(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125722
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】動作補助作業着
(51)【国際特許分類】
A41D 13/05 20060101AFI20240911BHJP
A41D 13/06 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
A41D13/05 125
A41D13/06 105
A41D13/05 131
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033730
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(71)【出願人】
【識別番号】593168798
【氏名又は名称】株式会社Asahicho
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】周 子翔
(72)【発明者】
【氏名】張 順
(72)【発明者】
【氏名】大澤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】児玉 賢士
(72)【発明者】
【氏名】石岡 利文
(72)【発明者】
【氏名】神田 千秋
(72)【発明者】
【氏名】葛丸 泰之
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211AA12
3B211AB01
3B211AC04
(57)【要約】
【課題】
簡素な構成であって軽量であり、作業者や高齢者や患者が左右同様に又は別々に動作しても補助して欲しい片身又は両身の、腕・肩・背・腰・臀のみならず、大腿から膝にかけての脚を十分に補助でき、補助力を逃がさずに、長期間に渡って使用しても疲労を増長せず、装着し易い動作補助作業着を提供する。
【解決手段】
動作補助作業着は、左腕及び右腕夫々の腕支持部を支えて吊り上げ可能に繋がり、左及び右の肩越しに背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体である腕補助帯部と、左脚の左足及び右脚の右足夫々の膝ホルダー部に繋がり、大腿から腰を経て前記背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体である腰背脚補助帯部と、足裏で踏み付けて支持するための踏付け部に繋がっており、前記膝ホルダー部に設けられ、前記膝の前面を覆い及び/又は前記膝の左右で挟んで屈膝によって伸びる弾性体である膝補助帯部とを有する補助帯部が備えられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左腕及び右腕夫々の腕支持部を支えて吊り上げ可能に繋がり、左及び右の肩越しに背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体である腕補助帯部と、左脚の左足及び右脚の右足夫々の膝ホルダー部に繋がり、大腿から腰を経て前記背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体である腰背脚補助帯部と、足裏で踏み付けて支持するための踏付け部に繋がっており、前記膝ホルダー部に設けられ、前記膝の前面を覆い及び/又は前記膝の左右で挟んで屈膝によって伸びる弾性体である膝補助帯部とを有する補助帯部が備えられていることを特徴とする動作補助作業着。
【請求項2】
前記膝補助帯部が、前記腰背脚補助帯部及び/又は前記踏付け部の延長上に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の動作補助作業着。
【請求項3】
前記膝補助帯部が、前記屈膝によって伸びる方向を膝の上下方向に一致させる膝筒部内又は膝覆部内に収められていることを特徴とする請求項1に記載の動作補助作業着。
【請求項4】
前記腰背脚補助帯部が、前記膝ホルダー部中で、前記腰背脚補助帯部及び/又は前記踏付け部の延長上から外れて取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の動作補助作業着。
【請求項5】
前記腰背脚補助帯部が、前記大腿の後面で前記膝へ向けて前記大腿の左右に二手筋に分かれて前記膝の前面側又は前記膝の裏側で前記膝ホルダー部に接続していることを特徴とする請求項1に記載の動作補助作業着。
【請求項6】
前記腰背脚補助帯部中、前記大腿の後面で前記二手筋が、離反を抑制する大腿筒部内又は大腿覆部内に収められ、若しくは大腿筒部に束ねられていることを特徴とする請求項5に記載の動作補助作業着。
【請求項7】
前記腕補助帯部と、前記腰背脚補助帯部と、前記膝補助帯部との少なくとも何れかが、小傾の前屈によって弾性的に伸びるように緊張した第一の弾性布地又は弾性帯体と、大傾の前屈によって前記第一の弾性布地又は弾性帯体と共に伸びるように弛んだ第二の弾性布地又は弾性帯体とを有することを特徴とする請求項1に記載の動作補助作業着。
【請求項8】
前記膝ホルダー部が、前記膝を包むように面ファスナ、ボタン、又はフックで留められることを特徴とする請求項1に記載の動作補助作業着。
【請求項9】
前記腕補助帯部と前記腰背脚補助帯部とが、左右で互いに交差することなく、前記背で集束部材を介して集束されていることを特徴とする請求項1に記載の動作補助作業着。
【請求項10】
