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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125714
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】下半身用衣類
(51)【国際特許分類】
   A41B 9/02 20060101AFI20240911BHJP
   A41B 9/04 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
A41B9/02 M
A41B9/02 J
A41B9/04 C
A41B9/04 B
A41B9/02 F
A41B9/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033716
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】古谷 親彦
【テーマコード(参考)】
3B128
【Fターム(参考)】
3B128EB21
3B128EC12
(57)【要約】
【課題】下半身の動きに対して追従しやすく履き心地のよいボクサーパンツを提供する。
【解決手段】ボクサーパンツ100は、ウエストラインが略水平になるように平面上に載置したボクサーパンツ100を腹側から見た場合に、腹側のウエストラインの湾曲長さL(1)に対する、仮想的に会陰部を通る股下線の湾曲長さL(2)の比率が、40%以上80%以下である。股下線の湾曲長さL(2)が従来のボクサーパンツ(概ね40%未満)に比較して極端に長く、会陰部(股下の後側)において伸縮性編地の編地余りを発生させて着用時においてシワを形成して、動作時においてシワが伸長してボクサーパンツにおける裾周りまたは胴周りのズレを好適に抑制することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の伸縮性編地に対して編地縁を接合した下半身用衣類であって、
ウエストラインが略水平になるように平面上に載置した前記下半身用衣類を腹側から見た場合に、腹側のウエストラインの湾曲長さに対する、仮想的に会陰部を通る股下線の湾曲長さの比率が、40%以上80%以下であることを特徴とする、下半身用衣類。
【請求項2】
前記接合を開放して、前記1以上の伸縮性編地の中で太腿の周囲を覆う裾周りを形成する伸縮性編地を、前記ウエストラインが略水平になるように平面上に載置した場合における、裾周りの中心点と裾頂点とを結んだ直線が鉛直線に対して35度以上55度以下であることを特徴とする、請求項1に記載の下半身用衣類。
【請求項3】
太腿の周囲を覆う裾周りを形成する伸縮性編地は、前記会陰部および少なくとも臀部を覆う身頃編地を含む、または、少なくとも臀部を覆う身頃編地と前記会陰部を覆うシック部を形成するシック編地とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の下半身用衣類。
【請求項4】
前記下半身用衣類を形成する伸縮性編地に、腹側中央部の膨出部を形成する前立て編地を含むことを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載の下半身用衣類。
【請求項5】
太腿の周囲を覆う裾周りを形成する伸縮性編地は、前記会陰部および少なくとも臀部を覆う身頃編地を含み、
前記身頃編地は、腹側中央部の膨出部を形成する前立て編地に、前記腹側で接合され、
前記身頃編地の後身頃側から前身頃側へ回り込んだ部位により前記会陰部が覆われることを特徴とする、請求項1に記載の下半身用衣類。
【請求項6】
太腿の周囲を覆う裾周りを形成する伸縮性編地は、少なくとも臀部を覆う身頃編地と前記会陰部を覆うシック編地とを含み、
前記シック編地は、前記身頃編地に前記背中側で接合されるとともに、腹側中央部の膨出部を形成する前立て編地に前記腹側で接合され、
