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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125721
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240911BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240911BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20240911BHJP
   C08K 3/11 20180101ALI20240911BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240911BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240911BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240911BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L63/00 Z
C08K3/20
C08K3/11
H05K1/03 610L
H01F17/00 A
H01F17/04 F
H01F27/255
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033729
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 瑞季
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】本間 達也
【テーマコード(参考)】
4J002
5E070
【Fターム(参考)】
4J002AA00W
4J002AC03W
4J002BB00W
4J002BE06W
4J002CD01X
4J002CD02X
4J002CD05W
4J002CD05X
4J002CD11X
4J002CF00W
4J002CF273
4J002CH07W
4J002CH08W
4J002CH09W
4J002CM013
4J002CM04W
4J002CN03W
4J002DC006
4J002DE106
4J002FD203
4J002FD206
4J002GQ01
5E070AA01
5E070BA12
5E070BB03
5E070CB01
(57)【要約】
【課題】比透磁率が高く、損失係数が低く、機械的強度に優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物等の提供。
【解決手段】(A)重量平均分子量が600以上の樹脂、(B)エポキシ樹脂((A)成分に該当するものは除く)、(C)アミン系分散剤、及び(D)磁性粉体を含む、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重量平均分子量が600以上の樹脂、
(B)エポキシ樹脂((A)成分に該当するものは除く)、
(C)アミン系分散剤、及び
(D)磁性粉体を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分が、(A-1)重量平均分子量が600以上8000未満の樹脂オリゴマーを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分が、(A-1)重量平均分子量が600以上8000未満の樹脂オリゴマー、及び(A-2)重量平均分子量が8000以上の樹脂のいずれかを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A-1)成分の含有量をA1とし、(A-2)成分の含有量をA2としたとき、A2/(A1+A2)が、0以上0.7以下である、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A-1)成分が、エポキシ基含有オリゴマーを含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A)成分の含有量をAmとし、(B)成分の含有量をBmとしたとき、Am/(Am+Bm)が、0.1以上0.8以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(C)成分が、ポリエステル骨格を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(C)成分が、式(1)で表されるポリエステル骨格を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に炭素原子数2~10の2価の炭化水素基を表し、nは2~1000の整数を表す。)
【請求項9】
(D)成分の含有量(体積%)が、樹脂組成物の不揮発成分100体積%に対して、70体積%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、(E)溶剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
【請求項12】
スルーホールを有する基板と、前記スルーホールに充填した、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物と、を有する回路基板。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物である磁性層を含む、回路基板。
【請求項14】
請求項12に記載の回路基板を含む、インダクタ基板。
【請求項15】
請求項13に記載の回路基板を含む、インダクタ基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、及び当該樹脂組成物を使用した樹脂シート、回路基板、及びインダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の回路基板にインダクタを内蔵するインダクタ内蔵基板は、インダクタンスを大きくするために、一般に磁性粉体を含有する樹脂組成物の硬化物である磁性層を用いて形成される。
【0003】
例えば、特許文献1には、樹脂シートを用いてインダクタを形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-120452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備えた樹脂シートを製造する場合、シート化する観点から、樹脂組成物には、一般に、重量平均分子量が30000程度の高分子化合物を含有させることが求められていた。
しかしながら、高分子化合物を樹脂組成物に含有させると、樹脂シートにおける樹脂組成物層の機械的強度が低下することがある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、比透磁率が高く、損失係数が低く、機械的強度に優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物を用いて得られる樹脂シート、回路基板、及びインダクタ基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究をした結果、重量平均分子量が600以上の樹脂、エポキシ樹脂、アミン系分散剤、溶剤、及び磁性粉体を組み合わせて含有させた樹脂組成物を用いることにより、樹脂組成物層の硬化物の比透磁率が高く、損失係数が低く、さらに機械的強度に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)重量平均分子量が600以上の樹脂、
(B)エポキシ樹脂((A)成分に該当するものは除く)、
(C)アミン系分散剤、及び
(D)磁性粉体を含む、樹脂組成物。
[2] (A)成分が、(A-1)重量平均分子量が600以上8000未満の樹脂オリゴマーを含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (A)成分が、(A-1)重量平均分子量が600以上8000未満の樹脂オリゴマー、及び(A-2)重量平均分子量が8000以上の樹脂のいずれかを含む、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A-1)成分の含有量をA1とし、(A-2)成分の含有量をA2としたとき、A2/(A1+A2)が、0以上0.7以下である、[3]に記載の樹脂組成物。
[5] (A-1)成分が、エポキシ基含有オリゴマーを含む、[2]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] 樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A)成分の含有量をAmとし、(B)成分の含有量をBmとしたとき、Am/(Am+Bm)が、0.1以上0.8以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] (C)成分が、ポリエステル骨格を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] (C)成分が、式(1)で表されるポリエステル骨格を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に炭素原子数2~10の2価の炭化水素基を表し、nは2~1000の整数を表す。)
[9] (D)成分の含有量(体積%)が、樹脂組成物の不揮発成分100体積%に対して、70体積%以上である、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] さらに、(E)溶剤を含む、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11] 支持体と、該支持体上に設けられた、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
[12] スルーホールを有する基板と、前記スルーホールに充填した、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物と、を有する回路基板。
[13] [1]~[10]のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物である磁性層を含む、回路基板。
[14] [12]に記載の回路基板を含む、インダクタ基板。
[15] [13]に記載の回路基板を含む、インダクタ基板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、比透磁率が高く、損失係数が低く、機械的強度に優れる硬化物を得ることができる樹脂シート、及び当該樹脂シートを使用した回路基板、インダクタ部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態の回路基板の製造方法において、スルーホールを形成される前のコア基材を模式的に示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態の回路基板の製造方法において、スルーホールを形成されたコア基材を模式的に示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態の回路基板の製造方法において、スルーホール内にめっき層を形成されたコア基材を模式的に示す断面図である。
図4図4は、第1実施形態の回路基板の製造方法において、コア基材と樹脂シートとを積層する様子を模式的に示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態の回路基板の製造方法において、コア基材と樹脂シートとを積層した様子を模式的に示す断面図である。
図6図6は、第1実施形態の回路基板の製造方法の工程(2)を説明するための模式的な断面図である。
図7図7は、第1実施形態の回路基板の製造方法の工程(3)を説明するための模式的な断面図である。
図8図8は、第1実施形態の回路基板の製造方法の工程(5)を説明するための模式的な断面図である。
図9図9は、第1実施形態の回路基板の製造方法の工程(5)を説明するための模式的な断面図である。
図10図10は、第2実施形態の回路基板の製造方法の(A)工程を説明するための模式的な断面図である。
図11図11は、第2実施形態の回路基板の製造方法の(A)工程を説明するための模式的な断面図である。
図12図12は、第2実施形態の回路基板の製造方法の(B)工程を説明するための模式的な断面図である。
図13図13は、第2実施形態の回路基板の製造方法の(D)工程を説明するための模式的な断面図である。
図14図14は、第2実施形態の回路基板の製造方法により得た回路基板を含むインダクタ部品をその厚さ方向の一方からみた模式的な平面図である。
図15図15は、II-II一点鎖線で示した位置で切断した第2実施形態の回路基板の製造方法により得た回路基板を含むインダクタ部品の切断端面を示す模式的な図である。
図16図16は、第2実施形態の回路基板の製造方法により得た回路基板を含むインダクタ部品のうちの第1導体層の構成を説明するための模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は適宜変更可能である。以下の説明に用いる図面において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明については省略する場合がある。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図示例の配置により、製造されたり、使用されたりするとは限らない。
【0012】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)重量平均分子量が600以上の樹脂、(B)エポキシ樹脂((A)成分に該当するものは除く)、(C)アミン系分散剤、及び(D)磁性粉体を含む。このような樹脂組成物を用いることによって、比透磁率が高く、損失係数が低く、機械的強度に優れる硬化物を得ることが可能にある。
【0013】
樹脂組成物は、更に必要に応じて、(E)溶剤、(F)硬化剤、及び(G)その他の添加剤などの任意の成分を含んでいてもよい。
【0014】
以下、樹脂組成物に含まれ得る各成分について説明する。なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値であり、不揮発成分とは、樹脂組成物中の溶剤を除く不揮発成分全体を意味する。
【0015】
<(A)重量平均分子量が600以上の樹脂>
樹脂組成物は、(A)成分として、(A)重量平均分子量が600以上の樹脂を含有する。(A)重量平均分子量が600以上の樹脂を樹脂組成物に含有させることで、樹脂組成物の硬化物の機械的強度を高めることができる。(A)成分は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
(A)成分の重量平均分子量は、樹脂組成物の硬化物の機械的強度を高める観点から、600以上であり、好ましくは700以上、より好ましくは800以上である。上限は、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下、さらに好ましくは40000以下、30000以下、20000以下、10000以下、9000以下、8000以下、7500以下、又は7000以下である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0017】
(A)成分としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、(A-1)重量平均分子量が600以上8000未満の樹脂オリゴマー、及び(A-2)重量平均分子量が8000以上の樹脂のいずれかを含むことが好ましい。よって、(A)成分は、(A-1)重量平均分子量が600以上8000未満の樹脂オリゴマーのみを含んでいてもよく、(A-2)重量平均分子量が8000以上の樹脂のみを含んでいてもよく、(A-1)重量平均分子量が600以上8000未満の樹脂オリゴマー及び(A-2)重量平均分子量が8000以上の樹脂を組み合わせて含んでいてもよい。(A)成分としては、(A-1)重量平均分子量が600以上8000未満の樹脂オリゴマーを含むことが好ましい。
【0018】
(A-1)成分の重量平均分子量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、600以上であり、好ましくは700以上、より好ましくは800以上である。上限は、好ましくは8000未満であり、好ましくは7500以下、より好ましくは7000以下である。
【0019】
(A-2)成分の重量平均分子量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、8000以上であり、好ましくは9000以上、より好ましくは10000以上である。上限は、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下、さらに好ましくは40000以下である。
【0020】
(A-1)成分としては、重量平均分子量が600以上8000未満の樹脂オリゴマーを使用することができる。このような成分としては、エポキシ基等の熱硬化性の官能基を有する熱硬化性樹脂オリゴマー及び熱可塑性樹脂オリゴマーのいずれかが好ましく、熱硬化性樹脂オリゴマーがより好ましい。熱硬化性樹脂オリゴマーとしては、例えば、エポキシ基含有オリゴマー、フェノール樹脂オリゴマー等が挙げられる。ここで「エポキシ基含有オリゴマー」とは、エポキシ基を有するオリゴマーを表す。中でも、(A-1)成分としては、エポキシ基含有オリゴマーが好ましい。(A-1)成分は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