前記左腕及び右腕夫々への前記腕補助帯部と、前記左脚及び右脚夫々への前記腰背脚補助帯部とが、前記背に設けられ胸幅方向と体軸方向とよりもそれらの斜め方向に歪んで伸びる異方性の織物を有した変形性で平面状の前記集束部材に繋げられていることを特徴とする請求項9に記載の動作補助作業着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両腕や両脚を左右同様に又は別々に動作しつつ、前屈みや中腰で又は腰を下ろしてから人荷を胸や腹の前に持ち上げたり、目前や頭上で腕を上げて長期間にわたって作業し続けたりする際に使用されるもので、腕・肩・背・腰・臀・大腿・膝を包括的に補助する動作補助作業着に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送時に前屈みや中腰で又は腰を下ろして屈んでから荷物を持ち上げたり腰を捻ったりして荷物を移動させたり取り扱ったりする流通現場や、前屈みや中腰又は背筋を伸ばした同じ姿勢又は背筋の曲げ伸ばしを繰り返しながら前で腕を上げてベルトコンベアー上に次々と流れてくる製品部品から製品を組み立てる製造現場や、腰を下ろしたり腕を上げたりして苗付け・収穫をする農業現場や、介護・治療すべき患者を移動させる介護・医療現場のように重労働を強いられる作業現場での労働者は、腕、肩、腰背、脚、及び膝とりわけ腕や腰背や脚や膝の肉体的負担が大きく、短時間で疲労がたまり易い。
【0003】
そのような肉体的負担を軽減するため、腰背、脚の筋肉の動作を補助して作業負担を軽減しつつ作業効率を向上させる補助具が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1に、装着時において、少なくとも右肩部から背中、左腰部、左臀部、及び左大腿部を通って左膝部に至るように設けられる伸張性を有する第1ベルトと、装着時において、少なくとも左肩部から背中、右腰部、右臀部、及び右大腿部を通って右膝部に至るように設けられる伸張性を有する第2ベルトと、を備える腰部負担軽減具が、開示されている。
【0005】
また、特許文献2に、左腕及び右腕夫々の腕支持部を支えて吊り上げ可能に繋ぎ、左及び右の肩越しに背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体である腕補助帯部と、左脚の左足及び右脚の右足夫々の足裏で踏み付けて支持するための踏付け部に繋がり、腰を経て前記背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体である腰背脚補助帯部とが、左右で互いに交差することなく、前記背で集束部材を介して集束されている動作補助作業着が開示されている。
【0006】
さらに、非特許文献1に、布の弾性を利用した起立動作支援ズボンとして、起立動作に伴う股関節の屈曲を弾性帯の張力に変換するために、腰部背面から臀部と大腿側面を通って前面に回り、膝下で固定する弾性帯配置を有するものが開示されている。
【0007】
これらの腰部負担軽減具や動作補助作業着や起立動作支援ズボンは、ゴムベルトや伸縮布を用いて動作を補助して腰などへの負担を軽減するというものである。特許文献1の腰部負担軽減具は、たわみを持たせる必要があり、腰しか補助できない。一方、非特許文献1の起立動作支援ズボンは、非動作時にゴムベルトや伸縮布へある程度のたわみを持たさなければならず、このたわみが周囲の機材や物品を引っ掛かってしまう恐れがあり危険である。それに対し、特許文献2の動作補助作業着はたわみを持たせる必要がない。
腕・肩・背・腰・臀・大腿・膝を包括的に補助して、健常者が重い荷物等を持ち上げる動作補助だけでなく、高齢者や入院患者など体が弱った者にも起立や着座の動作補助ができるような改善が望まれていた。
【0008】
また、重い荷物等を持ち上げることのよる職業性疾病のうち、約6割が腰痛である。
図7(a)に示すように、荷物を持ち上げる場合、腰を上げてから腕で荷物を支えようとすると、腰にモーメントが掛かり過ぎて、腰を痛めてしまう。そのため、腰の補助が重要であるが、腰に負担を掛け過ぎないような持ち上げ方をするために、同図(b)に示すように、腰を落とし、膝を曲げて、腕を伸ばした蹲踞の姿勢で持ち上げる必要があるのだが、その場合には腰への補助と共に、モーメントが大きくかかる腕への補助が必要となり、特許文献2のような動作補助作業着が有用である。しかし、この従来の動作補助作業着1’では、
図8の概略図に示すように、腕・肩・背・腰・臀・大腿を補助しつつ、膝を曲げると背中および腕に連動したベルト状の補助帯部を膝裏から引っ張る役目があり、それで膝を延ばそうとするように補助する役目も果たしていたが、中腰姿勢で作業する場合は膝を曲げたまま維持するなど膝の負担が大きくなり、膝を曲げた角度に応じてより効果的な膝補助が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-153928号公報
【特許文献2】特開2020-059938号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】日本機械学会論文集(C編),第72巻第713号,p176-181(2006-1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、簡素な構成であって軽量であり、作業者や高齢者や患者が左右同様に又は別々に動作しても補助して欲しい片身又は両身の、腕・肩・背・腰・臀のみならず、大腿から膝にかけての脚を十分に補助でき、補助力を逃がさずに、長期間に渡って使用しても疲労を増長せず、装着し易い動作補助作業着を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するためになされた本発明の動作補助作業着は、左腕及び右腕夫々の腕支持部を支えて吊り上げ可能に繋がり、左及び右の肩越しに背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体である腕補助帯部と、左脚の左足及び右脚の右足夫々の膝ホルダー部に繋がり、大腿から腰を経て前記背にかけて夫々伸びて少なくとも一部が弾性体である腰背脚補助帯部と、足裏で踏み付けて支持するための踏付け部に繋がっており、前記膝ホルダー部に設けられ、前記膝の前面を覆い及び/又は前記膝の左右で挟んで屈膝によって伸びる弾性体である膝補助帯部とを有する補助帯部が備えられているというものである。
【0013】
この動作補助作業着は、前記膝補助帯部が、前記腰背脚補助帯部及び/又は前記踏付け部の延長上に取り付けられていることが好ましい。
【0014】
