(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125715
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】下半身用衣類
(51)【国際特許分類】
A41B 9/04 20060101AFI20240911BHJP
A41B 11/14 20060101ALI20240911BHJP
A41B 11/00 20060101ALI20240911BHJP
A41D 1/06 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
A41B9/04 F
A41B11/14 E
A41B11/00 B
A41D1/06 B
A41D1/06 L
A41D1/06 501D
A41D1/06 503B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033717
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平島 享子
(72)【発明者】
【氏名】川原崎 真悟
【テーマコード(参考)】
3B018
3B128
【Fターム(参考)】
3B018HB01
3B128EC12
(57)【要約】
【課題】多層構造の編地を用いた暖かく履き心地の良いレギンスを提供する。
【解決手段】このレギンスを構成する編地100は、多層構造の編地である。この多層構造の編地100は、綿ポリエステル混紡糸により形成された表面層と、ウーリーポリエステル糸とアクリル/レーヨン糸で形成された肌面層と、これらの表面層と肌面層との間の中間層であって、アクリルレーヨン混紡糸を含む中間層とを含み、表面層において、綿ポリエステル混紡糸が、綿ポリエステル混紡糸以外の糸で編成されたベースから浮いて空気を貯める空間を形成して保温性に優れるとともに、フラットな生地面が肌に当接するために肌触りが良い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造の編地を用いた下半身用衣類であって、
前記多層構造の編地は、
綿とポリエステルとを含んで形成された表面層と、
ポリエステルとアクリルとレーヨンとを含んで形成された肌面層と、
前記表面層と前記肌面層との間に形成された中間層であって、アクリルとレーヨンとを含んで形成された中間層と、を少なくとも含むことを特徴とする下半身用衣類。
【請求項2】
前記表面層には、綿ポリエステル混紡糸が表出し、
前記肌面層には、ウーリーポリエステル糸とアクリルレーヨン混紡糸とが表出し、
前記中間層は、アクリルレーヨン混紡糸が存在するように編成され、
前記表面層において、前記綿ポリエステル混紡糸が、前記綿ポリエステル混紡糸以外の糸で編成されたベースから浮いて、空気を貯める空間を形成することを特徴とする、請求項1に記載の下半身用衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として女性用の下半身用衣類に関し(女性用に限定されるものではない)、特に、丈が膝下から足首まででアウターウェア用途として着用される(インナーではなくアウターとしての)パンツに代表される下半身用衣類であって多層構造の編地を用いた暖かく履き心地の良い下半身用衣類に関する。なお、本発明に係る下半身用衣類は、その形状(たとえば丈も裾幅も太腿幅も)は限定されるものではなく、上述したパンツには、たとえば、丈が足首程度までで全体的に細幅のスキニータイプのアウターパンツ、丈が足首程度までで全体的に太幅で裾幅が膝部よりも広がったフレアタイプのアウターパンツ、丈が足首程度までで全体的に太幅のワイドタイプのアウターパンツ等々が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
タイツは専ら冬季に着用され、保温性を重視したものとなっており、タイツにはアクリルのバルキー糸100%のもの、カバリング糸とナイロンフィラメント加工糸との交編タイプのもの、または、カバリング糸100%のいわゆるゾッキタイプのものがあり、形状としてはパンティーストッキング型のものやレッグ部のみのものがある。
【0003】
このようなタイツに用いられるカバリング糸としては、ポリウレタン弾性糸を芯糸としてナイロンフィラメント加工糸を1重に被覆したSCY(シングル・カバード・ヤーン)または2重に被覆したDCY(ダブル・カバード・ヤーン)ものが、主に用いられている。
【0004】
このように、芯糸をポリウレタン弾性糸として捲糸をナイロンフィラメント加工糸としたカバリング糸が、ストッキングやタイツ等の下半身用衣類の編み糸として広く用いられている。本願出願人が開発して出願した、カバリング糸を用いて着用したときの肌触りが良好なゾッキ編みタイツが、特開2013-185266号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1に開示されたゾッキタイツは、ポリウレタン弾性糸の芯糸に捲糸を巻着させたカバリング糸を用いたタイツであって、前記捲糸を天然繊維(綿糸)として、前記タイツの肌密着側の編地を毛羽立たせる加工を施したことを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に開示されたゾッキタイツは、着用したときの肌触りが良好な点で好評を得ているのであるが、タイツはインナーウェアであるためにアウターウェア(スカートやアウターウェアとしてのパンツ)をさらに着用して外出しなければならなかった。このため、タイツにたとえばパンツを重ね履きしなければならないことになる。さらに、このパンツとして(ストレッチ性がない通常の)ジーンズを着用すると、編地のタイツは伸縮性が高くよく伸びるもののジーンズはストレッチ性が好ましくなくこのような組み合わせで重ね履きすると、ストレッチ性が悪く履き心地が良くない。
