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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125710
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】長尺の照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20240911BHJP
   F21S 4/22 20160101ALI20240911BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20240911BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20240911BHJP
   F21V 3/06 20180101ALI20240911BHJP
   F21V 23/06 20060101ALI20240911BHJP
   F21Y 103/10 20160101ALN20240911BHJP
   F21Y 107/70 20160101ALN20240911BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240911BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20240911BHJP
【FI】
F21S2/00 230
F21S4/22
F21V19/00 450
F21V19/00 150
F21V3/00 510
F21V3/06
F21V3/00 100
F21V23/06
F21Y103:10
F21Y107:70
F21Y115:10 300
F21Y115:15
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033710
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000111166
【氏名又は名称】DNライティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】押部 晃汰
【テーマコード(参考)】
3K013
3K014
【Fターム(参考)】
3K013AA02
3K013BA01
3K013CA05
3K013CA10
3K014AA01
3K014HA03
(57)【要約】
【課題】
配線パターンが形成された可撓性の長尺の基板上に複数の発光素子を所定の間隔を空けて配置した照明基板と、照明基板を貫通孔に収容し、透光部を有する柔軟なチューブを備える長尺の照明装置において、照明基板を曲げ禁止方向へ曲げることにより生じる照明基板の破損の問題を改善する。
【解決手段】
可撓性の長尺の基板11上に複数の発光素子12を所定の間隔を空けて配置した照明基板(11、12)と、照明基板(11、12)を貫通孔Hに収容し、透光部T1及びT2を有する柔軟なチューブ13を備える長尺の照明装置1の、貫通孔Hの照明基板(11、12)の裏面側に、チューブ13に固設された可撓性の補強板14を備える。この補強板14により、曲げ禁止方向への曲げの力への耐性を獲得し、さらには、曲げ方向への曲げやねじれの力への耐性をも獲得し、照明基板(11、12)の破損を防ぐことができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンが形成された可撓性の長尺の基板の表面上に複数の発光素子を所定の間隔を空けて配置した照明基板と、該照明基板を収容する長手方向に延びた貫通孔を有するチューブであって、前記発光素子から射出される照明光を前記貫通孔の前記照明基板の表面側に透過する透光部を有する柔軟なチューブと、該チューブの両端を閉じるとともに前記配線パターンの両端と電気的に接続された一対のコネクタを備えたエンドキャップとから成る長尺の照明装置において、
前記貫通孔の、前記照明基板の裏面に接する面上に、前記照明基板と平行に延びる可撓性の補強板を備えることを特徴とする長尺の照明装置。
【請求項2】
