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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125696
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】磁性物除去装置
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/00 20060101AFI20240911BHJP
   B03C 1/28 20060101ALI20240911BHJP
   B03C 1/26 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B03C1/00 A
B03C1/00 B
B03C1/28
B03C1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033690
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】307003168
【氏名又は名称】ダイカテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101948
【弁理士】
【氏名又は名称】柳澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】大西 賢治
(72)【発明者】
【氏名】米倉 大介
(57)【要約】
【課題】磁性物全体として効率よく除去できるとともに、小径の微小な磁性物まで効率よく除去することができる磁性物除去装置を提供する。
【解決手段】収容容器1には、それぞれが磁性物を磁力により吸着する複数の吸着体を有する第1吸着部11と第2吸着部12が設けられており、第1吸着部11は、材料が移動する経路の上流側に、第2吸着部12は、第1吸着部11よりも下流側に設けられている。第2吸着部12の吸着体としては、第1吸着部11の吸着体よりも磁束密度が大きいものを用いる。また第1吸着部11の吸着体としては第2吸着部12の吸着体よりも磁極数が多いものを用いるとよい。第1吸着部11で全体として効率よく磁性物を除去するとともに、さらに第2吸着部12で微小な磁性物を効率よく除去する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料中の磁性物を磁力により吸着する磁性物除去装置であって、材料の移動方向の上流側に設けられた第1の吸着手段と、前記第1の吸着手段よりも材料の移動方向の下流側に設けられ前記第1の吸着手段よりも磁束密度が大きい第2の吸着手段を有することを特徴とする磁性物除去装置。
【請求項2】
前記第2の吸着手段は、前記第1の吸着手段よりも磁極間隔が広いことを特徴とする請求項1に記載の磁性物除去装置。
【請求項3】
前記第2の吸着手段の磁束密度は、15000ガウス以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁性物除去装置。
【請求項4】
前記第2の吸着手段は、材料の移動方向に対して傾斜させて配置していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁性物除去装置。
【請求項5】
前記第2の吸着手段は、材料の移動方向に対して傾斜させて配置していることを特徴とする請求項3に記載の磁性物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体あるいは粒状体、液状体などの材料中から磁力により磁性物を除去する磁性物除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体あるいは粒状体、液状体などの材料を用いて商品を製造する際に、材料中に金属などの異物が混入している場合があり、この異物が製造装置の不具合の原因となったり、商品に混入して不良品となる場合がある。そのため、材料中から磁力により金属などの磁性物を除去する磁性物除去装置が用いられている。例えば、特許文献1や文献2、文献3などにも記載されているところである。
【0003】
最近になり、除鉄装置の除去性能を向上させるために、磁束密度の大きさよりも磁極数の方が効果的であることがわかってきた。この見地に従い、磁極数を増やした磁性物除去装置も販売されるようになってきている。一般に、磁石の磁束密度の大きさは磁極間の磁石体積に依存している。そのため、上述の見地に従って磁極数を増加させると、磁束密度は相対的に低下しているのが現状である。