この動作補助作業着は、前記膝補助帯部が、前記屈膝によって伸びる方向を膝の上下方向に一致させる膝筒部内又は膝覆部内に収められているものであってもよい。
【0015】
この動作補助作業着は、前記腰背脚補助帯部が、前記膝ホルダー部中で、前記腰背脚補助帯部及び/又は前記踏付け部の延長上から外れて取り付けられていてもよい。
【0016】
この動作補助作業着は、前記腰背脚補助帯部が、前記大腿の後面で前記膝へ向けて前記大腿の左右に二手筋に分かれて前記膝の前面側又は前記膝の裏側で前記膝ホルダー部に接続していると、なお好ましい。
【0017】
この動作補助作業着は、前記腰背脚補助帯部中、前記大腿の後面で前記二手筋が、離反を抑制する大腿筒部内又は大腿覆部内に収められ、若しくは大腿筒部に束ねられているというものであってもよい。
【0018】
この動作補助作業着は、前記腕補助帯部と、前記腰背脚補助帯部と、前記膝補助帯部との少なくとも何れかが、小傾の前屈によって弾性的に伸びるように緊張した第一の弾性布地又は弾性帯体と、大傾の前屈によって前記第一の弾性布地又は弾性帯体と共に伸びるように弛んだ第二の弾性布地又は弾性帯体とを有するというものであってもよい。
【0019】
この動作補助作業着は、前記膝ホルダー部が、例えば前記膝を包むように面ファスナ、ボタン、又はフックで留められるというものである。
【0020】
この動作補助作業着は、前記腕補助帯部と前記腰背脚補助帯部とが、左右で互いに交差することなく、前記背で集束部材を介して集束されているものであってもよい。
【0021】
この動作補助作業着は、前記左腕及び右腕夫々への前記腕補助帯部と、前記左脚及び右脚夫々への前記腰背脚補助帯部とが、前記背に設けられ胸幅方向と体軸方向とよりもそれらの斜め方向に歪んで伸びる異方性の織物を有した変形性で平面状の前記集束部材に繋げられているものであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の動作補助作業着は、作業者が前屈みや中腰で又は腰を下ろし又はしゃがんでから人荷を持ち上げる動作を繰り返す作業や、前屈みや中腰や腰を深く下ろし又は膝を曲げたまま又は前で腕を上げたまま長期間にわたって作業現場で同じ動作を繰り返し一定の姿勢を保ちつつ作業し続けたり、作業者や高齢者や患者が起立や着座したりする際に、腕・背・腰・臀・大腿及び膝を選択的に十分に補助できる。
【0023】
この動作補助作業着は、腕支持部を支えて吊り上げ可能に繋ぎ肩越しに背にかけて夫々伸びた腕補助帯部と、膝ホルダー部に繋がり腰を経て前記背にかけて夫々伸びた腰背脚補助帯部と、踏付け部に繋がり膝ホルダー部に設けられた膝補助帯部とが、連結されていることにより、荷物を持った作業者の腕・背・腰・臀・大腿及び膝を補助でき、また荷物を抱えた腕を持ち上げるのを補助できる。
【0024】
しかもこの動作補助作業着によれば、補助すべき腕や背や脛を曲げたり伸ばしたりするほどより強く十分に補助できるばかりか、腕・肩・背・腰・臀・大腿・膝を連動して包括的に補助することができる。
【0025】
この動作補助作業着は、前屈みや中腰で又は腰を下ろしてから人荷を胸や腹の前に持ち上げたり、目前や頭上で腕を上げたり脚を屈伸しながら長期間にわたって作業し続けたり、起立・着座したりする際に、腕補助帯部で両腕を夫々補助し、腰背脚補助帯部で背中や腰を補助しつつ膝補助帯部と共に脚特に大腿筋や脛を補助する。
【0026】
また、この動作補助作業着は、工場等での作業用制服や規定白衣の上や内で、簡便に装着でき、着脱のための装着時間の短縮化、補助強弱の調整のための掛け替え時間の短縮化を図ることができるので、汎用性が高い。
【0027】
この動作補助作業着は、前腕・上腕を補助して、腕や手先の負荷が軽減されるので、重い荷物の搬送作業や、軽い作業対象物の頭上又は目前での長時間繰返し作業にも、適している。併せて、この動作補助作業着は、腰の動作のみならず、大腿から膝や足首まで脚の動作も補助でき、腰や臀や脚の負荷が軽減されるので、重い人荷の揚げ降ろしや、繰り返し作業にも、適している。さらにこの動作補助作業着は、高齢者や患者など力が入り難い場合の起立や着座を補助するのにも、適している。
【0028】
さらに、この動作補助作業着は、簡素な構成であって、腕補助帯部と腰背脚補助帯部と膝補助帯部をはじめ全ての部材が軽量な材質で構成されているので、作業者が装着したときに、過度の重量感を感じないばかりか、長期間に渡って使用しても疲労を増長させない。
【0029】
この動作補助作業着は、構成が簡素であり、簡便に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明を適用する動作補助作業着の一態様の前後ろを示す斜視図である。
【
図2】本発明を適用する動作補助作業着を用いた時の腕・肩・背・腰・臀・大腿・膝の補助を模式的に示す図である。
【
図3-1】本発明を適用する別な動作補助作業着の膝補助帯部の態様を示す展開図である。
【
図3-2】本発明を適用する別な動作補助作業着の膝補助帯部の態様を示す展開図である。
【
図4】本発明を適用する別な動作補助作業着の膝補助帯部の態様を示す斜視図である。
【
図5】本発明を適用する別な動作補助作業着の腰背脚補助帯部の態様を示す斜視図である。
【
図6】本発明を適用する動作補助作業着の装着の有無による大腿直筋活動量を示すグラフである。
【
図7】本発明を適用外の従来の動作補助作業着を用いた時の腰・腕への負担を模式的に示す図である。
【
図8】本発明を適用外の従来の動作補助作業着を用いた時の腕・肩・背・腰・臀・大腿と、膝との補助を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0032】
本発明の動作補助作業着1の一態様は、
図1に示すように、作業者が装着した場合を例に説明すると、前屈みや中腰や蹲踞のような姿勢又は背筋を伸ばした姿勢にて前で腕を上げ又はそのままで作業したり、屈み、腰を下ろし又は腰を捻った後に立ち上がる動作を繰り返したりして、荷物や介護患者を移動したり商品や製品や作物の生産・加工のような重労働をしたりする際に、装着するものである。