前記照明基板が、該照明基板の前記発光素子数個分の間隔をおいた位置に、該照明基板を切断して長さを変えることを可能にする複数の電極を備え、該照明基板の裏面に該電極の位置を示す印を有し、前記チューブが、前記照明基板の裏面側に、該チューブの外から前記照明基板の裏面を視認可能とするための透光部を有する、請求項1記載の長尺の照明装置。
【請求項3】
前記照明光の照射方向が前記照明基板の表面側前方方向である、請求項1または2記載の長尺の照明装置。
【請求項4】
前記照明光の照射方向が前記照明基板の幅方向の一方向である、請求項1または2記載の長尺の照明装置。
【請求項5】
請求項1記載の長尺の照明装置の製造方法であって、
前記貫通孔の、前記照明基板の裏面に接する位置に、前記補強板をインサート成形により形成する工程と、
次いで、前記チューブの端部から前記照明基板を前記貫通孔へ挿通する工程
を含む、長尺の照明装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関する。特に、可撓性の長尺の基板上に複数の発光素子を所定の間隔を空けて配置した照明基板と、透光部を有する柔軟なチューブとから成る長尺の照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業製品におけるデザインの重要性が高まっており、照明装置においても様々なデザインのものが登場し、落ち着きと統一感のある空間づくりに活用されている。このような照明装置では、空間の美観を損ねることがないように、間接照明となるよう天井や壁の縁に沿って配設されることが一般的であり、省スペース等の観点から、複数の発光素子を所定の間隔を空けて配置した可撓性の長尺の照明基板を透光性の可撓性樹脂で覆った照明装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
このような可撓性の長尺の照明基板は、基板面に対して縦方向(垂直方向)への曲げに対し可撓性を有するものであって、基板面に対して横方向(幅方向)への曲げに対しては可撓性を有しないことは構造上明らかである。
可撓性の長尺の照明基板を可撓性樹脂で覆った長尺の照明装置は、例えば図7に示すように、湾曲した縁に配設される場合もあり、また、運搬・配設作業中に大きく撓んでしまう場合がある。このとき照明基板に、基板面に対して縦方向(垂直方向)(以下、「曲げ方向」という)に曲げの力が加わるのであれば問題は無いが、基板面に対して横方向(幅方向)(以下、「曲げ禁止方向」という)に曲げの力が加わると照明基板を破損(「破断や損傷」を意味する。以下同じ)する虞が生じる。
【0004】
この曲げ方向と曲げ禁止方向は、特許文献1の図2のように長方形の断面形状を持つ長尺の照明装置であれば判別がしやすいが、断面形状の縦横比が1に近い(例えば、特許文献1の図7(B)、図8(A))長尺の照明装置ではその判別が難しく、運搬・配設作業中に不用意に曲げ禁止方向へ曲げてしまったり、特に長いものの場合には、自重で曲げ禁止方向に曲がってしまったりして、照明基板を破損してしまうことがある。特に、省スペース化やデザイン的な観点から、正方形や円形に近い断面形状を有する長尺の照明装置への需要が存在しており、看過できない問題である。
また、例えば、正方形の断面形状の長尺の照明装置では、図4図5に示すように、外形がよく似ているが照射方向が90度異なる2つのタイプが存在し、それらを混同して曲げ禁止方向へ曲げてしまうことも考えられる。
さらに、天井や壁等への配設の仕方によっては、特に長い照明装置の場合、作業中に自重により曲げ禁止方向への垂れ下がり、照明基板が曲げ禁止方向に撓んでしまうことによる破損の可能性も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-78044号公報
【特許文献2】特開2014-207182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のように照明基板を曲げ禁止方向へ曲げることにより生じる破損の問題を改善する装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の照明装置は、配線パターンが形成された可撓性の長尺の基板の表面上に複数の発光素子を所定の間隔を空けて配置した照明基板と、照明基板両端を収容する長手方向に延びた貫通孔を有するチューブであって、発光素子から射出される照明光を貫通孔の照明基板の表面側に透過する透光部を有する柔軟なチューブと、チューブの両端を閉じるとともに配線パターンの両端と電気的に接続された一対のコネクタを備えたエンドキャップとから成る長尺の照明装置において、貫通孔の、照明基板の裏面に接する面上に、基板と平行に延びる可撓性の補強板を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
