では、周波数制御部49は、通信モジュール48の通信チャンネルを、隣接する1つ大きい通信チャンネルに切り替える。例えば、ステップS13において1CHで無線通信の接続を試みた場合には、ステップS15では、周波数制御部49は、通信チャンネルを2CHに切り替える。その後、周波数制御部49の処理はステップS16に移行する。
【0041】
ステップS16では、周波数制御部49は、切り替えた通信チャンネルがオフバンドであるかどうか判断する。なお、本実施形態において、オフバンドとは、14CHよりも大きい周波数帯の通信チャンネルである。切り替えた通信チャネルがオフバンドであると判断した場合(S16:YES)、一連のチャンネル切替処理が終了し、所定の制御期間を経て再びチャンネル切替処理を実行する。一方、切り替えた通信チャネルがオフバンドではないと判断した場合(S16:NO)、無線通信装置47は再びステップS12の処理を行う。
【0042】
(本実施形態の作用について)
チャンネル切替処理が実行されると、通信チャンネルがオフバンドになるまで通信チャンネルを隣接する通信チャンネルに順番に切り替えていく。例えば、本実施形態においては、周波数制御部49は、通信チャンネルを1CHから14CHまで順番に切り替えていく。
【0043】
通信チャンネルを切り替えていく過程で無線通信装置47が無線アクセスポイントAPに接続に成功した場合、無線通信装置47は、当該接続した無線アクセスポイントAPにパケットを送信する。
【0044】
ここで、チャンネル切替処理は、2つの無線アクセスポイントAPの無線通信範囲が重複しているエリア内に自走移動体40が位置しているときに行われる。したがって、チャンネル切替処理が実行されると、無線通信装置47は、第1アクセスポイントAP1にパケットを一定期間送信した後、第2アクセスポイントAP2にパケットを一定期間送信し、その後再び第1アクセスポイントAP1にパケットを一定期間送信する。このように、2つの無線アクセスポイントAPの無線通信範囲が重複しているエリアでは、無線通信装置47は、2つの無線アクセスポイントAPに対して交互にパケットを送信する。
【0045】
(本実施形態の効果について)
(1)上記実施形態によれば、2つの無線アクセスポイントAPの無線通信範囲が重複しているエリアでは、チャンネル切替処理が実行される。そして、このチャンネル切替処理では、無線通信に利用するチャンネルを順次切り替えていくので、いずれかの無線アクセスポイントAPのうち、無線通信が可能な何れか又は両方の無線アクセスポイントAPで通信できる。そのため、無線アクセスポイントAPの無線通信範囲が重複しているエリアの近傍で、いずれかの無線アクセスポイントAPにのみ無線接続しようと試みて、無線通信が安定しなくなるおそれを低減できる。つまり、2つの無線アクセスポイントAPの無線通信範囲が重複しているエリア内、及び当該エリアの近傍において、無線アクセスポイントAPに対する自走移動体40の無線通信が安定する。
【0046】
また、上記実施形態によれば、無線アクセスポイントAP側に対しては各無線アクセスポイントAPの通信チャンネルを予め定めておくという簡便な作業で、上記無線通信システム10を実現できる。したがって、無線アクセスポイントAPに対する大幅なソフトウェアの変更、及び無線アクセスポイントAPの入れ替えといったことは要しない。
【0047】
(2)上記実施形態によれば、複数の無線アクセスポイントAPの無線通信範囲は重複している。そして、自走移動体40の位置が上記重複するエリア内である場合に、無線通信装置47の周波数制御部49は、チャンネル切替処理を行う。したがって、複数の無線アクセスポイントAPのうち、いずれか1つの無線アクセスポイントAPに対してのみ無線通信が可能なエリアであるにも拘らず、無用にチャンネル切替処理が実行されることは防げる。
【0048】
(3)上記実施形態において、自走移動体40の無線通信装置47が送信するパケットにはシーケンス番号が含まれている。そして、サーバ30は、新たに受信した新パケットのシーケンス番号が、新パケットよりも前に受信した既パケットのシーケンス番号と重複する場合には、当該新パケットを破棄する。これにより、重複した内容のデータについての処理をせずに済むため、サーバ30のパケット処理速度が向上し得る。
【0049】
(4)上記実施形態において、自走移動体40が送信するデータには、バッテリ44の充電残量に関するデータが含まれる。これにより、自走移動体40の充電残量をサーバ30で管理できる。また、チャンネル切替処理を実行することに伴って無線通信の速度が低下しても、バッテリ44の充電残量に関するデータの送信程度であれば、速度低下の影響はほとんど無視できる。