【0033】
動作補助作業着1は、腕補助帯部10と、腰背脚補助帯部30と、膝補助帯部32と、踏付け部31とを有することによって補助帯部を成し、順に繋いで備えられている上着40を有している。
【0034】
腕補助帯部10は、左腕及び右腕夫々の腕支持部11を支えて吊り上げ可能に繋ぎ肩越しに背にかけて夫々伸びて、手首から背中にかけて一部が弾性体10aとなっており、背中から腰にかけて非弾性の繊維帯となっている。腕補助帯部10は、長さ調節可能なアジャスタを有することにより長さを調節してもよい(不図示)。腕補助帯部10の長さは、腰背脚補助帯部30が有する長さ調節可能なアジャスタ36により調節してもよい。
【0035】
腰背脚補助帯部30は、一端側が腕補助帯部10に繋がり、脚・臀・腰を経て背にかけて夫々伸びて、大腿から腰にかけて一部が弾性体30aとなっており、大腿後ろ側で左右に二手筋30a1・30a2に分かれて大腿前側に延び、他端側が、左足及び右足夫々の膝ホルダー部34に縫製されて繋がっている。
【0036】
腕・背・腰を伸ばしている状態では、腕補助帯部10・腰背脚補助帯部30は負荷がかからず反力を生じないから補助力を発現しないが、腕・背・腰を曲げた状態では、腕補助帯部10・腰背脚補助帯部30は曲げたことによる荷重に応じた負荷がかかり弾性体が伸び復元しようする反力を生じるから補助力となって発現する。
【0037】
膝ホルダー部34は、非伸縮性布製又は伸縮性布製好ましくは伸縮性で、膝を露出させつつ膝裏側から膝頭側にかけて膝を包み込むように両膝に設けられ、左脚の左足及び右脚の右足夫々の足裏で踏み付けて支持するための踏付け部31に繋がっている。膝ホルダー部34は、膝裏側を覆い、膝前側で前開きとなっており、膝露出枠34cを形成するように前開きが左側膝下固定帯34a1及び左側膝上固定帯34a2と右側膝下固定帯34b1及び右側膝上固定帯34b2とが引っ張って互いに固定できるように面ファスナを有している。左側膝下固定帯34b1及び左側膝上固定帯34a2と、右側膝下固定帯34a1及び右側膝上固定帯34b2とには夫々、膝を伸ばした時に弛まず伸長せず丁度緊張し弾性機能が利いていない形状となるが膝を曲げた時に伸長して緊張し弾性機能が利く弾性体から成る右側膝補助帯部32a1と左側膝補助帯部32a2との膝補助帯部32が縫製されて設けられている。
【0038】
膝を伸ばしている状態では、膝補助帯部32は負荷がかからず反力を生じないから補助力を発現しないが、膝を曲げた状態では、膝補助帯部32は曲げたことによる体重及び/又は荷重に応じた負荷がかかり伸びた弾性体が元の縮んだ状態に復元しようする反力を生じる結果、膝を伸ばそうとする補助力となって発現する。膝補助帯部32でのこのような補助力は、膝を包み込んで確りと支えている膝ホルダー部34を介して、膝頭側と膝裏側との両方から膝を伸ばそうとすることによって、補助するものである。
【0039】
この膝ホルダー部34は、腰背脚補助帯部30と踏付け部31とに連結されていると、膝頭の上部・下部で膝をホールドして補助することとなり、膝の屈伸を容易くするようになる。
【0040】
踏付け部31は、右足及び左足夫々の足裏で踏み付けられるもので、膝ホルダー部34の足側起点となり足裏で支持されて引きずられないよう足裏に固定するものである。踏付け部31は、足裏で接触する環下部31bと、そこから膝ホルダー部34まで伸びた膝下環帯部31aとからなる。
【0041】
腰背脚補助帯部30の二手筋30a
1・30a
2の二端と、踏付け部31の膝下環帯部31aの二端とは、右側膝補助帯部32a
1と左側膝補助帯部32a
2との延長上に配置されて、膝ホルダー部34に縫製されている。それによって、腰背脚補助帯部30と踏付け部31と膝補助帯部32とが一連に駆動する。即ち、腕を下げ、腰を屈めて、床の重い荷物を持ち上げようとした時、腰背脚補助帯部30が引っ張られ、膝を曲げていなくとも、膝補助帯部32の緊張度が増すことにより、より強く膝補助力が発生することとなり効率的に補助できるようになる。このことは、動作補助作業着1を用いた時の腕・肩・背・腰・臀・大腿・膝の補助を模式的に示す
図2を参照すると、より明らかである。
図2に示すように、腕・肩・背・腰・臀・大腿・膝を直接補助することにより、肘関節・肩関節・股関節・膝関節を一連に補助することとなり、特に膝を膝頭側から補助することとなる。それに対して、従来の特許文献2の動作補助作業着を用いた時には、腕・肩・背・腰・臀・大腿を補助しつつ、膝裏で引っ張ることにより膝を補助するということになるから、膝の補助の形式が全く異なるものである。
【0042】
腰背脚補助帯部30、とりわけ二手筋30a1・30a2は、起立状態で幾分弛んだまま大腿覆部30b(又は大腿筒部30c)に収められているが、延びたときに互いに離反しないように束ねられ、延び方向以外への動きが制限されている。腰背脚補助帯部30は、背腰屈曲ないし脚屈曲状態で腰背脚補助帯部30が引っ張られて緊張するように、調整されている。二手筋30a1・30a2は、起立状態で弛んでいると周りの機器・物品に引掛けて危険であるばかりか、屈曲状態で腰背脚補助帯部30が引っ張られるのに応じて離反して大腿裏面から大腿側面へずれて大腿特に大腿筋の補助ができなくなって腰背脚補助帯部30による補助力が分散してしまう。そのため二手筋30a1・30a2は、離反を抑制する大腿覆部30b内又は大腿筒部30cに摺動可能に収められている。これによって、例えば起立状態から着座状態に移る場合に、当初は幾分弛んだ腰背脚補助帯部30の二手筋30a1・30a2が、引っ張られて大腿覆部30b(又は大腿筒部30c)内で離反するように移動して広がるが、大腿筋の補助をしていない。二手筋30a1・30a2がさらに引っ張られると、その張力によってさらに離反するように動く。しかし、二手筋30a1・30a2は、矢印で示しているように大腿覆部30b内でいっぱいに広がったらもはや離反できないようになって延びるようになるから、大腿覆部30bで束ねられて引っ張られて補助が始まるようになり、引っ張られるほど強く腕・肩・背・腰・臀・大腿を補助するようになる。このように膝の補助の開始に時間差が生じて膝を補助するようになることが、重要なのである。それによって安全かつ効率的に補助できるようになる。これによって、太腿おもて側の大腿四頭筋側、及び/又は太腿うら側の大腿二頭筋(ハムストリングス)側を補助できるようになる。一方、腰背脚補助帯部30が、単に起立状態で幾分弛んだままで、大腿覆部30b(又は大腿筒部30c)で束ねられていない場合では、弛みが無くなるまでかなりの遊びを生じ膝の補助が不十分となるばかりか、かなり延びないと太腿にずれたまま食い込んでしまって苦痛を感じてしまう。
