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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125697
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】戸当り装置
(51)【国際特許分類】
   E05C 17/56 20060101AFI20240911BHJP
   E05F 5/00 20170101ALI20240911BHJP
   E05F 3/22 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
E05C17/56
E05F5/00 C
E05F3/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033692
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】今野 僚太
(72)【発明者】
【氏名】菅原 孝輔
(57)【要約】
【課題】扉の受金具に対する係止および解除を容易に実行可能にする。
【解決手段】扉(100)に取り付けられるケース(30)と、ケース(30)の内側に収容され水平方向に沿ってスライド自在に設けられたホルダ(50)と、ホルダ(50)に収容され当該ホルダ(50)の下方から突出して受金具(9)と当接するように鉛直方向へ移動自在に保持された係止部(60)と、係止部(60)と受金具(9)とが対向した場合、係止部(60)を受金具(9)に当接させるように係止部(60)と一体に設けられたマグネット(65)と、係止部(60)と受金具(9)とが対向していない場合、係止部(60)がホルダ(50)の下方から突出しないように鉛直方向の上方へ向かって付勢する第1弾性体(70)と、ホルダ(50)を介して係止部(60)を水平方向に沿って扉(100)の吊元側または戸先側の少なくとも一方へ付勢する第2弾性体(80)とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な扉に設けられる戸当り装置であって、
前記扉に取り付けられるケースと、
前記ケースの内側に収容され、水平方向に沿ってスライド自在に設けられたホルダと、
前記ホルダに収容され、当該ホルダの下方から突出して受金具と当接するように鉛直方向へ移動自在に保持された係止部と、
前記係止部と前記受金具とが対向した場合に、前記係止部を前記受金具に当接させるように当該係止部と一体に設けられたマグネットと、
前記係止部と前記受金具とが対向していない場合に、前記係止部を前記ホルダの下方から突出することがないように鉛直方向の上方へ向かって付勢する第1弾性体と、
前記ホルダを介して前記係止部を水平方向に沿って前記扉の吊元側または戸先側の少なくとも一方へ付勢する第2弾性体と、
を備える戸当り装置。
【請求項2】
前記係止部は、前記扉の移動に応じて前記受金具の当接面と接触した状態のまま当該受金具と係合する
請求項1に記載の戸当り装置。
【請求項3】
前記受金具は、前記係止部と係合して前記扉の移動を停止させる被係止部を有する
請求項2に記載の戸当り装置。
【請求項4】
前記被係止部は、前記扉の移動に応じて前記係止部と接触した状態のまま当該係止部を移動させた後に当該係止部を係止して保持する収容空間を有する
請求項3に記載の戸当り装置。
【請求項5】
前記被係止部は、前記係止部と接触した状態のまま、前記第2弾性体の付勢力に抗して当該係止部を移動させる傾斜面が設けられた傾斜部を有する
請求項4に記載の戸当り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉等の戸体に取り付けられる戸当り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアの下端部からドアの内部に埋め込まれたシリンダと、そのシリンダ内に摺動自在かつシリンダ内から床面側に向かって下降するように設けられたピストンと、そのピストンと一体に設けられた磁石と、ピストンをシリンダ内で床から離れる方向へ付勢する圧縮コイルバネとからなる戸当り、および、床面に固定され、ピストンを係止するための突起が設けられた、磁性体からなる台座が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
この種の戸当りにおいては、ドアが開いてシリンダと台座とが鉛直方向において互いに対向配置されると、シリンダ内のピストンが磁石により台座に向かって下降する。
【0004】
そして、ピストンと台座とが接触した後、更なるドアの移動に伴ってピストンが突起を乗り越えることにより、突起と突起との間にピストンが配置されてドアを開いた開状態がロック(維持)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3118176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された戸当りにおいては、ピストンと台座とが接触した後、更なるドアの移動に伴ってピストンが突起の傾斜を登って乗り越える構造である。
【0007】
したがって、ドアが閉方向に移動した場合に、ピストンが突起を乗り越えることにより開状態が解除される。この場合、ピストンが突起を乗り越える力、および、磁石により台座に吸着されたピストンを台座から引き剥がす力の2種類の力が同時に必要となる。
【0008】
例えば、台座の突起の傾斜が緩やかで高さが低い場合、ピストンが突起を乗り越える際にドアを閉方向へ移動する力は小さくて済み、わずかな力でドアを閉方向へ移動するだけで簡単に開状態が解除される。
【0009】
一方、台座の突起の傾斜が急峻で高さが高い場合、ピストンが突起を乗り越えるためにはドアを閉方向へ移動するには大きな力が必要となり、これに加えて、磁石により台座に吸着されたピストンを台座から引き剥がす力についても必要となる。
【0010】
すなわち、磁石により台座に吸着されたピストンが高い突起を乗り越えるには、同時に必要となる2種類の力をドアに加えなければならない。このため、ドアの閉方向への移動には非常に大きな力(同時に発生する2種類の力を解消する程度の大きな力)が必要となる。
【0011】
また、扉の開状態を維持する、または、扉の開状態を解除することは、突起の高さに大きく依存しているため、扉の開状態の維持または解除の際に扉を移動させる力の大きさを変更するには突起の高さを調整する必要がある。そのためには、金型の改造または新たな金型の作成が必要となり、容易に変更することは困難であるという問題があった。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、扉の受金具に対する係止および解除を容易に実行し得る簡易な構成の戸当り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明においては、開閉可能な扉に設けられる戸当り装置であって、前記扉に取り付けられるケースと、前記ケースの内側に収容され、水平方向に沿ってスライド自在に設けられたホルダと、前記ホルダに収容され、当該ホルダの下方から突出して受金具と当接するように鉛直方向へ移動自在に保持された係止部と、前記係止部と前記受金具とが対向した場合に、前記係止部を前記受金具に当接させるように当該係止部と一体に設けられたマグネットと、前記係止部と前記受金具とが対向していない場合に、前記係止部を前記ホルダの下方から突出することがないように鉛直方向の上方へ向かって付勢する第1弾性体と、前記ホルダを介して前記係止部を水平方向に沿って前記扉の吊元側または戸先側の少なくとも一方へ付勢する第2弾性体と、を備える。