前記シック編地の後身頃側から前身頃側へ回り込んだ部位により前記会陰部が覆われることを特徴とする、請求項1に記載の下半身用衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹部と臀部とを被覆する下半身肌着であるボクサーパンツ(ただし女性用ガードルのような膝上までの丈のロングタイプのボクサーパンツを除く、ショートタイプのボクサーパンツ(ボクサーショーツ))等の下半身用衣類に関し、下半身の動きに対して追従しやすく履き心地のよい下半身用衣類に関する。なお、本発明における下半身用衣類は男性用および女性用に限定されないことに加えて、少なくとも腹部と臀部とを被覆する下半身用衣類であればよく、脚部を備える場合には(丈の長さが膝上までないこと以外は)特に限定されるものではない。また、肌着用であってもスポーツ用であっても構わず、その用途は限定されるものではない。なお、腹部とは主として下腹部を指すものである。また、本願発明の説明において、編地と生地とは限定しないで記載している(生地と記載しても伸縮性が(ほぼ)ない織地ではなく編地伸縮性がある編地であることを示すものである)
【背景技術】
【0002】
伸縮性が大きい(よく伸びてよく縮む)生地および/または緊締力の大きい(伸びにくく締め付けて身体に密着する)生地を採用して、これらの生地を適宜使い分けた下半身用衣類が知られている。なお、この生地としては伸縮性の観点から編地が特に好ましい。このような下半身用衣類の1つとして、肌着が挙げられる。ここで、肌着は、均一な着圧分布で良好なフィット感を確保するとともに、身体の動きに対して突っ張り感やだぶつき感が生じることなく、着用時の美観を向上させる機能を備える。
【0003】
このような肌着の1つであるボクサーパンツは、平面的な基準パターンに沿って裁断された身頃部、マチ部、前立て部の各生地片を縫製することにより構成されている。このような生地片として、日常生活での様々な動作を行なう際に、その動きを妨げないように伸縮性を備えたフライス編等のヨコ編地が用いられることが多い。
【0004】
しかし、身体を平面上に投影したような平面的なパターンに沿って裁断された生地片を縫製して立体形状に仕立て上げても、三次元の複雑な曲面形状を呈する人の腹部、臀部、脚部に対応するのは極めて困難であり、不快な着圧を回避するためにパターンを大きめに構成すると、だぶつきが生じて脚部が臀部側に引き上がったりして着心地が悪くなるばかりか美観が損なわれるという問題点があった。
【0005】
そのため、本願出願人により、この問題点を解決する肌着が開発されて、特許第6672355号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1に開示された下半身用衣類は、第1の方向と前記第1の方向と略直交する第2の方向とで伸縮性が異なる編地を用いた下半身用衣類であって、前記第1の方向の伸縮性が前記第2の方向の伸縮性よりも大きく、前記第1の方向が前記第2の方向よりもよく伸びてよく縮み、平面上にウエストラインが略水平方向になるように載置した前記下半身用衣類を腹側から見た場合に、前記平面上に載置した前記下半身用衣類における左右のラインと前記ウエストラインとの交差部において前記第1の方向が斜め方向であり、平面上にウエストラインが略水平方向になるように載置した前記下半身用衣類を背中側から見て、前記平面上に載置した前記下半身用衣類における前記ウエストラインの左右方向の中点において前記第1の方向が前記ウエストラインと略直交する方向であることを特徴とする。
【0006】
また、特許第5128891号公報(特許文献2)は、ずり上がりを防止できる機能を有するとともに、下半身の各部の特徴に応じたフィット性を付与でき、着用感の良好な男性用下半身衣類を開示する。この特許文献2に開示された男性用下半身衣類は、直交方向の伸長性を相違させたツーウエイ伸縮布を用い、伸縮方向を相違させて裁断した部分布を互いに縫着して形成しており、下端に左右脚回りの裾端部を形成する左右の側部布は、縦方向の伸長性を横方向より大とし、かつ、これら左右の側部布は裾端部となる下端で折り返す2枚重ね布とし、裾端縁を縫着することなく、下端の裾端部から上端のウエスト部までを外側部と肌側部とからなる2枚重ねとし、前記ウエスト部で縫着していることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6672355号公報
【特許文献2】特許第5128891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に開示された下半身用衣類は、下半身の動きに対して追従しやすく履き心地のよい点で非常に好ましく、大変好評を得ている。ただし、製造にあたって生地の方向性に制約を受けるという些細な問題点を備える。一方、特許文献2に開示された男性用下半身衣類は、左右の側部布は裾端部となる下端で折り返す2枚重ね布とし、裾端縁を縫着することなく、下端の裾端部から上端のウエスト部までを外側部と肌側部とからなる2枚重ねとしウエスト部で縫着している構造を採用しているために、着用感が損なわれたり、製造コストが高くなったりするという大きな問題点がある。