【0043】
なお、動作補助作業着1は、
図1で、腰背脚補助帯部30の二手筋30a
1・30a
2は、大腿覆部30b内又は大腿筒部に摺動可能に収められた例を示したが、
図3-1の膝ホルダー部34の展開図に示すように、右側膝補助帯部32a
1と左側膝補助帯部32a
2との膝補助帯部32の延長上に、二手筋30a
1・30a
2と、踏付け部31の膝下環帯部31aとが設けられつつ、膝ホルダー部34に縫製され、二手筋30a
1・30a
2は、非伸縮性又は弱伸縮性の大腿筒部30cで縫製されて、離反しないように束ねられていてもよい。
膝ホルダー部34の前開きに、左側膝下固定帯34b
1及び左側膝上固定帯34a
2の内側と、右側膝下固定帯34a
1及び右側膝上固定帯34b
2の外側とに、互いに着脱可能な面ファスナー、例えばマジックテープ、ベルクロ(何れも登録商標)が設けられていてもよい。
【0044】
また、動作補助作業着1は、
図3-2の膝ホルダー部34の展開図に示すように、腰背脚補助帯部30の二手筋30a
1・30a
2と踏付け部31の膝下環帯部31aとが、膝ホルダー部34の膝裏当接部に縫製されることによって、腕補助帯部10と、腰背脚補助帯部30と、踏付け部31とが一連に駆動すると共に、膝補助帯部32が独立に駆動して、動作を補助するものであってもよい。踏付け部31の膝下環帯部31aは脛上で交差するようにしてもよい。
【0045】
また、動作補助作業着1は、
図4(a)に示すように、膝ホルダー34の前面に設けられ膝を覆って単一の膝補助帯部32が膝ホルダー34に縫製され又は接続された膝覆部33aに摺動可能に通され、腰背脚補助帯部30の二手筋30a
1・30a
2の下端と、踏付け部31の膝下環帯部31aの上端とに、縫製又は接続されているものであってもよい。同図(b)に示すように、膝ホルダー34の前面に設けられ膝を覆って単一の膝補助帯部32が摺動可能に膝筒部33bに通され、膝筒部33bが膝ホルダー34に縫製され又は接続された膝覆部33aに摺動可能に通されているものであってもよい。
【0046】
腕補助帯部10、腰背脚補助帯部30、膝補助帯部32の一部又は全部を成す弾性体の素材は、例えば、シリコーンゴムの他、ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムのような合成ゴムや、天然ゴムが挙げられる。天然ゴムは、室温のような常温の環境で使用する場合には何ら問題を生じないが、温度依存性がある。そこで、高温多湿や低温の環境で使用する場合には、合成ゴムを用いることが好ましい。中でも、耐熱性に優れ低温から高温まで物性が殆ど変化せず、アレルギー症状を惹起せず、表面張力が小さくて摺動し易い、シリコーンゴムが一層好ましい。弾性体10aは、帯状の合成ゴム製や天然ゴム製ものもであってもよく、ポリエステルやレーヨンなどの糸で織る紐の中に天然ゴム又は合成ゴム(例えばポリウレタンなど)の弾性素材を織り込んだいわゆる織ゴムであってもよい。腕補助帯部10、腰背脚補助帯部30、膝補助帯部32は、平帯状、柱状又は紐状のシリコーンゴム製帯であると一層好ましい。腕補助帯部10は、ゴム製などの板バネであってもよい。
【0047】
また、腕補助帯部10、腰背脚補助帯部30、膝補助帯部32の一部又は全部を成す弾性体が、温度や湿度で弾性特性を変化させないシリコーンゴム等のような環境非依存性で耐久性に長けたゴムであると、夏場や煮沸処理場のような高温多湿環境や、冷蔵室・冷凍倉庫のような低温環境であっても周囲の環境やその変化・変動に影響されずに、またアレルギー症状を惹起することなく体調・健康を阻害せずに、動作補助をすることができる。特に、シリコーンゴムは、装着者の肌に直接触れても健康被害を生じず、かつ滑らかに動作する加工が施し易く、物理的強度や化学的強度が高く、容易く破断せず、特性を保つことができる。
【0048】
腕補助帯部10、腰背脚補助帯部30、膝補助帯部32の一部又は全部を成す弾性体の強度は、作業者の体格・骨格・筋力・年齢・男女差などに応じて適宜調整できるが、腕や背・腰や脚・膝を伸ばした時に弾性体に負荷がかからず、曲げて又は伸屈して作業しているときに弾性体に負荷がかかって反力によって作業者を補助する程度に調整する。
【0049】
弾性体は、作業者の自力で十分に作業できるため補助を然程必要としない多少軽度な動作時にはその動作を阻害せず、負荷が過剰にかかる重労働となり補助を必要とする比較的大きな動作を行い、腕背補助帯及び/又は背腰膝補助帯を大きく引っ張ったときに補助効果を発揮するようにしていることが好ましい。そのような弾性体の好ましい例として、シリコーンゴム製であって、
F=kx(式中、Fはばねによる反力、kはばね定数、xは自然長からの伸び量)
で示される弾性の法則(フックの法則)中のばね定数が伸び量に応じ高くなるというものであり、反力と伸び量とが非線形の相関性を示すものである。
【0050】
腕補助帯部10、腰背脚補助帯部30、及び膝補助帯部32は、前記のように単一の弾性体であってもよいが、それらの少なくとも何れかが、複数組み合わせた弾性体であってもよい。例えば、腰背脚補助帯部30の場合、腕や腰や膝の比較的小傾の屈曲・背の比較的小傾の前屈によって弾性的に伸びるように緊張した第一の弾性布地50と、腕や腰や膝の比較的大傾の屈曲・背の比較的大傾の前屈によって前記第一の弾性布地50と共に伸びるように弛んだ第二の弾性布地である弾性帯体10(