エポキシ基含有オリゴマーは、1分子中に2個以上のエポキシ基を含むことが好ましい。また、エポキシ基含有オリゴマーは、芳香族構造を有することが好ましく、2種以上のエポキシ基含有オリゴマーを用いる場合は少なくとも1種が芳香族構造を有することがより好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ基含有オリゴマーの割合は、エポキシ基含有オリゴマーの不揮発成分100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0022】
エポキシ基含有オリゴマーとしては、ビスフェノール型エポキシ基含有オリゴマーが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ基含有オリゴマー、ビスフェノールF型エポキシ基含有オリゴマー、ビスフェノールAF型エポキシ基含有オリゴマーが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ基含有オリゴマー、及びビスフェノールF型エポキシ基含有オリゴマーのいずれかがより好ましい。エポキシ基含有オリゴマーの具体例としては、三菱ケミカル社製の「jER1001」(ビスフェノールA型エポキシ基含有オリゴマー)、「jER4005P」(ビスフェノールF型エポキシ基含有オリゴマー)、「jER1004AF」(ビスフェノールより製造されるポリエーテルタイプのエポキシ基含有オリゴマー)、「jER4005P」(ビスフェノールF型エポキシ基含有オリゴマー)、「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、DIC社製の「EXA-4850-150」(変性ビスフェノール型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
エポキシ基含有オリゴマーのエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい磁性層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0024】
フェノール樹脂オリゴマーとしては、市販品を用いることができる。フェノール樹脂オリゴマーの市販品としては、丸善石油化学社製の「S-1P」、「S-1P」等が挙げられる。
【0025】
(A-1)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0026】
(A-2)成分としては、重量平均分子量が8000以上の樹脂を使用することができる。このような成分としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれかが好ましく、熱可塑性樹脂がより好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えばフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、フェノキシ樹脂が好ましい。(A-2)成分は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7482」及び「YL7891BH30」;等が挙げられる。
【0028】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0029】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
【0030】
ポリイミド樹脂の具体例としては、信越化学工業社製「SLK-6100」、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」等が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0031】
ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0032】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0033】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0034】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0035】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、SABIC製「NORYL SA90」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0036】
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。
【0037】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0038】
(A-2)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、又は1.5質量%以上であり、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0039】
(A-2)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、少ないことが好ましい。樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A-1)成分の含有量をA1とし、(A-2)成分の含有量をA2としたとき、本発明の効果を顕著に得る観点から、A2/(A1+A2)が、好ましくは0以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.4以上、0.6以上であり、好ましくは0.7以下である。
【0040】
(A)成分の含有量((A-1)成分と(A-2)成分との合計含有量)は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0041】
<(B)エポキシ樹脂>
樹脂組成物は、(B)成分として、(B)エポキシ樹脂を含有する。この(B)成分としての(B)エポキシ樹脂には、上述した(A)成分に該当するものは含めない。(B)エポキシ樹脂を樹脂組成物に含有させることで、機械的強度に優れる樹脂組成物の硬化物を得ることが可能になる。(B)エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(B)エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAF型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等の縮合環構造を有するエポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;環状脂肪族ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(B)エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0043】
(B)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、(B)エポキシ樹脂は、芳香族構造を有することが好ましく、2種以上のエポキシ樹脂を用いる場合は少なくとも1種が芳香族構造を有することがより好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0044】
エポキシ樹脂には、温度25℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度25℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(B)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂及び固体状エポキシ樹脂を組み合わせて含んでいてもよいが、樹脂組成物の粘度を低下させる観点から、液状エポキシ樹脂のみを含むことが好ましい。
【0045】
液状エポキシ樹脂としては、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、環状脂肪族ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂(アデカグリシロール))、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、「EX-201」(環状脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂)、「ZX1658」、「ZX1658GS」(環状脂肪族ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
(B)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1~1:4の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる等の効果が得られる。上記の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.3~1:3.5の範囲であることがより好ましく、1:0.6~1:3の範囲であることがさらに好ましく、1:0.8~1:2.5の範囲であることが特に好ましい。
【0048】
(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい磁性層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0049】
(B)エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは600未満、より好ましくは500以下、さらに好ましくは400以下である。下限は特に制限されないが、100以上、より好ましくは150以上、さらに好ましくは200以上である。
【0050】
(B)エポキシ樹脂の含有量(質量%)は、良好な機械的強度を示す磁性層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0051】
(B)エポキシ樹脂の含有量(体積%)は、樹脂組成物中の不揮発成分を100体積%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0052】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A)成分の含有量((A-1)成分と(A-2)成分との合計含有量)をAmとし、(B)エポキシ樹脂の含有量をBmとしたとき、Am/(Am+Bm)は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.2以上であり、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下である。
【0053】
<(C)アミン系分散剤>
樹脂組成物は、(C)成分として、(C)アミン系分散剤を含有する。この(C)成分としての(C)アミン系分散剤には、上述した(A)成分及び(B)成分に該当するものは含めない。上記したように、シート化する観点から、樹脂組成物に高分子化合物を含有させると、樹脂組成物の硬化物の機械的強度が低下してしまう。本発明では、樹脂組成物中に(A)成分に組み合わせて(C)成分を含有させることで、(A)成分及び(C)成分を含まない樹脂組成物(即ち、(A)成分及び(C)成分の代わりに(A)成分よりも高分子量である高分子化合物を含むこと以外は樹脂組成物と同じ組成を有する樹脂組成物)に比べて、比透磁率を向上させつつ、機械的強度も向上させることが可能になる。(C)アミン系分散剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
本発明の(C)アミン系分散剤はアミン骨格を有する分散剤をいい、好ましくはポリアミン骨格を有する。(C)成分のアミン価としては、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、さらに好ましくは10mgKOH/g以上であり、好ましくは45mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、さらに好ましくは35mgKOH/g以下である。アミン価は中和滴定法によって測定することができる。具体的には下記方法によって測定することができる。
【0055】
アミン系分散剤のアミン価の測定
試料15g(固形分換算)を200mLコニカルビーカーに計量し、トルエンを75mL加える。さらにエタノールを50mL加え、必要に応じて加温して、試料を均一溶解して溶液を得る。
【0056】
この溶液にチモールブルー試液を10滴加え均一混合し、0.5mol/L塩酸で振り
混ぜながら滴定した。液が淡紅色を呈した時点で滴定を終了し、下記計算式により、アミ
ン価を算出した。
アミン価(mgKOH/g)=(A×f×56.106×0.5)/試料量(g)
A:0.5mol/L塩酸の量(mL)
f:0.5mol/L塩酸のファクター(力価)
【0057】
(C)成分はカルボキシル基等の酸の官能基を有していてもよい。(C)の酸価としては、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、さらに好ましくは5mgKOH/g以上であり、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは28mgKOH/g以下、さらに好ましくは25mgKOH/g以下である。酸価は、中和滴定法、具体的にはJIS K 0070 に従って測定することができる。
【0058】
(C)アミン系分散剤の一実施形態としては、ポリエステルに由来するポリエステル骨格を含む分散剤を使用することができ、詳細は、ポリエステルに由来するポリエステル骨格、及びアミンに由来するアミン骨格、好ましくはポリアミン骨格を有する分散剤を使用できる。(A)成分は、従来用いられてきた高分子化合物よりも重量平均分子量が小さいので、ポリエステル骨格との相溶性が高い。また、高分子化合物は分子長が長いから、樹脂組成物中の磁性粉体間の距離が長くなるので比透磁率の低下を招くが、本発明にて用いられる(A)成分は高分子化合物よりも分子長が短いので、樹脂組成物中の磁性粉体間の距離が短くなる。その結果、磁気モーメントが多くなり、比透磁率が向上すると推定される。また、アミン骨格における窒素原子は磁性粉体と吸着するので、アミン骨格をシェルとしてコアに磁性粉体を内包した態様となる。その結果、樹脂組成物の硬化物の機械的強度を向上させることが可能になると推定される。
【0059】
ポリエステル骨格は、ポリエステルに由来する骨格であり、ポリエステル骨格は、一般式(1)で表されることが好ましい。
【化2】
(一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数2~10の2価の炭化水素基を表し、nは2~1000の整数を表す。)
【0060】
一般式(1)中のRは、炭素原子数2~10の2価の炭化水素基を表す。炭化水素基は、炭素原子数が2以上であり、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。炭素原子数の上限は10以下であり、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。炭化水素基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、直鎖状、分枝状の炭化水素基が好ましい。炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられ、脂肪族炭化水素基が好ましい。炭化水素基としては、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基のいずれでもよく、飽和炭化水素基が好ましい。炭化水素基の具体例としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基等が挙げられる。中でも、炭化水素基としてはアルキレン基が特に好ましい。
【0061】
アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等が挙げられる。アルケニレン基としては、例えば、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基、へキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基、ノネニレン基、デセニレン基等が挙げられる。アルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、ピロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。中でも、Rとしては、ブチレン基、ペンチレン基が好ましい。
【0062】
一般式(1)中のRが表す2価の炭化水素基は、置換基を有していなくてもよく、有していてもよい。置換基としては、特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-6アルキル基、-N(C1-10アルキル基)、C1-10アルキル基、C6-10アリール基、-NH、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO等が挙げられる。ここで、「Cp-q」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp~qであることを表す。例えば、「C1-10アルキル基」という表現は、炭素原子数1~10のアルキル基を示す。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。
【0063】
上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0064】