【0009】
本発明は、従来技術の上述の問題点(特に特許文献2の問題点)に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、主として腹部と臀部とを被覆する下半身用衣類に関し、下半身の動きに対して追従しやすく履き心地のよい下半身用衣類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る下半身用衣類は以下の技術的手段を講じている。
【0011】
すなわち、本発明に係る下半身用衣類は、1以上の伸縮性編地に対して編地縁を接合した下半身用衣類であって、ウエストラインが略水平になるように平面上に載置した前記下半身用衣類を腹側から見た場合に、腹側のウエストラインの湾曲長さに対する、仮想的に会陰部(股部の後側に略同じ)を通る股下線の湾曲長さの比率が、40%以上80%以下であることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記接合を開放して、前記1以上の伸縮性編地の中で太腿の周囲を覆う裾周りを形成する伸縮性編地を、前記ウエストラインが略水平になるように平面上に載置した場合における、裾周りの中心点と裾頂点とを結んだ直線が鉛直線に対して35度以上55度以下であるように構成することができる。なお、接合を開放すれは伸縮性編地とその型紙とは略同じ形状(編地の伸縮性を考慮して略と記載)であって、かつ、この構成は伸縮性編地自体であってもその型紙であっても特定することが可能であるために、太腿の周囲を覆う裾周りを形成する伸縮性編地の型紙を用いて表現することができる。
【0013】
さらに好ましくは、太腿の周囲を覆う裾周りを形成する伸縮性編地は、前記会陰部および少なくとも臀部を覆う身頃編地を含む、または、少なくとも臀部を覆う身頃編地と前記会陰部を覆うシック部を形成するシック編地とを含むように構成することができる。
【0014】
さらに好ましくは、前記下半身用衣類を形成する伸縮性編地に、腹側中央部の膨出部を形成する前立て編地を含むように構成することができる。
【0015】
さらに好ましくは、太腿の周囲を覆う裾周りを形成する伸縮性編地は、前記会陰部および少なくとも臀部を覆う身頃編地を含み、前記身頃編地は、腹側中央部の膨出部を形成する前立て編地に、前記腹側で接合され、前記身頃編地の後身頃側から前身頃側へ回り込んだ部位により前記会陰部が覆われるように構成することができる。
【0016】
さらに好ましくは、太腿の周囲を覆う裾周りを形成する伸縮性編地は、少なくとも臀部を覆う身頃編地と前記会陰部を覆うシック編地とを含み、前記シック編地は、前記身頃編地に前記背中側で接合されるとともに、腹側中央部の膨出部を形成する前立て編地に前記腹側で接合され、前記シック編地の後身頃側から前身頃側へ回り込んだ部位により前記会陰部が覆われるように構成することができる。
【0017】
さらに好ましくは、前記比率が40%以上80%以下であることにより、前記会陰部において伸縮性編地の編地余りを発生させて着用時においてシワを形成して、動作時において前記シワが伸長して前記下半身用衣類における裾周りまたは胴周りのズレを抑制するように構成することができる。
【0018】
さらに好ましくは、前記下半身用衣類は、下腹部および臀部を少なくとも被覆するとともに、膝上までのロングタイプを除く、ボクサーパンツであるように構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、下半身の動きに対して追従しやすく履き心地のよい下半身用衣類を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るボクサーパンツ100を平面に載置した(理想的または仮想的な)状態における(A)正面図および(B)背面図である。
図2】ボクサーパンツ100の型紙を示す平面図(紙面表面が肌に当接する面)である。
図3】ボクサーパンツ100が備える技術的特徴を説明するための身頃生地またはその型紙を示す平面図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係るボクサーパンツ200を平面に載置した(理想的または仮想的な)状態における(A)正面図および(B)背面図である。
図5】ボクサーパンツ200の型紙を示す平面図(紙面表面が肌に当接する面)である。