【0014】
本発明において、前記係止部は、前記扉の移動に応じて前記受金具の当接面と接触した状態のまま当該受金具と係合することが好ましい。
【0015】
本発明において、前記受金具は、前記係止部と係合して前記扉の移動を停止させる被係止部を有することが好ましい。
【0016】
本発明において、前記被係止部は、前記扉の移動に応じて前記係止部と接触した状態のまま当該係止部を移動させた後に当該係止部を係止して保持する収容空間を有することが好ましい。
【0017】
本発明において、前記被係止部は、前記係止部と接触した状態のまま、前記第2弾性体の付勢力に抗して当該係止部を移動させる傾斜面が設けられた傾斜部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る態様によれば、扉の受金具に対する係止および解除を容易に実行し得る簡易な構成の戸当り装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施の形態に係る戸当り装置が受金具のフラップと対向した状態(A)および(B)を示す斜視図である。
図2】第1の実施の形態に係る戸当り装置と受金具のフラップとが対向した状態を拡大して示す斜視図である。
図3】第1の実施の形態に係る受金具の構成を示す斜視図(A)、および、分解斜視図(B)である。
図4】第1の実施の形態に係る受金具が扉に取り付けられる前の状態(A)、扉に取り付けられた状態(B)、および、扉に取り付けられてケースの一部だけが露出した状態(C)を示す斜視図である。
図5】第1の実施の形態に係る戸当り装置の構成を示す分解斜視図である。
図6】第1の実施の形態に係る戸当り装置のケース(A)、(B)の構成を示し斜視図である。
図7】第1の実施の形態に係る戸当り装置の蓋の構成を示す斜視図である。
図8】第1の実施の形態に係る戸当り装置のホルダの構成を示す斜視図である。
図9】第1の実施の形態に係る戸当り装置の係止部の構成(A)、(B)を示す斜視図である。
図10】第1の実施の形態に係る係止部が突出する前の状態(A)、係止部が下降した状態(B)、および、下降した係止部がスライドした状態(C)を時系列に沿って示す上面図、側面図および断面図である。
図11】第1の実施の形態に係る戸当り装置の係止部と受金具との係合状態の遷移(A)乃至(D)を示す上面図である。
図12】第1の実施の形態に係る戸当り装置の係止部と受金具とが係合した状態を示す斜視図(A)、透視図(B)、戸当り装置のケースを消した状態を示す斜視図(C)である。
図13】第2の実施の形態に係る受金具の構成を示す斜視図(A)、および、分解斜視図(B)である。
図14】第2の実施の形態に係る受金具の第1突起、および、第2突起の構成を示す平面図である。
図15】第1の実施の形態に係る戸当り装置の係止部と受金具とが係合した状態を示す斜視図(A)、透視図(B)、戸当り装置のケースを消した状態を示す斜視図(C)である。
図16】第2の実施の形態に係る戸当り装置の係止部と受金具との係合状態の遷移(A)乃至(E)を示す上面図である。
図17】他の実施の形態に係る受金具の構成(A)乃至(C)を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.実施の形態の概要
まず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号が括弧を付して記載されている。
【0021】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態にかかる、開閉可能な扉(100)に設けられる戸当り装置(300)は、扉(100)に取り付けられるケース(30)と、ケース(30)の内側に収容され、水平方向(矢印cd方向)に沿ってスライド自在に設けられたホルダ(50)と、ホルダ(50)に収容され、当該ホルダ(50)の下方から突出して受金具(9、190、220、250)と当接するように鉛直方向(矢印ef方向)へ移動自在に保持された係止部(60)と、係止部(60)と受金具(9、190、220、250)とが対向した場合に、係止部(60)を受金具(9、190、220、250)に当接させるように当該係止部(60)と一体に設けられたマグネット(65)と、係止部(60)と受金具(9、190、220、250)とが対向していない場合に、係止部(60)をホルダ(50)の下方から突出することがないように鉛直方向(矢印ef方向)の上方へ向かって付勢する第1弾性体(70)と、ホルダ(50)を介して係止部(60)を水平方向(矢印ef方向)に沿って扉(100)の吊元側または戸先側の少なくとも一方へ付勢する第2弾性体(80)と、を備える。
【0022】
〔2〕上記戸当り装置(300)において、係止部(60)は、扉(100)の移動に応じて受金具(9、190、220、250)の当接面(95am、195am)と接触した状態のまま当該受金具(9、190、220、250)と係合する。
【0023】
〔3〕上記戸当り装置(300)において、受金具(9、190、220、250)は、係止部(60)と係合して扉(100)の移動を停止させる被係止部(96、196)を有する。
【0024】
〔4〕上記戸当り装置(300)において、被係止部(96、196)は、扉(100)の移動に応じて係止部(60)と接触した状態のまま当該係止部(60)を移動させた後に当該係止部(60)を係止して保持する収容空間(96s)を有する。
【0025】
〔5〕上記戸当り装置(300)において、被係止部(96、196)は、係止部(60)と接触した状態のまま、第2弾性体(80)の付勢力に抗して当該係止部(60)を移動させる傾斜面(96bt、197a、197b、198a、198b)が設けられた傾斜部(96b、197、198、221a、221b、251b)を有する。
【0026】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の代表的な第1および第2の実施の形態にかかる戸当り装置の構成について図1乃至図12を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す第1および第2の実施の形態は例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとり得る。
【0027】