一般式(1)中のnは、2~1000の整数を表す。nは、2以上であり、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。上限は1000以下であり、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、50以下である。
【0065】
アミン骨格は、アミンに由来する骨格である。アミンとしては、例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン等が挙げられる。中でも、ポリアリルアミンが好ましい。
【0066】
(C)成分は、アミン骨格及びポリエステル骨格に加えて、任意の骨格を含んでいてもよい。任意の骨格としては、例えば一般式(1)中のRが炭素原子数1又は11以上の2価の炭化水素基であるポリエステル骨格(nは式(1)と同じ)が挙げられる。このポリエステル骨格の末端は特に限定されない。
【0067】
(C)成分の末端としては、例えば後述するカルボン酸の残基、ヒドロキシ基、水素原子等が挙げられる。
【0068】
(C)成分は、例えば、ポリアミンにポリエステルを反応させることによって製造することができる。ポリアミンとしては、例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン等が挙げられ、ポリアリルアミンが好ましい。
【0069】
ポリアミンは、重合開始剤及び/又は連鎖移動触媒の存在下、モノマーのアミンを重合させることで得られる。例えば、ポリアリルアミンは、重合開始剤及び/又は連鎖移動触媒の存在下、アリルアミンを重合させることで得ることができる。
【0070】
重合開始剤としては特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン等のケトンパーオキシド類、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキシド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、1、1-ビス(t-ブチルパーロキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、t-ブチルヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド類、t-ブチルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類、その他アゾビスイソプチロニリトリル、過酸化水素、第一鉄塩等を挙げることができる。さらに特公平2-14364号公報に記載の重合開始剤を用いてもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0071】
連鎖移動触媒としては特に限定されず、例えば、ラウリルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン類、メルカプト酢酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸などのチオカルボン酸類、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸2-エチルヘキシル等のチオカルボン酸エステル等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0072】
ポリアミンの重量平均分子量としては、150~100000が好ましく、600~20000がより好ましい。ポリアミンの重量平均分子量が150以上であると、粒子に対する吸着力が向上して粒子分散性が向上し、ポリアミンの重量平均分子量が100000以下であると、粒子同士の凝集を抑制でき、粒子分散性が向上する。なお、特公平2-14364号公報に記載の方法を用いて、任意の重量平均分子量のポリアミンを製造してもよい。
【0073】
ポリアミンは、市販品を用いることができる。ポリアミンの市販品としては、例えば、ニットーボーメディカル社製「PAA-01」、「PAA-03」、「PAA-05」、「PAA-08」、「PAA-15」、「PAA-15C」、「PAA-25」等が挙げられる。
【0074】
ポリエステルは、例えば、例えば一般式(2)で表されるラクトン及びカルボン酸を反応させることで製造することができる。
【化3】
(一般式(2)中、Rは、一般式(1)中のRと同じである。)
【0075】
一般式(2)で表されるラクトンとしては、例えば、ε-カプロラクトン、βプロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、4-メチルカプロラクトン、2-メチルカプロラクトン等が挙げられる。
【0076】
カルボン酸は、一般式(2)で表されるラクトンの開環重合の開始剤として機能するものを用いることができる。このようなカルボン酸としては、例えば、リシノール酸、リシノレイン酸、9および10-ヒドロキシステアリン酸、ひまし油脂肪酸、水添ひまし油脂肪酸、乳酸、12-ヒドロキシステアリン酸、グリコール酸等のヒドロキシカルボン酸;ドデカン酸、ステアリン酸等が挙げられる。中でも、ヒドロキシカルボン酸が好ましい。
【0077】
反応温度は好ましくは120~220℃、より好ましくは160~210℃である。また、反応時間は好ましくは0.5~72時間である。窒素気流下で反応を行うと、重合度が大きいポリエステルを得ることができる。
【0078】
また、前記の反応は、必要に応じて、反応を制御する観点から重合触媒又は重合開始剤を用いてもよい。
【0079】
重合触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミドテトラメチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムヨード、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヨード等の四級アンモニウム塩;テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨード、テトラブチルホスホニウムヨード、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヨード、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムヨード等の四級ホスホニウム塩;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩;ナトリウムアルコラート、カリウムアルコラート等のアルカリ金属アルコラート;三級アミン類;有機錫化合物;有機アルミニウム化合物;テトラブチルチタネート等の有機チタネート化合物;塩化亜鉛等の亜鉛化合物;等が挙げられる。
【0080】
重合開始剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、オクチル酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソノナン酸、アラキン酸等の脂肪族モノカルボン酸;安息香酸、p-ブチル安息香酸等の芳香族モノカルボン酸、等のモノカルボン酸等が挙げられる。
【0081】
ポリエステルの重量平均分子量としては、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上、さらに好ましくは2000以上であり、好ましくは50000以下、より好ましくは40000以下、さらに好ましくは30000以下である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量分子量である。
【0082】
ポリアミンとポリエステルとの反応における反応温度及び反応時間は、一般式(2)で表されるラクトン及びカルボン酸の反応における反応温度及び反応時間と同じである。
【0083】
(C)成分の製造においては、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、ポリアミン、ポリエステルに加えて、さらに任意のモノマーを用いてもよい。任意のモノマーとしては、例えば、一般式(1)中のRが炭素原子数1又は11以上の2価の炭化水素基であるポリエステル等が挙げられる。
【0084】
(C)成分のpHは、通常4以上7未満となり得る。pHは指示薬法により測定することができる。具体的には、アセトンに分散剤を溶解させて調製した、分散剤濃度0.1g/mLの測定サンプル(22℃)を、pH試験紙に浸すことにより測定することができる。pH試験紙としては、酸性領域のpHが測定可能なpH試験紙(例えば測定領域が、pH0.0~14.0、pH1.0~14.0、又はpH0.5~5.0のもの等)を用いることができ、例えばアズワン社製のpH試験紙「pH試験紙pH1~14」(pH測定範囲pH1.0~14.0)等が挙げられる。
【0085】
(C)成分の重量平均分子量としては、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上、さらに好ましくは2000以上であり、好ましくは50000以下、より好ましくは40000以下、さらに好ましくは30000以下である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量分子量である。
【0086】
(C)成分は、市販品を用いることができる。(C)成分の市販品としては、例えば、日本ルーブリゾール社製「ソルスバース24000GR」等が挙げられる。
【0087】
(C)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0088】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分の含有量をCmとする。Am/Cmは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。
【0089】
<(D)磁性粉体>
樹脂組成物は、(D)成分として、(D)磁性粉体を含有する。(D)磁性粉体を樹脂組成物に含有させることで、樹脂組成物の硬化物の比透磁率を高め、損失係数を低減させることができる。(D)磁性粉体は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0090】
(D)磁性粉体は、比透磁率が1より大きい材料の粒子を用いることができる。(D)磁性粉体の一実施形態として、ナノ結晶磁性粉、及び小径磁性粉のいずれかを含むことが好ましく、ナノ結晶磁性粉を含むことがより好ましい。
【0091】
用語「ナノ結晶磁性粉」とは、粒径100nm以下の結晶粒を含む磁性粉をいう。結晶粒の粒径の下限は、特に制限はないが、好ましくは1nm以上である。中でも、ナノ結晶磁性粉は、結晶粒の最大粒径が100nm以下であることが好ましい。通常、ナノ結晶磁性粉の粒子1個には、複数個の結晶粒が含まれており、よって、ナノ結晶磁性粉の粒子は多結晶体でありうる。結晶粒の大きさは、例えば、TEM(透過型電子顕微鏡)により観察しうる。ナノ結晶磁性粉は、結晶粒を含有するので、一般に、X線回折パターンにおいて結晶性を示すピークを示しうる。結晶粒が有する結晶構造としては、例えばbcc結晶構造(体心立方格子構造)が挙げられるが、これ以外の結晶構造であってもよい。
【0092】
ナノ結晶磁性粉は、通常、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。ナノ結晶磁性粉は、その粒子の少なくとも一部に結晶粒を含むものであってもよく、粒子の表層に結晶粒を含むものが好ましく、粒子の全体に結晶粒を含むものがより好ましく、結晶粒のみからなるものが特に好ましい。
【0093】
ナノ結晶磁性粉は、通常、5.5μm以上20μm以下の範囲の粒径を有する。ナノ結晶磁性粉の粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、ナノ結晶磁性粉の粒径分布を体積基準で作成し、その粒径分布から測定できる。測定サンプルは、磁性粉を超音波により純水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、マイクロトラックベル社製「MT3000II」、堀場製作所社製「LA-960」、島津製作所社製「SALD-2200」等を使用することができる。
【0094】
ナノ結晶磁性粉の平均粒径D50は、通常5.5μm以上、好ましくは5.7μm以上、より好ましくは5.9μm以上であり、通常20μm以下、好ましくは18μm以下、より好ましくは16μm以下である。このような範囲の平均粒径D50を有するナノ結晶磁性粉を用いることで、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。ナノ結晶磁性粉の平均粒径D50は、体積基準のメジアン径を表し、前記のレーザー回折・散乱法で測定された体積基準の粒径分布から測定できる。
【0095】
ナノ結晶磁性粉の体積基準の粒径分布は、通常、正規分布に従う。よって、ナノ結晶磁性粉は、当該ナノ結晶磁性粉の平均粒径D50より小さい10%粒径D10、及び、当該ナノ結晶磁性粉の平均粒径D50より大きい90%粒径D90を有しうる。ここで、10%粒径D10とは、体積基準の粒径分布において、粒径の小さい側から累積した体積の積算量が10%となるときの粒径を表す。また、90%粒径D90とは、体積基準の粒径分布において、粒径の小さい側から累積した体積の積算量が90%となるときの粒径を表す。ナノ結晶磁性粉の10%粒径D10及び90%粒径D90は、前記のレーザー回折・散乱法で測定された体積基準の粒径分布から測定できる。
【0096】
ナノ結晶磁性粉の10%粒径D10は、好ましくは2.0μmよりも大きく、より好ましくは2.4μm以上、特に好ましくは2.8μm以上である。上限は、平均粒径D50以下であり、例えば、10μm以下、8μm以下、6μm以下等であり得る。ナノ結晶磁性粉の10%粒径D10が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0097】
ナノ結晶磁性粉の90%粒径D90は、好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは40μm以下ある。下限は、平均粒径D50以上であり、例えば、6μm以上、8μm以上、10μm以上等であり得る。ナノ結晶磁性粉の90%粒径D90が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0098】
ナノ結晶磁性粉の10%粒径D10と90%粒径D90との差D90-D10は、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下、特に好ましくは30μm以下である。差D90-D10が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0099】
ナノ結晶磁性粉の10%粒径D10と90%粒径D90との比D90/D10は、好ましくは1.1以上、より好ましくは2以上、特に好ましくは3以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは6以下である。比D90/D10が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0100】
ナノ結晶磁性粉は、1より大きい比透磁率を有する磁性材料の粒子でありうる。この磁性材料は、通常は無機材料であり、軟磁性材料であってもよく、硬磁性材料であってもよい。また、磁性材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、ナノ結晶磁性粉の偏在化を抑制する観点から、ナノ結晶磁性粉に含まれる磁性材料としては、軟磁性材料が好ましい。
【0101】
ナノ結晶磁性粉が含む磁性材料としては、例えば、磁性金属酸化物、磁性金属が挙げられる。中でも、ナノ結晶磁性粉が含む磁性材料は、鉄(Fe)を含有することが好ましい。よって、ナノ結晶磁性粉が含む磁性材料としては、結晶性を有する鉄合金磁性材料、結晶性を有するフェライト磁性材料などが挙げられる。透磁率および損失係数の観点では、ナノ結晶磁性粉が含む磁性材料は、Feに組み合わせて、Nb、Hf、Zr、Ta、Mo、W及びVからなる群から選択される1つ以上の元素を更に含有する組成を有することが好ましい。
【0102】
ナノ結晶磁性粉に含まれる磁性材料の好ましい例としては、特開2021-158343号公報、特開2021-141267号公報、特開2019-31463号公報、特開2021-11602号公報等に記載の磁性材料が挙げられる。
【0103】
前記の例の中でも、透磁率および損失係数の観点から、Fe-Si-Nb-B合金粉が好ましい。Fe-Si-Nb-B合金粉とは、Fe、Si、Nb及びBを含有する合金で形成された磁性粉を表す。
【0104】
ナノ結晶磁性粉は、前記の磁性材料を含むことが好ましく、前記の磁性材料のみを含むことが好ましい。また、ナノ結晶磁性粉は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
ナノ結晶磁性粉は、例えば、アトマイズ法によって製造しうる。ナノ結晶磁性粉の製造方法の具体例としては、特開2021-141267号公報、特開2021-158343号公報に記載の方法が挙げられる。
【0106】
また、ナノ結晶磁性粉は、市販品を用いてもよい。ナノ結晶磁性粉を含む市販の磁性粉としては、例えば、エプソンアトミックス社製の「KUAMET NC1-53μm」、「KUAMET NC1-38μm」、「ATFINE-NC1 PF10FA」などが挙げられる。なお、ナノ結晶磁性粉を市場から入手する場合、必要に応じて、市販の磁性粉を分級して用いてもよい。
【0107】
ナノ結晶磁性粉は、球状であることが好ましい。ナノ結晶磁性粉の粒子の長軸の長さを短軸の長さで除した値(アスペクト比)としては、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下であり、通常1以上、好ましくは1より大きく、より好ましくは1.05以上である。
【0108】
ナノ結晶磁性粉の含有量(質量%)は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。ナノ結晶磁性粉の含有量が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0109】