【0004】
一方、近年では要求されている除去すべき磁性物の大きさも小さくなっている。例えば半導体集積回路の表面を保護する封止材に用いられるシリカ球状粒子においては、集積回路の配線間隔を超える磁性物が混入すると短絡が生じて不良品が発生する。そのため、除去すべき磁性物の下限の大きさは50μm以上、あるいはさらに10~20μm以上へと飛躍的に小さくなっている。しかし、上述のように磁極数を増やすことにより除去できる磁性物の総量や割合は向上するものの、要求される微小な磁性物まで十分に除去する性能を有していなかった。
【0005】
このような微小な磁性物を除去するためには磁束密度を大きくすればよいことも、最近の研究によりわかってきている。しかし、上述のように磁極数を多くすれば磁束密度は小さくなり、磁束密度を大きくすると磁性物全体での除去効率が低下してしまうというジレンマに陥っていた。もちろん、装置自体を大型化すれば多くの磁極数を得ながら大きな磁束密度を有する装置も可能ではあるが、重量が増して清掃などの取扱時に危険が伴うとともに容易に取り扱うことができず、また限られたスペースに設置できなくなるなど、多くの不具合を抱えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3426228号公報
【特許文献2】特許第4273119号公報
【特許文献3】特許第4180583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、磁性物全体として効率よく除去できるとともに、小径の微小な磁性物まで効率よく除去することができる磁性物除去装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に記載の発明は、材料中の磁性物を磁力により吸着する磁性物除去装置であって、材料の移動方向の上流側に設けられた第1の吸着手段と、前記第1の吸着手段よりも材料の移動方向の下流側に設けられ前記第1の吸着手段よりも磁束密度が大きい第2の吸着手段を有することを特徴とする磁性物除去装置である。
【0009】
本願請求項2に記載の発明は、本願請求項1に記載の発明における前記第2の吸着手段が、前記第1の吸着手段よりも磁極間隔が広いことを特徴とする磁性物除去装置である。
【0010】
本願請求項3に記載の発明は、本願請求項1または請求項2に記載の発明における前記第2の吸着手段の磁束密度は、15000ガウス以上であることを特徴とする磁性物除去装置である。
【0011】
本願請求項4に記載の発明は、本願請求項1または請求項2に記載の発明における前記第2の吸着手段は、材料の移動方向に対して傾斜させて配置していることを特徴とする磁性物除去装置である。
【0012】
本願請求項5に記載の発明は、本願請求項3に記載の発明における前記第2の吸着手段は、材料の移動方向に対して傾斜させて配置していることを特徴とする磁性物除去装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1の吸着手段によって磁性物全体としての高い除去効率を有するとともに、第1の吸着手段では除去できなかった微小な磁性物を第2の吸着手段によって除去することができる。これによって、要求される微小な磁性物から従前の大きさの磁性物まで、幅広く効率よく除去することができるという効果がある。
【0014】
第2の吸着手段としては、前記第1の吸着手段よりも磁極間隔を広くすれば磁束密度を大きくすることができる。これによって、スペースを広げること無く、同じ大きさで第2の吸着手段を実現することができる。第2の吸着手段の磁束密度としては、15000ガウス以上であると微小な磁性物まで効率よく除去することができる。
【0015】
さらに、第2の吸着手段を材料の移動方向に対して傾斜させて配置することによって、微小な磁性物との接触機会を増やし、効率よく微小な磁性物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の一形態を示す断面図である。
図2】吸着体の一例の説明図である。
図3】吸着体の磁束密度と磁性物除去性能の関係の一例を示すグラフである。
図4】本発明の実施の一形態における変形例を示す構成図である。
図5】本発明の別の実施の一形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施の一形態を示す断面図である。図中、1は収容容器、2は投入口、3は排出口、11は第1吸着部、12は第2吸着部である。
【0018】