なお、説明の都合上、図1において戸体(扉)1の開閉方向を開方向(Open)、閉方向(Close)とする。また、図2において、戸当り装置300の構成部材の位置関係について、上述した扉100の閉方向(Close)と一致する矢印a方向を奥側、扉100の開方向(Open)と一致する矢印b方向を手前側とし、矢印ab方向を開閉方向とする。また、戸当り装置3を扉100の開方向から扉100を正面に見たときの矢印c方向を戸先側または先端側、矢印d方向を吊元側または蝶番側とし、矢印cd方向を水平方向と言う場合がある。さらに、矢印e方向を扉100の上側または上方、矢印f方向を下側または下方とし、矢印ef方向を上下方向または鉛直方向と言う場合がある。なお、これらの方向は、説明の便宜上用いられるのであって、実際の使用状況に対応した方向ではない。
【0028】
(2-1)第1の実施の形態
図1および図2に示すように、第1の実施の形態に係る戸当り装置300が設けられた扉装置10の構成について説明する。この場合、図1において扉装置10の扉100の手前側を部屋の外側空間とし、扉装置10の扉100よりも奥側を部屋の内側空間とする。
【0029】
扉装置10は、枠体200と、当該枠体200に一端側が軸支された戸体(以下これを「扉」とも言う。)100と、枠体200に対して開閉可能な扉100の先端側の下端外側に取り付けられた戸当り装置300と、床面4に設置されて戸当り装置300と係合する受金具9とを有している。
【0030】
<受金具の構成>
図3に示すように、受金具9は、金属等の磁性体からなり、円盤形状または略円盤形状の床取付体91と、円盤形状または略円盤形状の受金具本体95と、を有している。
【0031】
床取付体91は、2つの貫通孔91a、91aおよび1つの貫通孔91bを介して床面4に対してネジにより固定される。床取付体91は2つの貫通孔91a、および、貫通孔91bの近傍であって、床取付体91の周縁に上側(矢印a方向)へ向かって僅かに突出した突起部91cを有している。
【0032】
受金具本体95は、円盤形状または略円盤形状のベース95aと、そのベース95aの上に載置され、一方(矢印a方向)が開口し他方(矢印b方億)が閉塞した被係止部96と、が一体に形成されている。ベース95aには、後述する係止部60(図5)が下降した際に当接される平坦な当接面95amを有している。
【0033】
ベース95aの裏面には、床取付体91の突起部91cと対応する位置に爪部(図示せず)が設けられている。したがって受金具本体95のベース95aの爪部と、床取付体91の突起部91cとが嵌合することにより両者が一体に取り付けられる。
【0034】
被係止部96は、後述する係止部60(図9)の移動体61(円筒体62)と係合して扉100の移動を停止させる部位である。被係止部96は、ベース95aの中心付近からベース95aの周縁部に向かうに連れて次第に離間するように延びる傾斜部96b、96bと、その傾斜部96b、96bと一体に繋がって3/4円程度の収容空間96sを形成する円形部96cとを有している。
【0035】
被係止部96では、傾斜部96bと傾斜部96bとによりベース95aの周縁部に対して係止部60(図9)の移動体61(円筒体62)が入り込むための開口部96aを形成している。
【0036】
被係止部96における2つの傾斜部96bは、ベース95aの中心付近に近づくに連れて互いに近づき、最終的に円形部96cと一体化されている。傾斜部96bは、ベース95aの中心付近に近づくに連れて最も近づいた部分が頂部96bsとなる。頂部96bsは、傾斜部96bと円形部96cとの境界部分である。
【0037】
なお、傾斜部96bは、後述する係止部60の移動体61(円筒体62)の外周面と接触した状態のまま、後述する第2バネ80(図5)の付勢力に抗して移動体61(円筒体62)を移動させる傾斜面96btを有している。
【0038】
これらの傾斜面96btは、円形部96cとの境界部分となる頂部96bsから開口部96aに向かうに連れて傾斜面96bt同士が次第に離れるように斜めに傾斜した面である。
【0039】
また、傾斜面96btは、ベース95aの当接面95amから上側(矢印e方向)に向かって垂直に延びる面であり、係止部60の移動体61(円筒体62)の外周面と確実に接触するために所定の高さを有している。
【0040】
被係止部96の円形部96cは、係止部60の移動体61よりも大きな収容空間96sを有している。この円形部96cの収容空間96sは、扉100の移動に応じて係止部60の移動体61(円筒体62)とベース95aの当接面95amとが接触した状態のまま、当該移動体61(円筒体62)が移動した後に最終的に係止して保持する空間である。なお、円形部96cは、その収容空間96sに移動体61が入る際の間口の距離L1が移動体61の外径よりも大きく形成されている。
【0041】
円形部96cにおいても、傾斜部96bと同様に、移動体61の外周面と接触する内周面96ctを有している。円形部96cの内周面96ctは、ベース95aの当接面95amに対して上側(矢印a方向)へ垂直に延びる面である。内周面96ctは、移動体61の外周面と確実に接触するために所定の高さを有している。
【0042】
すなわち、傾斜部96bと円形部96cは互いに同じ高さを有しており、傾斜部96bの傾斜面96btおよび円形部96cの内周面96ctのいずれも同じ高さからなる。傾斜部96bの傾斜面96btおよび円形部96cの内周面96ctの高さは、扉100の開閉時にその扉100の下端面に取り付けられた戸当り装置300と干渉することがなければよく、任意の高さに設定することが可能である。
【0043】
なお、受金具9は、ベース95aの中心を通る図示しない仮想線に対して線対称となるように2つの傾斜部96bが形成されている。これにより、扉100の取付位置が第1の実施の形態と逆になった場合であっても対応することが可能である。
【0044】
<戸当り装置の構成>
図4乃至図9を用いて、戸当り装置300の構成について以下説明する。図4および図5に示すように、戸当り装置300は、扉100の下側(矢印f方向)の端面(以下、これを「下端面」と言う。)に設けられた収容穴3h(図4(A))に埋め込まれた状態で取り付けられている。
【0045】
図5に示すように、戸当り装置300は、主に、ケース30、蓋40、ホルダ50、係止部60、第1弾性体としての第1バネ70、および、第2弾性体としての第2バネ80を有している。戸当り装置300においては、ケース30の一部であるベースプレート31が扉100の下側(矢印f方向)の下端面から露出する以外、他の部品については基本的に扉100の収容穴3hに収められている。
【0046】
<ケース>
図6に示すように、ケース30は、扉100の下側(矢印f方向)の下端面に形成された収容穴3hに取り付けられる部材であり、その内部にホルダ50、係止部60、第1バネ70、および、第2バネ80を収容する収容空間30sを有している。
【0047】
ケース30は、扉100の下端面の収容穴3hに取り付けられる際に、収容穴3hから露出する長方形状のベースプレート31と、そのベースプレート31の上に一体に形成されたケース本体33とを有している。
【0048】
ケース30のベースプレート31は、その長手方向における両側端部に貫通孔31ha、および、貫通孔31hbを有しており、扉100の収容穴3hにケース本体33が収容されるとき、2つの貫通孔31haおよび31hbを介して扉100の下端面に対し、ねじ等の締結具を介して取り付けられる。
【0049】