ナノ結晶磁性粉の含有量(体積%)は、樹脂組成物の不揮発成分100体積%に対して、好ましくは23体積%以上、より好ましくは25体積%以上、さらに好ましくは28体積%以上であり、好ましくは60体積%以下、より好ましくは50体積%以下、さらに好ましくは40体積%以下である。ナノ結晶磁性粉の含有量が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0110】
小径磁性粉は、通常、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。この小径磁性粉は、通常2μm以下の粒径を有する。小径磁性粉の粒径は、ナノ結晶磁性粉の粒径と同じ方法によって測定しうる。
【0111】
小径磁性粉の平均粒径D50は、通常2μm以下、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1μm以下である。下限は、例えば、0.01μm以上、0.1μm以上などでありうる。このような範囲の平均粒径D50を有する小径磁性粉を用いることで、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。小径磁性原料粉の平均粒径D50は、体積基準のメジアン径を表し、ナノ結晶磁性粉の平均粒径D50と同じ方法によって測定できる。
【0112】
小径磁性粉の体積基準の粒径分布は、通常、正規分布に従う。よって、小径磁性粉は、当該小径磁性粉の平均粒径D50より小さい10%粒径D10、及び、当該小径磁性粉の平均粒径D50より大きい90%粒径D90を有しうる。小径磁性粉の10%粒径D10及び90%粒径D90は、ナノ結晶磁性粉の10%粒径D10及び90%粒径D90と同じ方法で測定できる。
【0113】
小径磁性粉の10%粒径D10は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、特に好ましくは0.03μm以上である。上限は、平均粒径D50以下であり、例えば、1μm以下、0.7μm以下、0.5μm以下などでありうる。小径磁性粉の10%粒径D10が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0114】
小径磁性粉の90%粒径D90は、好ましくは5.5μm未満、より好ましくは4μm以下、特に好ましくは2μm以下である。下限は、平均粒径D50以上であり、例えば、0.5μm以上、0.8μm以上、1μm以上などでありうる。小径磁性粉の90%粒径D90が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0115】
小径磁性粉の10%粒径D10と90%粒径D90との差D90-D10は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、特に好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、特に好ましくは3μm以下である。差D90-D10が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0116】
小径磁性粉の10%粒径D10と90%粒径D90との比D90/D10は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは2以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、特に好ましくは30以下である。比D90/D10が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0117】
小径磁性粉は、結晶粒を含むナノ結晶磁性粉であってもよく、結晶粒を含まないアモルファス磁性粉であってもよく、ナノ結晶磁性粉以外の結晶磁性粉であってもよく、これらを組み合わせであってもよい。ナノ結晶磁性粉は上記したとおりである。他方、アモルファス磁性材料は、非晶質であるので、通常、X線回折パターンでは結晶性を示す特定のピークを示さない。一般には、アモルファス磁性粉のX線回折パターンには、結晶性を示すピークのないブロードなパターンが現れる。
【0118】
小径磁性粉は、1より大きい比透磁率を有する磁性材料の粒子でありうる。この磁性材料は、通常は無機材料であり、軟磁性材料であってもよく、硬磁性材料であってもよい。また、磁性材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、小径磁性粉の偏在化を抑制する観点から、小径磁性粉に含まれる磁性材料としては、軟磁性材料が好ましい。
【0119】
小径磁性粉が含む磁性材料としては、例えば、磁性金属酸化物材料、磁性金属材料が挙げられる。
【0120】
磁性金属酸化物材料としては、例えば、フェライト系の磁性材料;並びに、酸化鉄粉(III)、四酸化三鉄粉などの酸化鉄材料;などが挙げられる。中でも、フェライト系の磁性材料が好ましい。フェライト系の磁性材料は、通常、酸化鉄を主成分とする複合酸化物であり、化学的に安定している。よって、フェライト系の磁性材料を用いる場合、耐食性が高く、発火の危険性が低く、減磁し難い等の利点が得られる。
【0121】
フェライト系の磁性材料としては、例えば、Fe-Mn系フェライト、Fe-Mn-Mg系フェライト、Fe-Mn-Mg-Sr系フェライト、Fe-Mg-Zn系フェライト、Fe-Mg-Sr系フェライト、Fe-Zn-Mn系フェライト、Fe-Cu-Zn系フェライト、Fe-Ni-Zn系フェライト、Fe-Ni-Zn-Cu系フェライト、Fe-Ba-Zn系フェライト、Fe-Ba-Mg系フェライト、Fe-Ba-Ni系フェライト、Fe-Ba-Co系フェライト、Fe-Ba-Ni-Co系フェライト、Fe-Y系フェライト等が挙げられる。
【0122】
フェライト系の磁性材料の中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、Mn、Zn、Ni及びCuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むフェライトが好ましく、Mnを含むフェライトが特に好ましい。よって、好ましいフェライト系の磁性材料としては、例えば、Fe-Mn系フェライト、Fe-Mn-Mg系フェライト、Fe-Mn-Mg-Sr系フェライト、Fe-Mg-Zn系フェライト、Fe-Zn-Mn系フェライト、Fe-Cu-Zn系フェライト、Fe-Ni-Zn系フェライト、Fe-Ni-Zn-Cu系フェライト、Fe-Ba-Zn系フェライト、Fe-Ba-Ni系フェライト、Fe-Ba-Ni-Co系フェライトが挙げられる。その中でも、Fe-Mn系フェライト、Fe-Mn-Mg系フェライト、Fe-Mn-Mg-Sr系フェライト、及びFe-Zn-Mn系フェライトが好ましく、Fe-Mn系フェライトが特に好ましい。Fe-Mnフェライトは、Fe及びMnを含有するフェライトを表す。
【0123】
磁性金属材料としては、例えば、純鉄;Fe-Si系合金、Fe-Si-Al系合金、Fe-Cr系合金、Fe-Cr-Si系合金、Fe-Ni-Cr系合金、Fe-Cr-Al系合金、Fe-Ni系合金、Fe-Ni-B系合金、Fe-Ni-Mo系合金、Fe-Ni-Mo-Cu系合金、Fe-Co系合金、Fe-Ni-Co系合金、Co基アモルファス合金等の、結晶質又は非晶質の合金磁性材料;などが挙げられる。磁性金属材料の中でも、鉄合金系磁性材料がより好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、Feと、Si、Cr、Al、Ni、及びCoからなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素とを含む鉄合金系磁性材料が好ましく、Fe-Si-Cr系合金が特に好ましい。Fe-Si-Cr系合金材料は、Fe、Si及びCrを含有する合金を表す。
【0124】
小径磁性粉が含む磁性材料として、ナノ結晶磁性粉の磁性材料として説明した磁性材料を用いてもよい。小径磁性粉が含む磁性材料と、ナノ結晶磁性粉の磁性材料とは、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0125】
小径磁性粉は、前記の磁性材料を含むことが好ましく、前記の磁性材料のみを含むことが好ましい。また、小径磁性粉は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0126】
小径磁性粉としては、市販の磁性粉を用いてもよい。市販の磁性粉の具体例としては、パウダーテック社製「MZ03S」、「M05S」、「M001」「MZ05S」;山陽特殊製鋼社製「PST-S」;エプソンアトミックス社製「AW2-08」、「AW2-08PF20F」、「AW2-08PF10F」、「AW2-08PF3F」、「Fe-3.5Si-4.5CrPF20F」、「Fe-50NiPF20F」、「Fe-80Ni-4MoPF20F」、「ATFINE-NC1 PF5FA」、「ATFINE-NC1 PF3FA」;JFEケミカル社製「CVD鉄粉(0.7μm)」、「LD-M」、「LD-MH」、「KNI-106」、「KNI-106GSM」、「KNI-106GS」、「KNI-109」、「KNI-109GSM」、「KNI-109GS」;戸田工業社製「KNS-415」、「BSF-547」、「BSF-029」、「BSN-125」、「BSN-125」、「BSN-714」、「BSN-828」、「S-1281」、「S-1641」、「S-1651」、「S-1470」、「S-1511」、「S-2430」;日本重化学工業社製「JR09P2」;CIKナノテック社製「Nanotek」;キンセイマテック社製「JEMK-S」、「JEMK-H」:ALDRICH社製「Yttrium iron oxide」;DOWAエレクトロニクス社製「MA-RCO-5」;等が挙げられる。小径磁性粉を市場から入手する場合、必要に応じて、市販の磁性粉を分級して用いてもよい。
【0127】
小径磁性粉は、球状であることが好ましい。小径磁性粉の粒子のアスペクト比の範囲は、ナノ結晶磁性粉のアスペクト比の範囲と同じでありうる。小径磁性粉のアスペクト比と、ナノ結晶磁性粉のアスペクト比とは、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0128】
小径磁性粉の含有量(質量%)は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは8質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。小径磁性粉の含有量が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0129】
小径磁性粉の含有量(体積%)は、樹脂組成物の不揮発成分100体積%に対して、好ましくは5体積%以上、より好ましくは6体積%以上、さらに好ましくは7体積%以上であり、好ましくは30体積%以下、より好ましくは26体積%以下、さらに好ましくは22体積%以下である。このような含有量の小径磁性粉を用いた場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0130】
樹脂組成物の不揮発成分100体積%に対して、ナノ結晶磁性粉の含有量(体積%)を「V(A)」で表し、小径磁性粉の含有量(体積%)を「V(B)」で表す。この場合、樹脂組成物に含まれるナノ結晶磁性粉と小径磁性粉との体積比(ナノ結晶磁性粉/小径磁性粉)は、「V(A)/V(B)」で表すことができる。この体積比V(A)/V(B)は、通常0.8以上、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.4以上であり、通常12以下、好ましくは8.4以下、より好ましくは7.0以下、更に好ましくは6.0以下、特に好ましくは5.0以下である。体積比V(A)/V(B)が前記の範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0131】
また、樹脂組成物の不揮発成分100体積%に対して、樹脂組成物に含まれるナノ結晶磁性粉と小径磁性粉との合計量(体積%)は、「V(A)+V(B)」で表すことができる。この合計量(体積%)V(A)+V(B)は、通常28体積%以上、好ましくは34体積%以上、更に好ましくは38体積%以上、特に好ましくは40体積%以上であり、好ましくは72体積%以下、より好ましくは68体積%以下、更に好ましくは64体積%以下、特に好ましくは60体積%以下である。ナノ結晶磁性粉と小径磁性粉との合計量(体積%)V(A)+V(B)が前記の範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0132】
樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、ナノ結晶磁性粉の含有量(質量%)を「M(A)」で表し、小径磁性粉の含有量(質量%)を「M(B)」で表す。この場合、樹脂組成物に含まれるナノ結晶磁性粉と小径磁性粉との質量比((A)ナノ結晶磁性粉/(B)小径磁性粉)は、「M(A)/M(B)」で表すことができる。この質量比M(A)/M(B)は、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、特に好ましくは5以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、特に好ましくは9以下である。質量比M(A)/M(B)が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0133】
また、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、樹脂組成物に含まれるナノ結晶磁性粉と小径磁性粉との合計量(質量%)は、「M(A)+M(B)」で表すことができる。この合計量(質量%)M(A)+M(B)は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは53質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、特に好ましくは88質量%以下である。合計量(質量%)M(A)+M(B)が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0134】
(D)磁性粉体は、ナノ結晶磁性粉及び小径磁性粉とは異なる磁性粉をさらに含んでいてもよい。ナノ結晶磁性粉及び小径磁性粉とは異なる磁性粉を、「中間磁性粉」ということがある。
【0135】
中間磁性粉は、下記(D1)及び(D2)の磁性粉が包含される。
(D1)ナノ結晶磁性粉であって、且つ、2μmより大きく5.5μm未満の粒径を有する磁性粉。
(D2)ナノ結晶磁性粉以外の磁性粉であって、且つ、2μmより大きく20μm以下の粒径を有する磁性粉。
【0136】
中間磁性粉を樹脂組成物に含有させることで、樹脂組成物中の磁性粉体の割合を大きくできるので、樹脂組成物の硬化物の比透磁率を大きくできる。通常、中間磁性粉によれば硬化物の損失係数が増大しうるが、中間磁性粉が小さい粒径を有するので、その損失係数の増大の程度は抑制できる。よって、中間磁性粉によれば、通常、損失係数の増大を抑制しながら比透磁率を向上させることができる。
【0137】
中間磁性粉の平均粒径D50は、具体的には、通常2μmより大きく、好ましくは2.5μm以上、より好ましくは3μm以上であり、通常ナノ結晶磁性粉の平均粒径未満、好ましくは5.5μm未満、より好ましくは5μm以下である。このような範囲の平均粒径D50を有する中間磁性粉を用いる場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。中間磁性粉の平均粒径D50は、体積基準のメジアン径を表し、ナノ結晶磁性粉の平均粒径D50と同じ方法によって測定できる。
【0138】
中間磁性粉の体積基準の粒径分布は、通常、正規分布に従う。よって、中間磁性粉は、当該中間磁性原料粉の平均粒径D50より小さい10%粒径D10、及び、当該中間磁性粉の平均粒径D50より大きい90%粒径D90を有しうる。中間磁性原料粉の10%粒径D10及び90%粒径D90は、ナノ結晶磁性粉の10%粒径D10及び90%粒径D90と同じ方法で測定できる。
【0139】
中間磁性粉の10%粒径D10は、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.3μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上である。上限は、平均粒径D50以下であり、例えば、5μm以下、4μm以下、3μm以下等であり得る。中間磁性粉の10%粒径D10が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0140】
中間磁性粉の90%粒径D90は、好ましくは10μm未満、より好ましくは9μm以下、特に好ましくは8μm以下ある。下限は、平均粒径D50以上であり、例えば、3μm以上、4μm以上、5μm以上等であり得る。中間磁性粉の90%粒径D90が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0141】
中間磁性粉の10%粒径D10と90%粒径D90との差D90-D10は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、特に好ましくは2μm以上であり、好ましくは9μm以下、より好ましくは7μm以下、特に好ましくは5μm以下である。差D90-D10が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0142】
中間磁性粉の10%粒径D10と90%粒径D90との比D90/D10は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは6以下である。比D90/D10が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0143】