ここで、「柔軟なチューブ」とは、「持ち上げたときに曲げ禁止方向に勝手に曲る程度の柔軟性を有するチューブ」で、例えば、短手方向断面の形状が円形、正方形、台形、T形等で、長手方向に貫通した貫通孔を有するシリコン、軟質アクリル等の軟質素材のものを意味する。
【0009】
ここで、本発明の照明装置における「所定の間隔」とは、予め定められた、発光素子の間の任意の空間距離を意味するものであり、たとえば、等間隔や、規則性を有する可変間隔を含む。
【0010】
ここで、「可撓性」とは、部材が外力によりしなやかに撓む性質のことをいう。
【0011】
また、本発明の照明装置は、照明基板の発光素子数個分の間隔をおいた位置に、照明基板を切断して長さを変えることを可能にする複数の電極を備え、照明基板の裏面にその電極の位置を示す印を有し、チューブが、照明基板の裏面側にチューブの外から照明基板の裏面を視認可能とするための透光部を備えるようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の照明装置は、照明光の照射方向が照明基板の表面側前方方向、又は照明基板の幅方向の一方向であるチューブを備えるようにすることができる。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の照明装置の製造方法は、チューブの貫通孔の、照明基板の裏面に接する位置に、補強板をインサート成形により固設し、次いでチューブの端部から照明基板を貫通孔へ挿通することを特徴とするものである。
【0014】
なお、この種の長尺の照明装置において照明基板に補強部を設けたものとして、本願出願人による特許文献2があるが、そこに開示する発明は、可撓性を有する照明基板上の(基板よりも可撓性が小さい)発光素子に、発光素子の曲げ耐性を超える曲げ力が作用することによる発光素子や発光素子と基板との接合部の破損を防ぐことを目的とし、そのために、照明基板の発光素子部分に対し耐曲げ補強部を個別に設けたものである。
よって、そこには本発明のように、照明基板自体の曲げ禁止方向への曲げの力による破損を防ぐ目的で、照明基板に固定されない、照明基板と平行に延びる補強板を導入する、という思想も構成もまったく存在せず、本発明とは全く別異のものである。したがって、特許文献2には本発明の開示も示唆も全くなく、本発明の特許性に影響するものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の照明装置によれば、照明基板と平行に可撓性の補強板を備えることによって長尺の照明装置の曲げ禁止方向への曲げを抑制することができ、発光素子を実装した照明基板の破損を防ぐことができる。
【0016】
また、本発明の照明装置によれば、長尺の照明装置を底面側から印を視認し、電極位置で切断可能することで、所望の長さとすることができる。
【0017】
また、本発明の照明装置は、照明光の照射方向を照明基板の表面側前方方向とするものに限定されず、照明基板の幅方向とするものにすることもでき、照明空間のニーズに応じていずれかを選択することができるし、またこれらの2つのタイプを組み合わせて設置することもできる。
【0018】
また、本発明によれば、照明装置の製造において、可撓性の補強板を固設した柔軟なチューブの端部から、長尺の照明基板を貫通孔へ挿通する際、補強板の存在により、摩擦が少なく容易に挿通することができる。このことについては、発明を実施するための形態において詳述する。
【0019】
その他、可撓性の補強板を備えることによる本発明の効果は、発明を実施するための形態において詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】照明装置の一部断面にした平面図
図2】照明装置の正面図
図3】照明装置の底面図
図4】照明装置のA-A断面図