また、ベースプレート31は、長手方向の中央において楕円形状または略楕円形状の貫通孔31hを有している。ベースプレート31の貫通孔31hは、係止部60の移動体61(円筒体62)が挿通可能な大きさを有している。
【0050】
ケース30のケース本体33は、上側(矢印e方向)および下側(矢印f方向)が開口した角筒形状を有し、ベースプレート31と一体化されている。ケース本体33は、その内側が収容空間30sを為し、ベースプレート31の貫通孔31hを介して収容空間30sとベースプレート31の外側の空間とが連通している。
【0051】
ここで、ベースプレート31の貫通孔31hは、後述するホルダ50よりも小さく形成されており、ケース30の収容空間30sにホルダ50が収容された際、ホルダ50がベースプレート31の貫通孔31hから抜け落ちてしまうことが防止されている。
【0052】
ケース本体33は、長手方向に沿って互いに平行に立設された長壁部33a、33a、および、短手方向に沿って互いに平行に立設された短壁部33b、33bを有している。なお、短壁部33b、33bにおいては、扉100の戸先側(矢印c方向)となる短壁部33bと、扉の蝶番側(矢印d方向)となる短壁部33bとを場合によって区別して説明する。
【0053】
ケース本体33における2つの長壁部33aは、長手方向に沿って水平に細く設けられたスリット33asをそれぞれ有している。スリット33asは、後述するホルダ50の係合突起53pが入り込み、当該ホルダ50をスリット33asに沿ってスライドさせるためのガイド孔である。
【0054】
スリット33asは、ケース30の収容空間30sにホルダ50が収容された際の係合突起53pと同じ高さとなるように長壁部33aに設けられている。スリット33asの長手方向における長さは、ホルダ50が収容空間30sの中でスライドさせ得る最大範囲よりも長く設定されている。
【0055】
ケース本体33における戸先側(矢印c方向)の短壁部33bは、その内側の面(以下、これを「内側面」と言う。)の中央であってベースプレート31から所定の高さとなる位置に蓋用爪33bpを有している。この蓋用爪33bpは、後述する蓋40が取り付けられる際に蓋40と嵌合される爪である。
【0056】
一方、ケース本体33における吊元側(矢印d方向)の短壁部33bは、その内側面の中央に所定の長さの細い角柱状の棒状突起33bqを有している。棒状突起33bqは、短壁部33bの内側面と一体に形成されており、後述する第2バネ80の一方の端部が係合される部分である。
【0057】
<蓋>
図5および図7に示すように、戸当り装置300の蓋40は、平面視長方形状または略長方形状の板状部材からなり、樹脂等によって形成されている。蓋40は、ケース本体33の上側(矢印e方向)の開口を閉塞するものであり、蓋本体41と、2つの爪部42、42および脚部43を有している。
【0058】
蓋本体41は、ケース本体33の上側(矢印e方向)の開口を閉塞するのに十分な大きさを有している。2つの爪部42、42は、ケース本体33の長壁部33aに設けられたスリット33asの吊元側(矢印d方向)において嵌合可能であり、蓋本体41と一体に形成されている。
【0059】
蓋本体41の脚部43は、2本の脚が平行に下側(矢印f方向)に向かって延び、その先端が結合されて貫通孔43hを有する略U字形状を為している。脚部43の貫通孔43hには、ケース本体33の蓋用爪33bp(図6(A))が入り込んで嵌合可能である。
【0060】
したがって、蓋40は、蓋本体41の爪部42、42および脚部43とケース30のケース本体33のスリット33as、33asおよび蓋用爪33bpとが嵌合されることにより、3点支持によって取り付けられる。
【0061】
<ホルダ>
図5および図8(A)乃至(C)に示すように、ホルダ50は、上側(矢印e方向)が開口した立方体形状または略立方体形状の箱型を有し、樹脂等の射出成形により形成されている。
【0062】
ホルダ50は、吊元側(矢印d方向)を向いた正面側の壁部(以下、これを「正面壁部」と言う。)51、正面壁部51と平行に配置され戸先側(矢印c方向)を向いた背面側の壁部(以下、これを「背面壁部」と言う。)52、戸先側(矢印c方向)から吊元側(矢印d方向)に沿う水平方向(矢印cd方向)に対して互いに平行に対向配置された2つの側壁部53、53を有している。
【0063】
ホルダ50の正面壁部51は、略長円形状の突部51pを有している。正面壁部51の突部51pは、後述する第2バネ80(図5)の他方の端部と係合される部分である。そのため、突部51pは、第2バネ80の内径と同じまたはほぼ同じ大きさを有している。
【0064】
ホルダ50の背面壁部52は、上下方向(矢印ef方向)に沿って互いに平行に配置され、所定の長さの細い角柱状の2本の棒状突起52p、52pを有している。2本の棒状突起52p、52pは、蓋40の脚部43(図7)の幅よりも僅かに大きな間隔で配置されている。
【0065】
したがって、ケース30の内側の収容空間30sにホルダ50が収容された状態で、蓋40がケース30のケース本体33に取り付けられる際、ホルダ50の2本の棒状突起52p、52pの間に蓋40の脚部43が入り込むことになる。
【0066】
ホルダ50の側壁部53、53は、水平方向(矢印cd方向)に沿って平行に配置された係合突起53p、53pを有している。係合突起53pは、ケース30の収容空間30sにホルダ50が収容された状態で、ケース本体33の長壁部33aに設けられたスリット33asに対応する高さ位置に側壁部53と一体に形成されている。
【0067】
すなわちホルダ50は、側壁部53の係合突起53pとケース30のスリット33asとが係合し得るため、ケース30の収容空間30sの内部でスリット33asに沿って水平方向(矢印cd方向)に沿ってスライド自在である。
【0068】
また、ホルダ50は、下側(矢印f方向)には底壁部54を有し、その底壁部54には大きな貫通穴55hを有する円筒状の筒状壁55が形成されている。筒状壁55は、下側(矢印f方向)に向かって僅かに延び、後述する係止部60の移動体61(円筒体62)を上下方向(矢印ef方向)に移動させる際に導くガイドの役割を担っている。
【0069】
筒状壁55の貫通穴55hは、係止部60の移動体61(円筒体62)の外径よりも僅かに大きな内径を有している。底壁部54において、筒状壁55よりも外側の部分は、ホルダ50がケース30の収容空間30sに収容された際、ベースプレート31の貫通孔31hの外側の部分に当接する部分である。
【0070】
つまり、ホルダ50は、ケース30におけるベースプレート31の貫通孔31hよりも大きいため、ベースプレート31の貫通孔31hからホルダ50が抜け落ちることはない。
【0071】
<係止部>
図5に示すように、係止部60は、有底円筒形状からなり、上下方向(矢印ef方向)に移動可能な樹脂等からなる移動体61と、その移動体61と一体に設けられたマグネット65とを有している。
【0072】
図9に示すように、移動体61は、有底円筒形状すなわちコップ状またはバケツ状であり、その内側空間の底部にマグネット65(図5)を収容可能である。移動体61は、ホルダ50の内側空間に収容された状態で、底壁部54に設けられた筒状壁55の貫通穴55hを介して上下方向(矢印ef方向)に移動自在である。すなわち移動体61は、ピストンのように上下方向(矢印ef方向)に移動可能な状態でホルダ50に収容されて保持されている。