中間磁性粉は、結晶粒を含むナノ結晶磁性粉であってもよく、結晶粒を含まないアモルファス磁性粉であってもよく、ナノ結晶磁性粉以外の結晶磁性粉であってもよく、これらを組み合わせであってもよい。この中間磁性粉は、1より大きい比透磁率を有する磁性材料の粒子でありうる。中間磁性粉が含む磁性材料としては、小径磁性粉の磁性材料として説明した磁性材料を用いてもよい。中間磁性粉が含む磁性材料と、小径磁性粉の磁性材料とは、同じでもよく、異なっていてもよい。中間磁性粉は、前記の磁性材料を含むことが好ましく、前記の磁性材料のみを含むことが好ましい。また、中間磁性粉は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0144】
中間磁性粉としては、市販の磁性粉を用いてもよい。市販の磁性粉の具体例としては、小径磁性粉と同様の例が挙げられる。中間磁性粉を市場から入手する場合、必要に応じて、市販の磁性粉を分級して用いてもよい。
【0145】
中間磁性粉は、球状であることが好ましい。中間磁性粉の粒子のアスペクト比の範囲は、ナノ結晶磁性粉のアスペクト比の範囲と同じでありうる。中間磁性粉のアスペクト比と、ナノ結晶磁性粉のアスペクト比とは、同じでもよく、異なっていてもよい。また、中間磁性粉のアスペクト比と、小径磁性粉のアスペクト比とは、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0146】
中間磁性粉の含有量(体積%)は、樹脂組成物の不揮発成分100体積%に対して、0体積%であってもよく、0体積%より大きくてもよく、好ましくは1体積%以上、より好ましくは3体積%以上、特に好ましくは5体積%以上であり、好ましくは25体積%以下、より好ましくは15体積%以下、特に好ましくは13体積%以下である。中間磁性粉の含有量が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0147】
中間磁性粉の含有量(質量%)は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは8質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。中間磁性粉の含有量が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0148】
樹脂組成物の不揮発成分100体積%に対して、中間磁性粉の量(体積%)を「V(C)」で表す。この場合、樹脂組成物に含まれるナノ結晶磁性粉と中間磁性粉との体積比(中間磁性粉/ナノ結晶磁性粉)は、「V(C)/V(A)」で表すことができる。この体積比V(C)/V(A)は、0でもよく、0より大きくてもよく、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上であり、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下、特に好ましくは0.8以下である。体積比V(C)/V(A)が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0149】
また、樹脂組成物に含まれる小径磁性粉と中間磁性粉との体積比(中間磁性粉/小径磁性粉)は、「V(C)/V(B)」で表すことができる。この体積比V(C)/V(B)は、0でもよく、0より大きくてもよく、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上であり、好ましくは8以下、より好ましくは5以下、特に好ましくは2以下である。体積比V(C)/V(B)が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0150】
ナノ結晶磁性粉、小径磁性粉、及び中間磁性粉の合計量(体積%)は、樹脂組成物の不揮発成分100体積%に対して、好ましくは70体積%以上、好ましくは75体積%以上、特に好ましくは80体積%以上であり、好ましくは95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、特に好ましくは85体積%以下である。ナノ結晶磁性粉、小径磁性粉、及び中間磁性粉の合計量(体積%)が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0151】
ナノ結晶磁性粉、小径磁性粉、及び中間磁性粉の合計量(体積%)は、樹脂組成物中の全ての磁性粉体の合計量100体積%に対して、好ましくは50体積%以上、より好ましくは60体積%以上、特に好ましくは70体積%以上であり、通常100体積%以下である。この数値が大きいことは、樹脂組成物中の粒径が20μmより大きい巨大磁性粉体が少ないことを表す。ナノ結晶磁性粉、小径磁性粉、及び中間磁性粉の合計量(体積%)が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0152】
樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、中間磁性粉の含有量(質量%)を「M(C)」で表す。この場合、樹脂組成物に含まれるナノ結晶磁性粉と中間磁性粉との質量比(中間磁性粉/ナノ結晶磁性粉)は、「M(C)/M(A)」で表すことができる。この質量比M(C)/M(A)は、0でもよく、0より大きくてもよく、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、特に好ましくは5以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、特に好ましくは9以下である。質量比M(C)/M(A)が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0153】
また、樹脂組成物に含まれる小径磁性粉と中間磁性粉との質量比(中間磁性粉/小径磁性粉)は、「M(C)/M(B)」で表すことができる。この質量比M(C)/M(B)は、0でもよく、0より大きくてもよく、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは8以下、より好ましくは5以下、特に好ましくは1.5以下である。質量比M(C)/M(B)が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0154】
ナノ結晶磁性粉、小径磁性粉、及び中間磁性粉の合計量(質量%)は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは40質量%以上、好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。ナノ結晶磁性粉、小径磁性粉、及び中間磁性粉の合計量(質量%)が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0155】
ナノ結晶磁性粉、小径磁性粉、及び中間磁性粉の合計量(質量%)は、樹脂組成物中の全ての磁性粉体の合計量100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、通常100質量%以下である。この数値が大きいことは、樹脂組成物中の粒径が20μmより大きい巨大磁性粉体が少ないことを表す。ナノ結晶磁性粉、小径磁性粉、及び中間磁性粉の合計量(質量%)が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0156】
樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、(D)磁性粉体の含有量をDmとし、(C)成分の含有量をCmとする。Dm/Cmは、好ましくは100以上、より好ましくは130以上、さらに好ましくは150以上であり、好ましくは800以下、より好ましくは600以下、さらに好ましくは550以下である。
【0157】
(D)磁性粉体の含有量(体積%)は、樹脂組成物の不揮発成分100体積%に対して、好ましくは70体積%以上、好ましくは75体積%以上、特に好ましくは80体積%以上であり、好ましくは95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、特に好ましくは85体積%以下である。(D)磁性粉体の含有量が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0158】
(D)磁性粉体の含有量(質量%)は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは40質量%以上、好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。(D)磁性粉体の含有量が前記範囲にある場合、比透磁率、損失係数及び機械的強度を改善することができる。
【0159】
<(E)溶剤>
樹脂組成物は、上述した(A)~(D)成分といった不揮発成分に組み合わせて、更に、揮発性成分として(E)溶剤を含んでいてもよい。
【0160】
(E)溶剤としては、通常、有機溶剤を用いる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。中でも、(E)溶剤としては、脂肪族炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤が好ましい。(E)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0161】
(E)溶剤の量は、樹脂シートにおける支持体との間の剥離性を向上させ、樹脂組成物層のタック性を低下させる観点から、樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上である。上限は、樹脂シートの製造において、樹脂ワニスの粘度を下げて塗工しやすくする観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0162】
<(F)硬化剤>
樹脂組成物は、(A)~(D)成分に組み合わせて、(F)成分として、(F)硬化剤を含んでいてもよい。この(F)成分としての(F)硬化剤には、上述した(A)~(E)成分に該当するものは含めない。(F)硬化剤には、(B)エポキシ樹脂を硬化する機能を有するエポキシ樹脂硬化剤と、(B)エポキシ樹脂の硬化速度を促進させる機能を有する硬化促進剤とがある。硬化促進剤は、通常、エポキシ樹脂硬化剤と併用して用いる。樹脂組成物は、(F)硬化剤として、エポキシ樹脂硬化剤を含むことが好ましい。
【0163】
(エポキシ樹脂硬化剤)
エポキシ樹脂硬化剤は、通常、(B)エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させ得る。エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、フェノール系エポキシ樹脂硬化剤、ナフトール系エポキシ樹脂硬化剤、活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤、酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤、ベンゾオキサジン系エポキシ樹脂硬化剤、シアネートエステル系エポキシ樹脂硬化剤、及びイミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤が挙げられる。エポキシ樹脂硬化剤としては、フェノール系エポキシ樹脂硬化剤、及びナフトール系エポキシ樹脂硬化剤から選択される1種以上が好ましく、フェノール系エポキシ樹脂硬化剤がより好ましい。エポキシ樹脂硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0164】
フェノール系エポキシ樹脂硬化剤及びナフトール系エポキシ樹脂硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系エポキシ樹脂硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系エポキシ樹脂硬化剤が好ましい。フェノール系エポキシ樹脂硬化剤としては、含窒素フェノール系エポキシ樹脂硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系エポキシ樹脂硬化剤がより好ましく、トリアジン骨格含有フェノールノボラックエポキシ樹脂硬化剤がさらに好ましい。
【0165】
フェノール系エポキシ樹脂硬化剤及びナフトール系エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」、群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」等が挙げられる。
【0166】
活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0167】
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤が好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造を表す。
【0168】
活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤として、DIC社製の「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」;ナフタレン構造を含む活性エステル化合物としてDIC社製の「EXB9416-70BK」;フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤として三菱ケミカル社製の「DC808」;フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤として三菱ケミカル社製の「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」;フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤として三菱ケミカル社製の「DC808」、等が挙げられる。
【0169】
酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有するエポキシ樹脂硬化剤が挙げられる。酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0170】
酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」等が挙げられる。
【0171】
ベンゾオキサジン系エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
【0172】
シアネートエステル系エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0173】
イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0174】
イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、四国化成工業社製の「2MZA-PW」、「2PHZ-PW」、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0175】
エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[エポキシ樹脂硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.2~1:2の範囲であることが好ましく、1:0.3~1:1.5の範囲であることがより好ましく、1:0.4~1:1の範囲であることがさらに好ましい。ここで、エポキシ樹脂硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、エポキシ樹脂硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、エポキシ樹脂硬化剤の反応基の合計数とは、各エポキシ樹脂硬化剤の不揮発成分の質量を反応基当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との量比をかかる範囲内とすることにより、硬化物としたときの耐熱性がより向上する。
【0176】
エポキシ樹脂硬化剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上であり、上限は、好ましくは8質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0177】
(硬化促進剤)
硬化促進剤は、通常、(B)エポキシ樹脂の硬化反応に触媒として作用して、硬化反応を促進しうる。硬化促進剤としては、例えば、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤は、樹脂組成物の粘度を低下させる観点から、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、及びグアニジン系硬化促進剤が好ましく、さらに得られる硬化物の機械的強度を向上させる観点からイミダゾール系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化促進剤は一般的にエポキシ樹脂硬化剤と併用して用いられる。
【0178】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0179】
アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「PN-50」、「PN-23」、「MY-25」等が挙げられる。
【0180】
イミダゾール系硬化促進剤としては、前記のイミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤と同様である。前記イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤は、他のエポキシ樹脂硬化剤と併用して用いる場合、硬化促進剤として機能する場合がある。