図1参照)とからなるものであってもよい。第一の弾性布地50と第二の弾性帯体10とに代えて、曲げ程度に応じて順次伸びる多段階弾性布地複数層を用いてもよい。腕補助帯部10や膝補助帯部32についても同様にすることができる。このとき第一の弾性布地50は、上端が上着40の襟首部45に縫製され、下端が腰当て部47に縫製されており、また、腰当て部47は、少なくとも一部が弾性体である脚補助帯部37を経て、腰背脚補助帯部30に縫製されて、腰背脚補助帯部30を介して膝ホルダー34に接続し、腰背脚補助帯部30と共に、前屈や腕上げ等によって、引っ張られるようになっている。なお、脚補助帯部37は、背脚補助帯部30に縫製される代わりに、膝ホルダー34まで延びて膝裏で膝ホルダー34に縫製されていてもよい。
【0051】
腕支持部11は、手、手首、前腕、肘及び/又は上腕を支持する帯、手袋、及び/又は上着40に接続された袖17に設けられていてもよい。腕支持部11は、前腕、肘、上腕を支持するものである。腕支持部11は、手首を取り巻き絞めて支持する手首支持具12と、肘よりも手先側で前腕付け根を取り巻き絞めて支持する前腕側肘支持具13と、肘よりも肩側で上腕付け根を取り巻き絞めて支持する上腕側肘支持具15とからなっている。手首支持具12、前腕側肘支持具13、及び上腕側肘支持具15は、帯で形成され、長さ調節可能な面ファスナ例えばフック状係合子を有する面とそれを係合するループ状係合子を有する面とからなる面ファスナ14で多少の遊びを有しつつ締め付けている。例えば前腕側肘支持具13、及び上腕側肘支持具15は、夫々端部が接続されて、面ファスナとなっており、手首支持具12は、端部が面ファスナとなっている。
【0052】
腕補助帯部10は、腕支持部11が袖17のおもて面に露出していてもよいが、周囲の機材や物品を引っ掛けてしまわないように、袖17の内部に収められていてもよく、袖17のおもて面又は裏面の鞘18に滑りやすいように一部通されて、収められていてもよい。
【0053】
腕補助帯部10は、腰背脚補助帯部を経て、膝ホルダー部34を介して膝補助帯部32に直接的乃至間接的に繋がって連動している。そのため、腕を伸ばしつつ足腰を上げて、荷物を持ち上げるような動作をした時、腕補助帯部10が腕を補助すると共に、膝補助帯部32が膝を補助する。その結果、腕から膝まで連動させて補助される。
【0054】
肘の上で取り巻く上腕側肘支持具15を腕補助帯部10と連結させている動作補助作業着1であると、上腕での肘の角度が約90°以上になっても連結部により上腕側肘支持具の引張りに応じて容易く上腕を容易く持ち上げることができるようになる。
【0055】
腕支持部11が、手首支持具12、前腕側肘支持具13、及び上腕側肘支持具15であり、袖17に設けられた例を示したが、袖17でそれらの少なくとも何れかを兼用するようにしてもよく、手首支持具12、前腕側肘支持具13が接続支持部(不図示)で前腕内側又は外側にて接続されていてもよい。
【0056】
また、面ファスナに代えて、又はそれと共に、帯の長さを調節できるアジャスタ、ホック及びホックハンガー、ボタン及びボタン穴、突起及び突起係止リング、帯及びそれを係止するバックル、磁石及び磁石受け、ロック解放機能付き締めつけバンド、紐のような係止具で、締め付けてもよい。腕支持部11は、指先を露出させていてもよい手袋及びその手首側根元で縫製されて繋がる手袋支持具を有する手首支持具にしてもよい(何れも不図示)。
【0057】
腕補助帯部10を調整して、腕支持部11から腰背脚補助帯部30までの長さを、短くすると腕を高く上げて作業し易くなり、一方幾分か長くすると腕を比較的低く上げて作業し易くなる。腕補助帯部10は任意の長さへの調整がスムーズであるから、作業の中断・再開や腕の高さの調整を、適宜、速やか且つ簡便かつ容易く行うことができる。そのような調整は、膝補助帯部32を補助するのに重要な影響をする。
【0058】
左右の前腕側肘支持具13と上腕側肘支持具15とは、夫々、肘内側で、左右の腕支持部11を夫々吊り上げ可能に繋ぎつつ、左右の腕補助帯部10に例えば縫製によって接続されている。
図5に示すように、腕補助帯部10の右の腕補助帯部10
R及び左の腕補助帯部10
Lと、腰背脚補助帯部30の右の腰脚補助帯部30
R及び右の腰脚補助帯部30
Lとが、例えば左右で互いに交差することなく、背に設けられ胸幅方向と体軸方向とよりもそれらの斜め方向に歪んで伸びる異方性の織物21で形成された変形性で平面状の矩形の集束部材20の上端と下端との二隅へ夫々集束するよう縫製されて、繋がっているものであってもよい。
【0059】
前腕側肘支持具13と上腕側肘支持具15とは、夫々端部が接続されて、面ファスナとなって袖に取り付けられている場合、前腕と上腕とを締め付けて、肘窩にて面ファスナで袖へ係合するものであることが好ましい。
【0060】
腕支持部11から腰背脚補助帯部30を経て膝ホルダー部34に至るまでの左右の腕補助帯部10は、全体が弾性体であってもよいが、少なくとも一部を弾性体とすることにより、腕を上げたままの動作のために前腕や上腕の筋肉の補助を効果的に行うことができる。腕支持部11から腰背脚補助帯部30に至るまでの左右の腕補助帯部10は、腕から肩にかけて腕補助帯部10の一部が弾性体となっていることが好ましい。
【0061】
腕補助帯部10は、その一部として弾性体例えば弾性体10aであるシリコーンゴム製帯の両端を布帛片と熱融着しその布帛片によって腕補助帯部10の他の部位である非弾性の繊維帯10bに確りと縫製されているものであってもよく、腕補助帯部10の一部として弾性体10aを直に腕補助帯部10の他の部位である繊維帯10bに熱融着及び/又は縫製されているものであってもよい。熱溶着は例えばシリコーンゴム製帯を厚さ方向に裂きその間に布帛片や繊維帯を挟み込んでから加熱によって熱融着するというものである。腰背脚補助帯部30についても同様である。
【0062】
腕補助帯部10や腰背脚補助帯部30は、弾性体部位を除き、繊維製例えば天然繊維や化学繊維のような各種繊維製である。細過ぎると身体に食い込み苦痛を感じるようになり、太過ぎると身体やインナーウェアとの摩擦や動作補助作業着1との摩擦が大きくなって摺動し難くなり、十分な動作補助ができなくなってしまう。このような繊維の素材として、滑り易いナイロンのようなポリアミド樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0063】