【0073】
移動体61は、有底円筒形状の円筒体62と、その円筒体62の上側(矢印e方向)の端部に一体に形成されたフランジ部63とを有している。円筒体62は、上側(矢印e方向)から下側(矢印f方向)に向かうに連れて次第に先細くなるように形成されている。ただし、これに限るものではなく、円筒体62としては、上側(矢印e方向)の外径および下側(矢印f方向)の外径が変わらない完全な円筒形状であってもよい。
【0074】
円筒体62の外径は、後述する第1バネ70の内径よりも僅かに小さく形成されている。これにより移動体61では、円筒体62の外周面に第1バネ70を配置することが可能である。
【0075】
移動体61のフランジ部63は、円筒体62の外径よりも僅かに大きな外径を有する円環状の部位であり、円筒体62の外周面に第1バネ70が配置された際、その第1バネ70の上側(矢印e方向)の端部70aと接触可能に設けられている。
【0076】
図5に示すように、係止部60のマグネット65は永久磁石からなり、係止部60と受金具9とが対向した場合に、係止部60を受金具9に当接させるように当該係止部60と一体に設けられている。したがって係止部60は、マグネット65の磁力によって受金具9におけるベース95aの当接面95amに近づくように円筒体62を下降することが可能である。
【0077】
すなわち、係止部60は、マグネット65の磁気作用によりホルダ50における筒状壁55の貫通穴55hから下方へ突出可能であり、受金具9と当接するように筒状壁55を介して鉛直方向(矢印ef方向)へ移動自在に保持されている。
【0078】
<第1バネ>
第1バネ70は、圧縮コイルバネであり、係止部60の移動体61(円筒体62)の外周面に巻き付けられるように上下方向(矢印ef方向)に沿って配置されている。
【0079】
第1バネ70の上側(矢印e方向)の端部70aは、円筒体62のフランジ部63に接触するように配置される。第1バネ70の下側(矢印f方向)の端部70bは、ホルダ50の底壁部54における筒状壁55の貫周囲に接触するように配置される。
【0080】
すなわち、第1バネ70は、ホルダ50に収容された係止部60の移動体61(円筒体62)を当該第1バネ70の付勢力によって上側(矢印e方向)へ付勢している。これにより、戸当り装置300と受金具9とが対向して配置されていない場合、係止部60の移動体61(円筒体62)は、ホルダ50から下側(矢印f方向)へ突出することのない状態で保持されている。
【0081】
<第2バネ>
第2バネ80は、第1バネ70と同様に圧縮コイルバネであり、ホルダ50の正面壁部51とケース30の吊元側(矢印d方向)の短壁部33bとの間に水平方向(矢印cd方向)に配置されている。
【0082】
第2バネ80の戸先側(矢印c方向)の端部80aは、ホルダ50の正面壁部51に形成された長円形状の突部51pを囲むように嵌め込まれる。第2バネ80の吊元側(矢印d方向)の端部80bは、ケース本体33の短壁部33bに形成された棒状突起33bqを囲むように嵌め込まれる。
【0083】
すなわち、第2バネ80は、デフォルトの状態において、ケース30の収容空間30sに収容されたホルダ50を介して係止部60の移動体61(円筒体62)を当該第2バネ80の付勢力によって戸先側(矢印c方向)へ付勢している。
【0084】
これにより、戸当り装置300の係止部60における移動体61(円筒体62)が下降して受金具9におけるベース95aの当接面95amに当接し、傾斜部96bと接触しない限り、ホルダ50における戸先側(矢印c方向)の背面壁部52をケース本体33の戸先側(矢印c方向)の短壁部33bに押し付けた状態(図10(A))を保持している。
【0085】
<第1の実施の形態における扉装置の動作および効果>
次に、このような構成の戸当り装置300および受金具9からなる扉装置10により、扉100を開くときに受金具9の位置で停止させて維持するための係止動作、その扉100を閉めるときに係止解除する係止解除動作について説明する。
【0086】
<扉装置による係止動作>
次に、図10(A)乃至(C)および図11(A)乃至(D)に示すように、扉装置10の戸当り装置300と受金具9とが互いに対向し、係止部60の移動体61(円筒体62)が下降して受金具9の当接面95amと当接し始めた初期の状態(これを「初期状態」または「初期位置」とも言う。)から、係止部60の移動体61(円筒体62)と受金具9とが係合して扉100を動かないように係止した状態(これを「係止状態」または「係止位置」とも言う。)へ遷移し、その停止状態を維持する係止動作について説明する。
【0087】
扉100が矢印a方向に向かって閉まった状態(以下、これを「閉状態」と言う。)においては、戸当り装置300の係止部60の移動体61(円筒体62)の内部に収容されたマグネット65の磁力が受金具9に到達することはない。
【0088】
したがって、この場合、図10(A)に示すように、第1バネ70の上側(矢印a方向)への付勢力により、係止部60の移動体61(円筒体62)はホルダ50における筒状壁55の貫通穴55hから下側(矢印f方向)へ突出することなく保持されている。
【0089】
その後、図1に示すように、扉装置10において、扉100の矢印b方向に向かって開方向(Open)へ移動することにより、戸当り装置300と受金具9とが次第に近づいていく。
【0090】
そして扉装置10では、図11(A)に示すように、扉100と受金具9とが互いに対向配置された状態になると、戸当り装置300の係止部60の移動体61(円筒体62)に収納されたマグネット65の磁気作用により、受金具9におけるベース95aの当接面95am(図3)に向かって移動体61(円筒体62)がホルダ50から下側(矢印b方向)に向かって下降する。
【0091】
この場合、図10(B)に示すように、戸当り装置300の係止部60の移動体61(円筒体62)がホルダ50における筒状壁55の貫通穴55hから下降して突出し、受金具9におけるベース95aの当接面95amと当接する。
【0092】
このとき戸当り装置300と受金具9とは対向配置する状態になったばかりのため、移動体61(円筒体62)は受金具9における被係止部96の開口部96aの近辺で当接する。ここで、当接とは、移動体61(円筒体62)と受金具9におけるベース95aの当接面95amとが磁力により張り付いた状態にあり、単に接触しているという意味ではない。
【0093】
その後、図11(B)に示すように、扉100が開方向(矢印b方向)へ更に移動すると、係止部60の移動体61(円筒体62)が受金具9におけるベース95aの当接面95amに張り付いたままの状態で傾斜部96bの傾斜面96btと接触する。この場合、移動体61(円筒体62)と傾斜部96bの傾斜面96btとは点接触に近い状態である。
【0094】
移動体61(円筒体62)が受金具9の傾斜部96bと接触したまま、さらに扉100が開方向(矢印b方向)へ移動すると、移動体61が傾斜部96bの傾斜面96btにより第2バネ80の付勢力に抗して吊元側(矢印d方向)へ押される。このため、図10(C)に示すように、係止部60(移動体61)を収容したホルダ50が吊元側(矢印d方向)へ移動されることになる。