図6】ボクサーパンツ200が備える技術的特徴を説明するための身頃生地またはその型紙を示す平面図である。
図7】本発明の第3の実施の形態に係るボクサーパンツ300を平面に載置した(理想的または仮想的な)状態における(A)正面図および(B)背面図である。
図8】ボクサーパンツ300の型紙を示す平面図(紙面表面が肌に当接する面)である。
図9】ボクサーパンツ300が備える技術的特徴を説明するための身頃生地またはその型紙を示す平面図である。
図10】従来のボクサーパンツの身頃生地およびシック編地またはそれらの型紙を示す平面図(その1)である。
図11】従来のボクサーパンツの身頃生地またはその型紙を示す平面図(その2)である。
図12】(A)ショートタイプのボクサーパンツ(ボクサーショーツ)を着用した着用状態を示す側面図、および、(B)ロングタイプのボクサーパンツを着用した着用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態として、下半身用衣類の一例であるボクサーパンツ(膝上までの丈の長いロングタイプを除くショートタイプのボクサーパンツ(ボクサーショーツ))を、図面に基づき詳しく説明する。ここで、参考的に、ショートタイプのボクサーパンツ(ボクサーショーツ)SBPを図12(A)に、ロングタイプのボクサーパンツLBPを図12(B)に、それぞれ示す。図12(A)に示すボクサーパンツSBPは、本発明に係る下半身用衣類の一例であるボクサーパンツを示すものではなく、図12(B)に示すボクサーパンツLBPとの比較において、その丈の長さの違いを説明するものに過ぎない。なお、本発明に係る下半身用衣類は、ボクサーパンツに限定されるものではなく、主として腹部と臀部とを被覆する下半身用衣類であれば構わず、さらに脚部を被覆する下半身用衣類であっても構わず、脚部を備える場合には脚部を被覆する丈の長さは上述の通り膝上までの長さを除く短いショーツ形状のものである。
【0022】
ここで、図1図3は、本発明の第1の実施の形態に係るボクサーパンツ100に関する図であって、図4図6は、本発明の第2の実施の形態に係るボクサーパンツ200に関する図であって、図7図9は、本発明の第3の実施の形態に係るボクサーパンツ300に関する図である。また、図1図4図7とが、図2図5図8とが、図3図6図9とが、それぞれ対応している。図1図4図7とにおいて、平面に載置した(理想的または仮想的な)状態における(A)正面図および(B)背面図を示す。図2図5図8とにおいて、ボクサーパンツの型紙を示す平面図を示す。図3図6図9とにおいて、本発明に係るボクサーパンツが備える技術的特徴を説明する身頃生地Bまたは型紙を示す平面図を示す。なお、平面に載置した(理想的または仮想的な)状態とは、たとえばこれらの図において左右対称、膨出部の立体形状が表されていない等々を意味するものである。本発明の実施の形態に係るボクサーパンツは、伸縮性生地で形成されているために、このように想定して図示しない場合には、部分的に縮んだり、部分的に伸びたりした状態となり、形状を理解することが困難なため、上述のように想定している。
【0023】
ボクサーパンツ100は、他の一般的なボクサーパンツとの相違点として、胴周りにゴムバンド等のウエストバンドWBを備え、前立て編地Fにより形成された膨出部(前立て部)および膨出部(前立て部)の左右にサイド編地Sにより形成されたサイド部を備える。ボクサーパンツ200は、ボクサーパンツ100との相違点として、胴周りのウエストバンドWBを備えず、前立て編地Fにより形成された膨出部(前立て部)および膨出部(前立て部)の左右にサイド編地Sにより形成されたサイド部を備える点はボクサーパンツ100と同じである。ボクサーパンツ300は、ボクサーパンツ200との相違点として、膨出部(前立て部)の左右にサイド編地Sにより形成されたサイド部を備えず、前立て編地Fにより形成された膨出部(前立て部)を備える点はボクサーパンツ200と同じである。このように、ゴムバンドWBおよびサイド編地S(ならびに前立て編地F)は任意構成である。
【0024】
また、本発明に係るボクサーパンツが備える技術的特徴を容易に理解するために、図3図6および図9に示す身頃生地B(身頃生地の型紙の形状に略等しい)に対応する、従来のボクサーパンツの身頃生地Bを図10および図11に示す。ここで、図10に示す従来のボクサーパンツはシック編地THにより形成されたシック部を備え、図11に示す従来のボクサーパンツはシック部を備えない点が異なる。
【0025】