動作補助作業着1は、両腕を別々に夫々支える一対の腕補助帯部10が、両腕の前腕や上腕の動作を補助するので、正面側の操作のみならず斜め前方や左右側面側での複雑な動作であっても補助することができる。なお、動作補助作業着1は、作業内容に応じて、左右一対の腕補助帯部10で別々に補助位置や補助角度や補助強度を調整するものであってもよい。これによって、左右一対の腕補助帯部10は、左右一対の腰背脚補助帯部30と膝補助帯部32とにも連動し、夫々独立して、補助力を発現する。そのため、左右の腕と、左右の両脚特に両膝、腰、背中までとの動作を、別々に夫々、独立して又は協同して補助するので、腕や背や腰や脚や膝の屈伸動作や上下動作や捻り動作のような複雑な動作であっても確実に補助することができる。
【0064】
腕補助帯部10が腕側から肩越しに背側へ曲がるため肩で身体又はインナーウェア等の腕補助帯部10との間に強い摩擦が生じ易ので、その摩擦係数を低減し、肩で腕補助帯部10が摺動し易くなるように、表面張力の小さなフッ素樹脂製やシリコーン樹脂製の肩当てパット44がインナーウェア等の着衣に貼付され又は縫製されていてもよい。なお、肩当てパット44に代えて、又はそれと共に、鞘18を用いてもよい。
【0065】
この動作補助作業着1は、上着40が背面の後ろ身頃48を兼ねているものであってもよい。
【0066】
また、腰当て部47と上着40の後ろ身頃48の裾とが、位置調整可能に面ファスナ46を介して連結されていると、装着時や装着後の位置調整を容易く行うことができる。従って、腕・腰背・脚・膝の取るべき姿勢・補助位置・補助角度・補助強度の補助程度を、適宜、簡便かつ任意に自分で自在に調整できる。
【0067】
上着40が、前面で、ドットボタンにより、又は線ファスナ(不図示)により開閉可能な前開きの前身頃43をなしていてもよい。さらに前身頃43から延び脇を経て腰当て部47に至る脇締め部49を有していてもよく、胸ベルトを有していてもよく、これらは周囲の機器等に引掛けたり介護の邪魔になったりしないように、上着内に収められていてもよい。これにより、腕補助帯部10の作用を確実に腕支持部11に伝え腕を補助することができ、腰背脚補助帯部30の作用を逃がさないように確実に伝えて膝・脚・腰・背を補助することができる。
【0068】
踏付け部31は、足裏で踏み付けられるもので、膝ホルダー部34の足側起点となり足裏で支持されて引きずられないよう足裏に固定するものである。必要に応じ脛に脛当てや踏付け部31の長さを調整可能なアジャスタ又は面ファスナ(不図示)が設けられていてもよい。
【0069】
踏付け部31は、膝裏、臀から腰を経て背中へかけて伸びた腰背脚補助帯部30に、膝ホルダー部34を介して、繋がっている結果、腕補助帯部10と腰背脚補助帯部と膝補助帯部32とを連動して包括的に補助するために、膝ホルダー部34がずれ上がらないように支持する。
【0070】
腰背脚補助帯部30は、アジャスタ36により、膝ホルダー部34までの長さを短くすると、背中を起立させ易くなって背中を曲げた時や屈んだ時の補助を増強して作業し易くなり、一方幾分か長くすると背中を大きく曲げた時や低く屈んだ時の補助の増強が弱くなる反面、背中を小さく曲げた時や僅かに屈んだ時の軽作業での補助を促進し長期間継続して作業し易くなる。腰背脚補助帯部30で、その長さの調整がスムーズとなるから、作業の中断・再開や腰背膝の補助程度の調整を速やか且つ簡便かつ容易く行う事ができる。
【0071】
左右の腰背脚補助帯部30の少なくとも一部を弾性体30aとすることにより、前屈みや中腰の姿勢で又は蹲踞の姿勢で荷物を持ち上げたり左右へ移動させたりする動作のために膝や腰や背中の筋肉の補助を効果的に行うことができる。左右の腰背脚補助帯部30は、臀から大腿にて一部が弾性体30aとなっていることが好ましい。
【0072】
腰背脚補助帯部30は、臀又は大腿で身体又はインナーウェア等の着衣との間で強い摩擦が生じ易くなっている。そこで、その摩擦係数を低減するため、臀又は大腿で腰背脚補助帯部30が摺動し易くその動作がスムーズとなるように、フッ素樹脂製やシリコーン樹脂製の鞘35に通されていてもよい。
【0073】
この構成により、腰をかがめただけでなく膝を曲げて蹲踞した姿勢でも腰背脚補助帯部30を引っ張り、膝・脚・腰のみならず背中全体を補助しつつ、膝ホルダー部34でホールドしている膝を膝補助帯部32により補助することによって、脚・腰・膝の屈伸を補助する。
【0074】
図1のように、動作補助作業着1は、以下のようにして装着して使用される。この動作補助作業着1について、腹乃至胸の前程度の高さに持ち上げて立ち上がる際を例にして説明する。
【0075】
先ず、作業者が、動作補助作業着1の上着40を羽織り、両腕を袖17に通し、上着40をドットボタン又は線ファスナで閉じる。次に、踏付け部31の環下部31bを足裏で踏み付ける。膝ホルダー部34の左側膝下固定帯34a1及び左側膝上固定帯34a2と右側膝下固定帯34b1及び右側膝上固定帯34b2との見開きを引張って膝をホールドするように閉じる。踏付け部31から膝ホルダー部34までの長さを調整可能なアジャスタ(不図示)で、きつくない程度に調整する。
【0076】
次に、装着した作業者が前屈していない直立状態のとき、左右の腰背脚補助帯部30が弛まず伸長せず丁度緊張し弾性機能が利いていない形状となるように、左右の腰背脚補助帯部30の長さを調整可能なアジャスタで、適宜調整する。その後、手首支持具12、前腕側肘支持具13、上腕側肘支持具15のアジャスタ36で、両腕を夫々締めて、腕支持部11ごと腕を腹乃至胸の前程度の高さに持ち上げたりその高さで手作業し続けたりする際に、腕とりわけ前腕や上腕に対する所望の補助位置や補助角度や補助強度となって腕が補助されるように、腰背脚補助帯部30の長さを調整可能なアジャスタ36で、調整する。最後に、靴を履くと、装着が完了する。
【0077】