【0095】
その後、図11(C)に示すように、扉100が開方向(矢印b方向)へ更に移動し続けると、移動体61(円筒体62)はホルダ50の傾斜部96bの傾斜面96btと接触した状態でホルダ50が吊元側(矢印d方向)へ移動し続ける。最終的には、図11(C)および図12に示すように、移動体61(円筒体62)は傾斜部96bの頂部96bsを乗り越えて円形部96cの収容空間96sに入り込んで係止される。
【0096】
図11(D)に示すように、ホルダ50は、第2バネ80の付勢力によって戸先側(矢印c方向)へ常時付勢されているので、移動体61(円筒体62)は円形部96cの内周面96ctに対して押し付けられることになる。
【0097】
したがって、扉100が閉方向(矢印a方向)に移動しない限り、移動体61(円筒体62)が傾斜部96bの頂部96bsを乗り越えることはなく、移動体61(円筒体62)と円形部96cとの係合状態が維持される。
【0098】
このように扉装置10では、扉100が開方向(矢印b方向)へ移動された場合、その開動作の勢いが強い場合であっても、係止部60の移動体61(円筒体62)が第2バネ80の付勢力に抗しながら受金具9の傾斜部96bの傾斜面96btに沿って移動するため、扉100の開動作の勢いを弱めることができる。これにより扉装置10では、扉100の開動作時に騒音や衝撃を生じさせることなく所定の位置で扉100を係止して停止させ、その停止状態を維持することができる。
【0099】
扉装置10では、マグネット65の吸着力により係止部60の移動体61(円筒体62)が受金具9におけるベース95aの当接面95amに当接した状態を維持したままで、かつ、第2バネ80の付勢力に抗しながら受金具9の傾斜部96bの傾斜面96btに沿って移動した後に円形部96cの収容空間96sに入り込むことになる。
【0100】
このように扉装置10では、マグネット65の吸着力および第2バネ80の付勢力を利用してドアDの勢いを吸収しながら、係止部60の移動体61(円筒体62)を受金具9の被係止部96と係合させるので、扉100を大きな騒音および衝撃なく受金具9で停止させ、かつ、その停止状態を維持することができる。
【0101】
<扉装置による係止解除動作>
続いて、扉装置10の戸当り装置300と受金具9とが係合して扉100を動かないように係止した係止状態(停止状態)から、扉100が閉方向(矢印a方向)へ移動することにより、係止部60の移動体61(円筒体62)と受金具9との係止状態が解除される係止解除動作について説明する。
【0102】
図11(D)に示すように、移動体61(円筒体62)が円形部96cの収容空間96sに収容された状態から、扉100が閉方向(矢印a方向)へ移動されると、移動体61(円筒体62)が円形部96cの内周面96ctに沿って、第2バネ80の付勢力に抗して吊元側(矢印d方向)へ移動される。
【0103】
そして扉100の閉方向(矢印a方向)への更なる移動に伴って、移動体61(円筒体62)が第2バネ80の付勢力に抗して傾斜部96bの頂部96bsを乗り越えると、第2バネ80の付勢力により傾斜部96bの傾斜面96btに沿って移動しながら、やがて傾斜部96bから離れることにより係止状態が解除される。
【0104】
これにより、扉100と受金具9とが互いに対向配置された状態ではなくなるため、ホルダ50に保持されている移動体61(円筒体62)に対してマグネット65の磁力が受金具9に到達しなくなり、第1バネ70の上側(矢印e方向)の付勢力により移動体61(円筒体62)がホルダ50に収容される(図10(A))。
【0105】
ところで、従来の実用新案登録第3118176号の考案のように、ドアDの移動に伴ってピストン2が突起5aの傾斜を登って乗り越えて係合させる場合、ピストン2が鉛直方向の上側へ移動する。この場合、ピストン2が乗り越える突起5aの高さを変更することはできないため、ドアDを受金具5から移動する際の力に必要なピストン2が突起5aを乗り越えるのに必要な力の大きさを変更することはできなかった。
【0106】
しかしながら戸当り装置300では、移動体61(円筒体62)が傾斜部96bを乗り越える力、および、マグネット65により受金具5の当接面95amに吸着された移動体61(円筒体62)を引き剥がす力が同時に必要になることはない。
【0107】
具体的には、戸当り装置300では、移動体61(円筒体62)が傾斜部96bを最初に乗り越えるために発生する第2バネ80の付勢力に抗する力、その次にマグネット65により受金具5の当接面95amに吸着された移動体61(円筒体62)を引き剥がすせん断方向の力の2種類が同時ではなく順番に必要となる。
【0108】
したがって、戸当り装置300では、扉100と受金具5との係止状態(停止状態)を維持または解除するために従来のような大きな力を必要とせずに済む。特に、戸当り装置300では、マグネット65により受金具5の当接面95amに吸着された移動体61(円筒体62)を引き剥がすせん断方向の力については必要としないので、小さな力だけで扉100と受金具5との係止状態(停止状態)を容易に解除することができる。
【0109】
また、戸当り装置300では、付勢力の強い第2バネ80、または、付勢力の弱い第2バネ80に交換するだけで、扉100と受金具5との係止状態(停止状態)を解除するために扉100を移動する際の力の大きさを容易に変更することができる。
【0110】
(2-2)第2の実施の形態
第2の実施の形態においては、戸当り装置300の構成は同一であるが、図13(A)および(B)に示すように、第1の実施の形態における受金具9に代えて新たな受金具190が設けられている。したがって、戸当り装置300の構成についての説明は省略し、受金具190の構成についてのみ説明する。
【0111】
図3との同一部分に同一符号を付した図13に示すように、受金具190は、受金具9と同様に、金属等の磁性体からなり、円盤形状または略円盤形状の床取付体91と、円盤形状または略円盤形状の受金具本体195と、を有している。ここで、床取付体91は、第1の実施の形態と同一であるため、説明を省略する。
【0112】
受金具本体195は、円盤形状または略円盤形状のベース195aと、そのベース195aの上に載置され、一方(矢印a方向)が開口し他方(矢印b方向)が閉塞した被係止部196と、が一体に形成されている。ベース195aには、後述する係止部60の移動体61(円筒体62)が下降した際に当接される平坦な当接面195amを有している。
【0113】
ベース195aの裏面には、床取付体91の突起部91cと対応する位置に爪部(図示せず)が設けられている。したがって受金具本体195のベース195aの爪部と、床取付体91の突起部91cとが嵌合することにより両者は一体に取り付けられる。
【0114】
被係止部196は、平面視C字形状または平面視略C字形状の突状部分196dと、傾斜部としての第1突起197、および、傾斜部としての第2突起198からなる。突状部分196dは、ベース195aの外周縁に沿って設けられている。突状部分196dは、一方の端部196aから他方の端部196bまで弧状に繋がっており、一方の端部196aと他方の端部196bとの間が被係止部196の開口部196cを為している。