【0181】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0182】
リン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、北興化学工業社製の「TBP-DA」等が挙げられる。
【0183】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0184】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0185】
硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、上限は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下である。
【0186】
(F)硬化剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上であり、上限は、好ましくは8質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0187】
<(G)その他の添加剤>
樹脂組成物は、任意の不揮発成分として、(G)その他の添加剤を含んでいてもよい。(G)その他の添加剤としては、例えば、ラジカル重合性化合物;重合開始剤;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の任意の分散剤((C)成分に該当するものは除く);ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤;第三級アミン類等の光重合開始助剤;ピラリゾン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、チオキサントン類等の光増感剤;が挙げられる。(G)その他の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0188】
<樹脂組成物の物性等>
樹脂組成物を、190℃で90分間加熱することにより得られた硬化物は、機械的強度に優れるという特性を示す。よって、前記硬化物は、引張強度に優れる磁性層をもたらす。引張強度としては、好ましくは70MPa以上、より好ましくは71MPa以上、さらに好ましくは72MPa以上である。上限は特に限定されないが、150MPa以下等とし得る。機械的強度(引張強度)は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0189】
樹脂組成物を、190℃で90分間加熱することにより得られた硬化物は、機械的強度に優れるという特性を示す。よって、前記硬化物は、破断伸び率に優れる磁性層をもたらす。破断伸び率としては、好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.55%以上、さらに好ましくは0.6%以上である。上限は特に限定されないが、10%以下等とし得る。機械的強度(破断伸び率)は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0190】
樹脂組成物を、190℃で90分間加熱することにより得られた硬化物は、機械的強度に優れるという特性を示す。よって、前記硬化物は、ヤング率に優れる磁性層をもたらす。ヤング率としては、好ましくは10GPa以上、より好ましくは11GPa以上、さらに好ましくは12GPa以上である。上限は特に限定されないが、50GPa以下等とし得る。機械的強度(ヤング率)は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0191】
樹脂組成物を、190℃で90分間加熱することにより得られた硬化物は、周波数10MHzにおける比透磁率が高いという特性を示す。よって、前記硬化物は、比透磁率が高い磁性層をもたらす。この硬化物の周波数10MHzにおける比透磁率は、好ましくは40以上、より好ましくは43以上、さらに好ましくは45以上である。また、上限は特に限定されないが100以下等とし得る。比透磁率は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0192】
樹脂組成物を、190℃で90分間加熱することにより得られた硬化物は、通常、周波数10MHzにおける損失係数が低いという特性を示す。よって、前記硬化物は、損失係数が低い磁性層をもたらす。この硬化物の周波数10MHzにおける損失係数は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下である。下限は特に限定されないが0.001以上等とし得る。損失係数は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0193】
樹脂組成物は、上述した利点を活用する観点から、回路基板の磁性層形成用として用いることが好ましい。また、樹脂組成物は、上述した利点を活用する観点から、コア基材のスルーホール充填用として用いることも好ましい。
【0194】
[樹脂シート]
樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを含む。
【0195】
樹脂組成物層の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは50μm以上であり、好ましくは600μm以下、より好ましくは300μm以下、特に好ましくは200μm以下である。
【0196】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0197】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリルポリマー、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0198】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0199】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。
【0200】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「PET501010」、「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」;東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0201】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0202】
樹脂シートは、例えば、樹脂組成物を、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。必要に応じて溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを支持体上に塗布してもよい。溶剤を用いる場合、必要に応じて塗布後に乾燥を行ってもよい。
【0203】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物中に含まれる成分によっても異なるが、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0204】
樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0205】
[回路基板及びその製造方法]
本発明の一実施形態に係る回路基板は、磁性層を含む。この磁性層は、上述した樹脂組成物、又は樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物を含み、好ましくは上述した樹脂組成物の硬化物のみを含む。回路基板の具体的な構造は、上述した樹脂組成物の硬化物を含む磁性層を備える限り制限は無い。第1実施形態の回路基板は、スルーホールを形成された基材としてのコア基材と、このスルーホールに充填された磁性層とを備える回路基板である。また、第2実施形態の回路基板は、樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物により形成された磁性層を含む回路基板である。これら回路基板において、磁性層は、樹脂組成物層を硬化した層でありえ、樹脂組成物を硬化した層であってもよい。以下、回路基板の製造方法の第1実施形態及び第2実施形態について説明する。但し、本発明に係る回路基板の製造方法は、以下に例示する第1及び第2実施形態に限定されない。
【0206】
<第1実施形態>
第1実施形態の回路基板は、スルーホールを形成されたコア基材と、このスルーホールに充填された磁性層と、を備える。この回路基板は、例えば、
(1)スルーホールを形成されたコア基材と、樹脂シートとを、樹脂組成物層がスルーホールに充填されるように、積層する工程と、
(2)樹脂組成物層を硬化させて、磁性層を形成する工程と、
をこの順に含む。
【0207】
また、第1実施形態の回路基板の製造方法は、前記の工程(1)~(2)に組み合わせて任意の工程を含んでいてもよい。例えば、回路基板の製造方法は、
(3)磁性層を研磨する工程、
(4)磁性層に粗化処理を施す工程、及び、
(5)磁性層上に導体層を形成する工程、
を含んでいてもよい。通常は、工程(3)、工程(4)及び工程(5)はこの順に行われる。
【0208】
<工程(1)>
工程(1)は、通常、スルーホールが形成されたコア基材を用意する工程を含む。コア基材は、市場から購入して用意してもよい。また、コア基材は、適切な材料を用いて製造して用意してもよい。以下、一例に係るコア基材の製造方法を説明する。
【0209】
図1は、本発明の第1実施形態係る回路基板の製造方法において、スルーホールを形成される前のコア基材10を模式的に示す断面図である。コア基材10を用意する工程は、図1に示す例のように、磁性層が充填されるべきスルーホールが形成されていないコア基材10を用意することを含んでいてもよい。このコア基材10は、スルーホールを形成される前の基材であり、板状の部材でありうる。
【0210】
コア基材10は、通常、支持基板11を含む。支持基板11としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の絶縁性基材が挙げられる。また、該支持基板11上には、金属層が設けられていてもよい。金属層は、支持基板11の片面に設けられていてもよく、両面に設けられていてもよい。ここでは、支持基板11の両表面に金属層12及び13が設けられた例を示す。金属層12及び13としては、例えば、銅等の金属によって形成された層が挙げられる。金属層12及び13は、例えば、キャリア付銅箔等の銅箔であってもよく、後述する導体層の材料で形成された金属層であってもよい。
【0211】
図2は、本発明の第1実施形態に係る回路基板の製造方法において、スルーホール14を形成されたコア基材10を模式的に示す断面図である。コア基材10を用意する工程は、図2に示す例のように、コア基材10にスルーホール14を形成することを含んでいてもよい。スルーホール14は、例えば、ドリル加工、レーザー照射、プラズマ照射等の方法により形成することができる。通常は、コア基材10に貫通穴を形成することにより、スルーホール14を形成することができる。具体例を挙げると、スルーホール14の形成は、市販されているドリル装置を用いて実施することができる。市販されているドリル装置としては、例えば、日立ビアメカニクス社製「ND-1S211」等が挙げられる。
【0212】
図3は、本発明の第1実施形態に係る回路基板の製造方法において、スルーホール14内にめっき層20を形成されたコア基材10を模式的に示す断面図である。コア基材10を用意する工程は、必要に応じてコア基材10に粗化処理を施した後、図3に示すようにめっき層20を形成することを含んでいてもよい。前記の粗化処理としては、乾式及び湿式のいずれの粗化処理を行ってもよい。乾式の粗化処理の例としては、プラズマ処理等が挙げられる。また、湿式の粗化処理の例としては、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。めっき層20は、めっき法により形成されうる。めっき法によりめっき層20が形成される手順は、後述する工程(5)における導体層の形成と同じでありうる。ここでは、スルーホール14内、金属層12の表面、及び、金属層13の表面にめっき層20を形成した例を示す。また、本例では、めっき層20を備えるコア基材を、めっき層20を形成される前のコア基材10と同じ符号「10」を付して説明する。
【0213】
図4は、本発明の第1実施形態に係る回路基板の製造方法において、コア基材10と樹脂シート30とを積層する様子を模式的に示す断面図である。工程(1)は、スルーホール14を形成されたコア基材10を用意した後で、図4に示すように、コア基材10と樹脂シート30とを積層することを含む。本実施形態では、樹脂組成物層31及び支持体32を備える樹脂シート30を、コア基材10の片方の面10Uに積層する例を示して説明する。以下の説明では、コア基材10の面のうち、樹脂シート30と接合される面10Uを「第一面10U」と呼び、その反対側の面を「第二面10D」と呼ぶことがある。
【0214】
コア基材10と樹脂シート30との積層は、樹脂組成物層31の一部又は全部がスルーホール14に充填されるように行われる。よって、積層は、通常、樹脂組成物層31とコア基材10とが接合するように行われる。具体的には、前記の積層は、樹脂シート30をコア基材10に加熱圧着することにより、コア基材10に樹脂組成物層31を貼り合わせることで、行うことができる。図4に示す例のように樹脂シート30が支持体32を備える場合、前記の積層は、支持体32側から樹脂シート30をコア基材10に押圧することで行いうる。加熱圧着に用いる部材(以下、「加熱圧着部材」ということがある。図示せず。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)等が挙げられる。加熱圧着部材を樹脂シート30に直接プレスしてもよいが、コア基材10の表面凹凸に樹脂シート30が十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスすることが好ましい。
【0215】
コア基材10と樹脂シート30との積層は、例えば、真空ラミネート法により実施してよい。積層条件は、例えば、下記の通りでありうる。加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲である。加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲である。加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力13hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0216】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体32側からプレスすることにより、積層された樹脂シート30の平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件でありうる。なお、積層と平滑化処理は、真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0217】
図5は、本発明の第1実施形態に係る回路基板の製造方法において、コア基材10と樹脂シート30とを積層した様子を模式的に示す断面図である。コア基材10と樹脂シート30との積層により、図5に示すように、樹脂シート30の樹脂組成物層31がスルーホール14に進入するので、スルーホール14は樹脂組成物層31によって充填される。ここでは、樹脂組成物層31の一部がスルーホール14に進入し、別の一部はスルーホール14に進入しないでコア基材10の第一面10Uに付着する例を示して説明する。よって、コア基材10の第一面10Uには、樹脂組成物層31が形成されうる。さらに、スルーホール14に進入した樹脂組成物層31の更に別の一部はスルーホール14を通り抜けて、コア基材10の第二面10D側の開口から吐出されうる。よって、コア基材10の第二面10Dに、樹脂組成物層31が形成されることがありうる。
【0218】
通常、支持体32は、コア基材10と樹脂シート30との積層の後に剥離される。本実施形態では、コア基材10と樹脂シート30との積層後、工程(2)の前に支持体32を剥離する例を示して説明する。ただし、支持体32の剥離は、工程(2)より後に行ってもよい。
【0219】
<工程(2)>
図6は、本発明の第1実施形態に係る回路基板の製造方法の工程(2)を説明するための模式的な断面図である。工程(2)は、コア基材10と樹脂シート30とを積層した後で、図6に示すように、樹脂組成物層31を硬化させることを含む。樹脂組成物層31を硬化させることによって、その樹脂組成物の硬化物を含む磁性層40を形成できる。磁性層40は、スルーホール14内に形成され、更に通常はコア基材10の第一面10U及び第二面10Dにも形成されうる。
【0220】
樹脂組成物層31の硬化は、通常、熱硬化によって行う。樹脂組成物層31の熱硬化条件は、樹脂組成物層31の硬化が進行する範囲で、適切に設定しうる。硬化温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、好ましくは245℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。硬化時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは120分以下、より好ましくは110分以下、さらに好ましくは100分以下である。
【0221】
工程(2)で得られる磁性層40の硬化度は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。硬化度は、例えば示差走査熱量測定装置を用いて測定できる。
【0222】