図5】実施例2の照明装置のA-A断面図
図6】実施例3の照明装置のA-A断面図
図7】什器内の照明装置を示す図
図8】実験の説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態である照明装置及びその主な構成部材について、図1~4を用いて詳細に説明する。図4は、図2の基板上の発光素子を通る切断面を含む線A-Aから観た断面図である。ただし、縮尺及び寸法は説明の便宜のため変更している。
【0022】
[照明装置]
照明装置1は、配線パターンが形成された可撓性の長尺な基板11の表面上に複数の発光素子12を所定の間隔を空けて配置した照明基板(11、12)と、照明基板(11、12)を収容する長手方向に延びた貫通孔Hを有するチューブであって、発光素子12から射出される照明光を貫通孔Hの照明基板(11、12)の表面側に透過する透光部T1と貫通孔Hの照明基板(11、12)の裏面側に視認のための透光部T2を有する柔軟なチューブ13と、貫通孔Hの、照明基板(11、12)の裏面に接する面上に、照明基板(11、12)と平行に延びる可撓性の補強板14と、チューブ13の両端を閉じるとともに配線パターンの両端と電気的に接続された一対の電源ケーブルC1とコネクタC3を備えたエンドキャップC2とから主に構成されている。
なお、図1~3においては、照明基板(11、12)やチューブ13等の図示の都合上、電源ケーブルC1をチューブ13に対し90度曲げて描いて図示しているが、実際の照明措置はこれに限られない。
【0023】
[基板]
基板11は、銅、ポリイミド等の材料からなる可撓性を有する長尺なFPC基板(Flexible Printed Circuits Board)である。
基板11の上記材質は、本実施形態における一例であり、本発明を適用する上においては、可撓性を有する材料であれば特に限定されるものではない。
【0024】
基板11は、長さ方向の寸法が45~6500mm程度、高さ方向の寸法が0.1~1.0mm程度、幅方向の寸法が5~20mm程度の範囲である。なお、長さ方向の寸法45mmとは最小サイズとして挙げており、実際本発明の効果(自重によるチューブの撓みの抑制等)が生じるのは、チューブの長さが300mm程度以上からである。
基板11の上記寸法範囲は、本実施形態における一例であり、本発明を適用する上においては、特に限定されるものではない。
【0025】
基板11には、発光素子12、電源ケーブルC1、不図示の各種チップ部品がそれぞれ半田付けされるため、発光素子12の半田付け位置に対応させた不図示の発光素子電極、基板11の両端に電源電極11a、チップ部品の半田付け位置に対応した不図示の部品電極がそれぞれ形成されている。
そして、基板11には、これらの各電極を介して発光素子12、電源ケーブルC1、不図示の各種チップ部品を電気的に接続するための配線パターンが形成されている。配線パターンはプリント印刷等の公知の方法により形成される。
【0026】
また、基板11には、配線パターン上の発光素子12の略中間位置に所定の間隔で予備電極11bが形成されている。この予備電極11bを図1で一点鎖線で示す略中央位置Lで切断することにより、照明装置1を所望の長さに調整できる。切断された予備電極11bは、電源ケーブルC1が接続されることにより、新たな電源電極11aとなる。
【0027】
本実施形態における予備電極11bは、発光素子12の間隔の6倍の間隔で形成されている。したがって、本実施形態における基板11は、6つの発光素子12が配置された基板11の長さ単位で調整できる。本実施形態において、切断可能箇所は45mm毎に設けられている。なお、図3における印11cは、切断箇所Lを見つける際の目印であり、切断箇所Lは2つの印11cの間に存在する。
以上に説明した基板11の上記単位長等は、本実施形態における一例であり、予備電極11bの間隔を変更することにより、任意の個数の発光素子12に対応する単位長にしてもよい。
【0028】
以上、説明した各電極は、+側電極および-側電極からなる電極対であってもよく、これらの+側電極および-側電極に、明るさ、発光色、発光順序等を調整する単数もしくは複数の制御電極を加えた構成であってもよい。また、基板11には各電極部分を除いて絶縁性のコーティングが施されている。
【0029】