【0115】
また、突状部分196dは、移動体61(円筒体62)の外周面と接触することが可能な内周面196dtを有している。突状部分196dの内周面196dtは、ベース195aの当接面195amから上側(矢印a方向)へ垂直に延びる平坦な面である。突状部分196dの内周面196dtは、移動体61(円筒体62)の外周面と接触した状態が外れない程度の所定の高さを有している。
【0116】
また、被係止部196は、ベース195aの中央付近に対し、開閉方向(矢印ab方向)に沿って一定の間隔に設けられた平面視菱形形状または平面視正方形状の第1突起197、および、第2突起198を有している。第1突起197および第2突起198は、互いに同一形状および同一サイズであり、両者は同様の角度でベース195aの当接面195amの上に配置されている。
【0117】
図14に示すように、開閉方向(矢印ab方向)に平行な第1突起197と第2突起198との間隔L2は、係止部60の移動体61(円筒体62)の直径よりも小さい。つまり、移動体61(円筒体62)が第1突起197と第2突起198との間で係止可能な間隔であればよい。
【0118】
開閉方向(矢印ab方向)に平行な第2突起198と被係止部196との間隔L3(図13)は、第1突起197と第2突起198との間隔L2と同じである。ただし、これに限るものではなく、移動体61(円筒体62)が第2突起198と突状部分196dとの間で係止可能な間隔であれば、間隔L3が間隔L2よりも大きくてもよく、または、小さくてもよい。
【0119】
第1突起197は、平面視菱形形状または正方形状からなり、係止部60の移動体61(円筒体62)と傾斜した状態で接触する傾斜面197a、197bを有している。この場合、移動体61(円筒体62)と傾斜面197a、197bとは点接触に近い状態となる。
【0120】
第1突起197の傾斜面197aは、移動体61(円筒体62)と最初に接触する1番目の面であり、傾斜面197bは、移動体61(円筒体62)が傾斜面197aを乗り越えた後に接触する2番目の面である。
【0121】
傾斜面197aおよび傾斜面197bは、開閉方向(矢印ab方向)に対して斜めに傾斜した面である。また、傾斜面197aおよび傾斜面197bは、ベース195aの当接面195amから上側(矢印e方向)に向かって垂直に延びる平坦な面である。なお、傾斜面197cおよび傾斜面197dについても同様である。
【0122】
因みに、第1突起197の傾斜面197cは、傾斜面197bと対向する位置に設けられ、傾斜面197dは傾斜面197aと対向する位置に設けられている。しかしながら、第2の実施の形態において、これらの傾斜面197cおよび傾斜面197dと移動体61(円筒体62)とが接触することはない。
【0123】
なお、受金具190においては、開閉方向(矢印ab方向)に沿ってベース195aの中心および第1突起197、第2突起198の中心を通る仮想線CLに対し線対称となるように第1突起197、第2突起198、および、突状部分196dが形成されている。
【0124】
これにより、扉100の取付位置が第2の実施の形態と逆になった場合であっても、受金具190を適用することが可能であり、この場合に傾斜面197cおよび傾斜面197dが用いられる。
【0125】
第2突起198は、第1突起197と同様に、平面視菱形形状または正方形状からなり、係止部60の移動体61(円筒体62)と傾斜した状態で接触する平坦な傾斜面198a、198bを有している。
【0126】
第2突起198の傾斜面198aは、上述した第1突起197を乗り越えた移動体61(円筒体62)と最初に接触する1番目の面である。ところで、移動体61(円筒体62)は、第1突起197における1番目の傾斜面197aを乗り越えると、第1突起197における2番目の傾斜面197bと、次の第2突起198における1番目の傾斜面198aとの間に入り込み、その双方と接触した係止状態となる(図14および図16(C))。
【0127】
この場合、移動体61(円筒体62)は、ホルダ50を介して第2バネ80の付勢力により戸先側(矢印c方向)へ付勢されているため、移動体61(円筒体62)と第1突起197および第2突起198との係止状態が維持される。
【0128】
また、移動体61(円筒体62)は、第2突起198における1番目の傾斜面198aを乗り越えると、第2突起198における2番目の傾斜面198bと、突状部分196dの内周面196dtとの間に入り込み、その双方と接触した係止状態となる(図16(E))。
【0129】
なお、第2突起198の傾斜面198aおよび傾斜面198bにおいても、開閉方向(矢印ab方向)に対して斜めに傾斜した面である。また、傾斜面198aおよび傾斜面198bは、被係止部196におけるベース195aの当接面195amから上側(矢印e方向)に向かって垂直に延びる平坦な面である。なお、傾斜面198cおよび傾斜面198dについても同様である。
【0130】
因みに、第2突起198の傾斜面198cは、傾斜面198bと対向する位置に設けられ、傾斜面198dは傾斜面198aと対向する位置に設けられている。しかしながら、第2の実施の形態において、これらの傾斜面198cおよび傾斜面198dと移動体61(円筒体62)とが接触することはない。
【0131】
<第2の実施の形態における扉装置の動作および効果>
第2の実施の形態においては、図15(A)乃至(C)および図16(A)に示すように、扉100の開方向(矢印b方向)への移動によって戸当り装置300と受金具190とが対向配置されると、マグネット65の磁気作用により係止部60の移動体61(円筒体62)がホルダ50から下側(矢印f方向)へ下降し、ベース195aの当接面195amと当接する。
【0132】
この場合、係止部60の移動体61(円筒体62)は、受金具190における第1突起197の傾斜面197aと最初に接触する。その後、図16(B)に示すように、扉100の開方向(矢印b方向)への更なる移動によって、移動体61(円筒体62)は第2バネ80の戸先側(矢印c方向)への付勢力に抗して第1突起197の傾斜面197aに沿って吊元側(矢印d方向)へ移動する。
【0133】
その後も扉100の開方向(矢印b方向)への更なる移動により、移動体61(円筒体62)はやがて第1突起197の傾斜面197aを乗り越え、図16(C)に示すように、第1突起197の傾斜面197bと第2突起198の傾斜面198aとの間に入り込む。
【0134】
このとき、移動体61(円筒体62)は第2バネ80の戸先側(矢印c方向)への付勢力によって第1突起197の傾斜面197bおよび第2突起198の傾斜面198aの双方と接触した係止状態が維持される。すなわち、移動体61(円筒体62)が第1突起197と第2突起198との間に係止されることになり、扉100の開方向(矢印b方向)への移動が停止され、この状態が維持される。
【0135】
ところで、扉100の開方向(矢印b方向)への開動作が非常に強く行われ、第1突起197および第2突起198だけで扉100の開動作の勢いを全て吸収することができない場合、図16(D)に示すように、移動体61(円筒体62)は第2突起198の傾斜面198aを乗り越える。