回路基板の製造方法は、コア基材10と樹脂シート30とを積層した後、樹脂組成物層31を硬化させる前に、樹脂組成物層31を硬化温度よりも低い温度で加熱する工程(予備加熱工程)を含んでいてもよい。例えば、樹脂組成物層31を硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層31を、通常5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)、予備加熱してもよい。
【0223】
<工程(3)>
図7は、本発明の第1実施形態に係る回路基板の製造方法の工程(3)を説明するための模式的な断面図である。工程(3)は、磁性層40を研磨することを含んでいてもよい。詳細には、工程(3)は、スルーホール14の外にある部分の磁性層40を研磨することを含んでいてもよい。本実施形態に示す例では、コア基材10の第一面10U及び第二面10Dに磁性層40が形成されているので、それら第一面10U及び第二面10Dにある部分の磁性層40を研磨しうる。スルーホール14の外にある部分の磁性層40は、一般的には最終製品には不要な余剰部分である。前記の研磨により、図7に示すように、その余剰部分を除去できる。また、研磨により、磁性層40の表面としての研磨面40U及び40Dを平坦化することができる。
【0224】
研磨方法としては、磁性層40の不要部分を除去できる方法を採用しうる。このような研磨方法としては、例えば、バフ研磨、ベルト研磨、セラミック研磨等が挙げられる。市販されているバフ研磨装置としては、例えば、石井表記社製「NT-700IM」等が挙げられる。
【0225】
磁性層40の研磨面40U及び40Dの算術平均粗さ(Ra)としては、導体層(図7では図示せず。)との間の密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上である。上限は、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。表面粗さ(Ra)は、例えば、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0226】
工程(2)後工程(3)前に、磁性層40の硬化度を更に高めるために、磁性層40に熱処理を施してもよい。前記熱処理における温度は、上記した硬化温度に準じうる。具体的な熱処理温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは245℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。熱処理時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは150分以下、より好ましくは120分以下、さらに好ましくは100分以下である。
【0227】
上述した工程(1)~(2)を行い、更に必要に応じて工程(3)を行うことにより、コア基材10及び当該コア基材10のスルーホール14を充填する磁性層40を備える回路基板100を得ることができる。こうして得られた回路基板100には、必要に応じて、工程(4)及び工程(5)を行って導体層を形成していてもよい。
【0228】
<工程(4)>
工程(4)は、磁性層に粗化処理を施すことを含む。通常は、磁性層の研磨面に疎化処理が施される。また、工程(4)では、磁性層の研磨面だけでなく、コア基材10の表面10U及び10Dにも粗化処理が施されてもよい。
【0229】
粗化処理の手順及び条件は、特に限定されず、例えば、多層プリント配線板の製造方法に際して使用される手順及び条件を採用してもよい。具体例を挙げると、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に含む方法によって、疎化処理を行ってもよい。
【0230】
膨潤処理に用いられる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。膨潤液であるアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。
【0231】
膨潤液による膨潤処理は、例えば、30℃~90℃の膨潤液に磁性層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。磁性層に含まれる樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に磁性層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0232】
粗化処理に用いられる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~80℃に加熱した酸化剤の溶液に磁性層を10分間~30分間浸漬させることにより行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は、5質量%~10質量%とすることが好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0233】
中和処理に用いられ得る中和液としては、酸性の水溶液が好ましい。中和液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガンスP」が挙げられる。中和液による中和処理は、酸化剤溶液による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤溶液による粗化処理がなされた磁性層を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0234】
磁性層の表面の粗化処理後の算術平均粗さ(Ra)は、導体層との間の密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上である。上限は、好ましくは1500nm以下、より好ましくは1200nm以下、さらに好ましくは1000nm以下である。表面粗さ(Ra)は、例えば、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0235】
<工程(5)>
図8は、本発明の第1実施形態に係る回路基板100の製造方法の工程(5)を説明するための模式的な断面図である。工程(5)は、図8に示すように、磁性層40の研磨面40U及び40D上に導体層50を形成することを含む。本実施形態では、磁性層40の研磨面40U及び40Dだけでなく、その周囲の面(例えば、コア基材10の第一面10U及び第二面10D)にも導体層50を形成した例を示す。また、図8では、コア基材10の両側に導体層50を形成した例を示すが、導体層50は、コア基材10の片側のみに形成してもよい。
【0236】
図9は、本発明の第1実施形態の係る回路基板100の製造方法の工程(5)を説明するための模式的な断面図である。図9に示すように、工程(5)は、導体層50を形成した後、エッチング等の処理により、導体層50、金属層12及び13、並びにめっき層20の一部を除去して、パターン導体層51を形成することを含んでいてもよい。
【0237】
導体層50の形成方法は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などが挙げられ、中でもめっき法が好ましい。好適な実施形態では、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の適切な方法によって磁性層40(及び、必要に応じてコア基板10)の表面にめっきして、所望の配線パターンを有するパターン導体層51を形成しうる。導体層50の材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ、インジウム等の単金属;金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムの群から選択される2種以上の金属の合金が挙げられる。中でも、汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅、又はニッケルクロム合金、銅ニッケル合金、銅チタン合金を用いることが好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅、又はニッケルクロム合金を用いることがより好ましく、銅を用いることがさらに好ましい。
【0238】
ここで、パターン導体層51を形成する方法の例を、詳細に説明する。磁性層40の研磨面40U及び40Dに、無電解めっきにより、めっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、必要に応じてマスクパターンを形成した後、電解めっきにより電解めっき層を形成する。その後、必要に応じて、マスクパターンを除去し、更に不要なめっきシード層をエッチング等の処理により除去して、所望の配線パターンを有するパターン導体層51を形成できる。パターン導体層51の形成後、パターン導体層51の密着強度を向上させるために、必要によりアニール処理を行ってもよい。アニール処理は、例えば、150℃~200℃で20分~90分間加熱することにより行うことができる。
【0239】
パターン導体層51の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上であり、好ましくは70μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下、特に好ましくは10μm以下である。
【0240】
以上の方法により、磁性層40を備える回路基板100が得られる。磁性層40は、樹脂組成物層31を硬化して得られるので、樹脂組成物の硬化物を含む。よって、磁性層40は、磁性粉体(図示せず)を多く含むことができるので、優れた磁性特性を有することができる。
【0241】
<第2実施形態>
第2実施形態の回路基板は、樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物により形成された磁性層を含む。この回路基板は、例えば、
(A)樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように内層基板に積層し、磁性層を形成する工程、
を含む。
【0242】
また、第2実施形態の回路基板の製造方法は、工程(A)に加えて、任意の工程を含んでいてもよい。例えば、回路基板の製造方法は、
(B)磁性層に穴あけ加工を行う工程、
(C)磁性層に粗化処理を施す工程、及び
(D)磁性層上に導体層を形成する工程、
を含んでいてもよい。この製造方法は、工程(A)~(D)をこの順で含むことが好ましい。
【0243】
<工程(A)>
工程(A)は、樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように内層基板に積層し、磁性層を形成する工程である。工程(A)の一実施形態として、樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように内層基板に積層し、樹脂組成物層を熱硬化して磁性層を形成する。
【0244】
図10は、本発明の第2実施形態に係る回路基板の製造方法の工程(A)を説明するための模式的な断面図である。工程(A)は、支持体330と、該支持体330上に設けられた樹脂組成物層320aとを含む樹脂シート310を、樹脂組成物層320aが内層基板200と接合するように、内層基板200に積層させる。
【0245】
内層基板200は、絶縁性の基板である。内層基板200の材料としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の絶縁性基材が挙げられる。内層基板200は、その厚さ内に配線等が作り込まれた内層回路基板であってもよい。
【0246】
図10に一例を示すように、内層基板200は、第1主表面200a上に設けられる第1導体層420と、第2主表面200b上に設けられる外部端子240とを有している。第1導体層420は、複数の配線を含んでいてもよい。図示例ではインダクタ素子のコイル状導電性構造体400を構成する配線のみが示されている。外部端子240は図示されていない外部の装置等と電気的に接続するための端子である。外部端子240は、第2主表面200bに設けられる導体層の一部として構成することができる。
【0247】
第1導体層420、及び外部端子240を構成し得る導体材料としては、第1実施形態の「<工程(5)>」欄において説明した導体層の材料と同様である。
【0248】
第1導体層420、及び外部端子240は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。また、第1導体層420、外部端子240の厚さは、後述する第2導体層440と同様である。
【0249】
第1導体層420及び外部端子240のライン(L)/スペース(S)比は特に制限されないが、表面の凹凸を減少させて平滑性に優れる磁性層を得る観点から、通常、900/900μm以下、好ましくは700/700μm以下、より好ましくは500/500μm以下、さらに好ましくは300/300μm以下、さらにより好ましくは200/200μm以下である。ライン/スペース比の下限は特に制限されないが、スペースへの樹脂組成物層の埋め込みを良好にする観点から、好ましくは1/1μm以上である。
【0250】
内層基板200は第1主表面200aから第2主表面200bに至るように内層基板200を貫通する複数のスルーホール220を有していてもよい。スルーホール220にはスルーホール内配線220aが設けられている。スルーホール内配線220aは、第1導体層420と外部端子240とを電気的に接続している。
【0251】
樹脂組成物層320aと内層基板200との接合は、第1実施形態の「<工程(1)>」欄において説明したコア基材と樹脂シートとの積層方法と同様である。
【0252】
樹脂シートを内層基板に積層した後、樹脂組成物層を熱硬化して磁性層を形成する。図11に一例を示すように、内層基板200に接合させた樹脂組成物層320aを熱硬化し第1磁性層320を形成する。
【0253】
樹脂組成物層320aの熱硬化条件は、第1実施形態の「<工程(2)>」欄において説明した樹脂組成物層の熱硬化条件と同様である。
【0254】
支持体330は、工程(A)の熱硬化後と工程(B)との間に除去してもよく、工程(B)の後に剥離してもよい。
【0255】
<工程(B)>
図12は、本発明の第2実施形態に係る回路基板の製造方法の工程(B)を説明するための模式的な断面図である。工程(B)は、第1磁性層320に穴あけ加工をし、ビアホール360を形成する。
【0256】
ビアホール360は、第1導体層420と、後述する第2導体層440とを電気的に接続するための経路となる。ビアホール360の形成は、磁性層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ビアホールの寸法や形状は、回路基板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0257】
<工程(C)>
工程(C)は、ビアホールを形成した磁性層に粗化処理を施すことを含む。工程(C)における粗化処理の方法としては、第1実施形態の「<工程(4)>」欄に置いて説明したものと同様の方法により行うことができる。
【0258】
工程(C)における粗化処理は、絶縁層の表面を研磨する処理であってもよい。研磨方法としては、第1実施形態の「<工程(3)>」欄において説明したものと同様の研磨により行うことができる。
【0259】
磁性層の粗化処理を施した面の算術平均粗さ(Ra)としては、めっき密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上である。上限は、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。表面粗さ(Ra)は、例えば、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0260】
<工程(D)>
図13は、本発明の第2実施形態に係る回路基板の製造方法の工程(D)を説明するために模式的な断面図である。工程(D)では、図13に一例を示すように、第1磁性層320上に、第2導体層440を形成することを含む。
【0261】
第2導体層440を構成し得る導体材料としては、第1実施形態の「<工程(5)>」欄において説明した導体層の材料と同様である。
【0262】
第2導体層440の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは70μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下、さらにより好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下、20μm以下、15μm以下又は10μm以下である。下限は好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。
【0263】
第2導体層440は、めっきにより形成することができる。第2導体層440は、例えば、無電解めっき工程、マスクパターン形成工程、電解めっき工程、フラッシュエッチング工程を含むセミアディティブ法、フルアディティブ法等の湿式めっき法により形成されることが好ましい。湿式めっき法を用いて第2導体層440を形成することにより、所望の配線パターンを含む第2導体層440として形成することができる。なお、この工程により、ビアホール360内にビアホール内配線360aが併せて形成される。
【0264】
第1導体層420及び第2導体層440は、例えば後述する図14~16に一例を示すように、渦巻状に設けられていてもよい。一例において、第2導体層440の渦巻状の配線部のうちの中心側の一端はビアホール内配線360aにより第1導体層420の渦巻状の配線部のうちの中心側の一端に電気的に接続されている。第2導体層440の渦巻状の配線部のうちの外周側の他端はビアホール内配線360aにより第1導体層42のランド420aに電気的に接続されている。よって第2導体層440の渦巻状の配線部のうちの外周側の他端はビアホール内配線360a、ランド420a、スルーホール内配線220aを経て外部端子240に電気的に接続される。