【0050】
(5)上記実施形態において、無線通信装置47が送信するデータには、位置データが含まれる。また、サーバ30が送信するデータには、動作指示データが含まれる。これにより、自走移動体40の走行経路をサーバ30で管理できる。また、チャンネル切替処理を実行することに伴って無線通信の速度が低下しても、自走移動体40の走行に関するデータの送信程度であれば、速度低下の影響はほとんど無視できる。
【0051】
<変更例>
上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0052】
(無線通信システムについて)
・無線通信システム10は、3つ以上の自走移動体40を備えていてもよい。また、無線通信システム10は、3つ以上の無線アクセスポイントAPを備えていてもよい。3つ以上の無線アクセスポイントAPの通信可能範囲が重複するエリアにおいても、周波数制御部49のチャンネル切替処理により、無線通信装置47は、無線通信可能な各無線アクセスポイントAPに対して順番にパケットを送信できる。
【0053】
・無線通信システム10において利用される無線LAN規格は、上記実施形態の例に限られない。また、サーバ30、中継機20、無線アクセスポイントAPの各々の通信方法は有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。サーバ30、中継機20、無線アクセスポイントAP、自走移動体40が、相互に通信可能であればよい。
【0054】
・無線通信システム10は、中継機20を備えなくてもよい。その場合、無線アクセスポイントAPは、サーバ30と直接接続してもよい。また、無線通信システム10は、複数の中継機20を備えていてもよい。なお、複数の中継機20を備えている場合、各中継機20は、互いに重複しない特定の無線アクセスポイントAPの送信データを中継すればよい。
【0055】
(サーバについて)
・サーバ30の記憶部31は、マップデータを記憶していなくてもよい。また、サーバ30の記憶部31は、自走移動体40の動作を遠隔制御するためのソフトウェアを記憶していなくてもよい。すなわち、サーバ30は、動作指示データによる自走移動体40の遠隔制御をしなくてもよい。この場合、自走移動体40は、例えば、床面上に設置された磁気テープ又は標識等を認識して、自立して走行すればよい。
【0056】
・サーバ30のパケット受信時の処理は、上記実施形態の例に限られない。すなわち、サーバ30は、無線通信装置47から受信した新パケットに含まれるシーケンス番号が、既に受信済みの既パケットに含まれるシーケンス番号と重複する場合でも、新パケットを破棄しなくてもよい。
【0057】
(無線アクセスポイントについて)
・複数の無線アクセスポイントAPの無線通信範囲は重複していなくてもよい。当該重複するエリアが無くとも、予め上記無線通信システム10を適用しておけば、新たに無線アクセスポイントAPを設置して通信可能範囲が重複するエリアが生じたとしても、無線アクセスポイントAPに対して大幅なソフトウェアの変更等をする手間が軽減される。また、通信可能範囲が重複するエリアが重複していなくても、チャンネル切替処理で通信チャンネルを順番に切り替えることにより、通信できる無線アクセスポイントAPを順番に探索することになる。これにより、各無線アクセスポイントAPの通信可能範囲の境界近傍において、速やかに無線アクセスポイントAPに対して自走移動体40が通信可能となる。
【0058】
・複数の無線アクセスポイントAPのうち、少なくとも2つの無線アクセスポイントAPが利用する通信チャンネルが異なっていればよい。そして、複数の無線アクセスポイントAPのうち、無線通信範囲が重複していない無線アクセスポイントAP同士は、同じ通信チャンネルを利用していてもよい。
【0059】
(自走移動体について)
・自走移動体40は、上記実施形態の例に限られない。ここでいう自走移動体40とは、自動制御により商品、人間、器具等を運搬する輸送機器全般を指す概念である。そのため、例えば、自走移動体40は、鉄道のように予め敷設されたレール上を走行する自動走行車両であってもよいし、物流用ドローンのような無人航空機であってもよい。
【0060】
・自走移動体40は、バッテリ44を備えていなくてもよい。例えば、自走移動体40の動力は内燃機関等であってもよい。また、制御装置46は、充電残量に関するデータを取得しなくてもよい。
【0061】
・自走移動体40は、位置取得部45を備えていなくてもよい。この場合、周波数制御部49は、自走移動体40の位置に依らないでチャンネル切替処理を実行すればよい。