【0136】
これにより移動体61(円筒体62)は、図16(E)に示すように、第2突起198の傾斜面198bと突状部分196dの内周面196dtとの間に入り込む。このとき、移動体61(円筒体62)は第2バネ80の戸先側(矢印c方向)への付勢力によって第2突起198の傾斜面198bおよび突状部分196dの内周面196dtの双方と接触した係止状態が維持される。この場合、第2突起198の傾斜面198bと突状部分196dの内周面196dtとの間のスペースが移動体61(円筒体62)の最終的な収容空間となる。
【0137】
これにより、移動体61(円筒体62)が第2突起198および突状部分196dの双方によって係止されることになり、扉100の開方向(矢印b方向)への移動が完全に停止され、その停止状態が維持される。
【0138】
このように第2の実施の形態においては、扉100が開方向(矢印b方向)へ移動された場合、その開動作の勢いが強い場合であっても、係止部60の移動体61(円筒体62)が受金具190の第1突起197、第2突起198によって2段階に分けて係合し、突状部分196dの内周面196dtで最終的に停止することができる。
【0139】
すなわち、受金具190においても、第1突起197および第2突起198が第2バネ80の付勢力に抗して移動体61(円筒体62)を乗り越えさせるための第1の実施の形態における傾斜部96bと同様の役割を担っている。
【0140】
したがって、受金具190は、扉100の開動作の勢いを第1突起197および第2突起198によって段階的に弱めることができる。これにより第2の実施の形態における扉装置10では、扉100の開動作時に騒音や衝撃を生じさせることなく第1突起197および第2突起198の間、または、第2突起198と突状部分196dとの間の何れかの位置で扉100を係止して確実に停止させることができる。
【0141】
また、第2の実施の形態における扉装置10においても、係止部60の移動体61(円筒体62)がマグネット65の吸着力によって受金具190におけるベース195aの当接面195amに当接された状態が維持されたままである。
【0142】
このため、移動体61(円筒体62)と受金具190におけるベース195aの当接面195amとの間の磁気による吸着力が低下することなく、扉100の開動作の勢いを安定して吸収することができるので、扉100を騒音および衝撃なく被係止部196において確実に係止して停止させることができる。
【0143】
第2の実施の形態における戸当り装置300においても、第1の実施の形態と同様に、移動体61(円筒体62)が第1突起197および第2突起198を乗り越えるために発生する第2バネ80の付勢力に抗する力と、マグネット65により受金具5の当接面95amに吸着された移動体61(円筒体62)を引き剥がすせん断方向の力の2種類が同時ではなく順番に必要となる。
【0144】
したがって、第2の実施の形態における戸当り装置300であっても、扉100と受金具5との係止状態を維持または解除するために従来のような大きな力を必要とせずに済む。特に、第2の実施の形態における戸当り装置300では、マグネット65により受金具5の当接面95amに吸着された移動体61(円筒体62)を引き剥がすせん断方向の力については必要としないので、小さな力だけで扉100と受金具5との係止状態(停止状態)を容易に解除することができる。
【0145】
また、第2の実施の形態における戸当り装置300においても、付勢力の強い第2バネ80、または、付勢力の弱い第2バネ80に交換するだけで、扉100と受金具5との係止状態(停止状態)を解除するために扉100を移動する際の力の大きさを容易に変更することができる。
【0146】
(3)他の実施の形態
なお、上述した第1および第2の実施の形態においては、受金具9または受金具190を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図17(A)および(B)に示すように、その他種々の構成からなる受金具220、または、受金具250を用いるようにしてもよい。
【0147】
図17(A)に示すように、受金具220では、互いに対向して配置された2つの傾斜部221a、互いに対向して配置された2つの傾斜部221b、および、収容空間221sを有する円形部221cからなる被係止部222を有している。この受金具220では、第2の実施の形態と同様に、2段階に分けて係止部60の移動体61(円筒体62)と係合して係止させることができる。
【0148】
図17(B)に示すように、受金具250では、互いに対向して配置された2つの傾斜部251b、および、円形部251cからなる被係止部251を有している。この受金具250では、円形部251cの収容空間251sが移動体61(円筒体62)の直径の2倍以上の面積を有している。この場合、係止部60の移動体61(円筒体62)の大きさが変更された場合であっても対応することが可能である。
【0149】
このように、受金具9、190、220、250のような種々の形状を有する被係止部96、196、222、251を有してもよく、要は、係止部60の移動体61(円筒体62が第2バネ80の付勢力に抗して乗り越える傾斜部96b、第1突起197および第2突起198、傾斜部221a、221b、傾斜部251b等を有していればよい。
【0150】
また、上述した第1および第2の実施の形態においては、第1弾性体として圧縮コイルバネからなる第1バネ70および第2弾性体として圧縮コイルバネからなる第2バネ80を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、圧縮コイルバネではなく、ゴム等からなる円柱状または円筒状の弾性体であってもよく、圧縮コイルバネからなる第1バネ70、第2バネ80に限定しなくてもよい。
【0151】
また、本発明に係る戸当り装置300は、本実施の形態に限定されるものではない。なお、その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の戸当り装置300を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0152】
100…戸体(扉)、200…枠体、300…戸当り装置、4…床面、9,190,220,250…受金具、10…扉装置、30…ケース、30s…収容空間、31…ベースプレート、33…ケース本体、40…蓋、41…蓋本体、42…爪部、43…脚部、50…ホルダ、51…正面壁部、52…背面壁部、53…側壁部、54…底壁部、55…筒状壁、60…係止部、61…移動体、62…円筒体、63…フランジ部、65…マグネット、70…第1バネ、80…第2バネ、91…床取付体、195…受金具本体、195a…ベース、195am…当接面、196…被係止部、196c…開口部、196t…内周面、197…第1突起、197a乃至197d…傾斜面、198…第2突起、198a乃至198d…傾斜面。
図1
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