これらのボクサーパンツ100、ボクサーパンツ200およびボクサーパンツ300は、1以上の伸縮性編地に対して編地縁を接合した下半身用衣類である。限定されるものではないが、図2に示すようにボクサーパンツ100は5枚の伸縮性編地により形成され(ウエストバンドWBを除く)、図5に示すようにボクサーパンツ200は4枚の伸縮性編地により形成され、図8に示すようにボクサーパンツ200は3枚の伸縮性編地により形成される。ここで、たとえば膨出部を二重に形成しない場合等においては伸縮性編地の枚数が異なるために、これらの図に示す型紙は一例にすぎず、後述する技術的特徴を除けば型紙の形状も伸縮性編地の枚数も例示に過ぎない。
【0026】
なお、接合には、編地縁(生地縁と同義)どうしの重なり部分を縫合糸で縫製する縫着、編地縁どうしの重なり部分を接着剤で接着するする接着、編地縁どうしの重なり部分における異なる編地縁に跨った接着テープで接着する接着、および、編地縁どうしを当接させて異なる編地縁に跨った接着テープで接着するする接着等のいずれの方法で接合しても構わない。本実施の形態においては、縫着により接合されているとする。
【0027】
また、編地片に切りっぱなし仕様の緯編地を採用した場合には、肌に直接触れても、履き心地がよいことに加えて(肌ストレスと着圧とを低減)、周縁処理のために形成された端部の折り返しの厚みがアウターの衣服に出てしまうこともない点で好ましい。
【0028】
1以上の伸縮性編地の中で太腿の周囲を覆う裾周りを形成する伸縮性編地は、会陰部(この会陰部の位置は股部の後側に略同じで位置であって、その位置に対応するボクサーパンツの仮想的または理想的な部位に黒塗り三角印を図示する)および少なくとも臀部を覆う身頃編地B(より詳しくはボクサーパンツ100の身頃生地100B、ボクサーパンツ200の身頃生地200B、ボクサーパンツ300の身頃生地300B)を含むという技術的特徴を備える(ボクサーパンツ100およびボクサーパンツ200ではサイド編地Sをさらに含んで裾周りが形成される)。なお、3つのボクサーパンツにおいて、身頃生地Bを区別している理由は、本発明に係るボクサーパンツが備える技術的特徴が身頃生地Bに関係するためであって、かつ、3つのボクサーパンツにおける身頃編地Bの形状が異なるためであり、その他の編地(たとえば前立て編地F、サイド編地S)はこの技術的特徴が(直接的には)関係しないために(関係性が低いために略同じ、以下においてこのかっこ書きは基本的に繰り返さない)図面において区別していない。また、1以上の伸縮性編地の中で太腿の周囲を覆う裾周りを形成する伸縮性編地は、少なくとも臀部を覆う身頃編地と会陰部(股部の後側に略同じ、以下においてこのかっこ書きは基本的に繰り返さない)を覆うシック部を形成するシック編地とを含むという技術的特徴を備える。このシック部を形成するシック編地は図1図9において図示していないが、たとえば特許文献1の図5図7に示されるボクサーパンツが備えるシック編地THがその一例として挙げられる。本願発明においてシック編地THと記載した場合には、(本発明に係るボクサーパンツが備える技術的特徴以外について)この特許文献1の図5図7に示されるボクサーパンツが備えるシック編地THを意味する。このようなシック部を備えるボクサーパンツでは身頃編地とシック編地THとを含んで裾周りが形成されて、サイド編地Sをさらに含んで裾周りが形成されても構わない。ただし、本発明に係るボクサーパンツが備える技術的特徴は、身頃編地Bおよびシック編地THには関係するが、前立て編地F、サイド編地Sには(直接的には)関係しない。
【0029】
このような技術的特徴を備えると、会陰部まで身頃編地またはシック編地で(後身頃側から前身頃側へ回り込んで)覆われるために、会陰部において伸縮性編地の編地余りを発生させることができる可能性が高まり(後述するL(2)/L(1)×100により表される比率が特定の範囲内にあるためにこの可能性は実現される)着用時においてシワを形成して、動作時においてシワが伸長してボクサーパンツにおける裾周りまたは胴周り(腰周りと同義、以下においてこのかっこ書きは基本的に繰り返さない)のズレを好適に抑制することができる。
【0030】