この動作補助作業着1は、調整後、使用時に所望の筋肉を補助する。
【0078】
必要に応じ、アジャスタ36や、上着40の後ろ身頃48の裾と腰当て部47との面ファスナ46で、再調整してもよい。最終調整した後でも、任意にその程度を再調整できるので、作業現場から歩行して移動したり階段や梯子で他の階に移動したりするときなど、腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30を適宜解放し、作業現場に戻ったら腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30を自在に再度調整できる。必要に応じ、膝ホルダー部34を開閉してもよい。
【0079】
通常、一旦調整したら再調整し難い従来の補助具で長時間締め付けられていると身体的・精神的疲労がたまるが、この動作補助作業着1は、補助程度をいつでも自在に調整したり解放したりできるので疲労がたまり難い。
【0080】
この動作補助作業着1は、蹲踞のような姿勢の際にも補助できるが、腰だけを曲げて持ち上げ等の動作をして腰を痛めやすい危険な姿勢の際にも十分に補助できる。脚、とりわけ膝の屈伸動作のみをする場合でも補助できる。
重い荷物を持ち上げる頑健な作業者を補助する場合を例に説明したが、起立・着座動作に不安のある高齢者や患者など比較的体が弱ったり力が弱かったりする者を補助することができる。
【0081】
この動作補助作業着1は、作業者がしゃがんで床の荷物を持ち上げる場合、以下のように動作する。
【0082】
作業者がしゃがんで床の荷物に手をかけ持ち上げようとすると、腕が伸びるため、腕補助帯部10の弾性体10aが、伸びてその反力で腕を曲げる方へと補助する。また、腰背脚補助帯部30の弾性体30aが、伸びてその反力で背中・腰を伸ばしたり起き上げたりする方へと補助する。さらに、膝補助帯部32の弾性体が、伸びてその反力で膝を伸ばす方へと補助する。
【0083】
なお、腕補助帯部10の右の腕補助帯部10R及びは左の腕補助帯部10Lと、腰背脚補助帯部30の右の腰脚補助帯部30R及び右の腰脚補助帯部30Lとが、左右で互いに交差することなく、背で集束部材(不図示)の上端と下端との二隅へ夫々集束するよう縫製されている場合、その後、作業者が身体を捩じった時や、片腕のみを上げたり伸ばしたりした時や、両脚前後に広げた時には、変形性の集束部材は、一方の対角線方向に歪んで一層大きく引き伸ばされ、それに伴って他方の対角線方向に歪んで一層縮む。その結果、腕補助帯部10と腰背脚補助帯部30との左右の張力の差をバランスよく分散し、補助が必要な一方側の腕や脚や背や腰を、より安定して動作補助できる。
【0084】
動作補助作業着1は、つなぎ服、制服、白衣の外装又は内部に、実装されていてもよい。
【0085】
動作補助作業着1は、柔軟で可撓性素材で形成されているから、着心地が良い。また、洗濯可能であるから、衛生的である。
【実施例0086】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0087】
(実施例1、比較例1)
図1に示す本発明の動作補助作業着1(但し、第一の弾性布地50と第二の弾性布地である弾性帯体10とを有するもの)を試作し実施例1とした。一方、動作補助作業着1を装着しないコントロールを比較例1とした。22~26歳7名と、43~57歳5名と、62~64歳2名の計14名に装着し、筋電位計を用いて大腿直筋(RF)の筋活動量を評価した。筋電位は、3秒間で起立、3秒間で着座を5回繰り返し、計測値を全波整流し,積分筋電図(iEMG)を算出した。各人それぞれ筋力が異なり、また出せる筋電位が異なるため、最大随意筋力(Maximum voluntary contraction:MVC,その筋力の出せる最大電位)を計測し,MVCに対する積分筋電図のピーク値との比率(%MVC)にて集計、分析した。
【0088】
起立・着座中の%MVC最大値と、起立・着座中の%MVC平均値とを
図6(a)に示し、比較例1(コントロール)を100%としたときの動作補助作業着1装着による起立・着座中の%MVC最大値の減少幅と、起立・着座中の%MVC平均値の減少幅とを、
図6(b)に示す。
【0089】
図6から明らかな通り、起立中の%MVC最大値は、比較例1で約30%MVCであったのに対し、実施例1で約25%MVCであり、約18%低減した。また着座中の%MVC最大値は、比較例1で約31%MVCであったのに対し、実施例1で約22%MVCであってT検定でp<0.05と有意差があり、約30%低減した。
一方、起立中の%MVC平均値は、比較例1で約11%MVCであったのに対し、実施例1で約9%MVCであってT検定でp<0.05と有意差があり、約25%低減した。また着座中の%MVC平均値は、比較例1で約11%MVCであったのに対し、実施例1で約7%MVCでありT検定でp<0.01と有意差があり、約34%低減した。
【0090】
このように、実施例1のように動作補助作業着1装着によって、起立・着座の動作を有効に補助していた。なお、この結果から、しゃがんで荷物を持ち上げ立ち上がった時も同等の効果を奏することが示唆される。
本発明の動作補助作業着は、介護、福祉、物流、工場、農作業、漁業などの様々な作業現場における作業従事者の持ち上げ動作、保持動作、腕を上げ続けた姿勢維持などの必要時に広く使用可能である。特に、どこまで腕を上げる動作を行うかによって任意に容易に補助度合いを容易に変更設定可能であるので、これら現場でのニーズに合わせ、調整できる。
またこの動作補助作業着は、立った姿勢、寝た姿勢での読書、キーボード、タブレット操作などの上腕および前腕補助など、健常者のADL(日常生活動作)補助にも使用可能である。
さらに、この動作補助作業着は、重荷物を搬送する健常者・作業者だけでなく、力が弱い高齢者や患者などが起立したり着席したりする際、とりわけ転倒事故の多いトイレなどでの動作補助に使用可能である。さらに加えて、筋疾患患者、神経疾患患者など、指先は動くが自身で腕を持ち上げられない方のADL補助、例えば、食事、洗顔、化粧、トイレ等での福祉用具としても使用可能である。