[発光素子]
本実施形態における発光素子12は、少発熱量・長寿命の観点より半導体発光素子(LED素子)で構成されている。なお、発光素子12を半導体発光素子(LED素子)とすることは、本実施形態における一例であり、本発明の目的を達成するものであれば、例えばCOB(chip-on-board)を利用した発光素子や有機EL(Electro-Luminescence)を利用した発光素子(OLED)(Organic Light Emitting Diode)など、今後広く実用化される可能性のある発光体も使用可能であることは言うまでもない。
【0030】
以後に説明する発光素子12における長さ、幅および高さの各方向とは、基板11に配置された状態での基板11の長さ、幅、厚みの各方向に対応する方向である。本実施形態における発光素子12は、長さ方向の寸法が3.5mm程度、幅方向の寸法が2.8mm程度、高さ方向の寸法が0.7mm程度である。
上記の寸法範囲は、本実施形態における一例であり、本発明の適用においては、発光素子12の各方向の寸法は特に限定されるものではない。
【0031】
発光素子12は、基板11上に長さ方向に所定の間隔を空けて配置されている。本実施形態における発光素子12は長さ方向のピッチが7.5mm程度である。
上記発光素子12のピッチ範囲は、本実施形態における一例であり、本発明の適用においては、隣り合う発光素子12同士が間隔を有するように発光素子12の長さ方向の寸法より大きい値であれば、所望の明るさや消費電力等に応じて変更可能であり、特に限定されるものではない。本実施形態における発光素子12は、隣り合う発光素子12と5~15mm程度の間隔を有している。
【0032】
[チューブ]
チューブ13は、貫通孔Hを備える中空のチューブ状の樹脂から成り、所定の方向に透明又は半透明(乳半)の樹脂からなる透光部T1及びT2を有する。チューブ13は、複数の発光素子12が配置された基板11をチューブ13の端部から貫通孔Hへ挿通し、その両端をエンドキャップC2で封止し、基板11をチューブ13内に保持し、貫通孔Hの基板11の裏面に接する面上に基板11と平行に延びる可撓性の補強板14を備える。
このように、チューブ13は、基板11を保護するカバーの役割、発光素子12の照明光の指向性を定める役割、補強板14を固定する役割を担う。
チューブ13は柔軟なチューブであり、材質としては、一例としてシリコン樹脂、軟質アクリル樹脂が挙げられるが、本発明の適用においては、特に限定されるものではない。
【0033】
[補強板]
補強板14は、チューブ13の貫通孔Hの基板11の裏面に接する位置に、インサート成形により固設される。補強板14も所望の可撓性が必要であり、また、補強に資する強度が必要である他、(1)基板11からの熱(基板の設計に依存するが、概して100℃以下)に耐えられること、(2)基板11からの光で劣化しにくいこと、(3)透明であること、が必要である。そのため、材質としては、ポリカーボネート樹脂が挙げられ、アクリル樹脂やPET(ポリエチレンテレフタラート)も挙げられるが、本発明の適用においては、特に限定されるものではない。また、補強板14のチューブ13への固設方法もインサート成形に限られない。
【0034】
補強板14の長さ方向の寸法は、基板11の長さ方向の寸法と同じか幾らか短くとも良い。また、補強板14の幅方向の寸法は、基板11の幅方向の寸法と同じか幾らか長くとも短くとも良い。本実施形態における補強板14は、基板11の幅方向の寸法と同じ幅方向の寸法を有しているが、これは本実施形態における一例であり、本発明の適用においては特に限定されるものではない。また、補強板14の高さ方向の寸法は、本実施形態では、0.3mm程度であるが、これは本実施形態における一例であり、本発明を適用する上では特に限定されるものではない。
【0035】
[電源ケーブル]
電源ケーブルC1は、一端にコネクタC3が接続され、他端をエンドキャップC2上の貫通孔に挿通させて電源電極11aに半田付けされる。そして、電源ケーブルC1はコネクタC3を介して外部電源と接続される。2本の電源ケーブルC1が基板11の両端にそれぞれ接続され、両端から発光素子12へ給電するため、安定した給電となる。