ここで、(下半身用衣類の一例である)ボクサーパンツを形成する伸縮性編地に、腹側中央部の膨出部を形成する前立て編地F(より詳しくはボクサーパンツ100の前立て編地F、ボクサーパンツ200の前立て編地F、ボクサーパンツ300の前立て編地F)を含むことができる。この前立て編地Fにより形成される膨出部を備えるボクサーパンツは、男性用性器を好ましくホールドできる点で男性用ボクサーパンツに特に好ましく、さらに、本発明に係るボクサーパンツが備える技術的特徴により、会陰部において伸縮性編地の編地余りを発生させることができる可能性が高まり(後述するL(2)/L(1)×100により表される比率が特定の範囲内にあるためにこの可能性は実現される)着用時においてシワを形成して、動作時においてシワが伸長してボクサーパンツにおける膨出部の形状変化を好適に抑制することができる。この前立て編地Fとしては、吸水性、撥水性を備えた編地を採用することにより、尿漏れを好ましく対策することができる。
【0031】
図1図4および図7に示すように、本発明に係るボクサーパンツが備える技術的特徴として、太腿の周囲を覆う裾周りを形成する伸縮性編地は会陰部および少なくとも臀部を覆う身頃編地Bを含み(図1および図4に示すように裾周りを形成する伸縮性編地にさらにサイド編地Sを含んでも構わないがこのサイド編地Sは本発明に係るボクサーパンツが備える技術的特徴と直接的には関係しない)、身頃編地Bは、腹側中央部の膨出部を形成する前立て編地Fに腹側で接合され、身頃編地Bの後身頃側から前身頃側へ回り込んだ部位により会陰部が覆われている。
【0032】
このような技術的特徴を備えると、身頃編地Bの後身頃側から前身頃側へ回り込んだ部位により会陰部が覆われて、会陰部の位置に対応する股部の後ろ側に編地余りを発生させることができる可能性が高まり(後述するL(2)/L(1)×100により表される比率が特定の範囲内にあるためにこの可能性は実現される)着用時においてシワを形成して、動作時においてシワが伸長してボクサーパンツにおける裾周りまたは胴周りのズレを好適に抑制することができる。
【0033】
図示しないが(特許文献1の図5図7に示すように)、本発明に係るボクサーパンツが備える技術的特徴として、太腿の周囲を覆う裾周りを形成する伸縮性編地は少なくとも臀部を覆う身頃編地Bと会陰部を覆うシック部を形成するシック編地THとを含み(図示しないが裾周りを形成する伸縮性編地にさらにサイド編地Sを含んでも構わないがこのサイド編地Sは本発明に係るボクサーパンツが備える技術的特徴と直接的には関係しない)、シック編地THは、前記身頃編地に前記背中側で接合されるとともに、腹側中央部の膨出部を形成する前立て編地Fに腹側で接合され、シック編地THの後身頃側から前身頃側へ回り込んだ部位により会陰部が覆われている。
【0034】
このような技術的特徴を備えると、シック編地THの後身頃側から前身頃側へ回り込んだ部位により会陰部が覆われて、会陰部の位置に対応する股部の後ろ側に編地余りを発生させることができる可能性が高まり(後述するL(2)/L(1)×100により表される比率が特定の範囲内にあるためにこの可能性は実現される)着用時においてシワを形成して、動作時においてシワが伸長してボクサーパンツにおける裾周りまたは胴周りのズレを好適に抑制することができる。
【0035】
図1図4および図7に示すように、本発明に係るボクサーパンツが備える技術的特徴として、ウエストラインが略水平になるように平面上に載置したボクサーパンツを腹側から見た場合に、腹側のウエストラインの湾曲長さL(1)に対する、仮想的に会陰部を通る股下線の湾曲長さL(2)の比率が、40%以上80%以下である。これは、股下線の湾曲長さL(2)が従来のボクサーパンツ(概ね40%未満)に比較して極端に長いことを意味するものでもある。なお、L(2)/L(1)×100により表されるこの比率は、40%以上80%以下で、好ましくは60%以上80%以下、特に好ましくは70%以上80%以下である。
【0036】
このような技術的特徴を備えると、すなわち、L(2)/L(1)×100により表される比率が40%以上80%以下であることにより、会陰部において伸縮性編地の編地余りを(従来のボクサーパンツと比較して大幅に)発生させて着用時においてシワを形成して、動作時においてシワが伸長してボクサーパンツにおける裾周りまたは胴周りのズレを好適に抑制(ボクサーパンツが膨出部を備える場合にはその形状変化を好適に抑制)することができる。
【0037】