【0265】
コイル状導電性構造体400は、第1導体層420の一部分である渦巻状の配線部、第2導体層440の一部分である渦巻状の配線部、第1導体層420の渦巻状の配線部と第2導体層440の渦巻状の配線部とを電気的に接続しているビアホール内配線360aにより構成されている。
【0266】
工程(D)後、さらに導体層上に磁性層を形成する工程を行ってもよい。詳細は、図15に一例を示すように、第2導体層440及びビアホール内配線360aが形成された第1磁性層320上に第2磁性層340を形成する。第2磁性層は既に説明した工程と同様の工程により形成してもよい。
【0267】
[インダクタ基板]
インダクタ基板は、本発明の回路基板を含む。このようなインダクタ部品は、第1実施形態の回路基板の製造方法により得られた回路基板を含む場合、前記の樹脂組成物層の硬化物の周囲の少なくとも一部に導体によって形成されたインダクタパターンを有する。このようなインダクタ基板は、例えば特開2016-197624号公報に記載のものを適用できる。
【0268】
また、第2実施形態の回路基板の製造方法により得られた回路基板を含む場合、インダクタ基板は、磁性層と、この磁性層に少なくとも一部分が埋め込まれた導電性構造体とを有しており、この導電性構造体と、磁性層の厚さ方向に延在し、かつ導電性構造体に囲まれた磁性層のうちの一部分によって構成されるインダクタ素子を含んでいる。ここで図14は、インダクタ素子を内蔵するインダクタ基板をその厚さ方向の一方からみた模式的な平面図である。図15は、図14に示すII-II一点鎖線で示した位置で切断したインダクタ基板の切断端面を示す模式的な図である。図16は、インダクタ基板のうちの第1導体層の構成を説明するための模式的な平面図である。
【0269】
回路基板100は、図14及び図15に一例として示されるように、複数の磁性層(第1磁性層320、第2磁性層340)及び複数の導体層(第1導体層420、第2導体層440)を有する、即ちビルドアップ磁性層及びビルドアップ導体層を有するビルドアップ配線板である。また、インダクタ基板100は、内層基板200を備えている。
【0270】
図15より、第1磁性層320及び第2磁性層340は一体的な磁性層としてみることができる磁性部300を構成している。よってコイル状導電性構造体400は、磁性部300に少なくとも一部分が埋め込まれるように設けられている。すなわち、本実施形態のインダクタ基板100において、インダクタ素子はコイル状導電性構造体400と、磁性部300の厚さ方向に延在し、かつコイル状導電性構造体400に囲まれた磁性部300のうちの一部分である芯部によって構成されている。
【0271】
図16に一例として示されるように、第1導体層420はコイル状導電性構造体400を構成するための渦巻状の配線部と、スルーホール内配線220aと電気的に接続される矩形状のランド420aとを含んでいる。図示例では渦巻状の配線部は直線状部と直角に屈曲する屈曲部とランド420aを迂回する迂回部を含んでいる。図示例では第1導体層420の渦巻状の配線部は全体の輪郭が略矩形状であって、中心側からその外側に向かうにあたり反時計回りに巻いている形状を有している。
【0272】
同様に、第1磁性層320上には第2導体層440が設けられている。第2導体層440はコイル状導電性構造体400を構成するための渦巻状の配線部を含んでいる。図14又は図15では渦巻状の配線部は直線状部と直角に屈曲する屈曲部とを含んでいる。図14又は図15では第2導体層440の渦巻状の配線部は全体の輪郭が略矩形状であって、中心側からその外側に向かうにあたり時計回りに巻いている形状を有している。
【0273】
このようなインダクタ基板は、半導体チップ等の電子部品を搭載するための配線板として用いることができ、かかる配線板を内層基板として使用した(多層)プリント配線板として用いることもできる。また、かかる配線板を個片化したチップインダクタ基板として用いることもでき、該チップインダクタ基板を表面実装したプリント配線板として用いることもできる。
【0274】
またかかる配線板を用いて、種々の態様の半導体装置を製造することができる。かかる配線板を含む半導体装置は、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラおよびテレビ等)および乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶および航空機等)等に好適に用いることができる。
【実施例0275】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0276】
<合成例1:ポリエステル溶液1の合成>
温度計、撹拌機、窒素導入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、12-ヒドロキシステアリン酸(純正化学社製)10.0部及びε-カプロラクトン(純正化学社製)190部を仕込み、窒素気流下で160℃まで4時間かけて昇温し、160℃で2時間加熱した後、ε-カプロラクトンの残量が1%以下になるまで加熱を行った。次いで室温まで冷却した。以下、この反応液をポリエステル溶液1と称する。
【0277】
<合成例2:アミン系分散剤1の合成>
温度計、撹拌機、窒素導入口及び還流管を備え反応フラスコ内に、キシレン25.0部とポリアリルアミン10%水溶液(日東紡績社製「PAA-1LV」、数平均分子量約3,000)70部からなる混合物を160℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら、これに合成例1で得たポリエステル溶液114.21部を160℃まで昇温したものを加え、2時間160℃で反応を行った。さらに160℃で4時間加熱し、キシレンを160℃で溜去しアミン系分散剤1を得た。アミン系分散剤1は、一般式(1)中のRが炭素原子数5のアルキレン基であるポリエステル骨格を有しており、アミン価が20.0mgKOH/g、酸価が16.0mgKOH/gの特性であった。指示薬法でのpH=6であった。
【0278】
<合成例3:アミン系分散剤2の合成>
温度計、撹拌機、窒素導入口及び還流管を備え反応フラスコ内に、キシレン25.0部とポリアリルアミン10%水溶液(日東紡績社製「PAA-1LV」、数平均分子量約3,000)70部からなる混合物を160℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら、これに合成例1で得たポリエステル溶液114.21部を160℃まで昇温したものを加え、3時間160℃で反応を行った。さらに160℃で4時間加熱し、キシレンを160℃で溜去しアミン系分散剤2を得た。アミン系分散剤2は、一般式(1)中のRが炭素原子数5のアルキレン基であるポリエステル骨格を有しており、アミン価が11.0mgKOH/g、酸価が17.5mgKOH/gの特性であった。指示薬法でのpH=6であった。
【0279】
<実施例1>
重量平均分子量600以上8000未満の樹脂オリゴマー(三菱ケミカル社製「jER1001」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量(EPW)475g/eq.、軟化点64℃、2官能(2B)、重量平均分子量900)0.21部、エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX-1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)0.65部、アミン系分散剤1 0.18部、シクロヘキサノン1.00部、メチルエチルケトン1.00部、磁性粉体(エプソンアトミックス社製「KUAMET NC1-53μm」、Fe-Si-Nb-B合金からなるナノ結晶、平均粒径(D50)27.3μm)34.90部、磁性粉体(エプソンアトミックス社製「AW2-08PF3F」、Fe-Si-Cr合金粉、アモルファス粉、平均粒径(D50)3.1μm)4.32部、磁性粉体(JFEミネラル社製「CVD鉄粉(0.7μm)」、平均粒径(D50)0.7μm)4.31部、及びフェノール樹脂(DIC社製「LA-7054」、水酸基当量約125の固形分60%のメチルエチルケトン溶液)0.84部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物を調製した。
【0280】
<実施例2>
実施例1において、
1)重量平均分子量600以上8000未満の樹脂オリゴマー(三菱ケミカル社製「jER1001」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量(EPW)475g/eq.、軟化点64℃、2官能(2B)、重量平均分子量900)0.21部を、重量平均分子量600以上8000未満の樹脂オリゴマー(三菱ケミカル社製「jER4005P」、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、重量平均分子量:6200)を0.21部に変え、
2)アミン系分散剤1 0.18部を、アミン系分散剤2 0.18部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0281】
<実施例3>
実施例1において、
重量平均分子量600以上8000未満の樹脂オリゴマー(三菱ケミカル社製「jER1001」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量(EPW)475g/eq.、軟化点64℃、2官能(2B)、重量平均分子量900)0.21部を、重量平均分子量600以上8000未満の樹脂オリゴマー(三菱ケミカル社製「jER4005P」、ビスフェノールF型エポキシ、重量平均分子量:6200)を0.21部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0282】
<実施例4>
実施例1において、
1)重量平均分子量600以上8000未満の樹脂オリゴマー(三菱ケミカル社製「jER1001」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量(EPW)475g/eq.、軟化点64℃、2官能(2B)、重量平均分子量900)0.21部を、重量平均分子量600以上8000未満の樹脂オリゴマー(三菱ケミカル社製「jER4005P」、ビスフェノールF型エポキシ、重量平均分子量:6200)を0.23部に変え、
2)エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX-1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)の量を、0.65部から0.74部に変え、
3)アミン系分散剤1 0.18部を、アミン系分散剤2 0.09部に変え、
4)メチルエチルケトンの量を、1.00部から1.30部に変え、
5)フェノール樹脂(DIC社製「LA-7054」、水酸基当量約125の固形分60%のメチルエチルケトン溶液)0.84部を、フェノール樹脂(DIC社製「フェノライト TD-2090」、水酸基当量105g/eq.、軟化点120℃)0.48部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0283】
<実施例5>
実施例4において、
1)アミン系分散剤2の量を、0.09部から0.08部に変え、
2)硬化促進剤(北興化学工業社製「TBP-DA」)0.01部を用いた。
以上の事項以外は実施例4と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0284】
<実施例6>
実施例1において、
1)重量平均分子量600以上8000未満の樹脂オリゴマー(三菱ケミカル社製「jER1001」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量(EPW)475g/eq.、軟化点64℃、2官能(2B)、重量平均分子量900)0.21部を、重量平均分子量8000以上の樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553H30」、特殊骨格フェノキシ樹脂、メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1の30%溶液、重量平均分子量:35000)を0.9部に変え、
2)エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX-1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)の量を、0.65部から0.56部に変え、
3)アミン系分散剤1の量を、0.18部から0.27部に変え、
4)メチルエチルケトンの量を、1.00部から0.05部に変え、
5)フェノール樹脂(DIC社製「LA-7054」、水酸基当量約125の固形分60%のメチルエチルケトン溶液)の量を、0.84部から0.73部に変え、
6)硬化促進剤(北興化学工業社製「TBP-DA」)0.01部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0285】
<実施例7>
実施例1において、
1)アミン系分散剤1 0.18部を、アミン系分散剤(日本ルーブリゾール社製のソルスパース24000GR(アミン価40mgKOH/g、酸価25mgKOH/g、ポリエステル)0.18部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0286】
<比較例1>
実施例6において、
アミン系分散剤2 0.27部を、分散剤(日油社製「SC-1015F」、ポリオキシアルキレン系分散剤)0.27部に変えた。
以上の事項以外は実施例6と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0287】
<比較例2>
実施例6において、
アミン系分散剤2 0.27部を、分散剤(信越化学工業社製「KBM-103」、フェニルシランカップリング剤)0.27部に変えた。
以上の事項以外は実施例6と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0288】
<比較例3>
実施例6において、
アミン系分散剤2 0.27部を、分散剤(信越化学工業社製「KBM-573」、アミノシラン系カップリング剤)を0.27部に変えた。
以上の事項以外は実施例6と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0289】
<比透磁率及び損失係数(損失係数)の測定>
(1)硬化物の作製
支持体として、シリコーン系離型剤処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製「PET501010」、厚さ50μm)を用意した。各樹脂組成物を上記PETフィルムの離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが100μmとなるよう、ドクターブレードにて均一に塗布し、樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを190℃で90分間加熱することにより、樹脂組成物層を熱硬化し、支持体を剥離することによりシート状の硬化物を得た。以下、このシート状の硬化物をサンプルAということがある。
【0290】
(2)比透磁率及び損失係数の測定
得られたサンプルAを切断して、外径19.2mm、内径8.2mmのドーナツ状の評価サンプルを得た。この評価サンプルの比透磁率(μ’)、複素透磁率の虚数成分(μ’’)及び損失係数(tanδ)を、Keysight社製磁性材料テストフィクスチャ「16454A」及びKeysight社製インピーダンスアナライザー「E4991B」を用いて、測定周波数10MHz、室温23℃にて測定した。損失係数tanδは、式「tanδ=μ’’/μ’」により算出した。また、比透磁率は、以下の基準で評価した。
〇:比透磁率が40以上。
×:比透磁率が40未満。
【0291】
<樹脂組成物の硬化物の引張強度の評価>
サンプルAを用いて引張強度の評価を行った。オリエンテック社製引張試験機「RTC-1250A」を用いて引張強度測定を行い、23℃における破断点強度を測定した。測定は、JIS K7127に準拠して実施した。また、以下の基準で引張強度を評価した。
〇:引張強度が70MPa以上。
×:引張強度が70MPa未満。
【0292】
<伸びの評価>
サンプルAを用いて伸びの評価を行った。オリエンテック社製引張試験機「RTC-1250A」を用いて引張強度測定を行い、23℃における破断伸び率を測定した。測定は、JIS K6251に準拠して実施した。
【0293】
<ヤング率の測定>
サンプルAを用いてヤング率の評価を行った。オリエンテック社製引張試験機「RTC-1250A」を用いて引張強度測定を行い、23℃におけるヤング率を測定した。測定は、JIS K6253に準拠して実施した。
【0294】
【表1】
*表中、(D)成分の含有量(質量%)は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の含有量を表し、(D)成分の含有量(体積%)は、樹脂組成物中の不揮発成分を100体積%とした場合の含有量を表す。
【符号の説明】
【0295】
10 コア基材
10U 第一面
10D 第二面
11 支持基板
12 金属層
13 金属層
14 スルーホール
20 めっき層
30 樹脂シート
31 樹脂組成物層
32 支持体
40 磁性層
40U 研磨面
40D 研磨面
50 導体層
51 パターン導体層
100 回路基板
200 内層基板
200a 第1主表面
200b 第2主表面
220 スルーホール
220a スルーホール内配線
240 外部端子
300 磁性部
310 樹脂シート
320a 樹脂組成物層
320 第1絶縁層
330 支持体
340 第2絶縁層
360 ビアホール
360a ビアホール内配線
400 コイル状導電性構造体
420 第1導体層
420a ランド
440 第2導体層
図1
図2
図3
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