この例では、収容容器1の上部に投入口2が、下部に排出口3が設けられており、上から下の方向に材料が移動してゆく例を示している。収容容器1には、磁性物を磁力により吸着する複数の吸着体からなる第1吸着部11と、やはり複数の吸着体からなる第2吸着部12を有している。第1吸着部11は、投入口2に近い、材料が移動する経路の上流側に設けられている。また第2吸着部12は、第1吸着部11よりも下流側に設けられている。
【0019】
投入口2から粉体あるいは粒状体の材料が投入されると、投入された材料は降下して第1吸着部11の吸着体と接し、磁性物が除去される。その後、さらに材料は降下して第2吸着部12の吸着体と接し、さらに磁性物が除去されることになる。詳細については後述する。このようにして第1吸着部11及び第2吸着部12で磁性物が除去された材料は、排出口3から排出される。
【0020】
第1吸着部11及び第2吸着部12についてさらに説明する。それぞれの吸着体は間隔を開けて、この例では水平方向に配列されており、図1(A)に示すように投入口2側から見て第1吸着部11の吸着体の間に第2吸着部12の吸着体が配置される。もちろん、図示のように、第1吸着部11の吸着体と第2吸着部12の吸着体も、間隔を開けて配置されている。この例では第1吸着部11として3本の吸着体を、第2吸着部12として4本の吸着体を示しているが、本数などはこの例に限られるものではない。なお、吸着体1は収容容器2から取り外して清掃や交換が可能なように構成されているとよい。
【0021】
図2は、吸着体の一例の説明図である。図中、21は吸着体、22は外装パイプ、23a,bは封止材、24は磁石、25は極板である。第1吸着部11及び第2吸着部12に設けられているそれぞれの吸着体21は、外装パイプ22の両端部に封止材23a、23bを備え、封止材23a、23bの間に複数の磁石24を詰めたものである。隣接する磁石24は、互いに同じ極性が対向するように配置され、その間に極板25を挟んで構成されている。磁石24としては、サマリウム磁石、ネオジム磁石など、様々な高磁力の永久磁石が使用される。
【0022】
第2吸着部12の吸着体21としては、第1吸着部11の吸着体21よりも磁束密度が大きいものを用いる。一般に磁石の磁束密度は、磁極間の磁石の体積に依存し、断面の大きさ、形状が同じであれば長さに依存することになる。吸着体21の長さを一定とした場合、磁石24の個数を増加させると1つあたりの磁石24の長さが短くなり、磁束密度は小さくなる。逆に、磁石24の個数を少なくすれば1つあたりの磁石24の長さが長くなって磁束密度は大きくなる。一例として、図2(A)には磁石24を12個設けた場合を示し、図2(B)には磁石24を5個設けた場合を示している。この場合、図2(A)に示した吸着体21に比べて、図2(B)に示した吸着体21の方が磁石24の1個あたりの体積が大きく、従って磁束密度は大きくなる。
【0023】
既に述べたが、磁性物の全体的な除去効率を向上させるためには、磁束密度を大きくするよりも磁極数を多くする方が有効である。この見地からすれば、磁束密度が低下しても、磁石24の個数を多くして磁極数を多くすることによって、磁性物を効率よく除去することができる。一方で、微小な磁性物に限ってみると、磁束密度を大きくしないと効率よく除去できない。このような傾向を実際に実験して調べた結果を次に示している。
【0024】
図3は、吸着体の磁束密度と磁性物除去性能の関係の一例を示すグラフである。図3(A)では、図2に示したように吸着体21中に設ける磁石24の長さを変えて個数を異ならせ、最大磁束密度が10000~11000ガウスの吸着体21((イ)として示す)と、最大磁束密度が14000~14500ガウスの吸着体21((ロ)として示す)と、最大磁束密度が15000~15500ガウスの吸着体21((ハ)として示す)を作成した。それぞれの吸着体21に対して、磁性物が混在するシリカ粉体を手篩で投入し、吸着体21に吸着除去された磁性物を調べた。
【0025】
図3(A)には、上述の3つの吸着体21を用いて吸着除去された磁性物の量を示しており、実線が全体量を示し、破線はφ10μm程度の線状の磁性物の吸着除去された量を示している。実線で示した吸着除去された磁性物の量のグラフを見ると、(ハ)として示した最大磁束密度が15000~15500ガウスの吸着体21よりも(ロ)として示した最大磁束密度が14000~14500ガウスの吸着体21の方がより多く磁性物を吸着除去しており、さらに(ロ)として示した最大磁束密度が14000~14500ガウスの吸着体21よりも(イ)として示した最大磁束密度が10000~11000ガウスの吸着体21の方がより多くの磁性物を吸着除去している。このグラフから、吸着除去された磁性物の量は、最大磁束密度が小さくても磁石24の個数が多く磁極数が多いほど、吸着除去された磁性物の量が多いことがわかる。従って、磁性物の全体的な除去効率を向上させるためには、磁束密度を大きくするよりも磁極数を多くする方が有効であることがわかる。