次に、図3図6および図9に示すように、本発明に係るボクサーパンツが備えるさらなる技術的特徴として、接合(ここでは縫着)を開放して、1以上の伸縮性編地の中で太腿の周囲を覆う裾周りを形成する伸縮性編地(より正確には身頃編地B)を、ウエストラインが略水平になるように平面上に載置した場合における、裾周りの中心点(A点で示す)と裾頂点(B点で示す)とを結んだ直線(点線で示す裾の立ち上がり角度)が鉛直線に対して35度(α(deg)で示す)以上55度(β(deg)で示す)以下である。すなわち、図3図6および図9に示すように、点線がハッチング領域に含まれる形態を備える。なお、A点とB点との水平方向の距離は6cm~26cmである。ここで、これらの身頃編地Bおよびシック編地TH、または、身頃編地Bに代えて、これらの編地の型紙で技術的特徴を限定することも可能である。これは、ボクサーパンツの接合(ここでは縫着)を開放すれは伸縮性編地とその型紙とは略同じ形状(編地の伸縮性を考慮して略と記載)であることが理由である。
【0038】
これに対して、従来のボクサーパンツにおいては図10および図11に示すように、シック編地THの有無に関わらず、点線がハッチング領域に含まれない。より具体的には、図10に示す身頃編地400Bにおいては、裾周りの中心点(A点で示す)と裾頂点(B点で示す)とを結んだ直線(点線で示す裾の立ち上がり角度)が鉛直線に対して35度(α(deg)で示す)以上55度(β(deg)で示す)以下のハッチング領域に含まれない。また、図11に示す身頃編地500Bにおいては、裾周りの中心点(A点で示す)と裾頂点(B点で示す)とを結んだ直線(点線で示す裾の立ち上がり角度)が鉛直線に対して35度(α(deg)で示す)以上55度(β(deg)で示す)以下のハッチング領域に含まれない。なお、図10に示すシック編地THを備える場合には会陰部がシック部における後身頃側から前身頃側へ回り込んだ部位により覆われるものの、胴周りのフィット性が低下する点で、図11に示すシック編地THを備えない場合には会陰部が後身頃側から前身頃側へ回り込んだ部位により覆われないことに加えて、胴周りのフィット性が低下するする点で、それぞれ好ましくない。
【0039】
このような技術的特徴を備えると、会陰部において伸縮性編地の編地余りを発生させて(上述したL(2)/L(1)×100により表される比率が特定の範囲内にあるために編地余りが発生している)着用時においてシワを形成して、動作時においてシワが伸長し
てボクサーパンツにおける裾周りまたは胴周りのズレを好適に抑制することができる。ここで、このような作用効果を奏することを限界として、この角度αおよび角度βの範囲を、30度≦α≦45度、45度≦β≦60度とすることも好ましい。これは、(点線で示す裾の立ち上がり角度)が鉛直線に対して(35度以上55度以下をさらに限定した)たとえば40度以上50度以下であっても構わないことを意味する。
【0040】
以上のようにして、本実施の形態に係るボクサーパンツによると、主として腹部と臀部とを被覆する下半身用衣類の一例であるボクサーパンツにおいて、下半身の動きに対して追従しやすく履き心地のよいボクサーパンツを提供することができる。すなわち、会陰部において伸縮性編地の編地余りを発生させて着用時においてシワを形成して、動作時においてシワが伸長してボクサーパンツにおける裾周りおよび胴周りのズレならびに膨出部の形状変化を好適に抑制することができる。このため、フィット感、ホールド感が好ましく、腰(胴周り)および脚(裾周り)の締め付け感を低減でき、外観の格好良さと着用感とを両立することができる。特に、ローライズタイプのボクサーパンツにおいてもズレを好適に抑制(ボクサーパンツが膨出部を備える場合にはその形状変化を好適に抑制)することができ、着用感が好ましい。
【0041】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、腹部と臀部とを被覆するボクサーパンツ(丈の短いボクサーショーツ)等の下半身用衣類に好適であり、下半身の動きに対して追従しやすく履き心地のよい点で特に好適である。
【符号の説明】
【0043】
100 (第1の実施の形態に係る前立て部とサイド部とを備えた)ボクサーパンツ
200 (第2の実施の形態に係る前立て部とサイド部とを備えた)ボクサーパンツ
300 (第3の実施の形態に係る前立て部を備えた)ボクサーパンツ
B (少なくとも臀部を覆う後身頃を備えた)身頃編地
F (膨出部(前立て部)を形成する)前立て編地
S サイド編地
WB ウエストバンド
TH (シック部(クロッチ部)を形成する)シック編地
図1
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図3
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図5
図6
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図12