【0007】
本発明は、従来技術の上述した問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、アウターウェアとして着用できる多層構造の編地を用いた暖かく履き心地の良い下半身用衣類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る下半身用衣類は以下の技術的手段を講じている。
【0009】
すなわち、本発明に係る下半身用衣類は、多層構造の編地を用いた下半身用衣類であって、前記多層構造の編地は、(主に)綿とポリエステルとを含んで形成された表面層と、(主に)ポリエステルとアクリルとレーヨンとを含んで形成された肌面層と、前記表面層と前記肌面層との間に形成された中間層であって、(主に)アクリルとレーヨンとを含んで形成された中間層と、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記表面層には、(主に)綿ポリエステル混紡糸が表出し、前記肌面層には、(主に)ウーリーポリエステル糸とアクリルレーヨン混紡糸とが表出し、前記中間層は、(主に)アクリルレーヨン混紡糸が存在するように編成される。前記表面層において、前記綿ポリエステル混紡糸が、前記綿ポリエステル混紡糸以外の糸で編成されたベースから浮いて、空気を貯める空間を形成するように構成することができる。
【0011】
さらに好ましくは、前記表面層は、綿ポリエステル混紡糸で形成され、前記肌面層は、ウーリーポリエステル糸とアクリルレーヨン混紡糸で形成され、前記中間層は、アクリルレーヨン混紡糸を含み、前記表面層において、前記綿ポリエステル混紡糸が、前記綿ポリエステル混紡糸以外の糸で編成されたベースから浮いて、空気を貯める空間を形成するように構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、アウターウェアとして着用できる多層構造の編地を用いた暖かく履き心地の良い下半身用衣類を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る下半身用衣類の一例であるスキニータイプのアウターパンツ(レギンス)の概略正面図である。
【
図2】
図1のアウターパンツの構造を説明するための編地の模式的な断面図(その1)である。
【
図3】
図1のアウターパンツの構造を説明するための編地の模式的な断面図(その2)である。
【
図4】
図1のアウターパンツの構造を説明するための編地の表面写真(図面代用写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る下半身用衣類の一例であるスキニータイプのアウターパンツ1(レギンス1と記載する場合がある)を、図面に基づき詳しく説明する。このレギンス1は、多層構造の編地を用いた暖かく履き心地の良い下半身用衣類の一例として説明されるものである。本発明に係る下半身用衣類は、その形状(たとえば丈も裾幅も太腿幅も)は限定されるものではなく、女性用にも男性用にも限定されるものではないが、このレギンス1のように、代表的には、丈が膝下から足首までの間で(このレギンス1は丈が足首まで)女性用のアウターウェア用途として着用される下半身用衣類である。
【0015】
図1を参照して、丈が足首までで冬季のアウターウェア用途として着用されるパンツ(丈が足首程度までで全体的に細幅のスキニータイプのアウターパンツ)の下半身用衣類の一例であるレギンス1は、(
図2および)
図3にその模式的な断面図を示す多層構造の編地100を用いている。このレギンス1は、胴部2(1本の筒状部)と脚を挿入する2本の脚部3とが構成されるように多層構造の編地100を縫製して、胴部3の上端にウエスト部4としてウエストバンドを挟んで縫着した構造を備える。なお、ウエスト部4にウエストバンドを設けない総ゴム仕様(総ニット仕様)として、ウエストを締め付けないようにすることも好ましい。また、このレギンス1はしゃがんでも下着等が見えないように股上が深めの形状を備える。
【0016】
なお、本発明に係る下半身用衣類の一例として説明するレギンスの構造には様々なものがあり、本発明に係る下半身用衣類がレギンスであるとしても特定の構造に限定されるものではなく、後述する特徴である、多層構造の編地を用いた暖かく柔らかく好ましい履き心地を備えたものであれば、どのようなレギンスの構造であっても、レギンスを構成する編地の種類、編糸の種類はどのようなものであっても、基本的には構わない。そのため、上述したレギンス1の構造自体は単なる例示でしかない。また、このように限定されないレギンスでさえ、上述したように、本発明に係る下半身用衣類の一例でしかない。特に、本発明に係る下半身用衣類として挙げるアウターパンツには、たとえば、丈が足首程度までで全体的に細幅のスキニータイプのアウターパンツ(上述したレギンス)、丈が足首程度までで全体的に太幅で裾幅が膝部よりも広がったフレアタイプのアウターパンツ、丈が足首程度までで全体的に太幅のワイドタイプのアウターパンツ等々があり、前側にダミー