【0026】
しかし、破線で示すように、φ10μm程度の線状の磁性物といった、微小な磁性物については、最大磁束密度が14000~14500ガウス以下の吸着体21では吸着除去されておらず、最大磁束密度が15000~15500ガウスの吸着体21において吸着除去されている。φ10μm程度の線状の磁性物というのは一例ではあるが、このような微小な磁性物については磁束密度を大きくしないと吸着除去できない磁性物が存在することがわかる。
【0027】
図3(B)には、φ50μm未満の磁性物の除去率の傾向を示している。このグラフでは、吸着体21の最大磁束密度が11000ガウスの場合、14000ガウスの場合、16000ガウスの場合について、φ50μm未満の磁性物の除去率を算出した。このグラフからわかるように、少なくともφ50μm未満の磁性物については、最大磁束密度が11000ガウスの場合よりも14000ガウスの場合の方が除去率が高く、さらに最大磁束密度が14000ガウスの場合よりも16000ガウスの場合の方が除去率が高くなっており、磁束密度が大きくなるに従って除去率が高くなることがわかる。このグラフと、図3(A)の破線で示したグラフとから、微小な磁性物については、磁束密度を大きくしないと高い除去性能を得ることができないことがわかる。
【0028】
図3に示すグラフから、磁性物全体としては磁束密度を大きくするよりも磁極数を多くする方が有効であり、微小な磁性物については磁束密度を大きくすることが有効であることがわかる。もちろん、これらを両立させれば、磁性物除去装置としては微小な磁性物まで吸着除去できる高性能な装置を実現することができる。単純には、例えば磁石24の個数を多くし、かつ、1つあたりの磁石24の体積を増加させて磁束密度を大きくすればよい。しかし、そうすると吸着体21が大型化し、装置全体の大型化および重量の増加が避けられず、実際の装置として限られたスペースにまとめることができず、現実的ではない。また、そのような吸着体を用いた場合、磁束密度が小さくても吸着するような磁性物を吸着して早期に飽和してしまい、また吸着した磁性物によって磁束密度が低下してしまい、結局、磁束密度が大きくないと吸着除去できない微小な磁性物については吸着除去できなくなってしまう。従って、微小な磁性物の除去まで行おうとする場合、単に磁極数が多く、磁束密度が大きいというだけでは効率のよい装置を実現することはできない。
【0029】
本願発明では、前段に第1吸着部11を配置し、この第1吸着部11によって磁性物を吸着除去することによって全体としての除去効率を確保する。そして、第1吸着部11よりも磁束密度が大きい第2吸着部12を第1吸着部11の後段に配置し、磁束密度が大きくないと吸着できない微小な磁性物を第2吸着部12で吸着除去しているのである。また、第2吸着部12に多くの磁性物が吸着してしまうと微小な磁性物を吸着除去できなくなる懸念がある。しかし、材料が第2吸着部12に到達する時点で、第1吸着部11において多くの磁性物が吸着除去されていることから、第2吸着部12では第1吸着部11で吸着除去できる程度の磁性物が吸着される影響は少なく、微小な磁性物の吸着除去を妨げること無く行うことができる。このような構成によって、材料中の様々な磁性物を効率よく除去することができる。
【0030】
前段の第1吸着部11は、磁束密度が低下しても効率よく磁性物を吸着除去できるようにするとよく、例えば第2吸着部12よりも磁石24の個数を多くして磁極間隔を狭くした吸着体21を用いるとよい。また、第2吸着部12において第1吸着部11よりも磁束密度を大きくする構成としては、磁石24の個数を第1吸着部11よりも減らして磁石24の1つあたりの体積を増やした吸着体21を用いればよい。もちろん、第2吸着部12において第1吸着部11よりも磁束密度を大きくする方法としては、磁石24の個数を変更するほかにも様々な方法が知られているが、それら種々の周知の方法を用いて磁束密度を大きくしてもよい。
【0031】
なお、第1吸着部11及び第2吸着部12に用いる吸着体21の形状は、断面が円形であるほか、雫型など、さまざまな形状であってよい。また、第1吸着部11と第2吸着部12に配置する吸着体21の本数も、適宜設計時に決めればよい。さらに、図1に示した例では第1吸着部11及び第2吸着部12ともに1段ずつ配置しているが、それぞれ、2段以上設けてもよい。