・位置取得部45が自走移動体40の位置を取得する方法は、上記実施形態の例に限られない。例えば、全球測位衛星システムによる位置測定を利用してもよい。また、位置取得部45が行う処理は、制御装置46の記憶装置に保存されるプログラムとして実行されてもよい。
【0062】
・制御装置46は、駆動装置43等の制御に際して、動作指示データに基づいた制御を行わなくてもよい。例えば、制御装置46の記憶装置に走行経路が予め記憶されており、制御装置46は、当該走行経路に従って駆動装置43等を制御してもよい。
【0063】
・上記実施形態における(f)のデータは、制御装置46の記憶装置に記憶されていなくてもよい。例えば、サーバ30の記憶部31に当該データが記憶されていてもよい。そして、自走移動体40の位置が、複数の無線アクセスポイントAPの通信可能範囲が重複するエリア内であることを条件として、サーバ30が自走移動体40の無線通信装置47に対して、チャンネル切替処理の実行を命令してもよい。
【0064】
(無線通信装置について)
・無線通信装置47が送信するデータは、上記実施形態の例に限られない。例えば、無線通信装置47は、バッテリ44の充電残量に関するデータをサーバ30に送信しなくてもよい。また、充電残量に関するデータとして、自走移動体40の制御装置46が算出したバッテリ44の充電残量ではなく、バッテリ44から取得した、当該バッテリ44の電流値及び電圧値を送信してもよい。
【0065】
・周波数制御部49は、自走移動体40の位置が複数の無線アクセスポイントAPの無線通信範囲が重複するエリアであることを、チャンネル切替処理を実行する条件にしなくてもよい。例えば、周波数制御部49は常にチャンネル切替処理を行っていれば、(1)に記載の効果は得られる。
【0066】
・シーケンス番号は、サーバ30のCPU33において、パケットの送信順が判断できれば、上記実施形態の例に限られない。例えば数字とアルファベットとの組み合わせ等であってもよい。
【0067】
<付記>
上記実施形態及び変更例から導き出せる技術思想を以下に記載する。
[1]
無線通信装置を備える自走移動体と、
前記無線通信装置と通信可能な複数の無線アクセスポイントと、を備え、
前記各無線アクセスポイントのうちの少なくとも2つの前記無線アクセスポイントは、予め定められた複数の通信チャンネルのうち、前記無線アクセスポイント毎に異なる1つの前記通信チャンネルで、前記無線通信装置と通信可能であり、
前記無線通信装置は、前記無線アクセスポイントとの通信に利用する前記通信チャンネルを、複数の前記通信チャンネルの中から順番に切り替えるチャンネル切替処理を実行可能である無線通信システム。
【0068】
[2]
前記自走移動体は、自身の位置を取得可能な位置取得部をさらに備え、
複数の前記無線アクセスポイントのうち、前記無線通信装置と通信可能である前記通信チャンネルが異なる少なくとも2つの前記無線アクセスポイントは、無線通信範囲の一部が重複しており、
前記無線通信装置は、位置取得部が取得した位置が、無線通信範囲が重複するエリア内であることを条件に、前記チャンネル切替処理を実行する[1]に記載の無線通信システム。
【0069】
[3]
前記無線アクセスポイントを介して前記無線通信装置と通信するサーバをさらに備え、
前記無線通信装置は、前記サーバと通信する際に、データを複数のパケットに分割して送信し、且つ、前記パケットは、送信順に応じた連続したシーケンス番号を含んでおり、
前記サーバは、前記無線通信装置から新たに受信した前記パケットに含まれる前記シーケンス番号が、前記新たに受信したパケットより前に受信したパケットに含まれる前記シーケンス番号と重複する場合には、前記新たに受信したパケットを破棄する[1]又は[2]に記載の無線通信システム。
【0070】
[4]
前記無線アクセスポイントを介して前記無線通信装置と通信するサーバをさらに備え、
前記自走移動体は、バッテリを備え、
前記無線通信装置は、前記バッテリの充電残量に関する情報を前記サーバに送信する[1]~[3]のいずれか1つに記載の無線通信システム。
【0071】
[5]
前記無線アクセスポイントを介して前記無線通信装置と通信するサーバをさらに備え、
前記自走移動体は、自身の位置を取得可能な位置取得部をさらに備え、
前記無線通信装置は、前記自走移動体の位置に関する情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記自走移動体の走行経路に関する情報を前記無線通信装置に送信する[1]~[4]のいずれか1つに記載の無線通信システム。
【符号の説明】
【0072】
10…無線通信システム
AP…無線アクセスポイント
30…サーバ
40…自走移動体
45…位置取得部
47…無線通信装置
49…周波数制御部