また、電源ケーブルC1は、+側であるか-側であるかを判別し易くするため、例えば、「+側:白色、-側:灰色」のように色分けされていることが望ましいが、特に限定されるものではない。
【0036】
照明装置1の基板11、発光素子12、チューブ13、補強板14等について、図4を参照して、さらに詳しく説明する。
【0037】
本実施形態における照明装置1は、図4に示すように、概ね正方形の断面であり、貫通孔Hに、基板11に発光素子12を実装した照明基板(11、12)が配置され、基板11の裏面側には、チューブ13に固設された補強板14を備え、チューブ13は台形形状の透光部T1及び小さい四角形の形状をした透光部T2とそれ以外の部分とで構成されている。
【0038】
発光素子12からの照明光の照射方向は、台形形状の透光部T1を介し、基板11の表面側前方方向である(図4の矢印)。
ここで、基板11の裏面側の小さい四角形の形状の透光部T2は、照明装置1を所望の長さに切断する際に、切断箇所である電極11bの位置を示す2つの印11c(図3)の略中央位置L(図1)を視認する必要があるために設けられている。同様の理由から、補強板14も印11cを視認できる程度の透明度が必要である。
前述のとおり、基板11は、長さ方向の寸法が45~6500mm程度であることから、照明装置1の長さは、6500mm程度にまで及ぶ。用途に応じて各種の長さの照明装置が製造されるが、裏面側の透光部T2と印11cを設けることで、製造時に限らず、配設する現場においても、作業者が所望の長さに切断してエンドキャップC2を取り付けることができるようになっている。
【0039】
チューブ13の両側面には1条の溝gがそれぞれ形成されている。溝gは、照明装置1を天井や壁その他の取付箇所に存在する取付レール(不図示)の突起に嵌め込むことにより配設するためのものであるが、照明装置1の配設形態は特に限定されるものではなく、公知なクリップ等を用いて配設してもよい。
【0040】
以上、図1図4に示した実施形態を「実施例1」という。
【0041】
図5は、実施例1の変形例である「実施例2」についての、図2の線A-Aから観た断面図に相当する図である。実施例2の照明装置の特徴は、基板11をチューブ13に縦方向となるよう挿通し、発光素子12からの照明光の照射方向が、基板11の幅方向の一方向であること(図5の矢印)、つまり、実施例1の照明装置とは照射方向が90度傾いているように透光部T1を設けたことにある。換言すると、実施例1の照明装置では曲げ禁止方向と照射方向が垂直であり、実施例2の照明装置では曲げ禁止方向の一方向が照射方向である。
【0042】
したがって、空間の求める照明形態によって実施例1の照明装置と実施例2の照明装置を使い分けることで、よりデザイン性に富む照明効果を得ることができる。さらには、実施例1の照明装置と実施例2の照明装置を組み合わせることで立体的な照明効果をも得ることができる。
【0043】
図6は、実施例3の照明装置であり、実施例1の照射方向と実施例2の照射方向の特徴を合わせ持つ。実施例3の照明装置も、実施例1、実施例2の照明装置とは別に、又はそれらと組み合わせることで、より多様な照明のニーズに応えることができる。
【0044】
本発明の照明装置の製造方法に関する特徴を説明する。
【0045】
照明装置1は、チューブ13の貫通孔Hの、基板11の裏面に接する位置に補強板14をインサート成形により固設する工程と、次いで、チューブ13の端部から基板11を貫通孔Hへ挿通する工程を経て製造される。基板11は、チューブ13に固定されずに収容されており、チューブ13の両端のエンドキャップC2により封止されている。
【0046】
このチューブの端部から基板を貫通孔へ挿通する工程を含む照明装置の製造方法は、従来の照明装置の製造方法の一形態であるが、補強板を有しない従来の照明装置の製造においては、チューブの端部からの基板の挿入を試みるとすると、貫通孔をまっすぐに保ちづらく、貫通孔の樹脂の摩擦抵抗があるため、スムーズに挿通することは容易ではなかった。特に、需要に応じ、より長尺の照明装置(例えば、長いものでは6.5mにも及ぶ)を製造するとなると、長尺の基板のスムーズな挿通のために、それと同等の長さを有する柔軟なチューブの貫通孔をまっすぐに保つ装置性能が必要となり、また、まっすぐに保てるとしても、樹脂の摩擦抵抗は長尺であることからより一層大きいものとなり、挿通には困難が伴う。