【0032】
図4は、本発明の実施の一形態における変形例を示す構成図である。図中、図1と同様の部分には同じ符号を付して重複する説明を省略する。31は分散器である。この変形例においても、収容容器1の上部に投入口2が、下部に排出口3が設けられており、上から下の方向に材料が移動してゆく例を示している。収容容器1には、磁性物を磁力により吸着する複数の吸着体からなる第1吸着部11と、やはり複数の吸着体からなる第2吸着部12を有している。第1吸着部11は、第2吸着部12よりも投入口2に近い、材料が移動する経路の上流側に設けられている。また第2吸着部12は、第1吸着部11よりも下流側に設けられている。それぞれの吸着体は間隔を開けて配列されており、投入口2側から見て第1吸着部11の吸着体の間に第2吸着部12の吸着体が来るように配置されている。
【0033】
図1に示した例と異なる点として、この変形例では、第1吸着部11に設けられている吸着体は、材料の移動方向に対して略直角方向に延在しているが、第2吸着部12に設けられている吸着体は、材料の移動方向に対して角度を有し、斜め方向に延在している。この場合も、第2吸着部12は第1吸着部11よりも磁束密度が大きいものを用いる。第2吸着部12の吸着体は図1に示した例と同様のものを用い角度を変更して設置してもよいが、角度をつけた分だけ吸着体の長さを多少長くすることも可能である。吸着体の長さを長くすることにより内部に装填する磁石の体積を増やすことができ、より磁束密度を大きくすることが可能である。なお、第1吸着部11の吸着体としては、例えば第2吸着部12の吸着体よりも磁極数が多いものを用いるとよい。
【0034】
投入口2から粉体あるいは粒状体などの材料が投入されると、投入された材料は降下して第1吸着部11の吸着体と接し、磁性物が吸着除去される。この第1吸着部11として、上述のように例えば磁極数が多い吸着体を用いることによって、磁性物の大きさによらず、全体として効率よく磁性物を吸着除去する。
【0035】
第1吸着部11で磁性物が除去された材料は、第1吸着部11の吸着体の間からさらに降下し、第1吸着部11の後段に配置されている第2吸着部12の吸着体と接する。第2吸着部12は第1吸着部11よりも磁束密度が大きいので、この第2吸着部12において、第1吸着部11で除去されなかった材料中の磁性物が吸着除去されるとともに、第1吸着部11で除去できなかった材料中の微小な磁性物も吸着除去されることになる。特にこの変形例では、第2吸着部12の吸着体を傾斜させている。このことにより、第2吸着部12に到達した材料は吸着体の傾斜に従って滑り落ちるように移動する。これによって材料中の磁性物と第2吸着部12の吸着体との接触機会を多くし、より効率よく磁性物を除去することができる。
【0036】
なお、この第2吸着部12に到達する時点で、第1吸着部11において多くの磁性物が吸着除去されている。そのため、この第2吸着部12では、第1吸着部11で吸着除去できる程度の磁性物が第2吸着部12に吸着されることによる影響を軽減し、微小な磁性物の吸着除去を妨げること無く行うことができる。
【0037】
このようにして、材料中に存在していた磁性物のうち、多くの磁性物は第1吸着部11において効率よく吸着除去され、除去しきれなかった磁性物及び第1吸着部11では除去できなかった微小な磁性物は第2吸着部12において吸着除去される。よって、材料中に存在する磁性物は、微小なものまで効率よく吸着除去されることになる。第1吸着部11及び第2吸着部12で磁性物が除去された材料は、排出口3から排出される。
【0038】
上述の特許文献2にも記載されているが、第2吸着部12を傾斜させて配置する場合、図4(B)に示すように材料の移動方向の両側から傾斜させた吸着体を設けることにより、さらに効率よく磁性物を除去することができる。この場合、吸着体は対向する両側壁面に設け、それぞれの吸着体は壁面から中央部までの長さとし、中央部へ向けて下がってゆくように配置する。もちろん、第2吸着部12の吸着体として、第1吸着部11の吸着体よりも磁束密度が大きいものを用いる。また、この第2吸着部12の中央上部に分散器31を設けている。この分散器31は上部が凸形状になっており、第1吸着部11を通過した材料のうち中央部に到来した材料を壁面側へ移動させる。
【0039】