ポケットを備えたり、後ろ側にポケットを備えたり、ウエスト部にベルトループを備えたり、するものを含む。
【0017】
本実施の形態に係るレギンス1を構成する編地100について、編地100についての模式的な断面図である
図2および
図3ならびに表面写真を示す
図4を参照して以下において詳しく説明する。
【0018】
この
図2および
図3に示すように、このレギンス1を構成する編地100は、多層構造の編地である。なお、本発明の容易な理解のために
図2(A)、
図2(B)および
図2(C)を重ねた状態を
図3(B)として示し、
図3(A)は
図3(B)の簡略図である。
【0019】
これらの
図2~
図4に示すように、本発明に係る下半身用衣類(本実施の形態においてはレギンス1)は多層構造(ここでは3層)の編地100を用いている。この多層構造の編地100は、
・主に綿ポリエステル混紡糸(T/Cとして図示)で)形成された表面層(表側、反肌側、浮き糸側と同義)と、
・主にウーリーポリエステル糸とアクリルレーヨン混紡糸で形成された肌面層(肌側、グランド側と同義)と、
・これらの表面層と肌面層との間の中間層であって、主にアクリルレーヨン混紡糸を含む中間層と、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0020】
ここで、T/Cとは、テトロン(R)/コットンの頭文字であって、テトロン(R)はポリエステルであって、綿ポリエステル混紡糸を意味する。T/C(ポリコットン)は、ポリエステルと綿(コットン)との良い部分を兼ね備えている。たとえば、ポリエステルの良い部分である、丈夫・シワになりにくい・乾きやすいという部分と、綿(コットン)の良い部分である風合い・通気性・吸湿性が良いという部分との両方を兼ね備える。
【0021】
なお、このような多層(ここでは3層)構造の編地の製造方法については特に限定されるものではなく、適宜な編み機を用いて適宜な編成方法により編成される。
【0022】
さらに、この編地100の特徴について、それぞれの編糸の種類を含めて詳しく説明する。
【0023】
図2(B)に示すように、T/Cとポリウレタンでプレーティング編みされた編み目では、ポリウレタンが収縮して編み目を引き締めることでT/Cの2目飛ばしたループ分の浮き糸が形成される。
【0024】
図2(A)に示すウーリーポリエステルはポリウレタンより伸縮性が劣るため編み目にはループが形成される。
【0025】
図2(C)に示すアクリル/レーヨンも伸縮性が劣るため編み目にはループが形成される。
【0026】
この結果、表面層において、T/Cが、T/C以外の糸で編成されたベースから浮いて、
図3(B)に示すように空気を貯める空間を形成することができる。他方、肌面層には、ウーリーポリエステルとアクリル/レーヨンのループが形成される。
【0027】
このような編地100は、T/C(綿ポリエステル混紡糸)、ウーリーポリエステル、アクリル/レーヨンによるフラットな生地面(肌側)と、T/C(綿ポリエステル混紡糸)が浮いた面(表側)とのリバーシブル構造を形成しているとも言える。このため、フラットな生地面が肌に当接するために肌触りが良く(着心地が良く)、T/C(綿ポリエステル混紡糸)が浮いた面で空気を貯めることができるために保温性が高い。その結果、アウターウェアとして着用できる多層構造の編地を用いた暖かく履き心地の良い下半身用衣類を提供することができる。
【0028】
このような編地100を用いた下半身用衣類の一例であるレギンス1は、アクリルレーヨン混紡糸により吸湿発熱性に優れていて、3層構造でT/C(綿ポリエステル混紡糸)が浮いて空気層を形成するために保温性に優れている。また、肌側はウーリーポリエステルとアクリル/レーヨンのループによりしっかりと膨らみがある暖かい起毛感を発現できて、ポリウレタン糸により全方向(360度)において高いストレッチ性を備える。
【0029】
以下に、具体的な(編)糸について説明する。なお、%は重量%である。
・T/C(綿ポリエステル混紡糸)
綿50%、ポリエステル50%の単糸
21デシテックス(18.9デニール)
・ポリエステル糸
ポリエステル100%、ウーリー糸
166.65デシテックス(150デニール)
・ポリウレタン糸
ポリウレタン100%
166.65デシテックス(150デニール)
・アクリル/レーヨン糸(アクリルレーヨン混紡糸)
アクリル60%、レーヨン40%の単糸
30デシテックス(27デニール)
以上のようにして、本実施の形態に係るレギンスによると、3層構造の編地100を用いており、この編地100は、綿ポリエステル混紡糸により形成された表面層と、ウーリーポリエステル糸とアクリル/レーヨン糸で形成された肌面層と、これらの表面層と肌面層との間の中間層であって、アクリルレーヨン混紡糸が存在する中間層とを含み、表面層において、綿ポリエステル混紡糸が、綿ポリエステル混紡糸以外の糸で編成されたベースから浮いて空気を貯める空間を形成して保温性に優れるとともに、フラットな生地面が肌に当接するために肌触りが良い。
【0030】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、下半身用衣類に好適であり、多層構造の編地を用いた暖かく履き心地の良い下半身用衣類に特に好適である。
【符号の説明】
【0032】
1 レギンス
2 胴部
3 脚部
4 ウエスト部
100 編地(3層編地)