そこで、その前段に、本発明のようにチューブの貫通孔に補強板を固設する工程を設けておくと、柔軟なチューブの貫通孔をまっすぐに保てる上に、補強板はチューブより摩擦抵抗が少ない部材であるため、スムーズな挿通が実現できる。
よって、本発明の照明装置の製造方法は、本発明に特有な有利な効果を有していると言える。
【0047】
[その他の効果]
本発明による長尺の照明装置は、チューブに固設された補強板を備えることで、上述した曲げ禁止方向への曲げの力への耐性や、製造の工程上の利点があることのほか、以下のような効果を有する。
【0048】
(1)照明装置の長尺の柔軟なチューブのねじれを抑制することができ、このことにより、発光素子を実装した照明基板のねじれの応力による破損の可能性をも防ぐことができる。
つまり、照明基板にかかる応力として、曲げ禁止方向への曲げの力の他、ねじれの応力による破損の可能性を防ぐことができる。
【0049】
(2)照明装置の長尺の柔軟なチューブの伸縮を抑制することができ、このことにより、発光素子を実装した照明基板の曲げ方向への曲げの力に起因する破損の可能性をも防ぐことができる。
照明基板にかかる応力として、曲げ禁止方向への曲げの力について述べてきたが、曲げ方向への曲げの力に起因する破損の可能性をも防ぐことができる。この点につき、以下に詳述する。
【0050】
(実験)
本発明の図4の照明装置に係るチューブAと、比較対象として、チューブAと同一形状・同一材質であって、固設された補強板を有しない点だけが異なるチューブBを用意した。
チューブA、Bそれぞれに、図8のように照明基板Cを挿通し、チューブの片方の端部から照明基板Cが少しはみ出た状態とし、他方の端部を固定した。
チューブBを照明基板Cの表面が内側となるように曲げたところ、曲率を上げるにつれて、チューブBの片方の端部から照明基板Cが発光素子のピッチの長さ分程、チューブの中に引き込まれた。
逆に、チューブBを照明基板Cの表面が外側となるように曲げたところ、曲率を上げるにつれて、チューブBの片側の端部から照明基板Cが発光素子のピッチの長さ分程、さらにはみ出てきた。
同様に、チューブAを照明基板Cの表面が内側・外側となるように曲げたところ、いずれも場合も、照明基板Cに動きは無かった。
【0051】
(考察)
チューブBに関する曲げの実験結果から、チューブBを曲げるとチューブBに伸縮が生じたと考えられる。実際の製品では、照明基板はチューブの両端のエンドキャップで固定されているため、照明基板は動かない。つまり、曲げ方向への曲げの力を加えることであっても、チューブに伸縮が生じ、照明基板を移動させようとする力がそのまま照明基板に応力として働き、照明基板の破損につながる。
一方、チューブAに関する曲げの実験結果から、チューブAが伸縮しようとする力を補強板が受け止めていたと考えられる。照明基板がチューブの両端のエンドキャップで固定されている実際の製品において、曲げ方向への曲げの力を加えても、補強板の存在によりチューブに伸縮は生ぜず、照明基板にも応力は働かないため、チューブの伸縮に起因する照明基板の破損は生じない。
このことは、照明基板がチューブに固定されていて、補強板を有しない従来の照明装置にも当てはまる。すなわち、照明装置に曲げ方向への曲げの力が加わったとき、チューブの伸縮しようとする力がそのまま照明基板に応力として負荷が掛かることとなる。
このような問題を克服している点も、本発明に特有の有利な効果である。
【0052】
近年の空間デザイン重視の観点から、より曲率の高い可撓性を有する照明装置やより長尺の照明装置への需要が存在しており、本発明の照明装置のように補強板を備えることの効果は大変大きいと言える。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、照明用途の分野で有用である。特に、デザイン的に洗練された空間を構成する建築物・内装・什器等で好適に使用される。また、柔軟に曲げられるため電飾用にも適する。
【符号の説明】
【0054】
1 照明装置
11 基板
12 発光素子
13 チューブ
14 補強板
C1 電源ケーブル
C2 コネクタ
C3 エンドキャップ
g 溝
H 貫通孔
T1、T2 透光部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8