このような構成では、投入口2から投入されて第1吸着部11で磁性物が除去された材料は、中央部では分散器31によって壁面側へ移動させられた後、第2吸着部12の吸着体へと到達する。第2吸着部12の吸着体は中央部へ向けて下がってゆくように配置されているので、材料は第2吸着部12の吸着体の傾斜に従って中央部へ向けて滑り落ちるように移動する。これによって材料中の磁性物と第2吸着部12の吸着体との接触機会を多くし、より効率よく磁性物を除去することができる。上述のようにこの第2吸着部12の吸着体は磁束密度が大きいので、第1吸着部11で除去できなかった材料中の微小な磁性物も吸着除去されることになる。
【0040】
図4(A)に示す例では、第2吸着部12の吸着体の先端付近に落下してきた材料については吸着体との接触機会が少なくなってしまうが、図4(B)に示した構成では、材料を分散器31で壁面方向に移動させてから第2吸着部12の吸着体と接触させるので、材料を第2吸着部12の吸着体に効率よく接触させて磁性物を除去することができる。
【0041】
もちろん、分散器31を設けずに構成してもよいし、図4(A)の構成において第2吸着部12の吸着体の先端側壁面上部に分散器31を設け、第1吸着部11を通過した材料を第2吸着部12の吸着体の根元側へ移動させるように構成することもできる。さらに、図4(A)に示した構成の第2吸着部12として、図中右から左へ下がる吸着体の下段に、図中左から右へ下がる吸着体を設けることにより、図4(B)の両側からの吸着体を上下に設け、それぞれ先端部分での吸着不足を補うことも可能である。
【0042】
図4(A)、(B)に示した変形例では、第2吸着部12について吸着体を傾斜させた例を示した。第1吸着部11について磁極数を多くし、磁極の間隔を狭くしている場合、それだけでも磁性物を吸着する機会は多くなっている。そのため、上述の変形例のように第1吸着部11を傾斜させなくても十分な除去効率を確保できる。もちろんこの例に限らず、例えば上述の特許文献2に記載されているように、第2吸着部12とともに第1吸着部11についても傾斜させて構成してもよい。この場合、第1吸着部11における磁性物との接触機会をさらに増やして、吸着除去効率を向上させることが可能である。さらに、第1吸着部11あるいは第2吸着部12における吸着体を多段に構成し、磁性物の除去性能をさらに向上させることもできる。
【0043】
また、上述の実施の形態及びその変形例では、材料を上下方向に移動させる場合について説明したが、例えば上述の特許文献3に記載されているような、横方向に材料を移送する場合についても、本発明を適用することができる。このような構成は、例えば粉体や粒状体の材料を空送する場合や、液状の材料を通送あるいは圧送する場合などに用いられる。このような構成の場合も、材料の移動方向の上流側に存在する複数の吸着体を第1吸着部11とし、下流側に存在する複数の吸着体を第2吸着部12として、第2吸着部12の吸着体の磁束密度を第1吸着部11の吸着体の磁束密度よりも大きくすればよい。第1吸着部11の吸着体は、第2吸着部12の吸着体よりも磁極数を多くするとよい。
【0044】
図5は、本発明の別の実施の一形態を示す構成図である。図中、図1と同様の部分には同じ符号を付して重複する説明を省略する。41は第1ユニット、42は第2ユニットである。この例では、第1吸着部11を有する第1ユニット41と、第2吸着部12を有する第2ユニット42を直接あるいは間接的に連結して構成している。この構成のように、第1吸着部11と第2吸着部12は一体でなくともよく、それぞれのユニットを組み合わせて構成してもよい。
【0045】
第1ユニット41には第1吸着部11として複数の吸着体が設けられている。また第2ユニット42には第2吸着部12として複数の吸着体が設けられており、この吸着体は第1ユニット41に設けられている吸着体よりも磁束密度が大きい。逆に第1ユニット41に設けられている吸着体は第2ユニット42に設けられている吸着体よりも磁束密度が小さく、例えば磁極数が多い吸着体を用いるとよい。
【0046】
上述の変形例のように第2ユニット42に設けられる吸着体を傾斜させて配置したり、第1ユニット41に設けられる吸着体についても傾斜させて配置してもよい。また、各吸着体の形状などについても任意である。
【0047】
以上、本発明の磁性物除去装置の実施の一形態および変形例を示した。しかし、上述した構成は単なる一例であって、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…収容容器、2…投入口、3…排出口、11…第1吸着部、12…第2吸着部、21…吸着体、22…外装パイプ、23a,b…封止材、24…磁石、25…極板、31…分散器、41…第1ユニット、42…第2ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5